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明細書 :III型アレルギー炎症モデル動物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3453348号 (P3453348)
公開番号 特開2002-065110 (P2002-065110A)
登録日 平成15年7月18日(2003.7.18)
発行日 平成15年10月6日(2003.10.6)
公開日 平成14年3月5日(2002.3.5)
発明の名称または考案の名称 III型アレルギー炎症モデル動物
国際特許分類 A01K 67/027     
A61K 45/00      
A61P 37/08      
C12Q  1/02      
G01N 33/15      
G01N 33/48      
G01N 33/50      
C12N  5/10      
C12R  1:91      
FI A01K 67/027
A61K 45/00
A61P 37/08
C12Q 1/02
G01N 33/15
G01N 33/48
G01N 33/50
C12R 1:91
C12N 5/00
請求項の数または発明の数 8
全頁数 10
出願番号 特願2000-253984 (P2000-253984)
出願日 平成12年8月24日(2000.8.24)
審査請求日 平成12年11月24日(2000.11.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】高井 俊行
【氏名】小野 栄夫
【氏名】湯浅 貴恵
【氏名】渡邊 武
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】吉田 佳代子
参考文献・文献 国際公開97/14791(WO,A1)
調査した分野 A01K 67/027
特許請求の範囲 【請求項1】
Lyn及びFcγIIBの遺伝子機能が染色体上で欠損し、かつI型アレルギーであるアナフィラキシーを発症せず、III型アレルギーであるアルサス反応を特異的に誘導することを特徴とするIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物。

【請求項2】
非ヒト動物が齧歯目動物であることを特徴とする請求項記載のIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物。

【請求項3】
齧歯目動物がマウスであることを特徴とする請求項1又は2記載のIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物。

【請求項4】
請求項1~3のいずれか記載のIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物におけるFcγRIII機能を測定・評価することを特徴とするFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法。

【請求項5】
非ヒト動物におけるFcγRIII機能の測定・評価が、全身性受動アナフィラキシー応答強度を指標とした、抗原投与時以降の直腸内温度の測定・評価であることを特徴とする請求項記載のFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法。

【請求項6】
請求項1~3のいずれか記載のIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物由来の骨髄細胞から誘導した骨髄由来肥満細胞を生体外で被検物質と接触させ、該骨髄由来肥満細胞におけるFcγRIII機能を測定・評価することを特徴とするFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法。

【請求項7】
骨髄由来肥満細胞におけるFcγRIII機能の測定・評価が、肥満細胞の脱顆粒能、肥満細胞の細胞質内カルシウム動態、又は肥満細胞の全タンパク質チロシンリン酸化の測定・評価であることを特徴とする請求項記載のFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法。

【請求項8】
請求項1~3のいずれか記載のIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物と、FcγIIBの遺伝子機能が染色体上で欠損している非ヒト動物とを用いることを特徴とする請求項4~7のいずれか記載のFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、I型アレルギーであるアナフィラキシーを発症せず、III型アレルギーであるアルサス反応を特異的に誘導することができるIII型アレルギー炎症の実験モデル動物や、かかる実験モデル動物を用いるFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法に関する。

【10】
すなわち本発明は、Lyn及びFcγIIBの遺伝子機能が染色体上で欠損し、かつI型アレルギーであるアナフィラキシーを発症せず、III型アレルギーであるアルサス反応を特異的に誘導することを特徴とするIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物(請求項)や、非ヒト動物が齧歯目動物であることを特徴とする請求項記載のIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物(請求項)や、齧歯目動物がマウスであることを特徴とする請求項1又は2記載のIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物(請求項)に関する。

【11】
また本発明は、請求項1~3のいずれか記載のIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物に被検物質を投与し、該非ヒト動物におけるFcγRIII機能を測定・評価することを特徴とするFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法(請求項)や、非ヒト動物におけるFcγRIII機能の測定・評価が、全身性受動アナフィラキシー応答強度を指標とした、抗原投与時以降の直腸内温度の測定・評価であることを特徴とする請求項記載のFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法(請求項)や、請求項1~3のいずれか記載のIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物由来の骨髄細胞から誘導した骨髄由来肥満細胞を生体外で被検物質と接触させ、該骨髄由来肥満細胞におけるFcγRIII機能を測定・評価することを特徴とするFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法(請求項)や、骨髄由来肥満細胞におけるFcγRIII機能の測定・評価が、肥満細胞の脱顆粒能、肥満細胞の細胞質内カルシウム動態、又は肥満細胞の全タンパク質チロシンリン酸化の測定・評価であることを特徴とする請求項記載のFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法(請求項)や、請求項1~3のいずれか記載のIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物と、FcγIIBの遺伝子機能が染色体上で欠損している非ヒト動物とを用いることを特徴とする請求項4~7のいずれか記載のFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法(請求項)に関する。

