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明細書 :2次元放射線分布測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3595845号 (P3595845)
公開番号 特開2003-035683 (P2003-035683A)
登録日 平成16年9月17日(2004.9.17)
発行日 平成16年12月2日(2004.12.2)
公開日 平成15年2月7日(2003.2.7)
発明の名称または考案の名称 2次元放射線分布測定方法
国際特許分類 G01N 23/04      
C09K 11/00      
G01T  1/00      
G21K  4/00      
C09K 11/64      
FI G01N 23/04
C09K 11/00 B
G01T 1/00 B
G21K 4/00 M
C09K 11/64
請求項の数または発明の数 12
全頁数 14
出願番号 特願2001-223409 (P2001-223409)
出願日 平成13年7月24日(2001.7.24)
審査請求日 平成13年7月24日(2001.7.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】内田 俊介
【氏名】佐藤 義之
【氏名】古渡 意彦
審査官 【審査官】▲高▼場 正光
参考文献・文献 特開平09-280840(JP,A)
調査した分野 G01N23/00-23/227
A61B 6/00- 6/14
特許請求の範囲 【請求項1】
放射線源から供試体に放射線を照射し、
前記供試体を透過した放射線分布を蓄光体フイルムに保存し、
前記放射線分布が保存された蓄光体フイルムからの発光量分布をカメラシステムにより電気的信号に変換し、
前記発光量分布を放射線照射時間、照射後測定までの時間を含む条件に基づいて補正することにより、線量率分布を絶対値で定量化することを特徴とする2次元放射線分布測定方法。
【請求項2】
前記蓄光体フイルムは、前記放射線源及び前記カメラシステムに対して着脱可能であることを特徴とする請求項1記載の2次元放射線分布測定方法。
【請求項3】
前記蓄光体フィルムの発光効率を増大させるために、前記蓄光体フイルムの背面に前記蓄光体フィルムよりも密度の大きな散乱板を設置することを特徴とする請求項1記載の2次元放射線分布測定方法。
【請求項4】
請求項1の2次元放射線分布測定方法により前記供試体に対して複数方向から取得した複数の線量率分布に基づいて、断層像データを再構成することを特徴とする放射線透過型3次元断層像撮影方法。
【請求項5】
前記放射線源はγ線源であることを特徴とする請求項4記載の放射線透過型3次元断層像撮影方法。
【請求項6】
前記γ線源と前記蓄光体フイルムの位置をレーザ反射法で計測することを特徴とする請求項5記載の放射線透過型3次元断層像撮影方法。
【請求項7】
供試体に放射線を照射する放射線源と、
前記供試体を透過した放射線分布を保存する蓄光体フイルムと、
前記放射線分布が保存された蓄光体フイルムからの発光量分布を電気的信号に変換するカメラシステムと、
前記発光量分布を放射線照射時間、照射後測定までの時間を含む条件に基づいて補正することにより、線量率分布を絶対値で定量化する手段とを具備することを特徴とする2次元放射線分布測定装置。
【請求項8】
前記蓄光体フイルムは、前記放射線源及び前記カメラシステムに対して着脱可能であることを特徴とする請求項7記載の2次元放射線分布測定装置。
【請求項9】
前記蓄光体フィルムの発光効率を増大させるために、前記蓄光体フイルムの背面に設置される前記蓄光体フィルムよりも密度の大きな散乱板をさらに備えることを特徴とする請求項7記載の2次元放射線分布測定装置。
【請求項10】
請求項7の2次元放射線分布測定装置を備える放射線透過型3次元断層像撮影装置であって、前記供試体に対して複数方向から取得した複数の線量率分布に基づいて、断層像データを再構成することを特徴とする放射線透過型3次元断層像撮影装置。
