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明細書 :広帯域波長可変レーザ光発生装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5196459号 (P5196459)
公開番号 特開2003-043531 (P2003-043531A)
登録日 平成25年2月15日(2013.2.15)
発行日 平成25年5月15日(2013.5.15)
公開日 平成15年2月13日(2003.2.13)
発明の名称または考案の名称 広帯域波長可変レーザ光発生装置
国際特許分類 G02F   1/365       (2006.01)
FI G02F 1/365
請求項の数または発明の数 2
全頁数 6
出願番号 特願2001-231555 (P2001-231555)
出願日 平成13年7月31日(2001.7.31)
審査請求日 平成20年7月31日(2008.7.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】深津 晋
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】佐藤 宙子
参考文献・文献 特開平06-138500(JP,A)
特開平08-234249(JP,A)
特開2000-221556(JP,A)
Appl.Opt.,1996年 5月20日,Vol.35,No,15,2548-2553
Optical and Quantum Electronics,1983年,Vol.15,No.4,363-365
Jpn.J.Appl.Phys.,2001年 4月15日,Vol.40,No.4B,L365-L367
Jpn.J.Appl.Phys.,1996年 9月15日,Vol.35,No.9B,L1194-L1197
調査した分野 G02F 1/35
H01S 3/10
JSTPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
シリカ光ファイバ非線形光学効果を利用した近赤外領域で広帯域に波長可変なレーザ光源であって、800nm~1875nmの超広帯域の波長可変性を有し、単一の波長選択素子の機械的操作のみによって全波長領域を掃引可能であり、かつ共線的な出射指向性をもち、コヒーレント光を発生させる広帯域波長可変レーザ光発生装置であって、前記シリカ光ファイバは複屈折特性を有するとともにカットオフ波長が1100~1300nmである単一モードファイバであって、前記カットオフ波長より短い発振波長のパルスレーザ光をポンプ光として前記ファイバの端面に入力結合させることにより、誘導ラマン散乱、誘導パラメトリック4光波混合を単一のファイバで発生させ、前記ポンプ光の短・長波長両側に連続なゲインスペクトルを得て、その結果として前記超広帯域の波長可変性を得ることを特徴とする広帯域波長可変レーザ光発生装置。
【請求項2】
請求項記載の広帯域波長可変レーザ光発生装置において、前記ポンプ光付近の縮退領域まで完全に連続な波長可変性を有することを特徴とする広帯域波長可変レーザ光発生装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、広帯域波長可変レーザ光発生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
分光学をはじめとする光学一般および光通信の領域では、広帯域で波長可変性を有する光源が渇望されてきた。なお、「広帯域」の定義には任意性があるが、ここでいう「広帯域」とは、分光、光通信で重要な800~1800nmをさす。最も一般的な広帯域波長可変光源としては、ランプなどが利用されてきたが、1nmあたり高々数10μWの光強度しか得ることができず、しかも収束性が極めて乏しい。これは光発生がインコヒーレントであること、および分光器の耐性も含めた装置構成上の物理的制約が原因である。
【0003】
このほかに、同じ動機から波長可変性を持つコヒーレント光源としてのレーザが幾多開発され、一部が実用に供されてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来のレーザでは、代表的なチタンサファイアレーザでさえ、連続波長可変帯域幅は高々300nmである。一方、パラメトリック発振レーザ(OPO)は、紫外線から赤外線まで可変であるものの、マクロな大きさの光学結晶において非線形効果を発生させるため、きわめて強力なポンプ光が必要となるほか、ポンプ光縮退領域では波長掃引ができない、発振線幅が太い(1nm以上)、波長掃引に伴って出射方向がずれる、波長掃引法が特殊であるなどの問題がある。
