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明細書 :電磁波源検出方法および絶縁劣化診断方法と装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4015384号 (P4015384)
公開番号 特開2003-043094 (P2003-043094A)
登録日 平成19年9月21日(2007.9.21)
発行日 平成19年11月28日(2007.11.28)
公開日 平成15年2月13日(2003.2.13)
発明の名称または考案の名称 電磁波源検出方法および絶縁劣化診断方法と装置
国際特許分類 G01R  31/08        (2006.01)
G01R  29/08        (2006.01)
G01R  31/12        (2006.01)
G01R  31/16        (2006.01)
H02H   3/00        (2006.01)
G01S   3/48        (2006.01)
FI G01R 31/08
G01R 29/08 D
G01R 31/12 A
G01R 31/16
H02H 3/00 N
G01S 3/48
請求項の数または発明の数 11
全頁数 12
出願番号 特願2001-226255 (P2001-226255)
出願日 平成13年7月26日(2001.7.26)
審査請求日 平成15年12月8日(2003.12.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】川田 昌武
個別代理人の代理人 【識別番号】100087147、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 文廣
審査官 【審査官】松川 直樹
参考文献・文献 UHF波帯干渉計の製作と雷観測(その1) 干渉計システムの性能評価,電気学会論文誌B Vol.116-B No.3 電力・エネルギー部門誌,日本,社団法人電気学会,1996年 2月20日,第116-B巻 第3号,p.322~331
電力設備の非接触計測・診断技術,電気学会雑誌 1992年3月号,日本,社団法人電気学会,1992年 3月20日,第112巻 第3号,p.143~146
調査した分野 G01R 29/08
G01R 31/08
G01R 31/12
G01R 31/16
G01S 3/48
H02H 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
複数のUHF帯アンテナと、各UHF帯アンテナが受信した電磁波の位相差を検出する位相差算出部と、検出された位相差から電磁波の到来角を算出する到来角算出部とを有する電波干渉計システムにより電磁波源位置を特定する電磁波源検出方法において、
到来する電磁波を上記電波干渉計システムの複数のUHF帯アンテナにより広帯域に受信し、複数のUHF帯アンテナがそれぞれ受信した広帯域の電磁波信号間の位相差を上記位相差算出部により検出し、検出した広帯域の電磁波信号間の位相差に基づいて上記到来角算出部によりUHF帯を含む広帯域の電磁波の到来角を算出し、その到来角算出の際、UHF帯を含む広帯域内の低周波成分の電磁波信号間の位相差により到来角を粗く概算し、同時に該広帯域内の高周波成分の電磁波信号間の位相差により到来角を精密に求めて、それらの結果を併せて電磁波源位置を特定することを特徴とする電磁波源検出方法。
【請求項2】
UHF帯を含む広帯域はUHF帯とVHF帯からなり、低周波成分はVHF帯であり、高周波成分はUHF帯であることを特徴とする請求項1に記載の電磁波源検出方法。
【請求項3】
複数のUHF帯アンテナによりそれぞれ受信された電磁波信号間で相互パワースペクトラムを求めて、周波数成分を特定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電磁波源検出方法。
【請求項4】
複数のUHF帯アンテナと、各UHF帯アンテナが受信した電磁波の位相差を検出する位相差算出部と、検出された位相差から電磁波の到来角を算出する到来角算出部とを有する電波干渉計システムにより、絶縁材料で被覆あるいは保護された電力機器・設備等の絶縁劣化箇所を診断する絶縁劣化診断方法において,