【請求項11】
前記放射線源はγ線源であることを特徴とする請求項10記載の放射線透過型3次元断層像撮影装置。
【請求項12】
前記γ線源と前記蓄光体フイルムの位置をレーザ反射法で計測することを特徴とする請求項11記載の放射線透過型3次元断層像撮影装置。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線透過法による構造材料の非破壊検査を目的とした放射線測定方法に係わり、特に橋梁支柱の如く固定された大型構造物の2次元ディジタル・ラジオグラフを簡便に取得する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
構造物の内部の様子を探る非破壊測定は、大きく超音波反射法とX線透過法に二分される。なかでもX線透過法としては、医療用の比較的低エネルギーのX線を用いたX線透過から高エネルギーのX線を用いた鉄鋼部材の欠陥検査装置までさまざまなものが使用されている。最近では人体主要部位の断層像を撮像するX線CT(Computational Tomography,コンピューテーショナル・トモグラフィ)が普及し、脳、心臓、肺といった部位における異常の早期診断に威力を発揮している。また、自動車のエンジン、ロケットの筺体といった大型構造物の欠陥検査にも透過能の高い高エネルギーのX線を用いたX線CT装置が開発され、構造中の外からは検知できない微小な欠陥の測定に威力を発揮している。また、考古学資料のような貴重な品目の内部構造、材質の検査などにもX線CT装置の使用実績が数多く報告されている。
【0003】
図1に、従来の典型的なX線CT装置の概要構成を示す。X線CT装置では、X線発生源1と複数のX線検出器2とを、検査対象物又は被検体を挟んで相対して配置し、検査対象物を透過したX線を複数の検出器2で測定し、さらにX線源1を任意に移動(回転)させて、任意の断平面の透過像を多数の角度から測定し、集積する。集積された透過像測定データを計算機で処理し、元の構造の密度(X線透過能)の空間分布として再構成し、断面像を求める。
【0004】
装置の主要構成は、X線源1、検出器2、検出回路3、AD変換機4、X線源1と検出器2の位置を制御する位置制御装置5、測定データを蓄積するメモリ6、測定データから断層像再構成する専用ハードウエア7、システム全体を制御するCPU8、断層像、GUI(グラフィカルユーザインタフェース)等を表示するためのモニタ9、コンソール(操作卓)10、X線源1に対する管電圧を発生する高電圧発生装置11から構成される。
【0005】
透過X線の測定には、小型で分解能が高く、検出効率の高いシンチレーション検出器が使用されることが多い。人体のように長時間固定化の難しい対象物の撮像のためには、1断面の断層像取得のためには1秒以内という高速での撮像が可能となっている。自動車のエンジンといった人工物の断層像撮像の場合も基本構成は同様である。
【0006】
人体の場合には対象物質が、骨を除くとほぼ水と等価な密度を有する低密度物質から構成され、しかも透過厚さも高々数10cmにしか過ぎないため、数10keV程度の低エネルギーX線の使用で十分であり、線源強度も人体への影響が医学上問題のない程度で十分に撮影可能である。一方、大型構造材の場合には、構造材を構成する素材密度が鉄(密度7.8g/cm)を中心とした高密度物質であり、対象とする構造の寸法も数10cmから数100cmにも達するため、使用されるX線のエネルギーも数100keVから数10MeVにも達すると共に、線源強度を10GBq以上もの人体にとって耐えられないような値に設定することが必要となることが多い。
【0007】
X線CT装置の場合、3次元の構造物内部の情報を得るためには、通常は一度に3次元情報を得るのではなく、構造物を幾層もの断層に分けて測定し、それらの断層情報を合成することにより、全体として3次元像を取得する。このためには、何段階にもわたる断層像撮影が必要となるが、透過像を2次元分布として測定することにより、一度の測定で数段の断層を得ることが可能となる。
