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明細書 :高強度Zr基金属ガラス

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3737056号 (P3737056)
公開番号 特開2003-239051 (P2003-239051A)
登録日 平成17年11月4日(2005.11.4)
発行日 平成18年1月18日(2006.1.18)
公開日 平成15年8月27日(2003.8.27)
発明の名称または考案の名称 高強度Zr基金属ガラス
国際特許分類 C22C  45/10        (2006.01)
FI C22C 45/10
請求項の数または発明の数 1
全頁数 4
出願番号 特願2002-039149 (P2002-039149)
出願日 平成14年2月15日(2002.2.15)
審査請求日 平成15年2月21日(2003.2.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】井上 明久
【氏名】張 涛
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】木村 孔一
参考文献・文献 特開平07-289567(JP,A)
特開平08-131460(JP,A)
特開平08-131461(JP,A)
特開平10-186176(JP,A)
特開2000-050923(JP,A)
特表2000-516108(JP,A)
調査した分野 C22C 45/10
特許請求の範囲 【請求項1】
式:Zr100---AlxCo(Fe,Ni,Cu)[式中のx、yは原子であり、
それぞれx=15~25、y=20~30、x+y=40502<z<6]で表される組成を有し、
過冷却液体域が70K以上、かつ引張強度2000MPa以上のZr基金属ガラス。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、過冷却液体域が70K以上で、かつ引張強度が2000MPa以上とZr基金属ガラスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
金属または合金は、溶融状態から十分に大きな冷却速度で冷却すると、非晶質相が得られることがわかっている。従来の非晶質合金は非晶質相形成の臨界冷却速度は、104 ~106 K/秒であり、このため非晶質合金は急速冷却の可能な薄体、粉末あるいは細線状などに限られていた。薄体や細線状だけではなく、バルク状の非晶質合金が作製可能となれば、
例えば高強度や高靭性といった非晶質合金の有する優れた特性により、非晶質合金の用途範囲を著しく拡大できる。
【0003】
金型鋳造法によりバルク状の非晶質合金が得られるためには、103 K/秒以下の遅い冷却速度で非晶質相が形成される合金が必要である。1990年頃から遅い冷却速度で非晶質化する合金の研究が進み、そのような合金は金属でありながら、酸化物ガラスのように安定な非晶質で、高温で容易に塑性変形(粘性流動)できるため、「金属ガラス」または「金属ガラス合金」と呼ばれ、例えばMater.Trans.,JIM,Vol.32,No.11(1991)10051010に示されるZr-Al-TM(TM=Co,Ni,Cu)合金、特公平7-122120号公報に示されるX(X=Zr,Hf)-M(M=Ni,Cu,Fe,Co,Mn)-Al合金、特開平8-74010号公報、特開平8-199318号公報に示されるZr-A(A=Ti,Hf,Al,Ga)-B(B=Fe,Co,Ni,Cu)-C(C=Pd,Pt,Au,Ag)合金、特開2000-129378号公報に示されるZr-Al-Ni-Cu=M(M=Ti,Nb,Pd)合金、特開2000-265252号公報に示されるX(X=Zr,Hf)-M(M=Ni,Cu,Fe,Co,Mn)-Al-T(T=Ru,Osなど)-P(P=Ag,Nb,Ta)合金、米国特許5288344号明細書、米国特許5368659号明細書に示される(Zr-Ti)(Cu-Ni)Be合金等各種Zr系金属ガラスが開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来のZr系金属ガラスは、高融点のNb、Taなどの元素を含んでいるため、これらの元素は、他の構成元素との融点差が大きいので、均一な母材を溶製するのが困難である。また、Beなど毒性の強い元素を含有している。そのため、バルク金属ガラスは工業用材料として応用分野が制限されている。Beを含有していない合金では、Alの含有量は15原子%未満であり、2000MPa以上の高強度を有する金属ガラスが得られなかった。本発明は、Nb、Taなどの高融点の元素を含まずに、母材を溶製することが容易で、過冷却液体域が大きく、
