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明細書 :フェノキサジン系化合物及び放射線検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4029149号 (P4029149)
公開番号 特開2003-277368 (P2003-277368A)
登録日 平成19年10月26日(2007.10.26)
発行日 平成20年1月9日(2008.1.9)
公開日 平成15年10月2日(2003.10.2)
発明の名称または考案の名称 フェノキサジン系化合物及び放射線検出方法
国際特許分類 C07D 265/38        (2006.01)
C09K   9/02        (2006.01)
G01T   1/04        (2006.01)
FI C07D 265/38
C09K 9/02 Z
G01T 1/04
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2002-084898 (P2002-084898)
出願日 平成14年3月26日(2002.3.26)
審査請求日 平成14年3月26日(2002.3.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
発明者または考案者 【氏名】時田 澄男
【氏名】太刀川 達也
個別代理人の代理人 【識別番号】100076613、【弁理士】、【氏名又は名称】苗村 新一
審査官 【審査官】中木 亜希
参考文献・文献 特開平10-003183(JP,A)
Journal of Photopolymer Science and Technology,2001年,Vol.14, No.2,p.245-249
調査した分野 C07D 265/
REGISTRY(STN)
CAplus(STN)
CAOLD(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(1)で示されるフェノキサジン系化合物。
【化1】
JP0004029149B2_000022t.gif
(式(1)において、R、R、R、Rは、水素原子又は同一若しくは異なるアルキル基を示し、Aは、オルト位にニトロ基を有し、さらに他の置換基を有していてもよい芳香環を示し、nは1~5の整数を示す)
【請求項2】
放射線の照射によって発色する請求項1記載のフェノキサジン系化合物を含有するカラーフォーマー。
【請求項3】
放射線の照射によって発色する請求項1記載のフェノキサジン系化合物を含有する放射線検出ラベル。
【請求項4】
請求項2記載のカラーフォーマー又は請求項3記載の放射線検出ラベルを使用して放射線の照射による発色又は変色を目視で確認することを特徴とする放射線検出方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線の照射により発色するフェノキサジン系化合物、この化合物からなるカラーフォーマー、この化合物を含有する放射線検出ラベル及び放射線検出方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
放射線は、医療、工業、農業等、種々の産業分野で広く利用されている。放射線を取り扱う医療、研究施設さらには原子力発電所などの放射線利用施設では、人体への効率的な被曝低減対策と徹底した漏洩対策が求められている。また、放射線照射を利用する滅菌加工等を行う施設においては、照射した放射線量を短時間に的確に把握する必要がある。
【0003】
原子力発電所では通常管理区域入口に定点の定期的サーベイによりエリア線量率マップを作成し、この線量率の情報を作業者に提供することにより被曝管理を行っている。しかし情報伝達には新たな電気配線を必要とする上、咄嗟の放射線漏洩に敏感に対応することが困難な場合が生ずる。
一方、放射線照射を利用する施設では、対象物により放射線量を変更するため、広い幅で放射線を感受することが求められている。
【0004】
このような課題に応えるべく、照射線漏洩に直感的に対応することができるよう、放射線に感応して色彩が変化(変色、発色)する放射線検出色素が開発されている。例えば、時田らは、N-スルフォニルオキシイミド系化合物とフルオラン染料の組み合わせのような二成分系の放射線検出色素を開示している(J.of Photopolymer Sci.& Tech.,Vol.14,221-224(2001年)。また、特開2000-241548公報では原子力発電所等での低レベル放射線に対しても発色変化を示すロイコ色素を主成分とする放射線感応物質が提案されている。このような検出色素は、放射線の照射により酸を発生して着色し、これにより放射線を検出する。
【0005】
しかし、このような検出色素は、色素の熱安定性や光安定性、酸に対する発色感度の調整、ポリマー等の担体との相溶性、担体に担持された状態での発色感度の把握に問題があるうえ、酸発生剤についてもその熱や光に対する安定性、放射線に対する感度、酸発生剤と担体との相溶性や相互作用等、考慮しなければならない課題が非常に多い。