【0008】
X線CT装置の基礎になる技術が、構造材を透過した放射線分布の測定技術である。特に、透過X線分布を2次元で測定することが重要となる。さらに、X線CT装置においては、透過X線を計算機により画像として再構成することが必須となるため、測定結果を計算機処理に対応できるようにディジタル化しておくことが必須となる。
【0009】
代表的な放射線分布の測定手法のひとつがX線カメラの採用である。図2(a)、図2(b)、図2(c)にはX線撮像システムのバリエーションを示している。図2(a)に示した例では、X線源21からコーンビーム形のX線を被検体に照射し、この被検体を透過したX線の2次元分布をイメージ・インテンシファイヤ(I.I.)23で光学情報に変換し、イメージ・インテンシファイヤ23の発光をビジコンカメラ23で撮影することにより、ディジタルデータとして取り込むことが可能となる。
【0010】
一般に、イメージ・インテンシファイヤ23は厚みが検出系の容量を大きくするという欠点があるため、図2(b)に示した例のように、蛍光板25でX線を可視光に変換し、蛍光板25での発光をイメージオルシコンカメラ26で撮像する手法が採用される例もある。また、図2(c)に示した例のように、蛍光板25での発光をCCDカメラ27で撮像する手法が採用される例もある。いずれの方式でも必要な感度は確保され得るが、大型となる欠点を有する。
【0011】
高速での撮像のためには、高感度シンチレーション検出器が使用される。シンチレーション検出器の場合には、個々の検出器がシンチレータと光電子増倍管の組合せで構成されるため、小型化に難がある。
【0012】
このように従来の測定では検出器の小型化に難があり、高感度と高分解能がトレードオフの関係となる。
【0013】
X線の2次元分布を求めるためには、通常のシンチレーション検出器の揚合には、1次元方向に配列するのみではなく、2次元方向にアレイ状に配することが必要となる。
【0014】
従来のX線CT装置は、いずれもCT装置が固定されており、被検体をX線CT装置内に挿入した状態で、精細な断層像、さらには3次元の内部情報のためのデータ(投影データ)を取得するものである。
【0015】
橋脚などの大型構造物において、鉄筋の欠陥あるいは劣化等が、震災時に大きな2次災害の要因となることが指摘されている。こういった検査対象物が大型の場合、その検査対象物を移送し、X線CT装置にかけることが本質的に困難であるため、逆にX線CT装置を検査対象物に設置して、CT像を得ることが必要な場合が生ずる。こういった場合には、必ずしも断層像をとることだけが必要ではなく、まずは透過像(ディジタル・ラジオグラフ)を取得し、可能であればこれらの透過像を合成して、CT像を得ることが要求される。
【0016】
このような場合を、模式化したX線CT装置の構成を図3に示す。特に、橋脚などの屋外においての撮像を想定すると、X線源1を任意の点に固定し、透過X線分布を2次元の透過像(ディジタル・ラジオグラフ)として取得し、複数の入射点についてのデータを集め、計算機処理することによりCT像として再構成可能となる。この場合、2次元の透過X線分布の測定値は、照射されたその場でデータ化されることが必須ではなく、撮影された結果を別の場所に運び、そこで2次元の透過像(ディジタル・ラジオグラフ)としてデータ化できれば、目的を達成することができる。すなわち、撮影とデータ処理を切り離して、対応することが許容される。
【0017】
