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明細書 :大型膜宇宙構造物およびその展開方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3541225号 (P3541225)
公開番号 特開2003-026100 (P2003-026100A)
登録日 平成16年4月9日(2004.4.9)
発行日 平成16年7月7日(2004.7.7)
公開日 平成15年1月29日(2003.1.29)
発明の名称または考案の名称 大型膜宇宙構造物およびその展開方法
国際特許分類 B64G  1/22      
B64G  1/24      
B64G  1/44      
FI B64G 1/22
B64G 1/24 A
B64G 1/44 B
請求項の数または発明の数 8
全頁数 13
出願番号 特願2001-215823 (P2001-215823)
出願日 平成13年7月16日(2001.7.16)
審査請求日 平成13年7月16日(2001.7.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012693
【氏名又は名称】宇宙科学研究所長
発明者または考案者 【氏名】川口 淳一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100068814、【弁理士】、【氏名又は名称】坪井 淳
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
審査官 【審査官】小山 卓志
参考文献・文献 特開平01-275300(JP,A)
特開平05-294298(JP,A)
特表平03-503270(JP,A)
調査した分野 B64G 1/22
B64G 1/24
B64G 1/44
特許請求の範囲 【請求項1】
宇宙船に装着された大型膜宇宙構造物において、
中心を第1の支点として前記宇宙船に装着され、第1の支持具と、中点を含む複数点でヒンジ状に接続され得る桁構造を有する第2の支持具と、この第1の支持具のそれぞれの端部で一端が支持され、第2の支持具のそれぞれの端部で他端が支持された細長い第1の索体とを備えた複数の支持体が配設されたハブと、
前記第1の支点に関して対称で、それぞれ前記支持体に装着されたペタルを有する帆部とを備え、
前記ハブは、前記支持体とともに前記ペタルを前記第1の支点と前記第2の支持具の中点との延長線による軸まわりに回動させて所望の角度に制御する制御手段を備え、
前記ペタルは、それぞれ前記延長線に関して対称な形状を有する第1の領域を備え、前記第1の支点に対向し、前記延長線と前記第1の領域との交点に第2の支点が設けられ、この第2の支点から前記第1の領域の対向した外周部に向かって任意の間隔で複数の分割線が設けられて、前記外周部と前記分割線とに囲まれた第2の領域を備え、この第2の領域に沿ってそれぞれ膜材が張られるとともに、前記外周部に沿って細長い第2の索体が設けられて、前記膜材がそれぞれ前記外周部で接続され、前記第2の索体と前記第1の支点に対向した最も外側の膜材の外縁部とに所定の重量を有する周縁質量が装着され得、前記第2の支持具の両端に設けられた第3の支点に対向した前記外周部および前記外縁部に向かって複数の仮想線が設けられて、前記膜材とこれら仮想線との交点にそれぞれ張力を支持する帯材が配設されて、各膜材間が離散的に接続されてなることを特徴とする大型膜宇宙構造物。
【請求項2】
前記延長線と、この延長線に最も近接した分割線と、前記延長線に対して垂直で、前記第3の支点同士を結ぶ第2の支持具とで囲まれる領域には、さらに膜材が張られていることを特徴とする請求項1に記載の大型膜宇宙構造物。
【請求項3】
前記帯材は、各膜材間の所定の位置に溶着および/もしくは接着されて、各膜材間が接続されていることを特徴とする請求項2に記載の大型膜宇宙構造物。
【請求項4】
前記ペタルは、前記帯材で折られて、前記膜材の表面同士が対向されて収納されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1に記載の大型膜宇宙構造物。
【請求項5】
