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明細書 :活性酸素種を包接する12CaO・7Al2O3化合物およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3531868号 (P3531868)
公開番号 特開2002-003218 (P2002-003218A)
登録日 平成16年3月12日(2004.3.12)
発行日 平成16年5月31日(2004.5.31)
公開日 平成14年1月9日(2002.1.9)
発明の名称または考案の名称 活性酸素種を包接する12CaO・7Al2O3化合物およびその製造方法
国際特許分類 C01F  7/16      
A01N 59/06      
B01J 23/02      
H01B  1/08      
H01M  4/86      
FI C01F 7/16
A01N 59/06
B01J 23/02
H01B 1/08
H01M 4/86
請求項の数または発明の数 8
全頁数 6
出願番号 特願2001-049524 (P2001-049524)
出願日 平成13年2月26日(2001.2.26)
優先権出願番号 2000122368
優先日 平成12年4月18日(2000.4.18)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成13年2月26日(2001.2.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人 科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】平野 正浩
【氏名】林 克郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】平塚 政宏
参考文献・文献 JOURNAL OF SOLID STATE CHEMISTRY,1989年,81,pp.152-164
INORGANIC CHEMISTRY,1987年,26[8],pp.1192-1195
JOURNAL OF THE CERAMIC SOCIETY OF JAPAN,1994年,102[8],pp.772-777
調査した分野 C01F 7/16
特許請求の範囲 【請求項1】
活性酸素種であるO2イオンラジカルおよび/またはOイオンラジカルを1020cm3以上の高濃度に包接することを特徴とする12CaO・7Al2O3化合物。

【請求項2】
カルシウム(Ca)とアルミニウム(Al)を原子当量比で12:14に含む混合原料を用い、焼成温度1200℃以上、1415℃未満、酸素分圧104Pa以上、水蒸気分圧102Pa以下の乾燥酸化雰囲気で固相反応させることを特徴とする請求項1記載の12CaO・7Al2O3化合物の製造方法。

【請求項3】
カルシウムとして炭酸カルシウムまたは水酸化カルシウムまたは酸化カルシウムを、アルミニウムとして、酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムを原料とすることを特徴とする請求項2記載の12CaO・7Al2O3化合物の製造方法。

【請求項4】
温度1200℃以上、真空中、または大気中で熱処理することを特徴とする請求項1記載の12CaO・7Al2O3化合物に包接される活性酸素種を取り出す方法。

【請求項5】
請求項1記載の12CaO・7Al2O3化合物を用いた酸化触媒。

【請求項6】
請求項1記載の12CaO・7Al2O3化合物を用いた抗菌剤。

【請求項7】
請求項1記載の12CaO・7Al2O3化合物を用いたイオン伝導体。

【請求項8】
請求項1記載の12CaO・7Al2O3化合物を用いた固体電解質燃料電池用電極。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、活性酸素種であるO2イオンラジカルおよびOイオンラジカル(以下両酸素イオンラジカルを総称して、活性酸素種と呼ぶ。)を高濃度に包接する酸化物である12CaO・7Al2O3化合物とその製造方法および該化合物の用途に関する。

【10】
すなわち、カルシウムとアルミニウムを概略12:14の原子当量比で混合した原料、望ましくは、炭酸カルシウムとγ-酸化アルミニウムを分子当量で12:7で混合した原料を、酸素分圧104Pa以上、水蒸気分圧102Pa以下、好ましくは酸素分圧105Pa以上、水蒸気分圧1Pa以下に制御した雰囲気内で、焼成温度1200℃以上、好ましくは1300℃の高温度の条件下で、固相反応させ、12CaO・7Al2O3化合物が得られる。該化合物には、活性酸素種が1020cm-3以上包接されている。包接量は、電子スピン共鳴およびラマンスペクトルにより分析できる。

【11】
焼成雰囲気の酸素分圧104Pa未満または水蒸気分圧102Paのときは、包接される活性酸素種濃度は、1020cm-3未満である。また、酸素分圧104Pa以上かつ水蒸気分圧102Pa以下の乾燥酸化雰囲気でも、焼成温度が1200℃未満では12CaO・7Al2O3化合物が合成されにくい。焼成温度が1415℃を超えると、原料が溶融し、12CaO・7Al2O3化合物が合成されにくい。固相反応で、12CaO・7Al2O3を合成する場合、原料は、炭酸カルシウムとγ-酸化アルミニウムが適しているが、水酸化カルシウムもしくは酸化カルシウムと水酸化アルミニウムもしくは各種酸化アルミニウム(α、δ、θ相)の組み合わせでも合成は可能である。