この場合の透過像(ディジタル・ラジオグラフ)取得の概要を図2(c)に例示する。こういった透過X線の2次元分布測定に最も適しているのは、薄型のX線フイルム、イメージングプレートであるが、X線フイルムではデータのディジタル化がフイルムの現像後ディジタイザにかける必要があると共に、黒化度の線形性の補正が煩雑であるという欠点を有している。また、イメージングプレートではデータの読み出しにレーザ露光器などの設備が不可欠である。蛍光板を用いると非常に簡単であるが、蛍光量は時間と共に減衰し、1枚の蛍光版における相対的な透過像を解析、評価する場合には適用可能であるが、CT像を得る場合には複数の正確なX線分布の評価が難しい。この場合、複数の透過像(ディジタル・ラジオグラフ)の絶対値を取得することが必須となる。熱蛍光線量計材料をフイルム状に加工して、X線の2次元分布を測定することも可能ではあるが、発光量測定のためには高温に加温することが必要で、大きなフイルム状検出器を均一に加温することが難しく実用化が難しい。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、蓄光フィルムの上の透過像の絶対値を取得することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1局面に係る2次元放射線分布測定方法は、放射線源から供試体に放射線を照射し、前記供試体を透過した放射線分布を蓄光体フイルムに保存し、前記放射線分布が保存された蓄光体フイルムからの発光量分布をカメラシステムにより電気的信号に変換し、前記発光量分布を放射線照射時間、照射後測定までの時間を含む条件に基づいて補正することにより、線量率分布を絶対値で定量化することを特徴とする。
本発明の第2局面に係る2次元放射線分布測定装置は、供試体に放射線を照射する放射線源と、前記供試体を透過した放射線分布を保存する蓄光体フイルムと、前記放射線分布が保存された蓄光体フイルムからの発光量分布を電気的信号に変換するカメラシステムと、前記発光量分布を放射線照射時間、照射後測定までの時間を含む条件に基づいて補正することにより、線量率分布を絶対値で定量化する手段とを具備することを特徴とする。
【0020】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の実施形態の概要について簡単に説明する。本実施形態では、放射線透過法による構造材料の非破壊検査、特に2次元あるいは3次元断層像の取得のための基礎データとなる物質を透過した放射線線量の2次元分布のディジタル情報を得るために、測定媒体として蓄光体を用いて、測定対象とする構造物を透過した放射線線量を蓄光体が吸収した放射線線量に比例して発光する発光量を測定し、その発光量分布をディジタル化して、当該2次元透過放射線線量分布のデータを補完、管理、再加工可能としている。
【0021】
更に、数式化した蓄光体発光量の照射時間および減衰時間特性を用いて複数の蓄光体で測定された2次元透過放射線線量分布のデータをそれぞれの照射時間および減衰時間について補正することにより規格化して、当該複数の2次元放射線透過像により2次元あるいは3次元断層像を再構成することを可能ならしめる。
【0022】
上述した透過X線の2次元分布を測定する測定媒体として、蛍光体の一種である蓄光体(例えば、SrAl:Eu2+,Dy3+粉体)を採用し、蓄光体をフイルム状に加工して用いることにより、X線の2次元分布の測定を容易にすると共に、蓄光体の発光特性およびその発光機構を解明して、照射時間及び照射後測定までの時間から、透過X線の絶対値を求める手法を確立し、さらにディジタルカメラを用いて発光量をディジタルデータ化することにより、ディジタル・ラジオグラフを簡便に取得する手法を可能とする。
【0023】
アレイ型シンチレーション検出器の使用に比べ小型、軽量であり、屋外での撮影での機動性に優れ、天候による検出器の動作不良、クロストーキング等の干渉を受けることなく、取扱が容易である点が優れている。データ処理、画像再構成などの作業は、蓄光体フイルムを搬送し、屋内でじっくり実施することが可能である。
【0024】
以下、本発明による2次元放射線分布測定方法の一実施形態について図4乃至図18を参照して詳細に説明する。まず、蓄光体の発光特性及び発光機構について説明する。
【0025】
