TOP > 国内特許検索 > Ni-Ti-Zr系Ni基非晶質合金 > 明細書

明細書 :Ni-Ti-Zr系Ni基非晶質合金

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3710698号 (P3710698)
公開番号 特開2002-105608 (P2002-105608A)
登録日 平成17年8月19日(2005.8.19)
発行日 平成17年10月26日(2005.10.26)
公開日 平成14年4月10日(2002.4.10)
発明の名称または考案の名称 Ni-Ti-Zr系Ni基非晶質合金
国際特許分類 C22C 45/04      
FI C22C 45/04 Z
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願2000-291614 (P2000-291614)
出願日 平成12年9月26日(2000.9.26)
審査請求日 平成15年2月21日(2003.2.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】井上 明久
【氏名】張 涛
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】鈴木 正紀
参考文献・文献 特開平10-212561(JP,A)
特開2001-303219(JP,A)
国際公開第99/049095(WO,A1)
特開昭55-138049(JP,A)
特開昭59-116350(JP,A)
調査した分野 C22C 45/04
特許請求の範囲 【請求項1】
式:Ni100-a-b-c Tia Zrb c [式中、Mは、Sn、またはSnおよびBであり、a、bおよびcは、それぞれ原子%を表し、15≦a≦30(ただし、a=30を除く)、5≦b≦30、2≦c≦7、40≦a+b+c≦60を満足する]で示される組成を有し、30K以上の過冷却液体領域と0.55以上の換算ガラス化温度を有する非晶質相を体積百分率で50%以上含むNi-Ti-Zr系Ni基非晶質合金。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非晶質形成能が高く、機械的性質および化学的性質に優れたNi-Ti-Zr系Ni基非晶質合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
Ni基非晶質合金では、従来、主に、磁気的性質について着目した研究が行われてきた。これらのNi基非晶質合金は、Ni-半金属(Si,B,P,C)系で示される組成を有し、主に単ロール法により作製されたリボン状材料で研究がなされた。
【0003】
一方、本発明者らは、実使用を鑑みた大形状Ni基非晶質合金、言い換えれば非晶質形成能に優れたNi基非晶質合金に関する研究開発を進め、Ni-Si-BまたはNi-Si-B-X(X=Fe,Mn,Cr,Ti,Zr,Al,V,Mo,Nbの1種以上)組成の非晶質と結晶質との混相からなる合金(特開平5-70903号公報、特開平5-287470号公報)、Ni-P-M(M=Ti,Zr,Hf,Nb,Taの1種以上)組成の非晶質相を体積%で90%以上含む合金(特開2000-87197号公報)を発明した。
【0004】
また、Ti系非晶質合金は、他の非晶質合金に比べ格段に優れた耐食性を有し、人体への悪影響も少ないため、新しいタイプの非晶質合金として構造材料、医用材料、化学材料等の分野への応用が期待されており、50℃以上の過冷却液体領域と1000MPaを超える強度を兼ね備えたTi-Ni-Cu-(Fe,Co、Ζr、Hf)系非晶質合金が開発され、公知となっている(特開平6-264199号公報および特開平6-264200号公報)。
【0005】
本発明者らは、Ti-TM系[TM:Fe、Co、NiおよびCuよりなる群から選択される1種または2種以上の元素]に特定量のZr、およびAl、Si、SnおよびSbよりなる群から選択される1種または2種以上の元素を添加した合金組成からなり、実用に耐え得る強度と大きな非晶質形成能を兼ね備えたTi系非晶質合金を見出し、特許出願した(WO99/49095号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
Ni系非晶質合金は、他の非晶質合金に比べて高い結晶化温度を示すため、高耐熱性を有する新しいタイプの非晶質合金として構造材料、化学材料等の分野への応用が期待されている。また、Ti系非晶質合金は、構造材料、医用材料、化学材料等の分野への応用が期待されている。
【0007】
しかしながら、従来のNi基非晶質合金では、単ロール法、ガスアトマイズ法によって作製できる非晶質合金は、薄帯、粉末状に形状が限られている。そのため、得られたNi基非晶質合金は、工業的な観点から用途に制約を受けている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上述のNi基非晶質合金の課題を解決するために、実用に耐え得る強度と実用寸法が実現できる非晶質形成能を兼備した新規な非晶質合金材料を提供することを目的として鋭意研究した結果、TiおよびZr含有量の多いNi-Ti-Zr-系合金組成において、上述のNi基非晶質合金の性能とTi系非晶質合金に類似の性能を具備した過冷却液体領域の大きい非晶質合金が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、式:Ni100-a-b-c Tia Zrb c [式中、Mは、Sn、またはSnおよびBであり、a、bおよびcは、それぞれ原子%を表し、15≦a≦30(ただし、a=30を除く)、5≦b≦30、2≦c≦7、40≦a+b+c≦60を満足する]で示される組成を有し、30K以上の過冷却液体領域と0.55以上の換算ガラス化温度を有する非晶質相を体積百分率で50%以上含むNi-Ti-Zr系Ni基非晶質合金である。
【0010】
本発明のNi-Ti-Zr系Ni基非晶質合金は、30K以上の過冷却液体領域と0.55以上の換算ガラス化温度を有する。
