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明細書 :基体表面に一方向に配向したα-ヘリックス構造を有する定配序ペプチド集合体薄膜

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3834695号 (P3834695)
公開番号 特開2003-113260 (P2003-113260A)
登録日 平成18年8月4日(2006.8.4)
発行日 平成18年10月18日(2006.10.18)
公開日 平成15年4月18日(2003.4.18)
発明の名称または考案の名称 基体表面に一方向に配向したα-ヘリックス構造を有する定配序ペプチド集合体薄膜
国際特許分類 C08J   5/18        (2006.01)
C08G  69/10        (2006.01)
G02F   1/361       (2006.01)
FI C08J 5/18 CFJ
C08G 69/10
G02F 1/361
請求項の数または発明の数 6
全頁数 9
出願番号 特願2001-308428 (P2001-308428)
出願日 平成13年10月4日(2001.10.4)
審査請求日 平成16年9月8日(2004.9.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
発明者または考案者 【氏名】樋口 真弘
【氏名】田口 和宏
【氏名】古賀 智之
【氏名】木下 隆利
個別代理人の代理人 【識別番号】100110168、【弁理士】、【氏名又は名称】宮本 晴視
審査官 【審査官】大熊 幸治
参考文献・文献 特開平05-307179(JP,A)
特開2001-049006(JP,A)
調査した分野 C08J 5/18
C08G 69/00- 69/50
G02F 1/35- 1/39
特許請求の範囲 【請求項1】
基体表面に形成した自己組織化単分子膜を構成するアミノ酸固相重合可能な末端を有する分子末端にアミノ酸を逐次重合させることにより得られる重合度10以上のポリペプチド鎖を持つ分子集積体よりなる定配序分子集合体薄膜。
【請求項2】
ポリペプチド鎖が主としてα-ヘリックス構造を持つことを特徴とする請求項1に記載の定配序分子集合体薄膜。
【請求項3】
基体表面上に自己組織化単分子膜を形成するアミノ酸の逐次重合が可能な分子が一方の末端にアミノ基あるいはカルボキシル基を有し、他端に基体表面と結合を形成する基を有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の定配序分子集合体薄膜。
【請求項4】
基体表面に形成した自己組織化単分子膜がアミノ酸固相重合可能な末端を有する分子とアミノ酸固相重合可能な末端を有しない分子との混合自己組織化単分子膜であることを特徴とする請求項1、2または3に記載の定配序分子集合体薄膜。
【請求項5】
ポリペプチド鎖の特定部位に各種官能基が導入可能であることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の定配序分子集合体薄膜。
【請求項6】
ポリペプチド側鎖にイオン透過路となる親水性基あるいは、電子移動のためのドナー及びアクセプターとなる金属錯体が導入されていることを特徴とする請求項5に記載の各定配序分子集合体薄膜。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、非線形光学素子やベクトル的な物質・電子移動機能を有する情報伝達素子を構築するための、一定方向に配向したポリペプチド鎖を有する定配序分子集積薄膜に関する。
定配序分子集積薄膜とは、分子の配置、配置された位置での分子の立体的配位が均一性および安定性をもって形成された単分子厚の膜、ナノレベルの膜を意味する。
【0002】
【従来の技術】
