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明細書 :硫化物触媒を用いた一酸化炭素の水素化法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3632071号 (P3632071)
公開番号 特開2002-020767 (P2002-020767A)
登録日 平成17年1月7日(2005.1.7)
発行日 平成17年3月23日(2005.3.23)
公開日 平成14年1月23日(2002.1.23)
発明の名称または考案の名称 硫化物触媒を用いた一酸化炭素の水素化法
国際特許分類 C10L  1/02      
B01J 27/045     
C07C 29/136     
C07C 31/04      
C10K  3/02      
C07B 61/00      
FI C10L 1/02
B01J 27/045 M
C07C 29/136
C07C 31/04
C10K 3/02
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 9
全頁数 12
出願番号 特願2000-202390 (P2000-202390)
出願日 平成12年7月4日(2000.7.4)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成12年3月15日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第78春季年会2000年講演予稿集▲I▼」に発表
審査請求日 平成12年7月4日(2000.7.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】山田 宗慶
【氏名】小泉 直人
【氏名】高橋 陽介
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】山田 泰之
参考文献・文献 特開昭55-139324(JP,A)
特開昭55-139325(JP,A)
特開昭60-114342(JP,A)
特開昭62-148437(JP,A)
特開昭62-148438(JP,A)
調査した分野 C10L 1/02
B01J 27/045
C07C 29/136
C07C 31/04
C10K 3/02
C07B 61/00 300
特許請求の範囲 【請求項1】
一酸化炭素と水素とを含む原料ガスを、Rh、Pd,およびPtからなる群から選択される少なくとも一種を含有する金属硫化物のみからなる金属化合物を含む触媒に接触させて、メタノールを得ることを特徴とする一酸化炭素の水素化法。
【請求項2】
前記金属硫化物はRhの硫化物である請求項1に記載の一酸化炭素の水素化法。
【請求項3】
前記金属硫化物はPdの硫化物である請求項1に記載の一酸化炭素の水素化法。
【請求項4】
前記金属硫化物はPtの硫化物である請求項1に記載の一酸化炭素の水素化法。
【請求項5】
一酸化炭素と水素とを含む原料ガスを、Rh、Pd,およびPtからなる群から選択される少なくとも一種を含有する金属硫化物のみからなる金属化合物と固体酸とを含有する触媒に接触させて、ジメチルエーテルを得ることを特徴とする一酸化炭素の水素化法。
【請求項6】
前記固体酸は、γ-アルミナである請求項5に記載の一酸化炭素の水素化法。
【請求項7】
前記原料ガスは、1~10000ppmの硫黄化合物を含有する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の一酸化炭素の水素化法。
【請求項8】
前記原料ガスにおける水素と一酸化炭素との比(H2/CO)は1~5であり、前記原料ガスと前記触媒との接触は、温度100~400℃、圧力0.1~10MPaの条件下で行なわれる請求項1ないし7のいずれか1項に記載の一酸化炭素の水素化法。
【請求項9】
前記原料ガスにおける水素と一酸化炭素との比(H2/CO)は1~3である請求項1ないし8のいずれか1項に記載の一酸化炭素の水素化法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、硫化物触媒を用いた一酸化炭素の水素化法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、石油、石炭、天然ガス、バイオマス、その他の炭素資源から有用な有機化学品を得る手段としては、次のような方法が工業的に行なわれている。まず、リフォーミング反応や石炭のガス化反応などによって、これらの炭素資源から一酸化炭素と水素とを含む混合ガス(合成ガス)を得る。次いで、こうした混合ガスを、特定の触媒の存在下、高温、高圧で反応させることにより、アルカンやアルケンなどの炭化水素、アルコール、およびエーテルなどの含酸素化合物に転換する。
