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明細書 :ポリエステル合成用触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3703136号 (P3703136)
公開番号 特開2003-306535 (P2003-306535A)
登録日 平成17年7月29日(2005.7.29)
発行日 平成17年10月5日(2005.10.5)
公開日 平成15年10月31日(2003.10.31)
発明の名称または考案の名称 ポリエステル合成用触媒
国際特許分類 C08G 63/84      
FI C08G 63/84
請求項の数または発明の数 9
全頁数 7
出願番号 特願2002-113072 (P2002-113072)
出願日 平成14年4月16日(2002.4.16)
審査請求日 平成15年11月13日(2003.11.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】高須 昭則
【氏名】平林 忠道
個別代理人の代理人 【識別番号】100110249、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 昭
審査官 【審査官】森川 聡
参考文献・文献 特開2003-105074(JP,A)
特公昭46-12477(JP,B1)
特公昭44-00878(JP,B1)
特公昭33-01872(JP,B1)
調査した分野 C08G 63/00- 63/91
特許請求の範囲 【請求項1】
ジオール及びジカルボン酸からポリエステルを合成するための触媒であって、下式
X(OSOCF
(式中、Xは希土類元素を表す。)で表されるポリエステル合成用触媒。
【請求項2】
前記XがSc、Y、Yb又はSmである請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記ポリエステルが脂肪族ポリエステルである請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
前記ジオールがHO(CHOH(nは2~4を表す。)で表され、前記ジカルボン酸がHOOC(CHCOOH(mは2~10を表す。)又はその酸無水形で表される請求項3に記載の触媒。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の触媒を用いて、ジオール及びジカルボン酸からポリエステルを製造する方法。
【請求項6】
前記触媒の使用量が生成する樹脂に対して0.001~5重量%である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリエステルが脂肪族ポリエステルである請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記ジオールがHO(CHOH(nは2~4を表す。)で表され、前記ジカルボン酸がHOOC(CHCOOH(mは2~10を表す。)又はその酸無水形で表される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
重合反応が塊状重合である請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ポリエステル、特に脂肪族ポリエステルを合成するための触媒及びこの触媒を用いたポリエステルの製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般にポリエステルの合成にはジカルボン酸とジオールの直接重合法が採用されているが、ジカルボン酸とジオールをジオールの沸点以上の高温(例えば、200~240℃)でエステル化反応をさせるのが一般である。より低温(160~200℃)で反応させるためにはこの反応を効率よく触媒する触媒がなかった。
また、脂肪族のポリエステルは1930年代より検討されているが、高分子量まで分子量を高めることが困難であり、更に脂肪族ポリエステルは高温で重合を行うとその熱でポリマーが分解してしまう等の問題も抱えており、低温で直接エステル化反応を行うことが求められている。
【0003】
近年、このような観点から触媒が開発され高分子量の脂肪族ポリエステルも製造されるに至っている。例えば、1,4-ブタンジオールとコハク酸等に触媒としてアセトアセトイル型亜鉛キレート化合物等を用いて飽和脂肪族ポリエステルが合成され、市販されている(特開平5-39352、高分子42巻3月号251(1993))。この例では一旦分子量が15000程度のポリエステルを合成しこれをジイソシアネートを用いて結合して分子量が35000程度のポリマーを得ているが、この高分子量の脂肪族ポリエステルを直接作成するに至っておらず、反応温度も200℃程度と高い。更に、最近では1,4-ブタンジオールとコハク酸等に触媒としてジスタノキサンを用いて分子量が28万程度の脂肪族ポリエステルが合成されるに至っている(Biomacromolecules 2001, 2, 1267-1270)。
【0004】
一方、スカンジウム・トリフルオロメタンスルホネート(トリフラート)が混合酸無水物や無水カルボン酸による水酸基のアシル化反応を触媒することが知られているが、この触媒に関してジカルボン酸とジオールのエステル化反応への触媒作用については検討がなされていない(J. Org. Chem. 1996, 61, 4560-4567、Science 2000, 290, 1140-1142)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリエステル、特に脂肪族ポリエステルを合成するための触媒であって、低温(約180℃以下)でポリエステル反応を触媒作用し、更に分子量が3万程度の脂肪族ポリエステルを重合することのできる触媒を提供する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、スカンジウムトリフラートが混合酸無水物や無水カルボン酸による水酸基のアシル化反応を触媒すること(J. Org. Chem. 1996, 61, 4560-4567)から、この触媒によるポリエステル合成について検討した結果、この触媒がジカルボン酸とジオールのエステル化反応を効率よく触媒することを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、ジオール及びジカルボン酸からポリエステルを合成するための触媒であって、下式
X(OSOCF
で表されるポリエステル合成用触媒である。この式中、Xは希土類元素を表し、好ましくはSc、Y、Yb又はSmを表す。本発明の触媒はまたこれらの混合物であってもよい。この触媒は、希土類元素の酸化物X(例えば、Sc)と6当量のトリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)との反応によって調製することができる(米国特許第3615169号)。
