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明細書 :金属硫化物触媒を用いた一酸化炭素の水素化法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3742816号 (P3742816)
公開番号 特開2003-027064 (P2003-027064A)
登録日 平成17年11月25日(2005.11.25)
発行日 平成18年2月8日(2006.2.8)
公開日 平成15年1月29日(2003.1.29)
発明の名称または考案の名称 金属硫化物触媒を用いた一酸化炭素の水素化法
国際特許分類 C07C  29/157       (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
C07C  31/04        (2006.01)
C07C  41/00        (2006.01)
C07C  43/04        (2006.01)
FI C07C 29/157
C07B 61/00 300
C07C 31/04
C07C 41/00
C07C 43/04
請求項の数または発明の数 6
全頁数 10
出願番号 特願2001-217017 (P2001-217017)
出願日 平成13年7月17日(2001.7.17)
審査請求日 平成13年7月17日(2001.7.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】山田 宗慶
【氏名】小泉 直人
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】渡辺 陽子
参考文献・文献 特開昭55-139325(JP,A)
特開昭61-091139(JP,A)
特開昭56-095137(JP,A)
特開2000-176287(JP,A)
特開昭57-077633(JP,A)
特開昭56-095136(JP,A)
調査した分野 C07C 29/15~29/157
C07C 31/04
C07C 41/00
C07C 43/04
C10G 2/00
特許請求の範囲 【請求項1】
一酸化炭素と水素とを含む原料ガスを、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とPdとを含み、マグネシア、カルシアおよびシリカからなる群から選ばれる少なくとも一種を担体とする担持金属硫化物触媒に接触させて、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを得ることを特徴とする一酸化炭素の水素化法。
【請求項2】
一酸化炭素と水素とを含む原料ガスを、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とPdとを含み、マグネシア、カルシアおよびシリカからなる群から選ばれる少なくとも一種を担体とする担持金属硫化物および固体酸を含む触媒に接触させて、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを得ることを特徴とする一酸化炭素の水素化法。
【請求項3】
前記固体酸は、γ-アルミナである請求項2に記載の一酸化炭素の水素化法。
【請求項4】
前記原料ガスは、1~10000ppmの硫黄化合物を含有する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の一酸化炭素の水素化法。
【請求項5】
前記原料ガスにおける水素と一酸化炭素との比(H2/CO)は1~5であり、前記原料ガスと前記触媒との接触は、温度100~400℃、圧力0.1~10MPaの条件下で行なわれる請求項1ないし4のいずれか1項に記載の一酸化炭素の水素化法。
【請求項6】
前記原料ガスにおける水素と一酸化炭素との比(H2/CO)は3以下である請求項5に記載の一酸化炭素の水素化法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は,担持金属硫化物触媒を用いた一酸化炭素の水素化法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、石油、石炭、天然ガス、バイオマス、その他の炭素資源から有用な有機化学品を得る手段としては、次のような方法が工業的に行なわれている。まず、リフォーミング反応や石炭のガス化反応などによって、これらの炭素資源から一酸化炭素と水素とを含む混合ガス(合成ガス)を得る。次いで、こうした混合ガスを、特定の触媒の存在下、高温、高圧で反応させることにより、アルカンやアルケンなどの炭化水素、アルコール、およびエーテルなどの含酸素化合物に転換する。