【0003】
このようにして得られた有機化学品は、その製造プロセスの特性から、硫黄化合物や窒素化合物などを含まないため、各種燃焼用燃料として用いた場合には、有害物質の発生を抑制することができる。特に、工業的に合成ガスから大量に得られているメタノールは、ガソリンへの添加剤としてのみならず、最近は、燃料電池用の水素源としても注目されており、より生産性の高い製造法が望まれている。
【0004】
上述したような合成ガスの反応には、CuやFeあるいはCoなどの金属を含む特定の触媒が用いられている。これらの触媒に関しては、Studies in surface science and catalysis,vol.61,NATURAL GAS CONVERSION,A.Holmen et al.,Elsevier(1991)、およびStudies in surface science and catalysis,vol.81,NATURAL GAS CONVERSION,H.E.Curry-Hyde,R.F.Howe,Elsevier(1993)などに詳しく記載されている。
【0005】
これらの触媒は、高温、高圧の反応条件が必要とされるという欠点を有しているものの、比較的安価で入手しやすいことから、商業的に広く使用されている。しかしながら、上述したような触媒は、原料ガス中の種々の化学物質により劣化(触媒被毒)し、特に硫化水素などの硫黄化合物に対しては、そのわずかな量の混入によって短時間で失活してしまう。このため、工業的には、合成ガスの製造装置や一酸化炭素の水素化反応装置の前に脱硫設備を設けて、原料ガス中に含有される硫黄化合物をppbのオーダーの量まで低減しなければならない。その結果、前述の触媒を用いるには、プロセスが複雑化かつ高価なものとなることが避けられない。
【0006】
硫黄被毒に対する耐性を付与した触媒として、Mo,W,Re,Ru,Ni,Pd,Rh,Os,Ir,Ptの硫化物、酸化物または金属と、アルカリまたはアルカリ土類金属化合物とを含む表面積100m/g以下の触媒を用いて、アルケン炭化水素を製造する方法が、特開昭55-139325号公報に開示されている。ここでは、MoO-KO-カーボランダムからなる触媒に合成ガスを流通させ、その合成ガスが硫化水素20ppmを含む場合と含まない場合とで、活性(一酸化炭素変換率)またはガス相アルケン選択性に著しい変化がないことが実施例で述べられている。
【0007】
また特開昭55-139324号公報には、一酸化炭素および水素からC2~C4炭化水素を製造するに当たって、Mo,W,Re,Ru,Ptの金属、酸化物または硫化物と、アルカリまたはアルカリ土類金属化合物とを含む担持触媒を用いることが記載されている。この触媒においては、原料ガスに100ppm程度の硫化カルボニルを導入すると一時的に活性が低下するものの、原料ガスの供給を停止し、替わりに水素を500~600℃の高温で1日程度流通させることによって活性が回復するとしている。しかしながら、この手法によれば、一時的な硫黄化合物の混入に対しては、原料ガスをいったん停止しなければならず、ppmオーダーの量の硫黄化合物を含有する原料ガスに対しては、常に被毒された状態で、低い活性しか示さないことになる。
【0008】
さらに、特開昭61-91139号公報には、Mn酸化物、アルカリ金属、硫黄およびRuを含む触媒に合成ガスを接触させて、アルケンを製造する方法が開示されており、特公平4-51530号公報には、MoあるいはWとアルカリプロモーターと担体とを含む混合アルコールの製造法が開示されている。後者の方法においては、反応の際には少なくとも7MPa、通常10MPa以上の高圧を要するという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、合成ガスから液体合成燃料を得るために通常使用されている触媒は、硫黄化合物により失活(硫黄被毒)するため、工業的には、反応に供する前に合成ガス中の硫黄分をppbオーダーまで低減しなければならない。
【0010】
また、従来のMoやW系硫化物触媒を用いる場合には、十分な活性や生成物選択性を確保するために、高圧の条件が必要とされる。