【0006】
二成分系の放射線検出色素のこのような問題を解決すべく、単独の色素から成る検出色素も提案されている。例えば、入江らは、ジアリールエテン類の化合物を提案している(Bull.Chem.Soc.Jpn.,vol.73,No.10,2385-2388(2000年))。しかしながら、これらの化合物は、光により退色し易いという性質を有する。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、広い幅で放射線に感応して発色し、放射線照射を目視で確認することが可能なフェノキサジン系化合物を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る放射線感応物質は、放射線の照射によって発色する色素であって、式(1)(化2)で示されるフェノキサジン系化合物である。
【0009】
【化2】
JP0004029149B2_000002t.gif(式(1)において、R、R、R、Rは、水素原子又は同一若しくは異なるアルキル基を示し、Aは、オルト位にニトロ基を有し、さらに他の置換基を有していてもよい芳香環を示し、nは1~5の整数を示す)
【0010】
本発明は、式(1)で示されるフェノキサジン系化合物を含有するカラーフォーマーを提供する。このカラーフォーマーは溶媒中又は担体中に分散させた形態とすることができる。
また本発明は、式(1)で示されるフェノキサジン系化合物を含有する放射線検出ラベルを提供する。
さらに本発明は、式(1)で示されるフェノキサジン系化合物を溶媒中又は担体中に分散させた放射線感応検知体を用いて、放射線により検知体の発色又は色の変化を目視で確認する放射線の検出方法を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、ニトロベンジルエステルが図1に示すような径路で光や電子線で開裂反応することに注目し、この反応を鋭意研究して、本発明に到達した。
本発明の放射線感応物質は、放射線の照射により、-CH-О-CО-N=結合のCО-Nの結合が開裂して、フェノキサジン化合物のイオンが生成することにより発色し、放射線を視認することができるようになる。
【0012】
本発明のフェノキサジン系化合物は前述した通り、式(1)により示される。式中の環Aは、オルト位にニトロ基を有し、さらに他の置換基を有していてもよい芳香性環を示す。
芳香性環としては、下記式(2)(化3)で示されるベンゼン環、式(3)(化4)で示されるナフタレン環、式(4)(化5)で示されるピリジン環、式(5)(化6)で示されるチオフェン環、式6(化7)で示されるインドール環等が挙げられる。
【0013】
【化3】
JP0004029149B2_000003t.gif【0014】
【化4】
JP0004029149B2_000004t.gif【0015】
【化5】
JP0004029149B2_000005t.gif【0016】
【化6】
JP0004029149B2_000006t.gif【0017】
【化7】
JP0004029149B2_000007t.gif【0018】
式(2)~(6)において、R、R、R、R、Rは、水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアルコキシ基、アルキルアミノ基、アシルアミノ基、ハロゲン原子である。有していても良い置換基としては、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、置換アミノ基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、フリル基、テトラヒドロフリル基等が挙げられる。
【0019】
置換基を有していても良いアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基等の炭素数が1~8の非置換のアルキル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシエトキシエトキシエチル基等のエーテル基を1~4個有するアルキル基が挙げられる。
【0020】
置換基を有していても良いアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基等の炭素数が1~8の非置換又は置換のアルコキシ基が挙げられる。
【0021】
アルキルアミノ基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基等の3級アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基等の2級アミノ基が挙げられる。
アシルアミノ基としては、アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基等のアルキルカルボニルアミノ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
