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明細書 :ロボットハンド及びロボットハンドの握り込み制御方法、並びにロボット及びロボットの制御方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3742876号 (P3742876)
公開番号 特開2003-245883 (P2003-245883A)
登録日 平成17年11月25日(2005.11.25)
発行日 平成18年2月8日(2006.2.8)
公開日 平成15年9月2日(2003.9.2)
発明の名称または考案の名称 ロボットハンド及びロボットハンドの握り込み制御方法、並びにロボット及びロボットの制御方法
国際特許分類 B25J  13/00        (2006.01)
B25J  15/08        (2006.01)
FI B25J 13/00 Z
B25J 15/08 K
請求項の数または発明の数 16
全頁数 20
出願番号 特願2002-048233 (P2002-048233)
出願日 平成14年2月25日(2002.2.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成13年12月21日開催の「計測自動制御学会 第2回システムインテグレーション部門学術講演会」において文書をもって発表
審査請求日 平成14年2月25日(2002.2.25)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】川▲崎▼ 晴久
【氏名】毛利 哲也
【氏名】伊藤 聡
個別代理人の代理人 【識別番号】100068755、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 博宣
【識別番号】100105957、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 誠
審査官 【審査官】八木 誠
参考文献・文献 特開平08-197467(JP,A)
特開2001-287182(JP,A)
特開平09-029674(JP,A)
特開平4-82683(JP,A)
調査した分野 B25J1/00-21/02
特許請求の範囲 【請求項1】
握り込み動作が可能な複数の第1能動関節により複数の指リンクが連結された指を掌に備え、前記指リンクのうち、掌側の指リンクと掌との間には、前記第1能動関節の握り込み動作の方向とは直交する方向の回転であって、関節軸を中心に往復回転する単一の第2能動関節を備えたロボットハンドの握り込み制御方法において、物体を握り込みする際に、前記指の第1能動関節を握り込み動作するように所定速度で速度制御する第1ステップと、第1ステップの制御により、指リンクが前記物体に接触した際に、接触した前記指リンクの根元側に位置する第1能動関節を、前記指リンクに作用する接触力が所定値となるように力制御する第2ステップとを含み、前記第2ステップでは、前記関節軸に交差し、指先側の指リンクと物体との接触点を結ぶ直線が、指の中心線に位置するように位置制御することを特徴とするロボットハンドの握り込み制御方法。
【請求項2】
前記第1ステップは、前記物体が指又は掌に接触したことを起点として開始することを特徴とする請求項1に記載のロボットハンドの握り込み制御方法。
【請求項3】
前記第1ステップでは、指の根元側に位置する第1能動関節ほど指先側に位置する他の第1能動関節よりも、前記所定速度を相対的に大きな値にして速度制御することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のロボットハンドの握り込み制御方法。
【請求項4】
前記複数の指リンクに係る複数の第1能動関節に対して、独立して前記第1ステップ及び第2ステップを実行制御することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載のロボットハンドの握り込み制御方法。
【請求項5】
握り込み動作が可能な複数の第1能動関節により複数の指リンクが連結された指を掌に備え、前記指リンク及び掌に接触力を検出する触覚手段を備え、前記第1能動関節の作動に応じた物理量を検出する物理量検出手段を備え、前記指リンクのうち、掌側の指リンクと掌との間には、前記第1能動関節の握り込み動作の方向とは直交する方向の回転であって、関節軸を中心に往復回転する単一の第2能動関節を備えたロボットハンドにおいて、物体を握り込みする際に、前記指の第1能動関節を握り込み動作するように前記物理量検出手段の検出値に基づいて所定速度で速度制御する第1制御手段と、前記第1制御手段の制御により、指リンクが前記物体に接触した際に、接触した前記指リンクの根元側に位置する第1能動関節を、前記指リンクに作用する接触力が所定値となるように前記触覚手段が検出した接触力に基づいて力制御する第2制御手段を備え、前記第2制御手段は、前記関節軸に交差し、指先側の指リンクと物体との接触点を結ぶ直線が、指の中心線に位置するように前記第2能動関節を位置制御することを特徴とするロボットハンド。
【請求項6】
前記第1制御手段は、前記物体が指又は掌に接触したことを起点として前記速度制御を開始することを特徴とする請求項5に記載のロボットハンド。
【請求項7】
前記第1制御手段は、指の根元側に位置する第1能動関節ほど指先側に位置する他の第1能動関節よりも、前記所定速度を相対的に大きな値にして速度制御することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のロボットハンド。
【請求項8】
前記複数の指リンクに係る複数の第1能動関節のそれぞれに対して、第1制御手段及び第2制御手段は、独立して実行制御することを特徴とする請求項5乃至請求項7のうちいずれか1項に記載のロボットハンド。
【請求項9】
握り込み動作が可能な複数の第1能動関節により複数の指リンクが連結された指を掌に備え、前記指リンクのうち、掌側の指リンクと掌との間には、前記第1能動関節の握り込み動作の方向とは直交する方向の回転であって、関節軸を中心に往復回転する単一の第2能動関節を備えたロボットハンドを有し、同ロボットハンドをロボットアームに連結したロボットの制御方法において、物体が前記ロボットハンドの掌に接触したとき、掌でのその接触位置が、掌の所定位置となるように、前記ロボットアームを制御する第1ステップと、物体を握り込みする際に、前記指の第1能動関節を握り込み動作するように所定速度で速度制御する第2ステップと、前記速度制御後に、指リンクが前記物体に接触した際に、接触した前記指リンクの根元側に位置する第1能動関節を、前記指リンクに作用する接触力が所定値となるように力制御する第3ステップとを含み、前記第3ステップでは、前記関節軸に交差し、指先側の指リンクと物体との接触点を結ぶ直線が、指の中心線に位置するように位置制御することを特徴とするロボットの制御方法。
