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明細書 :コールドスプレー質量分析装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3616780号 (P3616780)
公開番号 特開2003-157793 (P2003-157793A)
登録日 平成16年11月19日(2004.11.19)
発行日 平成17年2月2日(2005.2.2)
公開日 平成15年5月30日(2003.5.30)
発明の名称または考案の名称 コールドスプレー質量分析装置
国際特許分類 H01J 49/10      
G01N 27/62      
H01J 49/04      
G01N 30/72      
FI H01J 49/10
G01N 27/62 G
G01N 27/62 X
H01J 49/04
G01N 30/72 C
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2001-354440 (P2001-354440)
出願日 平成13年11月20日(2001.11.20)
審査請求日 平成14年12月16日(2002.12.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
発明者または考案者 【氏名】山口健太郎
【氏名】小林達次
個別代理人の代理人 【識別番号】100092495、【弁理士】、【氏名又は名称】蛭川 昌信
審査官 【審査官】村田 尚英
参考文献・文献 特開平05-074408(JP,A)
特開平07-029542(JP,A)
特開平06-310088(JP,A)
特開昭63-218143(JP,A)
特許第3137953(JP,B2)
実公昭49-026700(JP,Y1)
調査した分野 H01J 49/10
H01J 49/04
G01N 27/62
特許請求の範囲 【請求項1】
試料溶液を導出するニードルパイプと、
前記ニードルパイプと同軸形状をなし、ネブライジングガスを通すシース管と、
ネブライジングガス源と、
前記ネブライジングガス源のネブライジングガスを前記シース管に導入するためのガス流路に設けられ、ネブライジングガスを冷却する冷却手段と、
前記冷却手段とシース管との間のガス流路に熱的に接続されるヒーターブロックに取り付けられ、前記冷却手段により冷却されたネブライジングガスを加熱するためのヒーターと、
前記ヒーターブロックの温度を検出し、前記ヒーターにより加熱を受けたネブライジングガスの温度に対応した出力を得る温度センサーとを備え、
前記ネブライジングガスを任意の温度に設定可能にしたことを特徴とするコールドスプレー質量分析装置であって、
前記シース管のガス出口におけるネブライジングガス温度Tと、前記ヒーターブロックの温度tとの関係を記憶した温度テーブルと、
前記ネブライジングガス温度Tを指定するための温度指定手段と、
前記温度センサーの出力と前記温度テーブルに基づき、前記ネブライジングガス温度Tが前記指定手段において指定された温度になるように、前記ヒーターを制御する加熱制御手段と、
を備えたことを特徴とするコールドスプレー質量分析装置。
【請求項2】
試料溶液を導出するニードルパイプと、
前記ニードルパイプと同軸形状をなし、ネブライジングガスを通すシース管と、
ネブライジングガス源と、
前記ネブライジングガス源のネブライジングガスを前記シース管に導入するためのガス流路に設けられ、ネブライジングガスを冷却する冷却手段と、
前記冷却手段とシース管との間のガス流路に熱的に接続されるヒーターブロックに取り付けられ、前記冷却手段により冷却されたネブライジングガスを加熱するためのヒーターと、
前記ヒーターにより加熱を受けたネブライジングガスの温度に対応した出力を得る温度センサーとを備え、
前記ネブライジングガスを任意の温度に設定可能にしたことを特徴とするコールドスプレー質量分析装置であって、
前記ヒーターブロックは、前記冷却手段から発生する冷媒のガス雰囲気中に配置されることを特徴とするコールドスプレー質量分析装置。
【請求項3】
試料溶液を導出するニードルパイプと、
前記ニードルパイプと同軸形状をなし、ネブライジングガスを通すシース管と、
