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明細書 :電界効果トランジスタ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3390756号 (P3390756)
公開番号 特開2002-286692 (P2002-286692A)
登録日 平成15年1月17日(2003.1.17)
発行日 平成15年3月31日(2003.3.31)
公開日 平成14年10月3日(2002.10.3)
発明の名称または考案の名称 電界効果トランジスタ
国際特許分類 G01N 27/414     
G01N 27/416     
H01L 29/80      
FI G01N 27/30 301V
G01N 27/46
H01L 29/80
請求項の数または発明の数 11
全頁数 6
出願番号 特願2001-088314 (P2001-088314)
出願日 平成13年3月26日(2001.3.26)
審査請求日 平成13年3月27日(2001.3.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】396020800
【氏名又は名称】科学技術振興事業団
発明者または考案者 【氏名】川原田 洋
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】宮澤 浩
参考文献・文献 アンドープ水素終端ダイヤモンドを用いたISFETの特性評価,電気化学会第68回大会講演要旨集,日本,2001年 3月25日,323
調査した分野 G01N 27/414
G01N 27/416
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)ソース電極とドレイン電極間にダイヤモンドの水素終端表面が露出したチャネルと、(b)該チャネルの露出したダイヤモンドの水素終端表面に接触する負イオンを含むpH1-pH14の溶液からなるゲートとを備え、(c)前記pH1-pH14の溶液の負イオンの濃度を検出することを特徴とする電界効果トランジスタ。

【請求項2】
請求項1記載の電界効果トランジスタにおいて、前記pH1-pH14の溶液のClイオンの濃度に対して閾値電圧の変化を検出することを特徴とする電界効果トランジスタ。

【請求項3】
請求項2記載の電界効果トランジスタにおいて、前記溶液は、KClであることを特徴とする電界効果トランジスタ。

【請求項4】
請求項2記載の電界効果トランジスタにおいて、前記溶液は、HClであることを特徴とする電界効果トランジスタ。

【請求項5】
請求項2記載の電界効果トランジスタにおいて、前記溶液は、NaClであることを特徴とする電界効果トランジスタ。

【請求項6】
請求項1記載の電界効果トランジスタにおいて、前記チャネルはpチャネルであることを特徴とする電界効果トランジスタ。

【請求項7】
請求項6記載の電界効果トランジスタにおいて、前記pチャネルはピンチオフすることを特徴とする電界効果トランジスタ。

【請求項8】
請求項1記載の電界効果トランジスタにおいて、前記ダイヤモンドは、アンドープ水素終端単結晶又は多結晶ダイヤモンド薄膜からなることを特徴とする電界効果トランジスタ。

【請求項9】
請求項1記載の電界効果トランジスタにおいて、前記ダイヤモンドの水素終端表面は広い電位窓を有し、該電位窓の範囲で正確な動作を行うことを特徴とする電界効果トランジスタ。

【請求項10】
請求項1記載の電界効果トランジスタにおいて、閾値電圧が前記液体電解質のpHに依存しない特性を有することを特徴とする電界効果トランジスタ。

【請求項11】
請求項1記載の電界効果トランジスタにおいて、閾値電圧が環境に影響されない特性を有することを特徴とする電界効果トランジスタ。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、液体電解質をゲートとして使用し、ダイヤモンドの水素終端表面をチャネルとした電界効果トランジスタに関するものである。

【10】
〔4〕上記〔2〕記載の電界効果トランジスタにおいて、前記溶液は、HClであることを特徴とする。

【11】
〔5〕上記〔2〕記載の電界効果トランジスタにおいて、前記溶液は、NaClであることを特徴とする。

【12】
〔6〕上記〔1〕記載の電界効果トランジスタにおいて、前記チャネルはpチャネルであることを特徴とする。

【13】
〔7〕上記〔6〕記載の電界効果トランジスタにおいて、前記pチャネルはピンチオフすることを特徴とする。

【14】
〔8〕上記〔1〕記載の電界効果トランジスタにおいて、前記ダイヤモンドは、アンドープ水素終端単結晶又は多結晶ダイヤモンド薄膜からなることを特徴とする。

【15】
〔9〕上記〔1〕記載の電界効果トランジスタにおいて、前記ダイヤモンドの水素終端表面は広い電位窓を有し、この電位窓の範囲で正確な動作を行うことを特徴とする。