上記絶縁劣化箇所で生じる部分放電から放射される電磁波を上記電波干渉計システムの複数のUHF帯アンテナにより広帯域に受信し、複数のUHF帯アンテナがそれぞれ受信した広帯域の電磁波信号間の位相差を上記位相差算出部により検出し、検出した広帯域の電磁波信号間の位相差に基づいて上記到来角算出部によりUHF帯を含む広帯域の電磁波の到来角を算出し、その到来角算出の際、UHF帯を含む広帯域内の低周波成分の電磁波信号間の位相差により到来角を粗く概算し、同時に該広帯域内の高周波成分の電磁波信号間の位相差により到来角を精密に求めて、それらの結果を併せて絶縁劣化箇所の電磁波源位置を特定することを特徴とする絶縁劣化診断方法。
【請求項5】
UHF帯を含む広帯域はUHF帯とVHF帯からなり、低周波成分はVHF帯であり、高周波成分はUHF帯であることを特徴とする請求項4に記載の絶縁劣化診断方法。
【請求項6】
複数のUHF帯アンテナによりそれぞれ受信された電磁波信号間で相互パワースペクトラムを求めて、周波数成分を特定することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の絶縁劣化診断方法。
【請求項7】
無放電時での電磁波到来角分布と相互パワースペクトラムを背景雑音として予め取得しておき、絶縁劣化診断時に算出した電磁波到来角と相互パワースペクトラムと比較して、有効データのみを取り出すようにしたことを特徴とする請求項6に記載の絶縁劣化診断方法。
【請求項8】
複数のUHF帯アンテナと、各UHF帯アンテナが受信した電磁波の位相差を検出する位相差算出部と、検出された位相差から電磁波の到来角を算出する到来角算出部とを有する電波干渉計システムを備え、絶縁材料で被覆あるいは保護された電力機器・設備等の絶縁劣化箇所を診断する絶縁劣化診断装置において,
上記電波干渉計システムは、絶縁劣化箇所で生じる部分放電から放射される電磁波を上記複数のUHF帯アンテナにより広帯域に受信し、該複数のUHF帯アンテナがそれぞれ受信した広帯域の電磁波信号間の位相差を上記位相差算出部により検出し、検出した広帯域の電磁波信号間の位相差に基づいて上記到来角算出部によりUHF帯を含む広帯域の電磁波の到来角を算出するものであり、該到来角算出部は、UHF帯を含む広帯域内の低周波成分の電磁波信号間の位相差により到来角を粗く概算し、同時に該広帯域内の高周波成分の電磁波信号間の位相差により到来角を精密に求めて、それらの結果を併せて絶縁劣化箇所の電磁波源位置を特定することを特徴とする絶縁劣化診断装置。
【請求項9】
UHF帯を含む広帯域はUHF帯とVHF帯からなり、低周波成分はVHF帯であり、高周波成分はUHF帯であることを特徴とする請求項8に記載の絶縁劣化診断装置。
【請求項10】
複数のUHF帯アンテナによりそれぞれ受信された電磁波信号間で相互パワースペクトラムを求めて、周波数成分を特定する相互パワースペクトラム算出部を設けたことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の絶縁劣化診断装置。
【請求項11】
無放電時での電磁波到来角分布と相互パワースペクトラムを背景雑音として予め取得しておき、絶縁劣化診断時に算出した電磁波到来角と相互パワースペクトラムと比較して、有効データのみを取り出すようにしたことを特徴とする請求項10に記載の絶縁劣化診断装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、環境中の不要な電磁波源や、電力設備における絶縁物の劣化で生じる放電箇所などを、離れた場所からコンパクトな手段で検出できる電磁波源検出方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに電力ケーブルや変電・配電設備など、高電圧部分を絶縁物で被覆あるいは支持されている機器、設備における絶縁劣化の診断に有用な絶縁劣化診断方法および装置に関する。
【0003】
【従来の技術】
電力機器・設備の絶縁材料が劣化して部分放電(Partial Discharge:PD)を生じると広帯域電磁波が放射されることが、参考文献1~13に示す論文で報告されている。例えば、本発明者らは、参考文献1~3において、ガス絶縁開閉装置(Gas Insulated Switchgear: GIS)のSF6 ガス中において生じるPDは、VHF(Very High Frequency, 30-300MHz)帯と、UHF(Ultra High Frequency、 300-3000MHz)帯の広帯域電磁波を放射することから、VHF帯電磁波に着目して、電磁波空間位相差法により放電源位置を特定し、またウェーブレット変換(Wavelet Transform) を用いた時間周波数解析により、放電進展状態を示す電荷量とダイナミックスペクトラム(Dynamic Spectrum)との関係を明らかにし、劣化が進展するのに伴い低周波成分が出現することを報告した。
