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明細書 :化学センサの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3646165号 (P3646165)
公開番号 特開2003-121329 (P2003-121329A)
登録日 平成17年2月18日(2005.2.18)
発行日 平成17年5月11日(2005.5.11)
公開日 平成15年4月23日(2003.4.23)
発明の名称または考案の名称 化学センサの製造方法
国際特許分類 G01N  5/02      
FI G01N 5/02 A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 8
出願番号 特願2001-320555 (P2001-320555)
出願日 平成13年10月18日(2001.10.18)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成13年9月7日 社団法人表面技術協会発行の「第104回講演大会 講演要旨集」に発表
審査請求日 平成13年10月18日(2001.10.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】杉村 博之
【氏名】高井 治
【氏名】金 圭寧
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100100125、【弁理士】、【氏名又は名称】高見 和明
【識別番号】100101096、【弁理士】、【氏名又は名称】徳永 博
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100124280、【弁理士】、【氏名又は名称】大山 健次郎
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
【識別番号】100110180、【弁理士】、【氏名又は名称】阿相 順一
審査官 【審査官】▲高▼見 重雄
参考文献・文献 特開2001-187821(JP,A)
特開平6-206830(JP,A)
特開平9-54440(JP,A)
国際公開第01/81487(WO,A1)
平山、亀岡,分子インプリンティング法によるリゾチーム鋳型の合成及びその水晶振動式センサーへの応用,分析化学,日本,2000年,Vol.49,No.1,p.29-33
Hongyou Fan,et al,Nature,米国,2000年 5月,Vol.405,p.29-33
棚村、上處、他,化学修飾型ナノ細孔体創製と蛍光プロープを用いた細孔内環境評価,日本分析化学会第49年会講演要旨集,日本,2000年 9月12日,p.122
穂積、横川、他,真空紫外光を用いたメソポーラスシリカのフォトカルシネーション:有機テンプレートの低温除去,日本セラミックス協会 2000年年会講演予稿集,日本,2000年 3月21日,p.33
J.S.Beck,et al.,JOURNAL OF AMERICAN CHEMICAL SOCIETY,米国,1992年12月30日,VOL.114 NO.27,P.10834-10843
Hongyou Fan,et al.,nature,米国,2000年 5月 4日,VOL.405 ,p.56-60
調査した分野 G01N 5/02
JICSTファイル(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
水晶振動子と、この水晶振動子上においてナノポーラス薄膜とを具える化学センサの製造方法であって、
前記ナノポーラス薄膜は、親水性高分子及び疎水性高分子とのブロック重合体と、酸化物前駆体との混合溶液を、前記水晶振動子上に成膜して有機-無機複合膜を作製した後、この有機-無機複合膜に対して真空紫外光を照射することにより、前記有機-無機複合膜から有機物のみを分解除去して作製することを特徴とする、化学センサの製造方法。
【請求項2】
前記有機-無機複合膜は、前記疎水性高分子の外側において前記親水性高分子が配列してなる棒状ミセルが規則的に配列して形成された液晶ミセルに対して、その外側に前記酸化物前駆体がマトリックス状に取り囲んで構成されたことを特徴とする、請求項1に記載の化学センサの製造方法。
【請求項3】
前記真空紫外光の照射は、100℃以下の温度で行なうことを特徴とする、請求項1又は2に記載の化学センサの製造方法。
【請求項4】
前記ナノポーラス薄膜はシリカからなり、前記化学センサは湿度センサであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一に記載の化学センサの製造方法。
