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明細書 :軟磁性金属ガラス合金

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3929327号 (P3929327)
公開番号 特開2003-253408 (P2003-253408A)
登録日 平成19年3月16日(2007.3.16)
発行日 平成19年6月13日(2007.6.13)
公開日 平成15年9月10日(2003.9.10)
発明の名称または考案の名称 軟磁性金属ガラス合金
国際特許分類 C22C  45/02        (2006.01)
H01F   1/14        (2006.01)
FI C22C 45/02 A
H01F 1/14 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2002-055291 (P2002-055291)
出願日 平成14年3月1日(2002.3.1)
審査請求日 平成15年2月21日(2003.2.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】井上 明久
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】小川 武
参考文献・文献 特開平11-131199(JP,A)
特開平04-314846(JP,A)
特開2001-062548(JP,A)
特表2001-510508(JP,A)
調査した分野 C22C 38/00-45/10
H01F 1/14
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の組成式で表され、過冷却液体の温度間隔ΔTχが40 K以上で、換算ガラス化温度Tg/Tmが0.56以上であり、ガラス相の体積分率(Vf-amo.100%の鋳造材で1.4 T以上の飽和磁化を有することを特徴とするガラス形成能が高い軟磁性Fe-B-Si系金属ガラス合金。
(Fe1-a-b Ba Sib )100-χMχ
ただし、a, b は原子比であり、0.133≦ a ≦ 0.17, 0.098≦ b ≦ 0.15, 0.231≦ a + b ≦0.3, MはZr, Nb, Ta, Hf, Mo, Ti, V, Cr, Wのうちの一種または二種以上の元素であり、1 原子% ≦χ ≦10原子%である。
【請求項2】
請求項1記載のFe-B-Si系金属ガラス合金にGaを3原子%以下添加したことを特徴とする軟磁性Fe-B-Si系金属ガラス合金。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高飽和磁化を有するガラス形成能が高い軟磁性Fe-B-Si系金属ガラス合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、非晶質合金として1960年代において最初に製造されたFe-P-C系合金、1970年代において製造された(Fe,Co,Ni)-P-B系合金、(Fe,Co,Ni)-Si-B系合金、(Fe,Co,Ni)-(Zr,Hf,Nb)系合金、(Fe,Co,Ni)-(Zr,Hf,Nb)-B系合金1970年代から1980年代初めにおいて製造されたFe-(,Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Mn,Ni)-Si-B系合金(特開昭61-295602号公報)、Fe-(,Cr,Mo,W,V,Nb,Ta,Ti,Zr,Hf)-B系合金(特開昭58-42759号公報、特開平4-314846号公報)が知られている。
【0003】
これらの合金は、いずれも、104 K/s以上の冷却速度で急冷凝固する必要があり、得られた試料の厚さは200μm以下の薄帯であった。また、高いガラス形成能を示す合金系とし、1988年~2001年にかけて、Ln-Al-TM、Mg-Ln-TM、Zr-Al-TM、Pd-Cu-Ni-P、(Fe,Co,Ni)-(Zr,Hf,Nb)-B、Fe-(Al,Ga)-P-B-C、Fe-(Nb,Cr,Mo)-(Al,Ga)-P-B-C、Fe-(Cr,Mo)-Ga-P-B-C、Fe-Co-Ga-P-B-C、Fe-Ga-P-B-C 、Fe-Ga-P-B-C-Si (ただし、Lnは希土類元素、TMは遷移金属である)系などの組成のものが発見された。これらの合金系では、厚さ1mm以上の金属ガラス合金棒が作製できる。
【0004】
本発明者は、先に、Fe-P-Si-(C,B,Ge)-(IIIB族金属元素,IVB族金属元素)の軟磁性金属ガラス合金(特開平11-71647号公報)、(Fe,Co,Ni)-(Zr,Nb,Ta,Hf,Mo,Ti,V)-Bの軟磁性金属ガラス合金(特開平11-131199号公報)、Fe-(Cr, Mo)-Ga-P-C-Bの軟磁性金属ガラス合金(特開2001-316782号公報)を発明し、特許出願した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