前記ペタルは、それぞれ前記ハブに巻きつけられて収納されることを特徴とする請求項4に記載の大型膜宇宙構造物。
【請求項6】
前記膜材には、太陽電池パネルが配設されることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1に記載の大型膜宇宙構造物。
【請求項7】
中心を第1の支点として前記宇宙船に装着され、第1の支持具と、中点を含む複数点でヒンジ状に接続され得る桁構造を有する第2の支持具と、この第1の支持具のそれぞれの端部で一端が支持され、第2の支持具のそれぞれの端部でそれぞれ他端が支持された細長い第1の索体とを備えた複数の支持体が配設されたハブと、
前記第1の支点に関して対称で、それぞれ前記支持体に装着されたペタルを有する帆部とを備え、
前記ハブは、前記支持体とともに前記ペタルを前記第1の支点と前記第2の支持具の中点との延長線による軸まわりに回動させて所望の角度に制御させる制御手段を備え、
前記ペタルは、それぞれ前記延長線に関して対称な形状を有する第1の領域を備え、前記第1の支点に対向し、前記延長線と前記第1の領域との交点に第2の支点が設けられ、この第2の支点から前記第1の領域の対向した外周部に向かって任意の間隔で複数の分割線が設けられて、前記外周部と前記分割線とに囲まれた第2の領域を備え、この第2の領域に沿ってそれぞれ膜材が張られるとともに、前記外周部に沿って細長い第2の索体が設けられて、前記膜材がそれぞれ前記外周部で接続され、前記第2の索体と前記第1の支点に対向した最も外側の膜材の外縁部とに所定の重量を有する周縁質量が装着され得、前記第2の支持具の両端に設けられた第3の支点に対向した前記外周部および前記外縁部に向かって複数の仮想線が設けられて、前記膜材とこれら仮想線との交点にそれぞれ張力を支持する帯材が配設されて、各膜材間が離散的に接続されるとともに、前記帯材で前記膜材の表面同士が対向して折られてそれぞれ任意の長さの折目を備え、膜材が前記ハブに巻きつけられて収納される大型膜宇宙構造物の展開方法において、前記ハブを中心として、所定の方向に回転させ、各ペタルに遠心力を発生させて、各膜材に遠心力の方向に発生される張力を働かせて前記ハブへの巻きつきを解いて、前記ハブに対して放射状に伸ばすとともに、前記支持体を前記延長線を枢軸として各ペタルを所定の角度傾けるように回動させ、
前記周縁質量で動径方向に遠心力を発生させて、前記帯材間に張力を働かせて前記折目の残留応力を解放させるように伸ばすとともに、
前記ハブの中心から動径方向に作用する遠心力と、前記第3の支点から動径方向に対して傾きをもって延びる張力支持線で支えることにより、前記ペタルの回転周方向に力を発生させ、
前記第2の支点を中心として、前記膜材を外側から内側に順次展開させることを特徴とする大型膜宇宙構造物の展開方法。
【請求項8】
前記支持具は、前記ペタルによって発生するトルク量を制御するとともに、その回動角度を制御することを特徴とする請求項7に記載の大型膜宇宙構造物の展開方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、宇宙船に装着された大型膜宇宙構造物およびその展開方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大型膜宇宙構造物とは、宇宙空間で電力を得るのに用いられる大型の太陽電池膜(パネル)や、推進機関として用いられるソーラーセールなど、宇宙空間で使用する大型の膜構造物のことを指している。
【0003】
近年、この大型膜宇宙構造物を推進機関として用いる太陽系探査の要求が高まりつつある。しかしながら、燃焼ガスの高速噴射の反作用で推進する宇宙船、いわゆるロケットには、積み込める推進剤や燃料に限界がある。このため、推進剤や燃料を必要としない、新たな推進機関を模索する気運が強まっている。従って、太陽光の反射によって推進するソーラーセールなどの大型膜宇宙構造物の開発が強く促されつつある。
【0004】
大型膜宇宙構造物は、アルミニウムが蒸着され、その表面が鏡面状に仕上げられた膜材が張られた帆部を備えている。図5に示すように、この帆部14は、太陽光を反射し、その反射による光圧力の作用によって宇宙船や人工衛星の推進力Fを得る。実用規模の大型膜宇宙構造物は、矩形状のものがあり、その一辺は数十mから百m、あるいはそれを超えるような非常に大きなものである。このため、膜材の大きさも同様に、一辺が数十mから百m、あるいはそれを超えるような非常に大きなものである。