このポリエステル合成に用いるジオールについても特に制限はないが、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を用いることが好ましく、特に、HO(CHOH(nは2~4を表す。)で表される直鎖グリコールを用いることがより好ましい。また、複数種のジオールを用いてもよい。
【0008】
また、ポリエステル合成に用いるジカルボン酸についても特に制限はないが、例えば、コハク酸、アジピン酸、スべリン酸、セバシン酸、ドデカン酸、フタル酸等や、これらの酸無水物、例えば、無水コハク酸、無水アジピン酸を用いてもよく、また複数種のジカルボン酸を用いてもよい。これらの中で脂肪族カルボン酸、特にHOOC(CHCOOH(mは2~10を表す。)又はその酸無水形で表される脂肪族カルボン酸又はその酸無水物が本発明の基質に適している。
本発明において合成されるポリエステルに特に制限は無く、合成されたポリマーに主結合として、本発明の触媒の作用により生成されたポリエステル結合が含まれておればよく、エステル結合以外の結合が含まれることを除外するものではない。このポリエステルは、上記のジオール及びジカルボン酸により生成すれば、芳香族、脂肪族又はこれらの混合のいずれでもよいが、ジオール及びジカルボン酸に脂肪族のものを用いた脂肪族ポリエステルを合成することが、本発明の触媒に適している。このポリエステルの数平均分子量(Mn)は、実用的には、5000以上、特に10000以上であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、上記の触媒を用いて、ジオール及びジカルボン酸からポリエステルを製造する方法である。前記触媒の使用量は、生成する樹脂(又は、投入するジオール及びジカルボン酸)に対して0.001~5重量%、好ましくは0.05~2重量%であることが好ましい。ジオール及びジカルボン酸の投入量はほぼ化学量論比とすることが好ましい。重合においては、上記の成分以外に溶媒、酸化防止剤、紫外吸収剤、結晶核剤等を適宜使用してもよい。
【0010】
重合反応形式はいかなるものであってもよいが、本発明の触媒には溶媒を用いない塊状重合が適している。反応圧は、重合反応形式により当該分野で適切な圧を用いればよいが、塊状重合の場合には、脱水を促進するため4.0×10-5~8.0×10-4MPaが好ましい。反応温度は、やはり高いほどエステル反応の進行度は高いが、本発明の触媒を用いることにより一般(約200℃以上)よりも低い約180℃以下、特に80~180℃で行うことができる点が本発明の特徴のひとつであると考えられる。
【0011】
【発明の効果】
本発明の触媒を用いてジオール及びジカルボン酸からポリエステルを合成する場合に、低温において高分子量のポリエステルを得ることができる。特に高分子量のポリエステルの得にくい脂肪族の原料を用いて合成した脂肪族ポリエステルについては、後述の実施例で明らかにするが、80℃の反応温度においても一応高分子量と目される1万の分子量のポリエステルを得ており、180℃においては3万の分子量のポリエステルを得ている。また、この触媒は溶媒を用いない塊状重合にも適しているということができる。
【0012】
【実施例】
以下、実施例にて本発明を例証するが、本発明を限定することを意図するものではない。
本実施例では、ジオールとして1,4-ブタンジオール(東京化成製、「BG」と略す。)を用い、ジカルボン酸としてコハク酸(林純薬工業製、「SA」と略す。)、メチルコハク酸(アルドリッチ製、「MSA」と略す。)、無水コハク酸(ナカライテスク製、「SAn」と略す。)又は無水メチルコハク酸(メチルコハク酸と無水酢酸から調製した。「MSAn」と略す。)を用いた。触媒として、イットリウム・トリフルオロメタンスルホネート(アルドリッチ製、「Y(OTf)」と略す。)又はスカンジウム・トリフルオロメタンスルホネート(東京化成製、「Sc(OTf)」と略す。)を用いた。
【0013】
攪拌機、分留コンデンサ、温度計、ガス封入管を備えた容積が1リットルのフラスコに表1に示す種類及び量のジオール、ジカルボン酸及び触媒を入れ、窒素雰囲気下で、表1に示す温度、圧力及び反応時間の条件で塊状重合を行った。全ての試験でジカルボン酸及びジオールはそれぞれ7.0ミリモルづつ用いた。また、系を減圧しつつ生成する水分を除去した。その結果白色ワックス状の重合物が得られた。これをトリクロロメタン/ジエチルエーテル中で再沈殿精製を二回繰り返した。なお、高温(180℃)で反応を行った場合には生成物の色は若干黒くなったが、再沈殿精製後はやはり白色となった。この生成ポリマーの分子量はNo.1~13についてはTHF中でゲル透過クロマトグラフィー(GPC、東ソー社製HLC803D)により測定し、No.14~18及び23~27についてはトリクロロメタン中でSEC(=GPC、東ソー社製HLC-8020)により測定し、No.19~22についてはTHF中でSECにより測定し、ポリスチレンと比較して決定した。TgおよびTmはSEIKO電子工業製DSC210を用いて、示差走査熱量測定により測定した。その結果を表2にまとめる。
【0014】
【表1】
JP0003703136B2_000002t.gif【0015】
【表2】
JP0003703136B2_000003t.gif【0016】
この結果、反応温度が高いほど分子量の大きいポリエステルが得られているが、80℃においても0.5mmHgの減圧下で、1,4-ブタンジオールとメチルコハク酸又はメチルコハク酸無水物との直接重合を24時間行うことにより、分子量約10,000のポリエステルを合成することができた(No.1)。また、120℃で重合したところ、5時間後にMn=1.1×10のポリエステルが合成できた(No.9)。このポリエステルについてプロトン核磁気共鳴測定(BRUKER社製AVANCE200、200MHz、溶媒:重クロロホルム)を行った。そのスペクトルを図1に示す。この化学シフトはこの重合物が目的とするポリエステルであることを示している。また、コハク酸と1,4-ブタンジオールを用いたポリブチレンサクシネートの合成においては、0.1モル%の触媒量を用いて0.3mmHgの減圧下で180℃で直接重合を行うことにより、分子量3万以上のポリエステルが合成できた(No.18)。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で合成したポリエステル(No.9)のプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す図である。上図は想定するポリエステルの構造を示し、a~eはNMRのピークの帰属を表す。
図面
【図1】
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