この他、参考文献4~8では、UHF帯電磁波センシングによるGIS絶縁診断技術が報告され、また参考文献9,10では、VHF帯電磁波センシングによる配電用碍子絶縁診断技術が、そして参考文献11~13では、SHF帯(GHz帯) 電磁波センシングによる発電機固定子コイルの絶縁診断技術が、国内外の様々な研究機関や企業等により報告されている。
【0004】
近年、大都市では、用地の有効活用と地中送電設備との整合性のため、あるいは都市の美観等の点から、高層ビルの地下に超高圧変電所が実現している。このような地下変電所では、スペースが極めて限られているため,PD位置特定のために電磁波センシング技術を導入する場合、センシングシステム自体をいかに小型化するかが課題となる。また、配電線碍子のPD位置を特定においても、測定時の道路交通への影響を考慮すると、システムの小型化は重要な課題となる。
【0005】
ところで,電磁波センシング手法として用いられる電波干渉計は、主に電波天文学等の分野で発展した技術であり、超長基線電波干渉計(Very Long Baseline Interferometory :VLBI)やスペースVLBIとして進化し、現在では、電波天文学分野での応用のみならず、測地応用も行われている。電波干渉計の他の応用例としては、衛星追尾用電波干渉計や、UHF帯狭帯域(327MHz ,電波天文の保護バンド) 電波干渉計、及びVHF帯広帯域電波干渉計による雷放電可視化等が実現されている。なお、VHF帯広帯域電波干渉計による雷放電可視化は,参考文献14に示される。
<参考文献>
1.川田昌武:電力機器の診断技術に関する研究,大阪大学大学院学位論文
(工学研究科),1998年
2.川田昌武,河崎善一郎,松浦虔士,川崎誠:「電磁波空間位相差法を用いた非接触部分放電検出法」,電学論B,115 巻10号,pp.1168-1173,1995 年10月
3.川田昌武,和田将一,河崎善一郎,松浦虔士,川崎誠:「SF6 ガス中における部分放電現象のウェーブレット変換を用いた時間周波数解析」,電学論B,117 巻3 号,pp.338-345,1997 年3 月
4.M.D.Judd, O.Farish, B.F.Hampton “The Excitation of UHF Signa1s by Partial Discharges in GIS ”,IEEE Trans.on Die1ectrics and Electrical Insulation,Vol.3,No.2,pp.213-228,April 1996
5.前川洋,土井雅史,川本俊治:「ガス絶縁開閉装置における部分放電源の特定」,電学論B,120巻8/9号,PP.1106-1111,2000年8 /9 月
6.加藤達郎,遠藤奎将:「UHF法によるGlS絶縁異常診断システムの開発」,電学論B,119 巻4 号,pp.458-463,1999年4 月
7.今川浩,江本邦夫,村瀬洋,小山博,若林誠二,榊原高明,萩原英一:「部分放電信号のGlS内伝播特性に関する周波数依存性の検討」,電学論B,119 巻10号,pp.1073-1079,1999 年10月
8.蔦田広幸,長田典子,宮下信,亀井光仁,井上悟,高嶋和夫,宇佐美照夫:「GIS内部電磁波の第一波波高値と累積波形指標を用いた部分放電識別」,電学論B,120 巻3 号、pp. 333-339,2000年3 月
9.鈴木雄一,川田昌武,河崎善一郎,松浦虔士,川崎誠:「位置標定における重畳最適化法を用いた部分放電源空間標定」,電学論B,118 巻2 号,pp.157-163,1998年2 月
10.Ampol Tungkanawanich, Zen -Ichiro Kawaaki,Kenji Matsuura :“Location of Multiple PD Sources on Distribution Lines by Measuring Emitted Pulse -Train Electromagnetic Waves ”,電学論B,120 巻11号,pp.1431-1436,2000 年11月
11.川田昌武,河崎善一郎,松浦虔士,武蔵谷敏男,音羽克則,黒木悟,森山隆:「GHz帯電磁波空間位相差法を用いた発電機固定子コイルの非接触部分放電検出システムの開発」,電学論B,117 巻2 号,pp.224-232,1996 年2 月
12.川田昌武,河崎善一郎,松浦虔士,武蔵谷敏男,黒木悟,大澤輝也,田中宏毅:「発電機固定子コイルの絶縁破壊現象に伴うGHz帯放射電磁波測定による絶縁劣化診断法」,電学論B,118 巻3 号,pp.274 -281,1998 年3 月
