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明細書 :キラル鉛触媒と不斉アルドール反応方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3343100号 (P3343100)
公開番号 特開2001-252571 (P2001-252571A)
登録日 平成14年8月23日(2002.8.23)
発行日 平成14年11月11日(2002.11.11)
公開日 平成13年9月18日(2001.9.18)
発明の名称または考案の名称 キラル鉛触媒と不斉アルドール反応方法
国際特許分類 B01J 31/22      
C07B 53/00      
C07C 45/72      
C07C 49/82      
C07C 49/83      
C07B 61/00      
C07M  7:00      
FI B01J 31/22 Z
C07B 53/00
C07C 45/72
C07C 49/82
C07C 49/83
C07B 61/00
C07M 7:00
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2000-069500 (P2000-069500)
出願日 平成12年3月13日(2000.3.13)
審査請求日 平成12年3月13日(2000.3.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】小林 修
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】関 美祝
参考文献・文献 特開2000-42404(JP,A)
特開2001-233846(JP,A)
特開 平6-263682(JP,A)
PU L,1,1’-Binaphtyl Dimers,Oligomers,and Polymers,Chem Rev,1998年11月,Vol.98 No.7,p.2405-2494
調査した分野 B01J 21/00 - 38/74
C07B 61/00
特許請求の範囲 【請求項1】
次式
Pb(ORf 2
(Rfは、含フッ素アルキルスルホニル基を示す)で表わされる鉛化合物と、次式
【化1】
JP0003343100B2_000002t.gifで表わされる骨格を有するキラルクラウンエーテル化合物とを含有することを特徴とするキラル鉛触媒。

【請求項2】
鉛化合物は、鉛トリフレートである請求項1のキラル鉛触媒。

【請求項3】
キラルクラウンエーテル化合物は、ビナフチル環に炭化水素基またはハロゲン原子の置換基を有している請求項1または2のキラル鉛触媒。

【請求項4】
請求項1ないし3の触媒を用いての不斉アルドール反応方法であって、前記触媒の存在下、含水溶媒中において、アルデヒド反応物とシリルエノールエーテル化合物とを反応させてヒドロキシケトン化合物を合成することを特徴とする不斉アルドール反応方法。

【請求項5】
含水溶媒が水とアルコールとからなる請求項4の不斉アルドール反応方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】この出願の発明は、キラル鉛触媒と不斉アルドール反応方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、水の存在下においても、高い収率と光学選択性を可能とし、温和な条件下において不斉合成を可能とする新しいキラル鉛触媒と、これを用いた不斉アルドール反応方法に関するものである。

【10】
そして、この出願の発明は、第4には、前記第1ないし第3のいずれかの触媒を用いての不斉アルドール反応方法であって、前記触媒の存在下、含水溶媒中において、アルデヒド反応物とシリルエノールエーテル化合物とを反応させてヒドロキシケトン化合物を合成することを特徴とする不斉アルドール反応方法を提供し、第5には、含水溶媒が水とアルコールとからなる不斉アルドール反応方法を提供する。

【11】

【発明の実施の形態】この出願の発明は上記のとおりの特徴を有するものであるが、以下にその実施の形態について説明する。

【12】
まず、この出願の発明にキラル鉛触媒を基本的に構成することになる鉛化合物については、鉛の含フッ素アルキルスルホネート化合物であるが、この場合の含フッ素アルキル基は、アルキル基の水素原子の一部もしくは全部がフッ素原子により置換されたものであって、なかでも、-SO2 -Cn 2n+1(n≦10)のパーフルオロアルキル基が好適なものとして例示される。なかでもトリフレート基がその代表的なものとしてこの発明において有効に用いられる。

【13】
また、前記のキラルクラウンエーテル化合物については、そのビナフチル環に、キラル触媒活性を阻害しない各種の置換基、たとえば炭化水素基やハロゲン原子、アルコキシ基、複素環基等を6,6′-位置等に適宜に有していてもよい。クラウンエーテル環のオキシアルキレン鎖の水素原子の適宜な置換も考慮されてよい。

【14】
以上の鉛化合物とキラルクラウンエーテル化合物とを含有するこの発明のキラル鉛触媒は、その各々を、溶媒中において混合することにより調製することができる。

【15】
極性溶媒としては、ハロゲン化炭化水素、ニトリル類、スルホキシド類、アシド類等の各種のものでよい。調製は、たとえば-10℃~10℃程度の温度条件において行うことができる。

