TOP > 国内特許検索 > 高強度SiC繊維/SiC複合材料の製造方法 > 明細書

明細書 :高強度SiC繊維/SiC複合材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4527299号 (P4527299)
公開番号 特開2002-255648 (P2002-255648A)
登録日 平成22年6月11日(2010.6.11)
発行日 平成22年8月18日(2010.8.18)
公開日 平成14年9月11日(2002.9.11)
発明の名称または考案の名称 高強度SiC繊維/SiC複合材料の製造方法
国際特許分類 C04B  35/565       (2006.01)
C04B  35/80        (2006.01)
C04B  41/84        (2006.01)
FI C04B 35/56 101L
C04B 35/56 101X
C04B 35/80 C
C04B 35/80 K
C04B 41/84 B
請求項の数または発明の数 3
全頁数 6
出願番号 特願2001-052147 (P2001-052147)
出願日 平成13年2月27日(2001.2.27)
審査請求日 平成19年4月12日(2007.4.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】香山 晃
【氏名】小谷 政規
【氏名】加藤 雄大
個別代理人の代理人 【識別番号】100147485、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 憲司
【識別番号】100072051、【弁理士】、【氏名又は名称】杉村 興作
【識別番号】100114292、【弁理士】、【氏名又は名称】来間 清志
【識別番号】100107227、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 史朗
【識別番号】100134005、【弁理士】、【氏名又は名称】澤田 達也
【識別番号】100119530、【弁理士】、【氏名又は名称】冨田 和幸
審査官 【審査官】亀代 陽子
参考文献・文献 特開2001-010863(JP,A)
特開2000-219576(JP,A)
特開平11-116337(JP,A)
特開平11-130552(JP,A)
調査した分野 C04B 35/00-35/84
C04B 41/84
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
大気または真空中で、下記(a)、(b)で示される構造を有し、かつ単位構造の(a)/(b)比が1であるポリビニルシランを含浸させた樹脂含浸SiC繊維成形体を不活性ガス雰囲気中で300~400℃に加熱してポリビニルシランを高粘度液体ないし半固体状態に硬化させた後、一軸加圧しながらアルゴンガス雰囲気中で焼成することを特徴とする高強度SiC繊維/SiC複合材料の製造方法。
JP0004527299B2_000004t.gif
【請求項2】
含浸させるポリビニルシランが50質量%未満の微細SiC粒子を均一混合したものである請求項1に記載の高強度SiC繊維/SiC複合材料の製造方法。
【請求項3】
加圧焼成の後、ポリビニルシラン単独の含浸と無加圧焼成を繰り返して行う請求項1または2に記載の高強度SiC繊維/SiC複合材料の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、航空宇宙機器、原子炉、核融合動力炉等の高温や中性子照射等の過酷な環境下で使用される耐熱性と耐放射線特性に優れた構造材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
航空・宇宙分野、原子力分野等の過酷な環境下で使用される材料として、耐熱性、耐食性、機械的特性に優れたSiC,Si34等、種々のセラミックス材料が開発されてきた。セラミックス材料は、熱交換器,メカニカルシール等の過酷な条件に曝される部材としても使用されている。