13.川田昌武,河崎善一郎,松浦虔士,黒木悟,大澤輝也,田中宏:「GHz帯電磁空間位相差法を用いた火力タービン発電機の運転中における部分放電検出」,電学論B,118 巻11号,pp.1243- 1248 ,1998年11月
14.特開2001-4731 号公報(出願番号:特願平11-170666 ,発明の名称:広帯域干渉計)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
地下変電所のような狭いスペース内で、高電圧電力線や変電・配電装置などの電力設備の絶縁部材について劣化を診断するときに、運転状態で種々の試験操作を電力設備に直接行なうのは危険である。また大型の機器では、絶縁劣化の程度が軽いと肉眼では識別できず、劣化位置を特定するのは難しい。そこで、電波干渉計を用いたリモートセンシングにより、絶縁劣化に伴う放電箇所を検出することが考えられるが、従来の電波干渉計を用いたシステムは規模が大きくて、狭いスペース内での適用は不可能であった。たとえば参考文献14に示される比較的小型のシステムでも、アンテナの間隔は数mあり、標定する位置は、数km以上離れている遠方の放電現象を対象としていた。
【0007】
本発明は、狭いスペース内で、放電箇所あるいは電磁波源の位置を的確に特定できるコンパクトな手段を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明者は、UHF帯を含む超広帯域の電波干渉計システムを開発した。この超広帯域電波干渉計システムは、UHF帯アンテナを使用できるため、アンテナ自体が小さくなり、かつ、アンテナ間の基線長も短くなることから、小型化が可能となる。従来の狭帯域電波干渉計の場合は、電波到来方向の角度分解能を向上させるために,観測周波数に対応する波長の数倍の基線が多数必要となるが,本発明では、超広帯域としたために、そのような多数の基線は必要としない。また、アンテナ間距離が短いために、アンテナを多地点に配置するという手間や、アンテナ位置、及びアンテナ間の距離測定を行なう必要がないことから、現場での作業時間を短縮することができる。
【0009】
本発明は、以下の構成において実現される。
(1) 複数のUHF帯アンテナと、各UHF帯アンテナが受信した電磁波の位相差を検出する位相差算出部と、検出された位相差から電磁波の到来角を算出する到来角算出部とを有する電波干渉計システムにより電磁波源位置を特定する電磁波源検出方法において、
到来する電磁波を上記電波干渉計システムの複数のUHF帯アンテナにより広帯域に受信し、複数のUHF帯アンテナがそれぞれ受信した広帯域の電磁波信号間の位相差を上記位相差算出部により検出し、検出した広帯域の電磁波信号間の位相差に基づいて上記到来角算出部によりUHF帯を含む広帯域の電磁波の到来角を算出し、その到来角算出の際、UHF帯を含む広帯域内の低周波成分の電磁波信号間の位相差により到来角を粗く概算し、同時に該広帯域内の高周波成分の電磁波信号間の位相差により到来角を精密に求めて、それらの結果を併せて電磁波源位置を特定することを特徴とする絶縁劣化診断方法の構成。
(2) UHF帯を含む広帯域はUHF帯とVHF帯からなり、低周波成分はVHF帯であり、高周波成分はUHF帯であることを特徴とする前項(1)に記載の電磁波源検出方法の構成。
(3) 複数のUHF帯アンテナによりそれぞれ受信された電磁波信号間で相互パワースペクトラムを求めて、周波数成分を特定することを特徴とする前項(1)または(2)に記載の電磁波源検出方法の構成。
(4) 複数のUHF帯アンテナと、各UHF帯アンテナが受信した電磁波の位相差を検出する位相差算出部と、検出された位相差から電磁波の到来角を算出する到来角算出部とを有する電波干渉計システムにより、絶縁材料で被覆あるいは保護された電力機器・設備等の絶縁劣化箇所を診断する絶縁劣化診断方法において,
上記絶縁劣化箇所で生じる部分放電から放射される電磁波を上記電波干渉計システムの複数のUHF帯アンテナにより広帯域に受信し、複数のUHF帯アンテナがそれぞれ受信した広帯域の電磁波信号間の位相差を上記位相差算出部により検出し、検出した広帯域の電磁波信号間の位相差に基づいて上記到来角算出部によりUHF帯を含む広帯域の電磁波の到来角を算出し、その到来角算出の際、UHF帯を含む広帯域内の低周波成分の電磁波信号間の位相差により到来角を粗く概算し、同時に該広帯域内の高周波成分の電磁波信号間の位相差により到来角を精密に求めて、それらの結果を併せて絶縁劣化箇所の電磁波源位置を特定することを特徴とする絶縁劣化診断方法の構成。