【12】
活性酸素種を包接する12CaO・7Al2O3化合物の77Kでの電子スピン共鳴(ESR)スペクトルは、gx =2.00, gy=2.01, gz =2.04 にて規定されるスペクトルと、gx=gy=2.05 , gz=2.00 にて規定されるスペクトルとの重ね合わせによって構成されている。これらのg値はそれぞれ、固体中でのO2イオンラジカルおよびOイオンラジカルのg値と一致することから、12CaO・7Al2O3化合物には、O2イオンラジカルとOイオンラジカルが包接されていると結論される。ESR吸収バンドは、室温では、対称的であり、77Kの低温では、非対称になる。

【13】
これは、室温では、ケージ内でO2イオンラジカルとOイオンラジカルは回転運動しているが、低温では、ケージの壁にあるCa2+イオンと静電気的に結合し、空間的に固定されていることに対応している。また、吸収バンドの強度からO2イオンラジカルおよびOイオンラジカルの濃度を定量することができる。

【14】
該化合物のラマン散乱スペクトルには、1130cm-1付近に強い散乱ピークが見られる。このピークは、K. Nakamotoらによって(K. Nakamoto, Infrared and Raman Spectra of Inorganic and Coordination Compound, 1978, Wiley) 報告されているO2イオンラジカルのピークに一致する。ESRの吸収バンドと、ラマン散乱強度には、相関関係があり、ラマン散乱強度から、包接されているO2イオンラジカル強度を定量することができる。該化合物を真空中、または大気中で加熱すると1200℃以上で活性酸素種ないし酸素分子が放出される。

【15】
図1は、12CaO・7Al2O3の結晶構造を示す模式図である。12CaO・7Al2O3は、立方晶の結晶系(格子定数=11.97Å)で空間群はI43dで、単位格子あたり2式量のイオンが存在する。融点は、1415℃である。該結晶はAlO4の4面体が、重合したネットワーク構造にCa2+イオンが配した構造をとっており、結晶格子中に空隙(ケージ)を有している。

【16】
すなわち、2(12CaO・7Al2O3) = Ca24Al28O66 = [Ca24Al28O64]4+・2O2-であり、O2-は、フリー酸素と呼ばれ、ケージの中に存在している。一般に、O2-は、固体構造中では常にカチオンで配位されており、フリーな状態になることはほとんどない。しかし、12CaO・7Al2O3結晶中では、O2-イオンは、ケージ内に存在し、カチオンと結合できず、フリーな状態になっている。このような状態を「包接」という。この状態は、固体表面に吸着した状態と類似しており、化学的に非常に活性な状態である。

【17】
ケージ内に包接されたO2—イオンは、ケージ内にあるため、直接、外界雰囲気との反応が防がれている。しかし、1200℃以上の高温になると、熱膨張でケージのサイズが大きくなり、雰囲気からの酸素分子がケージのボトルネックを通過できるようになる。その結果以下の反応が起こる。
O2-(ケージ内) + O2(雰囲気) = O(ケージ内) + O2(ケージ内)

【18】
すなわち、単位胞あたり2ヶ存在する酸素イオンO2-から2つのOとO2が生成される。OとO2を高濃度に包接する12CaO・7Al2O3化合物は、[Ca24Al28O64]4+ ・mO2 ・ mO ・ (2 - m) O2-と記述される。ここで、m≦2 であり、O2とOとO2-はケージ内に包接されている。

【19】
該化合物を1200℃以上の高温でかつ真空中、また大気中で熱処理することにより、ケージ内のボトルネック通過が活発になり、活性酸素イオンラジカルの濃度が平衡濃度に遷る過程でケージ内の活性酸素イオンラジカルを雰囲気中に取り出すことができる。

【2】

【従来の技術】O2イオンラジカルは、活性酸素種の1種であり、有機物や無機物の酸化過程で重要な役割を果たすことが知られている。酸化物化合物の固体表面上に吸着したO2については、広範な研究が行われてい(J. H. Lunsford, Catal. Rev. 8,135, 1973, M. Che and A. J. Tench, Adv. Catal, 32,1, 1983)。これらの研究のほとんどは、γ線などの高エネルギーの放射線を酸化物化合物表面に照射することによってO2イオンラジカルを作成している。

