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明細書 :ピコ秒レーザーによるホログラムの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4124417号 (P4124417)
公開番号 特開2003-241626 (P2003-241626A)
登録日 平成20年5月16日(2008.5.16)
発行日 平成20年7月23日(2008.7.23)
公開日 平成15年8月29日(2003.8.29)
発明の名称または考案の名称 ピコ秒レーザーによるホログラムの製造方法
国際特許分類 G03H   1/04        (2006.01)
G02B   5/18        (2006.01)
G02B   5/32        (2006.01)
G03H   1/26        (2006.01)
FI G03H 1/04
G02B 5/18
G02B 5/32
G03H 1/26
請求項の数または発明の数 8
全頁数 13
出願番号 特願2002-036010 (P2002-036010)
出願日 平成14年2月13日(2002.2.13)
審査請求日 平成16年11月2日(2004.11.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】平野 正浩
【氏名】河村 賢一
【氏名】三浦 泰祐
【氏名】上岡 隼人
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】杉山 輝和
参考文献・文献 特開2001-236002(JP,A)
特開平10-105029(JP,A)
特開2003-195023(JP,A)
特開2003-025085(JP,A)
BARRY N P, DAINTY J C, DOWLING K, FRENCH P M W, HYDE S C W, JONES R,Novel Ultrafast Tuneable Solid State Lasers for Real-World Applications Including Medical Imaging,Proc SPIE Int Soc Opt Eng,米国,1997年,Vol.3176,Page.304-313
調査した分野 G03H 1/00 - 5/00
G02B 5/32
特許請求の範囲 【請求項1】
ーザーパワーが10μJ/パルス以上で、可干渉性をもつレーザー光を発する固体レーザーを光源とし、該レーザーからのパルス光を二つに分割し、2つのビームを時間的および空間的に制御し、ホログラムを記録する基材表面または基材内部に集光し、二つのビームの集光スポットを時間的、空間的に合致させることにより干渉させ、1発のパルス光で基材表面に表面レリーフ型ホログラムまたは基材内部に埋め込み型ホログラムを不可逆的に記録する方法において、フェムト秒レーザーパルス光の位相補償を緩和させ、パルス幅τを900フェムト秒<τ≦100ピコ秒に拡大したパルス光を用いることを特徴とする二ビームレーザー干渉露光法によるホログラムの製造方法。
【請求項2】
空気の非線形性に基づくフェムト秒レーザー光の3倍高調波または3倍和周波、または非線形光学結晶に基づく2倍高調波または2倍和周波を用い、2つのビームの集光スポットを時間的、空間的に合致させ、その光学配置を保ったまま、該レーザーパルスのパルス幅τを、900フェムト秒<τ≦100ピコ秒に拡大して集光スポットを時間的、空間的に合致させることを特徴とする請求項1記載のホログラムの製造方法。
【請求項3】
基材内部に、基材表面から10μm以上の深さに埋め込み型ホログラムを不可逆的に記録することを特徴とする請求項1又は2に記載のホログラムの製造方法。
【請求項4】
複数のレーザーパルスによって同一または異なる複数のホログラムを、一つの基材内部の同一または異なる位置に多重記録することを特徴とする請求項1又は2に記載のホログラムの製造方法。
【請求項5】
基材表面または内部にホログラムを記録した後、基材表面からの集光スポット深さを変化させ、ホログラムを多層記録することを特徴とする請求項1又は2に記載のホログラムの製造方法。
【請求項6】
基材表面または内部にホログラムを記録した後、基材を90度回転させ、該ホログラム上に、干渉したパルス光を照射して二次元ホログラムを形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のホログラムの製造方法。
