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明細書 :周波数逓倍方法及び周波数逓倍器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3584281号 (P3584281)
公開番号 特開2002-217646 (P2002-217646A)
登録日 平成16年8月13日(2004.8.13)
発行日 平成16年11月4日(2004.11.4)
公開日 平成14年8月2日(2002.8.2)
発明の名称または考案の名称 周波数逓倍方法及び周波数逓倍器
国際特許分類 H03B 19/00      
H01F 10/16      
FI H03B 19/00
H01F 10/16
請求項の数または発明の数 13
全頁数 7
出願番号 特願2001-012644 (P2001-012644)
出願日 平成13年1月22日(2001.1.22)
審査請求日 平成13年1月22日(2001.1.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504173471
【氏名又は名称】北海道大学長
【氏名又は名称】国立大学法人 北海道大学
発明者または考案者 【氏名】渡辺 秀樹
【氏名】澤村 誠
【氏名】末岡 和久
【氏名】武笠 幸一
【氏名】中根 了昌
個別代理人の代理人 【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
審査官 【審査官】甲斐 哲雄
参考文献・文献 特開昭49-46364(JP,A)
特開2001-324733(JP,A)
調査した分野 H03B 19/00-19/20
H01F 10/00-41/34
特許請求の範囲 【請求項1】
固有の共鳴周波数を有する強磁性薄膜に対して、前記共鳴周波数と合致した入力周波数を有する電磁波を導入し、前記強磁性薄膜の強磁性共鳴によって前記電磁波の前記入力周波数を逓倍することを特徴とする、周波数逓倍方法。
【請求項2】
前記電磁波の前記入力周波数は、前記強磁性薄膜の前記強磁性共鳴によって2倍の大きさに逓倍することを特徴とする、請求項1に記載の周波数逓倍方法。
【請求項3】
前記強磁性薄膜を空洞共振器内に設置し、この空洞共振器に設けられたオリフィスより前記電磁波を前記空洞共振器内に導入し、前記強磁性薄膜による強磁性共鳴によって、前記電磁波の前記入力周波数を逓倍した後、前記空洞共振器に設けられたスリットより、逓倍された周波数を有する前記電磁波を外部に取り出すようにしたことを特徴とする、請求項1又は2に記載の周波数逓倍方法。
【請求項4】
前記強磁性薄膜は、Co単結晶薄膜であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一に記載の周波数逓倍方法。
【請求項5】
前記Co単結晶薄膜の厚さが、0.5nm~5nmであることを特徴とする、請求項4に記載の周波数逓倍方法。
【請求項6】
固有の共鳴周波数を有する複数の強磁性薄膜を順次に設置し、前記複数の強磁性薄膜のいずれか一の強磁性薄膜の共鳴周波数と合致した入力周波数を有する電磁波を前記一の強磁性薄膜に導入し、前記一の強磁性薄膜の強磁性共鳴によって前記電磁波の前記入力周波数を逓倍し、逓倍された周波数を有する電磁波を前記複数の強磁性薄膜の他の強磁性薄膜に連続的に導入し、前記電磁波の前記入力周波数を多段に逓倍することを特徴とする、周波数逓倍方法。
【請求項7】
前記電磁波の前記入力周波数は、前記複数の強磁性薄膜のそれぞれにおいて、2倍の大きさに逓倍することを特徴とする、請求項6に記載の周波数逓倍方法。
【請求項8】
前記複数の強磁性薄膜は、それぞれCo単結晶薄膜からなることを特徴とする、請求項6又は7に記載の周波数逓倍方法。
【請求項9】
前記Co単結晶薄膜の厚さが、0.5nm~5nmであることを特徴とする、請求項8に記載の周波数逓倍方法。
【請求項10】
空洞共振器と、この空洞共振器内に設置された強磁性薄膜とを具え、前記空洞共振器は、所定の入力周波数を有する電磁波を導入するためのオリフィスと、前記強磁性薄膜の強磁性共鳴によって逓倍された周波数を有する前記電磁波を外部に取り出すためのスリットとを具えることを特徴とする、周波数逓倍器。
【請求項11】
前記強磁性薄膜は、Co単結晶薄膜であることを特徴とする、請求項10に記載の周波数逓倍器。
【請求項12】
前記Co単結晶薄膜の厚さが、0.5nm~5nmであることを特徴とする、請求項11に記載の周波数逓倍器。
【請求項13】
