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明細書 :酸化物イオン伝導体用ビスマス・タングステン・コバルト酸化物系およびビスマス・タングステン・ニオブ酸化物系の固溶体およびその製造法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3443638号 (P3443638)
公開番号 特開2001-199727 (P2001-199727A)
登録日 平成15年6月27日(2003.6.27)
発行日 平成15年9月8日(2003.9.8)
公開日 平成13年7月24日(2001.7.24)
発明の名称または考案の名称 酸化物イオン伝導体用ビスマス・タングステン・コバルト酸化物系およびビスマス・タングステン・ニオブ酸化物系の固溶体およびその製造法
国際特許分類 C01G 51/00      
C01G 41/00      
H01B  1/08      
H01M  8/02      
FI C01G 51/00 A
C01G 41/00
H01B 1/08
H01M 8/02
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2000-006054 (P2000-006054)
出願日 平成12年1月11日(2000.1.11)
審査請求日 平成12年4月18日(2000.4.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】301023238
【氏名又は名称】独立行政法人物質・材料研究機構
発明者または考案者 【氏名】渡辺 昭輝
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開 昭63-2808(JP,A)
特開 昭62-27328(JP,A)
特開 昭61-53113(JP,A)
調査した分野 C01G 25/00 - 47/00
C01G 49/10 - 57/00
H01B 1/08
H01M 8/02
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式Bi1-x x-xyCoxy1.5+l.5x-2xy(0.119≦x≦0.151,0<y≦0.10)で表され、正方晶系の結晶構造をもつ酸化物イオン伝導体用ビスマス・タングステン・コバルト酸化物系固溶体。

【請求項2】
一般式Bi1-x x-xzNbxz1.5+1.5x-0.5xz(0.119≦x≦0.151,0<z≦0.3)で表され、正方晶系の結晶構造をもつ酸化物イオン伝導体用ビスマス・タングステン・ニオブ酸化物系固溶体。

【請求項3】
酸化ビスマス(Bi2 3 )または加熱により酸化ビスマスに分解される化合物と、三酸化タングステンまたは加熱により三酸化タングステンに分解される化合物、さらに酸化コバルト(CoO)または加熱により酸化コバルトに分解される化合物とを、xとyの領域0.119≦x≦0.151及び0<y≦0.10に関して、酸化ビスマス、三酸化タングステン、酸化コバルトのモル比が(1-x)/2:x(1-y):xyとなるように混合し、この混合物を830℃以下の温度で加熱し、一般式Bi1-x x-xyCoxy1.5+l.5x-2xyで表される正方晶系の結晶構造をもつ酸化物イオン伝導体用ビスマス・タングステン・コバルト酸化物系固溶体を製造する方法。

【請求項4】
酸化ビスマスまたは加熱により酸化ビスマスに分解される化合物と、三酸化タングステンまたは加熱により三酸化タングステンに分解される化合物、さらに五酸化ニオブ(Nb2 5 )または加熱により五酸化ニオブに分解される化合物とを、xとzの領域0.119≦x≦0.151及び0<z≦0.30に関して、酸化ビスマス、三酸化タングステン、五酸化ニオブのモル比が(1-x)/2:x(1-z):xz/2となるように混合し、この混合物を850℃以下の温度で加熱し、一般式Bi1-x x-xzNbxz1.5+1.5x-0.5xzで表される正方晶系の結晶構造をもつ酸化物イオン伝導体用ビスマス・タングステン・ニオブ酸化物系固溶体を製造する方法。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【0001】

【発明の属する技術分野】本発明は、酸化物イオン伝導体として各種分野で使用される正方晶系の結晶構造をもつビスマス・タングステン・コバルト酸化物系及びビスマス・タングステン・ニオブ酸化物系の固溶体及びその製造法に関する。

【0002】

【従来の技術】大気汚染の軽減等の環境問題を解決するため、さらには、高齢化社会に付随して生ずる呼吸障害等の健康問題に資するためには、空気中の酸素をコントロールすることが必要であり、高性能の酸化物イオン伝導性セラミックスの開発が期待されている。ビスマス複酸化物系がその一例であり、たとえば、酸化ビスマス(Bi2 3 )と五酸化バナジウム(V2 5 )の二成分系で、一般式Bi2 VO5.5 で表される化合物が知られている。この化合物では、第三成分の酸化物を添加することによって、酸化物イオン伝導性が良好な高温安定相を転移点(550℃)よりも低い温度領域へ安定化させることが可能となり、高性能の酸化物イオン伝導体を得ている。

【0003】
しかしながら、その後の研究により、組成がBi2 VO5.5 では、隣接相のBiVO4 との混合物となること、また、第三成分の添加により安定化された筈であるが、低温領域で徐々に分解が起こること等、酸化物イオン伝導材料として使用する上で、種々の問題の生ずることが判明した。