蓄光体は、紫外線、X線、γ線などの電離放射線を照射することにより励起されて蛍光を発する。本実施形態では蓄光体の代表的な例として、SrAl:Eu2+,Dy3+粉体をとりあげて説明する。図4に、蓄光体の発光特性を示す。蓄光体は、放射線照射を受けて瞬時に光を発するのではなく、若干の時間遅れをもって蛍光を発する。このため、照射期間中にも発光を伴うが、放射線エネルギーの蓄積と蛍光発光によるエネルギー放出とがバランスするまでその強度は照射期間中に徐々に増大する。放射線照射が停止すると、エネルギー蓄積が停止し、蓄積されていたエネルギーが蛍光としてその強度を減少させつつ放出される。
【0026】
蓄光体の放射線吸収線量に対する全発光量(遅れて発光する成分をすべて積算した発光量)を図5に示す。全発光量と吸収線量とは線形関係を示し、線量率依存性もなく、全吸収線量で全発光量が決まる。
【0027】
図6は発光量の線質依存性を示したものである。γ線、β線ではエネルギー付与密度が低く、蓄光体内での電子とホールの再結合確率が低いため、発光効率が高く、発光強度が大きいが、α線ではエネルギー付与密度が高く、蓄光体内での電子とホールの再結合確率が高いため、発光効率が低くなる。γ線あるいはX線を吸収する際には、周辺物質からのβ線あるいは電子線を伴うが、その発光効率がほぼ等しい。
【0028】
図7は発光量の時間プロファイルを示したものであるが、照射量が同じ場合、照射温度が高いほど発光量が多くなる。すなわち、発光特性が照射温度によって異なる点に留意することが必要となる。
【0029】
蓄光体のエネルギー蓄積と発光機構を図8に示す。蓄光体に放射線が照射されると、蓄光体中で初期電離が生じ、フリーな電子と正空孔(ホール)の対が形成される。このうち電子はEuに蓄積され、Eu2+をEu1+に励起する。一方、ホールはDyに蓄積され、Dy3+をDy4+に励起する。このうちDyに捕獲されたホールがDyから脱離し、Euに捕獲されている電子と再結合し、この際Euは励起状態から基底状態に落ち込む際に、余剰エネルギーを蛍光として放出する。この電子およびホールの捕獲過程と再結合過程が蓄光体の蛍光特性を支配する。ホールを捕獲するDyサイトに複数の準位があり、捕獲されたホールを放出する過程で、低準位に捕獲されたものは低温で、高順位に捕獲されたものはより高温で放出されるため、上記のような発光特性の温度依存性が観測される。
【0030】
図9は室温で照射した蓄光体の温度を室温から400K、まで上昇させつつ、発光量を測定したもので、400K到達後は温度を400Kに保って、発光量を追跡した。発光量の温度プロファイルは複雑な形状を示すが、このプロファイルは、図9に示すように4つの成分、すなわち非常に早い成分(uf成分)、早い成分(f成分)、中位の成分(m成分)および遅い成分(s成分)に分割される。蓄光体の発光量の時間成分のうち照射停止後のプロファイル(残光過程プロファイル)を4つの成分に分解し、それぞれの減衰定数を求めた結果を図10に示す。さらに照射温度を変えて4成分の減衰定数を求め、これらをアレニウスプロットした結果を図11に示す。この結果より、各成分の活性化エネルギーを求めた結果、以下のようになる。
【0031】
s成分(0.34eV)
m成分(0.17eV)
f成分(0.094eV)
uf成分(0.024eV)
蓄光過程における発光率I(t)は、次式で求めることができる。
【0032】
【数1】
JP0003595845B2_000002t.gif【0033】
ここに、I:蓄光過程における発光率
Γ:吸収線量率
:i番目の実効正孔生成率
λ:i番目成分の減衰定数
:照射時間
t:照射中の時間[0<t<t
k:発光効率等の定数
また、実効正孔生成率は、次のように求まる。上下行を対照して参照されたい。
【0034】
JP0003595845B2_000003t.gif残光過程における発光率I(t)は、次式で求められる。
【0035】
【数2】
JP0003595845B2_000004t.gif【0036】
ここに、IFi:i番目成分の蓄光過程における発光率
:照射停止時における発光率
:経過時間
:照射時間
この結果、T時間照射された蓄光体からの全発光量Iは次式で求められる。
【0037】
【数3】
JP0003595845B2_000005t.gif【0038】
