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明細書 :糸状菌により生産されるセルロース

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3607919号 (P3607919)
公開番号 特開2001-161389 (P2001-161389A)
登録日 平成16年10月22日(2004.10.22)
発行日 平成17年1月5日(2005.1.5)
公開日 平成13年6月19日(2001.6.19)
発明の名称または考案の名称 糸状菌により生産されるセルロース
国際特許分類 C12P 19/04      
C12N  1/14      
C12N  1/14      
C12R  1:645     
C12P 19/04      
C12R  1:645     
FI C12P 19/04 A
C12N 1/14 B
C12N 1/14 B
C12R 1:645
C12P 19/04 A
C12R 1:645
請求項の数または発明の数 4
微生物の受託番号 FERM P-17547
全頁数 10
出願番号 特願2000-275211 (P2000-275211)
出願日 平成12年9月11日(2000.9.11)
優先権出願番号 1999281425
優先日 平成11年10月1日(1999.10.1)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成12年9月11日(2000.9.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
発明者または考案者 【氏名】森田 直樹
【氏名】星野 保
【氏名】澤田 美智子
【氏名】奥山 英登志
【氏名】栗木 みどり
【氏名】川上 顕
【氏名】寺見 文宏
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
審査官 【審査官】左海 匡子
参考文献・文献 国際公開第99/024555(WO,A1)
Mikol. Fitopatol.,1990年,Vol.24, No.5,p.430-434
原田篤也他(編),原田篤也他編「総合多糖類科学(下)」,株式会社講談社,1974年,第2~4頁、第124~127頁、181頁
調査した分野 C12P 19/00-64
C12N 1/14
CA(STN)
REGISTRY(STN)
EUROPAT(QUESTEL)
JSTPlus(JOIS)
MEDLINE(STN)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
以下の工程:
(i)セルロース生産能を有するミクロドキウム属に属する糸状菌を培養する工程、及び
(ii)工程(i)により得られる培養物からセルロースを回収する工程
を含むセルロースの製造方法。
【請求項2】
前記ミクロドキウム属に属する糸状菌がミクロドキウム・ニバレ(FERM P-17547)である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の製造方法によって得られるセルロース。
【請求項4】
ミクロドキウム・ニバレ(FERM P-17547)の培養物から回収することができ、
以下の理化学的性質:
(a)分子量がゲル濾過法で計測した場合には35万~80万の範囲内である;
(b)2Mトリフルオロ酢酸中、121℃で2時間処理したときに、完全な加水分解を受ける;及び
(c)凍結乾燥してX線回折分析を行った場合に、2θ=5.0°~45.0°においてピークを示さない;
を有するセルロース。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、微生物によるセルロースの生産に関し、より詳細には、好冷性糸状菌に属するセルロース生産菌を用いるセルロースの生産方法及び該生産方法によって得られるセルロースに関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースは植物の細胞壁の主要構成要素であり、我々が紙として利用しているセルロースの殆どは木材等の植物由来のものである。
植物以外にも、原核生物である細菌類の中には培養中に細胞外の培養液にセルロースを生産する菌が存在し、それらのセルロースはバクテリアセルロースと呼ばれる。バクテリアセルロースは、水に対する分散性に優れている特性から、食品、化粧品などに添加物として利用されており、また、木材パルプなどから製造されるセルロースとは異なった物理的性質を持っているため、オーディオスピーカーの音響振動板などの各種産業用素材として応用利用されている。
