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明細書 :超電導加速度計

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3174853号 (P3174853)
公開番号 特開2001-004652 (P2001-004652A)
登録日 平成13年4月6日(2001.4.6)
発行日 平成13年6月11日(2001.6.11)
公開日 平成13年1月12日(2001.1.12)
発明の名称または考案の名称 超電導加速度計
国際特許分類 G01P 15/105     
G01R 33/035     
FI G01P 15/08 ZAAC
G01R 33/035
請求項の数または発明の数 4
全頁数 5
出願番号 特願平11-180153 (P1999-180153)
出願日 平成11年6月25日(1999.6.25)
審査請求日 平成11年6月25日(1999.6.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391037397
【氏名又は名称】科学技術庁航空宇宙技術研究所長
発明者または考案者 【氏名】円居 繁治
個別代理人の代理人 【識別番号】100092200、【弁理士】、【氏名又は名称】大城 重信 (外2名)
審査官 【審査官】石井 哲
参考文献・文献 特開 昭64-47957(JP,A)
特開 平8-50140(JP,A)
特開 平1-209378(JP,A)
特開 昭63-317776(JP,A)
特開 平1-134266(JP,A)
特開 平1-134267(JP,A)
特開 平1-100462(JP,A)
特開 平1-167675(JP,A)
特開2001-4651(JP,A)
調査した分野 G01P 15/105
G01P 15/11
G01R 33/035 ZAA
特許請求の範囲 【請求項1】
超電導体からなる慣性質量、磁界発生手段、及び磁束検出手段が磁気シールドされた慣性空間に配置されてなる超電導加速度計において、前記慣性質量は、磁気シールドされた慣性空間内で前記磁界発生手段とは分離独立して揺動可能に配置された冷却槽内に定置されていることを特徴とする超電導加速度計。

【請求項2】
前記超電導加速度計は、液体窒素沸点温度以上で作動する高温超電導加速度計であり、前記慣性質量が液体窒素沸点温度以上の超電導転移温度を有する高温超電導体で構成され、前記冷却槽内には液体窒素が充填されている請求項1記載の超電導加速度計。

【請求項3】
前記磁界発生手段が永久磁石である請求項1又は2記載の超電導加速度計。

【請求項4】
前記超電導加速度計は、低温超電導加速度計であり、前記慣性質量が液体ヘリウム温度以上の超電導転移温度を有する低温超電導体で構成され、前記冷却槽内には液体ヘリウムが充填されている請求項1記載の超電導加速度計。
発明の詳細な説明 【発明の詳細な説明】

【1】

【発明の属する技術分野】本発明は、超電導加速度計、特に冷却媒体の発泡現象による加速度内乱の発生を防止した超電導加速度計に関する。

【10】

【課題を解決するための手段】本発明の超電導加速度計は、超電導体からなる慣性質量、磁界発生手段、及び磁束検出手段が磁気シールドされた慣性空間に配置されてなる超電導加速度計において、前記慣性質量を、磁気シールドされた慣性空間内で前記磁界発生手段とは分離独立して揺動可能に配置された冷却槽内に定置するという技術的手段を採用することによって、前記第1の目的を達成したものである。

【11】
前記技術的手段は、冷却媒体として液体ヘリウムを使用する低温超電導加速度計又は液体窒素を使用する高温超電導加速度計の何れにも適用できるが、前記第2の目的も併せて達成するためには、前記慣性質量を液体窒素沸点温度以上の超電導転移温度を有する高温超電導体で構成し、冷却槽内に液体窒素を充填する高温超電導加速度計として構成する必要がある。そして、その際、前記磁界発生手段として永久磁石を採用することによって、高温超電導体使用に伴うコイル整形の困難さ、臨界磁場の低さの問題点を克服することができ、高分解能が期待できる高温超電導加速度計を得ることができる。さらに、前記磁束計測手段は超電導量子干渉素子磁束計を採用するのが望ましい。

【12】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る高温超電導加速度計の構成を示す模式図である。図中1、超電導体で形成された超電導磁気シールドであり、その内部に、慣性質量を収納する第1冷却槽2と、永久磁石及び超電導量子干渉素子磁束計又はその磁界検出部を収納する第2冷却槽3が、それぞれ分離独立して設けられている。

【13】
第1冷却槽2は、ヒンジ5を有する連結片6で超電導磁気シールド1内に懸架され、その内部に高温超電導材で形成された慣性質量7が定置されている。また、第2冷却槽3は超電導磁気シールド1内に固定され、その内部に磁界発生手段である永久磁石8が槽外に位置する前記慣性質量と対向するように適宜の手段で固定されていると共に、超電導量子干渉素子磁束計9が固定されて収納されている。本実施形態では、前記永久磁石8は、サマリウム・コバルトを採用し、磁束密度が2000ガウスのものを採用したが、本発明は必ずしもこれに限るものではない。