ネブライジングガス源と、前記ネブライジングガス源のネブライジングガスを前記シース管に導入するためのガス流路に設けられ、ネブライジングガスを冷却する冷却手段と、
前記冷却手段とシース管との間のガス流路に配置され、前記冷却手段により冷却されたネブライジングガスを加熱するためのヒーターと、
前記ヒーターにより加熱を受けたネブライジングガスの温度に対応した出力を得る温度センサーとを備え、
前記ネブライジングガスを任意の温度に設定可能にしたコールドスプレー質量分析装置であって、
前記ニードルパイプの先端から噴霧された試料溶液の荷電液滴が通過する通路を有し、前記通路を通過する荷電液滴から溶媒を取り除く脱溶媒ブロックと、
前記脱溶媒ブロックを冷却するための冷却手段と、
前記脱溶媒ブロックを加熱するための加熱手段と、
前記脱溶媒ブロックの温度を検出する温度センサーと、
を備えたことを特徴とするコールドスプレー質量分析装置。
【請求項4】
前記ヒーターブロックは、前記冷却手段から発生する冷媒のガス雰囲気中に配置されることを特徴とする請求項記載のコールドスプレー質量分析装置。
【請求項5】
前記ニードルパイプの先端から噴霧された試料溶液の荷電液滴が通過する通路を有し、前記通路を通過する荷電液滴から溶媒を取り除く脱溶媒ブロックと、
前記脱溶媒ブロックを冷却するための冷却手段と、
前記脱溶媒ブロックを加熱するための加熱手段と、
前記脱溶媒ブロックの温度を検出する温度センサーと、
を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のコールドスプレー質量分析装置。
【請求項6】
前記ネブライジングガスの冷却と、前記脱溶媒ブロックの冷却とを、共通の冷却手段を用いて行うようにしたことを特徴とする請求項3または5記載のコールドスプレー質量分析装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エレクトロスプレー質量分析装置に関し、特に、低温で試料をイオン化させることのできるコールドスプレー質量分析装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
強い電界の中に置かれた電気伝導性の液体が、電界の作用によって毛管の先端部から自然に噴霧する現象は、エレクトロスプレー(静電噴霧)と呼ばれ、古くから知られていた。1980年代前半、このエレクトロスプレーという現象が試料溶液の質量分析に応用され、エレクトロスプレー質量分析装置として広く用いられるようになった。
【0003】
図1は、従来のエレクトロスプレー質量分析装置を示したものである。図中、51は、液体クロマトグラフ(LC)装置や溶液溜などの試料溶液供給源である。試料溶液供給源51の試料溶液(例えばLC移動相)は、図示しないポンプなどによって毛管状のキャピラリー52に送られる。このキャピラリー52は、金属で作られており、内径30~100μm、外径150~250μmである。キャピラリー52に送られた試料溶液は、LCポンプまたは毛管現象により駆動されて、キャピラリー52の内部に吸い上げられ、該キャピラリー52の先端部まで到達する。
【0004】
キャピラリー52と質量分析装置53の対向電極54の間には、数kVの高電圧が印加されていて、強い電界が形成されている。この電界の作用で、キャピラリー52の中の試料溶液は、大気圧下、キャピラリー52と対向電極54の間の空間に静電噴霧され、荷電液滴となって大気中に分散する。このときの試料溶液の流量は、毎分1~10マイクロリットルである。このとき生成する荷電液滴は、試料分子の回りに溶媒分子が集まってクラスター状になった帯電粒子なので、熱を加えて溶媒分子を気化させて取り除くと、試料分子のイオンだけにすることができる。
【0005】
荷電液滴から試料イオンを作る方法としては、キャピラリー52と対向電極54の間の空間に70℃程度に加熱した窒素ガスを供給し、そこに荷電液滴を静電噴霧することによって液滴の溶媒を気化させる方法や、質量分析装置53の対向電極54に設けられたサンプリング・オリフィス55を80℃程度に加熱して、その輻射熱、あるいは熱伝導で荷電液滴の溶媒を気化させる方法などがある。これらの方法をイオン・エバポレーションと呼んでいる。
【0006】