【0011】
本明細書中の「過冷却液体領域」とは、毎分40℃の加熱速度で示差走査熱量分析を行うことにより得られるガラス遷移温度と結晶化温度の差で定義されるもので、「換算ガラス化温度」は、上述の熱量分析で得られたガラス遷移温度を合金の融点で除した数値で定義されるものである。「過冷却液体領域」は、加工性を示す数値、「換算ガラス化温度」は、非晶質化し易さを表す数値である。
【0012】
上述の「過冷却液体領域」および「換算ガラス化温度」の規定により、本発明のNi-Ti-Zr系Ni基非晶質合金は、公知のNi基非晶質合金に比べて大幅に非晶質形成能が改善され、塊状材料の製造が可能となる。よって、本発明の合金の組成範囲においては、例えば、金型鋳造法により直径1mmの線状の非晶質相を体積百分率で50%以上含む非晶質合金塊が容易に得られる。
【0013】
金属元素より構成される合金は、非晶質化することにより一般にその機械的性質が向上するが、本発明のNi-Ti-Zr系Ni基非晶質合金においては、塊状材料で1,750MPaを超える引張強さを持った非晶質相100%のものが容易に得られるが、機械的強度を考慮して、結晶相を含む結晶粒子分散型非晶質としてもよい。その際、非晶質相は体積百分率で50%より少ないと材料が脆くなって機械的強度が低下するので50%以上でなければならない。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の好ましい実施態様を説明する。本発明のNi-Ti-Zr系Ni基非晶質合金の組成式において、Mは、Sn、またはSnおよびBであり、非晶質を形成する基本となる元素である。これらの元素の含有量は、2~7原子%の範囲とする。2原子%未満では、冷却速度の大きな片ロール法によって非晶質相は形成するものの、非晶質形成能は改善されず、金型鋳造等の方法で非晶質合金塊は得られない。また、7原子%超では過冷却液体領域を示さなくなり、非晶質相の占める体積百分率が小さくなる。
【0015】
TiおよびZrは、本発明の合金の基幹となる元素で、非晶質形成能を大幅に高める効果を有する。Tiの含有量は15原子%から30原子%の範囲とする。Tiの含有量が30原子%を超えても過冷却液体領域は30Kより大きいが、換算ガラス化温度が小さくなり非晶質相の体積百分率が50%以上の非晶質相が得られなくなる。
【0016】
また、Zrの含有量は5原子%から30原子%の範囲とする。これら以外の組成範囲では、換算ガラス化温度と過冷却液体領域が十分でない。より好ましい範囲は10~25原子%である。
【0017】
Ti、Zr、M元素の合計の含有量を示すa+b+cの合計の値は40~60とする。すなわち、Niの量は40~60原子%の範囲とする。Niの量がこれ以外の範囲では、換算ガラスか温度と過冷却液体領域が十分でない。また、強度、延性、硬度などの所望の機械的性質が得られない。
【0018】
本発明の合金は、従来のNi基非晶質合金から格段の非晶質形成能の改善がなされているため、好ましくは溶融合金を金型に充填することにより断面形状が円の場合、直径1mm以上、すなわち断面積が0.78mm2 以上の円柱状の非晶質合金塊を得ることができる。さらに、金型形状を変えることにより任意の形状の断面積0.78mm2 以上の非晶質合金塊を得ることもできる。
【0019】
例えば、代表的な金型鋳造法においては、合金を石英管中でアルゴン雰囲気中で溶融した後、溶融合金を噴出圧0.5~2.0kg/cm2 で銅製の金型内に充填凝固させることにより非晶質合金塊を得ることができる。
【0020】
本発明のNi-Ti-Zr系Ni基非晶質合金は、溶融状態から片ロール法、双ロール法、回転液中紡糸法、アトマイズ法等の種々の方法で冷却固化させ、薄帯状、フィラメント状、粉粒体状の非晶質固体を得ることもできる。
【0021】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。表1に示す合金組成からなる材料(実施例1~11、比較例1~5)を、片ロール法および金型鋳造法により薄帯状および直径1mmの合金塊材料を作製した。薄帯状材料のガラス遷移温度(Tg)、結晶化開始温度(Tx)、融点(Tm)を示差走査熱量分析により測定した。これらの値より過冷却液体領域(Tx-Tg)および換算ガラス化温度(Tg/Tm)を算出した。
【0022】
また、金型鋳造法により作製した直径1mmの合金塊の非晶質化の確認をX線回折法および材料断面の光学顕微鏡観察により行った。また、材料中に含まれる非晶質相の体積百分率(Vf-amo)は、示差走査熱量分析を用いて結晶化の際の発熱量を完全非晶質化した片ロール箔帯との比較により評価した。さらに、引張試験片を機械加工により作製し、引張試験により破断強度(σf)を評価した。また、ヤング率E(GPa)、ビッカース硬さ(Hv)を測定した。
【0023】
【表1】
JP0003710698B2_000002t.gif
【0024】
表1より明らかなように、実施例1~の非晶質合金は、30K以上の過冷却液体領域と0.55以上の換算ガラス化温度を示すとともに、直径1mm以上の非晶質合金棒においても1,750MPaを超える破断強度を示す。
【0025】
比較例1の合金は、Μ群の元素を含有しないため、過冷却液体領域と換算ガラス化温度はそれぞれ、20Kと0.5であり、直径0.5mm以下の非晶質合金棒しか得られなかった。
【0026】
図1に、実施例1、2の非晶質合金の機械的性質を図示する。Ti対Zrの比ではTiの含有量が多いほど機械的性質が優れていることが分かる。
【0027】
【発明の効果】
本発明のNi-Ti-Zr系Ni基非晶質合金は、30K以上の過冷却液体領域と0.55以上の換算ガラス化温度を示すとともに、直径1mmの非晶質合金塊においても1,750MPaを超える強度を示すものであり、ガラス形成能、加工性、機械的強度に優れたNi-Ti-Ti系Ni基非晶質合金を提供できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1、2の非晶質合金の機械的性質を示すグラフである。
図面
【図1】
0