【0003】
このようにして得られた有機化学品は、その製造プロセスの特性から、硫黄化合物や窒素化合物などを含まないため、各種燃焼用燃料として用いた場合には、有害物質の発生を抑制することができる。特に、工業的に合成ガスから大量に得られているメタノールは、ガソリン基材あるいは添加剤としてのみならず、最近は燃料電池用の水素源としても注目されており、より生産性の高い製造法が望まれている。
【0004】
上述したような合成ガスから炭化水素やアルコールなどを合成する反応には、CuやFeあるいはCoなどの金属を含む特定の触媒が用いられている。これらの触媒については、Studies in surface science and catalysis,vol.81,NATURAL GAS CONVERSION,H.E.Curry-Hyde,R.F.Howe,Elsevier(1994)などに詳しく記載されている。
【0005】
合成ガスからメタノールを合成するための触媒としては、商業的にはCu系触媒が最もよく使用されている。しかし、Cu以外にもRh、Pd、Ir、Ptなどもアルコール合成活性を示すことが知られており、さらにアルカリ金属、アルカリ土類金属、あるいは希土類を添加することによって、その合成活性が向上することも知られている。
【0006】
例えば、米国特許4,119,656号には、シリカ担持Pd(Pd/SiO2)によりメタノールを選択的に生成できることが記載されている。また、米国特許4,289,709号および4,289,710号には、Li、Mg、Sr、Ba、MoおよびCaがPd/SiO2のメタノール生成を促進することが記載されている。さらに、A.Gotti and R.Prins,Journal of Catalysis,175,302-311(1998)にも、CaやLaの添加により、Pd/SiO2の(メタノール+ジメチルエーテル)合成活性と選択性が格段に向上することが述べられている。
【0007】
これらのアルコール合成活性を示す金属の中でも、前述のCu系触媒は、比較的安価で入手しやすいことから、商業的に広く使用されている。しかしながら、Cu系触媒は、原料ガス中の種々の化学物質により劣化し、特に、硫化水素などの硫黄化合物に対しては、そのわずかな量の混入によって短時間で失活してしまう(硫黄被毒)。このため、工業的には、合成ガスの製造装置や一酸化炭素の水素化反応装置の前に脱硫設備を設けて、原料ガス中に含有される硫黄化合物をppbのオーダーの量まで低減しなければならない。その結果、前述の触媒を用いるには、プロセスが複雑化かつ高価なものとなることが避けられない。
【0008】
さらに、このような脱硫設備を設けたところで、何らかのトラブルにより硫黄化合物を含む原料ガスがアルコール合成反応系に流入すれば、高価な触媒がダメージを受け、新品と交換せざるを得ない事態にもなる。
【0009】
硫黄被毒に対する耐性を付与した触媒として、Mo、W、Re、Ru、Ni、Pd、Rh、Os、IrあるいはPtの硫化物、酸化物または金属と、アルカリまたはアルカリ土類金属化合物とを含む触媒を用いて、アルケン炭化水素を製造する方法が、特開昭55-139324および55-139325号公報に開示されている。ここでは、MoO3-K2O-カーボランダムからなる触媒に合成ガスを流通させ、その合成ガスが硫化水素20ppmを含む場合と含まない場合とで、活性およびガス相アルケン選択性に著しい変化がないことが実施例で述べられている。また、特公平4-51530および米国特許4,749,724号には、アルカリ金属やアルカリ土類金属を添加したMo、WあるいはReの硫化物が、原料ガスに硫化水素が混入していても10MPa前後の高圧下であれば、C1~C4のアルコールを生成することが述べられている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、合成ガスから合成燃料を得るために通常使用されている触媒は、硫黄被毒により失活するため、工業的には、反応に供する前に合成ガス中の硫黄分をppbオーダーまで低減しなければならない。また、従来のMo、WあるいはRe系硫化物触媒を用いる場合には、十分な活性や生成物選択性を確保するために、高圧の条件が必要とされる。