ここに、定数k :定数
蓄光体の物性値として、あらかじめ各成分について実効正孔生成率Rと減衰定数λならびに発光効率等の定数kを求めておくと、t時間照射し、t時間経過後の発光量I(t)を測定することにより吸収線量率を求めることができる。
【0039】
本実施形態で取り上げた蓄光体、SrAl:Eu2+,Dy3+、は粉体として供給されるが、ポリスチレンバインダと混合し、フイルム状に整形することが可能である。こうした蓄光体フイルム(蓄光体含有率53%)31を紫外線遮光のための遮光袋33に挿入して、図12に示すように、供試体を挟んで線源35の反対側に配置し、所定時間照射する(蓄光する)。この際、照射は室温で行うと共に、照射温度、照射時間および照射終了時間を記録することが重要となる。
【0040】
所定時間放射線に照射後、蓄光体フイルム31を暗室あるいは遮光容器内で遮光袋33から取り出し、フイルム31の発光量(蛍光量)をCCDカメラ37あるいはディジタルカメラで測定し、発光量の2次元分布39を求める。こうして求めた発光量の2次元分布39をディジタル化処理41を通して、先に示した(3)式に基づいた補正計算処理43を施し、線量率の2次元分布45を求める。CCDカメラ37あるいはディジタルカメラの出力からは、容易にディジタルデータとして発光量の2次元分布の取得が可能であり、こうしたディジタルデータを用いてパソコンで、(3)式に基づいて、線量率分布45への換算が可能となる。こうした線量率測定が終了した後、蓄光体フイルムは約150°Cに加熱することにより、蓄積されたエネルギーをすべて放出することが可能で、その結果本蓄光体フイルム31はバインダであるポリスチレンの機械強度低下による寿命に到達するまで繰り返し、線量率分布測定に使用することができる。
【0041】
図13にはテストパターンについて照射された蓄光体フイルム31からの発光量2次元分布39をCCDカメラ37で撮影した結果を示す。
【0042】
図14には、CCDカメラ37あるいはディジタルカメラで測定された蓄光体フイルムの発光量分布データのディジタルデータ化プロセス41を示す。走査線に沿っての発光量データをモノクロの発光量データとして取り込み、走査線に沿っての位置xの関数I(x) として、収納することにより、計算機内において任意の演算操作が可能となる。
【0043】
大型構造物のディジタル・ラジオグラフを取得するためには、供試体の厚さとその密度の席で決まる実効透過厚さに対応してX線あるいはγ線のエネルギーを増大させる必要がある。一方、蓄光体フイルム31を用いた吸収線量測定では、入射する放射線のエネルギー増大に伴い放射線の吸収効率が低下する。X線あるいはγ線は物質で給される際、いったん物質を構成する原子の軌道をはじき出し、このはじきだされた電子の運動エネルギーを吸収する形でエネルギーを吸収する。薄い試料の場合、試料単独ではなく試料の背面に散乱物質を設置することで吸収線量が増大する。図15には、試料背面に戦地下物質の密度を変えて吸収線量を測定したものである。背面物資が空気の場合に比べ、密度にほぼ比例して吸収線量が増大する。
【0044】
図16に示すように、蓄光体フイルム31の背面に散乱板47を配置することにより、放射線線量吸収率を増大させることができる。照射時には鉄のような板47を蓄光体フイルム31の背面におくことにより、放射線線量吸収効率、ひいては発光効率を増大させる効果が得られる、あわせて蓄光体フイルム31の平面度、あるいは行っての曲率を保つためにも、本背面物質の採用は好適である。
【0045】
次に、本蓄光体フイルム31を用いたX線CT装置についての実施形態を示す。図17に示すように、供試体に対し、X線源35の設置位置を同一平面上に複数決める。断層像の精彩度を高めるためには線源位置を多く取ることが好ましい。X線源35の位置が決まると、供試体の線源の裏側に蓄光体フイルム31を設置し、パソコン55で高電圧発生装置53を制御して正確に所定の期間X線を照射する。
【0046】