【請求項7】
該基材として、バルクまたは薄膜のシリカガラス、BK5ガラス、多成分ガラス、MgO、LiNbO、Al、ZnS、ZnSe、ZnO、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、AlN、GaN、AlAs、GaAs、またはそれらの混合物を用いることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のホログラムの製造方法。
【請求項8】
該基材として、金、銀、白金、銅、ニッケル、クロム、アルミニウム、カドミウム、タンタル、超硬合金、または金属シリコンから選ばれる金属材料を用いることを特徴とする請求項1乃至のいずれかにに記載のホログラムの製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高エネルギー密度を有する干渉したレーザーパルス光により、透明化合物、半導体、有機物、または金属中に、微小ホログラムを作成する方法、およびそれらのホログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザー光の干渉を利用して、ホログラム素子または回折格子素子を作成する方法は、従来から、良く知られた技術である。こうしたレーザー露光により作成された回折格子は、分光器用回折格子、分布帰還型半導体レーザー用回折格子またはファイバーグレーテング用回折格子などに使われている。これらの回折格子作成には、He-Cdレーザー、アルゴンレーザー、エキシマ-レーザーなど、連続光発振レーザーまたはナノ秒パルスレーザーが使われている。これらのレーザーは、光エネルギー密度が小さいので、被加工材料には感光性が必要となる。本発明者らは、先に、フェムト秒レーザー光干渉を利用して、ホログラム素子を作成する方法を開発した。
【0003】
この方法では、フェムト秒レーザー光が高エネルギー密度を有しているために、被加工材料は必ずしも感光性を必要とせず、ほとんどすべての材料に回折格子を記録できる。しかし、フェムト秒パルスは、パルスピーク(peak)値エネルギーが高すぎるために、空気およびホログラム記録材料との非線型光学相互作用が大きく、レーザー光伝播中に、レーザーパルスのコヒーレンスが劣化し、安定にホログラムが記録しにくいという欠点があった。
【0004】
特に、基材内部に埋め込み型ホログラムを形成するためには、基材内部を、高エネルギー値を有するレーザーパルスを伝播させることが不可欠で、波形が乱れやすく、それを低減するために、基材の選定や、ホログラムを記録する閾値以上で非線型効果が無視できる程度にレーザーエネルギーを小さくする必要があり、その許容幅が狭いために、所定の性能を持つホログラムを記録する事が非常に難しかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、干渉したフェムト秒レーザーを用いて、非感光性材料に、不可逆的にホログラムを記録する場合、フェムト秒レーザーパルスと空気および材料との非線型光学相互作用により、パルスレーザーの波形が乱れ、このため、埋め込み型のホログラムを安定して記録できない欠点があった。
【0006】
本発明は、これらの課題を解決しようとするもので、フェムト秒パルスを波長チャーピング(chirping)することによって得られる、ピコ秒(10-12秒)領域のパルス幅τを有するお互いに干渉したレーザー光を用いて、埋め込み型ホログラムを記録する方法を提供するものである。本発明の方法では、位相整合を緩和させるチャーピング手法により、レーザーエネルギーを保ったままに、フェムト秒レーザーのパルス幅τを、900フェムト秒<τ≦100ピコ秒まで拡大したレーザーパルス(以下ピコ秒パルスと呼ぶ)光を用いるもので、2ビームレーザー干渉法により埋め込み型ホログラムを、再現性良く、記録する事ができる。
【0007】
パルス当りのエネルギーを一定にして、パルス幅τを広げているので、エネルギーピーク値が減少し、その結果、レーザーパルスと材料との非線型光学相互作用が小さくなり、材料伝播中にもレーザー波形の乱れが少なく、安定して、材料内部に埋め込み型ホログラムを記録する事が可能になる。
【0008】
