TOP > 国内特許検索 > フラ―レン分散セラミックスの製造方法 > 明細書

明細書 :フラ—レン分散セラミックスの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B1)
特許番号 特許第3007973号 (P3007973)
登録日 平成11年12月3日(1999.12.3)
発行日 平成12年2月14日(2000.2.14)
発明の名称または考案の名称 フラ—レン分散セラミックスの製造方法
国際特許分類 C04B 35/622     
B01J 13/00      
C01B 13/14      
C01B 31/02      
C01G 25/02      
C04B 35/48      
FI C04B 35/00 E
B01J 13/00
C01B 13/14
C01B 31/02
C01G 25/02
C04B 35/48
請求項の数または発明の数 4
全頁数 5
出願番号 特願平11-072937 (P1999-072937)
出願日 平成11年3月18日(1999.3.18)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用申請有り 日本金属学会講演概要p.467 1998年秋季(第123回)大会
特許法第30条第1項適用申請有り トライボロジー会議予稿集p.611~612 名古屋 1998-11
特許法第30条第1項適用申請有り 第12回ダイヤモンドシンポジウム講演要旨集p.36~37
審査請求日 平成11年3月18日(1999.3.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012327
【氏名又は名称】東京大学長
発明者または考案者 【氏名】宮沢 薫一
【氏名】本間 格
【氏名】矢野 純也
【氏名】伊藤 邦夫
【氏名】葛巻 徹
個別代理人の代理人 【識別番号】100059258、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外8名)
審査官 【審査官】三崎 仁
調査した分野 C04B 35/00 - 35/84
C01B 13/14
C01G 25/02
C01B 31/02
要約 【課題】 セラミックス中におけるフラーレンの分散が均一で、しかもフラーレン以外の残留炭素が存在しないフラーレン分散セラミックスを得る。
【解決手段】 金属イオンの水溶液に、界面活性剤とフラーレンを溶解させて得られるコロイド溶液(ゾル)を、水素イオン濃度を変化させてゲル化させた後、このゲルを乾燥し、ついで残留する溶媒と界面活性剤を除去するための熱処理を施す。
特許請求の範囲 【請求項1】
金属イオンの水溶液に、界面活性剤とフラーレンを溶解させて得られるコロイド溶液(ゾル)を、水素イオン濃度を変化させてゲル化させた後、このゲルを乾燥し、ついで残留する溶媒と界面活性剤を除去するための熱処理を施すことを特徴とするフラーレン分散セラミックス粉末の製造方法。

【請求項2】
請求項1で製造したフラーレンを含むセラミックス粉末を、焼結することを特徴とするフラーレンが一様に分散したバルクセラミックス体の製造方法。

【請求項3】
硝酸ジルコニルの水溶液に、C16TMA とC60粉末を溶解させて、C60を含むC16TMA のミセルを形成し、ついで水酸化ナトリウムを添加して、このミセルを内包する水酸化ジルコニムの沈殿を得、さらにこの沈殿をろ過後、乾燥し、ついで残留する溶媒とC16TMA を除去するための熱処理を施すことを特徴とするC60分散ジルコニア粉末の製造方法。

【請求項4】
請求項3で製造したC60分散ジルコニア粉末を、金または銅カプセル等の容器に詰め、焼結することを特徴とするC60分散ジルコニア焼結体の製造方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、フラーレンとセラミックスの効果的な複合を可能ならしめたフラーレン分散セラミックスの製造方法に関するものであり、自己潤滑性研磨材料、低摩擦耐摩耗材料、界面分極効果による高誘電率強誘電体・圧電体、計算機メモリーおよびマイクロアクチュエータ材料などの製造に有効に適用できるので、自動車産業、家電産業およびコンピュータ産業等の幅広い分野において好適に利用することができる。また、本発明は、フラーレンとセラミックスを複合させるための普遍的な技術と成り得る可能性を持つ基本技術であるので、上記の分野のみならず、農業、医療および薬学等の広い産業分野にわたって利用できる可能性を有するものである。

【0002】
本発明を適用して特に好適な製品としては、圧電素子、軸受け、摺動部材、自己潤滑性研磨剤、自己潤滑性研磨盤、ガス分離膜、酸化物超伝導セラミックス、高潤滑性・耐磨耗セラミックス皮膜、界面分極型強誘電セラミックスおよび圧電セラミックス等が挙げられる。また、超高圧ホットプレスを利用して、C60の重合や変態を促進させることにより、ポリマー化C60分散セラミックスや超微粒ダイヤモンド分散セラミックス等の製品の製造も可能である。