【0011】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであって、簡略化されたプロセスで温和な条件のもと、一酸化炭素を高い転化率で水素化し得る方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、一酸化炭素と水素とを含む原料ガスを、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とPdとを含み、マグネシア、カルシアおよびシリカからなる群から選ばれる少なくとも一種を担体とする担持金属硫化物触媒に接触させて、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを得ることを特徴とする一酸化炭素の水素化法を提供する。
【0013】
また、本発明は、酸化炭素と水素とを含む原料ガスを、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とPdとを含み、マグネシア、カルシアおよびシリカからなる群から選ばれる少なくとも一種を担体とする担持金属硫化物および固体酸を含む触媒に接触させて、メタノールおよび/またはジメチルエーテルを得ることを特徴とする一酸化炭素の水素化法を提供する。
【0014】
前記固体酸は、γ-アルミナが好ましい。
【0015】
前記担持金属硫化物触媒の担体は、マグネシア、カルシアおよびシリカからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0016】
本発明の一酸化炭素の水素化方法においては、原料ガスは、1~10000ppmの硫黄化合物を含有していてもよい。
【0017】
また、前記原料ガスにおける水素と一酸化炭素との比(H2/CO)は1~5であることが好ましく、前記原料ガスと前記触媒との接触は、温度100~400℃、圧力0.1~10MPaの条件下で行なわれることが好ましい。
【0018】
前記原料ガスにおける水素と一酸化炭素との比(H2/CO)は1~3であることがより好ましい。
【0019】
以下、発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明者らは、鋭意研究した結果、特定の担持金属硫化物触媒が、一酸化炭素の水素化に極めて有効に作用することを見出した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0021】
本発明において用いられる金属硫化物触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とPdとを含む。Pdに加えて特定の元素を含有しているので、本発明において用いられる金属硫化物触媒は、メタノール合成活性、特に原料ガス中に硫黄化合物が存在する場合の同活性を向上させることができた。この硫化物触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素とPdとを含む前駆体を、必要に応じて硫化処理することにより得られる。
【0022】
硫化処理は、こうした前駆体を水素化反応器に充填した後に行なうことができる。すなわち、硫化水素、チオフェンなどの硫化剤を流通させながら、150~250℃まで徐々に加熱し、次いで徐々に所定の実操作温度に加熱し、この実操作温度で1~4時間保持する処理が挙げられる。さらに、原料ガス中の高濃度の硫黄化合物によって、水素化反応中に前述の前駆体を硫化して使用することも可能である。
【0023】
本発明に用いられるPd化合物としては、パラジウムブラック、パラジウム炭素、パラジウム炭酸カルシウムなどの金属パラジウム、テトラクロロパラジウム酸アンモニウム(NH42PdCl4、硝酸テトラアンミンパラジウムPd(NH34(NO32、テトラアンミンパラジウム塩化物Pd(NH34Cl2、テトラアンミンパラジウム臭化物Pd(NH34Br2、ジクロロジアンミンパラジウムPdCl2(NH32、ジアンミンジニトロパラジウム(NH32Pd(NO22、酢酸パラジウムPd(CH3COO)2、酸化パラジウムPdO、シアン化パラジウムPd(CN)2、塩化パラジウムPdCl2、臭化パラジウムPdBr2、ヨウ化パラジウムPdI2、硝酸パラジウムPd(NO32、水酸化パラジウムPd(OH)2、硫酸パラジウムPdSO4、硫化パラジウムPdS、PdS2、ビス(アセチルアセトナト)パラジウムPd(C5722、ビス(エチレンジアミン)パラジウム塩化物Pd(C2822Cl2、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウムPd(PPh34、テトラシアノパラジウム酸カリウムK2Pd(CN)4、テトラクロロパラジウム酸リチウムLi2PdCl4、テトラクロロパラジウム酸カルシウムCaPdCl4などのパラジウム錯体や塩などが挙げられる。
【0024】
