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明細書 :ニッケル基単結晶超合金、その製造方法およびガスタービン高温部品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4222540号 (P4222540)
公開番号 特開2002-146460 (P2002-146460A)
登録日 平成20年11月28日(2008.11.28)
発行日 平成21年2月12日(2009.2.12)
公開日 平成14年5月22日(2002.5.22)
発明の名称または考案の名称 ニッケル基単結晶超合金、その製造方法およびガスタービン高温部品
国際特許分類 C22C  19/05        (2006.01)
C22F   1/10        (2006.01)
F01D   5/28        (2006.01)
C22F   1/00        (2006.01)
FI C22C 19/05 C
C22F 1/10 H
F01D 5/28
C22F 1/00 607
C22F 1/00 640B
C22F 1/00 650D
C22F 1/00 691B
C22F 1/00 691C
C22F 1/00 693A
請求項の数または発明の数 11
全頁数 27
出願番号 特願2001-256449 (P2001-256449)
出願日 平成13年8月27日(2001.8.27)
優先権出願番号 2000261137
優先日 平成12年8月30日(2000.8.30)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成18年9月8日(2006.9.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
発明者または考案者 【氏名】日野 武久
【氏名】小泉 裕
【氏名】小林 敏治
【氏名】中澤 静夫
【氏名】原田 広史
【氏名】石渡 裕
【氏名】吉岡 洋明
個別代理人の代理人 【識別番号】100078765、【弁理士】、【氏名又は名称】波多野 久
【識別番号】100078802、【弁理士】、【氏名又は名称】関口 俊三
審査官 【審査官】河野 一夫
調査した分野 C22C 1/00 - 49/14
C22F 1/00 - 3/02
F01D 5/28
特許請求の範囲 【請求項1】
重量%で、4.0%以上11.0%以下のコバルト、3.5%以上5.0%未満のクロム、0.5%以上3.0%以下のモリブデン、7.0%以上10.0%以下のタングステン、4.5%以上6.0%以下のアルミニウム、0.1%以上2.0%以下のチタン、5.0%以上8.0%以下のタンタル、1.0%以上3.0%以下のレニウム、0.01%以上0.5%以下のハフニウム、0.01%以上0.1%以下のシリコンを含有し、残部がニッケルおよび不可避的不純物からなり、レニウムおよびクロムの含有量の総和が4.0%以上であり、かつ、レニウム,モリブデン,タングステンおよびクロムの含有量の総和が18.0%以下であることを特徴とするニッケル基単結晶超合金。
【請求項2】
重量%で、5.0%以上10.0%以下のコバルト、4.0%以上5.0%未満のクロム、1.0%以上2.5%以下のモリブデン、8.0%以上9.0%以下のタングステン、5.0%以上5.5%以下のアルミニウム、0.1%以上1.0%以下のチタン、6.0%以上7.0%以下のタンタル、2.0%以上3.0%以下のレニウム、0.01%以上0.5%以下のハフニウム、0.01%以上0.1%以下のシリコンを含有し、残部がニッケルおよび不可避的不純物からなり、レニウムおよびクロムの含有量の総和が4.0%以上であり、かつ、レニウム,モリブデン,タングステンおよびクロムの含有量の総和が18.0%以下であることを特徴とするニッケル基単結晶超合金。
【請求項3】
重量%で、5.0%以上10.0%以下のコバルト、4.0%以上5.0%未満のクロム、1.0%以上2.5%以下のモリブデン、8.0%以上9.0%以下のタングステン、5.0%以上5.5%以下のアルミニウム、0.8%以上1.5%以下のチタン、5.0%以上6.0%未満のタンタル、2.0%以上3.0%以下のレニウム、0.01%以上0.5%以下のハフニウム、0.01%以上0.1%以下のシリコンを含有し、残部がニッケルおよび不可避的不純物からなり、レニウムおよびクロムの含有量の総和が4.0%以上であり、かつ、レニウム,モリブデン,タングステンおよびクロムの含有量の総和が18.0%以下であることを特徴とするニッケル基単結晶超合金。
【請求項4】
下記(A)に示した元素の全てと、下記(B)に示した元素の中から選ばれる少なくとも1の元素とを含有し、残部がニッケルおよび不可避的不純物からなることを特徴とするニッケル基単結晶超合金。
(A)重量%で、4.0%以上11.0%以下のコバルト、3.5%以上5.0%未満のクロム、0.5%以上3.0%以下のモリブデン、7.0%以上10.0%以下のタングステン、4.5%以上6.0%以下のアルミニウム、0.1%以上2.0%以下のチタン、5.0%以上8.0%以下のタンタル、1.0%以上3.0%以下のレニウム、0.01%以上0.2%以下のハフニウムおよび0.01%以上0.1%以下のシリコン
(B)重量%で、2.0%以下のニオブ、1%以下のバナジウム、2%以下のルテニウム、0.1%以下の炭素、0.05%以下のホウ素、0.1%以下のジルコニウム、0.1%以下のイットリウム、0.1%以下のランタンおよび0.1%以下のセリウム
【請求項5】
下記(C)に示した元素の全てと、下記(D)に示した元素の中から選ばれる少なくとも1の元素とを含有し、残部がニッケルおよび不可避的不純物からなることを特徴とするニッケル基単結晶超合金。
(C)重量%で、5.0%以上10.0%以下のコバルト、4.0%以上5.0%未満のクロム、1.0%以上2.5%以下のモリブデン、8.0%以上9.0%以下のタングステン、5.0%以上5.5%以下のアルミニウム、0.1%以上1.0%以下のチタン、6.0%以上7.0%以下のタンタル、2.0%以上3.0%以下のレニウム、0.01%以上0.2%以下のハフニウムおよび0.01%以上0.1%以下のシリコン
(D)重量%で、2.0%以下のニオブ、1%以下のバナジウム、2%以下のルテニウム0.1%以下の炭素、0.05%以下のホウ素、0.1%以下のジルコニウム、0.1%以下のイットリウム、0.1%以下のランタンおよび0.1%以下のセリウム
【請求項6】