【16】
鉛化合物とキラルクラウンエーテルス化合物の使用量については、鉛化合物1モルに対し、配位子としてのキラルクラウンエーテル化合物を0.1~10モルの割合で使用して調製することができる。そして、この調製に際し、必要に応じて、他の配位子化合物や反応促進剤を共存させるようにしてもよい。

【17】
調製されたこの出願の発明のキラル鉛触媒は、ルイス酸性を有し、有機合成の基本としての炭素-炭素結合の形成を可能とし、しかも水の存在下においても不斉合成を可能とする。

【18】
この出願の発明は、このような不斉合成の一つとして、具体的に、不斉アルドール反応方法を提供する。すなわち、この発明においては、前記のとおりの触媒の存在下に、含水溶媒中において、アルデヒド化合物とシリルエノールエーテル化合物とを反応させ、ヒドロキシケトン化合物の不斉合成を可能としている。

【19】
このヒドロキシケトン化合物の不斉合成は、たとえば次の反応式として例示することができる。

【2】

【従来の技術と発明の課題】近年、医薬品、香料等の諸分野での化学合成では、高い収率で光学選択性に優れた不斉合成の実現が重要な課題になっている。特に、不斉合成反応においては、触媒を用いて行う方法が注目されているところである。

【20】

【化3】
JP0003343100B2_000004t.gif【0021】式中のR1 、R2 、R3 およびR4 は、置換基を有していてもよい炭化水素基、あるいは酸素原子や硫黄原子等の異種原子を介して結合している、置換基を有していてもよい炭化水素基を示し、R5 、R6 およびR7 は、各々炭化水素基を示している。

【22】
この反応においては、含水溶媒が使用されるが、この含水溶媒としては、水、あるいは水とアルコール、たとえば脂肪族もしくは脂環式アルコール、またはTHF等との混合として使用される。水とアルコールとの混合溶媒は好適に使用されるものであって、この場合の水の割合は、アルコールに対する容量比として0.9以下とするのが好ましい。

【23】
なかでも、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール等の分枝鎖状アルキルアルコールが高い反応性と選択性を与えるものとして有効に用いられる。

【24】
反応に際しての前記の触媒の使用量は、鉛化合物およびキラルクラウンエーテル化合物の各々について、たとえば、1~40モル%程度とすることができる。アルデヒド化合物とシリルエノールエーテル化合物の使用量は、モル比として1/10~10/1程度であってよい。

【25】
また、反応の温度は、温和な条件が採用できる。たとえば-5℃~15℃の温度範囲である。

【26】
以上のようなこの発明の不斉アルドール反応方法においては、反応操作が簡便で、より温和な反応温度であるだけでなく、環境面においても有利な含水溶媒が使用でき、しかも極低温を必要としない等の合成上の利点を有している。しかも、収率および不斉収率も良好である。

【27】
そこで以下に実施例を示し、さらに詳しくこの出願の発明について説明する。もちろん、以下の例によって発明が限定されることはない。

【28】

【実施例】<実施例1>アルゴン雰囲気下、100℃/1mmHgで1時間乾燥した鉛(II)トリフラート(0.1mmol、20mol%)の塩化メチエン(1ml)溶液に、次式

【29】

【化4】
JP0003343100B2_000005t.gifで表わされるキラルクラウンエーテル化合物(0.12mmol、24mol%)の塩化メチレン溶液を室温で加え、1時間攪拌することによってキラル鉛触媒を調製した。

【3】
このような触媒としては、金属元素にキラル配位子化合物を配位させたものがこれまでにも提案されているが、従来のこれらキラル触媒は、適用される反応がかなり限定されたものであり、また厳密に無水条件下で、しかも極低温で行われる等の反応条件や操作性上で制約の大きいことが課題とされていた。

【30】
先に調製したキラル鉛触媒の塩化メチレン溶液の溶媒を留去し、H2 O-i-PrOH(1:4.5、0.50ml)溶液とした。0℃に冷却した後に、ベンズアルデヒド(0.5mmol)、続いて1-フェニル-1-トリメチルシロキシ-1-プロペン(0.75mmol)をH2 O:i-PrOH(1:4.5、1.0ml)溶液として加えた。20時間攪拌した後、酢酸エチル(15ml)と飽和NaHCO3 水溶液(10ml)を加え、有機層を分離した後、生成物を水層から酢酸エチル(10ml×2)で抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧下溶媒を留去し、残さをシリカゲル薄層クロマトグラフィーで生成したところ、1,3-ジフェニル-3-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノンが得られた(89%、syn:anti=91:9、69%ee(syn))。