また、アルカリ金属、アルカリ土類金属、および希土類としては、Na,K,Ca,Mg;La,Thなどのランタノイド、アクチノイドなどが挙げられる。これらの元素は、単独でも二種以上を組み合わせて用いてもよい。こうしたアルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素は、Pd化合物や担体の一成分として予め含有させることができる。あるいは、後の工程で添加してもよい。
【0025】
アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類からなる群から選ばれる少なくとも一種の元素の量は、Pdに対してモル数で0.01~10mol/molの範囲であることが好ましい。0.01mol/mol未満の場合には、活性向上効果が少ない。一方、10mol/molを越えると、活性が逆に低下するおそれがある。こうした元素の量は、Pdに対してモル数で0.1~1mol/molの範囲であることがより好ましい。また、後の工程で添加する場合には、塩化物、臭化物などのハロゲン化物、酸化物、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの無機酸塩、アンモニウム塩、酢酸塩などの有機酸塩、カルボニル化合物あるいはキレート錯体などを、Pd化合物と同時にあるいは逐次的に担体に担持させることによって行なうことができる。
【0026】
本発明における担持金属硫化物触媒の担体としては、シリカ、アルミナ、弗素化アルミナ、ボリア、カルシア、マグネシア、チタニア、ジルコニア、シリカ-アルミナ、アルミナ-マグネシア、アルミナ-ボリア、アルミナ-ジルコニア、シリカ-カルシア、珪素アルミノホスフェート、ゼオライト、希土類金属酸化物等の無機酸化物、あるいはモンモリロナイト、カオリン、ハロイサイト、ベントナイト、アタバルジャイト、カオリナイト、ナクライト、アノーキサイト等の粘土鉱物、あるいはカーボン等を挙げることができる。担体に担持させているので、本発明における金属硫化物触媒は、金属単位質量当たりの活性を向上させることができた。こうした担体は、比表面積が10m2/g以上であることが好ましく、100m2/g以上であることがより好ましい。担体の比表面積が100m2/g以上であると、活性金属を有効に分散担持することができるので、生成される合成燃料の収量を著しく増加させることができる。
【0027】
これらの担体は、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。特に、マグネシア、カルシア、およびシリカは、金属単位質量当たりの活性向上効果が大きいので好ましい担体である。
【0028】
担体には、ホウ素やリン等の非金属元素がさらに添加されていてもよい。担体への活性金属化合物の担持は、例えば、湿式含浸法、乾式含浸法、減圧含浸法、およびイオン交換法などの常法にしたがって行なうことができる。
【0029】
担持金属量は、担体の性状等により変動し、一概には決められるものではないが、触媒全量に対して1質量%~30質量%の範囲であることが好ましく、1質量%~10質量%であることがより好ましい。担持量が前述の値よりも少ない場合には、触媒単位質量当たりの活性(一酸化炭素転化率)が十分に得られないおそれがある。一方、前述の値よりも多い場合には、金属硫化物が凝集して金属単位質量当たりの活性が低くなるおそれがある。
【0030】
上述したような金属硫化物は、固体酸と組み合わせて複合触媒として用いることもできる。固体酸としては、例えば、アルミナ、アルミナ-シリカ、アルミナ-ボリア、アルミナ-マグネシア、シリカ-マグネシア等の酸化物、X型、Y型、MFI型、モルデナイト等のゼオライトやモンモリロナイト等の粘土鉱物等が挙げられ、特にγ-アルミナが好ましい。この固体酸は、金属硫化物触媒の担体あるいは金属硫化物触媒との物理混合による複合触媒として、好ましく使用することができる。
【0031】
このように固体酸との複合触媒として金属硫化物を用いることによって、ジメチルエーテル(DME)を合成ガスから一段のプロセスで合成することが可能となる。DMEは、次世代のディーゼル燃料として期待されており、現在はメタノールを合成した後、さらにその脱水反応を行なうという二段プロセスによって商業的に合成されている。
【0032】
本発明のような金属硫化物・固体酸複合触媒を用いることにより、合成ガスから一段のプロセスでDMEを合成することが可能となる。
【0033】
本発明においては、上述のような金属硫化物触媒の存在下、一酸化炭素と水素とを含む原料ガスを流通・反応させて合成燃料、例えばメタノールを得る。なお、前述の複合触媒を用いる場合には、DMEが得られる。用いられる原料ガスの組成は、水素/一酸化炭素比が1~5であることが好ましく、1~3であることが好ましい。これは、次のような根拠によるものである。すなわち、(1)メタノール合成反応(CO+2H2=CH3OH)の水素/一酸化炭素比は2であること、(2)天然ガス等のリフォーミング反応により製造される合成ガスの水素/一酸化炭素比は通常1以上であり、ほとんどが水素過剰であること、の2つの根拠による。