【12】

【発明の実施の形態】本発明のIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物としては、Lyn及びFcγIIBの遺伝子機能が染色体上で欠損し、かつI型アレルギーであるアナフィラキシーを発症せず、III型アレルギーであるアルサス反応を特異的に誘導する非ヒト動物であれば、特に制限されるものではなく、ここでLyn及びFcγIIBの遺伝子機能が共に染色体上で欠損している非ヒト動物とは、例えばLynやFcγIIBをコードする非ヒト動物の内在性遺伝子の一部もしくは全部が破壊・欠損・置換等の遺伝子変異により不活性化され、野生型においてLyn及びFcγIIBを発現する機能を失なった非ヒト動物等をいう。また本発明における非ヒト動物としては、マウス、ラット、モルモット等の齧歯目動物を具体的に挙げることができるが、これらに限定されるものではない。以下、Lyn及びFcγIIBの遺伝子機能が共に染色体上で欠損している非ヒト動物の作製方法を、Lyn及びFcγIIBの遺伝子機能が共に染色体上で欠損したマウスを例にとって説明する。

【13】
まず、Lyn遺伝子機能が染色体上で欠損したマウス、すなわちLynノックアウトマウス(Lyn-/-)を作製する。Lynノックアウトマウスは、文献(Immunity 3, 549-560, 1995)に記載する方法等によって作製することができる。具体的には、マウス遺伝子ライブラリーからPCR等の方法により得られた遺伝子断片を用いて、Lyn遺伝子をスクリーニングし、スクリーニングされたLyn遺伝子を組換えDNA技術により、Lyn遺伝子の一部又は全部を、例えばネオマイシン耐性遺伝子等のマーカー遺伝子で置換し、5′末端側にジフテリアトキシンAフラグメント(DT-A)遺伝子や単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV-tk)遺伝子等の遺伝子を導入してターゲティングベクターを作製し、この作製されたターゲッティングベクターを線状化し、エレクトロポレーション(電気穿孔)法等によってES細胞に導入し、相同的組換えを行い、その相同的組換え体の中から、G418やガンシクロビア(GANC)等の抗生物質に抵抗性を示すES細胞を選択する。この選択されたES細胞が目的とする組換え体かどうかをサザンブロット法等により確認することが好ましい。

【14】
上記組換えES細胞をマウスの胚盤胞中にマイクロインジェクションし、かかる胚盤胞を仮親のマウスに戻し、キメラマウスを作製する。このキメラマウスを野生型のマウスと交配させると、ヘテロ接合体マウスを得ることができ、また、このヘテロ接合体マウスを交配させることによって、Lynノックアウトマウスを得ることができる。そして、かかるLynノックアウトマウスにおけるLyn遺伝子機能が染色体上で欠損していることを確認する方法としては、例えば、上記の方法により得られたマウスの尾端の一部からDNAを分離してサザンブロット法等により調べたり、このマウスの骨髄細胞等からRNAを単離してノーザンブロット法等により調べたり、またこのマウスのLynの発現をウエスタンブロット法等により調べる方法を挙げることができる。

【15】
Lynノックアウトマウス同様に、FcγRIIB遺伝子機能が染色体上で欠損したマウス、すなわちFcγRIIBノックアウトマウスを作製する。FcγRIIBノックアウトマウス(FcγRIIB-/-)は、文献(Nature 379, 346-349, 1996)に記載する方法や、上記Lynノックアウトマウスの作製方法と同様な方法等によって作製することができる。

【16】
Lyn及びFcγIIBの遺伝子機能が共に染色体上で欠損したダブルノックアウトマウス、すなわちLyn及びFcγRIIBの両分子の欠失変異がホモ接合体の状態になっているマウス(Lyn-IIB-)は、上記Lynノックアウトマウス(Lyn-/-)とFcγRIIBノックアウトマウス(FcγRIIB-/-)系統のマウスを掛け合わせて作製することができる。また、本発明におけるFcγIIBの遺伝子機能が染色体上で欠損しているマウスとして、上記FcγRIIBノックアウトマウス(FcγRIIB-/-)、好ましくはダブルノックアウトマウス(Lyn-IIB-)と同腹子のLyn+/-FcγRIIB-/-マウス(IIB-)を例示することができる。