【0005】
また、大型膜宇宙構造物は、太陽の重力が働く空間を飛行する。前記帆部14に働く光圧力は、太陽や地球の重力に比べて十分に小さいので、大型膜宇宙構造物は、光による推進力Fよりも、主として、重力に支配されて運動される。つまり、図6に示すように、大型膜宇宙構造物は、太陽系の中では、惑星と同様に軌道運動される。また、地球の近くでは、地球の人工衛星として軌道運動される。
【0006】
また、この帆部14による推進力Fは、その軌道運動を加速したり、減速したり、あるいは軌道を変える加速を加える作用を有する。大型膜宇宙構造物が宇宙空間で軌道運動を始めたときには、加速量および減速量は、極めて小さく、加速および減速は、徐々に行なわれる。
【0007】
また、図5に示すように、面積がAの平板状の大型膜宇宙構造物の受ける推進力Fは、太陽光の光圧力をP、帆部の光の反射率をr、平板の面に立てた垂線が太陽の方向に対してなす角をθとすると、
F=PA(1+r)cosθ
と表せる。θは、帆部の方向制御に関するので、θ=0°として完全な反射面でr=1と仮定すると、
F=2PA(N/m
である。
【0008】
地球の近くでは、太陽光の光圧力Pは、P≒4.6×10-6N/mで、極めて小さい。しかし、大型膜宇宙構造物の性能は、加速度で決定される。帆部14が面積密度β(kg/m)の膜材で形成されているとすると、質量は、βAである。βを仮に0.01kg/mとすると、加速度αは、
α=2P/β≒9.2×10-4m/s
である。これは、イオンロケットやプラズマロケットなどの加速度とほぼ同じである。
【0009】
大型膜宇宙構造物は、時間が経つにつれて速度が増加する。このため、時間がかかる飛行であればあるほど、推進剤や燃料を利用して推進するロケットに比べて有利になる。
【0010】
従来の大型膜宇宙構造物には、図7に示すように、矩形状のものがある。この大型膜宇宙構造物は、帆部30を展開するための4本の梁32を備えている。これら梁32は、センターハブ34にそれぞれ一端が支持されている。このハブ34は、図示しないペイロードと、梁32の展開機構とを備えている。この大型膜宇宙構造物の姿勢制御は、梁32の先端に取り付けられた制御ベーン36によって発生されるトルクによってなされる。このトルクは、太陽光圧の中心が帆部30の幾何中心から移動されることによって発生される。
【0011】
一端が支持された梁32には、曲げ荷重が受けられる。このため、適宜な大きさに作成されている。圧力が小さい下では、荷重は膜材によって負担され、梁32は大型膜宇宙構造物の重要な質量部分を備え得る。
【0012】
そして、このような帆部30を宇宙空間に運ぶ場合には、膜材自体が適当に折り畳まれ、円筒管などの心材に巻きつけられて、コンパクトに包装している。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような矩形状の大型膜宇宙構造物は、一旦巨大な帆部を製造した後、膜材を折り畳んで包装する方法が採られているが、実用規模の大きさでは、この方法の実施は困難で、非現実的であった。
【0014】
また、膜材自体が折り畳まれるので、折目が付けられて、膜材に残留応力、残留歪が発生してしまう。宇宙空間でこのような折目を伸ばすには、所定の展開力が必要である。従って、このような折目は、宇宙空間で帆部を展開することを阻む最大の要因となっている。さらには、帆部の展開には、多くの複雑な構造を必要とするので、展開を失敗することもある。
【0015】
また、大型膜宇宙構造物の帆部には、外枠が必要とされ、帆部を展開するのに伸展する梁などの骨格部材を用いることが想定され、また、このような骨格部材は、非常に大型の構造なので、軽量化を図るにしても限界がある。このため、大型膜宇宙構造物を宇宙に運ぶのにかなりの重量を備えている。
【0016】
さらに、1つの帆部からなる大型膜宇宙構造物では、この構造物全体にかかるトルク量を制御することが難しく、回転数を制御することが困難であった。
【0017】