【20】
本発明の12CaO・7Al2O3化合物については、O2イオンラジカルによるラマンシフト1128cm-1近傍の散乱強度を利用することによって12CaO・7Al2O3化合物に包接されるO2イオンラジカルを定量分析することができる。

【21】
また、gx=2.00、gy=2.01、gz=2.04で規定される電子スピン共鳴吸収強度およびgx=gy=2.05、gz=2.00で規定される電子スピン共鳴吸収強度を利用することによって12CaO・7Al2O3化合物中に包接されるO2イオンラジカルおよびOイオンラジカルを定量分析することができる。

【22】
本発明の活性酸素種を1020cm-3以上の高濃度に包接する12CaO・7Al2O3化合物は、1250℃以上の高温で、活性酸素種ないし酸素イオンあるは酸素分子を放出させることができるので、酸化触媒として用いて、例えば、有機物を酸化することができる。また、活性酸素種は、優れた抗菌作用を持つことが知られており、活性酸素種を多量に包接する本発明の12CaO・7Al2O3化合物を抗菌剤として使用することができる。

【23】
さらに、活性酸素種を多量に包接する12CaO・7Al2O3化合物の活性酸素種は、ほぼフリーな状態で存在して、結晶中を移動できるので、本発明の12CaO・7Al2O3化合物は、イオン伝導体として使用することができる。また、該化合物の有するイオン伝導性と、有機物を酸化する能力を組み合わせることにより、固体電解質燃料電池用の電極材料として用いることができる。

【24】

【実施例】実施例1
炭酸カルシウムとγ-アルミナを12:7の当量混合した原料粉末を、酸素10-1MPaの雰囲気で、1300℃で2時間焼成した(試料1)。得られた化合物は12CaO・7Al2O3であることをX線回折により確認した。得られた化合物の室温および77KでのESRスペクトルを測定した。

【25】
図2および図3に、実施例1で得られた化合物のそれぞれ室温および77KでのESRスペクトルを示す。用いたマイクロ波の波長は、9.75GHzであった。室温では、磁界343mTに対照的な形状を持つ吸収バンドが見られた。g値は2.02と求められた。77Kでは吸収バンドは非対称的であった。この吸収バンドは、gx=2.002 , gy=2.009 , gz =2.073 にて規定されるO2イオンラジカルによる吸収バンドと、gx=gy=2.042, gz=2.001 にて規定されるOイオンラジカルによる吸収バンドとの重ね合わせによって構成されている。それぞれの吸収バンドの強度から、O2イオンラジカルおよびOイオンラジカルの濃度は、それぞれ1×1021cm-3と定量される。

【26】
比較例1
炭酸カルシウムとγ-アルミナを12:7の当量混合した原料粉末を、大気中(酸素分圧約2×104Pa、水蒸気分圧10Pa超)で、1300℃で2時間焼成した(試料2、比較例1)。得られた化合物は12CaO・7Al2O3であることをX線回折により確認した。図3に77KでのESRスペクトルを示す。比較例1(試料2)においては、吸収バンドは3つの成分に分かれ、それぞれgx=2.009, gy= 2.002, gz= 2.073と求めら、この吸収バンドはO2イオンラジカルよるものであり、その濃度は1×1019cm-3と定量される。

【27】
実施例1(試料1)および比較例1(試料2)に関して、ラマンスペクトルを測定した。図4に、実施例1および比較例1で得られたラマンスペクトルを示す。いずれのスペクトルにも、1000cm-1以下のエネルギー域に[Ca24Al28O64]4+による数本の散乱ラインが見られた。実施例1(試料1)では、それに加え、1128cm-1にO2イオンラジカルによるラマンピークが見られた。

【28】
実施例2
炭酸カルシウムとγ-アルミナを12:7の当量混合した原料粉末を、大気中(酸素分圧約2×104Pa、水蒸気分圧10Pa超)で、1300℃で2時間焼成した後、さらに酸素101MPaの雰囲気で、1300℃で2時間焼成した(試料3)。得られた化合物は12CaO・7Al2O3であることをX線回折により確認した。得られた12CaO・7Al2O3化合物中に含まれるO2イオンラジカル濃度をESRおよびラマン散乱スペクトルにより定量したが、包接量は、1×1021cm3であった。また、ESRスペクトルから、Oイオンラジカルが1×1021cm3包接されていることがわかった。