イオン・エバポレーションによって生成した試料イオンは、対向電極54に設けられたサンプリング・オリフィス55から質量分析装置53の内部に取り込まれる。大気圧下の試料イオンを真空の質量分析装置53に導入するために、差動排気壁が構成される。すなわち、サンプリング・オリフィス55とスキマー・オリフィス56とで囲まれた区画は、図示しないロータリー・ポンプ(RP)で200Pa程度に排気されている。また、スキマー・オリフィス56と隔壁57とで囲まれた区画は、図示しないターボ・モレキュラー・ポンプ(TMP)で1Pa程度に排気されている。そして、隔壁57の後段は、TMPによって10-3Pa程度に排気され、質量分析部58が置かれている。
【0007】
また、サンプリング・オリフィス55とスキマー・オリフィス56で囲まれた低真空の区画には、試料イオンの拡散を防ぐためのリングレンズ59が置かれていて、試料イオンが正イオンの場合には正電圧、試料イオンが負イオンの場合には負電圧が印加されるようになっている。また、スキマー・オリフィス56と隔壁57で囲まれた中真空の区画には、試料イオンを質量分析部58まで導くためのイオンガイド60が置かれ、高周波電圧が印加されている。
【0008】
また、図1には図示されていないが、最近のシステムでは、LCの移動相など10~1000マイクロリットル/分の大流量の試料にも対応できるようにするために、キャピラリー52の出口周囲にネブライジングガスを流せるシース管を設け、電界力だけでは霧化しきれない10マイクロリットル以上の大流量の試料溶液を、ネブライジングガスの力によって強制的かつ完全に霧化させるように構成した新しいタイプのエレクトロスプレー・イオン源も登場している。
【0009】
エレクトロスプレー・イオン源の特徴は、試料分子のイオン化に際して、高熱をかけたり高エネルギー粒子を衝突させたりしない非常にソフトなイオン化法であるという点にある。従って、ペプチド、タンパク質、核酸などの極性の強い生体高分子をほとんど破壊することなく、多価イオンとして容易にイオン化することができる。また、多価イオンなので、分子量が1万以上のものでも、比較的小型な質量分析装置で測定することが可能である。
【0010】
ところが、最近、エレクトロスプレー・イオン化法のような非常にソフトなイオン化法であっても、イオン化の際に、試料イオンの分子構造が破壊されてしまうというサンプルの例が報告されるようになった。それは、例えば、巨大な有機金属錯体、例えば、プラチナなどの遷移金属錯体の自己集合によって高度な秩序を備えた超分子化合物などの例である。これらの金属錯体は、イオンの衝撃や熱に対してのみならず、ソフトなイオン化法であるエレクトロスプレーによるイオン化に対しても不安定であり、イオン気化の際に分子構造の破壊が起きる。
【0011】
この問題を解決するために、最近、エレクトロスプレー・イオン源に供給されるネブライジングガスや荷電液滴の脱溶媒室などを液体窒素などの冷媒で冷却し、イオン化の際に試料イオンに熱が加わることを極力避けるようにした新しいタイプのエレクトロスプレー質量分析装置が開発された(特許第3137953号公報参照)。この方法は、コールドスプレー・イオン化法と呼ばれ、図2に示すように、脱溶媒室に直接、液体窒素を吹き付けることにより、初めて、前述のような不安定な自己集合有機金属錯体などの精密な質量数の測定を可能にするものである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このようなコールドスプレー質量分析装置の特徴は、何と言ってもネブライジングガスや脱溶媒室を液体窒素などの冷媒で冷却し、荷電液滴に熱が加わることを極力避けるようにしたところにある。
【0013】
しかしながら、図2の装置では、シース管のガス出口におけるネブライジングガスの温度を、シース管周辺の外部表面に付着する霜の付き具合等から判断しており、その求められた温度はきわめて不正確であった。
【0014】
また、図2の装置では、シース管のガス出口におけるネブライジングガスの温度を変更するのに、液体窒素中に浸すガス管の長さを調整するしかなかったので、測定に最適な温度領域にネブライジングガス温度を設定することが難しく、その設定に時間がかかるという問題があった。