【請求項10】
前記第1ステップは、前記物体が指又は掌に接触したことを起点として開始することを特徴とする請求項9に記載のロボットの制御方法。
【請求項11】
前記第2ステップは、第1ステップの制御が終了後、開始することを特徴とする請求項10に記載のロボットの制御方法。
【請求項12】
前記複数の指リンクに係る複数の第1能動関節に対して、独立して前記第2ステップ及び第3ステップを実行制御することを特徴とする請求項9乃至請求項11のうちいずれか1項に記載のロボットの制御方法。
【請求項13】
握り込み動作が可能な複数の第1能動関節により複数の指リンクが連結された指を掌に備え、前記指リンク及び掌に接触力を検出する触覚手段を備え、前記第1能動関節の作動に応じた物理量を検出する物理量検出手段を備え、前記指リンクのうち、掌側の指リンクと掌との間には、前記第1能動関節の握り込み動作の方向とは直交する方向の回転であって、関節軸を中心に往復回転する単一の第2能動関節を備えたロボットハンドを有し、同ロボットハンドをロボットアームに連結したロボットにおいて、物体が前記ロボットハンドの掌に接触したとき、掌でのその接触位置が、掌の所定位置となるように、前記ロボットアームを制御するロボットアーム制御手段と、物体を握り込みする際に、前記指の第1能動関節を握り込み動作するように前記物理量検出手段の検出値に基づいて所定速度で速度制御する第1制御手段と、前記第1制御手段の制御により、指リンクが前記物体に接触した際に、接触した前記指リンクの根元側に位置する第1能動関節を、前記指リンクに作用する接触力が所定値となるように前記触覚手段が検出した接触力に基づいて力制御する第2制御手段を備え、前記第2制御手段は、前記関節軸に交差し、指先側の指リンクと物体との接触点を結ぶ直線が、指の中心線に位置するように前記第2能動関節を位置制御することを特徴とすることを特徴とするロボット。
【請求項14】
前記第1制御手段は、前記物体が指又は掌に接触したことを起点として前記速度制御を開始することを特徴とする請求項13に記載のロボット。
【請求項15】
前記第1制御手段は、指の根元側に位置する第1能動関節ほど指先側に位置する他の第1能動関節よりも、前記所定速度を相対的に大きな値にして速度制御することを特徴とする請求項13又は請求項14に記載のロボット。
【請求項16】
前記複数の指リンクに係る複数の第1能動関節のそれぞれに対して、第1制御手段及び第2制御手段は、独立して実行制御することを特徴とする請求項13乃至請求項15のうちいずれか1項に記載のロボット。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、未知の形状物体を好適に把持することができるロボットハンド及びロボットハンドの握り込み制御方法、並びにロボット及びロボットの制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のロボットによる物体の把持に関する制御方法が、文献「前川仁,谷江和雄、小森谷清:指先の転がり接触を考慮した多指ハンドによる三次元圧力の運動学・静力学および剛性効果,日本ロボット学会誌,Vol.16,No.2,pp.205-213,1998」に開示されている(第1の従来技術)。
【0003】
さらに、未知の形状物体を把持する制御方法が、文献「近野敦,多田充徳,長島功一,稲葉雅幸,井上博允:人間型多指ハンドの開発および手探りによる未知物体の把持実験,日本機械学会論文集(C編),Vol.65,No.638,pp.4070-4075,1999)に開示されている(第2の従来技術)。
【0004】
又、手探りをしない他の把持方法として、文献「遠藤博史,和田充雄:触覚情報に基づくシリアルリンクハンドの把持動作制御,日本機械学会論文集(C編)59巻,559号,pp205-210,1993」の技術が開示されている。この文献には、触覚センサの情報に基づいて2次元物体を把持対象とした把持動作の方法が開示されている(第3の従来技術)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、第1の従来技術では、各ロボット指に触覚センサを装備した多指ハンドによる物体把持の定式化を行っているが、制御系が複雑になり、又、接触点近傍の物体局所形状の情報が予め必要であるため、未知物体の把持には適用できない問題がある。
【0006】
又、第2の従来技術では、各指に触覚センサを装備し、物体の把持の前に手探りで把持すべき点を探し、この後、物体に指を巻つける把持動作を行うため、物体把持までの時間が長くなる問題がある。
【0007】
又、第3の従来技術では、隣接する能動関節が独立に制御されていないため、把持の安定性は、物体形状に依存する問題がある。また、対象とする物体は2次元的な物体に限定される問題がある。
【0008】
ところで、生後約10ヶ月までの乳児の手に物体を接触させたとき、拇指と他の4本の指を屈曲させて物体を把持し、さらに物体を把持した後に乳児の手から物体を引き離そうとすると、乳児はさらに強く物体を握りしめる握り反射がある。この握り反射は、未知物体の把持におけるロバストな把持方法である。
【0009】
本発明は、このような乳児の握り反射に着目してなされたものである。
すなわち、本発明の目的は、乳児が行う握り反射を模擬し、物体把持まで時間を要せず、物体形状に依存しないで安定して未知の形状物体を把持することができるロボットハンド及びロボットハンドの握り込み制御方法を提供することにある。
【0010】
さらに、ロボット及びロボットの制御方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、握り込み動作が可能な複数の第1能動関節により複数の指リンクが連結された指を掌に備え、前記指リンクのうち、掌側の指リンクと掌との間には、前記第1能動関節の握り込み動作の方向とは直交する方向の回転であって、関節軸を中心に往復回転する単一の第2能動関節を備えたロボットハンドの握り込み制御方法において、物体を握り込みする際に、前記指の第1能動関節を握り込み動作するように所定速度で速度制御する第1ステップと、第1ステップの制御により、指リンクが前記物体に接触した際に、接触した前記指リンクの根元側に位置する第1能動関節を、前記指リンクに作用する接触力が所定値となるように力制御する第2ステップとを含み、前記第2ステップでは、前記関節軸に交差し、指先側の指リンクと物体との接触点を結ぶ直線が、指の中心線に位置するように位置制御することを特徴とするロボットハンドの握り込み制御方法を要旨とするものである。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1において、前記第1ステップは、前記物体が指又は掌に接触したことを起点として開始することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2において、前記第1ステップでは、指の根元側に位置する第1能動関節ほど指先側に位置する他の第1能動関節よりも、前記所定速度を相対的に大きな値にして速度制御することを特徴とする。