【16】
〔10〕上記〔1〕記載の電界効果トランジスタにおいて、閾値電圧が前記液体電解質のpHに略依存しない特性を有することを特徴とする。

【17】
〔11〕上記〔1〕記載の電界効果トランジスタにおいて、閾値電圧が環境に影響されない特性を有することを特徴とする。

【18】
水素終端ダイヤモンド表面は化学的に安定であり、電位窓の広い電気化学的電極として、二次電池やバイオセンサーの一部として注目されている。本発明によれば、電界効果トランジスタが溶液の中の塩素等の負イオンに対する高感度イオンセンサーとして期待される。

【19】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。

【2】

【従来の技術】従来、このような分野の技術としては、以下に記載されるものがある。

【20】
図1は本発明にかかる液体電解質ゲートダイヤモンドFET(pチャネルFET)の断面図、図2はその平面図である。

【21】
これらの図において、1は基板としての多結晶ダイヤモンド、2はチャネル(多結晶ダイヤモンド終端表面:p型表面伝導層)、3はソース電極(Au電極)、4はゲート(液体電解質:例えばKCl水溶液)、5はゲート電極、6はドレイン電極(Au電極)、7は保護膜、8は液槽(絶縁体)である。

【22】
ドレイン電流はゲート電圧により制御され、完全にピンチオフできる。閾値電圧は、液体電解質のpH1-14の変化に対し、±0.2V範囲内であり、ネルンスト応答せず、pH依存性がほとんどないといえる。FETの動作電圧範囲は、ダイヤモンドを電気化学的電極とした場合の電位窓の範囲に対応するダイヤモンドの単結晶又は多結晶であり、表面は水素原子により被覆されている。

【23】
以下、その液体電解質ゲートダイヤモンドFET(pチャネルFET)について詳細に説明する。

【24】
マイクロ波プラズマCVD法により、Si基板上に多結晶ダイヤモンドを成膜した。まず、Si基板にダイヤモンドバウダーで超音波処理を施し、水素をキャリアガスとしてメタン濃度1%(総流量200sccm)で20時間成膜を行った。成膜されたダイヤモンドは大気中で安定なp型の伝導性を示す。この膜の電気的特性を評価するためにホール効果測定を行った。続いて、電気化学的特性を評価するためにサイクリックボルタンメトリー(CV)測定を行った。参照電極はAg/AgCl電極を用い、対極にPt線を螺旋状にしたものを利用した。電極面積は1.15cm2 である。

【25】
FETの構造図は、図1と同様である。金属マスクを用いソース・ドレイン電極をAuで真空蒸着により形成させる。ゲートおよび金属電極部分を除いた領域をAr+ イオン照射により素子分離し、チャネル部分以外をエポキシで保護し、完成する。こうして作製されたFETはチャネルが剥き出しになっており、絶縁膜や特別な感応膜は堆積させない。このFETを、電解質水溶液に直接浸けて、ソース接地回路を用いて静特性を測定する。Ids-Vds特性は参照電極(Vgs)の電位を一定にし、Vdsを変化させてIdsを計測する。Ids-Vgs特性はVdsを一定にし、Vgsを変化させIdsを計測する。得られたデータからFETの閾値電圧を求め、pHなどの依存性を調査した。

【26】
以下、その結果について説明する。

【27】
(1)電気的特性
ホール効果測定を行った結果、シート抵抗は10~20kΩ、シートキャリア密度は5×1013/cm2 であり、p型伝導性を示す。移動度は10cm2 /V・s程度である。これによりアンドープでも表面に十分な伝導性を有していることが分かる。

【28】
(2)CV測定
0.1M(pH12.6)のKOH溶液中でのCV測定結果を図3に示す。

【29】
これより水素発生電位は-1.8V、酸素発生電位は+0.9Vで、その電位窓は約2.7Vである。この結果からアンドープダイヤモンドでも十分な電位窓が得られているのが分かる。また、窒素ガスによるバブリングを行って再度測定した結果、溶存酸素の影響が少ないことが分かり、ボロンドープダイヤモンドと同様の結果が得られていることが分かる。作製したFETのバイアスポイントは、ゲート絶縁膜を介していないため、ゲート漏れ電流を抑えるために、この電位窓内の電位に設定しなければならない。従って、電位窓が広いほどFET動作には有利であるといえる。

【3】
(1)H.Kawarada,Surface Science Reports 26(1996)205
(2)G.W.Swain,Advanced Materials,6,(1994)388
(3)藤嶋 昭;化学と工業51,(1998)207
ISFET(イオン感応性電界効果トランジスタ)はその集積化、微細化のメリットから盛んに研究が進められ、すでにSiを用いたものは市販されている。ダイヤモンドは物理的化学的に安定であることから、将来は生体適合型バイオセンサとして期待されている。