【0015】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ネブライジングガスの温度制御が容易な、使い勝手の良いコールドスプレー質量分析装置を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために本発明のコールドスプレー質量分析装置は、試料溶液を導出するニードルパイプと、前記ニードルパイプと同軸形状をなし、ネブライジングガスを通すシース管と、ネブライジングガス源と、前記ネブライジングガス源のネブライジングガスを前記シース管に導入するためのガス流路に設けられ、ネブライジングガスを冷却する冷却手段と、前記冷却手段とシース管との間のガス流路に熱的に接続されるヒーターブロックに取り付けられ、前記冷却手段により冷却されたネブライジングガスを加熱するためのヒーターと、前記ヒーターブロックの温度を検出し、前記ヒーターにより加熱を受けたネブライジングガスの温度に対応した出力を得る温度センサーとを備え、前記ネブライジングガスを任意の温度に設定可能にしたことを特徴とするコールドスプレー質量分析装置であって、前記シース管のガス出口におけるネブライジングガス温度Tと、前記ヒーターブロックの温度tとの関係を記憶した温度テーブルと、前記ネブライジングガス温度Tを指定するための温度指定手段と、前記温度センサーの出力と前記温度テーブルに基づき、前記ネブライジングガス温度Tが前記指定手段において指定された温度になるように、前記ヒーターを制御する加熱制御手段とを備えたことを特徴とする。
また、本発明は、試料溶液を導出するニードルパイプと、前記ニードルパイプと同軸形状をなし、ネブライジングガスを通すシース管と、ネブライジングガス源と、前記ネブライジングガス源のネブライジングガスを前記シース管に導入するためのガス流路に設けられ、ネブライジングガスを冷却する冷却手段と、前記冷却手段とシース管との間のガス流路に熱的に接続されるヒーターブロックに取り付けられ、前記冷却手段により冷却されたネブライジングガスを加熱するためのヒーターと、前記ヒーターにより加熱を受けたネブライジングガスの温度に対応した出力を得る温度センサーとを備え、前記ネブライジングガスを任意の温度に設定可能にしたことを特徴とするコールドスプレー質量分析装置であって、前記ヒーターブロックは、前記冷却手段から発生する冷媒のガス雰囲気中に配置されることを特徴とする。
また、本発明は、試料溶液を導出するニードルパイプと、前記ニードルパイプと同軸形状をなし、ネブライジングガスを通すシース管と、ネブライジングガス源と、前記ネブライジングガス源のネブライジングガスを前記シース管に導入するためのガス流路に設けられ、ネブライジングガスを冷却する冷却手段と、前記冷却手段とシース管との間のガス流路に配置され、前記冷却手段により冷却されたネブライジングガスを加熱するためのヒーターと、前記ヒーターにより加熱を受けたネブライジングガスの温度に対応した出力を得る温度センサーとを備え、前記ネブライジングガスを任意の温度に設定可能にしたコールドスプレー質量分析装置であって、前記ニードルパイプの先端から噴霧された試料溶液の荷電液滴が通過する通路を有し、前記通路を通過する荷電液滴から溶媒を取り除く脱溶媒ブロックと、前記脱溶媒ブロックを冷却するための冷却手段と、前記脱溶媒ブロックを加熱するための加熱手段と、前記脱溶媒ブロックの温度を検出する温度センサーとを備えたことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
図3は、本発明にかかるコールドスプレー質量分析装置の一実施例を示したものである。このうち、(a)は、コールドスプレー質量分析装置を上から見た平面図を表わし、(b)は、コールドスプレー質量分析装置を横から見た側面図を表わす。
【0019】
図中1は、イオン化室である。イオン化室1の内部には、試料溶液を静電噴霧させるために高電圧が印加されたニードルパイプ2と、ニードルパイプ2の先端から静電噴霧された荷電液滴を脱溶媒化するための脱溶媒ブロック3とが設けられている。
【0020】
前記ニードルパイプ2は、そのニードルパイプ2と同軸形状をなすシース管4の中に入れられており、ニードルパイプ2とシース管4とで二重管が構成されている。このシース管4は、静電噴霧を助けるためのネブライジングガスを通すものである。そして、シース管4とニードルパイプ2は、ESIプローブ5に保持されている。
【0021】