α-ヘリックス構造を有するポリペプチドは、その分子軸方向に大きなマクロダイポール有することから非線形光学材料への応用に関し注目され(文献1:Whitesell,J.K.;Chang.H.K,Mol.Cryst.Liq,Cryst.Sci.Technol.,Sect A 1994,240.251、)、同分子が面内配位した液晶材料(文献2-1:Watanabe.J.;Takahashi,Y.Macromolecules 1991,24,3423,2-2:Subramanian.R.;Wittebort,R.J,;DuPre,D.B.,J.Chem.Phys 1982.77,4694)や、その二次構造転移を利用した刺激応答材料(文献3-1;Kinoshita,T,;Sato.M.;Takizawa,A.,Tsujita,Y.,J.Am.Chem.Soc.1986,108,6399,3-2;Pieroni,O.;Houben,J,K,;Fissi,A.;Constantino,P.;Ciardelli,F.,J,Am.Chem.Soc.1980,102,5913)への応用研究がされてきた。また、特定個所にエネルギードナーとアクセプターを配した定配序ポリペプチドでは、分子軸方向に沿った効率的なエネルギー移動(文献4-1;Kuragaki,M.;Sisido,M.,J.Phys.Chem. 1996,100,16019;4-2;Sisido,M.;Tanaka,R.;Inai,Y.;Imanishi,Y.,J.Am.Chem.Soc.1989,111,6790)が報告されている。
【0003】
これらの機能をより効率よく利用するためには、α-ヘリックス分子を膜面に対し垂直に配向させる技術の確立が望まれる。これまでにポリペプチド集積体の構築法に関して種々報告されてきた。
例えば、界面に垂直配向させたポリペプチドをLB法により基板上に累積させる手法(文献5-1;Kishihara, K.; Kinoshita, T.; Mori. T.; Okahata, M., Chem. Lett. 1998, 951; 5-2;Doi, T.; Kinoshita, T.; Tsujita, Y.; Yoshimizu, H., Bull. Chem. Soc. Jpn. 2001, 74, 421 )や、基板上に形成した自己組織化単分子膜とポリペプチド末端の相互作用により基板上に吸着固定化(文献6-1;Miura,Y.;Kimura,S.;Imanishi,Y.;Umemura,J.Langmuir 1999,15,1155,6-2;Miura,Y.;Kimura,S.;Imanishi,Y.;Umemura,J.Langmuir 1998,14,2761)する手法が報告されている。
しかしながら、これらの手法により得られるポリペプチド集積体は、その力学的安定性という観点から満足できる状態にない。また、末端にチオールを有するポリペプチドを用いた金表面での自己組織化単分子膜の構築があるが、この手法では、金表面への吸着の際にペプチド分子の持つ軸方向の大きなダイポールモーメントによって分子が互いに入れ子のような状態となりポリペプチドの分子配向がランダムとなるためにマクロダイポールが相殺されて組織化(ランダム配列構造)されることが報告されており(文献7-1;Worley,C,G;Linton,R.W;Samulski,E.T,Langmuir 1995,11,3805,7-2;Niwa,M.;Murata,T.;Kitamatsu,M.,Matsumoto,M.;Higashi,N.,J.Mater.Chem.1999,9,343,7-3;Niwa,M.;Morikawa,M.,Higashi,N., Langmuir 1999,15,5088))マクロダイポールの配向制御という観点から、満足状態にない。更に開始剤を固定した基板上でのアミノ酸NCA(N-カルボキシ アミノ酸無水物)のグラフト重合(文献8-1;Whitesell,J.K.;Chang,H.K.,Science 1993,261,73.,8-2;Whitesell,J.K.;Chang,H.K.;Whitesell,C.S.Angew.Chem.Int.Ed.Engl.1994,33,873)が報告されているが、ポリペプチドの一次構造、すなわち、特定部位に官能基を導入するという、すなわち、位置特異性を持つという観点からは満足できる状態にない。
【0004】