【31】
ジアステレオマーの比率はプロトンNMRより決定した。Syn体の光学純度は、光学異性体分離カラム(ダイセル化学工業製:CHIRALPAK AD、ヘキサン/2-プロパノール=30/1、保持時間17.88、22.64min(syn)、32.54、36.54min(anti))を用いたHPLC分析により決定した。
<実施例2>実施例1において、ベンズアルデヒドに代えて各種のアルデヒド化合物を用いて不斉アルドール反応を行った。

【32】
その結果を表1に示した。

【33】

【表1】
JP0003343100B2_000006t.gif【0034】Entry 10においては、実に、対応するβ-ヒドロキシケトン化合物合成の反応収率99%で、syn/anti=94/6、syn=87%eeの成績が得られている。他の例においても、収率および光学選択性に優れていることがわかる。

【35】
生成物の同定物性値を例示すると以下のとおりである。

【36】

【表2】
JP0003343100B2_000007t.gif【0037】
【表3】
JP0003343100B2_000008t.gif【0038】
【表4】
JP0003343100B2_000009t.gif【0039】<実施例3>実施例1において、1-フェニル-1-トリメチルシロキシ-1-プロペンに代えて、1-(4-メトキシフェニル)-1-トリメチルシロキシ-1-プロペンを用いて同様に反応させたところ、反応収率は85%で、syn/anti=85/15、syn=58%eeの結果が得られた。
<実施例4>実施例1において、H2 O:i-PrOH=1:4.5(1.5ml)の比率を1:9に変更して同様に反応を行った。

【4】
一方、この出願の発明者らは、金属化合物のある種のものが水中もしくは水の存在下においても安定に存在し、ルイス酸としての触媒機能を有しているとの特性を生かし、これを触媒に用いてアルドール反応や Diels-Alder反応などの有機合成上、基本的かつ重要な炭素-炭素結合形成反応が水をはじめとする含水溶媒中で円滑に進行することを見出し、これに基づいての新しい触媒系や合成反応を提案している。

【40】
その結果、反応収率92%、syn/anti=91/9、syn=62%eeの結果が得られた。
<実施例5>実施例4と同様にして、各種の水性アルコール溶媒を用いて反応を行った。その結果を次表に示した。

【41】

【表5】
JP0003343100B2_000010t.gif【0042】<実施例6>実施例4において、キラルクラウンエーテル化合物を代えて反応を行った。その結果を表6に示した。

【43】

【表6】
JP0003343100B2_000011t.gif【0044】
【発明の効果】以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、収率、光学選択性も高く、汎用性があって、しかも簡便で温和な条件での反応操作が可能とされる、新しい不斉合成触媒と、これを用いた不斉合成方法が提供される。

【5】
そこで、この出願の発明は、以上のとおりのこの出願の発明者らによる知見と新しい提案をも踏まえ、従来の不斉合成についての問題点を解消し、水の存在下においても、温和な条件下の反応を可能とし、収率、光学選択性も高く、汎用性があって、しかも簡便な反応操作が可能とされる、新しい不斉合成触媒と、これを用いての、光学活性なβ-ヒドロキシカルボニル化合物を合成するための基本的、かつ重要な反応としての不斉アルドール反応方法を提供することを課題としている。

【6】

【課題を解決するための手段】この出願の発明は、上記のとおりの課題を解決するものとして、第1には、次式
Pb(ORf 2
(Rfは、含フッ素アルキルスルホニル基を示す)で表わされる鉛化合物と、次式

【7】

【化2】
JP0003343100B2_000003t.gif【0008】で表わされる骨格を有するキラルクラウンエーテル化合物とを含有することを特徴とするキラル鉛触媒を提供する。

【9】
また、この出願の発明は、第2には、鉛化合物は、鉛トリフレートであるキラル鉛触媒を、第3には、キラルクラウンエーテル化合物は、ビナフチル環に炭化水素基またはハロゲン原子の置換基を有しているキラル鉛触媒を提供する。