【0011】
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであって、簡略化されたプロセスで温和な条件のもと、一酸化炭素を高い転化率で水素化し得る方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、一酸化炭素と水素とを含む原料ガスを、Rh、Pd,およびPtからなる群から選択される少なくとも一種を含有する金属硫化物のみからなる金属化合物を含む触媒に接触させて、メタノールを得ることを特徴とする一酸化炭素の水素化法を提供する。
【0013】
また本発明は、一酸化炭素と水素とを含む原料ガスを、Rh、Pd,およびPtからなる群から選択される少なくとも一種を含有する金属硫化物のみからなる金属化合物と固体酸とを含有する触媒に接触させて、ジメチルエーテルを得ることを特徴とする一酸化炭素の水素化法を提供する。
【0014】
前記固体酸は、γ-アルミナが好ましい。
【0015】
本発明の一酸化炭素の水素化法においては、前記原料ガスは、1~10000ppmの硫黄化合物を含有していてもよい。
【0016】
また、前記原料ガスにおける水素と一酸化炭素との比(H/CO)は1~5であることが好ましく、前記原料ガスと前記触媒との接触は、温度100~400℃、圧力0.1~10MPaの条件下で行なわれることが好ましい。
【0017】
前記原料ガスにおける水素と一酸化炭素との比(H/CO)は、1~3であることがより好ましい。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明者らは、鋭意研究した結果、特定の金属硫化物触媒が、一酸化炭素の水素化に極めて有効に作用することを見出した。本発明は、このような知見に基づいてなされたものである。
【0020】
本発明において用いられる触媒は、Rh、Pd、およびPtからなる群から選択される少なくとも一種を含有する金属硫化物のみからなる金属化合物を含む。この金属硫化物は、Rh、Pd、およびPtからなる群から選択される少なくとも一種を含有する金属単体または金属化合物前駆体を、硫化処理することによって得られる。硫化処理は、触媒調製時にあるいは前記金属化合物前駆体を水素化反応器に充填後に行なうことができる。
【0021】
触媒調製時の硫化処理は、Rh,Pd,Pt,Hfの少なくとも一種を含む金属単体、あるいはその塩化物、臭化物などのハロゲン化物;酸化物;硝酸塩;リン酸塩;硫酸塩などの無機酸塩;アンモニウム塩;酢酸塩などの有機酸塩;カルボニル化合物あるいはキレート錯体などを、硫化剤と反応させることによって行なうことができる。硫化剤としては、例えば、硫黄;硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物;硫化アンモニウム;二硫化炭素;硫化水素;有機スルフィド化合物などが挙げられる。
【0022】
また、水素化反応器に金属単体または金属化合物前駆体を充填した後に硫化する場合には、金属単体またはその塩化物、酸化物、硝酸塩、あるいはキレート錯体などを、硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウムなどのアルカリ金属硫化物や硫化アンモニウム、二硫化炭素などの硫化剤と反応させることによって行なうことができる。
【0023】
また、水素化反応器に金属化合物前駆体を充填後に硫化する方法としては、硫化水素、チオフェン等の硫化剤を流通させながら150~250℃まで徐々に加熱し、次いで徐々に所定の実操作温度に加熱し、この実操作温度で1~4時間保持する処理を例示することができる。
【0024】
上述したような硫化処理は、常法にしたがって行なうことができる。具体的には、T.A.PECORANO and R.R.CHIANELLI,“Hydrodesulfurization Catalysis by Transition Metal Sulfides”(Journal of Catalysis,67,430-445(1981))に記載されているように、金属硫化物を酢酸エチルに分散後、攪拌しながら、そこに硫化リチウムを添加して硫化物の沈殿を生成させる。この沈殿物を回収し、400℃にて硫化水素気流中に保持する。これを室温に冷却した後、酢酸洗浄し、その後、再度硫化水素処理を施すことによって、所望の金属硫化物が得られる。
【0025】