本発明は、このような課題を解決するためになされ、大型膜宇宙構造物およびその展開方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明による宇宙船に装着された大型膜宇宙構造物においては、中心を第1の支点として前記宇宙船に装着され、第1の支持具と、中点を含む複数点でヒンジ状に接続され得る桁構造を有する第2の支持具と、この第1の支持具のそれぞれの端部で一端が支持され、第2の支持具のそれぞれの端部でそれぞれ他端が支持された細長い第1の索体とを備えた複数の支持体が配設されたハブと、前記第1の支点に関して対称で、それぞれ前記支持体に装着されたペタルを有する帆部とを備え、前記ハブは、前記支持体とともに前記ペタルを前記第1の支点と前記第2の支持具の中点との延長線による軸まわりに回動させて所望の角度に制御する制御手段を備え、前記ペタルは、それぞれ前記延長線に関して対称な形状を有する第1の領域を備え、前記第1の支点に対向し、前記延長線と前記第1の領域との交点に第2の支点が設けられ、この第2の支点から前記第1の領域の対向した外周部に向かって任意の間隔で複数の分割線が設けられて、前記外周部と前記分割線とに囲まれた第2の領域を備え、この第2の領域に沿ってそれぞれ膜材が張られるとともに、前記外周部に沿って細長い第2の索体が設けられて、前記膜材がそれぞれ前記外周部で接続され、前記第2の索体と前記第1の支点に対向した最も外側の膜材の外縁部とに所定の重量を有する周縁質量が装着され得、前記第2の支持具の両端に設けられた第3の支点に対向した前記外周部および前記外縁部に向かって複数の仮想線が設けられて、前記膜材とこれら仮想線との交点にそれぞれ張力を支持する帯材が配設されて、各膜材間が離散的に接続されてなることを特徴とするものである。
【0019】
また、大型膜宇宙構造物の展開方法においては、前記ハブを中心として、所定の方向に回転させ、各ペタルに遠心力を発生させて、各膜材に遠心力の方向に発生される張力を働かせて前記ハブへの巻きつきを解いて、前記ハブに対して放射状に伸ばすとともに、前記支持体を前記延長線を枢軸として各ペタルを所定の角度傾けるように回動させ、前記周縁質量で動径方向に遠心力を発生させて、前記帯材間に張力を働かせて前記折目の残留応力を解放させるように伸ばすとともに、前記ハブの中心から動径方向に作用する遠心力と、前記第3の支点から動径方向に対して傾きをもって延びる張力支持線で支えることにより、前記ペタルの回転周方向に力を発生させ、前記第2の支点を中心として、前記膜材を外側から内側に順次展開させることを特徴とするものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について図1ないし図4を参照して説明する。
【0021】
まず、大型膜宇宙構造物の構造について説明する。なお、ここでは、推進機関として用いられる大型膜宇宙構造物について説明する。
【0022】
大型膜宇宙構造物は、図1および図2に示すように、宇宙船に設けられたハブ2と、例えば4つのペタル6を有する帆部4とを備えている。また、このハブ2には、このハブ2と各ペタル6とを連結する連結部材として支持体8が設けられている。また、この支持体8は、剛性を有する第1の支持具8aと、中央部(中点)Pおよび複数点でヒンジ状に接続されたひも状ないし好ましくは桁構造を有する第2の支持具8bとを備え、第1の支持具8aの両端B,B’と第2の支持具8bの両端B,B’とがそれぞれ例えばひも状の細い第1の索体で接続されている。また、これら支持体8は、後述する仮想中心線OAに関して回動可能であるとともに、この回動角度を所定の範囲で所望の角度に制御することができる。
【0023】
そして、図2に示すように、これらペタル6は、それぞれハブ2の中心に関して対称に展張されるとともに、それぞれ同一な四角形OBAB’を有する。なお、この四角形OBAB’の1つの頂点O、すなわち、ハブ2の中心を第1の支点Oとする。また、これらペタル6は、それぞれ後述する仮想中心線OAに関して対称な形状に形成されている。
【0024】
以下、4つのペタル6は、それぞれ同一の形状を有し、第1の支点Oに関して対称に形成されているので、1つのペタル6についてのみ説明する。
【0025】