【17】
本発明におけるFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法としては、本発明のI型アレルギーであるアナフィラキシーを発症せず、III型アレルギーであるアルサス反応を特異的に誘導するIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物、例えば上記ダブルノックアウトマウス(Lyn-IIB-)に被検物質を投与し、該非ヒト動物におけるFcγRIII機能を測定・評価するスクリーニング方法や、本発明のI型アレルギーであるアナフィラキシーを発症せず、III型アレルギーであるアルサス反応を特異的に誘導するIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物、例えば上記ダブルノックアウトマウス(Lyn-IIB-) 由来の骨髄細胞から誘導した骨髄由来肥満細胞を生体外で被検物質と接触させ、該骨髄由来肥満細胞におけるFcγRIII機能を測定・評価するスクリーニング方法であれば特に制限されるものではないが、スクリーニングに際して、FcγRIII機能の程度をFcγIIBの遺伝子機能が染色体上で欠損している非ヒト動物、例えば前記FcγRIIBノックアウトマウス(FcγRIIB-/-)、好ましくはダブルノックアウトマウス(Lyn-IIB-)と同腹子のLyn+/-FcγRIIB-/-マウス(IIB-)と比較評価することが好ましい。

【18】
上記非ヒト動物におけるFcγRIII機能を測定・評価する方法としては、例えば、被検物質を生体内に投与する場合は、全身性受動アナフィラキシー応答強度を指標とした、抗原投与時以降の直腸内温度を測定・評価する方法や、組織内の好酸球や肥満細胞等から放出される顆粒内に含まれる物質を、ELISAやウエスタンブロット等により測定・評価する方法などを挙げることができ、被検物質を骨髄由来肥満細胞と生体外で接触させる場合は、かかる肥満細胞における脱顆粒能、肥満細胞における細胞質内カルシウム動態、肥満細胞の全タンパク質チロシンリン酸化等を測定・評価する方法などを挙げることができる。

【19】
本発明のスクリーニング方法により得られる、FcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質の候補物質としては、FcγRIIIに対するアゴニスト及びアンタゴニスト、Lynに依存しないシグナル伝達経路に対して作用を有するタンパク質・ペプチド等を挙げることができる。また、III型アレルギー反応に起因する疾病の治療薬としては、前記いずれか記載のFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法により得ることができる抑制物質を有効成分とするものであれば特に制限されるものではなく、かかる治療薬を哺乳動物等に適宜方法で投与することにより、III型アレルギー反応に起因する疾病、例えば血清病、糸球体腎炎、ループス腎炎、過敏性肺臓炎等を治療することができる。

【2】

【従来の技術】免疫グロブリン(Ig)は、魚類から哺乳類に至る全ての脊椎動物の体液中に存在し、リンパ系細胞によって産生され、物理化学的性質や免疫学的性質によって5つのクラス、すなわちIgG,IgM,IgA,IgD及びIgEに分類され、分子の基本構造は各クラス共通で、分子量5~7万のH鎖と分子量2.3万のL鎖とから構成され、IgG,IgM,IgA,IgD,IgEに対応してγ,μ,α,δ,ε鎖と呼ばれる構造のH鎖を有することが知られている。このIg分子をパパインで分解して得られるヒンジ部からC末端までのH鎖2本がS-S結合で結ばれているものはFcフラグメントと呼ばれ、このFcフラグメントが結合する細胞表面上の受容体はFcレセプター(以下「FcR」という)と呼ばれている。これらFcRは、細胞内のシグナル伝達を導出して、リガンドである抗原-抗体複合体によって、クロスリンクすることで数多くのエフェクターの応答を誘発する造血細胞表面分子のファミリーを構成することが知られている。また、IgのFc領域に対して親和性をもち細胞表面上に存在しているFcRは、抗体依存性細胞傷害反応、過敏性反応などの免疫応答に関与することが知られている。

【20】

【実施例】以下に、実施例を掲げて本発明を具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例A[材料と方法]
A-1(マウス)
すべての実験において、特定の病原体に関して無感染である状況において飼育している7週齢から12週齢のマウスを使用した。Lyn及びFcγRIIBの両分子の欠失変異がホモ接合体の状態になっているマウス(Lyn-IIB-)は、Lyn-/-(Immunity 3, 549-560, 1995)とFcγRIIB-/-(Nature 379, 346-349, 1996)系統のマウスを掛け合わせて作製した。また、同腹子のLyn+/-FcγRIIB-/-マウス(IIB-)を上記Lyn-/-FcγRIIB-/-マウス(Lyn-IIB-)のコントロールとして用いた。

【21】
A-2(細胞と抗体)
骨髄由来肥満細胞(BMMCs)は、骨髄細胞をRPMI1640[最終濃度で、5ng/mlのマウスIL-3(R&D Systems Inc, Minneapolis, MN)、10%の非動化ウシ胎児血清、非必須アミノ酸溶液(GIBCO-BRL, Grand Island, NY)、100IU/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、10μMの2-メルカプトエタノールを含有]で培養することにより誘導した。マウス抗トリニトロフェニルハプテン(TNP)IgE(IGELa2;American Type Culture Collection)とマウス抗-TNP IgG1(G1;Cell. Immunol. 145, 299-310, 1992)に関しては、それぞれのハイブリドーマ培養上清をDEAE-セルロースカラムクロマトグラフィーにより精製した。ラット抗マウスFcγRII/III(2.4G2, PharMigen, San Diego, CA)、ウサギIgG抗卵白アルブミン(OVA;Sigma, St Louis, MO)、ヤギ抗ラットIgGのF(ab′)2フラグメント(Immunotech, Cedex, France)及び抗リン酸化チロシン抗体(4G10;upstate Biotechnology, Lake Placid, NY)は購入したものを使用した。