ニッケル,コバルト,クロム,モリブデン,タングステン,アルミニウム,チタン,タンタル,レニウム,ハフニウムおよびシリコンを含む原材料から請求項1ないし3までのいずれかに記載の成分組成を有するニッケル基単結晶超合金の素体を準備して、真空または不活性ガス中1280℃から1350℃までの温度範囲で溶体化熱処理を行った後、急冷し、1100から1200℃までの温度範囲で1段時効熱処理を行った後、前記1段時効熱処理よりも低温で2段時効熱処理を施すことを特徴とするニッケル基単結晶超合金の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のニッケル基単結晶超合金の製造方法において、溶体化熱処理前に、溶体化熱処理を行う際の温度に対して20℃から40℃の低温で、多段階のステップを有する熱処理を行うことを特徴とするニッケル基単結晶超合金の製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載のニッケル基単結晶超合金の製造方法において、溶体化熱処理前に、溶体化熱処理を行う際の温度に対して20℃から40℃の低温で、一段のステップを有する熱処理を行うことを特徴とするニッケル基単結晶超合金の製造方法。
【請求項9】
請求項6ないし請求項8までのいずれかに記載のニッケル基単結晶超合金の製造方法において、溶体化熱処理時間を10時間以内とすることを特徴とするニッケル基単結晶超合金の製造方法。
【請求項10】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のニッケル基単結晶超合金により構成されたガスタービン高温部品。
【請求項11】
請求項6ないし9のいずれかに記載の製造方法で作成されたニッケル基単結晶超合金により構成されたガスタービン高温部品。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業用ガスタービンのタービンの動翼および静翼などの高温部品を構成するニッケル基単結晶超合金、その製造方法およびガスタービン高温部品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ガスタービンの高効率化にともなう燃焼温度の上昇によりタービン動静翼材料は、普通鋳造合金から応力軸方向の結晶粒界を無くし、高温でのクリープ強度を向上させた一方向凝固合金、さらには、結晶粒界そのものをなくし熱処理特性低下の原因であった粒界強化元素を除去して最適な熱処理によりガンマプライム相の析出率を高めて、高温でのクリープ強度を更に向上させた単結晶合金へと変化してきた。
【0003】
さらに、単結晶合金は、より一層のクリープ強度の向上を目指し、第1世代単結晶合金から第2世代および第3世代の単結晶合金へと開発が進められてきた。
【0004】
第1世代単結晶合金は、レニウム未添加の合金であり、特開昭59-19032号公報に掲載されているCMSX-2、米国特許第5,399,313号に掲載されているRene′N4および特開昭53-146223号公報に掲載されているPWA-1480などがある。
【0005】
また、第2世代単結晶合金は、レニウムを3%程度添加することで、第1世代単結晶合金より約30℃クリープ耐用温度を向上させた合金であり、米国特許第4,643,782号に掲載されているCMSX-4、米国特許第4,719,080号に掲載されているPWA-1484および特開平5-59474公報に掲載されているRene′N5などがある。
【0006】
第3世代単結晶合金は、レニウムを5~6%添加することでクリープ耐用温度の向上を図った合金であり、特開平7-138683号公報に掲載されているCMSX-10などがある。
【0007】
上記単結晶合金は、主として航空機用ジェットエンジン、小型ガスタービンの分野で目覚しく進歩してきた技術であるが、産業用の大型ガスタービンにおいても燃焼効率の向上を目的とした高温化により、技術の転用が図られてきている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
産業用の大型ガスタービンでは、航空機用ジェットエンジンや小型ガスタービンと比較して、設計寿命が長いため、翼材料には使用時に劣化相であるTCP(Topologically Close-Packed phase)相が生成しないこと、すなわち良好な組織安定性が求められる。
【0009】
第3世代の単結晶合金ではレニウムを5~6%添加することにより、第2世代の単結晶合金に対し高強度化を図ることができたが、その反面、長時間の使用により、クリープおよび低サイクル破壊の起点となるTCP相が生成しやすい。この点から第3世代の単結晶合金を大型ガスタービンとして適用するのは困難である。しかしながら燃焼温度の上昇に伴い、よりクリープ強度の高い材料が求められている。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、高温環境下でのクリープ強度および組織安定性を向上させたニッケル基単結晶超合金、その製造方法およびガスタービン高温部品を得ることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、含有する元素の成分および含有量を種々研究した結果、900℃以下の温度かつ200MPa以上の応力では、第2世代の単結晶合金と同等以上のクリープ強度を有し、900℃以上の高温かつ200MPa以下の応力では、第2世代の単結晶合金を上回るクリープ強度を有し、かつ組織安定性の優れた単結晶合金、その製造方法およびその超合金を用いたガスタービン高温部品を得られることを見出した。
【0012】
すなわち、第1の発明においては、ニッケル基単結晶超合金は、重量%で、4.0%以上11.0%以下のコバルト、3.5%以上5.0%未満のクロム、0.5%以上3.0%以下のモリブデン、7.0%以上10.0%以下のタングステン、4.5%以上6.0%以下のアルミニウム、0.1%以上2.0%以下のチタン、5.0%以上8.0%以下のタンタル、1.0%以上3.0%以下のレニウム、0.01%以上0.5%以下のハフニウム、0.01%以上0.1%以下のシリコンを含有し、残部がニッケルおよび不可避的不純物からなり、レニウムおよびクロムの含有量の総和が4.0%以上であり、かつ、レニウム,モリブデン,タングステンおよびクロムの含有量の総和が18.0%以下である。
【0013】