【請求項5】
前記ブロック共重合体はオレフィン酸化物共重合体からなり、前記酸化物前駆体はアルコキシシランからなることを特徴とする、請求項4に記載の化学センサの製造方法。
【請求項6】
前記ナノポーラス薄膜の細孔内面を化学修飾することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一に記載の化学センサの製造方法。
【請求項7】
前記ナノポーラス薄膜はシリカからなり、前記化学修飾は前記ナノポーラス薄膜の内面に対してシランカップリング処理を施すことによって行なうことを特徴とする、請求項6に記載の化学センサの製造方法。
【請求項8】
前記化学修飾によってシリカよりなる前記ナノポーラス薄膜の前記細孔内面にアミノ基を被覆し、NOxガス又はSOxガスに対するセンサとして機能させることを特徴とする、請求項7に記載の化学センサの製造方法。
【請求項9】
前記ナノポーラス薄膜は、nmオーダの細孔を有することを特徴とする、請求項1~8のいずれか一に記載の化学センサの製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学センサの製造方法に関し、詳しくは、湿度センサ及びガスセンサとして好適に用いることのできる化学センサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ダイオキシンを含むさまざまな環境ホルモンによる環境汚染や、建材からのホルムアルデヒドなどの化学物質放射によるシックハウス症候群が深刻な社会問題となっている。これらの問題を抜本的に解決するには、汚染源を特定し、それに対する対策を講じなければならない。そのためには、環境汚染物質の発生状況などの実態調査が必要不可欠である。
【0003】
しかしながら、対象とする化学物質は極微量でも生体に悪影響を与える。その暴露状況を調査するためには、ppm~pptレベルの高感度な化学計測技術を必要とする。現在は、大型で高価な装置を利用していること、サンプルの前処理も含めると測定時間が長いことがネックとなっている。このため、小型で軽量かつ高感度な化学センサが開発されれば、実際に環境が汚染されている現場での化学物質のリアルタイム測定が可能となり、汚染の実態調査に大きく寄与することができる。
【0004】
本発明は、上述したような状況に鑑み、小型で軽量かつ高感度な、新規な化学センサを製造する方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、水晶振動子と、この水晶振動子上においてナノポーラス薄膜とを具える化学センサの製造方法であって、
前記ナノポーラス薄膜は、親水性高分子及び疎水性高分子とのブロック重合体と、酸化物前駆体との混合溶液を、前記水晶振動子上に成膜して有機-無機複合膜を作製した後、この有機-無機複合膜に対して真空紫外光を照射することにより、前記有機-無機複合膜から有機物のみを分解除去して作製することを特徴とする、化学センサの製造方法に関する。
【0006】
本発明者らは、上記化学センサを開発するに際し、時計やコンピュータ、通信機器などの電子回路に利用されている水晶振動子に着目した。この水晶振動子は、その表面に物質が付着すると、付着した質量に応じて発振周波数が減少するため、極微量、ナノグラムレベルの質量変化を計測する手段として好適に用いることができる。
【0007】
また、ナノポーラス薄膜は、その表面に貫通したnmオーダの多数の細孔を有しているため、極めて大きな比表面積を有する。したがって、前記ナノポーラス薄膜を所定の検出すべき物質に対してのみ感応性を示す材料から構成することにより、前記物質に対する吸着量が増大し、前記物質が極めて微量しか存在しない場合においても、前記物質を十分な感度で検出することができる。したがって、本発明により、小型で軽量かつ高感度な化学センサを提供することができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の化学センサにおいては、水晶振動子上にナノポーラス薄膜を有することが必要である。このナノポーラス薄膜は、例えば、以下のようにして作製することができる。
【0009】
図1は、前記ナノポーラス薄膜の作製工程を説明するための概念図である。最初に、図1(a)に示すように、親水性高分子及び疎水性高分子のブロック共重合体と酸化物前駆体とを、例えば、酸性溶液中に溶解させて、これらブロック共重合体と酸化物前駆体とから構成される混合溶液を作製する。次いで、この混合溶液を、スピンキャスト法などにより水晶振動子上に成膜する。
【0010】