【29】
実施例3
実施例1で得られた12CaO・7Al2O3を大気中(酸素分圧約2×104Pa、水蒸気分圧10Pa超)で、1300℃で2時間熱処理した。(試料4)。熱処理後の12CaO・7Al2O3化合物中に含まれるO2をESRおよびラマン散乱スペクトルにより定量したが、包接量は、1×1019cm-3であった。熱処理により単位格子あたり合計3.8-0.02= 3.78の活性酸素種が減少したことが分かる。その大半は大気中に放出される。

【3】
O2イオンラジカルを構成アニオンとする結晶はRO2(R=アルカリ金属)が知られているが、これらの化合物は、いずれも300℃以下の温度で容易に分解してしまうため、酸化触媒、イオン伝導体などの用途には使用できない。

【30】
上記の実施例と比較例を比較して下記の表1に示す。実施例1(試料1)および実施例2(試料3)に包接される活性酸素種の量は、単位格子あたり3.8で、理論的に予想される最大合計値2 + 2 = 4にほぼ等しい。

【31】

【表1】
JP0003531868B2_000002t.gif【0032】実施例4
実施例1で得られた12CaO・7Al2O3化合物の昇温脱離ガス分析を実施した。測定室の雰囲気は、真空であった。実施例1で得られた化合物からは、1200℃以上で、(分子量)/(電荷) =32のピークが急激に大きくなり、活性酸素種が放出されることが確認された。図5に、実施例1および比較例1で得られた12CaO・7Al2O3化合物の(分子量)/(電荷) =32に対する昇温脱離ガス分析カーブを示す。

【33】
これらの実施例1~4で示されるように、12CaO・7Al2O3の焼成温度および雰囲気酸素分圧ならびに12CaO・7Al2O3の熱処理温度および雰囲気酸素分圧を制御することにより、雰囲気中の酸素を該化合物に可逆的に取り込み、また放出することができた。

【4】
Oイオンラジカルは、O2イオンラジカルに比較しても、より活性である。アルカリハライド、カルシウム・アルミガラス中などに少量含まれた例が報告されている(J.R.Bralsford他,J.Chem.Physics,Vol.49,pp2237,1968、H.Hosono他,J.Am.Ceramic.Soc,70,867,1987)。しかし、Oイオンラジカルを構成イオンとする結晶は、これまで、知られていない。

【5】
1970年にH. B. Bartlらは、C12A7と称される12CaO・7Al2O3結晶においては、2分子を含む単位包にある66個の酸素のうち、2個はネットワークには含まれず、結晶の中に存在するケージ内の空間に「フリー酸素」として存在すると主張している(H. B. Bartl and T. Scheller, Neuses Jarhrb. Mineral., Monatsh. 1970, 547)。

【6】
本発明者らの一人である細野らは、CaCO3とAl2O3またはAl(OH)2を原料として空気中で1200℃の温度で固相反応により合成した12CaO・37Al2O3結晶中に1×1019cm-3程度のO2が包接されていることを電子スピン共鳴の測定から発見し、フリー酸素の一部がO2の形でケージ内に存在するというモデルを提案してい(H.Hosono and Y. Abe, Inorg. Che. 26, 1193, 1987)。この12CaO・7Al2O3は、融点1415℃の安定な酸化物であり、包接される活性酸素種の量を増加させ、可逆的な取り込み、放出が可能となれば、酸化触媒、イオン伝導体などとしての用途が開けるものと期待できる。

【7】

【発明が解決しようとする課題】12CaO・7Al2O3結晶において、O2が包接されていることは、本発明者らの一人により見出されていたが、その濃度は、1019cm-3と比較的低濃度で、また、より活性なOイオンラジカルは見出されていなかった。さらに、そのO2を制御して、かつ可逆的に外部に取り出したり、取り込んだりする手段は見出されていなかった。

【8】
このような化合物を高効率の酸化触媒や抗菌剤等として用いるためには、より高濃度の活性酸素種を包接し、活性酸素種の取り出し、取り込みが可逆的にできることが必要である。また、包接されている活性酸素種の濃度を定量的に分析する手段を確立することも重要である。

【9】

【課題を解決するための手段】本発明者らは、カルシウムとアルミニウムを概略12:14の原子当量比で混合した原料を、雰囲気と温度を制御した条件下で固相反応させることにより、1020cm-3以上の高濃度の活性酸素種を包接する12CaO・7Al2O3化合物が得られることを新たに見出した。本発明は、その化合物自体、その作成方法、包接されたイオンの取り出し手段、および該化合物の用途に関するものである。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
4