前記電磁波の前記入力周波数は、2倍の大きさに逓倍されることを特徴とする、請求項10~12のいずれか一に記載の周波数逓倍器。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、周波数逓倍方法及び周波数逓倍器に関し、詳しくは、移動体送受信装置及び携帯情報機器の周波数を高効率に逓倍するマイクロ波技術、並びに高周波技術の分野において、好適に用いることのできる周波数逓倍方法及び周波数逓倍器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、移動体送受信装置及び携帯情報機器などにおいて周波数を逓倍するに際しては、クリスタル検出器を用い、この非直線抵抗特性を利用して行っていた。しかしながら、このようにして周波数を逓倍するに際しては、調整すべき整合素子の数が増大してしまうため、操作が複雑になるという問題があった。
【0003】
一方、高速・高周波回路としてマイクロ波回路を一つの基板上に作製してなるモノリシックマイクロ波集積回路が使用されている。この集積回路は、優れた量産性を有するため、市場において大きな優位となっているが、さらなる高周波対応、低コスト化、小型軽量化、及び低消費電力が望まれている。
【0004】
本発明は、上記問題に鑑み、新規な周波数逓倍方法及びこの方法に用いることのできる周波数逓倍器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明の周波数逓倍方法は、固有の共鳴周波数を有する強磁性薄膜に対して、前記共鳴周波数と合致した入力周波数を有する電磁波を導入し、前記強磁性薄膜の強磁性共鳴によって前記電磁波の前記入力周波数を逓倍することを特徴とする。
【0006】
本発明者らは、新規な周波数逓倍方法を見出すべく鋭意検討を実施した。その結果、上述したように、強磁性薄膜の強磁性共鳴を用いて周波数を逓倍する全く新しい方法を見出した。
【0007】
図1は、本発明の周波数逓倍方法によって周波数が逓倍される原理を説明するための図である。
強磁性薄膜の強磁性共鳴において、磁気モーメントMは、前記強磁性薄膜の膜面に垂直方向の反磁場の影響によって、前記膜面内で歳差運動をするようになる。このとき、図1に示すように、X方向に1回振動(1往復)する間に、Z方向には2回振動する。共鳴周波数がfの強磁性共鳴が生じている場合においては、磁気モーメントMがX方向にfの振動数で運動すると、Z方向には2fの振動数の運動が生じる。
【0008】
したがって、外部より共鳴周波数fと同じ入力周波数を有する電磁波を強磁性薄膜に導入し、上記強磁性共鳴を生じさせることにより、Z方向においては2fの振動数の運動が生じ、この2fの周波数を有する電磁波が放射される。結果として、電磁波の入力周波数は2倍の大きさに逓倍されることになる。
すなわち、強磁性薄膜の強磁性共鳴を利用するという極めて簡単な方法によって、電磁波の周波数を逓倍することができる。
【0009】
なお、強磁性薄膜の共鳴周波数は、前記強磁性薄膜を構成する材料の種類、及び膜厚などの大きさを調節することによって適宜に設定することができる。したがって、本発明の周波数逓倍方法は、比較的広い周波数帯域で電磁波の周波数を逓倍することができる。
【0010】
また、強磁性薄膜の大きさは、数nm程度なので、本発明の方法に用いる周波数逓倍器の大きさを縮小することができる。また、前記強磁性共鳴を生じさせるに際しては、外部磁場などを必要としないので、磁場発生のための電力を必要とせず、低消費電力化を達成することができる。
【0011】
さらに、強磁性薄膜としては、以下に示すように廉価なCo単結晶薄膜などを用いることができるとともに、余分な外部磁石などを必要としないため、前記低消費電力化と相伴って、周波数逓倍方法及び周波数逓倍器の低コスト化を達成することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を発明の実施の形態に則して詳細に説明する。
図2は、本発明の周波数逓倍方法に用いる周波数逓倍器の一例を示す斜視図である。
図2に示す周波数逓倍器10は、空洞共振器1と、その内部の底壁面1B上において共鳴周波数fを有する強磁性薄膜2とを具えている。そして、空洞共振器1の、強磁性薄膜2と対向する壁面1Aにはオリフィス3が設けられるとともに、空洞共振器1の、側壁面1Cにはスリット4が設けられている。
【0013】
逓倍すべき入力周波数を有する電磁波Eは、空洞共振器1のオリフィス3から内部に導入される。なお、電磁波Eの前記周波数は、強磁性薄膜2の共鳴周波数fと同じであることが要求される。但し、上述したように、強磁性薄膜2の種類及び大きさなどを適宜に調節することによって、その共鳴周波数を制御することができるため、広範囲の電磁波に対応することができる。
【0014】