なかでも、SiCは、耐熱性および耐摩耗性に優れていることは勿論、中性子照射条件下でも長寿命の放射性核種が発生しにくいことを活用し、航空・宇宙用途から原子力等の先進エネルギーシステム用途までの広範囲な分野において有望視されている構造材料である。
SiCは、融点が2600℃と高温特性に優れているが、それ自体では脆い材料である。そこで、SiC繊維で強化したSiC繊維/SiC複合材料が提案されている[A.Lacombe and C.Bonnet, 2nd Int.Aerospace Planes Conf.Proc.AIAA-90-5208(1990), C. W. Hollenberg et al., J. Nucl. Mat., 219, (1995)70-86参照]。
【0003】
SiC繊維/SiC複合材料の製造方法の一つとして、SiC繊維の成形体に前躯体樹脂を含浸・焼成して母相を形成させる前躯体樹脂含浸焼成法が用いられている。この製造法は、液状原料を繊維成形体に含浸させる点で繊維強化樹脂(FRP)の製造方法と類似していることから、大型・複雑形状部品の製造技術として有望視されている。しかしながら、繊維間に含浸された前躯体樹脂はその熱分解過程で、密度変化と重量損失により大幅な体積収縮を起こし、材料内に不可避的に多くの気孔が形成されて、結果的に気孔率の大きい材料となり、所期の特性を発揮できていない。
【0004】
このため、形成された気孔に前躯体樹脂の含浸・焼成を繰返すことにより、緻密化を行なっているが、前躯体樹脂がランダム方向に沸き上がりつつ硬化する際に気孔口を塞いでしまうため、以後の樹脂含浸を阻害して繊維間や繊維束間領域に樹脂が達し得ず、充分な緻密化が達成し得ない。
また、樹脂を含浸させた成形体に、前処理として熱酸化もしくは電子線照射による不融化処理を施して含浸させた樹脂の成形体からの染み出しを抑制させた状態で、加圧焼成を行なって緻密化を図ることも提案されている。
加圧焼成による緻密化は、様々な部品製造に有利な前躯体樹脂含浸焼成によるSiC繊維/SiC複合材料の製造において効果的である。しかし、熱酸化あるいは電子線照射による樹脂の不融化処理には、酸化させることに伴うSiC複合材料の高温特性の低下や、電子線照射設備の必要性を招く等の弊害がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、樹脂含浸繊維成形体を加圧焼成してSiC繊維/SiC複合材料を製造する際、焼成中に樹脂の染み出しを抑制しかつ圧力による成形体の亀裂発生を極力抑えて密度が高く、機械的特性に優れた複合材料を得る方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の高強度SiC繊維/SiC複合材料の製造方法は、その目的を達成するため、大気または真空中で、下記(a)、(b)で示される構造を有し、かつ単位構造の(a)/(b)比が1であるポリビニルシランを含浸させた樹脂含浸SiC繊維成形体を不活性ガス雰囲気中で300~400℃に加熱してポリビニルシラン樹脂を高粘度化ないし半固体状態に硬化させた後、一軸加圧しながらアルゴンガス雰囲気中で焼成することを特徴とするものである。
【0007】
JP0004527299B2_000002t.gifまた、含浸させるポリビニルシランとして、50質量%未満の微細SiC粒子を均一混合したものを使用してもよい。
さらに、加圧焼成の後、ポリビニルシランの含浸と無加圧焼成を繰り返して行うことにより、密度を高め、強度を高めることができる。
【0008】
【作用】
ポリビニルシランは一般に構造にビニル基が付与されているものもしくはビニル化合物を重合して合成された有機ケイ素化合物の総称であるが、本発明では、下記(a)、(b)で示される構造を有し、かつ単位構造の(a)/(b)比が1であるポリビニルシラン使用する。このポリビニルシランは、一次元を中心とする分子構造を有しながら側鎖に多くのSi-H結合が付けられている常温で低粘度(約70cP)の液状の樹脂であり、SiC粒子を多量に添加しても繊維成形体への含浸が十分可能な粘性を保っている。しかもポリカルボシランと同組成のセラミックスが30~40質量%の収率で得られる。