【0003】
一方、真核生物である糸状菌は、細胞外多糖を生産することが知られている。このような糸状菌により生産される多糖のうち、セルロースと同様にグルコースで構成される多糖としては、α-グルカンであるプルラン(文献)とエルシナン(文献)、β-グルカンであるβ-(1→3)・(1→6)-グルカン及びβ-(1→6)・β-(1→4)グルカンの分岐または側鎖をもつβ-(1→3)-グルカン(文献)が報告されている。
しかし、糸状菌によりβ-(1→4)-グルカンであるセルロースが生産されるとの報告はない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、糸状菌を用いてセルロースを製造する方法及び糸状菌性セルロースを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、好冷性糸状菌の一種であるミクロドキウム・ニバレ(Microdochium nivale)の培養において、培養液中に不溶性多糖が大量に生産され、該多糖がセルロースであることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
(1)以下の工程:
(i)セルロース生産能を有する糸状菌を培養する工程、及び
(ii)工程(i)により得られる培養物からセルロースを回収する工程
を含むセルロースの製造方法。
【0006】
(2)前記糸状菌がミクロドキウム属に属するものである(1)記載の製造方法。
(3)前記糸状菌がミクロドキウム・ニバレ(FERM P-17547)である(1)記載の製造方法。
(4)糸状菌によって生産されるセルロース。
【0007】
(5)前記糸状菌がミクロドキウム属に属するものである(4)記載のセルロース。
(6)前記糸状菌がミクロドキウム・ニバレ(FERM P-17547)である(4)記載のセルロース。
(7)(1)記載の製造方法によって得られるセルロース。
【0008】
(8)以下の理化学的性質:
(a)2Mトリフルオロ酢酸中、121℃で2時間処理したときに、完全な加水分解を受ける;及び
(b)凍結乾燥してX線回折分析を行った場合に、2θ=5.0°~45.0°においてピークを示さない;
を有するセルロース。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、糸状菌によって生産されるセルロースに関する。糸状菌としては、セルロース生産能を有するものであればよく、特に制限されないが、好ましくはミクロドキウム属に属するものである。特に好ましい糸状菌は、雪腐病菌であるミクロドキウム・ニバレ(Microdochium nivale)であり、本菌は1999年9月2日付けで工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に寄託され、受託番号FERM P-17547を付されている。
【0010】
本発明はまた、以下の工程:(i)セルロース生産能を有する糸状菌を培養する工程、及び(ii)上記工程(i)により得られる培養物からセルロースを回収する工程を含むセルロースの製造方法に関する。該製造方法において使用する糸状菌は、上述のような糸状菌である。該製造方法によれば、本発明のセルロースを適切に製造することができる。
【0011】
糸状菌の培養に用いる培地は、糸状菌が生育することが知られているものであればいずれを用いてもよく、特に制限されない。また、液体培地及び固体培地のいずれを用いてもよいが、好ましくは液体培地を用いる。本発明の製造方法において特に好ましい培地は、液体ポテトデキストロース培地である。
【0012】
培養方法は、振とう培養、静置培養等、当業者に公知の方法のいずれであってもよいが、好ましくは振とう培養である。液体培養の際に培地に添加する菌体の量は、当業者であれば適切に設定することができるため、特に制限されないが、培地200mlあたり、好ましくは0.01g~0.15g、より好ましくは0.04g~0.08gである。なお、本明細書において菌体の量を重さで表すときは、特に示さない限り、その菌体培養物を遠心分離して上澄み液を除去することにより得られる湿った状態の菌体の重量、すなわち菌体の湿重を表す。固体培地での培養の際に培地に添加する菌体の量もまた、当業者であれば適切に設定することができるため、特に制限されない。
【0013】