【0014】
請求項の発明は、請求項1乃至請求項のうちいずれか1項において、前記複数の指リンクに係る複数の第1能動関節に対して、独立して前記第1ステップ及び第2ステップを実行制御することを特徴とする。
【0015】
請求項の発明は、握り込み動作が可能な複数の第1能動関節により複数の指リンクが連結された指を掌に備え、前記指リンク及び掌に接触力を検出する触覚手段を備え、前記第1能動関節の作動に応じた物理量を検出する物理量検出手段を備え、前記指リンクのうち、掌側の指リンクと掌との間には、前記第1能動関節の握り込み動作の方向とは直交する方向の回転であって、関節軸を中心に往復回転する単一の第2能動関節を備えたロボットハンドにおいて、物体を握り込みする際に、前記指の第1能動関節を握り込み動作するように前記物理量検出手段の検出値に基づいて所定速度で速度制御する第1制御手段と、前記第1制御手段の制御により、指リンクが前記物体に接触した際に、接触した前記指リンクの根元側に位置する第1能動関節を、前記指リンクに作用する接触力が所定値となるように前記触覚手段が検出した接触力に基づいて力制御する第2制御手段を備え、前記第2制御手段は、前記関節軸に交差し、指先側の指リンクと物体との接触点を結ぶ直線が、指の中心線に位置するように前記第2能動関節を位置制御することを特徴とするロボットハンドを要旨とするものである。
【0016】
請求項の発明は、請求項において、前記第1制御手段は、前記物体が指又は掌に接触したことを起点として前記速度制御を開始することを特徴とする。
請求項の発明は、請求項又は請求項において、前記第1制御手段は、指の根元側に位置する第1能動関節ほど指先側に位置する他の第1能動関節よりも、前記所定速度を相対的に大きな値にして速度制御することを特徴とする。
【0018】
請求項の発明は、請求項乃至請求項のうちいずれか1項において、前記複数の指リンクに係る複数の第1能動関節のそれぞれに対して、第1制御手段及び第2制御手段は、独立して実行制御することを特徴とする。
【0019】
請求項の発明は、握り込み動作が可能な複数の第1能動関節により複数の指リンクが連結された指を掌に備え、前記指リンクのうち、掌側の指リンクと掌との間には、前記第1能動関節の握り込み動作の方向とは直交する方向の回転であって、関節軸を中心に往復回転する単一の第2能動関節を備えたロボットハンドを有し、同ロボットハンドをロボットアームに連結したロボットの制御方法において、物体が前記ロボットハンドの掌に接触したとき、掌でのその接触位置が、掌の所定位置となるように、前記ロボットアームを制御する第1ステップと、物体を握り込みする際に、前記指の第1能動関節を握り込み動作するように所定速度で速度制御する第2ステップと、前記速度制御後に、指リンクが前記物体に接触した際に、接触した前記指リンクの根元側に位置する第1能動関節を、前記指リンクに作用する接触力が所定値となるように力制御する第3ステップとを含み、前記第3ステップでは、前記関節軸に交差し、指先側の指リンクと物体との接触点を結ぶ直線が、指の中心線に位置するように位置制御することを特徴とするロボットの制御方法を要旨とするものである。
【0020】
請求項10の発明は、請求項において、前記第1ステップは、前記物体が指又は掌に接触したことを起点として開始することを特徴とする。
請求項11の発明は、請求項10において、前記第2ステップは、第1ステップの制御が終了後、開始することを特徴とする。
【0023】
請求項12の発明は、請求項乃至請求項11のうちいずれか1項において、前記複数の指リンクに係る複数の第1能動関節に対して、独立して前記第2ステップ及び第3ステップを実行制御することを特徴とする。
【0024】
請求項13の発明は、握り込み動作が可能な複数の第1能動関節により複数の指リンクが連結された指を掌に備え、前記指リンク及び掌に接触力を検出する触覚手段を備え、前記第1能動関節の作動に応じた物理量を検出する物理量検出手段を備え、前記指リンクのうち、掌側の指リンクと掌との間には、前記第1能動関節の握り込み動作の方向とは直交する方向の回転であって、関節軸を中心に往復回転する単一の第2能動関節を備えたロボットハンドを有し、同ロボットハンドをロボットアームに連結したロボットにおいて、物体が前記ロボットハンドの掌に接触したとき、掌でのその接触位置が、掌の所定位置となるように、前記ロボットアームを制御するロボットアーム制御手段と、物体を握り込みする際に、前記指の第1能動関節を握り込み動作するように前記物理量検出手段の検出値に基づいて所定速度で速度制御する第1制御手段と、前記第1制御手段の制御により、指リンクが前記物体に接触した際に、接触した前記指リンクの根元側に位置する第1能動関節を、前記指リンクに作用する接触力が所定値となるように前記触覚手段が検出した接触力に基づいて力制御する第2制御手段を備え、前記第2制御手段は、前記関節軸に交差し、指先側の指リンクと物体との接触点を結ぶ直線が、指の中心線に位置するように前記第2能動関節を位置制御することを特徴とするロボットを要旨とするものである。
【0025】
請求項14の発明は、請求項13において、前記第1制御手段は、前記物体が指又は掌に接触したことを起点として前記速度制御を開始することを特徴とする。
【0026】
請求項15の発明は、請求項13又は請求項14において、前記第1制御手段は、指の根元側に位置する第1能動関節ほど指先側に位置する他の第1能動関節よりも、前記所定速度を相対的に大きな値にして速度制御することを特徴とする。
【0028】
請求項16の発明は、請求項13乃至請求項15のうちいずれか1項において、前記複数の指リンクに係る複数の第1能動関節のそれぞれに対して、第1制御手段及び第2制御手段は、独立して実行制御することを特徴とする。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1~図11を参照して説明する。
図1はロボットハンドを有するロボットの概略を示す斜視図、図2は握り反射の説明図、図3はロボットにおける7自由度の関節機構の説明図である。
【0030】
ロボットRは、肩部11Aを備えたベース11、アーム部12、及びロボットハンド13を備えており、7自由度ロボットとして構成されている。
肩部11Aは、軸線M1,M2を備えた2つの部位からなり、軸線M1は、ベース11に対して関節k1を介して連結され、軸線M2は関節k2を介して軸線M1に対して連結されている。関節k1,k2は、軸線M1,M2をそれぞれ同軸線の周りで回転させるためのものである。
【0031】
アーム部12は、第1アーム12A、第2アーム12Bを備えている。第1アーム12Aの軸線L1は、関節k3を介して軸線M2に連結されている。第2アーム12Bの軸線L2は、関節k4を介して軸線L1に連結されている。前記関節k3は、軸線L1を軸線M2に対して屈曲するためのもの、関節k4は軸線L2を軸線L1に屈曲するためのものである。関節k5は、軸線L2の周りで軸線L2を回転するためのものである。