一方、シロキシ基を有する分子はガラス表面に、またチオール基を有する分子は金などの金属膜表面に配位結合などにより結合し、該分子の自己組織化により単分子膜を形成することが知られている。その際前記シロキシ基、チオール基などを有する分子として他端にカルボキシル基、ヒドロキシル基〔文献11:Cary Miller,Pierre Cuendet,and Michael Gratzel, J.Phys.Chem.95,877-886,(1991)〕を有する化合物を用い、前記自己組織化により形成した単分子膜の前記カルボキシル基などにチトクロームなどを結合させて生物学的な電子移動などの観察に利用する可能性を発表している〔文献12:Shihus Song,Rose A.Clark,and Edmond F.Bowden,Michael J.Tarlov,J.Phys.Chem.97,6564-6574,(1993)〕。 ただ、前記末端カルボキシル基にアミノ酸を重合させることに言及する記載はない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ポリペプチドの一次構造およびマクロダイポールの配向が制御されたポリペプチド鎖を持つ分子集合体からなる薄膜を基体上に構築する手法を提供するものである。前記分子の自己組織化による配向膜の形成の考えを基本にして、自己組織化膜の構成の配向したポリペプチド鎖の形成特性を検討する中で、ペプチド合成のための開始点となる官能基、例えば、アミノ基あるいはカルボキシル基を持つ分子を自己組織化膜において適当な濃度範囲で配置することにより、そのような特定の配置で固定した前記官能基にアミノ酸の逐次重合を行うことで、形成されたポリペプチド鎖が膜面に対しほぼ垂直配向し、そのマクロダイポールが一方向に制御されたポリペプチド鎖を持つ分子集積体薄膜が構築できること、および該ポリペプチド鎖の一次構造が制御可能であることを見出し、前記課題を実現することができた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、基体表面に形成した自己組織化単分子膜を構成するアミノ酸固相重合可能な末端を有する分子末端にアミノ酸を逐次重合させることにより得られる重合度10以上のポリペプチド鎖を持つ分子集積体よりなる定配序分子集合体薄膜である。好ましくは、ポリペプチド鎖が主としてα-ヘリックス構造を持つことを特徴とする前記定配序分子集合体薄膜であり、より好ましくは、基体表面上に自己組織化単分子膜を形成するアミノ酸の逐次重合が可能な分子が一方の末端にアミノ基あるいはカルボキシル基を有し、他端に基体表面と結合を形成する基を有する化合物であることを特徴とする前記定配序分子集合体薄膜であり、更に好ましくは、基体表面に形成した自己組織化単分子膜がアミノ酸固相重合可能な末端を有する分子とアミノ酸固相重合可能な末端を有しない分子との混合自己組織化単分子膜であることを特徴とする前記各定配序分子集合体薄膜であり、一層好ましくは、ポリペプチド鎖の特定部位に各種官能基が導入可能であることを特徴とする前記各定配序分子集合体薄膜であり、より一層好ましくは、ポリペプチド側鎖にイオン透過路となる親水性基あるいは、電子移動のためのドナー及びアクセプターとなる金属錯体が導入されていることを特徴とする前記の各定配序分子集合体薄膜である。
【0007】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
A.本発明の特徴を図面を参照しながら説明する。
本発明のポリペプチド鎖を持つ分子集積体よりなる定配序分子集合体薄膜の基体を構成するものとしては、アルカンチオールの自己組織化単分子膜が形成可能な金、銀、白金、銅などの蒸着基体、シランカップリング剤による自己組織化単分子膜が形成可能なガラス基体またはゾルーゲル法などによりガラス層を形成した基体などを挙げることができる。
前記自己組織化単分子膜には、(A)アルカンチオールあるいはシランカップリング剤と、(B)アミノ酸の逐次重合の開始点となる末端を構成するアミノ基あるいはカルボキシル基を有するアルカンチオールあるいはシランカップリング剤とから構成される混合自己組織化単分子膜が用いられる。