培養の際の温度は、種々の温度における糸状菌によるセルロースの生産効率を調べることにより設定することができ、特に制限されるものではない。例えば、糸状菌としてミクロドキウム・ニバレ(FERM P-17547)を用いる場合には、図1中のBに示すグラフを参考にして培養温度を設定することができる。このように、培養温度は特に制限されないが、10℃以下の温度領域においては、好ましくは2℃~8℃、より好ましくは3℃~6℃、最も好ましくは約4℃であり、一方、10℃以上の温度領域においては、好ましくは12℃~25℃、より好ましくは15℃~22℃、最も好ましくは約20℃である。
【0014】
培養期間は、種々の培養期間におけるセルロースの生産効率を調べることにより設定することができ、特に制限されるものではない。例えば、糸状菌としてミクロドキウム・ニバレ(FERM P-17547)を用いて4℃で培養を行う場合には、図1中のAに示すグラフを参考にして培養期間を設定することができる。このように、培養期間は特に制限されないが、好ましくは7日~35日、より好ましくは10日~20日、最も好ましくは約14日である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、ミクロドキウム・ニバレ(FERM P-17547)をポテトデキストロース(2.4%)液体培地(pH 5.1)に接種し、4℃にて14日間振とう培養することにより、効率良くセルロースを生産させることができる。この場合において、上記の菌0.06gを上記液体培地200mlに接種し、500ml容フラスコ内で200rpmの速度で旋回して培養した場合には、4g/リットルのセルロースを生産させることができる。
【0016】
以上のようにして菌体内又は菌体外に生産されたセルロースは、公知の方法を用いて回収することができる。セルロースが菌体内に生産される場合には、菌体を破砕して得られる混合物から公知の方法を用いてセルロースを回収することができる。セルロースが菌体外に生産される場合には、培養物中の菌体以外の部分から、公知の方法を用いてセルロースを回収することができる。例えば、液体培養を行った場合において、その液体培地中にセルロースが生産される場合には、該液体培地を遠心分離し、不溶性多糖の存在する画分を取り出すことにより、セルロースを回収することができる。
【0017】
回収したセルロースは、その後、蒸留水等で洗浄することができる。また、得られたセルロースは、その用途に従って、各種加工又は処理を行うことができ、このような加工又は処理は当業者であれば適切に行うことができる。
このようにして得られた不溶性多糖がセルロースであることは、当業者に公知の化学分析・機器分析により確認することができる。例えば、アルディトールアセテート法等の構成糖分析により、該不溶性多糖がD-グルコースで構成されていることが確認され、赤外線吸光分析(IR)における890cm-1での吸収により、その各グルコース単位がβ型であること(すなわち、各グルコース間の立体配置がβ型であること)が確認される。さらに、完全メチル化した後の構成糖分析において、重水素化された水素化ホウ素ナトリウムを還元剤として用いることにより、各グルコース単位間の結合様式が(1→4)結合であることが確認される。これはまた、スミス分解等の他の方法によっても確認することができる。以上のような化学分析・機器分析は、当技術分野において日常的に用いられているものであり、当業者であれば適切に行うことができる。
【0018】
本発明のセルロースの分子量は、当業者に公知の方法を用いて測定することができる。このような方法としては、ゲル濾過によるゲルクロマトグラフィー、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)等が挙げられる。ゲル濾過に用いるゲルは、当業者であれば適切なものを選択することができるため、特に制限されないが、好ましくはTSKgel HW-65Fである。このようにして測定される本発明のセルロースの分子量は、特に制限されるものではないが、好ましくは35万~80万、より好ましくは50万~70万、最も好ましくは約60万である。なお、このときの平均分子量(Mw)は、好ましくは55万~60万、より好ましくは約57.5万である。
【0019】
本発明のセルロースの結晶構造は、X線回折により調べることができる。X線回折分析の手法は特に制限されないが、例えば、上記のようにして得られる不溶性多糖(本発明のセルロース)を、底面が水平で滑らかなプラスチック容器に入れ、凍結乾燥することによって、一面が滑らかなフィルム(厚さ1mm、14mm×14mm)を調製し、この滑面にX線を照射することによってX線回折分析を行うことができる。このような具体的手法によって分析した場合、本発明のセルロースは、2θ=5.0°~45.0°においてピークを示さない。従って、該セルロースは明確な結晶構造を有さないといえる。
【0020】