図3に示すように、第1の支点Oから第2の支持具8bの中点Pを通る延長線を仮想中心線とし、この仮想中心線上で、第1の支点Oに対向した端部に第2の支点Aが設けられている。以下、ハブ2の中心から第2の支点Aを通る直線を仮想中心線OAとする。上述したように、このペタル6は、仮想中心線OAに関して対称で、それぞれ三角形OAB,OAB’を備えている。これら三角形OAB,OAB’をそれぞれ第1の領域とする。なお、仮想中心線OAおよび辺BA,AB’の長さは、例えば、それぞれ約50mである。
【0026】
さらに、第2の支点Aから辺OB,OB’に向かって適当な間隔で、例えば、8本ずつの分割線AB,AB,…,AB,AB’,…AB’が仮想的に引かれている。
【0027】
以下、第1の領域ABO,AB’Oは、仮想中心線OAに関して対称なので、一方の領域の三角形ABOについてのみ説明する。
【0028】
図3に示すように、第1の領域の三角形ABOは、前記分割線によって、9つの三角形ABB,AB,…,AB,ABOに分割されている。これら三角形をそれぞれ第2の領域とする。そして、特に、三角形ABB,AB,…,ABには、それぞれの形状に沿って膜材が張られている。これら膜材は、例えばポリイミド樹脂材などの、耐宇宙環境性に優れた高分子材製のものを用いるのが好ましい。また、これら膜材と同様に、三角形ABOの内部の三角形ABPにも、耐宇宙環境性に優れた高分子材製の膜材が張られていることが好ましい。従って、各膜材の1つの点は、全て第2の支点Aに集められている。また、BB間には、細長い第2の索体が配設され、各膜材が各端部B,B,…,Bで接続されている。
【0029】
ところで、これら膜材の面積密度は、例えば、約30g/mである。さらに、これら膜材は、アルミニウムが蒸着され、鏡面状に仕上げられている。このため、膜材は任意の反射率で太陽光を反射する。なお、この蒸着による膜材の重量の変化は、無視できるほど小さい。
【0030】
また、膜材ABと第2の支持具8bとの交点を第3の支点Bとする。この第3の支点Bから対向する辺ABに向かって、適当な間隔で、例えば6つ(複数)の仮想線B,B,…,Bが引かれている。
【0031】
さらに、これら仮想線B,B,…,Bと、膜材ABB,AB,…,ABとの交点には、図3に示すように、それぞれ帯材10が配設され、隣接する膜材同士が離散的に溶着ないし接着されて接続されている。帯材10は、膜材と同質なポリイミド樹脂材などの耐宇宙環境性に優れた高分子材で好ましくは形成されている。
【0032】
従って、本実施の形態によれば、ほぼ膜材のみから形成されているので、極めて軽量な大型膜宇宙構造物を提供することができる。
【0033】
また、膜材ABBの1つの外縁部ABおよび/もしくは第2の索体BB(外周部)には、適当な間隔で複数の図示しない周縁質量が取り付けられ得る。ここでは、外縁部ABにのみ周縁質量が装着されている。これら周縁質量については、後述する。
【0034】
次に、このような大型膜宇宙構造物を製造して、収納する工程について説明する。
【0035】
まず、それぞれ前記三角形ABB,AB,…,AB,ABPに沿って膜材を準備する。次に、これら三角形の膜材を収納する状態に重ねる。このとき、各膜材は、それぞれ膜材面が向かい合った状態にある。そして、上述した所定の位置にそれぞれ帯材10を配置し、膜材同士をそれぞれ溶着ないし接着させて接続させる。なお、これら帯材10が接続される範囲は、帯材10に形成される折目の長さができるだけ短くなるようにするのが好ましい。なお、ここでは、帯材10の大きさは、数cm×数十cmないし数十cm×1m程度のものを用いるのが好適である。すなわち、これら帯材10は、各膜材の大きさに比べて十分に小さい。また、BB間には、細長い第2の索体を配設し、各膜材の頂点B,B,…,Bで留める。そして、支持体8にこれらペタル6を装着する。
【0036】
そして、各膜材の1つの頂点B,B,…,Bは、一体に仮留めされ、宇宙船の外部に巻きつけられて、コンパクトに収納される。
【0037】