(B)を構成する化合物としては、11-アミノ-1ウンデカンチオール、8-アミノ-1-オクタンチオール、6-アミノ-1-ヘキサンチオール、10-カルボキシ-1-デカンチオール、7-カルボキシ-1-ヘプタンチオール、5-カルボキシ-1-ペンタンチオール、8-アミノ-オクチルトリエトキシシラン、6-アミノ-ヘキシルトリエトキシシラン、7-カルボキシ-ヘプチルトリエトキシシラン、5-カルボキシ-ペンチルトリエトキシシランなどを挙げることができる。好ましくは、11-アミノ-1ウンデカンチオール、10-カルボキシ-1-デカンチオール、8-アミノ-オクチルトリエトキシシラン、7-カルボキシ-ヘプチルトリエトキシシランである。
(A)を構成する化合物としては、n-ブチルジスルフィド、n-プロピルジスルフィドなどのジスルフィド(基体表面とはチオール基として結合するので、2価の基ということができる。)、2-アミノエタンチオール、n-ブチルトリエトキシラン、n-プロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。好ましくは、n-プロピルジスルフィド、n-プロピルトリエトキシシランである。
【0008】
逐次重合に用いるアミノ酸にはアミノ酸の固相重合で用いられる天然および非天然アミノ酸のFmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)あるいはBoc(t-ブチルオキシカルボニル)誘導体が用いられる。主成分としてはα-ヘリックス形成能の高いアラニン(Ala)、グリシン(Gly)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、グルタミン酸エステル類などのグルタミン(Glu)酸誘導体、アミノイソ酪酸、側鎖保護リジン類等が好ましい。これは得られるポリアミノ酸の二次構造をα-ヘリックス構造にするためである。(α-ヘリックスは分子軸方向に大きなダイポールモーメントを有することと、それが剛直な構造であるために、同分子が形成する集合体の官能基の空間配置が固定できるとの考からである。)
【0009】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
実施例1
金蒸着ガラス基板を、11-アミノ-ウンデカンチオール(C11N)とn-ブチルジスルフィド(C4)を1:4.5のモル比で含む〔100%C11Nを用いた場合(例示化合物B)、立体障害によりアミノ酸重合が進行しなく、また、配向した構造を形成できない。したがって、前記アミノ酸重合可能な末端を有する分子が適当に配置された自己組織化分子膜を形成させるように、希釈剤としてC4(例示化合物A)を添加する。〕1mMのエタノール溶液に24時間浸漬し、金表面にアミノ基を有する自己組織化単分子膜を形成した。同基板をエタノール溶液中で5回リンスし、次の反応に用いた。
【0010】
前記工程で得られたアミノ基を有する自己組織化単分子膜を固定した金基板表面でのアミノ酸の逐次重合過程をモニターするために、同基板を表面プラズモン共鳴装置(日本レーザー電子製、SPR-670B型)に装着した。Fmoc(9-フルオレニルメチルオキシカルボニル)-Leuの活性エステルの合成は以下のように行った。Fmoc-Leuを、BOP(ベンゾトリアゾール-1-イロキシトリス(ジメチルアミノ)-ホスフォニウム ヘキサフルオロフォスフェート)、NMM(N-メチルモルホリン)、HOBt(1-ヒドロキシ-1H-ベンゾトリアゾール)の共存下でDMFに溶解させ、5分間攪拌した。Fmoc-Leuの濃度は1mMとし、Fmoc-Leu,BOP,NMM,HOBtのモル比は1:1:1.5:1とした。〔文献:Hudson, D.; J. Org. Chem., 53, 617-624 (1988), Castro, B.; Dormoy, J. R.; Evin, G.; Ogura.; Tet. Lett., 1219 (1975)〕得られたFmoc-Leu活性エステルのDMF溶液を流速15μL/分で基板表面に流し、基板表面のアミノ基とFmoc-Leu活性エステルの縮合反応を行った。約100分後に表面プラズモン共鳴角度変化、Δθ、が平衡値に達し、縮合反応の終了を確認した。基板表面にDMFを流速15μL/分で基板表面に流し、同基板表面を2時間洗浄した後、体積比で20%のピペラジンを含むDMF溶液を40分間、流速15μL/分で基板表面に流し、末端のFmoc基を脱保護した。この後、DMFを流速15μL/分で1夜流し基板表面を十分に洗浄した。この一連の反応を1サイクルとし、16サイクル反応を行い、それぞれの反応サイクル終了後のΔθをプロットした(●)ものが図1である。