互いに干渉したフェムト秒レーザーを用いて、埋め込み型ホログラムを記録する方法は、本発明者により提案されているが、本発明は、その手法を改良し、レーザーパルス幅τを900フェムト秒<τ≦100ピコ秒にまで拡大する事により、埋め込み型ホログラムを、基材内部の任意の深さに記録する、さらにそれらのホログラムを多重に記録する方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、互いに干渉したピコ秒パルスを、基材に照射する事により、基材内部に埋め込まれた1次元または2次元のホログラムを作成する方法であり、さらに、それらのホログラムを同一基材内部に、一個または複数個作成する方法である。
【0010】
すなわち、本発明は、ーザーパワーが10μJ/パルス以上で、可干渉性をもつレーザー光を発する固体レーザーを光源とし、該レーザーからのパルス光を二つに分割し、2つのビームを時間的および空間的に制御し、ホログラムを記録する基材表面または基材内部に集光し、二つのビームの集光スポットを時間的、空間的に合致させることにより干渉させ、1発のパルス光で基材表面に表面レリーフ型ホログラムまたは基材内部に埋め込み型ホログラムを不可逆的に記録する方法において、フェムト秒レーザーパルス光の位相補償を緩和させ、パルス幅τを900フェムト秒<τ≦100ピコ秒に拡大したパルス光を用いることを特徴とする二ビームレーザー干渉露光法によるホログラムの製造方法である。
【0011】
また、本発明は、空気の非線形性に基づくフェムト秒レーザー光の3倍高調波または3倍和周波、または非線形光学結晶に基づく2倍高調波または2倍和周波を用い、2つのビームの集光スポットを時間的、空間的に合致させ、その光学配置を保ったまま、該レーザーパルスのパルス幅τを、900フェムト秒<τ≦100ピコ秒に拡大して集光スポットを時間的、空間的に合致させることを特徴とする上記のホログラムの製造方法である。
【0012】
また、本発明は、基材内部に、基材表面から10μm以上の深さに埋め込み型ホログラムを不可逆的に記録することを特徴とする上記のホログラムの製造方法である。また、本発明は、複数のレーザーパルスによって同一または異なる複数のホログラムを、一つの基材内部の同一または異なる位置に多重記録することを特徴とする上記のホログラムの製造方法である。また、本発明は、基材表面または内部にホログラムを記録した後、基材表面からの集光スポット深さを変化させ、さらにホログラムを多重記録することを特徴とする上記のホログラムの製造方法である。また、本発明は、上記のホログラムの製造方法により、基材表面または内部にホログラムを記録した後、基材を90度回転させ、該ホログラム上に、さらに上記のホログラムの製造方法により、干渉したパルス光を照射することを特徴とする二次元ホログラムの製造方法である。
【0013】
発明は、上記の方法により、可視光に対して透明な化合物、半導体材料、または金属材料に不可逆的に形成された表面レリーフ型ホログラム、埋め込み型ホログラム、またはホログラムを提供する。
【0014】
本発明者らは、先に、従来行なわれていた感光性材料を用いたレーザー光干渉露光ホログラム作成法に替えて、フェムト秒レーザーを用いた二ビームホログラム露光法を開発し、本来は感光性を持たない有機材料、無機材料、半導体材料または、金属材料に、一つのパルスから分岐した一対のパルス光で、ホログラムを記録できる方法を実現し、特許出願した(特開2001-236002号公報、EP1,162,519号明細書)。
【0015】
この方法は、発振波長が800nm付近の近赤外領域で、該パルス幅τが900<τ≦10フェムト秒、ピーク出力が1GW以上で、フーリェ限界またはそれと近似できる固体フェムト秒レーザーを光源とし、該レーザーからのパルスをビームスプリッターにより二つに分割し、二つのビームを、光学遅延回路を介して時間的に制御し、かつ微小回転する反射面が平面または凹面の鏡を用いて空間的に制御し、ホログラムを記録する基材表面または基材内部に、エネルギー密度100GW/cm以上で集光し、二つのビームの集光スポットを時間的および空間的に合致させることにより、高エネルギー照射によって生じる基材材料のアブレーションおよび/または基材材料の原子配列構造変化による基材表面の形状変化および/または基材材料の屈折率変化により、透明材料、半導体材料、または金属材料に不可逆的にホログラムを記録する事を特徴とする二ビームレーザー干渉露光法によるホログラムの製造方法である。
【0016】
基材に高エネルギーを有するパルスレーザー光を照射した際、レーザーエネルギーは、まず基材内部の電子に吸収される。電子のエネルギーは、基材内部の原子の振動エネルギー、すなわち、基材を構成する原子の振動エネルギー、すなわち基材の熱エネルギーに移るまでには、100ピコ秒程度の時間が必要と考えられている。電子エネルギーの密度が、閾値を越えると、基材のアブレーションまたは、構造変化により、基材に不可逆的な変化が起こる。干渉パターンでの明部と暗部の間に閾値がくるように、単位面積あたりのレーザーエネルギーを設定すれば、干渉パターンが基材に転写され、基材にホログラムが不可逆的に記録される。