この際の線源位置および蓄光体フイルム31の位置は、位置制御部51により正確に計測され、パソコン55に送られて記録される。これら位置計測は、断層像再構成の精度向上のために重要である。複数枚の蓄光体フィルム31を用いて、供試体に対するX線源35の位置及び核蓄光体フィルム31の位置、つまりX線の照射方向を変えながら、同様にX線照射(露光)を繰り返す。
【0047】
露光した複数枚の蓄光体フイルム31を、計算機により実現され得る発光量測定装置57の設置されているサイト(室内)へ移送し、そこで発光量の測定を行う。発光量の測定は、図12に示したディジタル・ラジオグラフの場合と同様である。蓄光体フイルムからの発光量分布39をCCDカメラ37あるいはディジタルカメラで画像情報として取り込み、モノクロ化後、走査線に沿っての発光量ディジタルデータ41として、計算機内に保管する。このディジタルデータセット41に対し、式(3)を用いて、照射時間、冷却時間(照射後測定までの時間)およびカメラの検出効率などの補正処理43により、2次元の線量率分布データ45として収録する。
【0048】
2次元の線量率分布データ45から線源35と同一の平面上となる線上の1次元線量率を上記2次元線量率データ45から取り込み、必要に応じて2次元データを内外挿して1次元線量率を求め、線源の位置Zに対しての線量率データI(x) として計算機に収録する。この線量率データI(x) を用いて、2次元の断層像を再構成処理57により得る。また、必要に応じて3次元断層像を得る。
【0049】
線量率データI(x) から断層像を再構成するための手法にはさまざまあるが、代表的なものとして逆投影法による断層像再構成の例を示す。図18に示すように、線源からの放射線の投影(放射線光路に沿っての積分)pは次式で求められる。
【0050】
【数4】
JP0003595845B2_000006t.gif【0051】
ここに、fは放射線の単位体積当りの吸収係数
x=rcosθ-ssinθ,y=rsinθ+scosθ
【0052】
【数5】
JP0003595845B2_000007t.gif【0053】
このコンボルーションは次式で定義される。
【0054】
【数6】
JP0003595845B2_000008t.gif【0055】
ここに、h(r-t):デルタ関数
測定されたp(r,θ)から吸収係数分布p(t,θ)を求める。
以上のように、蓄光体フイルム31とCCDカメラ37あるいはディジタルカメラを用いることにより、直接放射線測定の困難場所においてもディジタル・ラジオグラフを得ることが可能である。特に、放射線の使用が環境への影響等の理由で制約を受ける場所、橋梁などのように屋外で放射線検出器の搬送等が困難な揚所においては、照射と測定を分けて実施可能な本手法の採用が好適である。
【0056】
本実施形態は、図19に示すようにγ線を使っても同様に適用できる。図19ではγ線源61を用いたディジタル・ラジオグラフを示すが、γ線源61は常時は遮蔽容器63に収納し、照射時に限ってシャッタ65を開き、一定時間照射することが可能である。X線源31の採用の場合にはX線発生のための高電圧を用意する必要があるが、γ線使用においてはかかる高電圧電源の準備が不要であり、設備の軽量化、屋外での取扱の容易さが特徴となる。
【0057】
CCDカメラ37あるいはディジタルカメラも照射する場所には設置不要であり、遮光袋33で遮光した蓄光体フイルム31を現場で露光させるだけで、容易にディジタル・ラジオグラフを得ることが可能となる。
【0058】
図20に、γ線源61を用いた撮影シーンを示す。ディジタル・ラジオグラフの実施形態と同様に、γ線源61と蓄光体フイルム31のセットで、断層像を得ることが可能となる。この際、線源61の位置と蓄光体フイルム31の位置を可能な限り正確に把握し、データとして取り込むことが重要であり、レーザ反射式の位置計測法67を併用することにより、測定精度の正確性が確保できる。特に橋梁などの屋外での撮影においては、雨天、強風等の外乱に対し安定なγ線源61の使用と精密な放射線計測などの大型設備をすべて屋内の計測場所に集中できる点は、安全の観点からも経済的な観点からも好ましい。特に屋外では、放射線照射は対住民、対通行人の配慮から制約を受けることが多いので、軽量の設備で人の近づくことのない限られた時間での照射が必要で、装置の機動性は撮影実施上非常に好ましい。また、橋梁などでは、橋の下などの足場が悪い場所での撮像が必要となるが、かかる場所で、線源の移動、検出器の移動を行うのは、一般に大掛かりな設備を必要とするが、本実施形態では非常に簡単な設備で対応が可能である。