【0011】
比較のために、C11N単独の自己組織化単分子膜表面での同様の反応サイクルを行い、そのΔθの変化も合わせてプロットした(○)。Δθは金表面に形成されたポリペプチド薄膜の膜厚に比例することが知られている。C11N/C4の自己組織化単分子膜上でのΔθは反応サイクルに比例し大きな増加を示し、基板上でのアミノ酸の逐次重合が定量的に進行していることが分かる。
【0012】
一方、C11N単独の自己組織化単分子膜上でのΔθは非常に小さく、2サイクル以降の反応では飽和に達しており、反応が進行しなかった。この結果は、アミノ酸逐次重合の開始点となるアミノ基が表面に分散して固定化され、単位表面積に存在する密度〔(B)/(A)比〕が適当な値になければ逐次重合反応が許容しうる速度で進行しないことが確認された。〔基板表面のアミノ基の密度に関しては、アルキル基(自己組織化単分子膜を形成する化合物A,B)の断面積は20Å2で、ヘリックスの直径は12Åである事から、ペプチドが6方最密充填した場合の最適な化合物BとAの比は、おおよそ1:5と見積もられ(アルキル鎖の比で計算しているので実施例の化合物、ジスルフィドの場合はモル比で1:2.5となる。)、この値は限界値(ペプチド間の間隙が最小、すなわち最も垂直配向)になると推定される。しかしながら、この限界値においては、重合性は減少する可能性がある。従って、ここでは、混合比は1:9(化合物BとAのモル比で1:4.5)として実施した。〕
【0013】
C11N/C4混合自己組織化単分子膜上で形成されたLeu 16merの二次構造をFTIR-RASスペクトル(高感度反射フーリエ変換赤外吸収スペクトル、パーキンエルマー社製 Spectrum 2000)のアミドI(C=O伸縮振動)およびアミドII(N-H変角振動)吸収帯の波数より評価した(図2)。1654cm-1および1545cm-1にα-ヘリックス構造に基づく吸収が確認され、得られたLeu 16merはα-ヘリックス構造を有していることが分かる。
【0014】
次に、C11N/C4混合自己組織化単分子膜上で形成されたLeu 16merの膜厚をマルチソルベント法(この方法は、屈折率の異なる溶液中での表面プラズモン共鳴角を測定することにより、次式を用いて、基板表面に形成された薄膜の屈折率及び膜厚を算出する手法である。
【0015】
【数1】
JP0003834695B2_000002t.gif【0016】
ここでdはサンプルの膜厚、λは入射光の波長、qs、qrは金-サンプル、及び金膜のSPR共鳴角、εmは金の誘電率、np、ns、nは、プリズム、溶媒、サンプルの屈折率をそれぞれ示す。)を用いた表面プラズモン共鳴測定(文献9;Peterlinz,K.A,;Georgiadis,R.,LANGMUIR,1996,12,4731)より見積もった。図3にC11N/C4-poly(Leu)16およびC11N/C4自己組織化単分子膜の膜厚を示した。図3よりC11N/C4-poly(Leu)16相の膜厚は、2.22nmと求まった。この値はα-ヘリックス構造をとるpoly(Leu)16(ロッド構造を構成する)が基板の法線に対し22゜傾いて配向した場合の値に相当する。さらに、先のFTIR-RASスペクトルのアミドIおよびアミドII吸収帯をガウス-ローレンツ分布(9:1)を仮定し波形分離を行い、α-ヘリックス構造に基づくアミドIおよびアミドIIの吸収強度の比よりα-ヘリックスの傾き角(文献10;Gremlich,H.U.;Fringel,U.P,;Schwyzer,R.,Biochemistry,1983,22,4257)を求めたところ、25.3゜(ペプチドがα-ヘリックス構造をとった場合のアミドI及びアミドII遷移モーメントのヘリックス軸に対する角度が既知であり、また、RAS測定は基板に対し垂直な方向の遷移モーメントの吸収が強調されるので、次式から、ヘリックス軸の傾き角が求まる。