6は液体送液ポンプであり、この液体送液ポンプ6には試料溶液が入れられている。液体送液ポンプ6は、樹脂製のパイプ7を介して前記プローブ5に接続されている。
【0022】
また、樹脂製のガス管8の一端が、プローブ5に着脱可能に取り付けられている。一方、ガス管8の他端は、金属製(たとえば銅製)のヒーターブロック9に接続されている。このヒーターブロック9には、樹脂製のガス管10の一端が接続されており、そして、ヒーターブロック9には、ガス管10からのガスを後段のガス管8に導くためのガス通路11が設けられている。ガス通路11は、その長さをかせぐために、曲がった通路に形成されている。
【0023】
また、ヒーターブロック9には、ヒーターブロック9を加熱するためのヒーター12と、ヒーターブロック9の温度を検出する温度センサー13とが埋設されており、それらは、温度コントロールユニット(加熱制御手段)14にそれぞれ接続されている。温度コントロールユニット14は、温度センサー13で検出されたヒーターブロック9の温度tを、そのユニット上の温度表示部15に表示する。また、温度コントロールユニット14は、前記ヒーター12を制御するものであり、そのユニット上には、ヒーター12の加熱量を調整するためのヒーター調整つまみ16が設けられている。
【0024】
そして、前記ガス管10の他端は、ヒーターカバー17の通し穴18,19に通されて、ガスの流量を監視するためのフローメーター20に接続されている。このヒーターカバー17は筒状に形成されており、前記ヒーターブロック9はこのカバー17の中に配置されている。また、ヒーターカバー17は、液体窒素タンク21の栓でもあり、液体窒素タンク21の口に取り付けられている。タンク21の中には液体窒素22が入れられており、前記ガス管10の一部は、図3(b)に示すように液体窒素22に浸っている。
【0025】
また、図3(b)において、23はネブライジングガス源であり、その中には、たとえば乾燥窒素が入れられている。ガス源23は、樹脂製のガス管24を介して前記フローメーター20に接続されており、そのガス管24の途中には、ガスの流量を設定するフローコントロールバルブ25が配置されている。
【0026】
一方、上述した脱溶媒ブロック3のブロック壁には、脱溶媒ブロック3を加熱するためのヒーター26と、脱溶媒ブロック3の温度を検出する温度センサー27が埋設されている。
【0027】
脱溶媒ブロック3には、荷電液滴を高温で脱溶媒するための加熱用通過穴28と、荷電液滴を低温で脱溶媒するための冷却用通過穴29とが用意されていて、ニードルパイプ2の先端の位置を、位置調整ノブ30によって、加熱用通過穴28の入り口側に配置させたり、冷却用通過穴29の入り口側に配置させたり、移動させることができるようになっている。これは、通常のエレクトロスプレー・イオン化法とコールドスプレー・イオン化法とを、任意に選択して行なえるようにするためのものである。また、冷却用通過穴29の途中には、静電噴霧された荷電液滴がただちに第1のオリフィス31に到達してしまうことがないように、荷電液滴を迂回させるための迂回棒32が設けられている。
【0028】
尚、脱溶媒後、イオン化室1の室壁に結露した溶媒や、ニードルパイプ2から噴霧された試料溶液の内、余分なものなどは、廃液ライン33を通って、イオン化室1から外部の図示しないドレインに向けて排出される。
【0029】
大気圧下の脱溶媒ブロック3で脱溶媒された試料イオンを、真空の質量分析装置内に導入するために、差動排気壁が構成される。すなわち、第1のオリフィス31と第2のオリフィス34とで囲まれた区画は、図示しないロータリー・ポンプ(RP)で200Pa程度に排気されている。また、第2のオリフィス34と図示しない隔壁とで囲まれた区画は、図示しないターボ・モレキュラー・ポンプ(TMP)で1Pa程度に排気されている。更に、図示しない隔壁の後段は、TMPによって10-3Pa程度に排気され、最終段に質量分析部35が置かれている。
【0030】
脱溶媒ブロック3で脱溶媒されてイオンとなった試料は、第1のオリフィス31から質量分析装置内に取り込まれる。そして、第1のオリフィス31と第2のオリフィス34で囲まれた低真空の区画では、試料イオンが正イオンの場合には正電圧、試料イオンが負イオンの場合には負電圧が印加されるリングレンズ36が置かれていて、試料イオンの拡散を防ぐ構造になっている。また、第2のオリフィス34と図示しない隔壁で囲まれた中真空の区画には、試料イオンを質量分析部35まで導くためのイオンガイド37が置かれ、高周波電圧が印加されている。