(5) UHF帯を含む広帯域はUHF帯とVHF帯からなり、低周波成分はVHF帯であり、高周波成分はUHF帯であることを特徴とする前項(4)に記載の絶縁劣化診断方法の構成。
(6) 複数のUHF帯アンテナによりそれぞれ受信された電磁波信号間で相互パワースペクトラムを求めて、周波数成分を特定することを特徴とする前項(4)または(5)に記載の絶縁劣化診断方法の構成。
(7) 無放電時での電磁波到来角分布と相互パワースペクトラムを背景雑音として予め取得しておき、絶縁劣化診断時に算出した電磁波到来角と相互パワースペクトラムと比較して、有効データのみを取り出すようにしたことを特徴とする前項(6)に記載の絶縁劣化診断方法の構成。
(8) 複数のUHF帯アンテナと、各UHF帯アンテナが受信した電磁波の位相差を検出する位相差算出部と、検出された位相差から電磁波の到来角を算出する到来角算出部とを有する電波干渉計システムを備え、絶縁材料で被覆あるいは保護された電力機器・設備等の絶縁劣化箇所を診断する絶縁劣化診断装置において,
上記電波干渉計システムは、絶縁劣化箇所で生じる部分放電から放射される電磁波を上記複数のUHF帯アンテナにより広帯域に受信し、該複数のUHF帯アンテナがそれぞれ受信した広帯域の電磁波信号間の位相差を上記位相差算出部により検出し、検出した広帯域の電磁波信号間の位相差に基づいて上記到来角算出部によりUHF帯を含む広帯域の電磁波の到来角を算出するものであり、該到来角算出部は、UHF帯を含む広帯域内の低周波成分の電磁波信号間の位相差により到来角を粗く概算し、同時に該広帯域内の高周波成分の電磁波信号間の位相差により到来角を精密に求めて、それらの結果を併せて絶縁劣化箇所の電磁波源位置を特定することを特徴とする絶縁劣化診断装置の構成。
(9) UHF帯を含む広帯域はUHF帯とVHF帯からなり、低周波成分はVHF帯であり、高周波成分はUHF帯であることを特徴とする前項(8)に記載の絶縁劣化診断装置の構成。
(10) 複数のUHF帯アンテナによりそれぞれ受信された電磁波信号間で相互パワースペクトラムを求めて、周波数成分を特定する相互パワースペクトラム算出部を設けたことを特徴とする前項(8)または(9)に記載の絶縁劣化診断装置の構成。
(11) 無放電時での電磁波到来角分布と相互パワースペクトラムを背景雑音として予め取得しておき、絶縁劣化診断時に算出した電磁波到来角と相互パワースペクトラムと比較して、有効データのみを取り出すようにしたことを特徴とする前項(10)に記載の絶縁劣化診断装置の構成。
【0010】
図1は、本発明の超広帯域電波干渉計システムにより電磁波の到来角を求める原理の説明図である。同図は、絶縁材料が劣化して部分放電した箇所(図示省略)から放射された広帯域電磁波1が、到来角θrad(deg)3で、2本のアンテナ2-1,2-2に受信された場合を示している。2本のアンテナ2-1,2-2間の距離である基線長4は、d m とされる。なお、説明の簡単化のためにアンテナは最少の2本だけ示されているが、2本のアンテナで求められるのは到来角θのみである。絶縁材料の部分放電箇所あるいは電磁波源が水平面内にあるときは、到来角θのみでよい場合もあるが、さらに方位角や仰角が必要な場合や、位置座標を求める必要がある場合には、複数組(最低でも2組)のアンテナ対が必要となる。アンテナ2-1,2-2により、到来角θで受信された電磁波信号5(S1 (t),S2(t)で示す)の任意周波数成分の位相と位相差との関係は、次の〔数1〕に示す式(1)により表わされる。
【0011】
【数1】
JP0004015384B2_000002t.gif
【0012】
したがって、電磁波の到来角θは、次の〔数2〕に示す式(2)により求めることができる。
【0013】
【数2】
JP0004015384B2_000003t.gif
【0014】
アンテナ2-1,2-2により受信された電磁波信号の任意周波数成分での位相を求めるには、次のようにする。
【0015】
両アンテナ2-1,2-2によりそれぞれ受信された電磁波信号をデジタル変換した信号を、s1(n),s2(n) とする。ここで、n =0,1,2,…,N-1である。このデジタル変換した信号s1(n),s2(n) に対して、次の〔数3〕に示す式(3a), (3b), (3c)によるデジタル高速フーリエ変換(Digital Fast Fourier Transform)を適用する。
【0016】
【数3】
JP0004015384B2_000004t.gif
【0017】