【0032】
ロボットハンド13の掌14は関節k6,k7を介して連結されている。関節k6は掌14を回転するためのものであり、関節k7は、掌14を軸線L2に対して屈曲するためのものである。
【0033】
前記関節k4は、肘関節であって、関節k4の位置は関節k3,k6を結ぶ線Nを中心とする回転軌道上において、任意の角度φを得ることができる。
前記関節k1~k7は、能動関節であって、モータ等の駆動装置が連結されており、同駆動装置により、所定の回転、又は屈曲を付与する。
【0034】
又、各関節k1~k7にはエンコーダe1~e7が設けられ(図4参照)、同エンコーダe1~e7により、各関節k1~k7の現在位置を示す検出角度が検出される。そして、これらの検出角度に基づいて後記するロボット制御装置20により、掌位置S(掌14の中心位置)が演算可能とされている。
【0035】
エンコーダe1~e7は、ロボットアーム物理量検出手段に相当する。関節k1~k7、アーム部12は、ロボットアームを構成している。
次に、ロボットハンド13について説明する。
【0036】
本実施形態のロボットハンド13は人間と同様に掌14と、拇指15と4本の指16を備えている。
なお、本明細書の詳細な説明の中において、ロボットハンド13に関して、単に「指」と記載している場合は、拇指15及び指16も含む趣旨であるが、実施形態において、符号付の「指16」は、拇指15を含まない趣旨である。
【0037】
拇指15は4関節4自由度を備えている。すなわち、拇指15は第1指リンク~第3指リンク15a~15cを備え、第1指リンク15aは、関節軸Wを中心にして第1関節P1により、内外転可能(往復回転可能)にされている(図9参照)。なお、内外転とは、掌14を含む仮想平面S1に沿った回転であって、前記関節軸Wは、仮想平面S1に対して直交する。第2関節P2による屈曲方向の回転と、第1関節P1による内外転する方向の回転は、互いに直交する方向の回転とされている。
【0038】
又、第1指リンク15aは第2関節P2により、図8に示すように掌14を含む仮想平面S1に沿った位置を起点として、掌14に向かう屈曲方向と屈曲した位置から反屈曲方向に移動可能とされている。なお、掌14に向かう屈曲方向の場合を前屈といい、反屈曲方向を後屈ということがある。第2指リンク15bは、第3関節P3により、第1指リンク15aに対して掌14に向かう屈曲方向と屈曲した位置から反屈曲方向に移動可能とされている。又、第3指リンク15cは、第4関節P4により、第2指リンク15bに対して掌14に向かう屈曲方向と屈曲した位置から反屈曲方向に移動可能とされている。なお、拇指15は、その第3指リンク15cの先端(指先)が、他の指16の第3指リンク16cの先端(指先)に対して対向可能に配置されている。
【0039】
前記拇指15の4つの関節はモータ等からなるそれぞれ1つのアクチュエータで駆動される。本実施形態では、アクチュエータはモータから構成されている。又、拇指15を除く、他の指16は4関節3自由度を備えている。
【0040】
すなわち、他の指16は第1指リンク~第3指リンク16a~16cを備え、第1指リンク16aは、第1関節P1により、内外転可能(往復回転可能)にされている(図9参照)。なお、内外転とは、掌14を含む仮想平面S1に沿った回転であって、前記関節軸Wは、仮想平面S1に対して直交する。第2関節P2による屈曲方向の回転と、第1関節P1による内外転する方向の回転は、互いに直交する方向の回転とされている。
【0041】
第2指リンク16bは、第3関節P3により、第1指リンク16aに対して掌14に向かう屈曲方向と屈曲した位置から反屈曲方向に移動可能とされている。又、第3指リンク16cは、第4関節P4により、第2指リンク16bに対して掌14に向かう屈曲方向と屈曲した位置から反屈曲方向に移動可能とされている。
【0042】
拇指15以外の他の指16では、指先側の2つの関節(第3関節P3と第4関節P4)は、モータ等からなる1つのアクチュエータで駆動され、残りの他の関節(第1関節P1と第2関節P2)はそれぞれ1つのモータ等からなるアクチュエータにて駆動されるように構成されている。すなわち、拇指15以外の他の4本の指では、第3関節P3と第4関節P4とは連動するように構成されている。
【0043】
拇指15の第2~第4関節P2~P4は握り込み動作が可能な第1能動関節に相当する。又、拇指15を除く指16の第2及び第3関節P2,P3は握り込み動作が可能な第1能動関節に相当する。又、拇指15、及び指16の第1関節P1は、指リンクのうち、掌側の指リンクと掌との間に設けられ、第1能動関節の握り込み動作の方向とは直交する方向の回転であって、関節軸を中心に往復回転する単一の第2能動関節に相当する。又、拇指15及び指16の屈曲方向は握り込み動作の方向に相当する。
【0044】
拇指15の第1~第4関節P1~P4、及び拇指15を除く他の指16の第1~第3関節P1~P3にはそれぞれエンコーダf1~f4、又はf1~f3が設けられ(図4参照)、同エンコーダにより、各関節の現在位置を示す検出角度が検出される。前記エンコーダf1~f4は、物理量検出手段に相当する。
【0045】
掌14、並びに拇指15、及び他の4本の指16の指腹部には所定の面積を有する触覚センサ18がそれぞれ設けられている。本実施形態では、触覚センサ18は、掌14又は各指リンクに物が接触した際の接触力を検出するためのものである。各触覚センサ18は、所定の広がりを有する面積Hを備えており、所定面積単位H1(<H)毎に接触力が検出できるようにされている。
【0046】
図4は、ロボットRを制御するロボット制御装置20(ECU)の電気ブロック図である。ロボット制御装置20は、ロボットアーム制御手段、第1及び第2制御手段に相当する。
【0047】
ロボット制御装置20には、拇指15の触覚センサ18、エンコーダf1~f4が接続されている。又、拇指15を除く他の指の触覚センサ18、エンコーダf1~f3が接続されている。又、掌14の触覚センサ18並びにエンコーダe1~e7が接続されている。
【0048】
又、ロボット制御装置20は、拇指15、指16の各エンコーダf1~f3,f1~f4、並びにベース11、アーム部12に設けたエンコーダe1~e7からの検出角度に基づいて各種制御を行うための制御値を演算し、その制御値を拇指15、各指16、並びにk1~k7の各駆動装置に出力する。駆動装置はその制御値に基づいて、アクチュエータ(関節P1~P4のモータ、関節k1~k7のモータ)を駆動する。
【0049】
なお、図4においては、説明の便宜上、指16用については、出力側は1つの指16用のみを図示し、他の指16用については、簡略してブロックのみ図示している。又、同図では、入力側の指16用については、拇指15用とは、f4のみが省略された構成の相違だけであるため、簡略してブロックのみ図示している。