【0031】
また、図3において38は冷媒流路であり、冷媒流路38は、脱溶媒ブロック3のブロック壁に穿設されている。この冷媒流路28は、ガス管39を介して冷却用ガス源40に接続されている。
【0032】
また、図3において、41はヒーター26や温度センサー27の配線接続部、42はケース、43は第2の部屋であり、44はネブライジングガス出口部を示している。
【0033】
以上、図3の装置構成について説明した。以下、図3の装置における試料分析手順について説明する。
【0034】
まず、コールドスプレー・イオン化モードで測定を行なう場合について説明する。その場合、まずオペレータは、フローメーター20を見ながらフローコントロールバルブ25を調整して、ガス源23からのネブライジングガスの流量をたとえば2l/minに合わせる。
【0035】
次にオペレータは、温度表示部15を見ながら、液体窒素22に浸るガス管10の長さを調整して、ヒーターブロック9の温度tをたとえば-80℃に設定する。なお、このとき、ヒーター12の電源は切られている。
【0036】
さて、図4は、オペレータが実験により事前に求めた温度テーブル表を示したものである。この温度テーブル表において、横軸には前記ヒーターブロック9の温度tがとられており、その縦軸には、前記シース管4のガス出口部44におけるネブライジングガス温度(プローブ温度)Tがとられている。そして、この温度テーブル表は、前記ガス源23から流量2l/minのネブライジングガスを前記シース管4に流したときの、ヒーターブロック9の温度tとネブライジングガス温度Tの関係をグラフで示したものである。なお、この実験においては、前記シース管4のガス出口部44に熱電対が配置されて、ネブライジングガスの温度Tが測定された。
【0037】
また、図4の温度テーブル表には、「-◆-」と「-■-」と「-△-」で示された3種類のグラフが記載されているが、これらの測定条件の違いは、液体窒素22に浸るガス管10の長さである。
【0038】
すなわち、「-◆-」で示されたグラフは、ヒーター12がオフのときにヒーターブロック9の温度tが-80℃になるように、液体窒素22に浸るガス管10の長さが調整されたときの実験データを示している。また、「-■-」で示されたグラフは、ヒーター12がオフのときにヒーターブロック9の温度tが-60℃になるように、液体窒素22に浸るガス管10の長さが調整されたときの実験データを示している。そして、「-△-」で示されたグラフは、ヒーター12がオフのときにヒーターブロック9の温度tが-40℃になるように、液体窒素22に浸るガス管10の長さが調整されたときの実験データを示している。
【0039】
この図4の温度テーブル表からわかるように、上述したオペレータによる、ヒーターブロック9の温度tを-80℃に設定するガス管10の長さ調整により、現時点でのシース管4のガス出口部44におけるネブライジングガス温度Tは、-43℃になっている。
【0040】
次にオペレータは、ヒーター12の電源を入れる。そして、前記ネブライジングガス温度Tをたとえば-10℃に設定したい場合、オペレータは、図4の「-◆-」のグラフから、設定すべきヒーターブロック9の温度tを求める。この場合、その温度tは-5℃であり、オペレータは、温度表示部15を見ながらヒーター調整つまみ16を調整して、ヒーターブロック9の温度tを-5℃に設定する。
【0041】
このようなヒーターブロック9の温度上昇により、そのガス通路11を流れるネブライジングガスはヒーターブロック9で加熱され、シース管4のガス出口部44におけるネブライジングガス温度Tは、所望の-10℃になる。
【0042】
ところで、図3の装置では、シース管出口でのネブライジングガス温度Tは安定しており、温度ドリフトはほとんど発生しない。これは、ヒーターブロック9が、液体窒素22が気化した乾燥窒素ガスの雰囲気中にあるためであるが、この理由を以下に詳しく説明する。
【0043】
図3に示すように、ガス管10は液体窒素22中に浸されるが、このガス管10内を通るガスの熱で液体窒素22は気化する。そして、その気化した低温の乾燥窒素ガスは、ヒーターカバー17の通し穴18,19を通って、ヒーターカバー17内にあふれ出る。このため、ヒーターカバー17内に配置されたヒーターブロック9の周りは、常に乾燥した状態に保たれ、ヒーターブロック9の結露や、ヒーターブロック9表面への霜の付着を防止することができる。