【0009】
JP0004527299B2_000003t.gif
【0010】
ポリビニルシランは熱分解過程で連続的熱硬化性を示すSiC前躯体樹脂であるから、不活性雰囲気中で加熱する際、その硬化状態を凡そ制御することが可能である。加熱温度と硬さの関係は、高温の樹脂に対して直接硬さを測定することは難しいため、実際の適正加熱温度は、様々な実験結果から設定した。300℃未満だと軟らかすぎて圧力をかけるとほとんどが染み出してしまって成形体になり得ず、また、400℃を超えると硬くなり過ぎ、その後の加圧焼成の際に亀裂が発生し、密度の向上に結びつかなかった。なお、保持時間は10分程度が好ましい。
【0011】
このようなSiC前躯体樹脂を繊維成形体に含浸させ、その後加圧焼成する際に樹脂が成形体から染み出さない程度の硬さに調整しておけば、加圧焼成と相俟って密度が高く、機械的特性に優れたSiC繊維/SiC複合材料を得ることができる。
特に、硬化処理後の硬化度と焼成中に加える圧力・焼成温度の組み合わせが、SiC繊維/SiC複合材料の密度と強度に大きな影響を与えるので、その調整が肝要である。
焼成はアルゴン雰囲気中1000~1300℃で行なうことが好ましい。1000℃未満では、樹脂の熱分解による無機化(SiC構造の発達)が十分に行われず、耐熱性の点で満足するものが得られない。また、1300℃を越えると、熱分解物の結晶化が進み大きな結晶粒成長のために亀裂が入り強度の低下を引き起こす。
【0012】
また、加熱雰囲気については、樹脂の構造に多く含まれるSi-H結合が酸化され易いため、高温強度の低下をもたらすSiO2の生成を避けるために酸素の存在しない雰囲気で焼成する必要がある。窒素雰囲気中では樹脂構造に窒素が取り込まれて意図しないSi34が生成する恐れがある。また熱分解中に多くのガスが発生するため、真空中で行うと真空ポンプに多大な負担を変える。以上の理由からアルゴン雰囲気で焼成する。
【0013】
加圧範囲は2~10MPaの範囲にすることが好ましい。加圧力が2MPa未満であると加圧効果が認められない。逆に10MPaを超えて加圧すると繊維等へのダメージが顕在化し、むしろ有害になることが予想されるばかりでなく、コストも高くなる。
最も好ましい温度-圧力条件は、1200℃-5MPaである。
【0014】
微細なSiC粒子は、樹脂の見かけの体積収縮を抑えるために添加することが好ましい。繊維間領域に良好に含浸させるためには0.3μm以下のSiC粒子を使用することが好ましい。また、あまり細かい粒子を多量に添加すると、粒子の比表面積が増加し、含浸樹脂スラリーの粘度を上昇させることになって、含浸させ辛くなる。さらに添加SiC量が多くなると、含浸が難しくなる他に粒子の凝集が起こり易くなり、そのために全体が不均一になり易い。したがって、微細SiC粒子を含有させる場合は、0.3μm以下の適当粒度のSiC粒子を50質量%未満添加混合しておくことが好ましい。
【0015】
【実施例】
実施例1
平均径14μmのSiC連続繊維を一方向に配向させた40×20mmサイズのシートを7枚積層して厚さ2mmの繊維-樹脂複合成形体としてカーボン製の容器に封入した。これを気密容器に封入して真空引きし容器内が10mmHg以下になってから容器上部からポリビニルシラン10mlを少量ずつ添加した。容器内で樹脂の沸騰が完全に止まった後にカーボン容器ごと取り出して樹脂含浸繊維体を得た。これをアルゴンガス雰囲気下300℃/hrで350℃(=623K)まで昇温し10分間保持した後1時間以上かけて室温まで冷却すると、含浸された樹脂が淡黄色の柔らかく弾力性のある固体に硬化して繊維と一体化した成形体が得られた。
【0016】
この成形体をカーボン容器から取り出してカーボン製成形型に仕込み、カーボンを発熱体とする雰囲気制御高温炉を用いてアルゴンガス雰囲気中で成形体の厚さ方向に10MPaの一軸圧力を加えつつ300℃/hrの昇温速度で1200℃まで昇温し、10分間保持した後、加圧力を除いて2時間以上かけて冷却すると、気孔率40%のSiC繊維複合成形体が得られた。