なお、m =0,1,2,…,N/2であり、Δt は、サンプリング時間である。またh(n)は、次の〔数4〕に示す式(4)で与えられるハニング窓(hanning window)であり、時間窓の始端と終端での波形の不連続を防ぎ、所望のスペクトラムを正確に捉えることができるようにする。時間窓関数としては、このハニング窓以外にも、ハミング窓(Hamming window)やブラックマン- ハリス窓(Blackman-Harris window)等があり、任意に選択が可能である。
【0018】
【数4】
JP0004015384B2_000005t.gif
【0019】
このデジタル高速フーリエ変換を行った結果から、両アンテナにて受信した電磁波信号の任意周波数成分の位相φ1(m), φ2(m)を、次の〔数5〕に示す式(5 a)、(5 b)の様に求めることができる。
【0020】
【数5】
JP0004015384B2_000006t.gif
【0021】
また、両アンテナで受信した信号の相互パワースペクトラム(Cross Power Spectrum Density)を、次の〔数6〕に示す式(6)の様に算出して、両信号の相関性を求めることができる。
【0022】
【数6】
JP0004015384B2_000007t.gif
【0023】
従来の狭帯域電波干渉計では、バンドパスフィルタ、局部発振器(Local Oscillator)を用いて任意の中心周波数による信号の位相差を求めているが、本発明では、受信したUHF帯を含む超広帯域の電磁波信号をデジタル変換し、このデジタルデータに高速フーリエ変換を適用することにより各周波数成分の位相差を求めている。
【0024】
【発明の実施の形態】
図2は、本発明の1実施の形態による超広帯域VHF/UHF 電波干渉計システムの構成図である。図示されていない部分放電PDより放射された広帯域の放射電磁波11を、2本のUHF帯半波長ダイポールアンテナ12-1,12-2を使用して受信する。アンテナ間距離である基線長dは、d =1mとする。なお、アンテナ素子の全長は,周波数500MHz(波長0. 6m)の半波長とする(実際には、アンテナのリアクタンス成分=0とするために、半波長の0. 3mより数%短い、0. 29mとなっている)。なお、半波長ダイポールアンテナの代わりに、4分の1波長のモノポールアンテナを用いることも可能である。その場合、利得は若干減少するが、アンテナをさらに小型化することができる。アンテナは、UHF帯で使用できるものならばよく、小型あるいは薄型のものが望ましい。
【0025】
アンテナ12-1,12-2により受信したアナログの電磁波信号を、同軸ケーブル13を通して、アナログ/デジタル変換部14に入力し、デジタルデータに変換する。本システムの周波数帯域は、このアナログ/デジタル変換部14の帯域500MHz(-3dB)によって制限される。なお、アンテナで受信した電磁波信号のレベルが微弱である場合は、必要に応じプリアンプを挿入して増幅すればよい。
【0026】
アナログ/デジタル変換を行なうにあたり、アナログ信号を忠実に再現するためには,サンプリング定理により、その入力信号における最大周波数の2倍以上の周波数でサンプリングする必要がある。最高周波数の2 倍の周波数はナイキスト周波数(Nyquist Frequency) と呼ばれるが、この周波数以下でサンプリングを行った場合には,エリアシング(Aliasing)の問題が生じる。一方、ナイキスト周波数にてサンプリングした場合には,エリアシングの問題なしに信号を観測できるはずであるが、例えば、正弦波波形の1周期中で振幅値ゼロに近い部分の2点をサンプリングした場合には、振幅情報がほとんど含まれないので、元の信号を再生出来ないことになる。そこで,最高周波数の4倍以上にてサンプリングを行なうと、-3dBの振幅が確保出来ることから、本システムでは、観測する周波数帯域(500MHz)の5倍のサンプリングレートである2.5GHz( サンプリング時間0.4ns) にて波形をデジタルデータとして取得し、そのデータを用いて電磁波の到来角を算出する。
【0027】
このようにして得られたデジタルデータを用い、フーリエ変換部15により、前記の式(3a), (3b), (3c)及び(4)のフーリエ変換演算を実行する。この演算結果を用いて、位相算出部16において式(5)の演算を、また、相互パワースペクトラム算出部17において式(6)の演算を実行する。さらに位相算出部16により得られた演算結果をもとに、位相差算出部18において、式(1)の演算を実行する。そして、得られた位相差により、到来角算出部19において式(2)の演算を実行し、PDからの放射電磁波の到来角を求める。
【0028】