【0005】
一方、光ファイバ媒体を用いたレーザが、すでに一部波長可変ラマンレーザとして市販されている。ファイバによる3次の非線形効果を利用した波長可変特性の文献値を総合すると、市販品では1073~1600nmを走査できる能力があることが予想されるが、実際には可変幅が100nm以内であったり、単一の波長を指定させるものであったり、潜在的な波長可変性が活かされていない。
【0006】
また、誘導ラマン散乱による低エネルギー光(ストークス光ないしはダウンコンバート光)発生が主であり、ポンプ光縮退部分と高エネルギー側での光発生(アンチストークス光)および波長の同調は不可能であるとする先入観があった。
本発明は、上記状況を鑑みて、シリカ(ガラス)ファイバの非線形光学効果を利用した近赤外領域で広帯域に波長可変なレーザ光源であって、従来の波長可変レーザでは容易に達成できなかった超広帯域の波長可変性を有し、出射ビームの指向性が波長に存在せず、かつ、単一の波長選択素子の単純な機械的操作のみによって全波長領域を掃引可能なコヒーレント光を発生させる広帯域波長可変レーザ光発生装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕複屈折性を有するシリカ光ファイバをゲイン媒質とし、同ファイバにおける非線形光学効果(誘導ラマン散乱、誘導パラメトリック4光波混合)を利用する。
【0008】
〔2〕カットオフ波長より短い発振波長のパルスレーザをポンプ光とすることでポンプ光近辺の縮退領域およびポンプ光波長の短波長(アンチストークス光)・長波長(ストークス光)両側に連続なゲインスペクトルを発生させる。
〔3〕広帯域に波長可変な単一の波長選択素子として回折格子を利用する。
〔4〕ファイバ端からレーザ光を発生させる共線的出射配置とする。
【0009】
〔5〕光をファイバに2度通過させることで、パルス同期調整などを必要とせずにレーザゲインを得る。
本発明による800~1800nmの波長可変範囲は、エネルギースケールで実に210THzにおよび、これほど広帯域でかつ波長選択が容易、出射方向が共線的、装置構成が簡単な波長可変光源(レーザ)は他に例を見ない。
【0010】
ここで、共線的とは、ファイバの端からレーザ光が出射するため、発振域のいかなる波長の光であっても空間的にいつも同じ方向に出射する単一指向性をもつという意味である。結晶を利用したレーザでは波長掃引とともに出射方向が変化してしまう場合が多く、これを修正するための補償用結晶を導入する必要があることから、構造・操作が複雑化し、かつ実際には完全には共線的ではない。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す広帯域波長可変レーザ光発生装置の模式図、図2は本発明の実施例を示す波長可変特性図であり、横軸は発振波長(nm)、縦軸は相対光出力強度(dB)を示している。図3は単一波長選択の具体的な例であり、横軸は波長(nm)、縦軸は相対光出力強度(任意目盛)を示すとともに、表示を見やすくするために3つの波長選択の実施例を縦軸方向にずらして描いている。左端のピークは参照用のポンプレーザ光である。
【0012】
図1において、1はポンプ用パルスレーザ、2はポンプ用パルスレーザ1の偏光の方向、3は偏光ビームスプリッタ、4は4分の1波長板、5は4分の1波長板4により発生する円偏光の方向、6は出力結合用半透鏡、7,9は集光・コリメートレンズ、8はゲイン媒質のシリカ光ファイバ、10は単一波長選択素子である回折格子である。
【0013】
偏光ビームスプリッタ3と4分の1波長板4は、ポンプ用パルスレーザ1へのポンプ戻り光を除去するためのアイソレータを構成するが、これらを同一性能を有する光素子によって置換してもよい。さらに、偏光ビームスプリッタ3と4分の1波長板4を除去しても本発明にかかる広帯域波長可変レーザ光発生特性には影響はない。
【0014】