【0017】
すなわち、レーザーパルスの持続時間が100ピコ秒程度までは、電子系に蓄えられるエネルギーはレーザーパルス光の有する全エネルギーのみに依存し、パルスの時間幅に依らない。しかし、レーザーパルス幅τが100ピコ秒程度より長くなると、レーザー照射中にも、電子系のエネルギーが格子系などへ緩和するために、電子系に蓄えられるエネルギーは、励起レーザーパルスの時間幅に依存する事になる。すなわち、ホログラムの記録に使われる有効なレーザーエネルギーEfは、レーザーパルス幅をτ、レーザーパルス当りの全エネルギーをEtとすれば、aを比例定数として下記の式で示される。
Ef=a×Et τ<~100ピコ秒 =a×(Et)×(~100ピコ秒/τ) τ>~100ピコ秒
【0018】
一方、レーザーパルスのエネルギーピーク値は、Et/τで与えられ、エネルギーピーク値が小さいほど、非線形効果の影響が軽減され、レーザービームは伝播中に、波形が劣化する程度が小さくなる。したがって、Etを一定に保ったまま、レーザーパルスの時間幅をフェムト秒のオーダーから10ピコ秒程度にまで拡大する事により、安定して、ホログラムを記録する事ができる。特に、基材内部に埋め込まれたホログラムを記録する場合には、レーザー光は基材内部を伝播させる必要がある。基材内部伝播により生じる波形のゆがみを低減するために、Efを閾値以上に設定し、パルス幅τを10ピコ秒程度に拡大し、ピーク値を低減させることにより、基材表面から10μm以上の深さに亘って、埋め込み型ホログラムを作成する事ができる。
【0019】
ピコ秒パルスでは、レーザーパルスのピーク値が小さくなるために、空気または非線型光学結晶からの高調波発生が著しく弱くなるために、この原理に基づいた、2つのパルス間の空間・時間一致を達成する方法が適応できない。このために、まず、ピーク値の高いフェムト秒レーザーで、2つのビームの空間・時間一致を達成し、その後、光学系を変えずに、位相整合を緩和するチャーピング方法により、レーザーパルス幅τを拡大させれば、ピコ秒パルス間でも、時間および空間一致が維持され、埋め込み型ホログラムを記録する事ができる。光ファイバー、光導波路などへ回折格子を書き込む場合には、クラッド層の内側にあるコアー領域に書き込む必要があり、埋め込みの深さは、10μm~2mmが要求されるが、本作成法では、埋め込み深さは、集光スポットにより自由に制御できるので、埋め込み深さに制限があるわけではない。
【0020】
レーザー媒体の利得には、波長幅があるため、レーザー共振器には、複数の波長成分が存在している。これらがレーザー媒体中を伝播するときに、光波長により速度が異なるために、レーザー共振器の物理的長さは一定であるにも拘わらず、光学的な長さは波長により異なることになる。したがって、波長によって共振器周回時間に差が出ることになる。この波長による共振器周回時間差を、プリズムなどを用いて位相補償し、すべての波長の共振器周回時間差を零にすることができる。こうした状態をモードロックという。
【0021】
レーザー媒体の利得波長幅が小さいときは、モードロックされたレーザーパルスの時間幅はピコ秒オーダーであるが、チタンサファイヤのように、利得波長幅が広いレーザー媒体を使う事により、フェムト秒レーザーパルスを得る事ができる。したがって、フェムト秒レーザー発振器に装備された位相補償回路を逆側に操作させ、時間パルス幅τを900フェムト秒<τ≦1ピコ秒まで拡大する事ができる。こうした状態は、波長がチャーピングしていると呼ばれる。さらに、再生増幅器に装備された位相補償回路(パルス圧縮回路)を調整し、波長チャーピングすれば、パルス当りのエネルギーを低減させる事なく、パルス幅τを900フェムト秒<τ≦100ピコ秒の範囲で変化させることができる。
【0022】
パルス幅τの変化は、ホログラム露光光学系で、レーザービームを2つに分離する前に行なう事ができるので、チャーピング操作により、レーザーパルス幅τを変化させても、2つの集光ビームの時間・空間一致の状況が変化することはない。900フェムト秒<τ≦100ピコ秒の範囲でホログラムを記録する事ができるが、望ましくは、パルス幅τは1ピコ秒<τ≦10ピコ秒である。