【22】
A-3(全身性受動アナフィラキシーの誘導)
20μgの抗TNP IgGまたは20μgの抗TNP IgEを、A-1で作製したそれぞれのマウス[Lyn-/-FcγRIIB-/-(Lyn-IIB-)及びLyn+/-FcγRIIB-/-(IIB-)]に静脈注射することにより感作した。感作から30分後(IgG感作)もしくは24時間後(IgE感作)に、1mgのTNP結合OVAを100mlのPBSに溶解した溶液を静脈注射することにより全身性受動アナフィラキシーを誘導した。コントロールは、誘導時にTNP-OVAの代わりに同量のOVAにより全身性受動アナフィラキシーを誘導した。誘導後、温度センサーのプローブがついたデジタル温度計(Natume Seisakusyo Co., Osaka, Japan)により経時的に直腸内温度を計測した。

【23】
A-4(脱顆粒とサイトカイン放出)
BMMCs(5×104cell)を6.6μCi/mlの5-[1,2-3H]-hydroxytryptamine creatinine sulfate(Amersham Pharmacia Biotech)で16時間ラベルし、残り30分間前に5μg/mlの2.4G2又は1μg/mlのマウス抗TNP IgEを加え、これらのBMMCsを感作した。BMMCsに結合しなかった抗体を除去した後、0.3~10μg/mlのヤギ抗ラットIgG F(ab′)2フラグメント又は0.03~30ng/mlのTNP-OVAを添加し1時間刺激させた。セロトニン遊離率(%脱顆粒)は以前の報告(Cell 76, 519-529, 1994)と同様に計算した。サイトカイン放出については、ラベルしていないBMMCsを上記と同様の方法により刺激した。刺激後、12時間又は6時間後の培養上清を用いて、それぞれIL-4又はTNF-αの放出を測定した。サイトカインの放出量はELISA(Endogen, Inc., Woburn, MA)を用いて測定した。

【24】
A-5(細胞質内カルシウム動態)
2μMのFura-2/acetoxymethyl ester(Molecular Probes, Eugene, OR)によりラベルしたBMMCsを25℃で10分間の条件で2μg/mlのビオチン結合マウス抗TNP IgEもしくは5μg/mlのビオチン結合2.4G2により感作した。結合しなかった抗体を除去した後、1mMのCaCl2と1mMのMgCl2を含む2mlのPBS中で上記感作した細胞を10μgのストレプトアビジン(Wako Pure Chemicals, Osaka, Japan)により刺激した。細胞質内カルシウム動態は、蛍光吸光度計(Hitachi model F4500, Hitachi Ldt., Tokyo,Japan)を用いて、340と360nmの励起を510nmのエミッション波長で測定した。カルシウム濃度の測定と換算は文献(J. Biol. Chem. 260, 3440-3450)記載の方法に準じて行った。

【25】
A-6(免疫ブロット解析)
2.4G2もしくはビオチン結合マウスIgEにより感作したBMMCs(1×106)を1mMのCaCl2及び1mMのMgCl2を含む100μlのPBSに懸濁し、それぞれの懸濁液に30μg/mlのヤギ抗ラットIgG F(ab′)2フラグメント又は5μg/mlのストレプトアビジンを添加し、37℃の条件下で0.5、1又は5分間処理した。これらの処理は、同量の氷冷した可溶化溶液(50mMのTris-HCl(pH7.4)、1%のNonident P-40、137mMのNaCl、2mMのEDTA、50mMのNaF、2mMのNaVO4、1mMのphenylmethylsulfonyl、10mg/mlのaprotinin、5mg/mlのleupeptine、2mg/mlのpepstatin)を加えることにより終了とした。核分画を取り除いた細胞溶解液はタンパク質のリン酸化の検討に用いた。免疫ブロットには抗リン酸化チロシン抗体(4G10)を用いて行った。