また、金属硫化物の合成には、日本化学会編、実験化学講座第4版、p.246~271、あるいは硫化物便覧(新日本鋳鍛造協会)に記載されている方法を採用することもできる。硫化物便覧には、硫化物の最も一般的な製法として、次のように記載されている。
【0026】
1.金属と硫黄との直接反応。この方法によれば、様々な組成の硫化物が得られる。各元素の硫黄に対する親和度にしたがって、反応は常温(2K+S=KS)または加熱下(Fe+S=FeS)で行なわれる。両元素からの合成は、しばしば排気した溶封管内で行なわれる。
【0027】
2.酸化物の硫黄(2CdO+3S=2CdS+SO、温度280~425℃)、硫化水素(La+3HS=La+3HO、温度1000~1200℃)、硫化炭素(TiO+CS=TiS+CO、温度800℃)による還元。
【0028】
3.硫酸塩の炭素(NaSO+4C=NaS+4CO)、水素(LiSO+4H=LiS+4HO)による還元。
【0029】
4.元素と硫化水素との反応(2Ga+3HS=Ga+3HO、800~1250℃)。
【0030】
5.塩と硫化水素との反応(TiCl+2HS=TiS+4HCl、600~1000℃)。
【0031】
6.水酸化物に硫化水素を作用させる。酸性硫化物の生成段階を経る(NaOH+HS=NaHS+HO、NaHS+NaOH=NaS+HO)。
【0032】
7.酸性溶液からの硫化物水素による沈殿(As、Sb、Sn、Ag、Hg、Pb、Bi、Cu、Cdの硫化物)と硫酸アンモニウムによる溶液からの沈殿(Zn、Mn、Co、Ni、Feの硫化物)。
【0033】
8.高級硫化物の熱分解ならびに高級硫化物と酸化物との間での、時には還元剤の存在下における反応による硫黄含有量の低い硫化物の生成、ポリ硫化物の入手には、主に正硫化物と硫黄との融合および液体アンモニア溶液内での金属と硫黄との直接反応が利用される(例えば、アルカリ金属のポリ硫化物の入手には、水素化物と硫黄との間の反応が用いられる;2LiH+3S=Li+HS)。
【0034】
さらに、原料ガスの高濃度の硫黄化合物によって、水素化反応中に金属化合物前駆体を硫化して使用することも可能である。
【0035】
本発明において用いられる金属硫化物触媒には、Ti,V,Mn,Fe,Co,Zr,Moなどの金属、Na,K,Mgなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属、La,Thなどのランタノイド、アクチノイドなどが、本発明の効果を損なわない範囲で含有されていてもよい。こうした成分の含有量は、その種類等に応じて適宜決定されるが、通常、金属硫化物触媒100質量部に対して0.1~100質量部程度であることが望まれる。
【0036】
上述したような金属硫化物触媒は、そのまま、あるいは以下に示すような担体に担持して使用することができる。
【0037】
担体としては、例えば、シリカ、アルミナ、弗素化アルミナ、ボリア、マグネシア、チタニア、ジルコニア、シリカ-アルミナ、アルミナ-マグネシア、アルミナ-ボリア、アルミナ-ジルコニア、珪素アルミノホスフェート、およびゼオライト等の無機酸化物;あるいはモンモリロナイト、カオリン、ハロサイト、ベントナイト、アダバルガイド、カオリナイト、ナクライト、アノーキサイト等の粘土鉱物、あるいはカーボン等を挙げることができる。
【0038】
これらは、単独であるいは二種以上を組み合わせて用いることができる。特に、シリカ、カーボン、チタニア、ジルコニアなどの中性の担体が好ましく、シリカがより好ましい担体である。
【0039】
担体には、ホウ素やリン等の非金属元素がさらに添加されていてもよい。担体への金属硫化物触媒の担持は、例えば、湿式含浸法、乾式含浸法、および減圧含浸法等の常法にしたがって行なうことができる。
【0040】
こうした担体に担持される場合、含浸後に得られる担体の担持金属量は、担体の性状等により変動し、一概には決められるものではないが、触媒全量に対して1質量%~30質量%の範囲であることが好ましく、5質量%~10質量%であることがより好ましい。担持量が前述の値よりも少ない場合には、触媒単位質量当たりの活性(一酸化炭素転化率)が十分に得られないおそれがある。一方、前述の値よりも多い場合には、金属硫化物が凝集して、金属当たりの活性が低くなるおそれがある。
【0041】