【0050】
ロボット制御装置20は、図示しないCPU、ROM、RAMを備えており、RAMには、前記各種制御を実行するためのプログラムがロードされているものとする。
【0051】
(実施形態の作用)
さて、上記のように構成されたロボットの作用について説明する。
本実施形態でのロボットの制御は、未知形状物体把持のための、生後10ヶ月ごろまで乳児が行う握り反射を模した制御方法により行う。
【0052】
握り反射とは、生後10ヶ月まで乳児は掌に棒を当てると5本の指を屈曲させ、棒を強固に把握し、棒を引き離そうとすると、さらに強固に把握することである。図2は握り反射の説明図である。本実施形態では、触覚センサ18により、刺激、筋肉、掌の皮膚を置き換える。又、ロボット制御装置20により、大脳運動野、脊髄を置き換える。又、ロボットハンド13に不随のアクチュエータを手を曲げる筋肉に置き換えるものである。
【0053】
なお、握り反射は、手が物体に接触し発生する握り動作と、手から物体を引き離そうとしたときに起こる保持動作の2つの状態に分けられる。
本実施形態では、特に、前者の握り動作の状態について、模している。
【0054】
この握り動作について考察すると、この動作は、把持対象である物体の接触点数を最大化し、物体を拇指15と他の指16で包み込むことができるため、未知形状物体の把持の可能性をより高めるものである。
【0055】
図5は、本実施形態のロボット制御装置20が実行するアーム部制御プログラムであり、所定の周期で実行する。
ステップ10(以下、ステップをSという)では、物体Bが掌14の触覚センサ18に接触したか否かを判定する。物体Bがロボットハンド13に接触すると、前記触覚センサ18がロボット制御装置20に検出信号を入力するため、S10の判定を「YES」として、S20に移行し、検出信号を入力していない場合には、S10の判定を「NO」として、このプログラムを一旦終了する。
【0056】
S20に移行すると、ロボット制御装置20はロボットハンド13と物体Bとの接触点(接触位置)が掌14の中央部(中心位置:以下、掌位置Sという)に移動するように、各関節k1~k7のアクチュエータを駆動してアーム部12、及び掌14の位置制御を行う。
【0057】
すなわち、掌14の触覚センサ18は、所定の広がりを有する面積Hを備えており、所定面積単位H1毎に接触力が検出できるようにされている。そして、接触力の分布の中心位置を接触点とし、ロボット制御装置20は、前記接触点となりうる座標位置と、掌位置Sの座標位置を、予めROMに格納している。
【0058】
そして、ロボット制御装置20は前記接触点が、掌位置S(掌14の中心位置)と一致するように、各関節k1~K7のモータに設けたエンコーダe1~e7の検出角度に基づいて、アーム部12等の関節k1~k7のアクチュエータを位置制御する。
【0059】
この位置制御を終了すると、ロボット制御装置20は図6に示す握り込み制御プログラムを実行する。なお、この握り込み制御プログラムは、拇指15においては、第2関節P2~第4関節P4に対して、他の4本の指16においては第2関節P2及び第3関節P3に対して、それぞれ所定周期毎に順次実行する。
【0060】
ここで、本制御プログラムの原理について説明する。
本制御プログラムでは、前述した拇指15の第2関節P2~第4関節P4及び指16の第2関節P2,第3関節P3にそれぞれ隣接する指先側に位置する指リンクの接触力が目標接触力に一致するように、各関節に対して独立に制御するものである。
【0061】
なお、本制御プログラム中の説明では、拇指15、及び拇指15以外の指16も含めて単に指として説明する。
図8は、i番目の指と物体Bとの間の接触状態を示している。ただし、θijとFijはそれぞれi番目の指のj番目の関節角と、j番目の指リンクの接触力の総和を表している。なお、図8において、便宜上、Fi0は、掌14の接触力の総和としている。ロボットハンド13の指が物体Bと非接触時には速度制御、物体Bと接触時には力制御を行うことが好適である。なお、前記接触力の総和は、各触覚センサ18は、前記したように面積Hを有し、かつ所定面積単位H1毎に接触力が検出できるようにされていることから、この面積H分にて検出した接触力の総和を意味する。接触力の総和Fijは、検出したその時々にCPUにて演算される。
【0062】
i指のj関節を駆動するモータ入力Eijは、式(1)で設定している。
【0063】
【数1】
JP0003742876B2_000002t.gifここで(1)式中のKVijはi指のj関節の速度フィードバックゲインである。
【0064】
又、
【0065】
【数2】
JP0003742876B2_000003t.gifはi指のj関節の目標速度である。
【0066】
(指が物体Bに非接触の場合)
ロボットハンド13に物体Bが接触し、指の屈曲が始まり、指が物体Bに接触するまでの間には、各関節の目標速度は下記の(2)式で与えている。
【0067】
【数3】
JP0003742876B2_000004t.gifここで、上記(2)式中の
【0068】
【数4】
JP0003742876B2_000005t.gifは関節の一定目標速度である。
【0069】
本実施形態では、前記各関節の目標速度は指の根元側に位置している関節ほど相対的な大きな値とし、指先側に位置している関節ほど相対的に小さな値としている。これによって、一般的には、指の根元側の指リンクから物体Bに接触することになる。
【0070】
(指が物体Bに接触した場合)
指の屈曲により、指が物体Bに接触している間は、各関節の目標速度は下記の(3)式に設定している。
【0071】
【数5】
JP0003742876B2_000006t.gifここで、(3)式中のKfijは力フィードバックゲイン、Kfgijは力積分ゲイン、Fdijは目標接触力である。これらは、接触状態にある指リンクを力フィードバック制御することを意味している。均一な力での把持を実現するときには、すべての目標接触力を同じ値にする。
【0072】
上記のことを前提として、図6に示す制御プログラムが実行されると、S50で、拇指15又は他の指16の触覚センサ18が物体Bの接触を検出したか否かを判定する。物体Bの接触がない場合には、S60に移行する。
【0073】
S60では、前記(2)式で各関節の目標速度を設定し、S80に移行する。物体Bの接触があった場合には、S70に移行し、前記(3)式で、各関節の目標速度を設定する。すなわち、S70では、力フィードバック制御するための設定が行われる。
【0074】
S60又はS70からS80に移行すると、S80では前記(1)式でモータ入力を演算する。次のS90で、当該制御すべき関節に係る駆動装置に対して、S80で演算したモータ入力値(制御値)を出力し、この制御プログラムを一旦終了する。入力された駆動装置は、このモータ入力値に基づいてモータを駆動し、当該関節を駆動する。