【0023】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の方法に用いるレーザー干渉露光装置のシステム概念図である。フェムト秒およびピコ秒レーザー光源から照射されたレーザービームは、平面鏡M1により反射され、ビームスプリッターとして用いるハーフ鏡HF1で、ビームB1とビームB2に分けられる。ビームB1は、平面鏡M2と凹面鏡M3で反射され、基材S1の表面または内部に集光する。凹面鏡M3の替わりに、平面鏡M3´と肉厚の薄いレンズL1を用いても良い。ビームB2は、平面鏡M4、平面鏡M5で反射され、さらに凹面鏡M6で反射され、基材S1の表面または内部に集光される。凹面鏡M6の替わりにレンズL2と平面鏡とを用いてもよい。
【0024】
実線で示す光学パスは、透過型ホログラムを作成する場合であるが、反射型ホログラムを作成する場合は、太い点線で示す光学系を用いて、凹面鏡6で反射したビームB2を平面鏡M7および平面鏡M8によって、基材S1の内部に集光させる。凹面鏡M6に替えて、レンズL2と平面鏡とを用いてもよい。なお、図1に細い点線で示す様に、He-Neレーザー光を平面鏡M9で反射させ、基材S1に照射し、その反射光からホログラムの形成プロセスをモニターするようにしても良い。
【0025】
平面鏡M4と平面鏡M5は、光学遅延回路として機能する。すなわち、平面鏡M4および平面鏡M5をマイクロノギスで、1ミクロンのオーダーで微動させ、ビームB1とビームB2の相対的な光路長差を調整して、二ビームの集光スポットの時間的な一致を行う。凹面鏡M3、凹面鏡M6、または平面鏡M8をマイクロノギスを用いて微回転させ、二ビームの集光位置を空間的に一致させる。レンズL1およびL2は、コヒーレンスの劣化を防ぐため、可能な限り肉薄で、焦点距離の長いものが好ましい。この配置では、基材S1でのビームの偏光面は平行である。作成された回折格子のフリンジ間隔、レンズ機能を持たせた時の焦点距離などの光学パラメーターは、従来の連続光を用いた二ビームレーザー干渉露光法で得られるものと同様に求められる。基材S1は、X—Yステージ上に置き、マイクロノギスを用いて微動させ、基材S1の指定の位置に、ホログラムを記録する。
【0026】
二ビームレーザー露光装置は、ミクロンスケールで、位置が制御できる光学系が必要であり、それに対応できる高精度の位置制御性をもつ装置として、精細な制御が可能な光学遅延回路、微小回転できる平面鏡と凹面鏡、および二ビームの集光合致の有無を検出できる機能を併せ持つ光学系により、二つのビームを基材上または基材内部に集光して、時間的および空間的に、二つの集光スポットを合致させる事を可能としたものである。空気の3次非線形効果による3次高調波の強度をモニターしながら、強度が最大になるように、光学遅延回路を調整し、時間・空間一致を得る。空気の代わりに、非線型光学結晶を用い、発生する二次高調波を利用する事もできる。
【0027】
モードロック固体レーザーからの800nm近傍の近赤外領域の発振波長をもつ、10μJ以上の高エネルギーを有する100フェムト秒程度のパルスの時間幅を持つレーザー光を、2つのビームに分けた後、再び、2つのビームを一点に集光させる。この際、空気の三次の非線型効果に基づく3倍高調波、または非線型光学結晶からの2倍高調波または2倍和周波の強度をモニターしながら、光学遅延回路およびビーム集光光学系を調整して、二つの集光ビームを時間的、空間的に一致させ、お互いに干渉させる。
【0028】
フェムト秒パルスの発振器として、近赤外光で発振するファイバーレーザー及び固体レーザーを用いることもできる。また、二つのビームが集光したスポットと基材の指定位置との合致を可能とするために、基材は、ミクロンオーダーで微小移動および、分のオーダーで微小回転するステージ上に置かれている。さらに、基材内部の特定の位置を検出するために、ステージ上の基材を実体顕微鏡で観測する事ができる。
【0029】
二つのビームの時間的・空間的な一致を得た後、その集光スポットに基材を設置する。二ビームの時間・空間一致を得るときには、モードロックチタンサファイヤレーザーのフェムト秒パルスレーザーを最大エネルギー約1mJ,時間幅約100フェムト秒に再生増幅したフェムト秒レーザーパルス光を用いる。
【0030】
基材として、バルクまたは薄膜のシリカガラス、BK5ガラス、多成分ガラス、MgO、LiNbO、Al、ZnS、ZnSe、ZnO、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、AlN、GaN、AlAs、GaAs、またはそれらの混合物を用いて埋め込み型ホログラムを作成できる。
【0031】