上述したような金属硫化物は、固体酸と組み合わせて複合触媒として用いることもできる。固体酸としては、例えば、アルミナ、アルミナ-シリカ、アルミナ-ポリア、アルミナ-マグネシア、シリカ-マグネシア等の酸化物、X型、Y型、MFI型、モルデナイト等のゼオライトやモンモリロナイト等の粘土鉱物等が挙げられ、特にγ-アルミナが好ましい。この固体酸は、硫化物触媒の担体あるいは硫化物触媒との物理的混合による複合触媒として、好ましく使用することができる。
【0042】
このように固体酸との複合触媒として金属硫化物を用いることによって、ジメチルエーテル(DME)を合成ガスから一段のプロセスで合成することが可能となる。DMEは、次世代のディーゼル燃料として期待されており、現在はメタノールを合成した後、さらにその脱水反応を行なうという二段プロセスによって商業的に合成されている。
【0043】
本発明のような金属硫化物・固体酸複合触媒を用いることにより、合成ガスから一段のプロセスでDMEを合成することが可能となる。
【0044】
本発明においては、上述したような触媒の存在下、一酸化炭素と水素とを含む原料ガスを流通・反応させて液体合成燃料、例えばメタノールを得る。なお、前述の複合触媒を用いる場合には、ジメチルエーテルが得られる。用いられる原料ガスの組成は、水素/一酸化炭素比が1~5であることが好ましく、1~3であることが好ましい。これは、次のような根拠によるものである。すなわち、(1)メタノール合成反応(CO+2H=CHOH)の水素/一酸化炭素比は2であること、(2)リフォーミング反応により製造される合成ガスの水素/一酸化炭素比は通常1以上であり、ほとんどが水素過剰であること、の2つの根拠による。
【0045】
なお、原料ガスには、一酸化炭素および水素に加えて硫黄化合物が含有されていてもよい。硫黄化合物の濃度は、好ましくは1~10000ppm、より好ましくは100~2500ppm、最も好ましくは100~500ppmである。
【0046】
また、触媒と原料ガスとの反応温度は、好ましくは100~400℃、より好ましくは300~350℃である。また反応圧力は、好ましくは0.1~10MPa、より好ましくは1~8MPaである。
【0047】
本発明においては、一酸化炭素と水素とを含む原料ガスから液体合成燃料を得るに当たって、特定の触媒の存在下で流通・反応させているので、低圧の温和な条件下で高活性、高生成物選択性が得られる。
【0048】
しかも、本発明において用いられる触媒は、硫黄被毒しにくいため、硫化水素等の硫黄化合物を含有する原料ガスを、脱硫なしで、あるいは軽度の脱硫処理によって反応に供することができる。したがって、液体燃料の製造プロセスの簡略化を図ることが可能となった。
【0049】
【実施例】
以下、実施例および比較例を示して、本発明をさらに詳細に説明する。
【0050】
実施例および比較例においては、次の反応装置および条件で触媒の活性を評価した。
【0051】
活性評価条件
固定式高圧流通反応装置
原料ガス組成:一酸化炭素33%/水素62%/アルゴン5%
反応温度:240℃、340℃
反応圧力:5.1MPa
(実施例1)ロジウム化合物
まず、塩化ロジウム(RhCl)1.0gを、酢酸エチル100mlに分散させ、そこに硫化剤としての硫化リチウム(LiS)0.33gを加えた。得られた混合物を室温で4時間攪拌して、沈殿物を得た。この沈殿物をパイレックス製の反応器に充填し、5%硫化水素/水素ガスを流速30ml/minで流しながら、400℃で2時間硫化した。
【0052】
硫化後の沈殿物を酢酸で洗浄することにより塩化物イオンを取り除き、再び同様の条件で硫化することによって、ロジウム硫化物(Rh)を調製した。
【0053】
得られたロジウム硫化物をステンレス製の反応器に充填し、400℃、常圧で硫化水素とロジウムとのモル比が3.0になるまで1100ppm硫化水素/水素ガスを流通した。その後、340℃に降温し、流通ガスを原料ガスに切り替えて、温度340℃、圧力5.1MPaの条件下で反応を開始した。反応がほぼ落ち着いたところで、200ppmの硫化水素を反応器に導入した。
【0054】
硫化水素導入前の活性(定常活性)と硫化水素導入中の活性とを、下記表1に示す。なお、表1に示した硫化水素導入中の活性は、導入した硫化水素の量が反応器に充填されたロジウムのモル数に対して、10%および40%となったときのものである。
【0055】
比較例1:市販のメタノール合成触媒
粒度を32から42メッシュにそろえた市販のメタノール合成触媒(ICI社製、酸化銅:60質量%、酸化亜鉛:30質量%、酸化アルミナ:10質量%)を用意した。
【0056】