また、第2の発明においては、ニッケル基単結晶超合金は、重量%で、5.0%以上10.0%以下のコバルト、4.0%以上5.0%未満のクロム、1.0%以上2.5%以下のモリブデン、8.0%以上9.0%以下のタングステン、5.0%以上5.5%以下のアルミニウム、0.1%以上1.0%以下のチタン、6.0%以上7.0%以下のタンタル、2.0%以上3.0%以下のレニウム、0.01%以上0.5%以下のハフニウム、0.01%以上0.1%以下のシリコンを含有し、残部がニッケルおよび不可避的不純物からなり、レニウムおよびクロムの含有量の総和が4.0%以上であり、かつ、レニウム,モリブデン,タングステンおよびクロムの含有量の総和が18.0%以下である。
【0014】
さらに、第3の発明においては、重量%で、5.0%以上10.0%以下のコバルト、4.0%以上5.0%未満のクロム、1.0%以上2.5%以下のモリブデン、8.0%以上9.0%以下のタングステン、5.0%以上5.5%以下のアルミニウム、0.8%以上1.5%以下のチタン、5.0%以上6.0%未満のタンタル、2.0%以上3.0%以下のレニウム、0.01%以上0.5%以下のハフニウム、0.01%以上0.1%以下のシリコンを含有し、残部がニッケルおよび不可避的不純物からなり、レニウムおよびクロムの含有量の総和が4.0%以上であり、かつ、レニウム,モリブデン,タングステンおよびクロムの含有量の総和が18.0%以下である。
【0015】
また、第4の発明においては、ニッケル基単結晶超合金は、下記(A)に示した元素の全てと、下記(B)に示した元素の中から選ばれる少なくとも1の元素とを含有し、残部がニッケルおよび不可避的不純物からなる。
【0016】
(A)重量%で、4.0%以上11.0%以下のコバルト、3.5%以上5.0%未満のクロム、0.5%以上3.0%以下のモリブデン、7.0%以上10.0%以下のタングステン、4.5%以上6.0%以下のアルミニウム、0.1%以上2.0%以下のチタン、5.0%以上8.0%以下のタンタル、1.0%以上3.0%以下のレニウム、0.01%以上0.2%以下のハフニウムおよび0.01%以上0.1%以下のシリコン
(B)重量%で、2.0%以下のニオブ、1%以下のバナジウム、2%以下のルテニウム、0.1%以下の炭素、0.05%以下のホウ素、0.1%以下のジルコニウム、0.1%以下のイットリウム、0.1%以下のランタンおよび0.1%以下のセリウム
第5の発明においては、ニッケル基単結晶超合金は、下記(C)に示した元素の全てと、下記(D)に示した元素の中から選ばれる少なくとも1の元素とを含有し、残部がニッケルおよび不可避的不純物からなることを特徴とするニッケル基単結晶超合金。
【0017】
(C)重量%で、5.0%以上10.0%以下のコバルト、4.0%以上5.0%未満のクロム、1.0%以上2.5%以下のモリブデン、8.0%以上9.0%以下のタングステン、5.0%以上5.5%以下のアルミニウム、0.1%以上1.0%以下のチタン、6.0%以上7.0%以下のタンタル、2.0%以上3.0%以下のレニウム、0.01%以上0.2%以下のハフニウムおよび0.01%以上0.1%以下のシリコン
(D)重量%で、2.0%以下のニオブ、1%以下のバナジウム、2%以下のルテニウム0.1%以下の炭素、0.05%以下のホウ素、0.1%以下のジルコニウム、0.1%以下のイットリウム、0.1%以下のランタンおよび0.1%以下のセリウム
本発明のニッケル基単結晶超合金おいて、合金組成における各元素の効果および組成限定理由を述べる。
【0018】
コバルト(Co)は、ガンマ相のニッケル(Ni)と置換してマトリックスを固溶強化する元素である。本発明において、コバルトの含有量を4.0%以上11.0%以下と規定したのは、含有量が4%未満では十分な固溶強化の効果が得られず、また、11.0%を超えるとガンマプライム量を低減させ、逆にクリープ強度を低下させるためである。さらに好ましいコバルトの含有量は5.0%以上10.0%以下である。
【0019】
クロム(Cr)は、高温耐食性を向上させる元素である。本発明において、クロムの含有量を3.5%以上と規定したのは、含有量が3.5%未満では所望の耐高温腐食性を確保できないためである。また、本発明では高温強度を向上させるために、後述するようにモリブデンを0.5%以上、タングステンを7.0%以上、レニウムを1.0%以上含有させている。クロム,モリブデン,タングステンおよびレニウムは、主としてガンマ相に固溶するが、固溶限度を超えるとレニウム-クロム-タングステン,レニウム-タングステン等のTCP相がニッケルマトリックスに析出する。これらTCP相は、クリープ特性や低サイクル疲労特性を低下させる。TCP相を析出させないクロム含有量の限界は、アルミ,チタン,タンタル,ニッケルの化合物であるガンマプライム相の析出量、ニッケルマトリックスへの各固溶強化元素の含有の度合いによって異なるが、本発明の合金組成範囲では、レニウム,モリブデン,タングステン,クロム含有量の総和が18.0以下であればTCP相の析出率(面積率)はクリープや低サイクル疲労特性に影響を与えない5%以下となる。
【0020】
また、従来、産業用ガスタービン動翼材では、耐高温腐食性を維持するためにクロムの含有量が16.0%であるIN738LC,クロムの含有量が12.4%であるIN792などクロム含有量が10.0%以上のものが一般に使用されてきた。しかしながら、本発明ではクロムの含有量を3.5%以上5%未満と低い含有量としたにもかかわらず、クロムおよびレニウムの含有量の総量を4%以上とすることで、従来と同等の耐高温腐食性を持たせることに成功した。
【0021】
モリブデン(Mo)は、ガンマ相を固溶強化させる元素であるとともに、ガンマ-ガンマプライム格子定数(γ/γ´)ミスフィットを負とし高温での強化メカニズムの一つであるラフト効果を促進させる元素である。本発明において、モリブデンの含有量を0.5%以上と規定したが、要求されるクリープ強度を得るためには最低0.5%含有させることが必要なためである。また、含有量が3.0%を超えると、ニッケルマトリックスの固溶限度を超え、α-モリブデンやレニウム-モリブデンなどのTCP相を析出させるため上限値を3.0%以下と規定した。さらに、モリブデンの含有量を1.0%以上2.5%以下の範囲とするとより好ましい。
【0022】