【0075】
(従属な関係を有する指16について)
本実施形態では、指16については、第3関節P3と第4関節P4とは連動して動くため、その2つの関節を独立制御していない。このため、第2指リンク15bと第3指リンク15cとが物体Bと同時に接触している場合には、目標接触力はFi3とFi4との間でどちらか大きな方を選択し、それが目標値となるように本実施形態では、制御している。
【0076】
(第1関節の内外転制御)
次に、図7は、拇指15及び指16の第1関節P1の内外転制御プログラムであって、ロボット制御装置20は、それぞれ所定周期毎に順次実行する。
【0077】
この制御プログラムは、第1関節P1を物体Bの大きさに合わせて拇指15及び指16が内外転駆動して位置制御するためのものである。
図7に示す制御プログラムが実行されると、S100で、拇指15又は他の指16の触覚センサ18が物体Bの接触を検出したか否かを判定する。物体Bの接触がない場合には、判定を「NO」とし、この制御プログラムを一旦終了する。
【0078】
物体Bが拇指15又は他の指16の触覚センサ18に触れていると、触覚センサ18がロボット制御装置20に検出信号を入力するため、S100の判定を「YES」として、S110に移行する。
【0079】
S110に移行すると、ロボット制御装置20はi指の第1関節P1を駆動するモータ入力Ei1は下記式(4)で設定する。
【0080】
【数6】
JP0003742876B2_000007t.gifここで、(4)式中のKpi1は位置フィードバックゲイン、θdi1は目標関節角である。目標関節角θdi1は、図9に示すように、拇指15や他の指16の中心線Tと、各指リンクにおいて分布して存在する接触点q1~q3の最小二乗近似直線Qが一致するように最小二乗法を用いて別の図示しない制御プログラムにより決定している。
【0081】
この最小二乗近似直線Qは、第1関節P1の関節軸Wと交差するように決定している。最小二乗近似直線Qは、指先側の指リンクと物体との接触点を結ぶ直線に相当する。
【0082】
ロボット制御装置20はモータ入力Ei1を演算すると、このモータ入力値(制御値)を第1関節P1の当該駆動装置に出力し、この制御プログラムを一旦終了する。前記モータ入力値(制御値)が入力された駆動装置は、このモータ入力値に基づいてモータを駆動し、当該第1関節P1を駆動する。
【0083】
上記のように、本実施形態によれば、未知形状の物体Bに対して器用な把持を実現できる。
物体Bがロボットハンド13に接触すると、各指リンク15a~15c,16a~16cは接触を実現するために、指が屈曲しはじめる。第3指リンク15c,16cの先端(以下、指先という)が接触し、指の根元側の指リンクが物体Bに接触しない場合(図10参照)、第2関節P2は目標速度となるように制御されるため、指先の接触力が増大する。しかし、第3関節P3の力制御により、物体Bの表面から指を引き離す方向に駆動されて指先の接触力は目標接触力に調整されることになる(図11の矢印参照)。その結果、指先は屈曲方向とは反対方向に開き、根元側の指リンクが物体Bに接触するようになる。そして、最終的に、各指リンクにおける接触点が目標接触力で制御される。
【0084】
一方、指の根本側の指リンクが物体Bに接触し、指先が接触しない場合、指先は物体B表面へ向かう方向に速度制御される。その結果、指先が閉じ(指先側の指リンクが屈曲し)、指先が物体Bに接触するようになり、各接触点は、所定の目標接触力で制御される。この結果、最終的には、全ての物体Bに対する接触力は一様な力に調整されることになる。
【0085】
又、拇指15、及び指16と物体Bとの接触時においては、図9に示すように第1関節P1は、指の中心線Tと、接触点と第1関節P1とを結ぶ最小二乗近似直線Qとがほぼ一致する角度となるように位置制御するため、指の側部に物体Bが接触しても、指の腹部中心に接触するようになる。この結果、物体Bの大きさに応じた指の開きが実現される。この結果、物体Bへの接触点を最大化することができる。
【0086】
又、拇指15と他の指16とで物体Bを包み込むことができる。
本実施形態によると、次のような作用効果を奏する。
(1) 本実施形態では、物体Bを握り込みする際に、指リンクが物体Bに非接触時には、拇指15の第2~第4関節P2~P4(第1能動関節)、指16の第2及び第3関節P2,P3(第1能動関節)を握り込み動作するように所定速度で速度制御するようにした(請求項1の第1ステップ)。そして、この後、指リンクが物体Bに接触した際に、接触した前記指リンクの根元側に位置する拇指15の第2~第4関節P2~P4、指16の第2及び第3関節P2,P3を、前記指リンクに作用する接触力が目標接触力(所定値)となるように力制御するようにした(請求項1の第2ステップ)。
【0087】
この結果、物体Bの把持まで時間を要せず、物体形状に依存しないで安定して未知の形状物体を把持することができる。
特に、本実施形態では、指16とこの指に対向する拇指15を設けているため、これらで物体Bを包み込むことができる。この点からも把持する対象の物体Bに接触の形状情報を利用する必要がない。
【0088】
(2) 本実施形態では、速度制御を行うステップ(請求項1の第1ステップ)は、物体Bが掌14に接触したことを起点として開始するようにした。
この結果、物体Bに掌14が接触したとき、上記(1)の作用効果を実現できる。
【0089】
(3) 本実施形態では、速度制御を行うステップ(請求項1の第1ステップ)では、指の根元側に位置する拇指15の第2~第4関節P2~P4、指16の第2及び第3関節P2,P3ほど指先側に位置する他の関節よりも、目標速度(所定速度)を相対的に大きな値にして速度制御するようにした。
【0090】
この結果、一般的には、指の根元側の指リンクから把持する物体Bに接触することが可能となる。
(4) 本実施形態のロボットハンドの握り込み制御方法では、拇指15及び指16の屈曲方向(握り込み動作の方向)とは直交する方向の回転であって、関節軸Wを中心に往復回転する第1関節P1(第2能動関節)を備えるようにした。そして、次のステップ(請求項1の第2ステップ)において、第1関節P1の内外転制御では、関節軸W軸に交差し、指先側の指リンクの物体Bとの接触点を結ぶ最小二乗近似直線Qが、指の中心線Tに位置するように位置制御するようにした。
【0091】
この結果、指の側部に物体Bが接触しても、指の腹部中心に接触するようになり、物体Bの大きさに応じた指の開きが実現される。
(5) 本実施形態のロボットハンドの握り込み制御方法では、複数の指リンクに係る拇指15の第2~第4関節P2~P4、指16の第2及び第3関節P2,P3(第1能動関節)を、独立して各ステップを実行制御するようにした。
【0092】
この結果、各関節は独立に安定に制御されるため、把持の安定性が確保できる。