このメタノール合成触媒をステンレス製の反応器に充填し、流速21ml/minの33%一酸化炭素/62%水素の気流中、常圧で室温から120℃まで4℃/minで昇温して、120℃で90min保持した。次いで、210℃まで1℃/minで昇温して、210℃で12時間保持した後、温度240℃、圧力5.1MPaの条件下で反応を開始した。
【0057】
はじめに、硫化水素を含まない合成ガスを用いて反応を行ない、定常活性に達した後、200ppmの硫化水素を導入した。
【0058】
硫化水素導入前の活性(定常活性)と硫化水素導入中の活性とを、下記表1に示す。なお、表1に示した硫化水素導入中の活性は、導入した硫化水素の量が反応器に充填された銅のモル数に対して、10%、20%および30%となったときのものである。
【0059】
【表1】
JP0003632071B2_000002t.gif【0060】
表1に示された結果から、特定の触媒を用いた本発明の方法(実施例1)においては、硫化水素を導入する前の触媒重量基準のメタノール収量は、市販の触媒を用いた比較例1の場合よりも著しく大きいことがわかる。
【0061】
しかも、実施例1においては、原料ガスとともに硫化水素が導入されても、メタノール収量はほとんど変化しない。これに対して比較例1では、導入される硫化水素の量が増加するにしたがって、メタノール収量は確実に低下している。
【0062】
実施例2:シリカ担持ロジウム硫化物
塩化ロジウム(RhCl・3HO)0.54gを10mlの蒸留水に溶かした溶液を用い、ロジウムを3.0gのシリカにincipient wetness法により担持した。その後、減圧乾燥(60℃)、乾燥(120℃)、焼成(350℃)を施して、シリカ担持ロジウム酸化物を調製した。ロジウムの担持量は、金属換算で5質量%である。
【0063】
これをパイレックス製の反応器に充填し、400℃、常圧で硫化水素とロジウムとのモル比が90になるまで5%硫化水素/水素気流を流通して、シリカ担持ロジウム硫化物を調製した。
【0064】
得られたシリカ担持硫化ロジウムをステンレス製の反応器に充填し、400℃、常圧で硫化水素とロジウムとのモル比が5.0になるまで1100ppm硫化水素/水素ガスを流通した。その後、340℃に降温し、流通ガスを原料ガスに切り替えて反応を開始した。
【0065】
本実施例においては、反応温度340℃、反応圧力5.1MPa、原料ガス流量18000L/kg-触媒/hの条件の下、硫化水素導入前のメタノール収量は42.4g/kg-触媒/h(89g/mol-Rh/h)であった。
【0066】
前述の実施例1では、表1に示したように、硫化水素導入前には420g/kg-触媒/h(63g/mol-Rh/h)のメタノールが得られている。したがって、実施例2の触媒重量基準のメタノール収量はロジウム硫化物(実施例1)より小さいものの、ロジウムのモル数基準のメタノール収量は、実施例1のロジウム硫化物より大きいことがわかる。
【0067】
実施例3:パラジウム硫化物
まず、塩化パラジウム(PdCl)1.0gを酢酸エチル100mlに分散させ、そこに硫化剤としての硫化リチウム(LiS)0.26gを加えた。得られた混合物を室温で4時間攪拌して、沈殿物を得た。この沈殿物をパイレックス製の反応器に充填し、流速30ml/minの5%硫化水素/水素の気流中、400℃で2時間硫化した。
【0068】
硫化後の沈殿物を酢酸で洗浄することにより塩化物イオンを取り除き、再び同様の条件で硫化することによりパラジウム硫化物(主成分はPdS)を調製した。
【0069】
得られたパラジウム硫化物をステンレス製の反応器に充填し、400℃、常圧で硫化水素とパラジウムとのモル比が2.0になるまで1100ppm硫化水素/水素ガスを流通した。その後、340℃に降温し、流通ガスを原料ガスに切り替えて、温度340℃、圧力5.1MPaの条件下で反応を開始した。
【0070】
はじめに硫化水素を含まない原料ガスを用いて反応を行ない、定常活性に達した後に100ppmの硫化水素を導入した。導入した硫化水素の量が、反応器に充填したパラジウムのモル数に対して14%となった時点で、硫化水素の導入を停止し、活性が定常値となるまで反応を続けた。
【0071】
硫化水素導入前の活性(定常活性)、硫化水素導入中の活性、および硫化水素停止後の活性(定常活性)を、下記表2に示す。なお、表2に示した硫化水素導入中の活性は、導入した硫化水素の量が反応器に充填されたパラジウムのモル数に対して、5%、10%、および14%となったときのものである。