すると、図1(b)に示すように、前記ブロック共重合体を構成する前記疎水性高分子の外側において前記親水性高分子が配列してなる、直径数nmの棒状ミセルが形成され、さらにこれらが規則的に配列されることによって形成された液晶ミセルの外側を前記酸化物前駆体がマトリックス状に取り囲んで構成される、有機-無機複合膜が形成される。
【0011】
次いで、この有機-無機複合膜に対して真空紫外光を照射する。すると、前記有機—無機複合膜を構成する有機物のみが分解除去され、表面に貫通したnmオーダの細孔を有するナノポーラス薄膜を得ることができる。前記真空紫外光の光源としては、例えばエキシマランプなどを用いることができる。そして、前記有機-無機複合膜の厚さ及び材料組成などに応じて、その強度を任意に設定する。
【0012】
なお、前記有機—無機複合膜の厚さは特に限定されるものではないが、好ましくは10nm~1000nmの厚さに形成する。これによって、nmオーダの細孔を簡易かつ高密度に形成することができる。
【0013】
また、前記有機-無機複合膜に対して真空紫外光を照射する代わりに、大気中において300℃以上の熱処理を施すことにより、前記有機-無機複合膜中の有機物を燃焼させて除去することもできる。しかしながら、このような高温処理では、前記有機-無機複合膜を支持する水晶振動子がダメージを受けてしまう場合がある。さらには、前記有機-無機複合膜の体積収縮が大きくなり、最終的に得たナノポーラス薄膜が前記体積収縮に起因した熱応力によって、破壊又は剥離してしまう場合がある。
【0014】
これに対して、上述したような真空紫外光の照射は、前記有機-無機複合膜を加熱することなく、室温において実施することができる。したがって、得られるナノポーラス薄膜には何ら熱応力が付加されないため、上述したような破壊及び剥離を生じることなく、あるいは水晶振動子へ何らダメージを与えることなく、ナノポーラス薄膜を簡易に得ることができる。但し、前記真空紫外光の照射は、上述したようなナノポーラス薄膜の熱応力に起因した破壊や剥離が生じず、水晶振動子への熱ダメージが生じない限りにおいて、適当な加熱雰囲気において行なうこともできる。例えば、100℃以下、好ましくは50℃以下の温度で行なうことができる。
【0015】
すなわち、外的要因などによって環境温度が変化した場合においても、熱応力に起因した破壊や剥離などを生じることなく、真空紫外光の照射によって前記有機-無機複合膜を構成する前記有機物を分解除去することにより、ナノポーラス薄膜を簡易に得ることができる。
【0016】
上述したように、前記ナノポーラス薄膜は、検出すべき物質の種類に応じ、その物質にのみ感応する材料から構成することが必要である。例えば、水蒸気量を検出する場合、すなわち、本発明の化学センサを湿度センサとして使用する場合は、前記ナノポーラス薄膜を例えばシリカから構成する。このようなシリカからなるナノポーラス薄膜は、例えば、前記ブロック共重合体を、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体などのオレフィン酸化物共重合体から構成し、前記酸化物前駆体を、テトラエトキシシランなどのアルコキシシランから構成し、上述したような真空紫外光を用いた作製方法に従うことによって簡易に形成することができる。
【0017】
また、ナノポーラス薄膜自体を所定の物質に感応する材料から構成する代わりに、前記ナノポーラス薄膜の細孔内に化学修飾を行ない、前記細孔内に前記所定の物質に感応する官能基を付着させて被覆することもできる。
【0018】
ナノポーラス薄膜は、親水性高分子及び疎水性高分子のブロック共重合体と酸化物前駆体との混合溶液からスピンキャスト及び真空紫外光照射という簡易な工程を経るのみで形成されるが、この工程の簡易さゆえに前記ブロック共重合体は、親水性高分子及疎水性高分子などから構成されるなどの要件が課され、その種類が限定されてしまう。その結果、ナノポーラス薄膜を構成する材料の種類も限定され、検出できる物質の種類も限定されてしまう。
【0019】
一方、本発明の化学センサにおいて、実際の物質の検出は、前記物質をナノポーラス薄膜を構成する細孔の内面と化学的に反応させ吸着させることによって行なう。したがって、本来的には前記細孔の内面を構成する材料の種類が問題となる。このため、上述したように前記ナノポーラス薄膜の細孔内に化学修飾を行なうようにすれば、前記細孔の内面を構成する材料の選択範囲を増大させることができ、この結果、広範な物質の検出を可能とすることができる。
【0020】
特に、前記ナノポーラス薄膜がシリカから構成される場合は、前記ナノポーラス薄膜の内面に対してシランカップリング処理を施すことにより化学修飾を行なう。この場合においては、使用するシランカップリング剤が前記ナノポーラス薄膜の細孔内面の水酸基と簡易に反応し、この結果、前記細孔内面に検出すべき物質に感応する官能基を付着させることができる。