ところで、デジタル高速フーリエ変換で得られる位相差は、±2π以内の値となる。また、位相差は高周波ほど大きくなり、角度分解能が高くなるが、±2π,±4π,±8πなどのフリンジを越えてしまう可能性があり、位相差に対して正しいフリンジを選択加算する必要が生じる。これに対して、低周波では、角度分解能は低いが、その分フリンジを越える可能性は少ない。そこで、本システムでは、到来角算出の際に、PDからの放射電磁波の周波数特性が超広帯域であることに着目して、帯域内の低周波成分、たとえばVHF帯により到来角を粗く概算し、高周波成分、たとえばUHF帯で角度分解能の高さを利用して,到来角を高精度に求めている。
【0029】
求めた到来角と、相互パワースペクトルは、データ保存部20に保存するとともに、表示部21に表示して、放電箇所、つまり電磁波源の位置の特定と受信電磁波の周波数成分が容易に分かるようにしている。なお、ネットワーク通信部22により、インターネット等のネットワークを介して本システムへのアクセスすることができ、遠隔地からの電力機器・設備の診断が可能にされる。
【0030】
図3(a)~(c)と図4は、本システムによる測定例のグラフであり、放電源として針-平板電極を、システムから3mの場所に配置し、様々な到来角に対して特定を行った結果のデータをグラフで示す。なお,各図において、上段のグラフは周波数と到来角の関係を示しており、下段のグラフは周波数と相互パワースペクトラムの関係を示している。
【0031】
本システムでは、両チャンネルの位相、位相差、到来角は、高周波になるに伴い、より直線的に値が求まり、低周波では分散が大きくなる。すなわち、直線的に値が求まる高周波成分を到来角特定に用いることにより、角度分解能が向上する。低周波成分(150MHz以下)の到来角よりも、線で囲んだ部分(120MHzから150MHz前後)に多くの点が存在しており、その到来角の値を基準として、400MHz前後から500MHz前後の値と比較すると、到来角が特定できる。
【0032】
図3(a) では、400MHz~500MHz前後で、0deg ~10deg 付近の値として特定している。
【0033】
図3(b) では、470MHz前後の数10MHzの帯域幅において、到来角が30deg 付近の値として特定している。
【0034】
図3(c) では、470MHz~530MHz前後で、到来角が60deg 付近の値として特定している。
【0035】
図4は、無放電時(背景雑音)のデータであり、特定到来角の分布は分散が大きく、かつ、相互パワースペクトラムも低レベルであることを示す。なお,450MHz,540MHz付近にピークが存在するが、放電による広帯域のスペクトラムとは明らかに異なることから、このような結果を示した場合には、その環境にPD源がないこと、すなわち、電力機器・設備等の絶縁部に異常はないことを診断できる。
【0036】
【発明の効果】
本発明による電磁波源検出方法および絶縁劣化診断方法と装置によれば、超広帯域電波干渉計システムにUHF帯アンテナを使用できるため、小型化が可能となる。また従来の狭帯域電波干渉計の場合は、電波到来方向の角度分解能を向上させるために,観測周波数に対応する波長の数倍の基線が多数必要であったが、本発明では、超広帯域としたために、そのような多数の基線は必要とせず、アンテナを多地点に配置するという手間や、アンテナ位置、及びアンテナ間の距離測定を行なう手間が不要となり、現場での作業時間を著しく短縮することができる。
また、本発明では、インターネット等を介して、遠隔地より電力機器・設備を監視、診断することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】電波干渉計の原理説明図である。
【図2】本発明の1実施の形態による超広帯域電波干渉計システムの構成図である。
【図3】本発明システムによる到来角測定例のグラフである。
【図4】本発明システムによる無放電時の到来角測定例のグラフである。
【符号の説明】
1:部分放電からの放射電磁波
2-1,2-2:アンテナ
3:電磁波到来角
4:アンテナ基線長
5:両アンテナにより受信した電磁波信号
11:部分放電からの放射電磁波
12-1,12-2:UHF帯半波長ダイポールアンテナ
13:同軸ケーブル
14:アナログ/デジタル変換部
15:フーリエ変換部
16:位相算出部
17:相互パワースペクトラム算出部
18:位相差算出部
19:到来角算出部
20:データ保存部
21:表示部
22:ネットワーク通信部
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
2
【図4】
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