【0072】
比較例2:市販のメタノール合成触媒
粒度を32から42メッシュにそろえた市販のメタノール合成触媒(ICI社製、酸化銅:60質量%、酸化亜鉛:30質量%、酸化アルミナ:10質量%)0.30gを用意した。
【0073】
このメタノール合成触媒をステンレス製の反応器に充填し、流速30ml/minの33%一酸化炭素/62%水素の気流中、常圧で室温から120℃まで4℃/minで昇温して、120℃で90min保持した。次いで、210℃まで1℃/minで昇温して、210℃で1時間保持した後、温度240℃、圧力5.1MPaの条件下で反応を開始した。
【0074】
はじめに、硫化水素を含まない原料ガスを用いて反応を行ない、定常活性に達した後、100ppmの硫化水素を導入した。導入した硫化水素の量が反応器に充填した銅のモル数に対して25%となった時点で硫化水素の導入を停止し、さらに反応を続けた。
【0075】
硫化水素導入前の活性(定常活性)、硫化水素導入中の活性、および硫化水素停止後の活性(定常活性)を、下記表2に示す。なお、表2に示した硫化水素導入中の活性は、導入した硫化水素の量が反応器に充填された銅のモル数に対して5%、10%、および20%となったときのものである。表2には、停止後20時間経過した時点の活性を、硫化水素停止後の活性として示した。
【0076】
【表2】
JP0003632071B2_000003t.gif【0077】
表2に示されるように、特定の触媒を用いた本発明の方法(実施例3)においては、硫化水素を導入する前の触媒重量基準のメタノール収量は、市販の触媒を用いた比較例2により得られるものより大きい。
【0078】
実施例3のメタノール収量は、硫化水素を導入すると減少するものの、連続的な減少は観察されず、硫化水素が共存しても一定量のメタノールを生成できることがわかる。しかも、実施例3におけるメタノール収量は、硫化水素の導入を停止すると導入前の約80%まで回復している。
【0079】
これに対して、比較例2のメタノール収量は、硫化水素の導入に伴なって連続的に減少し、硫化水素の導入を停止したところで、メタノール収量は減少し続けている。
【0080】
したがって、市販の触媒を用いた従来の方法では、高いメタノール収量が得られないのみならず、いったん硫化水素が原料ガスに混入すると、メタノールの収量を回復することが困難であることがわかる。
【0081】
実施例4(ロジウム硫化物・固体酸複合触媒)
前述の実施例1と同様の手法により、ロジウム硫化物(Rh)を調製した。得られたロジウム硫化物(Rh)0.2gに、固体酸としての焼成γ-アルミナ0.1gを加えて、乳鉢で混合することにより、ロジウム硫化物・固体酸複合触媒を調製した。
【0082】
得られた複合触媒をステンレス製の反応器に充填し、400℃、常圧で硫化水素とロジウムとのモル比が3.0になるまで1100ppm硫化水素/水素ガスを流通させた。その後、340℃に降温し、流通ガスを原料ガスに切り替えて、温度340℃、圧力5.1MPa、原料ガス流量18000L/kg-Rh/hにて反応を開始した。
【0083】
反応が安定した時点での生成物収量は、ジメチルエーテル(DME)が190g/kg-Rh/h、メタノールが40g/kg-Rh/hであった。ここでのDME収量は、メタノール2モルからDME1モルが生成するとした場合のメタノール収量264g/kg-Rh/hに相当する。
【0084】
実施例1において、原料ガス流量を20000L/kg-Rh/hとした以外は、上述と同様の条件で反応させたところ、300g/kg-Rh/hのメタノールを生成した。このことから、本実施例のロジウム硫化物・固体酸複合触媒は、ロジウム硫化物に匹敵する高活性を有するといえる。
【0085】
したがって、ロジウム硫化物・固体酸複合触媒を用いることによって、メタノール合成後、さらにその脱水反応によりDMEを合成するという従来の二段プロセスを、一段で済ますことが可能となる。このため、コスト的にも生産性的にも有利である。
【0086】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、簡略化されたプロセスで温和な条件のもと、一酸化炭素を高い転化率で水素化し得る方法が提供される。
【0087】
本発明の方法は、天然ガスや石炭、重質油、炭層メタン、バイオマスなどを改質して得られる合成ガスから、メタノールあるいはジメチルエーテルを得るために極めて有効に用いることができ、その工業的価値は絶大である。