【26】
A-7(逆皮膚受動アルサス反応)
0、16又は80μgのウサギ抗OVA IgGを含む生理食塩水を、体幹を除毛した実施例A-1で得られたそれぞれのマウスの背部皮内に投与し、その直後、1mgのOVAを含む生理食塩水200μlを静脈より注入した。これらのマウスを8時間後に屠殺し、背部の皮膚を採取した。Myeloperoxidase(MPO)アッセイはBradleyらによる方法(J. Invest. Dermatol. 78, 206-209, 1982)を参考にした。簡便に、炎症を引き起こした部分を組織片(12.5mm2)として切り出し、400μlの50mMのリン酸溶液(pH6.0)でホモジェナイズし、さらに、hexadecyltrimethylammonium bromide(HTAB;Sigma)を0.5%になるように加え、20秒間超音波により破砕した後、凍結融解を3回繰り返すことにより抽出液を作製した。これら抽出液を14,000rpm、15分間遠心した後、得られた上清をMPO活性の測定に使用した。これらの上清20μlを200μlの基質溶液[50mMのリン酸溶液(pH6.0)、0.167mg/mlのo-dianisidine duhydrochloride(Sigma)、0.0005%の過酸化水素(Wako Pure Chemical)]と混合した後、基質溶液の色の変化を460nmの吸光度で測定した。なお、0.25μlのマウス全血から得られたMPO活性を1ユニットとして計測した。病理組織学的検討のため、皮膚断片は10%(vol/vol)中性緩衝ホルマリン溶液により固定し、パラフィン切片とした後、ヘマトキシリン/エオシン染色を行った。

【27】
実施例B[結果]
B-1(Lyn-/-FcγRIIB-/-マウスの全身性受動アナフィラキシーにおけるFcγRIII機能の欠損)
これまでの研究において、Lyn欠損マウスはIgEによる皮膚受動アナフィラキシーを引き起こすことが出来ないことが明らかになっている。このことは肥満細胞上のFcεRIの情報伝達の下流においてLynが重要な働きをすることを示している(Cell 83, 301-311, 1995)。本発明者らは全身性受動アナフィラキシーをIgG-免疫複合体で誘導することにより、FcγRIIIの情報伝達の下流においてLynの役割がどのような意味を持つのか検討するため、FcγRIIIを介した応答に対して抑制性の働きをするFcγRIIB(Annu. Rev. Immunol. 15, 203-234, 1997、J. Exp. Med. 189, 1573-1579, 1999、Nature 379, 346-349, 1996)を排除するために、実施例A-1に記載のLynとFcγRIIBの2重欠損マウス(Lyn-/-FcγRIIB-/-マウス:Lyn-IIB-)の系統を用いた。

【28】
実施例A-3記載の方法により、尾静脈を介してハプテン特異的な抗体[抗TNP IgG1(図1左;n=4)もしくは抗TNP IgE(図1右;n=6)]と抗原(TNP-OVA)を投与することにより2重欠損マウスとコントロールマウスに全身性受動アナフィラキシーを誘導し、全身性受動アナフィラキシー応答強度を指標として、抗原を投与した時点から経時的に直腸内温度の低下を測定した。この結果を図1に示す。IgG及びIgEによる刺激において、コントロールマウスは明らかな応答を示している一方で、2重欠損マウスはその応答が明らかに減弱していることが確認できた。2重欠損マウスで応答が損なわれることから、肥満細胞におけるLynの活性はFcεRIを介したアナフィラキシーと同様にFcγRIIIを介したときにも必要であることがわかった。なお、コントロール実験(図1上段)は、上記それぞれのマウスに抗体を投与しないこと以外は上記記載の方法と同様に直腸内温度を測定した。

【29】
B-2(Lyn欠損マウスから誘導されたBMMCsにおけるFcγRIII機能の減弱)
次に即時型の応答として、またアナフィラキシーを引き起こす主要な要因として、肥満細胞の脱顆粒能を検討するため、培養BMMCsを用いてセロトニン放出を検討することにより機能解析を行った。FcγRIIIもしくはFcεRIを段階的に架橋することにより肥満細胞の活性化を誘導し、培養上清中に放出される放射線ラベルされたセロトニンを測定した(図2)。なお、BMMCsの脱顆粒は、2.42G2とヤギ抗ラットIgG1 F(ab′)2(図2左)又は抗TNP IgEとTNP-OVA(図2右)によりFcγRIII及びFcεRIを架橋することにより誘導した。脱顆粒は刺激後1時間の培養上清中に放出されたセロトニンを実施例A-4記載の方法により定量した。これらの結果から、FcγRIII及びFcεRIを介した刺激により、2重欠損マウス由来のBMMCsは、弱い刺激(1~3μg/mlの抗ラットIgGや0.3~3ng/mlのTNP-OVA)に対して応答性が低くなっていることが明らかとなった。一方、2重欠損マウス由来のBMMCsで程度の高い刺激に対しては同等の脱顆粒を引き起こすことも分かった。2重欠損マウスとコントロールマウスでのこれらの違いは3回繰り返した実験で確認し、また2個体から独立に誘導した培養肥満細胞を使用して確認した。