これまで、本発明者は、飽和磁化1.4 Tまでの軟磁性バルク金属ガラス合金系を幾つか見出した。しかし、応用の点から見ると、1.4 T以上の飽和磁化を有する合金系が望ましい。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、上述の課題を解決することを目的として種々の合金組成について探査した結果、Fe-B-Si系合金において、明瞭なガラス遷移と広い過冷却液体域を示し、ガラス形成能がより高い軟磁性、高飽和磁化Fe基金属ガラス合金組成を見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の組成式で表され、過冷却液体の温度間隔ΔTχが40K以上で、換算ガラス化温度Tg/Tmが0.56以上であり、ガラス相の体積分率(Vf-amo.100%の鋳造材で1.4 T以上の飽和磁化を有することを特徴とするガラス形成能が高い軟磁性Fe-B-Si系金属ガラス合金である。
(Fe1-a-b Ba Sib )100-χMχ
ただし、a, b は原子比であり、0.133 ≦ a ≦ 0.17, 0.098 ≦ b ≦ 0.15, 0.231≦ a + b ≦0.3, MはZr, Nb, Ta, Hf, Mo, Ti, V, Cr, Wのうちの一種または二種以上の元素であり、1 原子% ≦χ ≦10原子%である。
【0008】
上記の合金組成において、単ロール液体急冷法により作製した厚さ0.2 mm以上の薄帯金属ガラス合金のΔTχ = Tχ-Tg (ただし、Tχは、結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTχは40 K以上で、換算ガラス化温度Tg/Tmは0.56以上である。
【0009】
また、この組成を持つ合金溶湯を用いて、銅製鋳型鋳造法により作製した金属ガラス合金は、熱分析を行う際、顕著なガラス遷移および結晶化による発熱が観察され、ガラス形成の臨界厚さまたは直径が1.5 mmであり、銅製鋳型鋳造法により金属ガラス合金を作製できる。
【0010】
本発明の上記合金組成において、主成分であるFeは、磁性を担う元素であり、高い飽和磁化と優れた軟磁気特性を得るために64原子%以上は必要であり、76原子%まで含有させることができる。
【0011】
本発明の上記合金組成において、半金属元素B, Siは、アモルファス相の形成を担う元素であり、安定なアモルファス構造を得るために重要である。Fe1-a-bBa Sib の原子比はa + bが0.231~0.3とし、残余をFeとする。a + b がこの範囲を外れるとアモルファス相の形成が困難である。BとSiはともに含有される必要があり、一方が上記組成範囲から外れると、ガラス形成能が劣り、バルク金属ガラス合金の形成が困難である。
【0012】
本発明の上記合金組成式において、M元素の添加はガラス形成能の向上に有効である。本発明の合金組成においては、Mは1原子%以上10原子%以下の範囲で添加する。この範囲を外れて、Mが1原子%未満であると過冷却液体の温度間隔ΔTχが消滅する。10原子%よりも大きくなると飽和磁化が減少するために好ましくない。
【0013】
上記合金組成式のFe-B-Si系合金に、さらに、Ga3原子%以下添加さることができる。Gaを添加することにより、保磁力は3.5 A/mから3.0 A/mまで減り、つまり、軟磁気特性が向上するが、合金中の含有量が3原子%を超えると、Feの含有量が少なくなるにつれて、飽和磁化が下がる。そこで、合金中のGaの含有量は3原子%以下とする。
【0014】
本発明の上記合金組成において、規定した組成域からのずれにより、ガラス形成能が劣り、溶湯から凝固過程にかけて結晶が生成・成長し、ガラス相に結晶相が混在した組織になる。また、この組成範囲から大きく離れるとき、ガラス相が得られず、結晶相となる。
【0015】
本発明に係わるFe-B-Si合金系は、ガラス形成能が高いため、銅製鋳型鋳造すると直径1.5 mmの金属ガラス合金丸棒が作製できるが、同様な冷却速度で、回転水中紡糸法により、直径0.4 mmまでの金属ガラス合金細線、アトマイズ法により、直径0.5 mmまでの金属ガラス合金粉末を作製できる。
【0016】
【実施例】
(実施例1~14、比較例1~7)
以下、実施例に基づき本発明を具体的に図面を参照して説明する。図6に、銅製鋳型鋳造法により直径0.5 mm~2 mmの合金試料を作製するのに用いた装置を側面から見た概略構成を示す。まず、アーク溶解により所定の成分組成を有する溶融合金1を作り、これを先端に小孔(孔径0.5 mm)を有する石英管3に挿入し、高周波発生コイル4により加熱溶融した後、その石英管3を直径0.5~2 mmの垂直な孔5を鋳込み空間として設けた銅製鋳型6の直上に設置し、石英管3内の溶融金属1をアルゴンガスの加圧(1.0 Kg/cm2)により石英管3の小孔2から噴出し、銅製鋳型6の孔に注入してそのまま放置して凝固させて直径0.5 mm、長さ50 mmの鋳造棒を得た。