【14】
また、本実施形態では、上記超電導体は全て液体窒素沸点温度で超電導現象を示すイットリウム系酸化物高温超電導体(YBCO)を採用したが、特にそれに限定されるものでなく、例えばタリウム系酸化物高温超電導体等他の高温超電導体を採用しても良い。そして、図1に模式的に示すように、第1冷却槽には慣性質量7が、第2冷却槽3には、永久磁石8及び超電導量子干渉素子磁束計9が、液体窒素内に完全に浸漬して液体窒素沸点温度に冷却されるようにそれぞれ液体窒素4が充填されている。前記第1冷却槽2、第2冷却槽3は、それぞれ収納されている液体窒素4の気化による内圧の上昇を防ぐために、図示しない圧力調整バルブを介して大気に解放され、ヘッドスペースの内圧は常時大気圧に保たれており、圧力変化による加速度への影響を回避している。同様に、超電導磁気シールド内も大気に解放され、常に大気圧に保たれている。

【15】
本実施形態の高温超電導加速度計は、以上のように構成され、加速度が作用すると完全反磁性の性質をもつ慣性質量7が第1冷却槽2ごと変位して永久磁石8との間隔が変化して磁束密度が変化する。その変化分をジョセフソン効果を利用した超電導量子干渉素子磁束計9で計測して加速度量を得ることができる。

【16】
その際、第1冷却槽及び第2冷却槽では、常時液体窒素の発泡現象が起こっているが、本実施形態では慣性質量7は第1冷却槽の底部に定置状態であるので、慣性質量7自体が液体窒素の対流で揺らぐことがなく、液体窒素の発泡現象によるノイズを完全に解消することができ、高分解能加速度計を得ることができる。

【17】
また、本実施形態では超電導コイルに代えて永久磁石を使用したので、高温超電導体をコイルに成形する必要もなく、強い磁場を安定して正確に発生させることができるので、加速度を10-12g程度の高分解能で計測することが可能となった。

【18】
本発明の高温超電導加速度計は、10-12gの極端に高い分解能を得ることができるセンサーであるため、先進慣性航法の関連要素技術としての重力傾斜計として利用できる。重力傾斜計は、距離をおいて複数個の加速度計を配置して、その加速度量の差を検出し、重力分布を計測するものであり、その応用として慣性航法の高精度化はもとより、重力異常、地殻変動、地球の重力分布計測等がある。このような装置に内蔵される加速度計は、2点間の重力加速度の差異と同程度の極めて微小な加速度(10-10g~10-13g程度)を精度良く検出可能であることが要求される。従来の加速度計の分解能は、10-7gが限界であったため、このような要求を満たすことができなかったが、本発明の高温超電導加速度計によればこのような高精度の要求を満たすことができ、重力傾斜計はもとより地震予知、資源探査、重力波検出にも有効である。

【19】
上記実施形態では、高温超電導加速度計について説明したが、本発明は低温超電導加速度計にも適用可能である。即ち、低温超電導加速度計においても、慣性質量を上記実施形態と同様に磁気シールドされた慣性空間内で前記磁界発生手段とは分離独立した冷却槽内に配置することによって、液体ヘリウムの発泡現象による慣性質量の揺らぎを解消することができ、発泡現象の影響を除去することができる。また、高温超電導加速度計において、超電導コイルの成形の困難さを回避し、且つ強い磁場を形成するためには超電導コイルに代えて永久磁石を採用するのが望ましいが、成形しやすく且つ臨界電流の高い高温超電導材が得られれば、低温超電導加速度計と同様に超電導コイルを採用してもよい。

【2】

【従来の技術】従来、加速度を検出するセンサとして動電型加速度計、圧電型加速度計、歪ゲージ型加速度計、サーボ型加速度計、静電支持型加速度計、超電導加速度計がある。その中で、超電導加速度計は、従来の高感度と言われているサーボ型加速度計と比べても極端に高い分解能を持つ加速度計であり、高精度の加速度検出が要求される例えば、慣性航法や重力分布計測等の分野への利用が期待されている。

【20】

【発明の効果】以上のように、本発明によれば、慣性質量は慣性空間内に磁界発生手段とは分離独立して揺動可能に支持された冷却槽内に定置状態であるので、慣性質量自体が液体窒素又は液体ヘリウムの発泡現象で起こる対流により揺らぐことがなく、冷却媒体液体の発泡現象によるノイズを完全に解消することができ、高分解能を有する超電導加速度計を得ることができる。