上記構成糖分析において、2Mトリフルオロ酢酸中、121℃で2時間処理した場合、本発明のセルロースは加水分解を受けて全てグルコースとなるが、既知の植物性セルロースは完全には加水分解を受けず、このような加水分解に対して抵抗性を示す。さらには、上記X線回折において、上述のように、本発明のセルロースは2θ=5.0°~45.0°においてピークを示さないが、既知の植物性セルロースは2θ=14.60°、16.5°及び22.7°においてピークを示す。これは、既知の植物性セルロースがこれまでの知見と一致する結晶構造を有するのに対し、本発明のセルロースは明確な結晶構造を有さないことを示している。従って、本発明のセルロースは、既知のセルロースとは全く異なるものであるといえる。
【0021】
以上のような見地から、本発明は、以下の理化学的性質:
(a)2Mトリフルオロ酢酸中、121℃で2時間処理したときに、完全な加水分解を受ける;及び
(b)凍結乾燥してX線回折分析を行った場合に、2θ=5.0°~45.0°においてピークを示さない;
を有するセルロースに関する。該セルロースの分子量は、特に制限されるものではないが、好ましくは35万~80万、より好ましくは50万~70万、最も好ましくは約60万である。これらの分子量は、上記のようにして得られる不溶性多糖1mgをカドキセン(tris(ethylendiamine)cadmium hydroxide)0.5mlに溶かし、ゲルクロマトグラフィー(TSKgel HW-65F、15cm×0.5cm)に供し、2分間ごとに分画し(流量:0.3ml/分)、フェノール-硫酸法で各画分の糖含有量を分析したものである。なお、このときの平均分子量(Mw)は、好ましくは55万~60万、より好ましくは約57.5万である。
【0022】
【実施例】
以下の実施例により、本発明を理解するためにさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明の技術的範囲を限定するものではない。
〔実施例1〕ミクロドキウム・ニバレの培養と不溶性多糖の回収
ミクロドキウム・ニバレ(FERM P-17547)0.06gをDifco社製のポテトデキストロース(2.4%)液体培地(pH 5.1)200mlに接種し、500ml容フラスコ内で200rpmの速度で旋回して培養した。培養液を遠心処理(15000×g,20分)し、沈殿した菌の上層のゲル状物質を回収した。これを蒸留水で洗い、不溶性多糖を得た。
【0023】
上記の培養において、培養温度を4℃から20℃の範囲で変えて不溶性多糖の生産性を調べた結果を図1のBに示す。図1のBにおいて、各値は各温度で最大の細胞以外不溶性多糖を生産した時点(4℃:14日目、10℃:14日目、15℃:4日目、20℃:6日目)での培養液1Lあたりの乾燥重量を表し、●は不溶性多糖、■は糸状菌体の重量を示す。図1のBによれば、4℃の培養において最も高い生産が見られた。
【0024】
次に、4℃で培養した場合の不溶性多糖生産量の経時変化を調べた結果を、図1のAに示す。図1のAにおいて、●は不溶性多糖、■は糸状菌体の量を示す。図1のAによれば、14日培養まで培養液に生産される不溶性多糖は増加し、その後減少に転じた。
これらの結果に基づき、0.06gの菌を4℃で14日間培養したところ、培養液1リットル当たり4gの不溶性多糖を得ることができた。
【0025】
〔実施例2〕ミクロドキウム・ニバレにより生産される不溶性多糖の同定
(1)構成糖分析
実施例1で得られた不溶性多糖1mgに2Mトリフルオロ酢酸水溶液0.5mlを加え、121℃で3時間加水分解した。窒素ガスでトリフルオロ酢酸を除去し、生じた単糖を水素化ホウ素ナトリウムを用いて還元した。得られた還元単糖の水酸基を、Merkle及びPoppeの方法(Merkle及びPoppe, Methods Enzymol. 230, 1-15, 1994)を用いてアセチル化した。ガスクロマトグラフィーによる分析(カラム;スペルコSP-2330:内径0.25mm×長さ15m、温度条件;170℃で4分間保持:170℃から240℃まで8℃/分で昇温:240℃で8分間保持)の結果、アセチル化したグルコースのみのピークが得られ、該不溶性多糖はポリグルカンであることが判明した(図2)。
【0026】
(2)グルコース中の1位炭素の立体配置の決定
実施例1で得られた不溶性多糖を凍結乾燥し、臭化カリウムとともに磨り潰して錠剤型とした後、フーリエ変換赤外線吸光分析(FT-IR)によりそのグルコースの1位炭素の立体配置を調べた結果、それがβ型であること示すピークが890cm-1に検出された(図3)。
【0027】
(3)グルコース単位の結合様式の決定