従って、各膜材間の帯材10に折目を設けて互いに隣接する膜材同士が接続されているので、膜材自体には折目がない。また、膜材同士が重ねられているので、帯材10が溶着ないし接着されて接続されるのに伴ってペタル6が収納される。このため、1つのペタル6を製造し、収納するためのスペースは、常に1つか2つの膜材の大きさ程度に抑えられる。すなわち、全ての膜材を張るとともに、帯材10を所定の位置に溶着してから分割線を折目として折り曲げるよりも、効率的にペタル6を製造し、収納することができる。また、膜材自体が折り畳まれて折目がつけられ、折目部分の残留応力および残留ひずみを解放してペタル6を展開させるよりも、はるかに小さな力で膜材を展開させることができる。すなわち、大型膜構造物の収納に関わる残留応力および残留ひずみは、帯材10の幅に限定されるため、展開に有利である。
【0038】
次に、大型膜宇宙構造物を宇宙空間で展開する工程について説明する。
まず、宇宙船に収納した大型膜宇宙構造物を宇宙空間に運ぶ。そして、ハブ2を中心として、各ペタル6がハブ2に巻きついた方向に適当な回転数で回転させ、周縁質量の作用により、回転周方向に対して垂直な方向に遠心力を発生させる。そして、各ペタルの遠心力の方向に発生される膜材の張力によって、徐々にハブ2からの巻きつきを解くとともに、ハブ2に対して放射状に伸ばす。
【0039】
そして、各膜材の頂点B,B,…,Bの仮留めを解く。
なお、膜材の長手方向は、心材に巻きつけられていたため、巻くせが付けられ、やや反った状態にある。これら巻くせは、膜材の長手方向に対して直角の方向については、十分に小さいので、考えなくてもよい。
【0040】
このとき、最外部の膜材ABBとこれに隣接する膜材ABとの帯材10間の周辺では、ペタル6が伸ばされる方向(遠心力方向)と、このペタル6の回転周方向とで、力がつりあった状態にある。このため、回転による遠心力により、膜材および帯材10間に張力が与えられ、膜材間を接続した帯材10に付けられた折目の残留応力および残留ひずみ、並びに膜材に付けられた巻くせを解放させる方向に作用する。
【0041】
次に、ハブ2に設けられた支持体8を制御して、仮想中心線OAを枢軸として、各ペタル6を好ましくは45°から60°の間の任意の角度に回動させる。この工程は、図1に示すように、同一平面上で4つのペタルを同時に開くと、隣接するペタル6同士が互いに当接することを避けるために行なわれる。このため、各支持体8を制御して、各ペタル6をほぼ同じ角度回動させて、各ペタル6同士を互いに平行な状態にする。
【0042】
そして、ハブ2を中心として、帆部4を図1、図2および図3に示す矢印の方向に、第1の支点を中心として、例えば、4rpmで回転させる。上述した周縁質量で回転周方向に対して直交する動径方向に遠心力を発生させる。ここで、仮想中心線OAに関して対称な点B’を第4の支点とする。
【0043】
第2の支持具BP,PB’間には、ペタル6を閉じる方向に働く、弱い圧縮力が与えられている。ペタル6を回転させると、ハブ2の中心、すなわち遠心力の作用方向が第3および第4の支点B,B’に見かけ上オフセットされた状態になる。このため、第3および第4の支点から動径方向に傾きを持って延びた張力支持線(図示せず)により、回転周方向にも膜材を展開する展開力が与えられる。従って、ペタル6を展開させることができる。
【0044】
ところで、上述したように、ここでは、周縁質量は、外縁部ABに設けられている。宇宙船の回転数が4rpmで、OA間が約50mの場合、外縁部A,A,…,A,Bでは、1枚の膜材の地上での自重と同じ力を出すのに必要な質量は、0.1kg/m程度である。従って、外縁部ABが約50mの帆部4では、全外縁部の長さが約400mあるので、約40kgの周縁質量が取り付けられていることが必要である。従って、ペタル6を展開させる力は、地上での重力1G下でのつり下げによる重力程度まで引き上げられている。
【0045】
膜材間を接続する帯材10の位置は、第3および第4の支点B,B’から角AOBよりも小さい任意の角度を有する仮想線上に設けて、遠心力が働く方向はもちろん周方向にも、展開力を持たせることができる。すなわち、仮想角AB,A,…,ABは、それぞれ角AOBよりも小さいので、仮想線B,B…,B上の帯材10には、ペタル6が展開する展開力が与えられる。
【0046】
ペタル6を展開するのに必要な力は、当然、外縁部ABで最小となるので、最も外側の膜材ABBを展開できれば、外側から内側に向かって順次膜材を展開して、ペタル6の全面を開くことが保証される。
【0047】