【0034】
本発明において用いられる金属硫化物触媒には、Ti,V,Mn,Fe,Co,Zr,Mo,Ru,およびRhなどの金属が、本発明の効果を損なわない範囲で含有されていてもよい。こうした成分の含有量は、その種類等に応じて適宜決定されるが、通常、金属硫化物触媒100質量部に対して0.1~100質量部であることが望まれる。
【0035】
なお、原料ガスには、一酸化炭素および水素に加えて硫黄化合物が含有されていてもよい。硫黄化合物の濃度は、好ましくは1~10000ppm、より好ましくは100~2500ppm、最も好ましくは100~500ppmである。
【0036】
また、触媒と原料ガスとの反応温度は、好ましくは100~400℃、より好ましくは250~350℃である。また反応圧力は、好ましくは0.1~10MPa、より好ましくは1~7MPaである。
【0037】
本発明においては、一酸化炭素と水素とを含む原料ガスから合成燃料を得るに当たって、特定の担持金属硫化物触媒の存在下で流通・反応させているので、低圧の温和な条件下で高活性、高生成物選択性が得られる。
【0038】
しかも、本発明において用いられる触媒は、硫黄被毒しにくいため、硫化水素などの硫黄化合物を含有する原料ガスを、脱硫なしで、あるいは軽度の脱硫処理によって反応に供することができる。したがって、合成燃料の製造プロセスの簡略化を図ることが可能となった。
【0039】
【実施例】
以下、実施例および比較例を示して、本発明をさらに詳しく説明する。
【0040】
実施例および比較例においては、次の反応装置および合成ガスを用いて触媒の活性を評価した。
【0041】
活性評価条件
反応装置:固定床高圧流通反応装置
合成ガス組成:一酸化炭素33%/水素62%/アルゴン5%
実施例1(硫化Ca-Pd/SiO2
まず、A.Gotti and R.Prins,Journal of Catalysis,175,302-311(1998)の方法を参考に、湿式含浸法により、Pd/SiO2を調製した。具体的には、比表面積272m2/gのSiO2 3gに、10質量%硝酸テトラアンミンパラジウム(Pd(NH34(NO32)水溶液3.8mlを含浸し、これを60℃で3.5時間、次いで95℃で3.5時間、さらに120℃で7時間乾燥した。その後、450℃で2時間焼成して、Pd/SiO2を得た。
【0042】
得られたPd/SiO2のPd担持量は4.5質量%であった。
【0043】
このPd/SiO2に、Ca/Pdモル比が0.5になるように、硝酸カルシウム(Ca(NO32・4H2O)を含浸し、60℃で3.5時間、次いで95℃で3.5時間、さらに120℃で7時間乾燥して、Ca-Pd/SiO2を得た。
【0044】
このCa-Pd/SiO2をステンレス製反応器に充填し、常圧下5℃/minで昇温して400℃に保持しつつ、5%硫化水素/水素ガスを流速12Nm3/kg-触媒/hにてH2S/Pdモル比が180になるまで流した。その後、室温まで降温し、流通ガスを合成ガスに切り替えて、5℃/minにて340℃まで昇温した。合成ガスの流速は20Nm3/kg-触媒/h、圧力は5.1MPaであった。
【0045】
反応が定常に達した時点において、生成メタノールの収量は229g/kg-触媒/h、選択率は90C-mol%であった。
【0046】
実施例2(硫化La-Pd/SiO2
硝酸カルシウムを硝酸ランタン(La(NO33・6H2O)に変更した以外は、前述の実施例1と同様の手法により触媒調製と合成反応を行なった。
【0047】
反応が定常に達した時点において、生成メタノールの収量は210g/kg-触媒/h、選択率は64C-mol%であった。
【0048】
実施例3(硫化Ca-Pd/SiO2
比表面積560m2/gのSiO24gに、10質量%硝酸テトラアンミンパラジウム(Pd(NH34(NO32)水溶液1 mlを含浸し、60℃で3.5時間、次いで95℃で3.5時間、さらに120℃で7時間乾燥した。この含浸と乾燥との操作を4回繰り返した後、450℃で2時間焼成して、Pd/SiO2を得た。
【0049】
このPd/SiO2のPd担持量は4.5質量%であった。
【0050】
このPd/SiO2 1gに、Ca/Pdモル比が0.1になるように、硝酸カルシウム(Ca(NO32・4H2O)を含浸し、60℃で3.5時間、次いで95℃で3.5時間、さらに120℃で7時間乾燥して、Ca-Pd/SiO2を得た。
