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明細書 :高飽和磁化および良好な軟磁気特性を有するFe基非晶質合金

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3948898号 (P3948898)
公開番号 特開2002-105607 (P2002-105607A)
登録日 平成19年4月27日(2007.4.27)
発行日 平成19年7月25日(2007.7.25)
公開日 平成14年4月10日(2002.4.10)
発明の名称または考案の名称 高飽和磁化および良好な軟磁気特性を有するFe基非晶質合金
国際特許分類 C22C  45/02        (2006.01)
H01F   1/153       (2006.01)
FI C22C 45/02 A
H01F 1/14 C
請求項の数または発明の数 3
全頁数 7
出願番号 特願2000-293576 (P2000-293576)
出願日 平成12年9月27日(2000.9.27)
審査請求日 平成15年2月21日(2003.2.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】井上 明久
【氏名】張 偉
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】鈴木 正紀
参考文献・文献 特開平09-320827(JP,A)
特開昭61-246318(JP,A)
特開昭62-243152(JP,A)
調査した分野 C22C 45/02
H01F 1/153
特許請求の範囲 【請求項1】
Feを主成分とし、希土類元素REのうちから選択される1種または2種以上の元素とCo元素とBを含み、組成式がFe100-x-y-zCoxREyz(ただし、組成比示すxyzは原子%で、0原子%<x30原子%、2.0原子%≦y7.0原子%、16原子%≦z35原子%である)で表され、△Tx=Tx-Tg(ただし、Txは、結晶化開始温度、Tgは、ガラス遷移温度を示す。)の式で表わされる過冷却液体域の温度間隔△Txが45℃以上であり、Tg/Tm(ただし、Tmは、合金の融解温度を示す。)の式で表わされる換算ガラス化温度が0.56以上であることを特徴とするFe基非晶質合金。
【請求項2】
遷移金属のV,Ti,Cr,Nb,Mo,W,Ta,Hf,Zrのうちから選択される1種または2種以上の元素を2原子%以下含むことを特徴とする請求項1に記載の非晶質合金。
【請求項3】
飽和磁化(Bs)=1.20T以上、保磁力(Hc)=15A/m以下、磁歪定数(λs)が30×10-6以下、1kHzでの透磁率(μe)が8000 以上の磁気特性を有する請求項1または2に記載の非晶質合金。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大きな非晶質形成能、優れた加工性、高い飽和磁化および良好な軟磁気特性を有するFe基非晶質合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
Fe基非晶質合金(例えば、Fe-Si-B合金)は、高飽和磁化、低保磁力、低磁歪、高透磁率、低鉄損等の軟磁気特性を有し、省エネルギー型パワートランス磁芯材料に有用であり、磁気ヘッド材料として使用されている。しかし、これらの非晶質合金のガラス形成能が低いので、液体急冷法により厚さ50μm以下の薄帯状、粉末状、細線状等の非晶質合金しか得られていない。そして、高い熱的安定性を示しておらず、最終製品形状へ加工することも困難なことから、工業的に見て、その用途がかなり限定されていた。
【0003】
ガラス遷移を示し、広い過冷却液体域および大きな換算ガラス化温度を有する非晶質合金では、結晶化に対する高い安定性を示して、大きなガラス形成能を有することが知られている。液体急冷法により厚肉リボンおよびバルク状非晶質材を作製することが可能である。一方、非晶質合金を加熱すると、特定の合金系では結晶化する前に、過冷却液体状態に遷移し、急激な粘性低下を示すことが知られている。このような過冷却液体状態では、合金の粘性が低下しているために閉塞鍛造等の方法により任意形状の非晶質合金形成体を作製することが可能である。したがって、広い過冷却液体域および大きな換算ガラス化温度(Tg/Tm)を有する非晶質合金では、大きな非晶質形成能および優れた加工性を備えていると言える。
【0004】
最近、広い過冷却液体域を示し、大きなガラス形成能を有する良好な軟磁気特性を示すFe基およびCo基非晶質合金が報告された。例えば、Fe-(Al,Ga)-(P,C,B,Si)( Mater. Trans., JIM, 36(1995), 1180-1182参照)、Fe-(Co,Ni)-(Zr,Hf,Nb)-B(Mater.Trans., JIM, 38(1997), 359-362参照、特開2000-204452号公報)及び Co-Fe-(Zr,Ta,Nb)-B( Mater. Trans., JIM, 39(1998),762-768参照、特開2000-204452号公報)である。しかし、これらの合金では、大量な非磁性元素が添加されるため、飽和磁化が1.2T以下の値を示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述したFe基非晶質合金は大きなガラス形成能、優れた加工性、高い飽和磁化および良好な軟磁気特性を兼ね備えていなかった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上述の課題を解決するために、大きなガラス形成能、優れた加工性、高い飽和磁化および良好な軟磁気特性を兼ね備えたFe基ガラス合金を提供することを目的として、最適組成について研究した結果、高い飽和磁化および良好な軟磁性特性を有する大きなガラス形成能、優れた加工性を兼ね備えたFe基非晶質が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、Feを主成分とし、希土類元素REのうちから選択される1種または2種以上の元素とCo元素とBを含み、△Tx=Tx-Tg(ただし、Txは、結晶化開始温度、Tgは、ガラス遷移温度を示す。)の式で表わされる過冷却液体域の温度間隔△Txが45℃以上のFe基非晶質合金である。本発明のFe基非晶質合金は、Tg/Tm(ただし、Tmは、合金の融解温度を示す。)の式で表わされる換算ガラス化温度が0.56以上のものが得られる。