この成形体に対して真空中でポリビニルシランを含浸し、加圧せずに1200℃まで同様に焼成するプロセスを6回繰り返したところ、気孔率22.6%のSiC繊維/SiC複合材料が得られた。この材料は130MPa以上の平均曲げ強度と、0.37kJ/m2の破壊仕事を有し非線形破壊挙動を示した。
【0017】
実施例2
平均径14μmのSiC連続繊維を一方向に配向させた40×20mmサイズのシートに、平均径0.3μmのベータ型SiC粒子を25質量%添加したポリビニルシランの泥しょうを大気中で滴下して樹脂含浸一方向繊維シートを作製した。これらをアルゴンガス雰囲気中300℃/hrで330℃(=603K)まで昇温し10分間保持した後、1時間以上かけて室温に冷却すると樹脂泥しょうが半固体化し繊維と一体化した繊維-樹脂複合シートが得られた。
【0018】
このシートを14枚積層して厚さ2mmの繊維-樹脂複合成形体としてカーボン製の成形型に仕込み、カーボンを発熱体とする雰囲気制御高温炉を用いてアルゴンガス雰囲気中で成形体の厚さ方向に5MPaの一軸圧力を加えて300℃/hrの昇温速度で1200℃まで昇温し、10分間保持した後、加圧力を除いて2時間かけて冷却すると、気孔率33%のSiC繊維複合成形体が得られた。
この成形体に対して真空中でポリビニルシランを含浸し、加圧せずに1200℃まで同様に焼成するプロセスを6回繰り返すと開気孔率が12%まで減少して、平均曲げ強度334MPa、破壊仕事1.7kJ/m2を有するSiC繊維/SiC複合材料が得られた。
【0019】
実施例3
平均径14μmのSiC連続繊維を一方向に配向させた40×20mmサイズのシートに、平均径0.3μmのベータ型SiC粒子を25質量%添加したポリビニルシランの泥しょうを大気中で滴下して樹脂含浸一方向繊維シートを作製した。これらをアルゴンガス雰囲気中300℃/hrで350℃(=623K)まで昇温し10分間保持した後、1時間以上かけて室温に冷却すると樹脂泥しょうが半固体化し繊維と一体化した繊維-樹脂複合シートが得られた。
【0020】
このシートを14枚積層して厚さ2mmの繊維-樹脂複合成形体としてカーボン製の成形型に仕込み、カーボンを発熱体とする雰囲気制御高温炉を用いてアルゴンガス雰囲気中で成形体の厚さ方向に10MPaの一軸圧力を加えて300℃/hrの昇温速度で1200℃まで昇温し、10分間保持した後、加圧力を除いて2時間かけて冷却すると、気孔率31%のSiC繊維複合成形体が得られた。この成形体に対して真空中でポリビニルシランを含浸し、加圧せずに1200℃まで同様に焼成するプロセスを6回繰り返すと開気孔率が15まで減少して、平均曲げ強度375MPa、破壊仕事2.1kJ/m2を有するSiC繊維/SiC複合材料が得られた。
【0021】
評価
以上の結果から、ポリビニルシランの予備硬化条件を適正に設定し、高い一軸加圧力を高めて焼成すると、曲げ強度および破壊仕事の高いSiC繊維/SiC複合材料が得られることがわかった。また、この際、微細SiC粒子を含浸するポリビニルシラン中に添加しておくことにより、密度の高いものが得られることがわかる。
【0022】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は前躯体樹脂を含浸・焼成してSiC繊維/SiC複合材料を製造する際に、含浸する樹脂として熱硬化性を有するポリビニルシランを選択し、焼成する前に加熱処理を施して含浸させたポリビニルシランを高粘度化ないし半固体化させておくことにより、焼成時に圧力を加えても樹脂が染み出すことを抑制することができる。またポリビニルシランはセラミックス収率が液状樹脂としては高いので緻密化に有利である。したがって機械的特性に優れたSiC繊維/SiC複合材料を製造することができる。
電子線照射設備等特殊な装置を必要とすることなく、また単にアルゴンガス雰囲気中で加圧して焼成するだけで、SiC純度が高い原子力、核融合炉関連に最適な構造材料を得ることができる。