【0051】
実施例1と同様の条件で硫化処理と合成反応を行なったところ、定常メタノール収量420g/kg-触媒/h、選択率85C-mol%を得た。
【0052】
実施例4(硫化Ca-Pd/SiO2
Ca/Pdモル比を0.1から0.5に変更し、合成反応温度を340℃から320℃に変更し、合成ガス流量を20Nm3/kg-触媒/hから30Nm3/kg-触媒/hに変更した以外は、実施例3と同様に触媒調製と合成反応を行なった。
【0053】
定常メタノール収量は730g/kg-触媒/h、選択率は93C-mol%であった。
【0054】
比較例1(Pd/SiO2
前述の実施例1と同様の手法によりPd/SiO2を調製した。
【0055】
このPd/SiO2の一部をステンレス製反応器に充填し、5℃/minで昇温して450℃に保持しつつ、水素ガスを流速18Nm3/kg-触媒/hで3時間流した。圧力は0.3MPaであった。その後、室温まで降温し、流通ガスを合成ガスに切り替えて、2.5℃/minにて340℃まで昇温した。合成ガスの流速は19Nm3/kg-触媒/h、圧力は5.1MPaであった。
【0056】
反応が定常に達した時点において、生成メタノールの収量は220g/kg-触媒/h、選択率は86C-mol%であった。
【0057】
一方、上記Pd/SiO2をステンレス製反応器に充填し、常圧下5℃/minで昇温して400℃に保持しつつ、5%硫化水素/水素ガスを流速12Nm3/kg-触媒/hにてH2S/Pdモル比が180になるまで流した。その後、室温まで降温し、流通ガスを合成ガスに切り替えて、5℃/minにて340℃まで昇温した。合成ガスの流速は20Nm3/kg-触媒/h、圧力は5.1MPaであった。
【0058】
反応が定常に達した時点において、生成メタノールの収量は60g/kg-触媒/h、選択率は73C-mol%であった。
【0059】
比較例1から、Pd単体は硫化処理を施したことにより、メタノール収量が約1/4に減少したことがわかる。これに対して、アルカリ金属、アルカリ土類金属または希土類をPdとともに含む本発明(実施例1~4)の硫化物触媒は、Pd/SiO2の同等から3倍以上、硫化Pd/SiO2の4~12倍の活性を示している。
【0060】
実施例5
前述の実施例4と同様に触媒を調製し、合成反応を行なった。
【0061】
反応が定常に達した後、濃度100ppmの硫化水素を連続して導入した。硫化水素導入前の定常活性と硫化水素導入中の活性を比較したものを下記表1に示す。なお、表1に示した硫化水素導入中の活性は、導入した硫化水素の量が反応器に充填したPdのモル数に対してH2S/Pd=0.2および6.0となったときのものである。
【0062】
比較例2(市販のメタノール合成触媒)
粒度を32から42メッシュにそろえた市販のメタノール合成触媒(酸化銅60質量%、酸化亜鉛30質量%、酸化アルミナ10質量%)を用意した。
【0063】
この触媒を反応器に充填し、流速6Nm3/kg-触媒/hの合成ガス気流中、常圧で室温から120℃まで4℃/minで昇温し、120℃で90min保持した。次いで、210℃まで1℃/minで昇温して、210℃で12時間保持した後、さらに1℃/minで240℃まで昇温し、圧力5.1MPaの条件下で反応を開始した。
【0064】
はじめに硫化水素を含まない合成ガスを用いて反応を行ない、定常活性に達した後、濃度200ppmの硫化水素を導入した。硫化水素導入前の定常活性と硫化水素導入中の活性を比較したものを下記表1に示す。なお、表1に示した硫化水素導入中の活性は、導入した硫化水素の量が反応器に充填したCuのモル数に対してH2S/Cu=0.2および0.3となったときのものである。
【0065】
【表1】
JP0003742816B2_000002t.gif【0066】
表1に示された結果から、CaとPdとを含む担持金属硫化物触媒を用いた本発明の方法(実施例5)においては、硫化水素を導入する前のみならず導入中も、市販のメタノール触媒(比較例2)を上回る量のメタノールを生成することがわかる。また、多量の硫化水素を導入しても、本発明による触媒は、ほぼ一定のメタノール収量を与えることがわかる。
【0067】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、簡略化されたプロセスで温和な条件のもと、一酸化炭素を高い転化率で水素化し得る方法が提供される。
【0068】
本発明の方法は、天然ガスや石炭、重質油、炭層メタン、バイオマスなどを改質して得られる合成ガスから、メタノールあるいはジメチルエーテルを得るために極めて有効に用いることができ、その工業的価値は絶大である。