タングステン(W)は、ガンマ相を固溶強化する元素である。本発明において、タングステンの含有量を7.0%以上と規定したが、要求されるクリープ強度を得るためには最低7.0%含有させることが必要なためである。一方、含有量が10.0%を超えると、α-タングステンやクロム-レニウム-タングステンのTCP相を析出させクリープ強度を低下させるため、含有量の上限値を10.0%と規定した。さらに好ましいタングステンの含有量は、8.0%以上9.0%以下である。
【0023】
アルミニウム(Al)は、Ni基析出強化型合金の主強化因子であるガンマプライム相の形成元素であり、また、合金表面にアルミニウムの酸化物を生成することにより耐酸化性の向上にも寄与する元素である。本発明において要求されるクリープ特性ならびに耐酸化性を得るためには、最低4.5%の含有量が必要であるが、含有量が6%を超えると溶体化熱処理温度幅を狭め熱処理特性を悪化させるため、アルミニウムの含有量を4.5%以上6.0%以下と規定した。さらに好ましいアルミニウムの含有量は5.0%以上5.5%以下である。
【0024】
チタン(Ti)は、ガンマプライム相中のアルミニウムと置換してNi(Al,Ti)となり、ガンマプライム相の固溶強化に役立つ元素である。本発明において、チタンの含有量を0.1以上2.0以下%と規定したのは、チタンを過度に含有させると、ガンマ-ガンマプライム共晶の生成またはNiTi相(η相)、チタンの窒化物の析出を促しクリープ強度を低下させるためである。さらに、チタンの含有量は0.1%以上1%以下とすると好ましい。
【0025】
タンタル(Ta)は、主としてガンマプライム相に固溶してガンマプライム相を強化するとともに耐酸化性に寄与する元素である。本発明において要求されるクリープ強度を得るためには、最低5.0%含有させることが必要であるが、含有量が8.0%を超えると、ガンマ-ガンマプライム共晶の生成を促し、溶体化熱処理における熱処理可能温度幅を狭めるため、タンタルの含有量を5.0%以上8.0%以下と規定した。また、本発明において、チタン、タンタル等のガンマプライム形成元素と、クロム、モリブデン、タングステン、レニウム等のガンマ相の固溶強化元素の含有量を制御しクリープなどの応力印加時に析出粒子であるガンマプライムが応力軸に垂直につながるラフト組織の成長を促進させることで、従来合金に対しクリープ特性を向上させている。ラフトの形成には析出粒子であるガンマプライム相とガンマ相の大きさの差であるガンマ-ガンマプライム格子定数ミスフィットが影響する。本発明では、格子定数ミスフィットを主にガンマプライム形成元素であるアルミ,タンタル,チタンの量によって制御している。チタンの含有量が0.1%以上1.0%以下の場合、タンタルの含有量は6.0%以上7.0%以下であることが好ましく、また、チタンの含有量が0.8%以上1.5%以下の場合、タンタルの含有量は5.0%以上6.0%未満であることが望ましい。
【0026】
レニウム(Re)は、ガンマ相を固溶強化して耐高温腐食性を向上させる元素である。本発明において、レニウムの含有量を1.0%以上3.0%以下と規定したのは、要求されるクリープ強度を得るためには最低1.0%含有させることが必要であり、また3.0%を超えて含有させると、レニウム-モリブデン、レニウム-タングステンおよびレニウム-クロム-タングステン等のTCP相の生成を促進させるためである。さらに、好ましいReの含有量は、2.0以上3.0%以下である。
【0027】
ハフニウム(Hf)は、単結晶タービン動静翼鋳造時に生成する異結晶や、その後の熱処理と加工により生じる再結晶の粒界を強化し、タービン動翼および静翼の製造歩留りを向上させる元素である。本発明において、Hfの添加量を0.01%以上0.5%以下と規定したが、含有量が0.5%を超えると合金の融点を下げて熱処理特性を悪化させてしまい、一方、含有量が0.01%未満であると、上記効果が得られないためである。本発明において、特に望ましいHfの添加量は、0.2%以下である。
【0028】
シリコン(Si)は、合金表面にSiO皮膜を生成させて保護皮膜として耐酸化性を向上させる元素である。従来、ニッケル基単結晶超合金では、シリコンは不純物元素として取り扱われてきたが、本発明において、シリコンを意図的に含有させて、上述のように耐酸化性向上に有効活用している。また、SiO酸化皮膜は他の保護酸化皮膜と比較して割れが発生しにくく、クリープや疲労特性を向上させる効果もあると考えられる。しかし、シリコンを大量に添加することは他の元素の固溶限を低下させることにもなるため、含有量を0.01%以上0.1%以下と規定した。本発明において、特に望ましいシリコンの添加量は、0.2%以下である。
【0029】
ニオブ(Nb)は主としてガンマプライム相に固溶し、ガンマプライム相を強化する元素である。本発明においては、ガンマプライム相の固溶強化が主としてタンタルによってなされているが、ニオブによっても同様の機能が得られる。タンタルを単独で添加する場合に比べて、ニオブを複合添加する場合には、固溶量を増大することができる利点がある。
【0030】
バナジウム(V)はガンマプライム相に固溶し、ガンマプライム相を強化する元素である。しかしながら、バナジウムを過度に添加するとガンマ-ガンマプライム共晶の生成を促し、溶体化熱処理における熱処理の可能な温度幅を狭める。また、本発明の合金においては、チタン、タンタル等のガンマプライム形成元素と、クロム、モリブデン、タングステン、レニウム等のガンマ相を固溶強化する元素との添加量を制御し、クリープ等の応力印加時に、析出粒子であるガンマプライムが応力軸に垂直につながるラフト組織の成長を促進させるようにすることにより、従来の合金に比してクリープ特性を向上させている。ラフト組織の形成には、析出粒子であるガンマプライム相と、ガンマ相の大きさの差であるガンマ-ガンマプライム格子定数ミスフィトとが影響する。そこで、これらの点に基づき、本発明ではアルミニウム、タンタル、チタンおよびニオブ添加総量のバランスを考慮して、バナジウムの添加量は1.0wt%以下と規定した。
【0031】
ルテニウム(Ru)はガンマ相に固溶し、ガンマ相を強化する元素である。しかしながら、ルテニウムは密度が高く、合金の比重を高め、1.5%を超える添加は合金の比強度を下げる。このため、ルテニウムの添加量は1.5%以下と規定した。
【0032】
炭素(C)は、単結晶タービン動静翼鋳造時に生成する高傾角粒界、フレッケルまたはスリバ等の異結晶、その後の熱処理および加工によって生じる再結晶の粒界を強化し、タービン動翼および静翼の製造歩留りを向上させる元素である。炭素は、0.1%を超えて添加すると、タングステンやタンタルなどの固溶強化に寄与している元素との間で炭化物を形成し、クリープ強度を下げると同時に合金の融点を下げ、熱処理特性を悪化させる。そのため、炭素の添加量は0.1%以下と規定した。