また、基材として、バルクまたは薄膜のシリカガラス、BK5ガラス、多成分ガラス、MgO、LiNbO、Al、ZnS、ZnSe、ZnO、YSZ(イットリウム安定化ジルコニア)、AlN、GaN、AlAs、GaAs及びそれらの混合物を用いて表面レリーフ型ホログラムを作成できる。さらに、基材として、金、銀、白金、銅、ニッケル、クロム、アルミニウム、カドミウム、タンタル、超硬合金、または金属シリコンから選ばれる金属材料を用いて表面レリーフ型ホログラムを作成できる。
【0032】
2つのビームを時間的、空間的に一致させた後、光学系をそのままにして、位相整合を緩和させる波長チャーピング法により、レーザーパルス幅τを900フェムト秒<τ≦100ピコ秒(以下ピコ秒パルスと呼ぶ)に拡大する。2つのビームの集光スポットに、基材を設置し、一発のパルスにより、直径100μm程度のホログラムを記録する。
【0033】
干渉したピコ秒レーザーの集光スポットを基材の表面に設定し、基材表面に表面レリーフ型ホログラムを形成できる。レーザーパルス幅τを長くすると、表面レリーフ型ホログラムのフリンジの溝深さを深くすることができるので、表面レリーフ型ホログラムの回折効率を向上させることができる。集光スポットを基材の内部に設定すれば、埋め込み型ホログラムを記録できる。
【0034】
ホログラムを基材内部に記録するときは、再生増幅器中の、位相補償器(パルス圧縮装置)を調整して、パルス幅τを、900フェムト秒<τ≦100ピコ秒の範囲で変化させ、ホログラムの記録に適した時間幅を決める。例えば、ガラス材料に埋め込み型ホログラムを作成するときには、2ピコ秒程度が望ましい。ピコ秒レーザーパルスのエネルギーは、10μJ~1mJであり、集光スポットの大きさは、100μm程度であり、空間密度は、100~0.1J/cmである。
【0035】
ホログラムを記録した後、基材を前後左右に移動させ、その後、干渉したレーザーパルスを照射する事により、基材に深さ方向、または平面方向に並んだ複数のホログラムを記録する事ができる。また、ホログラムを記録した後、基材を回転させ、干渉したレーザーパルスを照射する事により、埋め込み型2次元ホログラムを記録できる。
【0036】
実施例1
図1に示す2ビームレーザー干渉露光装置を用いた。すなわち、レーザーは、再生増幅チタンサファイヤレーザーで、発振中心波長は約800nm、パルス幅τ約100フェムト秒、パルスエネルギーは、それぞれのビームに対して、50μJ/パルスであった。レーザービームは、ハーフ鏡HF1で、二つに分けられ、レンズL1及びレンズL2により集光される。ビームB1またはビームB2に対する光学路内に、光学遅延回路及び光学路位置あわせ回路を設置し、空気による3倍高調波の発生強度を用いて、二つのビームの集光スポットを時間的および空間的に合致させた。集光スポットの大きさは、約100μmで、ピーク密度は約1J/cmと計算される。ビームB1とビームB2の基材S1への入射角度は、45度とした。
【0037】
次に、光学回路をそのままにして、チタンサファイヤレーザーの再生増幅器内パルス幅圧縮光学回路を調整し、波長をチャーピングさせ、パルス当たりのエネルギーは、100μJに維持したまま、パルス幅τを100フェムト秒から2ピコ秒に拡大した。この状態では、二つのビームは集光点で、時間的、空間的に一致している。集光点が、表面から100μm程度になるように、シリカガラス基板を設置し、1発のピコ秒レーザーパルスを照射した。光学顕微鏡で焦点深度を変えながらシリカガラス内部を観測し、シリカガラス内部に、約100μm径の微小ホログラムが記録されていることがわかった。シリカガラスをホログラムが記録された部分で切断し、その断面をフッ酸溶液でエッチングした。エッチング後断面の走査型反射電子顕微鏡(SEM)像を図2の(A)および(B)に示す。図2の(B)は(A)の拡大写真である。シリカガラス表面から約100μm内部に、約70μmの厚さを有するホログラムが埋め込まれていることが観測できた。
【0038】
厚さが約50μmより大きくなると、記録閾値より大きなエネルギーをもつレーザービーム径が小さくなるために、ホログラムの直径が次第に減少していく。埋め込み深さは、シリカガラス基板の移動距離、すなわち、ピコ秒レーザーのシリカガラス基板中の焦点位置をずらすことにより、約2mmまで変化されることができた。以上から、干渉したピコ秒レーザーパルスを照射し、シリカガラス表面から約2mmの深さにまで埋め込まれた、直径約100μm、厚さ約70μmのホログラムを、記録できることが示された。
【0039】
実施例2