(6) 本実施形態のロボットハンド13では、第2関節P2~第4関節P4(第1能動関節)にて複数の指リンクを連結構成した拇指15を、掌14に備えるようにした。又、第2関節P2及び第3関節P3(第1能動関節)にて複数の指リンクを連結構成した複数の指16を、掌14に備えるようにした。
【0093】
そして、指リンク及び掌14に接触力を検出する触覚センサ18(触覚手段)を備えた。又、第2関節P2~第4関節P4の作動に応じた角度(物理量)を検出するエンコーダf1~f4(物理量検出手段)を備えるようにした。
【0094】
そして、ロボット制御装置20(第1制御手段)は、物体Bを握り込みする際に、拇指15の第2関節P2~第4関節P4、及び指16の第2関節P2及び第3関節P3を握り込み動作するようにエンコーダf1~f4の検出角度(検出値)に基づいて目標速度(所定速度)で速度制御するようにした。
【0095】
さらに、ロボット制御装置20(第2制御手段)は、指リンクが物体Bに接触した際に、接触した指リンクの根元側に位置する第2~第4関節P4を、指リンクに作用する接触力が所定値となるように触覚センサ18が検出した接触力に基づいて力制御するようにした。
【0096】
この結果、物体Bの把持まで時間を要せず、物体形状に依存しないで安定して未知の形状物体を把持することができる。
(7) 本実施形態のロボットハンド13では、ロボット制御装置20(第1制御手段)は、物体B体が掌14に接触したことを起点として速度制御を開始するようにした。
【0097】
この結果、物体Bに掌14が接触したとき、上記(5)の作用効果を実現できる。
(8) 本実施形態のロボットハンド13では、ロボット制御装置20(第1制御手段)は、指の根元側に位置する拇指15の関節、及び指16の関節ほど指先側に位置する他の関節よりも、目標速度(所定速度)を相対的に大きな値にして速度制御するようにした。
【0098】
この結果、一般的には、指の根元側の指リンクから把持する物体Bに接触することが可能となる。
(9) 本実施形態のロボットハンド13では、拇指15及び指16の屈曲方向(握り込み動作の方向)とは直交する方向の回転であって、関節軸Wを中心に往復回転する第1関節P1(第2能動関節)を備えるようにした。
【0099】
そして、ロボット制御装置20(第2制御手段)は、第1関節P1の内外転制御では、関節軸W軸に交差し、指先側の指リンクの物体Bとの接触点を結ぶ最小二乗近似直線Qが、指の中心線Tに位置するように位置制御するようにした。
【0100】
この結果、指の側部に物体Bが接触しても、指の腹部中心に接触するようになり、物体Bの大きさに応じた指の開きが実現される。
(10) 本実施形態では、複数の指リンクに係る拇指15の第2関節P2~第4関節P4、及び指16の第2関節P2及び第3関節P3(第1能動関節)のそれぞれに対して、ロボット制御装置20(第1制御手段及び第2制御手段)は、独立して実行制御した。
【0101】
この結果、各関節は独立に安定に制御されるため、把持の安定性が確保できる。
(11) 本実施形態では、物体Bがロボットハンド13の掌14に接触したとき、掌14でのその接触位置が、掌の中心位置である掌位置S(所定位置)となるように、関節k1~k7、及びアーム部12(ロボットアーム)を制御するようにした(請求項の第1ステップ)。そして、物体Bを握り込みする際に、指リンクが物体Bに非接触時には、拇指15の第2~第4関節P2~P4(第1能動関節)、指16の第2及び第3関節P2,P3(第1能動関節)を握り込み動作するように所定速度で速度制御するようにした(請求項の第2ステップ)。
【0102】
さらに、この後、指リンクが物体Bに接触した際に、接触した前記指リンクの根元側に位置する拇指15の第2~第4関節P2~P4、指16の第2及び第3関節P2,P3を、前記指リンクに作用する接触力が目標接触力(所定値)となるように力制御するようにした(請求項の第3ステップ)。
【0103】
この結果、上記(1)の効果に加えて、掌14の中心位置に物体Bを位置させた上で、物体Bを把持することができる。
(12) 本実施形態では、前記(11)の第1ステップは、物体Bが掌14に接触したことを起点として開始するようにした。
【0104】
この結果、物体Bに掌14が接触した時、上記(11)の作用効果を実現できる。
(13) 本実施形態では、前記(11)の第2ステップは、(11)の第1ステップの制御が終了後、開始するようにした。
【0105】
この結果、(11)の第1ステップのアーム部12等の位置制御が完了しているため、同時に両ステップを実行する場合に比してロボット制御装置20の演算負荷を軽減することができる。
【0106】
(14) 本実施形態では、前記(11)の第2ステップ(請求項の第2ステップ)では、指の根元側に位置する拇指15の第2~第4関節(第1能動関節)、指16の第2及び第3関節(第1能動関節)ほど指先側に位置する他の関節よりも、目標速度を相対的に大きな値にして速度制御するようにした。
【0107】
この結果、一般的には、指の根元側の指リンクから把持する物体に接触することが可能となる。
(15) 本実施形態のロボットRのロボットハンドの握り込み制御方法では、拇指15及び指16の屈曲方向(握り込み動作の方向)とは直交する方向の回転であって、関節軸Wを中心に往復回転する第1関節P1(第2能動関節)を備えるようにした。そして、次のステップ(請求項の第3ステップ)において、第1関節P1の内外転制御では、関節軸W軸に交差し、指先側の指リンクの物体Bとの接触点を結ぶ最小二乗近似直線Qが、指の中心線Tに位置するように位置制御するようにした。
【0108】
この結果、指の側部に物体Bが接触しても、指の腹部中心に接触するようになり、物体Bの大きさに応じた指の開きが実現される。
(16) 本実施形態のロボットの制御方法では、複数の指リンクに係る拇指15の第2~第4関節P2~P4、指16の第2及び第3関節P2,P3(第1能動関節)を、独立して各ステップを実行制御するようにした。
【0109】
この結果、ロボットRとして上記(5)と同様の効果を得ることができる。
(17) 本実施形態では、上記(6)で述べた構成に加えて、アーム部12(ロボットアームを構成する)に連結したロボットハンド13を備えたロボットRとした。そして、ロボット制御装置20(ロボットアーム制御手段)は、物体Bがロボットハンド13の掌14に接触したとき、掌14でのその接触位置が、掌位置S(所定位置)となるように、アーム部12等(ロボットアーム)を制御するようにした。
【0110】
この結果、上記(6)と同様の効果を奏するロボットとすることができる。
(18) 本実施形態のロボットRは、ロボット制御装置20(第1制御手段)が、物体Bが掌14に接触したことを起点として速度制御を開始するようにした。この結果、上記(7)と同様の効果を奏する。
【0111】
(19) 本実施形態のロボットRは、ロボット制御装置20(第1制御手段)が、指の根元側に位置する拇指15の関節、及び指16の関節ほど指先側に位置する他の関節よりも、目標速度(所定速度)を相対的に大きな値にして速度制御するようにした。