【0033】
ホウ素(B)も炭素(C)と同様に、単結晶タービン動静翼鋳造時に生成する異結晶や、その後の熱処理および加工によって生じる再結晶の粒界、あるいは高傾角粒界を強化し、タービン動翼および静翼の製造歩留りを向上させる元素である。ホウ素は、0.05%を越えて添加すると、タングステンやタンタルなど固溶強化に寄与している元素とホウ化物を形成し、クリープ強度を下げると同時に合金の融点を下げ、熱処理特性を悪化させる。そのためホウ素の添加量は0.05%以下と規定した。
【0034】
ジルコニウム(Zr)もホウ素(B)や炭素(C)と同様に、単結晶タービン動静翼鋳造時に生成する異結晶、その後の熱処理および加工によって生じる再結晶の粒界、あるいは高傾角粒界を強化し、タービン動翼および静翼の製造歩留りを向上させる元素である。しかしながら、過度の添加はクリープ強度を下げるため、ホウ素の添加量は0.05%以下と規定した。
【0035】
イットリウム(Y)、ランタン(La)およびセリウム(Ce)は、アルミナ、クロミアなどのニッケル基超合金に形成する保護酸化皮膜の密着性を向上させる元素である。ニッケル基超合金を用いて製造したガスタービン翼を、未コーティング状態で使用する場合には、このガスタービン翼が起動停止に伴う熱サイクルを受ける。この時、翼基材および保護皮膜には、熱膨張係数の違いにより保護皮膜の剥離が生じやすいが、イットリウム、ランタン、セリウムを添加することによって保護皮膜の密着性が向上する。しかしながら、イットリウム、ランタン、セリウムの過度の添加は、他の元素の固溶限を低下させることになるため、これら元素の添加量の上限として、イットリウムについては0.1%、ランタンについては0.1%、セリウムについては0.1%以下と規定した。
【0036】
また、ニッケル基単結晶超合金の製造方法は、ニッケル,コバルト,クロム,モリブデン,タングステン,アルミニウム,チタン,タンタル,レニウム,ハフニウムおよびシリコンを含む原材料から請求項1ないし3までのいずれかに記載の成分組成を有するニッケル基単結晶超合金の素体を準備して、真空または不活性ガス中1280℃から1350℃までの温度範囲で溶体化熱処理を行った後、急冷し、1100から1200℃までの温度範囲で1段時効熱処理を行った後、前記1段時効熱処理よりも低温で2段時効熱処理を施してニッケル基単結晶超合金を得る。
【0037】
また、溶体化熱処理前に、溶体化熱処理を行う際の温度に対して20℃から40℃の低温で、多段階のステップを有する熱処理および一段のステップを有する熱処理を行っても良い。本発明の合金ではニッケル合金中での拡散速度が遅いレニウム添加量を3%以下と抑えており、1段の予備溶体化熱処理でも十分に高いクリープ特性を得ることができる。
【0038】
なお、本発明においては、溶体化熱処理時間を10時間以内とすることが望ましい。
【0039】
次に、ニッケル基単結晶超合金の合金特性に与える製造プロセスの影響について述べる。
【0040】
本発明では、主にニッケルマトリックス中にガンマプライム相を析出させることで合金を強化している。具体的には、ガンマプライム相が、ニッケルマトリックス中に立方体形状で均一に分散しており、かつ、この立方体の1辺が0.2~0.6μmである場合に、高温でのクリープ強度が最も強くなる。高温でクリープ強度を向上させるために、鋳造時に析出した不均一形状のガンマプライム相を一旦ニッケルマトリックス中に固溶させた後、希望の形状および寸法に再析出させる必要がある。このため合金をガンマプライム相の溶解温度以上に加熱し、ガンマプライム相をニッケルマトリックス中に溶解させる溶体化熱処理を行う。実際、ガンマ相の溶解温度直下での溶体化熱処理によれば、ガンマプライム相がニッケルマトリックスに固溶し、かつ組成の均一化にかかる時間が少ないため工業的に有利となる。一方、ニッケル基単結晶超合金をタービン動静翼に加工する際、翼植込部の機械加工、コーティング施工の際に翼表面部をクリーニングするブラスト加工時に機械歪みが生じる。ブラスト加工時に生じた機械歪みは、高温の熱処理にて再結晶を生成させてクリープ強度を低下させる。以上より溶体化熱処理は再結晶を生じない最も高い温度にて行うことが好ましい。しかしながら、導入される機械歪みの大きさには幅があり再結晶が生じる温度も変化すること、また、本発明合金は、1350℃以上で局部溶解が生じることから溶体化熱処理の温度範囲を1280℃~1350℃と規定した。
【0041】
ガスタービン翼の1段時効熱処理温度は、一般にコーティングの拡散熱処理を兼ねる場合が多い。そのため、本発明ではコーティング施工性を考慮し1段時効熱処理の温度を1100℃~1200℃と規定した。さらに、好ましい1段時効処理温度は1150℃である。
【0042】
また、溶体化熱処理の際、温度を変化させて多段階の熱処理を施すことで、局部溶融を生じることなく、より高温まで溶体化熱処理を行うことができる。これにより合金組成を均一化し、矩形で寸法の揃ったガンマプライム相を析出させることができるため、優れたクリープ強度を有するニッケル基単結晶超合金を得ることができる。
【0043】
なお、本発明では、ニッケル合金中での拡散速度が遅いレニウム含有量を3%以下と抑えているため、1段の予備溶体化熱処理でも十分に高いクリープ特性を得ることができる。
【0044】
ニッケル基単結晶超合金の合金組成を均一化するためには、添加元素の拡散をするため溶体化熱処理を長時間施すことが望ましいが、一方で、熱処理時間を長くするとコスト向上につながっていた。本発明では、Ni基合金中での拡散速度が遅いレニウムの含有量を3%以下に抑えているため、1280℃から1350℃の温度域での溶体化処理では10時間以内の熱処理で均一な組織を得ることができる。
【0045】
さらに、本発明の成分組成を有するニッケル基単結晶超合金によりガスタービン高温部品を構成すると良い。
【0046】
また、本発明のニッケル基単結晶超合金の製造方法により作製されたニッケル基単結晶超合金によりガスタービン高温部品を構成すると良い。
【0047】
【発明の実施形態】
以下、本発明の実施形態について、図1~図4および表1~表8を用いて、具体的に説明する。
【0048】
第1実施形態(図1~図3,表1~表5)
本実施形態では、表1に示す試料No.1から試料No.32までの実施例、比較例および従来例の合金を用いて、本発明の合金組成範囲にある実施例のニッケル基単結晶超合金が優れたクリープ強度および組織安定性を有し、かつ、従来合金と同等の耐高温腐食性を有することを確認した。