【0017】
【表1】
JP0003929327B2_000002t.gif【0018】
表1に、実施例1~14、比較例1~7の合金組成および示差走査熱量計を用いて測定したキュリー温度(Tc)、ガラス遷移温度(Tg)、結晶化開始温度(Tχ)を示す。また、試料中に含まれるガラス相の体積分率(Vf-amo.)は、示差走査熱量計を用いて、結晶化による発熱量を完全ガラス化した単ロール型液体急冷法による薄帯との比較により評価した。
【0019】
さらに、飽和磁化(Is)、保磁力(Hc)をそれぞれ、試料振動型磁力計およびI-Hループトレーサーを用いて測定した結果を示す。また、各実施例および比較例の鋳造棒のガラス化の確認をX線回折法および試料断面の光学顕微鏡観察で行った。
【0020】
本発明の実施例1~14は、ΔTχ = Tχ-Tg (ただし、Tχは、結晶化開始温度、Tgはガラス遷移温度)の式で表される過冷却液体の温度間隔ΔTxは40 K以上で、直径0.5~2.0 mmの鋳造棒でガラス相の体積分率(Vf-amo.)は100%である。
【0021】
これに対して、比較例1~4は、M元素の含有量が1以下、また、M元素を含有していないため直径0.5 mmの鋳造棒で結晶質であった。また、比較例5はM元素のNbを含有しているが、その含有量が11原子%であり、本発明の合金組成の範囲を外れるため、直径0.5 mm鋳造棒で結晶質であった。さらに、比較例6、7はM元素を4原子%含むが、SiまたはBを全く含有していないため、直径0.5 mmの鋳造棒で結晶質であった。
【0022】
図1に、得られた直径1.5mmの鋳造棒の断面組織の光学顕微鏡写真を示す。図1に示すように、光学顕微鏡写真では結晶粒子のコントラストが見られず、金属ガラス合金が形成されたことが明らかである。
【0023】
実施例は全て1.4T以上の高い飽和磁化を有し、特に、実施例1~3と6~8は、高いガラス形成能を持つにもかかわらず、約1.5 Tの高い飽和磁化を有することがわかる。【0024】
実施例15
実施例1と同じ組成を有する溶融合金を通常のメルトスピン法で急冷凝固し、厚さ0.025 mm、幅2mmのリボン材を作製した。図2に、実施例1により得られた鋳造棒および実施例15により得られたリボン材の熱分析曲線を示す。図2に、示すように、リボン材とバルク材との差がないのが分かる。
【0025】
実施例16
実施例3と同じ組成を有する溶融合金を通常のメルトスピン法で急冷凝固し、厚さ0.025 mm、幅2mmのリボン材を作製した。図3に、実施例3により得られた鋳造棒および実施例16により得られたリボン材の熱分析曲線を示す。ここにも、リボン材とバルク材との差は認められない。
【0026】
図4に、実施例1により得られた鋳造棒および実施例15により得られたリボンの磁気特性を試料振動型磁気測定装置を用いて測定したI-Hヒステリシス曲線を示す。実施例1および実施例15とも優れた軟磁気特性を示していることがわかる。
【0027】
図5に、実施例3により得られた鋳造棒および実施例16により得られたリボンの磁気特性を試料振動型磁気測定装置を用いて測定したI-Hヒステリシス曲線を示す。実施例3および実施例16とも優れた軟磁気特性を示していることがわかる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のFe-B-Si系金属ガラス合金は、ガラス形成能に優れ、臨界厚さまたは直径が1.5 mm以上の値を有し、銅製鋳型鋳造により金属ガラス合金を得られる高いガラス形成能を持つ合金系であるから、優れた軟磁気特性、高い飽和磁化を有する大型の金属ガラス合金製品を実用的に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例により得られた鋳造棒の断面組織を示す図面代用の光学顕微鏡の写真である。
【図2】図2は、実施例1により得られた鋳造棒および実施例15により得られたリボンの熱分析曲線を示すグラフである。
【図3】図3は、実施例3により得られた鋳造棒および実施例16により得られたリボンの熱分析曲線を示すグラフである。
【図4】図4は、実施例1により得られた鋳造棒および実施例15により得られたリボンの磁気特性を試料振動型磁気測定装置を用いて測定したI-Hヒステリシス曲線を示すグラフである。
【図5】図5は、実施例3により得られた鋳造棒および実施例16により得られたリボンの磁気特性を試料振動型磁気測定装置を用いて測定したI-Hヒステリシス曲線を示すグラフである。
【図6】図6は、銅製鋳型鋳造法により鋳造棒の合金試料を作製するのに用いる装置を側面から見た概略図である。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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