図1に示す2ビームレーザー干渉露光装置を用いた。すなわち、レーザーは、再生増幅チタンサファイヤレーザーで、発振中心波長は約800nm、パルス幅τ約100フェムト秒、パルスエネルギーは、それぞれのビームに対して、50μJ/パルスであった。レーザービームは、ハーフ鏡HF1で、二つに分けられ、レンズL1及びレンズL2により集光される。ビームB1またはビームB2に対する光学路内に、光学遅延回路及び光学路位置あわせ回路を設置し、空気による3倍高調波の発生強度を用いて、二つのビームの集光スポットを時間的および空間的に合致させた。
【0040】
集光スポットの大きさは、約100μmで、ピーク密度は約1J/cmと計算される。ビームB1とビームB2の基材への入射角度は、45度とした。次に、光学回路をそのままにして、再生チタンサファイヤレーザーの再生増幅器内のパルス幅圧縮光学回路を調整し、波長をチャーピングさせ、パルス当たりのエネルギーは、100μJに維持したまま、パルス幅τを100フェムト秒から2ピコ秒に拡大した。この状態では、二つのビームは集光点で、時間的、空間的に一致している。
【0041】
集光点が、表面から100μm程度の深さになるように、シリカガラス基板を設置し、1発のピコ秒レーザーパルスを照射した。その後、シリカガラス基板を、垂直方向に約300μm移動させ、1発のピコ秒レーザーパルスを照射した。さらに、約300μm垂直方向に移動し、1発のピコ秒レーザーパルスを照射した。光学顕微鏡により、シリカガラス中に、3つのホログラムが垂直方向に多重記録されていることがわかる。それらのホログラムの断面SEM像を図3す。100μm、380μm、680μmのそれぞれの深さに埋め込まれたホログラムが記録されていることが確認できた。
【0042】
実施例3
図1に示す2ビームレーザー干渉露光装置を用いた。すなわち、レーザーは、再生チタンサファイヤレーザーで、発振中心波長は約800nm、パルス幅τ約100フェムト秒、パルスエネルギーは、それぞれのビームに対して、50μJ/パルスであった。
【0043】
レーザービームは、ハーフ鏡HF1で、二つに分けられ、レンズL1及びレンズL2により集光される。ビームB1またはビームB2に対する光学路内に、光学遅延回路及び光学路位置あわせ回路を設置し、空気による3倍高調波の発生強度を用いて、二つのビームの集光スポットを時間的および空間的に合致させた。集光スポットの大きさは、約100μmで、ピーク密度は約1J/cmと計算される。
【0044】
ビームB1とビームB2の基材への入射角度は、45度とした。次に、光学回路をそのままにして、再生チタンサファイヤレーザーの再生増幅器内のパルス幅圧縮光学回路を調整し、波長をチャーピングさせ、パルス当たりのエネルギーは、100μJに維持したまま、パルス幅τを100フェムト秒から2ピコ秒に拡大した。この状態では、二つのビームは集光点で、時間的、空間的に一致している。
【0045】
集光点が、表面から100μm程度の深さになるように、シリカガラス基板を設置し、1発のピコ秒レーザーパルスを照射した。次に、シリカガラス基板を90度回転させ、集光ビームが記録されたホログラムに重なるように、シリカガラス基板位置を調整した後、1発のピコ秒レーザーパルスを照射し、記録されたホログラムを光学顕微鏡で観察した。シリカガラス基板表面から、焦点深度を約100μm程度ずらすことにより、図4に示す二次元ホログラム像を観測できた。図4は、ホログラム断面の走査型反射電子顕微鏡像(SEM)を示す写真である。すなわち、干渉したピコ秒レーザーパルスの照射により、埋め込まれた二次元ホログラムが記録できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の方法に使用する2ビームレーザー干渉露光装置のシステム概念図である。
【図2】図2の(A)および(B)は、実施例1で製造したホログラム断面の走査型反射電子顕微鏡像(SEM)を示す図面代用写真(BはAの拡大写真)である。
【図3】図3は、実施例2で製造したホログラム断面の走査型反射電子顕微鏡像(SEM)を示す図面代用写真である。
【図4】図4は、実施例3で製造したホログラム断面の走査型反射電子顕微鏡像(SEM)を示す図面代用写真である。
【符号の説明】
A1 アパーチャー
B1,B2 レーザービーム
HF1 ハーフミラー
L1,L2 レンズ
M1,M2,M4,M5,M7,M8,M9 平面鏡
M3,M6 凹面鏡
S1 基材
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3