【3】
FcRには、体液中のIgGのγ鎖に特異的に結合するFcγレセプター、IgEのε鎖に特異的に結合するFcεレセプター、IgAのα鎖に特異的に結合するFcαR等の種類が知られている。これら免疫担当細胞のFcレセプターは細胞機能と重要な関係があり、大部分のリンパ球、T細胞リンパ球の一部、単核球、好中球、好塩基球、マクロファージ、肥満細胞(マスト細胞)及び血小板等に多く存在していることが知られている。また、これらのレセプターは抗体に依存したリンパ球機能に役割を果たすが、その固有の機能に関しては不明な点が多い。Fcγレセプター(以下「FcγR」という)は遺伝子構造の類似性に基づいてタイプI(CD64抗原)、タイプII(CD32抗原)、タイプIII(CD16抗原)の3種に大きく分類され、FcγRIは、分子量72kDaの糖タンパク質であり、IgG単量体と高い親和性で結合し、単球とマクロファージに発現し、FcγRIIは、他のFcRとは異なりIgG単量体に対して低親和性であり、免疫複合体となった多価IgGと結合し、単球、マクロファージ、多形核白血球(PMN)、マスト細胞、血小板、いくつかのT細胞リンパ球及びいくつかのB細胞リンパ球を含む造血幹細胞に広く発現し、またFcγRIIIは、低親和性のFcγRで、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、PMN及びマスト細胞に発現することが、それぞれ知られている。また、FcγRIIには遺伝子配列が異なるFcγRIIA、FcγRIIB及びFcγRIICの3種類の受容体が存在しており、いずれの染色体も1q23に位置していることも知られている。

【30】
本発明者らは次に2重欠損マウス由来のBMMCsの細胞内機能欠如の特色として細胞質内のカルシウム動態と細胞の全タンパク質チロシンリン酸化について検討した。実施例A-5記載の方法でBMMCsを刺激し、細胞質内カルシウム動態を蛍光吸光度計により510nm励起で測定した。この結果を図3Aに示す。これらの結果から、2重欠損マウス由来のBMMCsにおいて、FcγRIIIもしくはFcεRIを介した刺激によるカルシウム動態の減弱が見られた。この応答は特に誘導後、早い段階(<150秒)で影響を受けており、遅い段階(>300秒)では十分に誘導されていることがわかった。なお、図中の矢印はストレプトアビジンにより架橋したことを示す。

【31】
また、実施例A-5記載の方法でBMMCsを刺激し、実施例A-6記載のように反応を終了させ、核分画を除外した細胞溶解液(1レーンにつき2.5×104に相当)を抗リン酸化チロシンモノクローナル抗体(抗pTyr:4G10)を用いて免疫ブロッティングを行った。結果を図3Bに示す。この結果からも明らかなように刺激後5分間は、2重欠損マウス由来のBMMCsにおいてチロシンリン酸化の誘導に影響を及ぼすことがわかった。また、2重欠損マウス由来のBMMCsでは、FcγRIII、FcεRI及びc-kitの発現、IL-3による増殖、またセロトニンの取り込みは通常であった。このことは2重欠損マウス由来のBMMCsでは、FcRsの発現量が少ないなどの分化異常を起こしているのではなく、機能的異常(欠損)が起きていることを示している。これらin vitroの結果はin vivoの結果を擬態しており、少なくとも肥満細胞の活性化の即時段階において、LynはFcRsの情報伝達の活性化に重要であることが示された。

【32】
B-3(2重欠損マウスのBMMCsにおけるサイトカイン産生に対するFcγRIIIの正常機能)
肥満細胞ではFcRを介した刺激によりサイトカインは新たに生産されることが明らかになっている(Nature 339, 64-67, 1989、J. Exp. Med. 170, 245-257, 1989、Nature 346, 274-276, 1990、Int. Arch. Allergy Immunol. 107, 158-159, 1995)。肥満細胞の活性化に関連してよく調べられているサイトカインであるTNF-αやIL-4はFcRを介した刺激後、2,3時間もしくは数時間で実際に放出される。肥満細胞のサイトカイン放出は、肥満細胞が係わる組織破壊(Blood 94, 3855-3863, 1999、Immunology 77, 422-427, 1992、Science 258, 1957-1959, 1992)やアレルギー(Allergy 50, 851-862, 1995)の発症に重要であることが示されている。これらのことから、FcRを介した刺激で誘導されるBMMCsからのTNF-αとIL-4の生産量を調べてみた。FcγRIIIを架橋するために抗FcγRII/III抗体(2.4G2)と様々な濃度の2次抗体が存在する状況で実施例A-4記載の方法でBMMCsを数時間刺激した。この結果を図4に示す。これらの結果は、図2や図3で示した脱顆粒や生化学的アッセイから得られた結果に反して、2重欠損マウス由来のBMMCsにおいてTNF-αやIL-4の誘導には影響が見られなかった。これらのことは、FcγRIIIの情報伝達の下流では、Lynの活性に係わらずサイトカイン遺伝子が活性化されることを意味しており、肥満細胞においてサイトカイン生産誘導に十分なシグナル伝達機構の存在が示唆される。