【0021】
なお、有機—無機複合膜から300℃以上の高温処理を経てシリカよりなるナノポーラス薄膜を作製した場合において、水酸基は前記ナノポーラス薄膜より離脱していまい、その細孔内面にはほとんど残らなくなる。したがって、この場合においては、上述したように、水酸基が離脱しない100℃以下、好ましくは50℃以下の温度で、真空紫外光を照射させることにより、ナノポーラス薄膜を作製することが好ましい。
【0022】
特に、アミノ基は、NOxガスやSOxガスなどと容易に反応する。したがって、シランカップリング処理によって、シリカからなるナノポーラス薄膜の細孔内面にアミノ基を被覆することにより、前記細孔内面でアミノ基とNOxガスやSOxガスとを反応させて吸着させることができ、これらの汚染ガスに対するガスセンサを構成することができる。
【0023】
【実施例】
以下、本発明を具体例に基づいて説明する。
【0024】
(化学センサの作製)
最初に、ポリエチレンオキサイドーポリプロピレンオキサイドーポリエチレンオキサイドの3ブロックからなるブロック共重合体(分子量5800)、テトラエトキシシラン、塩酸、及び水をモル比で0.017:1:6:167の割合で混合し、混合溶液を調整した。次いで、この混合溶液からスピンキャスト法によて水晶振動子上に、高分子-シリカ複合膜を厚さ0.1μmに形成した。
【0025】
なお、この高分子-シリカ複合膜においては、前記ブロック共重合体の疎水性高分子であるポリプロピレンオキサイドの外側において親水性高分子であるポリエチレンオキサイドが配列してなる棒状ミセルが規則的に配列して形成された液晶ミセルに対して、その外側にシリカがマトリックス状に取り囲んで構成されている。
【0026】
次いで、前記高分子-シリカ複合膜を真空容器内の配置し、この容器内を10Paまで排気した。次いで、エキシマランプより強度10mW/cm、波長172nmの真空紫外光を前記真空容器に設けた紫外光導入窓より前記真空容器内に導入し、前記高分子-シリカ複合膜に3時間照射させた。その結果、前記高分子-シリカ複合膜中の有機物は光化学的に分解され、nmオーダの細孔を有するナノポーラス薄膜を得、化学センサを作製した。
【0027】
(化学センサの評価)
図2は、上記のようにして得た化学センサを湿度センサとして用いた場合の質量変化応答を示すグラフである。なお、図2においては、環境湿度を12%→90%→12%と変化させた場合について示している。図中(a)は上記実施例で得た化学センサの質量変化応答性を示す。なお、図中(b)、(c)、及び(d)は、それぞれ真空紫外光を照射する以前の高分子-シリカ複合膜が水晶振動子上に形成された化学センサ、スパッタリングシリカ膜を水晶振動子上に形成することにより得た化学センサ、及び水晶振動子のみより構成される化学センサの質量変化応答性を、参考として示したものである。
【0028】
図2から明らかなように、本実施例により得た化学センサは、環境湿度の変化に対して高速かつ高感度に応答していることが分かる。一方、高分子-シリカ複合膜を有する化学センサ及びスパッタリングシリカ膜を有する化学センサにおいては、応答速度及び感度ともに劣化していることが分かる。さらに、水晶振動子のみではセンサとして機能しないことが分かる。
【0029】
図3は、本実施例で得た化学センサ及び市販の湿度計の、環境湿度変化に対する応答性を比較したグラフである。なお、図3において、本実施例で得た化学センサの応答性は水晶振動子の周波数変化で計測し、市販の湿度計の応答性は直接的に湿度を計測することにより実施した。図3から明らかなように、本実施例で得た化学センサは市販の湿度センサと比較して十分に高い応答性を示し、特に図中Aで示す高湿度から低湿度への変化においては、市販の湿度計よりも高い応答性を示すことが分かる。
【0030】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、小型で軽量かつ高感度な、新規な化学センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製造方法による化学センサを構成するナノポーラス薄膜の作製工程を説明するための概念図である。
【図2】 本発明の製造方法を経て得た化学センサを湿度センサとして用いた場合の質量変化応答を示すグラフである。
【図3】 本発明の製造方法を経て得た化学センサを湿度センサとして用いた場合における、前記化学センサと市販の湿度計との、環境湿度変化に対する応答性を比較したグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2