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明細書 :高リン光性トリフェニレン誘導体

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4100933号 (P4100933)
公開番号 特開2003-252880 (P2003-252880A)
登録日 平成20年3月28日(2008.3.28)
発行日 平成20年6月11日(2008.6.11)
公開日 平成15年9月10日(2003.9.10)
発明の名称または考案の名称 高リン光性トリフェニレン誘導体
国際特許分類 C07F   7/08        (2006.01)
C09K  11/06        (2006.01)
FI C07F 7/08 W
C09K 11/06 660
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2002-051024 (P2002-051024)
出願日 平成14年2月27日(2002.2.27)
審査請求日 平成17年1月13日(2005.1.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】松本 英之
【氏名】久新 荘一郎
【氏名】田中 陵二
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
審査官 【審査官】藤森 知郎
参考文献・文献 特開2004-182737(JP,A)
調査した分野 CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
トリフェニレン骨格に、一般式-SiR(式中、Rはそれぞれ水素原子、アルキル基、ビニル基又はアリル基を表し、Rのうち少なくとも2個はアルキル基である。)で表されるアルキルシリル基を有するトリフェニレン誘導体。
【請求項2】
下式
JP0004100933B2_000004t.gif(式中、R’は前記アルキルシリル基を表す。)で表される請求項1に記載のトリフェニレン誘導体。
【請求項3】
前記アルキル基の炭素数が3以下である請求項1又は2に記載のトリフェニレン誘導体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のトリフェニレン誘導体が混入された透明プラスチック。
【請求項5】
フィルム状の請求項4に記載の透明プラスチック。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、高収率でリン光を発光するトリフェニレン誘導体に関し、より詳細には、アルキルシリル基を有するトリフェニレン誘導体に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在までの無機蛍光性物質は粉末状で入手できるのみであり、加工性及び光透過性に乏しいため、透明なフィルム状に成形することは困難であった。高分子バインダーに混和させることにより、加工性は増大するものの、光透過性は乏しい。また、有機蛍光性及びリン光性物質はそのケイ光及びリン光強度が不十分であり、良好な光強度を確保することが困難であった。
有機リン光性物資としてトリフェニレンが知られており、有機ダイオードの感光性物質(特表2001-516150)など様々な用途に用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、このようなトリフェニレンを研究する過程において、トリフェニレンの置換基としてアルキルシリル基を導入する合成法を確立し、このようにして合成したアルキルシリル基を有するトリフェニレンが極めて強いリン光を発生することを見出し、本発明を完成させた。このアルキルシリル基を有するトリフェニレンは、従来の強リン光性物質に比べ、リン光の転換率が極めて高く、また有機溶媒に可溶なため、加工性が著しく増大するなどの利点を有することが分かった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、分子内にアルキルシリル基を導入したトリフェニレン化合物類が、良好な加工性と極めて高いリン光強度を示すことを見いだした。
即ち、本発明は、トリフェニレン骨格に、一般式-SiR(式中、Rはそれぞれ水素原子、アルキル基、ビニル基又はアリル基を表し、Rのうち少なくとも2個はアルキル基である。)で表されるシリル基を有するトリフェニレン誘導体である。このトリフェニレン誘導体は下式
JP0004100933B2_000002t.gif(式中、R’は前記シリル基を表す。)で表されることが好ましい。
本発明は更に、上記のトリフェニレン誘導体が混入された透明プラスチックであり、この透明プラスチックはフィルム状であることが好ましい。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明のトリフェニレン誘導体は、トリフェニレン骨格に、一般式-SiR(式中、Rはそれぞれ水素原子、アルキル基、ビニル基又はアリル基を表し、Rのうち少なくとも2個はアルキル基である。)で表されるアルキルシリル基を有する。
トリフェニレンを置換するアルキルシリル基の数に制限は無く、1~12個まで可能であるが、好ましくは6個以下であり、より好ましくは2,3,6,7,10,11位に計6個のアルキルシリル基を有する。
アルキルシリル基は、一般式-SiRで表され、このRは、それぞれ同じであっても異なってもよく、水素原子、アルキル原子、ビニル基、又はアリル基であるが、このケイ素に結合する3個のRのうち少なくとも2個、即ち、2個又は3個はアルキル基であり、残りのRは、水素原子、ビニル基、アリル基となる。またこのアルキル基の炭素数は3以下、特にメチル基であることが好ましい。
【0006】
本発明のトリフェニレン誘導体の製法に特に制限はないが、以下のようにして合成することができる。まずトリフェニレンのアルキルシリル基を付したい位置をハロゲン、特にBrで置換する。また、導入したいシリル基に相当するハロシランを用意する。このハロゲン化トリフェニレンをテトラヒドロフラン等の溶媒中で、金属マグネシウムを用いて化学量論量の上記ハロシランと反応させると、分子内にシリル置換基が所望個数導入されたトリフェニレン誘導体を得ることができる。この反応式の例を下式に示す(例:2,3,6,7,10,11-ヘキサアルキルシリルトリフェニレン)。
JP0004100933B2_000003t.gif
【0007】
ここで用いるハロシランとしては、様々なアルキル基及びハロゲン原子を有するものが使用できるが、アルキル置換基としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、イソプロピル基、t-ブチル基、ビニル基、フェニル基などの有機置換基が好適である。また、ハロゲン原子は、塩素及び臭素のどちらも使いうるが、入手の容易さから塩素化物を使用することが望ましい。