【0112】
この結果、上記(8)と同様の効果を奏する。
(20) 本実施形態のロボットRは、拇指15及び指16の屈曲方向(握り込み動作の方向)とは直交する方向の回転であって、関節軸Wを中心に往復回転する第1関節P1(第2能動関節)を備えるようにした。
【0113】
そして、ロボット制御装置20(第2制御手段)は、第1関節P1の内外転制御では、関節軸W軸に交差し、指先側の指リンクの物体Bとの接触点を結ぶ最小二乗近似直線Qが、指の中心線Tに位置するように位置制御するようにした。
【0114】
この結果、ロボットRとして上記(9)と同様の効果を奏する。
(21) 本実施形態のロボットRは、複数の指リンクに係る拇指15の第2関節P2~第4関節P4、及び指16の第2関節P2及び第3関節P3(第1能動関節)のそれぞれに対して、ロボット制御装置20(第1制御手段及び第2制御手段)は、独立して実行制御した。
【0115】
この結果、ロボットRとして上記(10)と同様の効果を奏する。
本発明の実施形態は、上記実施形態以外に次のように変更することも可能である。
【0116】
(1) 前記実施形態では、ロボットRを7自由度ロボットとして構成したが、6自由ロボット以上であれば良い。
(2) 前記実施形態では、握り反射の中で、掌14が物体に接触し発生する握り動作を模しするようにしたが、さらに、握り反射において、掌14から物体を引き離そうとしたときに起こる保持動作を模しするようにしてもよい。
【0117】
この場合、物体Bが保持された状態から変化して、ロボットハンド13から離れようとしたときを触覚センサ18が検出した際、(3)式中の目標接触力Fdijを大きな値に変化させる。こうすると、物体Bがロボットハンド13から離れることを防止し、把持を維持することができる。
【0118】
(3) 前記実施形態では、均一な力での把持を実現することを目標とするように、目標接触力を同じ値となるように設定した。さらに、把持のときの接触点が確定した時点で、接触力の総和が重力や、外力と釣り合うように、各接触点での目標接触力を調整してもよい。こうすると、より安定な把持を実現することができる。
【0119】
(4) 又、上記実施形態での把持の仕方は、指先による物体のつまみ上げに応用することもできる。
すなわち、上記(1)式の目標速度(数2で示した、i指のj関節の目標速度)を上記実施形態とは異なり、逆に、各関節の目標速度を指先側を大きな値とし、指の根元側を小さい値とする。こうすると、さらに、指の第1指リンクと第2指リンクに物体Bとの接触が生じたときは、その接触を回避するように後屈方向に、接触が生じない角度まで位置制御し、指先の第3指リンクのみ接触し、目標接触力となるように制御する。この結果、指先での物体のつまみが実現される。
【0120】
(5) 前記実施形態において、作用効果の(1)で述べた第1ステップ(請求項1の第1ステップ)は、物体Bが掌に接触したことを起点として開始するようにしたが、物体Bにいずれかの指リンクに接触したことを起点として、開始するようにしてもよい。こうすると、物体Bに指が接触したとき、前記実施形態における(1)の作用効果を実現できる。
【0121】
(6) 前記実施形態では、いわゆる5本の指を有する多指ロボットハンド及び多指ロボットハンドを有するロボットに具体化した。この代わりに、指本数を減らした、1乃至3本の指を有するロボットハンド及びロボットハンドを有するロボットに具体化してもよい。
【0122】
(7) 前記実施形態では、第1関節P1の内外転制御において、目標関節角θdi1は、図9に示すように、拇指15や他の指16の中心線Tと、各指リンクにおいて分布して存在する接触点の最小二乗近似直線Qが一致するように最小二乗法を用いて別の図示しない制御プログラムにより決定した。
【0123】
これに代えて、第1関節P1の内外転制御において、目標関節角θdi1は、拇指15や他の指16の中心線Tに近傍に設定した線と、各指リンクにおいて分布して存在する接触点q1~q3の最小二乗近似直線Qが一致するように最小二乗法を用いて決定してもよい。
【0124】
こうすると、ロボット制御装置20は、指先側の指リンクと物体との接触点を結ぶ直線が、その中心線Tの近傍に位置するように位置制御することになる。
【0125】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1乃至請求項16の発明によれば、物体把持まで時間を要せず、物体形状に依存しないで安定して未知の形状物体を把持することができる。さらに、指の側部に物体が接触しても、指の腹部中心に接触するようになり、物体の大きさに応じた指の開きが実現できる。
【0126】
請求項3、請求項、請求項15の発明によれば、指の根元側の指リンクから把持する物体に接触することが可能となる
【0127】
請求項、請求項、請求項12、請求項16の発明によれば、各能動関節は独立に安定に制御されるため、把持の安定性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した実施形態のロボットの概略斜視図。
【図2】握り反射の説明図。
【図3】ロボットにおける7自由度の関節機構の説明図。
【図4】ロボットRを制御するロボット制御装置20(ECU)の電気ブロック図。
【図5】ロボット制御装置20が実行する制御フローチャート図。
【図6】同じくロボット制御装置20が実行する制御フローチャート図。
【図7】ロボット制御装置20が実行する制御フローチャート図。
【図8】i番目の指と物体Bとの間の接触状態を示す説明図。
【図9】指の中心線Tと、各指リンクの接触点に関する最小二乗近似直線Qとの関係を示す説明図。
【図10】指の接触状態を示す説明図。
【図11】同じく指の接触状態を示す説明図。
【符号の説明】
11…ベース11、11A…肩部
12…アーム部12(ロボットアームの一部を構成する)
13…ロボットハンド
14…掌
15…拇指(指)、
15a~15c…第1指リンク~第3指リンク(指リンク)
16…指
16a~16c…第1指リンク~第3指リンク(指リンク)
18…触覚センサ(触覚手段)
20…ロボット制御装置(ロボットアーム制御手段、第1及び第2制御手段)
e1~e7…エンコーダ(ロボットアーム物理量検出手段))
f1~f4…エンコーダ(物理量検出手段)
P1…第1関節(拇指15、指16の第2能動関節)
P2…第2関節(拇指15、指16の第1能動関節)
P3…第3関節(拇指15、指16の第1能動関節)
P4…第4関節(拇指15の第1能動関節)
W…関節軸
q1~q3…接触点
Q…最小二乗近似直線
T…中心線
k1~k7…関節(ロボットアームの一部を構成する)
B…物体
R…ロボット
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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