空洞共振器1内に導入された電磁波Eは、強磁性薄膜2において強磁性共鳴を生ぜしめる。この強磁性共鳴状態においては、図1において説明したように、その磁気モーメントはX方向で1回振動(1回往復)する間に、Z方向で2回振動する。このため、Z方向においては、2倍の周波数2fを有する電磁波が発生し、放射される。Z方向には、スリット4が設けられており、逓倍されることにより2倍の周波数2fを有するに至った電磁波は、スリット4を通じて外部に取り出される。
【0015】
なお、図2におけるX方向及びZ方向は便宜上定めたものであり、これらの方向は強磁性薄膜2の面内におけるいずれの方向であっても良い。但し、Z方向には、上述したようなスリットを設け、逓倍された周波数を有する電磁波を外部に取り出すようにすることが必要である。
【0016】
また、図2においては、単一の強磁性薄膜を用いて周波数を逓倍するようにしているが、単一の強磁性薄膜に限らず、複数の強磁性薄膜を用いて電磁波の入力周波数を多段に逓倍し、高周波の電磁波を得ることもできる。
【0017】
この場合においては、例えば、f、2f、4f.....2nf(n:自然数)の共鳴周波数を有する複数の強磁性薄膜を、同一平面内において、連続的に並べて配置する。そして、共鳴周波数fに等しい入力周波数を有する電磁波を、共鳴周波数fを有する強磁性薄膜に導入し、上述したような強磁性共鳴によって2倍の周波数である2fの周波数を有する電磁波を生成し、放射させる。
【0018】
次いで、2fの周波数を有する電磁波を、共鳴周波数2fの強磁性薄膜に導入し、強磁性共鳴によって2倍の周波数である4fの周波数を有する電磁波を生成し、放射させる。このような操作を存在する複数の強磁性薄膜に亘って実施することにより、最終的には2nf(n:自然数)の周波数を有する電磁波を得ることができる。
すなわち、複数の強磁性薄膜を順次に配置し、これら複数の強磁性薄膜それぞれの強磁性共鳴を用いて入力された電磁波の周波数を多段に逓倍することによって、高い周波数の電磁波を簡易に得ることができる。
【0019】
なお、上述した複数の強磁性薄膜は、図2に示すように、単一の空洞共振器内の、例えば底壁面上などの同一平面上に配置しても良いし、単一の強磁性薄膜が、例えば底壁面に設置された空洞共振器を複数用い、これら空洞共振器を同一平面内に配置しても良い。
【0020】
上記強磁性薄膜は、強磁性共鳴を生ぜしめるものであれば特には限定されない。Fe、Ni、Co、及びこれらの合金などの公知の強磁性材料から構成することができる。しかしながら、特にCo単結晶薄膜から前記強磁性薄膜を構成することが好ましい。
【0021】
Co単結晶薄膜は面心立方格子型の結晶構造を有し、高い結晶磁気異方性を有するため、外部磁場を必要とすることなく上記電磁波が入射するのみで強磁性共鳴を起こすことができる。したがって、余分な外部磁石を必要とせず、磁場発生のための電力も必要となれないため、本発明の周波数逓倍方法及び周波数逓倍器における低電力化を達成することができる。
さらには、周波数逓倍器全体の構造が簡略化されるとともに、廉価なCo単結晶薄膜を使用できることから、上記低電力化と相伴って本発明の周波数逓倍方法及び周波数逓倍器の低コスト化を達成することができる。
【0022】
Co単結晶薄膜から強磁性薄膜を構成する場合、その厚さは0.5nm~5nmであることが好ましく、さらには1nm~2nmであることが好ましい。これによって、図1に示すような磁気モーメントが膜面内において歳差運動をする強磁性共鳴を簡易に得ることができる。
【0023】
なお、強磁性薄膜の長さは0.5nm~30nm程度であり、幅は0.5nm~30nm程度である。
したがって、図2に示すような本発明の周波数逓倍器の大きさは、極めて小さくすることができる。
【0024】
以上、具体例を示しながら発明の実施の形態に則して本発明を説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない範囲において、あらゆる変形や変更が可能である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の周波数逓倍方法及び周波数逓倍器によれば、強磁性薄膜による強磁性共鳴を利用するという極めて簡易な方法によって、逓倍された周波数を有する電磁波を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の周波数逓倍方法によって周波数が逓倍される原理を説明するための図である。
【図2】本発明の周波数逓倍方法に用いる周波数逓倍器の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 空洞共振器
2 強磁性薄膜
3 オリフィス
4 スリット
10 周波数逓倍器
図面
【図1】
0
【図2】
1