【0008】
本発明のFe基非晶質合金は、下記の組成式で表わすことができる。
Fe100-x-y-zCoxREyz
ただし、組成比を示すx、y、zは原子%で、0原子%<x≦30原子%、2.0原子%≦y≦7.0原子%、16原子%≦z≦35原子%である。
本発明のFe基非晶質合金は、遷移金属のV,Ti,Cr,Nb,Mo,W,Ta,Hf,Zrのうちから選択される1種または2種以上の元素を2原子%以下添加してもよい。
【0009】
本発明のFe基非晶質合金によれば、単ロールを用いた液体急冷凝固法により厚さ200μm以下、非晶質相の体積比率95%以上の薄板材が得られる。
また、本発明のFe基非晶質合金によれば、金型鋳造法により直径または厚さが1mm以下、非晶質相の体積比率90%以上の棒材または板材が得られる。
【0010】
本発明のFe基非晶質合金は、飽和磁化(Bs)=1.20T以上、保磁力(Hc)=15A/m以下、磁歪定数(λs)が30×10-6以下、1kHzでの透磁率(μe)が8000 以上の高い飽和磁化および良好な軟磁性特性を有する。
【0011】
なお、本明細書中の「過冷却液体域」とは、毎分40℃の加熱速度で示差走査熱量分析を行うことにより得られるガラス遷移温度と結晶化温度の差で定義されるものである。「過冷却液体域」は結晶化に対する抵抗力、すなわち非晶質の安定性、非晶質形成能力および加工性を示す数値である。また、本明細書中の「換算ガラス化温度」とは、ガラス遷移温度(Tg)と毎分5℃の加熱速度で示差熱量分析(DTA)を行うことにより得られる合金融解温度(Tm)の比で定義されるものである。「換算ガラス化温度」は非晶質形成能力を示す数値である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を説明する。本発明のFe基非晶質合金において、B(ボロン)は、非晶質を形成する基本となる元素である。B量は16原子%以上30原子%以下で、好ましくは20原子%以上28原子%で以下である。
【0013】
また、希土類元素REのうちから選択される1種または2種以上の元素は、本発明の合金の基幹となる元素であり、特に、Fe-Co-B系合金の非晶質形成能を大幅に高めるには効果を有する。希土類元素量は2.0原子%以上7原子%以下で、好ましくは3原子%以上5原子%以下である。
【0014】
過冷却液体域の拡大および非晶質相形成能の向上には、Coの添加も有効であり、そして、飽和磁化および軟磁気特性はあまり劣化しない。Coの添加量は30原子%以下で、好ましくは、5原子%以上20原子%以下である。遷移金属のV,Ti,Cr,Nb,Mo,W,Ta,Hf,Zrのうちから選択される1種又は2種以上の元素の添加も過冷却液体域の拡大および非晶質相形成能の向上に有効であるが、飽和磁化はかなり劣化するため、2原子%以下が好ましい。
【0015】
本発明のFe基非晶質合金は、溶融状態から公知の単ロール法、双ロール法、回転液中紡糸法、アトマイズ法などの種々の方法で冷却固化させ、薄帯状、フィラメント状、粉粒体状の、非晶質固体を得ることができる。また、本発明のFe基非晶質合金は大きな非晶質形成能を有するため、上述の公知の製造方法のみならず、溶融金属を金型に充填鋳造することにより任意の形状の非晶質合金を得ることもできる。
【0016】
例えば、代表的な金型鋳造法においては、合金を石英管中でアルゴン雰囲気中に溶融した後、溶融金属を2.0~4.0 kg・f/cm2の噴出圧で銅製の金型内に充填凝固させることにより非晶質合金塊を得ることができる。更に、ダイカストキャスティング法およびスクイズキャスティング法等の製造方法を適用することもできる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。表1に示す合金組成からなる材料(実施例1~17、比較例1~6)について、アーク溶解法により母合金を溶製した後、単ロール液体急冷法により約20μmの薄帯材料を作製した。
【0018】
【表1】
JP0003948898B2_000002t.gif
【0019】
そして、薄帯材料のガラス遷移温度(Tg)、結晶化開始温度(Tx)を示差走査熱量計(DSC)より測定した。これらの値より過冷却液体域(Tx-Tg)を算出した。融解点(Tm)の測定は、示査熱分析(DTA)により測定した。これらの値より換算ガラス化温度(Tg/Tm)を算出した。磁気特性は振動型磁力計(VSM)と直流B-Hループトレーサおよびインピーダンスアナライザーにより行った。また磁歪は静電容量法により測定した。評価結果を表2に示す。
【0020】
【表2】
JP0003948898B2_000003t.gif
【0021】
表3に示す合金組成からなる材料(実施例1~13、比較例1~6)について、アーク溶解法により母合金を溶製した後、単ロール液体急冷法および金型鋳造法により150~220μmの薄帯材料および直径0.5mm、0.75mmの棒状材料を作製した。
【0022】
【表3】
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【0023】
これらの材料において、非晶質化の確認はX線回折法により行った。また、材料中に含まれる非晶質相の体積比率(Vf-amo.)は、DSCを用いて結晶化の際の発熱量を完全非晶質化した厚さ約20μmの薄帯との比較により評価した。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、大きな非晶質形成能、優れた加工性、高い飽和磁化および良好な軟磁気特性を兼備した実用上有用な鉄基非晶質合金を提供するものであり、本発明の鉄基合金組成によれば、単ロールを用いた液体急冷凝固法により220μm以下の薄帯材料および金型鋳造法により直径または厚み1mm以下の棒状または板状材料を容易に作製することができる。これらの非晶質合金は45℃以上の過冷却液体域を示すとともに、高飽和磁化および良好な軟磁気特性を有する。