【30】
(3)FET特性
作製した素子のFET動作を確認するためIds-Vds測定を行ったところ、チャネルの完全なピンチオフを確認した。

【31】
図4はHCl溶液pH1での静特性を示す図である。水素終端したダイヤモンドは表面の末結合手が水素で終端されているために表面準位密度が小さく、溶液に印加した電位によって表面伝導層のキャリアをコントロールすることができた考えられる。

【32】
また、KOH水溶液でpHをパラメータとしてIds-Vgs特性を測定したところ、図5に示すような測定結果が得られた。

【33】
これよりFETの閾値電圧はpH8-pH12で0.2Vのほぼ一定値を示している。閾値電圧はドレイン電流が1μAのゲート電圧とした。

【34】
次に、酸性領域での閾値電圧を調査するためHCl溶液で測定を行った。

【35】
ds-Vds測定から同様にFET動作を確認し、Ids-Vgs特性から閾値電圧を測定したところ、pHの上昇に伴い閾値電圧は絶対値が増加する方向にシフトしていることが確認できた。これは、HCl溶液が水素イオンのみならず塩素イオンを含むためで、ダイヤモンド表面がこの塩素イオンを感知していることによるものと考えられる。そこで、KCl溶液で濃度をパラメータとして測定を行った結果が図6である。

【36】
図6より、KCl溶液ではモル濃度の減少に伴って閾値電圧は絶対値が増加する方向にシフトしていることが確認できる。HCl溶液の結果からもKCl溶液の結果(図6)からもCl- イオン濃度の減少に伴って、閾値電圧の絶対値が増加していることが確認できる。これはH+ (OH- )イオンよりもCl- がダイヤモンド表面に選択的に吸着し、ダイヤモンド内の正孔を引き寄せているか、もしくはCl- イオンが直接ダイヤモンド表面の伝導性に対して、何らかの影響を及ぼしていると考えられる。

【37】
以上の結果より、アンドープ水素終端ダイヤモンド表面を利用したISFETはpHの変化には影響を受けないが、Cl- イオンに対しては依存性があることが確認でき、Cl- 感応性FETとして有望であることがわかる。

【38】
なお、NaCl溶液においても、同様の作用効果を奏することができる。

【39】
また、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。

【4】
ボロンドープされたダイヤモンドは、p型の半導体的伝導性を示す。表面を水素で終端されたアンドープのダイヤモンドも表面にp型の伝導層を有する。この水素終端表面伝導層は室温においても高い表面キャリア密度を示し(1013/cm2 )、温度依存性をほとんど示さない。さらに、ほとんどのキャリアは表面からの浅い領域に存在する(~10nm)。このような構造はFETの動作に有利であるため、本願発明者らはアンドープで水素終端処理を施したダイヤモンドを用いISFETの研究を行っている。

【40】

【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明によれば、電界効果トランジスタがpH1-pH14溶液の中の塩素等の負イオンに対する高感度イオンセンサーとしてその実用的効果は著大である。特に、KCl、NaCl、HClのCl- の高感度イオンセンサーとして期待される。

【5】
また、水素終端構造はダイヤモンドの合成にマイクロ波プラズマCVD法によりas grownで得られるため、ボロンドープよりも容易にp型の半導体的伝導性を得ることができる。ボロンドープのダイヤモンド電極は広い電位窓を持ち、溶存酸素の影響が少なく、バックグラウンド電流が微小なことであるとの特徴から、電極の研究は広い範囲で進歩している。本願発明者らはアンドープ水素終端ダイヤモンドがボロンドープと同様に広い電位窓を持つことをすでに確認しており、これを用いてダイヤモンドISFETの開発を世界ではじめて行った。

【6】

【発明が解決しようとする課題】さらに、本願発明者らは研究をすすめた結果、ゲートとしての液体電解質のHCl、KCl等の水溶液中において、HCl、KClの濃度が増加するに従いFETのドレイン電流の増加が見られたことから、溶液の負イオン、特に、Cl-イオンに高感度で感応することができる電界効果トランジスタを提供することを目的とする。

【7】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕電界効果トランジスタにおいて、ソース電極とドレイン電極間にダイヤモンドの水素終端表面が露出したチャネルと、このチャネルの露出したダイヤモンドの水素終端表面に接触する負イオンを含むpH1-pH14の溶液からなるゲートとを備え、前記pH1-pH14の溶液の負イオンの濃度を検出することを特徴とする。

【8】
〔2〕上記〔1〕記載の電界効果トランジスタにおいて、前記pH1-pH14の溶液のClイオンの濃度に対して閾値電圧の変化を検出することを特徴とする。

【9】
〔3〕上記〔2〕記載の電界効果トランジスタにおいて、前記溶液は、KClであることを特徴とする。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5