【33】
B-4(Lyn欠損マウスにおける逆皮膚受動アルサス反応に対するFcγRIIIの正常機能)
サイトカイン産生がin vitroでLynに依存しないという上記の結果から、次に、サイトカインがその発現に重要と考えられている逆皮膚受動アルサス反応を調べてみた。この逆皮膚受動アルサス反応はin vivoにおける免疫複合体が引き起こす炎症モデルで、肥満細胞上のFcγRIII機能に依存していることが明らかになっている(Science 265, 1095-1098, 1994、Immunity 5, 387-390、J. Clin. Invest. 99, 915-925, 1997、J. Clin. Invest. 99, 901-914, 1997、Immunity 5, 181-188, 1996)。上記実施例A-7記載の方法によりMPO(myeloperoxidase)活性を測定し、病理組織による検討も行った。これらの結果を図5に示す。図5(A)には、好中球の浸潤度合が抗原投与後8時間の炎症部位のMPO活性(1単位を0.25μlに含まれるMPO活性とした5匹のマウスの平均値±標準偏差)で示されている。図5(B)には、炎症誘導後8時間のヘマトキシリン・エオシン染色した組織学的変化が、生理食塩水を皮内に投与したコントロール標本(-)と共に示されている(写真はすべて40倍で観察)。これらの結果から、2重欠損マウス及びコントロールマウスともにMPO活性の誘導及び病理組織見解は同等なものであることがわかった。皮膚の肥満細胞の数は2重欠損マウスでは正常であることが分かっている。FcγRIIIのLynに依存しない情報伝達の活性は逆皮膚受動アルサス反応を起こさせるのに十分であり、Lynは肥満細胞の後期の反応開始においては必要不可欠なものではないことがわかった。

【34】

【発明の効果】本発明のI型アレルギーであるアナフィラキシーを発症せず、III型アレルギーであるアルサス反応を特異的に誘導することができるIII型アレルギー炎症モデル非ヒト動物、例えばLyn及びFcγIIBの遺伝子機能が染色体上で欠損しているダブルノックアウトマウスは、I型アレルギーに影響されることなく、III型アレルギー炎症のみを評価しうる実験モデル動物として有用であり、またかかる実験モデル動物を用いると、FcγRIIIを介したIII型アレルギー反応に特異的なアレルギー反応促進又は抑制物質をスクリーニングすることができ、とりわけスクリーニングにより得られる抑制物質はIII型アレルギー反応に起因する疾病の治療薬として用いることができる可能性がある。

【4】
最近、これらFcR分子群に対するノックアウトマウスが次々と作製され(Cell 75, 969-976, 1993、Cell 76, 519-529, 1994、Nature 379, 346-349, 1996、Immunity 5, 181-188, 1996、Nature 369, 753-756, 1994、J. Immunol. 152,3378-3390, 1994、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 6835-6839, 1994)、いくつかのFcRの生理的機能の理解が進んでいる。また本発明者らは、IgEの高親和性レセプターであるFcεRIに会合しているホモダイマー分子として単離同定されたFcRγ鎖に対するノックアウトマウスを作製している(Cell, 76,519-529, 1994)。そして、このFcRγ鎖ノックアウトマウスは、少なくともFcγRI、FcγRIII、FcεRIの3種のFcRの発現及び機能を失っていることも知られている。

【5】
上記免疫細胞群に発現するFcRは、抗体依存性に様々な免疫・炎症反応を開始する分子である。FcRは、複数の細胞種に重複して発現するため、個々のFcRの役割は、遺伝的にFcR発現を欠損する幾つかのマウスが作出されて初めて明らかとなった。現在、FcRの役割は、生体防御のみならずアレルギー(Cell 75, 969-976, 1993、Cell 76, 519-529, 1994)、アルサス反応(Science 265, 1095-1098, 1994、Immunity 5, 387-390)、リウマチ様関節炎(J. Exp. Med. 189, 187-194, 1999、J. Exp. Med. 191, 1611-1616, 2000)、免疫性糸球体腎炎(Kidney Int. 54, 1166-1174, 1998、Eur. J. Immunol. 30, 1182-1190, 2000)、自己免疫性血管炎(Blood 94, 3855-3863, 1999)、全身性紅斑性狼創(Science 279, 1052-1054, 1998)、グットパスチャー症候群(Goodpasture's;J. Exp. Med. 191, 899-906, 2000)など病気の成立にも関与することが明らかにされている。また、上記変異マウスの知見より、様々な免疫過程におけるFcRの不可欠な役割も解明されつつある(Annu. Rev. Immunol. 16, 421-432, 1998、Annu. Rev. Immunol. 15, 203-234, 1997、Takai, T., and J. V. Ravetch. 1998. Fc receptor genetics and the manipulation of genes in the study ofFcR biology. In Immunoglobulin Receptors and their Physiological and Pathological Roles in Immunity. J. G. J. van de Winkel nad P. Mark Hogarth,editors. Kluwer Academic Publishers, Netherland, 37-48)。