【0044】
仮に、このような結露や霜がヒーターブロック9において発生すると、その影響で、シース管出口でのネブライジングガス温度Tは安定せずにドリフトしてしまうが、本発明においては、上述したようにその結露や霜の発生を防止できるので、ネブライジングガス温度Tは安定している。
【0045】
なお、図3には示されていないが、ヒーターブロック9内には、ヒーター12や温度センサー13の配線接続部が収納されている。この配線接続部も上述した乾燥窒素ガスの雰囲気中にあるので、その配線接続部は結露せず、その配線接続部における結露による電気的なリークを防止できる。
【0046】
さて、ここまで、ネブライジングガスの冷却について説明した。一方、脱冷媒ブロック3については、却用ガス源40からの冷却用窒素ガスが冷媒流路38に供給されて、脱溶媒ブロック3はマイナス温度に冷却される。
【0047】
こうして、ネブライジングガスと脱溶媒ブロック3が冷却されると、液体送液ポンプ6から試料溶液がニードルパイプ2に流され、試料分析が開始される。なお、この際、ニードルパイプ2の先端は、位置調整ノブ30によって冷却用通過穴29側に合わされ、荷電液滴は、冷却用通過穴45を通過することによって脱溶媒される。
【0048】
そして、オペレータは、質量分析部35の表示部に表示されるサンプルのシグナル(分析スペクトル)を見ながら、ヒーターブロック9の設定温度を変えて行き、分析の最適条件を探っていく。シース管出口のネブライジングガスの温度Tによっては、分析波形にピークが現れない場合もあるので、このような設定温度の変更は必要である。
【0049】
また、実際には、ネブライジングガスの温度Tと、脱溶媒ブロック3の温度の組み合わせによっても、分析スペクトルの出方が違ってくるので、それらの温度のバランス調整が行われている。
【0050】
以上、図3の装置において、コールドスプレー・イオン化モードで測定を行なう場合について説明したが、このように本発明においては、ヒーターブロック9を温度制御することにより、シース管のガス出口でのネブライジングガス温度を迅速かつ正確に設定することができる。
【0051】
なお、プローブ5をメンテナンスのためにイオン源から抜き出すときは、プローブ5をガスで温めるためにヒーターブロック9が60℃まで加熱されてから、ガス管8がプローブ5から取り外される。そして、プローブ5がイオン源から抜き出される。このような操作により、プローブ5の結露を防ぐことができる。
【0052】
一方、通常のエレクトロスプレー・イオン化モードで測定を行なう場合には、ネブライジングガス源23から供給されるネブライジング用窒素ガスを室温のままシース管4から噴出させるとともに、冷却用ガス源40からの冷却用窒素ガスの供給を止め、脱溶媒ブロック3をヒーター26によって100~300℃に加熱させ、測定中、試料の荷電液滴に、熱が加わるようにコントロールする。このとき、ニードルパイプ2の先端の位置は、位置調整ノブ30によって加熱用通過穴28側に合わされ、荷電液滴は、加熱用通過穴28を通過することによって脱溶媒される。
【0053】
このように、本実施例では、コールドスプレー・イオン化モードと、通常のエレクトロスプレー・イオン化モードとは、任意に切り換えることができるようになっている。
【0054】
また、イオン化室1の回りには、ケース42によって取り囲まれた第2の部屋43が設けられており、この空間に、ニードルパイプ2、第1のオリフィス31、第2のオリフィス34などに高電圧を印加する高電圧電源の配線や、ヒーター26や温度センサー27の配線接続部41などが収納されている。コールドスプレー・イオン化モードで測定を行なう場合には、脱溶媒ブロック3のブロック壁に設けられた冷媒流路38を通った冷却用乾燥窒素ガスを、第2の部屋43の内部に導入・循環させ、使用済みの冷却用乾燥窒素ガスを有効に用いて、第2の部屋43の内部をパージするようにする。
【0055】
これにより、イオン化室1がコールドスプレー・イオン化モードで冷やされた際に、外界から第2の部屋43に水分が呼び込まれることを防止し、第2の部屋の内部での結露を防止し、ニードルパイプ2、第1のオリフィス31、第2のオリフィス34などに高電圧を印加する高電圧電源の配線や、ヒーター26や温度センサー27の配線接続部41などの電気的なリークを防止する。