【0049】
【表1】
JP0004222540B2_000002t.gif【0050】
実施例(試料No.1~試料No.17)
本実施例では、表1に示すNo.1ないしNo.17の試料を用いた。
【0051】
試料No.1~試料No.14は、重量%で、4.0%以上11.0%以下のコバルト、3.5%以上5.0%未満のクロム、0.5%以上3.0%以下のモリブデン、7.0%以上10.0%以下のタングステン、4.5%以上6.0%以下のアルミニウム、0.1%以上2.0%以下のチタン、5.0%以上8.0%以下のタンタル、1.0%以上3.0%以下のレニウム、0.01%以上0.5%以下のハフニウムおよび0.01%以上0.1%以下のシリコンを含有しており、残部がNiおよび不可避的不純物から成る。また、レニウムおよびクロムの含有量の総和は4.0%以上であり、クロム,モリブデン,タングステンおよびレニウムの含有量の総和が18.0%以下となっている。
【0052】
試料No.15、16および17は、試料No.1~試料No.14のものに、それぞれ1%以下のバナジウムを加えたもの、2.0%以下のニオブを加えたもの、および2%以下のルテニウムを加えたものである。
【0053】
比較例(試料No.18~試料No.32)
本比較例では、No.18ないしNo.32の試料を用いたものであり、表1に示すように、本発明の合金成分範囲から外れている。
【0054】
従来例(試料No.33)
本従来例では、第2世代単結晶合金であるCMSX-4を用い、これを試料No.27とした。具体的には、重量%で、コバルト:9.0%、クロム:6.5%、モリブデン:0.6%、タングステン:6.0%、アルミニウム:5.6%、チタン:1.0%、タンタル:6.5%、レニウム:3.0%、ハフニウム:0.1%を含有し、残部がニッケルおよび不可避的不純物から成る。
【0055】
上記実施例、比較例の成分組成を有する合金について、あらかじめ表1に示す成分組成になるように、原材料を適切な割合に調整したメルティングストックを作製した。つづいてこのメルティングストックを原料として引き抜き法により丸棒形状の単結晶試験片を作製した。また、従来例については表1に示した合金組成を有するマスターメタルを購入し、実施例、比較例と同様に引き抜き法により丸棒形状の単結晶試験片を作製した。
【0056】
次に、試料No.1ないし試料No.33の各単結晶試験片に対して、塩酸および過酸化水素水の混合液にてエッチングを行い、試験片全体が単結晶化していること、ならびに成長方向が引き抜き方向に対して10°以内になっていることを目視により確認した後、図1に示すシーケンスに従い熱処理を行った。
【0057】
図1は、実施例および比較例の熱処理シーケンスを示す図である。
【0058】
図1に示すように、まず、実施例および比較例の試料No.1ないし試料No.32の各試験片について、局部溶解を防止するため1300℃で予備溶体化熱処理を1時間行った後、各合金のガンマプライム相の溶解温度以上かつガンマ相の融点以下である1320℃で5時間、溶体化熱処理を行った。
【0059】
溶体化熱処理後、室温まで各試験片を空冷し、ガンマプライム相の析出を目的とした1段時効熱処理を1150℃で4時間行い、つづいてガンマプライム相の安定化を目的とした2段時効熱処理を870℃で20時間行った。
【0060】
上記熱処理後、試験片に加工し、クリープ破断試験、高温腐食試験および高温酸化試験を兼ねて時効試験を行った。
【0061】
なお、クリープ破断試験は、大気雰囲気中、温度1100℃、応力137MPaの条件下で試験を行い、クリープ破断寿命(h)、伸び(%)および絞り(%)を測定した。高温腐食試験は、75%硫酸ナトリウム+25%塩化ナトリウムの組成を有する温度900℃に加熱した溶融塩中に試験片を20時間浸漬した後、脱スケールを行い、腐食による質量減少量を測定して質量減少量を腐食浸食量(mm)に換算して示した。また、高温酸化試験結果は、950℃、1000時間後に断面組織の観察を行い、酸化皮膜が脱落していない箇所の酸化皮膜厚さを計測したものであり、高温時効試験は、950℃、1000時間後における断面組織を観察して、5%以上のTCP相析出の有無を確認したものである。これらの結果を表2~表5および図2および図3に示す。
【0062】
表2は、実施例、比較例および従来例についてのクリープ破断試験結果を示す表である。
【0063】
【表2】
JP0004222540B2_000003t.gif【0064】
表2に示すように、試料No.1~No.17の実施例は、1100℃、137MPaでのクリープ破断寿命が71.8~374.2時間と長時間となっており、従来例であるCMSX-4に対し良好なクリープ特性を示した。すなわち、本発明の成分組成範囲を有する実施例は、ラフト化による強化と同時にシリコンを含有したことでクリープ破壊の起点となる酸化皮膜のクラック形成が抑制されたためであると考えられる。
【0065】
一方、比較例の試料No.18では、クロムおよびレニウムを過剰に含有させており、試料No.20では、クロム,モリブデン,タングステン,レニウムの総含有量を過剰に含有させたため、レニウム,モリブデン,タングステンを主成分とするTCP相が析出しクリープ破断寿命が低下していた。さらに、比較例の試料No.26では、各元素単独の組成は本発明の組成範囲内にあるが、レニウム,モリブデン,タングステン、クロムの含有量の総和が重量%で18.9%と本発明の範囲内を超えており、ニッケルマトリックスの固溶限を超えたためTCP相が析出しクリープ破断寿命が低下していた。
【0066】
一方、比較例の試料No.19,試料No.22および試料No.23に示すように、本発明の合金組成範囲よりも元素含有量が少ない場合には、レニウム、モリブデンおよびタングステンなどの固溶強化が有効に作用せず、また、試料No.25のようにアルミおよびタンタルの含有量が少ない場合は、ガンマプライム相による析出強化が有効に作用せず、従来合金以下の強度となった。
【0067】
表3は、実施例、比較例および従来例についての高温腐食試験結果を示す表である。
【0068】
【表3】
JP0004222540B2_000004t.gif【0069】
表3に示すように、実施例はいずれも腐食浸食量が0.4mm以下と良好な耐食性を示すのに対して、クロムの含有量が3.5%以下の試料No.22および試料No.23の合金は、腐食浸食量が4mm以上となっており、3.5%以上のクロムを含有させた試料と比較して腐食浸食量が大きく耐高温腐食性の劣る結果となった。