【0004】

【発明が解決しようとする課題】本発明者は、ビスマス複酸化物系での酸化物イオン伝導体として有望な系を探索し、その結果、酸化ビスマスと三酸化タングステンの系に注目した。本二成分系には、酸化ビスマスに富む側に二つの固溶体が、さらに、二つの化合物がモル比Bi2 3 :WO3 が1:1と1:2の組成に存在することが知られている。

【0005】
この中で、酸化ビスマスに対する三酸化タングステンの濃度が21.3~26.3モル%の領域、すなわち、一般式Bi1-x x 1.5+l.5x(x=0.119~0.151)で示される固溶体は、図1に示すように、細線で描かれた格子定数が5.6Åと見積もられる擬面心立方晶系を副格子とする、正方晶系に属する太線で示された超格子構造をもち、かなり高い酸化物イオン伝導を示すことが再確認された。太線が正方晶格子(a、c)であり、細線が副格子(a´)を示し、各副格子の面心と隅の位置を金属原子(ビスマスとタングステン)が占めている。

【0006】
一般式Bi0.875 0.125 1.6875、すなわち、WO3 が22.22モル%の組成の相の格子定数は、a=12.514Å、c=11.224Åであり、入射X線にCuKαを用いた、その粉末X線回折の結果を図2に示す。また、電気伝導度の温度変化として絶対温度の逆数による電気伝導度の常用対数、いわゆるアレニウス・プロットを図3に示す。

【0007】
本発明は、この知見に基づき、上記固溶体のタングステンの一部をコバルトまたはニオブ原子で置換することにより酸化物イオン伝導体として好適なビスマス・タングステン・コバルト酸化物固溶体およびビスマス・タングステン・ニオブ酸化物固溶体を提供することを目的とする。

【0008】

【課題を解決するための手段】本発明のビスマス・タングステン・コバルト酸化物固溶体およびビスマス・タングステン・ニオブ酸化物固溶体は、一般式Bi1-x x-xyCoxy1.5+l.5x-2xy(0.119≦x≦0.151,0<y≦0.10)および一般式Bi1-x x-xzNbxz1.5+1.5x-0.5xz(0.119≦x≦0.151,0<z≦0.3)で表され、正方晶系の結晶構造をもつことを特徴とし、酸化物イオン伝導体用材料としてその目的を達成するため、種々の分野で使用される。

【0009】
このビスマス・タングステン・コバルト酸化物固溶体は、酸化ビスマスまたは加熱により酸化ビスマスに分解される化合物と、三酸化タングステンまたは加熱により三酸化タングステンに分解される化合物、さらに酸化コバルトまたは加熱により酸化コバルトに分解される化合物とを、酸化ビスマス、三酸化タングステン、酸化コバルトのモル比が(1-x)/2:x(1-y):xyとなるように混合し、この混合物を830℃以下の温度で加熱することにより製造される。

【0010】
また、ビスマス・タングステン・ニオブ酸化物固溶体は、酸化ビスマスまたは加熱により酸化ビスマスに分解される化合物と、三酸化タングステンまたは加熱により三酸化タングステンに分解される化合物、さらに五酸化ニオブまたは加熱により五酸化ニオブに分解される化合物とを、酸化ビスマス、三酸化タングステン、五酸化ニオブのモル比が(1-x)/2:x(1-z):xz/2となるように混合し、この混合物を850℃以下の温度で加熱することにより製造される。

【0011】
本発明のビスマス・タングステン・コバルト酸化物固溶体およびビスマス・タングステン・ニオブ酸化物固溶体は、一般式がそれぞれBi1-x x-xyCoxy1.5+l.5x-2xy(0.119≦x≦0.151,0<y≦0.10)およびBi1-x x-xzNbxz1.5+1.5x-0.5xz(0.119≦x≦0.151,0<z≦0.3)で表され、正方晶系に属する結晶構造をもつ新規な酸化物固溶体である。

【0012】
これらの酸化物固溶体は、一般式Bi1-x x 1.5+1.5x(0.119≦x≦0.151)で示されるビスマス・タングステン酸化物固溶体のタングステンの一部をコバルトあるいはニオブで置換したものであることから、ビスマス・タングステン酸化物固溶体と同一の結晶構造をもつ。酸化コバルトおよび五酸化ニオブの添加量がそれぞれy>0.10、z>0.30となると単一相とはならず、未知の相との混合物となってしまう。