実施例1で得られた不溶性多糖におけるグルコースの結合の位置を調べるために、該不溶性多糖中に存在する水酸基を完全メチル化した後に、上記(1)に記載したようにして構成糖分析を行った。ただし、還元には、重水素化された水素化ホウ素ナトリウムを用いた。
【0028】
上記の完全メチル化は、次のようにして行った。まず、80mgの不溶性多糖に10mlのジメチルスルホキシド(DMSO)を加え、アルゴンガスを封入したフラスコ内で2時間攪拌した。その後、超音波処理を2時間行ったところ、不溶性多糖は一部しか溶けていなかった。該不溶性多糖を完全に溶解させるため、さらに15mlのDMSO及び9mlのディムシルナトリウム(アルゴンガスを封入したフラスコ中で、0.5gの油性水素化ナトリウムに10mlのDMSOを加えて生成させた)を加え、2分間攪拌し、その後に2分間超音波処理を行った。次いで、氷中で1mlのヨウ化メチルを加え、蒸留水中で透析した。
【0029】
このようにして得られた産物をガスクロマトグラフィー質量分析計(GC/MS)で分析(カラム;スペルコSP-2330:内径0.25mm×長さ15m、温度条件;190℃で4分間保持:190℃から240℃まで4℃/分で昇温:240℃で8分間保持)した。すでに30%の水酸基がメチル化されたセルロースの標準品を同じように処理したものを比較対照とした。結果を図4に示す。図4において、Aは該不溶性多糖のガスクロマトグラムを表し、CはAのガスクロマトグラム中の約12分に溶出される物質の質量スペクトルを表す。Bは30%メチル化セルロースのガスクロマトグラムを表し、DはCのガスクロマトグラム中の約12分に溶出される物質の質量スペクトルを表す。図4によれば、該不溶性多糖では2、3及び6位の炭素がメチル化されたグルコースのみが検出されたことがわかる。
(4)まとめ
以上(1)~(3)で得られた結果を総合すると、該不溶性多糖はβ-(1→4)-グルカン、すなわちセルロースのみで構成されていることが分かった。
【0030】
〔実施例3〕セルロース分子の大きさ
実施例1で得られた不溶性多糖1mgをカドキセン(tris(ethylendiamine)cadmium hydroxide)0.5mlに溶かし、ゲルクロマトグラフィー(TSKgel HW-65F、15cm×0.5cm)に供し、2分間ごとに分画し(流量:0.3ml/分)、フェノール-硫酸法で各画分の糖含有量を分析した。その結果、単一ピークが得られ(図5)、デキストラン(分子量:12000、50000及び150000)を標準品として分子量を測定した結果、該不溶性多糖としては、分子量60万(M.W.)のものの存在量が最も多かった。平均分子量(Mw:重量平均分子量)は57.5万であった。
【0031】
〔実施例4〕結晶構造分析
実施例1で得られた不溶性多糖を、底面が水平で滑らかなプラスチック容器に入れ、凍結乾燥することによって、一面が滑らかなフィルム(厚さ1mm、7mm×7mm)を調製した。その滑面にX線を照射してX線回折による分析を行ったところ、明確なピークが観察されなかった。一方、対照として用いたろ紙(Whatman)の分析においては、植物性セルロースが有する立体構造に特異的に見られる2θ=14.60°、16.5°及び22.7°のピークが見られた。これにより、上記不溶性多糖は、既知の植物性セルロースとは異なり、明確な結晶構造を有さないことがわかった。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、糸状菌からセルロースを生産する技術が提供される。また、各種産業素材、添加物等として利用し得る新規糸状菌性セルロースが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ミクロドキウム・ニバレによる細胞外不溶性多糖の生産量と培養温度との関係(B)、及びミクロドキウム・ニバレの4℃培養中での細胞外不溶性多糖生産量の経時変化(A)を示すグラフである。
【符号の説明】
● 不溶性多糖
■ ミクロドキウム・ニバレ菌体
【図2】ミクロドキウム・ニバレにより生産される不溶性多糖の構成糖分析の結果を示すガスクロマトグラムである。
【図3】ミクロドキウム・ニバレにより生産される不溶性多糖のFT-IR分析の結果を示す図である。
【図4】ミクロドキウム・ニバレにより生産される不溶性多糖における、各グルコース単位の結合様式の分析結果を示す図である。
【図5】ミクロドキウム・ニバレにより生産される不溶性多糖のゲル濾過クロマトグラムを示す図である。
【図6】ミクロドキウム・ニバレにより生産される不溶性多糖のX線回折図(A)、及びろ紙(Whatman)(植物性セルロース)のX線回折図(B)を示す図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5