【0070】
表4は、実施例、比較例および従来例についての高温酸化試験結果を示す表である。
【0071】
【表4】
JP0004222540B2_000005t.gif【0072】
表4に示すように、アルミの含有量を5%以上とし、かつシリコンを含有させた実施例の試料は、酸化皮膜厚さが5~8μmとなっており、シリコンを添加していない比較例の試料No.27および試料No.28と比較して良好な耐酸化性を示した。
【0073】
表5は、実施例、比較例および従来例についての高温時効試験後の組織安定性評価結果を示す表である。なお、図2は、実施例の試料の断面組織を示す写真であり、図3は、比較例の試料の断面組織を示す写真である。
【0074】
【表5】
JP0004222540B2_000006t.gif【0075】
表5に示すように、実施例は、1000時間保持後においても5%以上のTCP相の析出がみられず、図2に代表的に示されるように、ニッケルマトリックス中に矩形のガンマプライム相のみが析出した良好な組織となっていた。一方、比較例は、TCP相の析出がみられ、また、図3に代表的に示されるように、板状または針状のTCP相が生成しており、組織安定性を悪化させていることが判明した。
【0076】
従って、本実施形態によれば、本発明の組成範囲内とすることで、高温環境下でのクリープ強度および組織安定性を向上させたニッケル基単結晶超合金を得ることができる。
【0077】
第2実施形態(図4,表6~表8)
本実施形態では、本発明のニッケル基単結晶超合金の製造方法により作製したニッケル基単結晶超合金が優れたクリープ強度を有することを確認した。
【0078】
原料となるメルティングストックは、表1に示す試料No.1の合金組成を目標とし、40kg作製した。表6に合金組成の分析結果を示す。
【0079】
【表6】
JP0004222540B2_000007t.gif【0080】
表6に示すように、メルティングストックは、重量%で、コバルト:7.8%、クロム:4.9%、モリブデン:1.9%、タングステン:8.7%、アルミニウム:5.3%、チタン:0.5%、タンタル:6.4%、レニウム:2.4%、ハフニウム:0.1%、シリコン:0.01%を含有し、残部がニッケルおよび不可避的不純物から成る。
【0081】
上記メルティングストックを用いて、引抜き法により丸棒形状の単結晶試験片を作製した。各試験片に、塩酸および過酸化水素水の混合液にてエッチングを行い、試験片全体が単結晶化していること、ならびに成長方向が引き抜き方向に対して10°以内になっていることを目視により確認した。
【0082】
その後、各試験片に図4に示す手順により熱処理を施した。実施例および比較例の各熱処理条件は、表7に示す条件を用いた。
【0083】
【表7】
JP0004222540B2_000008t.gif【0084】
表7に示すように、実施例の試料No.34ないし試料No.40は、溶体化熱処理を1280℃ないし1350℃の温度、1段時効熱処理を1100℃ないし1200℃の温度として本発明の範囲内としたものであり、上記試料の中でも試料No.28ないし試料No.41は、溶体化熱処理に先立ち予備溶体化熱処理を溶体化温度に対し20℃~60℃低い温度により行ったものである。一方、比較例の試料No.43ないし試料No.46は、熱処理条件を本発明の温度範囲外としたものである。
【0085】
上記試料No.34ないし試料No.46の各試験片に熱処理を施した後、大気雰囲気中、温度1100℃、応力137MPaの条件下でクリープ破断試験を行いクリープ破断寿命(h)を測定した。なお、試験条件は第1実施形態と同様とした。その結果を表8に示す。
【0086】
【表8】
JP0004222540B2_000009t.gif【0087】
表8に示すように、1280℃~1340℃の温度域にて溶体化熱処理を行った実施例の試料No.34ないしNo.42は、クリープ破断寿命が長く、良好なクリープ破断特性を示した。一方、1280℃以下の溶体化熱処理を施した比較例の試料No.43は、合金中の元素の偏析ならびにガンマプライム相のニッケルマトリックスへの溶解が十分でなく、ガンマプライム相が強度向上に有効な形状となり得なかったため、クリープ破断寿命が低下した。また、溶体化熱処理の温度を1350℃以上とした比較例の試料No.44は、ニッケルマトリックスに対し融点の低いガンマ-ガンマプライム共晶が局部溶解して生じたポロシティが破壊の起点となることから、クリープ破断寿命が低下した。さらに、溶体化熱処理温度は本発明の範囲内としたが、1段時効熱処理温度を900℃とした試料No.45は、ガンマプライム析出量が少なく、1250℃とした試料No.46はガンマプライム相が粗大化することによりクリープ破断寿命が低下した。
【0088】
従って、本実施形態によれば、熱処理条件を本発明の範囲内とすることで、優れたクリープ破断寿命を得ることができる。
【0089】
第3実施形態(図5,表9)
本実施形態では、本発明の組成範囲内の合金組成および熱処理条件とした製造方法により作製したNi基単結晶超合金が、900℃から1100℃の温度域、98MPaから392MPaの応力域においても優れたクリープ強度を有することを確認した。
【0090】
本実施形態では、第2実施形態の実施例のメルティングストックを使用して、引抜き法により直径9mm×100mmの単結晶丸棒試験片を作製した。試験片は塩酸および過酸化水素水の混合液にてエッチングを行い、試験片全体が単結晶化していること、ならびに成長方向が引き抜き方向に対して10°以内になっていることを目視により確認した。
【0091】
その後、試験片に1300℃の温度で1時間予備溶体化熱処理を施した後、続けて1320℃の温度で5時間の溶体化熱処理を施した。その後、1150℃の温度で4時間の1段時効熱処理を施し、870℃の温度で20時間の2段時効熱処理を施した。
【0092】
上記熱処理後、クリープ試験を行った。なおクリープ試験条件は、表9に示す条件を用いて試験条件を種々変えて、試料No.47ないし試料No.52としたものである。これらの結果を表9および図5に示す。
【0093】
【表9】
JP0004222540B2_000010t.gif【0094】