【0059】
また、CTによって断層像を再構成する場合には、前述したように線源位置および検出器位置(ここでは蓄光体フイルム位置)を正確に把握することが肝要であるが、レーザ反射型位置計測は、離れた固定点からの計測で十分な精度が得られるため、本実施形態の様に適用できる。
【0060】
以上のように本実施形態によれば、蓄光体フイルムとCCDカメラあるいはディジタルカメラを使用することにより、屋外のように大型線源と放射線検出装置およびそれらを駆動する装置を準備することなしで、簡便に2次元のディジタル・ラジオグラフの取得が可能である。また、本実施形態に基づくCT装置により、屋外においても簡便に断層像を得ることができ、これまで精細な断層像は得られるが、設備が大型で供試体はCT装置の元に運び込んで撮影することが一般的であった断層像撮影を、従来の常識を破り、供試体の揚所に設備を移動させ、環境あるいは人体根の影響などを及ぼすことなく、撮影することが可能となる。
【0061】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されてもよい。
【0062】
【発明の効果】
本発明によれば、2次元の透過X線分布を小型軽量の検出器で、簡便に撮影し、その透過像(ディジタル・ラジオグラフ)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のX線CT装置の構成を示した図。
【図2】従来のディジタル・ラジオグラフィの構成図。
【図3】従来のデータ一時保存型のX線CT装置の構成を示した図。
【図4】本実施形態において、蓄光体発光特性を示した模式図。
【図5】本実施形態において、蓄光体発光の吸収線に対する全発光量を示した図。
【図6】本実施形態において、蓄光体発光の平均付与エネルギーに対する発光強度を示した図。
【図7】本実施形態において、全発光量発光量の時間プロファイルを示した図。
【図8】本実施形態において、蓄光体の蓄光および発光メカニズムを示した図。
【図9】本実施形態において、蓄光体発光の発光成分の分解を示した図。
【図10】本実施形態において、蓄光体発光の残光過程による発光成分の分解を示した図。
【図11】本実施形態において、分解各成分の活性化エネルギーを示した図。
【図12】本実施形態による蓄光体フイルムを用いたディジタル・ラジオグラフィを示した図。
【図13】図12の取得された画像39の例を示した中間超音波画像。
【図14】図12の発光分布のディジタル化41を示した図。
【図15】本実施形態において、フイルム背面物質による吸収線量の増大効果を示した図。
【図16】本実施形態において、放射線線量吸収効率向上のために蓄光体フイルムに背面に配置される背面散乱体を示した図。
【図17】本実施形態において、蓄光体フイルムを用いたX線CT装置を示した図。
【図18】本実施形態において、画像再構成を示した図。
【図19】本実施形態において、γ線源と蓄光体フイルムを用いたディジタル・ラジオグラフィを示した図。
【図20】本実施形態において、γ線源と蓄光体フイルムを用いたX線CT装置。
【符号の説明】
31…蓄光体フイルム、
33…遮光袋、
35…X線源、
37…CCDカメラ37、
39…2次元発光量分布、
41…ディジタル化処理、
43…補正計算処理、
45…2次元線量率分布。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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