【0056】
以上、図3および図4を用いて本発明の一例を説明したが、本発明はこの例に限定されるものではない。
【0057】
たとえば、上記例では、図4に示した温度テーブル表を用いて、ネブライジングガス温度Tを設定するようにしているが、これを自動化するようにしても良い。すなわち、図4に示された温度テーブルを予め前記温度コントロールユニット14に登録しておき、オペレターがネブライジングガス温度Tを温度コントロールユニット14上で直接打ち込むと、温度コントロールユニット14が、前記温度センサー13の出力と登録された前記温度テーブルに基づき、前記ネブライジングガス温度Tがオペレータにより指定された温度になるように、前記ヒーター12を制御するようにしても良い。
【0058】
また、この変形例よりもより簡便な構成として、ヒーターブロック9の温度tを指定する温度指定手段を前記温度コントロールユニット14に設け、その温度コントロールユニットは、指定された温度tと温度センサー13の出力に基づいて、ヒーターブロック9の温度がtになるように制御することも考えられる。この場合、オペレータは、図4に示した表からヒーターブロック9の温度tを指定する。
【0059】
また、上記例において、脱溶媒ブロック3の冷却を、液体窒素22を兼用して行うようにしても良い。
【0060】
また、上記例において、液体窒素の代わりに、電子冷却器やドライアイスなどを用いてネブライジングガスや脱溶媒ブロックを冷却するようにしても良い。
【0061】
また、上記例において、液体窒素タンク21の下に高さ調整可能な台を置けば、液体窒素タンクの微妙な高さ調整をスムーズに行うことができる。
【0062】
また、上記例では脱溶媒ブロック3を設けているが、これを設けないようにしても良い。また、その脱溶媒ブロックを設けない方式の際、上記例のようにプローブと第1のオリフィスとを同軸上に配置せずに、プローブの軸と第1のオリフィスの軸が直交するようにそれらを配置するようにしても良い。
【0063】
【発明の効果】
以上述べたごとく、本発明のコールドスプレー質量分析装置によれば、ヒーターを温度制御して、シース管出口でのネブライジングガス温度を設定するようにしたので、迅速かつ正確にネブライジングガスの温度を設定することができ、使い勝手の良いコールドスプレー質量分析装置を提供することが可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のエレクトロスプレー質量分析装置を示す図である。
【図2】従来のコールドスプレー質量分析装置を示す図である。
【図3】本発明にかかるコールドスプレー質量分析装置の一例を示す図である。
【図4】図3の装置における、ヒーターブロック温度とネブライジングガス温度の関係を示した温度テーブル表である。
【符号の説明】
1…イオン化室、2…ニードルパイプ、3…脱溶媒ブロック、4…シース管、5…ESIプローブ、6…液体送液ポンプ、7…パイプ、8…ガス管、9…ヒーターブロック、10…ガス管、11…ガス通路、12…ヒーター、13…温度センサー、14…温度コントロールユニット、15…温度表示部、16…ヒーター調整つまみ、17…ヒーターカバー、18、19…通し穴、20…フローメーター、21…液体窒素タンク、22…液体窒素、23…ネブライジングガス源、24…ガス管、25…フローコントロールバルブ、26…ヒーター、27…温度センサー、28…加熱用通過穴、29…冷却用通過穴、30…位置調整ノブ、31…第1のオリフィス、32…迂回棒、33…廃液ライン、34…第2のオリフィス、35…質量分析部、36…リングレンズ、37…イオンガイド、38…冷媒流路、39…ガス管、40…冷却用ガス源、41…配線接続部、42…ケース、43…第2の部屋、44…ガス出口部、45…冷却用通過穴、51…試料溶液供給源、52…キャピラリー、53…質量分析装置、54…対向電極、55…サンプリング・オリフィス、56…スキマー・オリフィス、57…隔壁、58…質量分析部、59…リングレンズ、60…イオンガイド
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3