かつ2000MPaの高強度を示す金属ガラスを得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために、高強度を示す製造しやすい、工業材料への応用が可能である非晶質形成能を有するZr基バルク金属ガラスを提供することを目的として、合金組成について探索した。その結果、Zr-Al-Co系の合金で過冷却液体域が70K以上で、引張強度2000MPa以上の金属ガラスが得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、式:Zr100---AlxCo(Fe,Ni,Cu)[式中のx、yは原子であり、それぞれx=15~25、y=20~30、x+y=40502<z<6]で表される組成を有し、過冷却液体域が70K以上、かつ引張強度2000MPa以上のZr基金属ガラスである。
【0007】
属ガラスの式:Zr100--AlxCoで表される組成において、Al量が原子で15未満25超、Coの量が20未満30超の組成では、ガラス遷移温度と結晶化温度の差で定義した過冷却液体域は小さくなり、非晶質形成能が小さくなる。よって、非晶質相を体積百分率で100有する直径または厚み3mm未満の合金しか得られない。上記の組成内であれば、非晶質相を体積百分率で100有する最大で直径または厚み4mm程度までの合金が得られる。
より好ましくは、x+yは40~50である。最大の過冷却液体域もつ組成はZr55Al20Co25での65Kであり、この組成を中心とする組成で大きい非晶質形成能が得られ、この組成からのずれによって非晶質形成能が小さくなる。
【0008】
また、本発明の金属ガラスは、式:Zr100---AlxCo(Fe,Ni,Cu)で表される組成において、Alの量が原子で15未満20超、Coの量が20未満30超、およびFe,Ni,Cuの量が10超の場合、過冷却液体域が小さくなり、非晶質相を体積百分率で100有する直径または厚み3mm未満の合金しか得られない。上記の組成内であれば、非晶質体積百分率で100有する最大で直径または厚み5mm程度までの合金が得られる。より好ましくは、2<z<6である。Fe,Ni,またはCuを含む場合は、過冷却液体域が70K以上であり、Zr55Al20Co20Cu5を中心する組成で最大90Kの過冷却液体域を得られ、この組成を中心とする組成で大きい非晶質形成能が得られ、この組成からのずれによって非晶質形成能が小さくなる。
【0009】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1~6、参考例1~3および比較例1~3
【0010】
【表1】
JP0003737056B2_000002t.gif
【0011】
表1に示している合金組成からなる材料について、各合金組成になるように母合金をアーク溶解炉で溶製し、均一な母合金が得られるように、真空中あるいはAr、Heなどの不活性ガス雰囲気中で、高周波加熱により母合金を再溶解して、銅製金型鋳造法によって直径3mm、長さ50mmの寸法の孔を開けた銅鋳型に溶湯を噴出することによって同寸法の丸棒試料を作成した。
【0012】
示差走査熱量計DSCを用いて各試料のガラス遷移温度Tgと結晶化開始温度Txの温度を測定し、過冷却液体域(Tx-Tg)を算出した。この丸棒試料中に含む非晶質相の体積分率(Vf%)は、DSCを用いて試料の結晶化の際の発熱を完全非晶質化した単ロール法により作製したリボン試料の結晶化の際の発熱との比較により評価した。さらに、圧縮強度、引張強度をそれぞれ測定した。
【0013】
表1より明らかなように、実施例1~の銅製金型鋳造による金属ガラスは、70K以上の過冷却液体域Tx-Tg)を示して、直径3mmの丸棒試料で非晶質相の体積分率が100で、大きな非晶質形成能を有し、圧縮強度および引張強度が2000MPa以上の値を示している。
【0014】
これに対して、比較例1の合金は、直径3mmの鋳造材では非晶質相が得られず、非晶質形成能が低い。比較例2,3の合金では、Alの含有量は15原子%未満であり、圧縮強度および引張強度は2000MPa以下であり、機械的性質に劣ることが分かる。