【21】
さらに、請求項2及び3の構成によれば、高温超電導体使用に伴うコイル整形の困難さ、臨界磁場の低さの問題点を克服して、液体窒素沸点温度で作動可能で且つ高分解能で加速度を計測でき、冷却設備の小型化・簡素化・低廉化を図ると共に希ガスの液体ヘリウムに代えて無尽蔵資源である液体窒素の使用を可能とする高温超電導加速度計を得ることができる。それにより、超電導加速度計のより小型化、軽量化ができ、航空・宇宙機に搭載しての慣性航法の高精度化はもとより、重力異常、地殻変動、地球の重力分布計測に有用な高温超電導加速度計を得ることができる。

【3】
従来提案されている超電導加速度計は、各構成要素に液体ヘリウムで冷却可能な低温超電導体(例えば、ニオブ、チタン、錫等、或いはこれらの合金系材料、化合物系材料等)を用いて、その特性であるゼロ抵抗(完全電導性)、完全反磁性(マイスナー効果)、ジョセフソン効果を利用して加速度計を構成したものであり、液体ヘリウム(4.2K以下)での冷却状態下で使用するものである。

【4】
超電導加速度計の原理の概要を図2に示す。慣性質量(プルーフ・マス)20は低温超電導体で作られ、液体ヘリウム26が充填されている超電導磁気シールド21内に、ヒンジ22で支持されて慣性空間に静止している。低温超電導体で作られた超電導コイル23には、永久電流が流れて周囲には磁場が発生している。ここで加速度が作用すると、完全反磁性の性質を持っプルーフ・マス20と超電導コイル23の間隔が変化して磁束密度が変化する。その変化分をジョセフソン効果を利用したSQUID(超電導量子干渉素子)磁束計25で計測して加速度量を得るようにしたものてある。

【5】
超電導加速度計は、前記のように各構成要素の超電導現象の特性であるゼロ抵抗、マイスナー効果、ジョセフソン効果を利用するものであるので、それが作動するためには、各構成要素を超電導転移温度以下に冷却しなければならない。そのため、従来図2示すように、磁気シールド内に低温超電導体の場合は液体ヘリウムを、高温超電導体の場合は液体窒素を冷却媒体として充填して、該冷却媒体内に各構成要素を浸漬することにより、超電導転移温度以下に冷却している。

【6】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、冷却媒体である液体ヘリウム及び液体窒素は超低温の液体であるため、磁気シールドが断熱構造であっても完全断熱でない限り常時沸騰しており、液体ヘリウム又は液体窒素内部から泡が発生している状態にある。その結果、冷却媒体内では絶えず対流が発生し、慣性空間内に静止していなければならない慣性質量が対流の影響で揺らぐことによって、加速度内乱が生じ、それがノイズ成分として出力される。図3は実験装置で測定した液体窒素の発泡によるノイズ成分を計測した結果を示し、該グラフによれば約10-3gの量のノイズが発生していることが判る。該ノイズの範囲は、高分解能が期待される超電導加速度計にとって、許容出来ない大きな問題点である。

【7】
一方、液体ヘリウム温度で超電導を示す低温超電導体を使用する従来の低温超電導加速度計は、大型で且つ複雑な構造の冷却装置を必要とする問題があると共に、ヘリウムは地球上にわずかしか存在しない希ガスであり、資源の枯渇の点から回収に手間をかけて使用しなければならない問題点がある。また、近時液体窒素沸点温度(77.4K)以上の超電導転移温度を有する酸化物系高温超電導体が見出されたのに伴い、高温超電導体を使用した高温超電導加速度計も試みられている。高温超電導体を使用すると、従来の低温超電導加速度計に比べて温度管理が容易になり、冷却装置の小型化が可能となることが予測される。また、液体窒素は気化潜熱が液体ヘリウムの60倍もあり、密度も高く冷却能力が大きい利点がある。しかも液体窒素資源は、無尽蔵であり地球資源にも配慮したものとなる。

【8】
しかしながら、高温超電導体はセラミック系酸化物であり、硬度が高く脆い欠点がある。そのため、線材成形加工が極めて困難であり、超電導加速度計に必要な構成部材であるコイルへの加工に困難性があるという問題点がある。また、超電導体は環境磁場で超電導が崩壊する現象(クエンチ)があり、高温超電導体は、その量が極端に低く数ガウス程度である。これでは、超電導加速度計の本来の高分解能を期待することが出来ないという問題点があり、未だ高温超電導加速度計の実用化が阻まれている要因となっている。

【9】
そこで、本発明は、超電導加速度計における加速度内乱の要因となる液体ヘリウム又は液体窒素の発泡現象による影響を除去することによって、超電導加速度計の本来の高分解能を有する超電導加速度計を得ることを第1の目的とし、従来の低温超電導加速度計に代わって、冷却設備を小型化簡素化できると共に希ガスの液体ヘリウムに代えて無尽蔵資源である液体窒素の使用を可能とる高分解能を有する高温超電導加速度計を得ることを第2の目的とするものである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2