なお、ペタル6が開いていくのと同時に、回転数は徐々に低下するので、これらペタル6の展開は、受動的に行なわれる。
【0048】
従って、回転による遠心力を周縁質量によって補って、各膜材および帯材10に遠心力だけでなく、この遠心力の方向に直交した方向に展開力が与えられるので、各ペタル6を展開させるのに十分な力を与えることができる。
【0049】
ところで、大型膜宇宙構造物の姿勢変更は、その重心を太陽光の光圧中心からオフセットさせることによって行なわれる。高回転が有利に思われるが、大型膜宇宙構造物では、姿勢変更の要求から定まる重心のオフセット量が増加するので、過剰な高回転化は、避ける必要がある。
【0050】
この大型膜宇宙構造物の周縁質量は、回転数を増加させると軽量化することができる。しかし、回転を与えるための化学推進燃料の使用量が増加する。このため、大型膜宇宙構造物の燃料を使用して回転数を増加させるかどうか、選択する必要がある。燃料の使用量は、回転数に比例して増加するが、周縁質量は、回転数の-2乗に比例して減らすことができる。
【0051】
例えば、全質量が約500kgの宇宙船の回転数を0rpmから4rpmに増加させる場合、膜材の密度が約30g/mで、辺BA,AB’および仮想中心線OAがそれぞれ約50mの帆部4であれば、ヒドラジンと四二酸化窒素との2液推進系では、約40kgの燃料が必要である。これは、宇宙船の重量に比較して大きな重量である。ところで、1日に3°の姿勢変更を行なわせるために必要な重心の偏心量は、約60cmである。この値は、現実的な値である。もちろん、膜材の密度が小さくなるのに応じて、宇宙船の全質量や燃料の重量は、軽量化される。
【0052】
このため、ペタル6を展開した後、各支持体8を再び制御して、4つのペタル6をそれぞれ任意の角度に回動させて制御する。光圧力に対するペタル6の回動角度によって所望のトルク量を発生させて、姿勢制御を行ない、帆部4に加わる光圧力を調節する。
【0053】
本実施の形態では、仮想中心線OAおよび辺BA,AB’の長さは、例えば、それぞれ約50mとしたが、このような長さに限ることはなく、これらの長さは、数十mないし数百mの範囲であればよい。
【0054】
また、本実施の形態では、ペタル6の形状を四角形として説明したが、このような形状に限定されることはなく、ペタル6が仮想中心線OAに関して対称であればよい。即ち、三角形や五角形、または一辺が弧状の多角形(図4参照)などでも構わない。また、ペタル6は、図3に示す点B,B’が仮想中心線OAの延長線上になるように設計されていてもよい。従って、ペタル6がさらに開いた状態になり得る。
【0055】
また、本実施の形態では、膜材の形状(第2の領域)を三角形としたが、四角形や一辺に弧を有する多角形(図4参照)などでも構わない。
【0056】
ここで、図4を参照して、ペタルの形状の変形例について説明する。このペタルの仮想中心線OAに対称な片方の多角形OACBは、3つの辺と1つの弧からなり、前記ペタル6と同様に、仮想中心線OAに関して対称である。第2の支点Aから対向する辺OB、弧BCに向かって、適当な間隔で分割線AB,…AB,AB,AC,…ACが引かれている。そして、辺OB、弧BCと分割線AB,…AB,AB,AC,…ACとで囲まれる領域に沿って膜材が張られる。
【0057】
また、第3の支点Bから対向する弧BC、辺CAに向かって適当な間隔で仮想線B,B,B,…Bが引かれている。そして、これら仮想線B,B,B,…Bと膜材との交点にそれぞれ帯材10が溶着される。
【0058】
そして、膜材ACC,AC,…,ACBの周縁部AC,CBには、図示しない周縁質量が設けられ得る。
【0059】
ところで、本実施の形態では、各ペタル6を同一平面上に配置することができれば、ペタル6の数は、4つに限ることはなく、ハブ2の周囲を取り囲むように設けられていればよい。
【0060】
また、本実施の形態では、第1の索体Bと第2の索体BBとをそれぞれ別の部材として説明したが、これら索体B,BBが1本の索体BBで形成され、1つの部材となっていてもよい。このとき、第1の索体と第2の索体とが1つの部材である場合、BとBBとは同一の直線状になる。また、第1の索体と第2の索体とが別の部材である場合、BB,BB’をそれぞれ延長した交点をO’とすると、角BO’B’は、角BOB’に比べて同じか、これよりも小さくなる。