ポンプ用パルスレーザ(発振波長1064nm)1より出射されるパルス光(Qスイッチ乃至モードロック方式のパルスレーザで高出力パルス光を発生させることができるもの、より好適には1kW以上の出力強度であり、発振波長は1064nmのほかシングルモードシリカ光ファイバ8のカットオフ波長より10~20%程度短ければそれでよい)は、出力結合用半透鏡6を通過し、集光・コリメートレンズ7を介してゲイン媒質であるシリカ光ファイバ8に入射する。
【0015】
このシリカ光ファイバ8に関しては、複屈折特性を有するシングルモードファイバでカットオフ波長が1100nm~1300nm、長さは100m~400mとする。偏波保存ファイバではファイバ長をより短くすることができ、またシングルモードでなくても、50,62,5ミクロンコア径の通信用屈折率勾配型マルチモードファイバであっても、出力光強度特性がシングルモードファイバとは異なることを別にすれば、本目的のために使用できる。
【0016】
シリカ光ファイバ8を伝播する間に、ガラスの持つ非線形光学効果によって誘導ラマン散乱と誘導パラメトリック4波混合が生じ、前者の位相整合はフォノンの分散によって自動的に調節され、後者の場合にはカットオフ波長を下回る波長における導波路のモード分散によって補償される。
シリカ光ファイバ8のもう一方の端から出射した光は、集光・コリメートレンズ9を通してコリメート光に変換されて回折格子10に入射し、1次回折光のみが選択的にシリカ光ファイバ8に帰還される。回折格子(単一波長選択素子)10は帰還効率を高く取るために、使用波長帯で高反射率を維持できることが好ましい。
【0017】
具体的には830~1000nmブレーズ波長、600~1200本/mm、10×10mm2 ~25×25mm2 、金乃至アルミニウムコートで良好な結果が得られる。もしくは、狭線幅の帯域通過フィルタと全反射ミラーの組合せでもよい。
帰還された特定波長の光は、ファイバを逆に伝播する間に2回通過によるゲインを得ることで増幅され、最初に入射したファイバの端から出射し、集光・コリメートレンズ7を通ってコリメート光に変換され、出力結合用半透鏡6によって出力光線となる。出射方向は波長によらず一定の方向、すなわち共線的となる。
【0018】
出力結合用半透鏡6の反射率は原理的に50%で最も高い出力が得られるが、10~50%でもよい。
図2における光出力の実測値は、1178nmで3mWであり、これによって規格化した相対強度が示されている。本発明にかかるレーザの絶対出力は、ポンプ強度にほぼ比例して増加させることが可能である。
【0019】
図3では、単一波長選択特性が示されており、上記の装置構成において1nm以下の線幅(半値全幅)が得られ、帰還に用いる回折格子の刻線密度に反比例して線幅をさらに狭帯域化することも可能である。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0020】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、広帯域で波長可変なレーザ光発生装置(コヒーレント光源)を構築することができる。800~1875nmの波長可変域は極めて利用範囲が広く、固体を始めとするスペクトロスコピーの励起光源として即時利用が可能であり、また、光通信において重要である波長帯の830nm、1310nm、1480nm、1500~1600nmをすべてカバーしている。特に、後者の場合、光源をファイバに結合する効率が重要となるが、レーザ光がファイバ自身から出射されるため、空間ビームの結合に比べて2倍程度結合効率が上昇し、かつ、保安上も散乱による漏れがなくなり好都合である。
【0021】
また、パラメトリック発振器(OPO)に比べて装置構成が簡単であり、光出射が波長によらず共線的であり、かつ波長選択も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す広帯域波長可変レーザ光発生装置の模式図である。
【図2】 本発明の実施例を示す波長可変特性図である。
【図3】 本発明の実施例を示す単一波長の選択図である。
【符号の説明】
1 ポンプ用パルスレーザ
2 レーザの偏光方向
3 偏光ビームスプリッタ
4 4分の1波長板
5 4分の1波長板により発生する円偏光の方向
6 出力結合用半透鏡
7,9 集光・コリメートレンズ
8 シリカ光ファイバ
10 回折格子(単一波長選択素子)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2