【6】
また、マスト細胞上のFcγRIIIが、2種の区別される免疫応答、IgG依存性アナフィラキシー(J. Clin. Invest. 99, 915-925, 1997、J. Clin. Invest. 99, 901-914, 1997、J. Exp. Med. 189, 1573-1579, 1999)と受動的アルサス反応(Science 265, 1095-1098, 1994、Immunity 5, 387-390、J. Exp. Med.184, 2385-2392, 1996、Immunity 5, 181-188, 1996、Eur. J. Immunol. 30, 481-490, 2000)の開始に、中心的な役割を果たしていることも報告されている。これらの免疫応答モデルは、病気の発症時期と組織像の違いで互いに区別されている。アナフィラキシーは、皮膚の浮腫や全身性の血液供給不全(ショック)を抗原暴露直後に発症するが、一方アルサス反応は、出血を伴う組織障害として、抗原暴露後数時間を経てから見られる。現在、これらの特徴を示すモデルの病態成立は、炎症性メディエーター、例えば、ヒスタミンやセロトニンなどの既存物質や、アラキドン酸代謝物やサイトカインなどの新たに合成される物質などの、時間限定的放出の結果として説明されている。しかし、これらのモデルの病態成立に関係する細胞内の機構は不明である。

【7】
他方、Lynは、Srcファミリーキナーゼに属し、ITAMモチーフ(細胞内チロシンキナーゼのSH2領域により認識され結合するアミノ酸配列)を持つ様々な免疫受容体と会合し、細胞内シグナル伝達を開始する機能を有することが知られている(Int. J. Biochem. Cell. Biol. 29, 397-400, 1997、Annu. Rev.Immunol. 17, 555-592, 1999)。最近のLyn欠損マウスを使った研究では、個体内において、B細胞やマスト細胞の正常機能にLynが必須の役割を果たすことが示されている(Cell 83, 301-311, 1995、Immunity 3, 549-560, 1995、Immunity 7, 69-81, 1997)。実際には、Lyn欠損マウスでは、IgEと抗原により惹起される皮膚のアナフィラキシー反応が著明に障害されており、FcεRIを介したシグナル伝達にはLynが重要な役割を果たしている(J. Immunol.158, 2350-2355, 1997)。

【8】

【発明が解決しようとする課題】上記のように、Srcファミリーに属するLynチロシンキナーゼは、FcR等の様々な受容体に機能的に会合し、細胞内情報伝達において重要な役割を果たしている。一方、自己免疫疾患やアレルギー反応等の免疫複合体が関与する炎症反応において、マスト細胞等に発現しているIgGのFcγRの役割が注目されており、例えばFcγRIIIは免疫複合体を介してマスト細胞を活性化し、逆にFcγRIIBは抑制することがノックアウトマウスを用い研究によって明らかにされている。しかし、通常はFcγRIIBが抑制的に作用するためにIII型アレルギー炎症のみを評価しうることはできなかった。本発明の課題は、I型アレルギーであるアナフィラキシーを発症せず、III型アレルギーであるアルサス反応を特異的に誘導することができ、I型アレルギーに影響されることなく、III型アレルギー炎症のみを評価しうる実験モデル動物や、かかる実験モデル動物を用いたFcγRIIIを介したIII型アレルギー反応における反応促進又は抑制物質のスクリーニング方法を提供することにある。

【9】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究し、FcγRIIIを介した応答に対して抑制性の働きをするFcγRIIBを排除するために、LynとFcγRIIBの2重欠損マウスを作製し、全身性受動アナフィラキシーをIgG-免疫複合体で誘導することにより、FcγRIIIの情報伝達の下流においてLynの役割がどのような意味を持つのか検討し、全身性受動アナフィラキシーはLyn要求性であり、逆受動アルサス反応はLyn非要求性であることから、FcγRIIIを介したアレルギー応答につながる経路には、Lyn依存性と非依存性の2つの経路があり、III型アレルギー反応におけるLyn非依存性経路の機能性に着目し、本発明を完成するに至った。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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