【0003】

【従来の技術】発明者らは、先に、カーボン60 (以下、C60で示す)に代表されるフラーレンをセラミックス中に複合させる方法として、トルエン等の有機溶媒を用いてC60と金属アルコキシドの溶液を作製し、その乾燥と焼成によってC60-セラミックス複合粉末を得たのち、この複合粉末を、銅カプセル中に充填して、焼結する方法を提案した(参考文献、 Kun'ichi Miyazawa et al., “Characterization ofC60-Doped Zirconia Prepared from Organic Solutions”, Processing andFabrication of Advanced Materials VI, Volume:I,The Institute of Materials, 1998, pp.775~784)。図1に、上記した従来技術の適用例のフローチャートを示す。この場合の組成は、 ZrO2-3~30mass%C60である。

【0004】
しかしながら、上記の方法では、セラミックス中でC60の一様な分散が得られないという問題があった。図2に、上記のようにして得られたZrO2-3~30mass%C60粉末を銅カプセルに詰め、ホットプレスすることによって作製したC60添加ジルコニアセラミックスの走査電子顕微鏡像(a) とその観察面における炭素の面分析X線像(b) を示す。同図において、炭素が一様に分散していないことから明らかなように、 上記の方法ではC60の一様な分散が達成されず、図示例では、焼結体の炭素が10μmサイズで偏析している。

【0005】
そこで、発明者らは、上記の問題を解決するものとして、ミセル形成法を利用したフラーレンとセラミックスとを複合方法を開発した。すなわち、界面活性剤としてC16TMA (C16H33N(CH3)3Cl) を用いて、 C60と硝酸ジルコニル(ZrO(NO3)2) の水溶液から、 C60のミセルを形成し、酸性度を調節することによって、 C60を含むジルコニアゲルを作製し、このゲルを乾燥させてC60を含むジルコニア粉末を得る方法である。具体的には、 0.1MZrO(NO3)2 水溶液:100 ml中にC16TMA を溶解し、これにC60を添加して12時間撹拌したのち、2M のNaOHを10ml滴下して生成した沈殿をろ過後、蒸留水で洗浄し、 150℃で8時間乾燥させて、 C60添加ジルコニア粉末を得た (矢野純也、宮沢薫一、伊藤邦夫、本間格、“C60-ZrO2コンポジットの作製と構造評価”、日本金属学会春期大会講演概要, 1998、 pp.208~208)。

【0006】
この方法によって、セラミックス中にC60を一様に分散させることができるようになった。しかしながら、この方法には、C60以外の炭素が残留するところに問題を残していた。

【0007】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、C60に代表されるフラーレンをセラミックスと複合させたときに生じるフラーレンの不均一分散を解消するのはいうまでもなく、フラーレン-セラミックス複合粉末においてフラーレン以外の残留炭素を効果的に除去することができるフラーレン分散セラミックスの有利な製造方法を提案することを目的とする。

【0008】
さて、発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、C60-セラミックス複合粉末におけるC60以外の残留炭素はほとんどC16TMA に由来すること、そしてかかるC16TMA 由来の有機物は比較的高温での熱処理によって、ほぼ完全に除去できることの知見を得た。本発明は、上記の知見に立脚するものである。

【0009】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.金属イオンの水溶液に、界面活性剤とフラーレンを溶解させて得られるコロイド溶液(ゾル)を、水素イオン濃度を変化させてゲル化させた後、このゲルを乾燥し、ついで残留する溶媒と界面活性剤を除去するための熱処理を施すことを特徴とするフラーレン分散セラミックス粉末の製造方法。

【0010】
2.上記1で製造したフラーレンを含むセラミックス粉末を、焼結することを特徴とするフラーレンが一様に分散したバルクセラミックス体の製造方法。

【0011】
3.硝酸ジルコニルの水溶液に、C16TMA とC60粉末を溶解させて、C60を含むC16TMA のミセルを形成し、ついで水酸化ナトリウムを添加して、このミセルを内包する水酸化ジルコニムの沈殿を得、さらにこの沈殿をろ過後、乾燥し、ついで残留する溶媒とC16TMA を除去するための熱処理を施すことを特徴とするC60分散ジルコニア粉末の製造方法。

【0012】
4.上記3で製造したC60分散ジルコニア粉末を、金または銅カプセル等の容器に詰め、焼結することを特徴とするC60分散ジルコニア焼結体の製造方法。

【0013】

【発明の実施の形態】以下、本発明を具体的に説明する。塩を水に溶解して金属イオンの水溶液を作製し、この溶液に、C16TMA などの界面活性剤を溶解させ、ついでC60等のフラーレンを溶解させ、フラーレン含有コロイド溶液(ゾル)を得る。この際、フラーレンを界面活性剤が取り込んだミセルが形成される。次に、酸もしくはアルカリを添加して、酸性もしくはアルカリ性に水素イオン濃度(pH)を調節することによって、フラーレンを含むセラミックスの沈殿物を得る。この沈殿物を、ろ過によって溶液から分離し、乾燥したのち、熱処理( 100~600 ℃、大気中、真空中もしくは不活性ガス雰囲気中)することによって、フラーレン分散セラミックス粉末を得る。さらに、このフラーレン分散セラミックス粉末を圧粉し、焼結することによってフラーレン分散バルクセラミックス体を得る。