【0061】
また、本実施の形態では、図2から図4に示すABとABとACとの長さは、それぞれ同じであっても、異なっていてもよい。
【0062】
また、本実施の形態では、宇宙空間で帆部4の回転数を4rpmとして各ペタル6を展開することを説明したが、この回転数に限ることはなく、各帆部4の設計に合った回転数が選択されることが好ましい。
【0063】
なお、本実施の形態では、推進機関としての大型膜宇宙構造物に関して説明したが、膜材の代わりに太陽電池パネルを用いれば、大型太陽電池膜にも適用することができる。そして、大型太陽電池膜を展開する方法についても、本実施の形態を同様に適用することができる。
【0064】
これまで、一実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。
【0065】
従って、本実施の形態にかかる大型膜構造物およびその展開方法について、以下のことが言える。
【0066】
本実施の形態によれば、1つのペタルを複数の膜材に分割し、分割した膜材自体を折り曲げず、これら膜材を離散的に接続する帯材のみを折り曲げて収納するので、先に膜材同士を重ね、後から帯材を所定の位置に接続すると、製造時のスペースは、1枚程度の膜材の領域に収めることができる。
【0067】
また、本実施の形態によれば、ほぼ膜材のみから形成されているので、極めて軽量な大型膜宇宙構造物を提供することができる。
【0068】
また、本実施の形態によれば、膜材に比べて十分に小さい帯材のみが折り曲げられているので、ペタルを展開するのに小さい遠心力、すなわち低回転数で帆部を展開させることができる。
【0069】
また、本実施の形態によれば、各ペタルのほぼ全てが薄い膜材で形成されているので、極めて軽量な大型膜宇宙構造物を提供することができる。
【0070】
また、本実施の形態によれば、帆部が複数のペタルからなり、それぞれのペタルが独立して仮想中心線を枢軸として回動可能で、これらペタルが所望の角度に制御されるので、宇宙船の回転数の制御を比較的容易にすることができる。
【0071】
さらに、本実施の形態によれば、各ペタルの構造が簡単で、回転遠心力によって展開される大型膜宇宙構造物の展開方法を提供することができる。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、製造時のスペースを膜材1枚程度にすることができる大型膜宇宙構造物を提供することができる。
【0073】
また、本発明によれば、収納による残留応力および残留ひずみを小さく抑えることができ、かつ軽量で、ペタルを展開するために必要な力を小さくすることができる大型膜宇宙構造物を提供することができる。
【0074】
また、本発明によれば、各ペタルが仮想中心線(延長線)を枢軸として独立して回動可能でかつ、所望の角度に制御することができるので、各ペタルにかかるトルク量をそれぞれ制御することができ、かつ宇宙船の回転数を制御することができる大型膜宇宙構造物を提供することができる。
【0075】
また、宇宙船に装着されたハブを中心として所定の方向に回転させて遠心力を働かせて各ペタルを展開させる大型膜宇宙構造物の展開方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態による帆部の各ペタルが半開し、隣接するペタルが互いに当接しあった状態を示す概略的な説明図。
【図2】本実施の形態による帆部が全開した状態を示す概略的な説明図。
【図3】本実施の形態によるペタルの構造を示す概略的な説明図。
【図4】図3に示すペタルの変形例を示す概略的な説明図。
【図5】太陽光による光圧力を受けて大型膜宇宙構造物に所望の方向の推進力を得ることを示す概略的な説明図。
【図6】大型膜宇宙構造物により航行する宇宙船の軌道を示す概略的な説明図。
【図7】矩形状の大型膜宇宙構造物を示す概略図。
【符号の説明】
2…ハブ、4…帆部、6…ペタル、8…支持体、10…帯材、O…第1の支点、A…第2の支点、B…第3の支点
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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