【0017】
【数2】
JP0003834695B2_000003t.gif【0018】
ここで、γはα-ヘリックスの配向角、DobsはアミドIとアミドIIの吸収強度の比、θ1、θ2はそれぞれ、ヘリックス軸とアミドI及びアミドIIの遷移モーメントとの挟角(θ1=39゜、θ2=75゜)(図2挿入図参照)、Cはスケーリング定数で、Poly(Leu)のKBrペレット中での透過スペクトルのAI/AII値、1,49を用いた。)と求まり、膜厚より求めた値とよい一致を示した。
【0019】
本発明者らが調製したペプチド鎖を持つ分子集積体薄膜の構造モデルを図4に示した。自己組織化単分子膜中のアミノ基を開始点とするアミノ酸の逐次重合で得られるペプチド鎖を持つ分子集積体よりなる定配序分子集合体薄膜、ここでは、ペプチド鎖を持つ分子集積体を構成分子とする単分子膜について説明する。前記Aは、重合開始点のアミノ基の立体障害を下げ、重合可能にするために用いているのであって、あくまでもペプチドのダイポールが一方向に揃い、かつ、ペプチドのα—ヘリックス軸が基板の法線に対しほぼ垂直に立って形成するための自己組織化可能な分子である。そのペプチド鎖が膜面に対しほぼ垂直に配向し、そのマクロダイポールが揃った構造は、前記従来の自己組織化単分子膜(SAM)により、ペプチド分子を基板上に吸着固定化する手法と異なり、1残基づつ縮合により基体表面に形成した自己組織化単分子膜を構成するアミノ酸の逐次重合が可能な末端にポリペプチド鎖を形成するので、必然的にダイポールの向きがそろう。特に、逐次重合のため、ペプチド鎖の一次構造が制御できるという利点がある。
【0020】
また、前記ペプチド鎖の組織化力に関しては、ペプチド分子間の分子間力、ポリ(ロイシン)の場合には、ロイシンジッパによるものと推定される。
更に、垂直配向に関しては、基板表面に形成した自己組織化単分子膜を構成するアミノ基などの、アミノ酸固相重合を可能とする末端構造を持つ分子の密度が関係することが推測されることは前記したとおりである。
【0021】
本発明のアミノ酸の逐次重合反応によりポリペプチド鎖の形成に利用される逐次重合反応は、通常のアミノ酸の固相重合法〔R.B. Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85,2149(1963)〕が適用できる。例えば、 ペプチド合成の基礎と実験(丸善株式会社)に記載の方法を適用でき、基体からの任意の位置に特定の官能基を導入可能であり、今後、ペプチド鎖の光学活性を利用した非線形光学素子や、ペプチド鎖の特定部位に導入したドナー・アクセプター間のペプチド鎖のマクロダイポールに沿ったベクトル的な電子移動等の情報変換素子としての応用が期待できることは明かである。
【0022】
【発明の効果】
以上述べたように、基体表面に形成する自己組織化単分子膜の構成、換言すれば、構成する分子および分子の配合比を選択することにより、アミノ酸の逐次重合が制御され、整列した配向のポリペプチド鎖を持ち、該整列した配向に規制された前記機能基の導入により種々の機能を持つ分子集積体よりなる定配序分子集合体薄膜を構築できる薄膜を提供できる、という優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 表面プラズモン共鳴角度変化Δθとアミノ酸縮合度との相関
【図2】 Leu 16mer二次構造のFTIR-RASスペクトル(高感度反射フーリエ変換赤外吸収スペプトル)(パーキンエルマー社製 Spectrum2000)
【図3】 マルチソルベント法を用いた表面プラズモン共鳴測定から見積もったC11N/C4-poly(Leu)16およびC11N/C4自己組織化単分子膜の膜厚
【図4】 本発明のペプチド集積体薄膜の構造モデル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3