なお、“DS AND SX SUPERALLOYS FOR INDUSTRIAL GAS TURBINES;G.L.Erickson and K.Harris:Materials for Advanced Power Engineering1994”に記載されているCMSX-4のクリープデータを従来例とした。そのデータを図5に併記した。なお、図5の横軸には、温度と時間のパラメータであるラーソンミラパラメータ(LMP)を示し、縦軸には応力を示す。
【0095】
図5に示すように、クリープ試験条件が900℃以上の温度かつ200MPa以下の応力域においては、実施例は従来例のCMSX-4よりもクリープ破断寿命が向上していた。
【0096】
従って、本実施形態によれば、900℃以下の温度、200MPa以上の応力においてはCMSX-4とほぼ同等のクリープ強度を示すが、900℃以上の温度かつ200MPa以下の応力域においては、第2世代の単結晶合金よりもクリープ破断寿命が向上しており、従来合金よりも一層優れた特性を有するNi基単結晶超合金を得られることが判明した。
【0097】
第4実施形態(表10,表11)
本実施形態は、コバルト、クロム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、チタン、タンタル、レニウム、ハフニウムおよびシリコンに加え、イットリウム,ランタンおよびセリウムのいずれかを含有し、かつ残部がニッケルおよび不可避的不純物からなるNi基単結晶超合金についてのものである。原料としては、表6に示したメルティングストックに、イットリウム、ランタンおよびセリウムのいずれかを添加したものを適用した。
【0098】
【表10】
JP0004222540B2_000011t.gif【0099】
表10に、実施例および比較例の合金組成を示している。実施例の試料No.53は0.1%以下のイットリウムを含有し、試料No.54は0.1%以下のランタンを含有し、試料No.55は0.1%以下のセリウムを含有する合金である。これに対し、比較例のNo.56はイットリウム、ランタンおよびセリウムのいずれも含まない合金である。比較例のNo.57~No.59は、それぞれイットリウム、ランタンおよびセリウムを過度に添加した合金である。
【0100】
実施例、比較例とも引抜き法により丸棒形状の単結晶試験片を作製した。つづいて塩酸および過酸化水素水の混合液にてエッチングを行い、試験片全体が単結晶化していること、ならびに成長方向が引き抜き方向に対して10°以内になっていることを目視により確認し、図1に示すシーケンスに従って熱処理を行った。
【0101】
高温酸化試験については、試験片をるつぼに入れて950℃で8時間加熱後、室温まで冷却するサイクルを30回繰り返し、30サイクルでの単位面積あたりの試験片および剥離スケールの質量を併せた酸化による総質量変化量を測定した。
【0102】
【表11】
JP0004222540B2_000012t.gif【0103】
表11に実施例、比較例および従来例についての合金の高温酸化試験結果を示す。これより、イットリウム、ランタンまたはセリウムを本発明の範囲内で添加したNo.53,54,55の酸化質量増加量は0.761~0.898mg/cmと少ない結果となり、イットリウム、ランタン、セリウムを添加していない比較例No.56や過剰に添加した比較例No.57,No.58,No.59に対して良好な耐酸化特性を示した。
【0104】
第5実施形態(図6,表12,表13)
本実施形態は、コバルト、クロム、モリブデン、タングステン、アルミニウム、チタン、タンタル、レニウム、ハフニウムおよびシリコンに加え、炭素、ホウ素およびジルコニウムのいずれかを含有し、かつ残部がニッケルおよび不可避的不純物からなるNi基単結晶超合金についてのものである。原料としては、表6に示したメルティングストックに、炭素、ホウ素およびジルコニウムのいずれかを添加したものを適用した。
【0105】
【表12】
JP0004222540B2_000013t.gif【0106】
表12に、実施例および比較例の合金組成を示している。実施例の試料No.60は0.1%以下の炭素を含有し、試料No.61は0.05%以下のホウ素を含有し、試料No.62は0.1%以下のジルコニウムを含有する合金である。これに対し、比較例のNo.63は炭素、ホウ素およびジルコニウムのいずれも含まない合金である。
【0107】
実施例、比較例とも引抜き法により丸棒形状の単結晶試験片を作製した。つづいて塩酸および過酸化水素水の混合液にてエッチングを行い、試験片にバイグレインが生成している試験材を選び、図6に示すシーケンスに従い熱処理を行った。その後、バイグレインの部位がクリープ試験片のゲージ間に入るように試験片を加工し、温度1100℃、応力137MPaの大気雰囲気下でクリープ破断試験を行い、破断寿命および伸び,絞りを測定した。
【0108】
【表13】
JP0004222540B2_000014t.gif【0109】
表13に試験結果を示している。この表13に示したように、炭素、ボロンまたはジルコニウムを添加した実施例の試料No.60,No.61,No.62は、これらを添加していない比較例の試料No.63に対し、高いクリープ強度を有し、結晶粒界が強化されていることが認められた。
【0110】
以上の結果から、本実施形態によれば、炭素、ホウ素またはジルコニウムを添加することにより、単結晶超合金に欠陥として生成する双晶、高傾角粒界の粒界強度の向上に有効であることが確認できた。
【0111】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係るNi基単結晶超合金およびその製造方法によれば、優れた高温強度および組織安定性が得られる。また、Ni基単結晶超合金をガスタービン動翼および静翼などに適用することにより、ガスタービンの効率向上に大きく寄与できるガスタービン部品を得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態における、実施例および比較例の熱処理シーケンスを示す図。
【図2】高温時効試験後における、実施例の合金の断面組織を示す写真。
【図3】高温時効試験後における、比較例の合金の断面組織を示す写真。
【図4】本発明の第2実施形態における、熱処理シーケンスを示す図。
【図5】本発明の第3実施形態における、実施例および従来例のクリープ特性を比較する図。
【図6】本発明の第5実施形態における、実施例および比較例の熱処理シーケンスを示す図。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5