【0014】
上記方法の具体例として、 C60分散ジルコニアセラミックスを作製する場合について説明する。最初に、濃度:0.1MのZrO(NO3)2 水溶液:100 ml中に、 C16TMA を溶解させ、これにC60を添加し、24時間撹拌する。 C16TMA の濃度は、ジルコニアとのモル比で1:10~1:1である。その後、2M のNaOHを10ml滴下し、生成した沈殿をろ過後、蒸留水で洗浄してから、大気中にて 100~150 ℃で8時間乾燥させて、 C60添加ジルコニア(ZrO2)粉末を得る。組成は、任意にコントロールできるが、 ZrO2-0~30mass%C60の範囲とした。その後、さらに、この粉末を大気中にて 400℃、 3時間の熱処理を行い、残留溶媒とC16TMA 由来の有機物を除去することによって、ZrO2-3mass%C60粉末を得た。

【0015】
図3に、 C16TMA を添加したジルコニア-C60粉末の各熱処理温度におけるフーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT-IRスペクトル)を示す。400 ℃の熱処理で、 C16TMA に起因する吸収ピークははぼ消失しているのに対し(a) 、C60に起因する吸収ピーク(1429 、1183、 577、 528cm-1) が観察されるので(b)、 400℃,3時間の熱処理により、 C60以外の有機物をほぼ完全に除去できたことが分かる。このように、本発明によるC60添加ジルコニア粉末の作製法における熱処理は、 C60のジルコニア粉末へのドーピングにおいて著しい効果を示した。

【0016】
次に、図4に、本発明により作製したC60分散ジルコニア焼結体のSEM 像(a)とその観察面における炭素の面分析X線像(b) を示す。なお、焼結は、 C60分散ジルコニア粉末を、内径:5mm、高さ:10mmの金カプセルに詰め、 NaClを圧力媒体として、加圧力:5.5 GPa 、温度:600 ℃、 時間:2hの条件で行った。同図から明らかなように、本発明に従って作製した焼結体では、C60がジルコニアマトリックス中に一様に分散していた。

【0017】
また、図5に、上記焼結体のフーリエ変換赤外吸収スペクトル(FT-IRスペクトル)について調べた結果を示す。同図に示したとおり、C60に特徴的な4つの吸収ピーク(1428.5、 1182.4 、576.4、 527.4cm-1) が観察されるので、 C60が焼結体中に存在していることが確認された。

【0018】
さらに、図6には、同じ焼結体のX線回折図形を示したが、同図から、この焼結体は、正方晶ジルコニアと単斜晶ジルコニアの2種類から成っていることが判明した。

【0019】
以上、フラーレン分散セラミックス粉末を製造する場合について主に説明したが、その他、金属イオンの水溶液に界面活性剤とフラーレンを溶解させて得られるコロイド溶液を、基板に塗布し、ゲル化させたのち、乾燥ついで熱処理を施すことにより、フラーレン分散セラミックス膜を製造することもできる。

【0020】

【作用】本発明において、金属イオンの水溶液としては、セラミックス前駆体を含むものであればいずれもが適合する。また、界面活性剤としては、フラーレンを取り囲んでミセルを形成できるものであれば何でも良く、特に好適にはC16TMA である。なお、この界面活性剤の添加量は、セラミックスとのモル比で1:10~1:1程度とするが好適である。

【0021】
本発明において、ゲルを乾燥した後に施す熱処理は、ゲル中に残留する溶媒と界面活性剤を除去するために施すものであり、特に好適な処理条件は次のとおりである。
雰囲気:大気、不活性ガス雰囲気または真空中
温度:250 ~500 ℃
時間:0.5 ~4h

【0022】
また、本発明において、焼結方法は特に限定するものではないが、フラーレンの重合や変態を促進させて、より緻密な焼結体を得るためには、超高圧ホットプレスが特に有利に適合する。

【0023】

【発明の効果】かくして、本発明によれば、セラミックス中にフラーレンが均一に分散し、しかもフラーレン以外の炭素が残留することもないフラーレン分散セラミックスを、安定して得ることができる。さらに、本発明によれば、原料として上記したようなフラーレン分散セラミックス粉末を用いることにより、均質で緻密なセラミックス焼結体を得ることができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5