このようなトリフェニレン誘導体は通常クロマトグラフィーにより単離して、無色結晶性固体として得ることができる。
【0008】
本発明のトリフェニレン誘導体の母体化合物である無置換トリフェニレンはヘキサン、アルコール、アセトンなどの汎用有機溶媒に対して極めて難溶であり、融点が197℃とかなり高く、ポリマーなどにブレンドするにはかなり問題点がある。一方、本発明のトリフェニレン誘導体はヘキサン、ペンタン、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、アセトン、酢酸エチル等の有機溶媒に容易に溶解し、メタノール、エタノール等の極性有機溶媒に難溶であり、水にはまったく溶解しない。このように有機溶媒に溶解性が高く、融点も低いため、塗布作業やブレンド作業などが容易だと考えられる。また空気中の酸素とはまったく反応しない。
この化合物は後述のように300~350nmの紫外域に吸収帯を有する。紫外光や太陽光などの適当な光源を用いて、この領域に光照射すると、この化合物は極めて強いリン光を示す。その量子収率は77Kでほぼ1であり、室温においても充分に強い青白いリン光を示す。
【0009】
本発明のトリフェニレン誘導体を透明プラスチックに混入させるとりん光強度の高いプラスチックを作製することができる。ここで透明プラスチックとして、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の透明性樹脂材料が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、これらを単独又は2種以上混合して使用してもよい。また、本発明のトリフェニレン誘導体を透明プラスチックに混入させる方法については当該分野で公知の方法を用いることができる。
【0010】
【発明の効果】
本発明のトリフェニレン誘導体は、市販原料から一段階で容易に目的物質を調製できる。また、従来の物質に比べてリン光強度が著しく大きい。極めて安定な物質であり、取り扱いが容易で、耐熱性、耐光性、耐候性が高い。溶媒に可溶であり、加工性が高い。このようなトリフェニレン誘導体は、リン光性物質、エレクトロルミネッセンス材料(液晶ディスプレイ等)として用いることができる。
【0011】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
窒素雰囲気下、ジムロート氏式冷却管、滴下漏斗及び攪拌子を備えた容量が100mlの3口フラスコに削り状マグネシウム(和光純薬製)228mg、ヘキサブロモトリフェニレン996mg、テトラヒドロフラン(東京化成工業製)28.5mlを収め、滴下漏斗からジメチルクロロシラン(東京化成工業製)1.33gを滴下し、室温で3日間攪拌した。ここで用いたヘキサブロモトリフェニレンは、Tetrahedron, 38巻、863-867頁、1982年に記載されている手法を用いて、ニトロベンゼン溶媒中、トリフェニレン、鉄粉末及び臭素から調製した。
反応混合物から溶媒及び副生した塩化マグネシウムを除き、順相カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、溶離液:ヘキサン)及び逆相高速液体クロマトグラフィーによって分取精製し、2,3,6,7,10,11-ヘキサキス(ジメチルシリル)トリフェニレンを収率3%で得た。
【0012】
この物質の同定は、質量スペクトル(日本電子JMS-SX102)、核磁気共鳴スペクトル(日本電子α500核磁気共鳴分光計を用いて測定した。)及び赤外スペクトル(島津 FTIR8700赤外分光計を用いて測定した。)にて行い、最終的にX線結晶構造解析(リガクAFC-7S 四軸型単結晶X線回折計を用いて測定した。)によりその構造を確定した。これらのスペクトルを図1~5に示す。
プロトン核磁気共鳴スペクトル(図2)における化学シフト 0.52 ppm の一重線はメチル基の水素に相当し、5.13 ppm のプロトンはケイ素上の水素原子、9.19 ppm の一重線はトリフェニレンに置換した水素原子に当たる。強度比は6:1:1である。炭素13核磁気共鳴スペクトル(図3)における -2.47 ppm のシグナルはメチル基の炭素原子、129.82, 129.87, 124.82 ppm のシグナルがトリフェニレン骨格の炭素原子に相当する。ケイ素29核磁気共鳴(図4)に出現するピークはジメチルシリル基のケイ素原子である。
この化合物は単斜晶系、空間群P2/cの無色結晶を形成し、トリフェニレン骨格の炭素原子はほぼ同一平面上にある。結晶中においては互い違いに並んだ矢筈状の充填構造を示した。
【0013】
また、日本分光 Ubest-50 紫外可視吸光光度計を用いて、上記で得たヘキサシリルトリフェニレン(2,3,6,7,10,11-ヘキサキス(ジメチルシリル)トリフェニレン)の紫外吸収スペクトルを測定したところ、300~350nm に微細構造を伴う吸収帯が出現した。日立F4500 形分光蛍光光度計を用いて、77Kで無置換トリフェニレン及び上記で得たヘキサシリルトリフェニレンのリン光スペクトルを測定したところ(図6)、無置換トリフェニレンはリン光の量子収率(77K)は0.066であったが(John. B. Birks, Photophysics of Aromatic Molecules, Wiley-Interscience. New York, 123, (1970))、ヘキサシリルトリフェニレンは約1であり、極端に強い。ケイ光スペクトルから求めたヘキサシリルトリフェニレンのケイ光量子収率は室温で約0.05であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】2,3,6,7,10,11-ヘキサキス(ジメチルシリル)トリフェニレンの質量スペクトルである。
【図2】2,3,6,7,10,11-ヘキサキス(ジメチルシリル)トリフェニレンのプロトンNMRスペクトルである。
【図3】2,3,6,7,10,11-ヘキサキス(ジメチルシリル)トリフェニレンのC13NMRスペクトルである。
【図4】2,3,6,7,10,11-ヘキサキス(ジメチルシリル)トリフェニレンのSi29NMRスペクトルである。
【図5】2,3,6,7,10,11-ヘキサキス(ジメチルシリル)トリフェニレンのIRスペクトルである。
【図6】2,3,6,7,10,11-ヘキサキス(ジメチルシリル)トリフェニレンの紫外可視スペクトルである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5