【0013】
一般式Bi0.875 0.1125Co0.01251.6625(x=0.125,y=0.1に相当する)で表されるビスマス・タングステン・コバルト酸化物固溶体に属する相の粉末X線回折結果を図4に、また示差熱分析結果を図5に示す。基本相であるビスマス・タングステン酸化物固溶体の場合の粉末X線回折結果である図2との比較から明らかなように、両者の回折パターンは相似しており、同一の結晶構造をもっていることが認められる。

【0014】
また、図5に示された示差熱分析の加熱曲線は、830℃で分解溶融が生じていることを示しており、したがって、出発物質の固相反応による合成は、830℃以下の温度で行われることを必要とする。

【0015】
一般式Bi0.875 0.1 Nb0.025 1.675 (x=0.125,z=0.2に相当する)で表されるビスマス・タングステン・ニオブ酸化物固溶体に属する相の粉末X線回折結果を図6に、その示差熱分析結果を図7に示す。この場合も、ビスマス・タングステン酸化物固溶体の場合と同一の構造を有すること、ならびに固相反応による合成は、相転移が生ずる850℃以下の温度が望ましいことを示している。

【0016】

【実施例】実施例1
純度99.9%以上の酸化ビスマス(Bi2 3 )と純度99.9%以上の三酸化タングステン(WO3 )および純度99.9%以上の酸化コバルト(CoO)をそれぞれの割合が77.78モル%、20.00モル%、および2.22モル%となるように秤量し、メノウ乳鉢中で十分に混合した。得られた混合物を白金ルツボに充填し、カンタル線発熱体を備えた電気炉にチャージした。電気炉内で、混合物を室温から加熱し、800℃に20時間保持した。次いで、白金ルツボを電気炉から取り出し、生成物をメノウ乳鉢中で十分に粉砕混合した。さらに、同様な手順によって800℃に20時間保持する熱処理を施し、ビスマス・タングステン・コバルト酸化物固溶体に属する均一相を合成した。

【0017】
得られた生成物を分析した結果、一般式Bi0.875 0.1125Co0.01251.6625(x=0.125,y=0.1に相当する)で表される正方晶系に属する相であり、その格子定数はa=12.501Å、c=11.218Åであった。本均一相の粉末X線回折パターンを図4に示す。

【0018】
得られた粉末の円盤状圧粉成形体を焼結し、焼結体について電気伝導度および酸化物イオン輸率の温度依存性を調査した。電気伝導度と温度との関係をアレニウス・プロットの様式で図8に、酸化物イオン輸率と温度との関係を図9に示す。これらの結果から、本発明で得られたコバルトを含む酸化物固溶体は、基本相であるビスマス・タングステン酸化物固溶体よりも優れた酸化物イオン伝導体であることが判る。

【0019】
実施例2
純度99.9%以上の酸化ビスマス(Bi2 3 )と純度99.9%以上の三酸化タングステン(WO3 )および純度99.9%以上の五酸化ニオブ(Nb25 )をそれぞれの割合が79.55モル%、18.18モル%、および2.27モル%となるように秤量し、メノウ乳鉢中で十分に混合した。得られた混合物を白金ルツボに充填し、カンタル線発熱体を備えた電気炉にチャージした。電気炉内で、混合物を室温から加熱し、800℃に20時間保持した。次いで、白金ルツボを電気炉から取り出し、生成物をメノウ乳鉢中で十分に粉砕混合した。さらに、同様な手順によって800℃に20時間保持する熱処理を施し、ビスマス・タングステン・ニオブ酸化物固溶体に属する均一相を合成した。

【0020】
得られた生成物を分析した結果、一般式Bi0.875 0.1 Nb0.025 1.675(x=0.125,z=0.2に相当する)で表される正方晶系に属する相であり、その格子定数はa=12.499Å、c=11.210Åであった。本均一相の粉末X線回折パターンを図5に示す。

【0021】
得られた粉末の円盤状圧粉成形体を焼結し、焼結体について電気伝導度および酸化物イオン輸率の温度依存性を検討した。電気伝導度と温度との関係をアレニウス・プロットの様式で図10に、酸化物イオン輸率と温度との関係を図11に示す。これらの結果から、本発明で得られたニオブを含む酸化物固溶体は、基本相であるビスマス・タングステン酸化物固溶体よりも優れた酸化物イオン伝導体であることが認められる。

【0022】

【発明の効果】以上に説明したように、本発明のビスマス・タングステン・コバルト酸化物固溶体およびビスマス・タングステン・ニオブ酸化物固溶体は、正方晶系に属する結晶構造をもつ新規な組成の固溶体であり、酸化物イオンに関して優れた伝導性と高い輸率を示すことから、センサー材料、酸素ポンプ材料、燃料電池材料等の高機能酸化物イオン伝導体として使用される。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
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【図8】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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