これらの置換基は2個以上結合しても良い。
【0022】
式(1)で示される本発明のフェノキサジン系化合物の主な具体例を式(7)(化8)~式(13)(化14)に示す。
【0023】
【化8】
JP0004029149B2_000008t.gif【0024】
【化9】
JP0004029149B2_000009t.gif【0025】
【化10】
JP0004029149B2_000010t.gif【0026】
【化11】
JP0004029149B2_000011t.gif【0027】
【化12】
JP0004029149B2_000012t.gif【0028】
【化13】
JP0004029149B2_000013t.gif【0029】
【化14】
JP0004029149B2_000014t.gif【0030】
本発明は、式(1)で示されるフェノキサジン系化合物を溶媒中又は担体中に分散させて、放射線の照射によって発色するカラーフォーマーとする。
溶媒としては、アルコール類、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル等、担体としては、PVA、PMMA、PET、ポリシラン等のポリマー、液晶、アモルファス材料が挙げられる。溶媒としては、特に、アセトニトリルが好適である。溶媒中の水分の存在は、発色には好ましくない。
【0031】
さらに本発明は、式(1)で示されるフェノキサジン系化合物を含有する放射線検出ラベルを提供する。
検出ラベルは、ポリマーとフェノキサジン系化合物の両者を溶かした溶液から、溶媒を徐々に蒸発させるか、又は高温で融解したポリマーにフェノキサジン系化合物を溶解させ、延伸する等の方法により容易に得ることができる。
【0032】
本発明の式(1)で示されるフェノキサジン系化合物は、溶媒又は担体中で、γ線等の放射線照射により、開裂反応を引き起こし、空気中又は溶媒、担体中に含まれる酸素により酸化反応が進み、フェノキサジン系化合物のカチオンを生成して、発色する。
図2に、本発明の式(8)の化合物を例にして、放射線化学反応による色素発生のメカニズムを示す。
式(8)の化合物は、γ線の照射により開裂反応を引き起こして不安定な式(14)(化15)の化合物を生成し、この式(14)の化合物は、引き続く酸化反応により式(15)(化16)のカチオン物質を生成して発色する。
【0033】
【化15】
JP0004029149B2_000015t.gif【0034】
【化16】
JP0004029149B2_000016t.gif【0035】
本発明の放射線感応カラーフォーマーは、このメカニズムに基づいて、放射線の照射による発色現象を利用するものである。
本発明の放射線の検出方法も、このメカニズムを利用する放射線感応カラーフォーマーを用いて、放射線により検知体の発色又は色の変化を目視で確認するものである。
【0036】
【実施例】
以下に本発明の構成及び効果を実施例により具体的に説明する。
製造例1(3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-クロロホルミルフェノキサジンの合成)
式(16)(化17)で示される化合物を約25重量%含有する塩基性染料「ベーシックブルー3」(アルドリッチ社製)1.44gに水50ml、トルエン60mlを加えて攪拌し、50~60℃に加熱した。
【0037】
【化17】
JP0004029149B2_000017t.gif【0038】
次に、ハイドロサルファイト2.09g、水酸化ナトリウム400mgを溶かした水20mlを加え、10~15分間、同じ温度で攪拌を続けた。
次いで、トリホスゲン2.37gを溶解させた冷トルエン50mlを1.5時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で更に1時間攪拌した。
トルエン層を分取して、トルエンを減圧下で留去した。
得られた固体をメタノールで再沈し、乾燥して、紫白色の粉末305mgを得た。
この紫白色粉末が式(17)(化18)の化合物であることを、NMRスペクトル図、マススペクトル図により確認した。式(16)の合成径路を図3に、それぞれのスペクトル図を図4及び図5に示す。
【0039】
【化18】
JP0004029149B2_000018t.gif【0040】
同定結果を以下に示す。
(1)H NMRスペクトラム(CDCl3)(図4)
JP0004029149B2_000019t.gif(2)マススペクトラム(図5)
2126ОClとして387(M
【0041】
製造例2(ナトリウムо-ニトロベンジルアルコラートの合成)
ナトリウム699mgを無水トルエン40mlに融解し、銀色の粒状になるまで加熱還流した。反応液を常温まで戻した後、о-ニトロベンジルアルコール4.60gを入れて、21時間攪拌した。得られた沈殿物をエタノールで洗浄し、吸引ろ過し、乾燥した。黄土色粉末のナトリウムо-ニトロベンジルアルコラート3.99gを得た。
【0042】
実施例1(3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-(о-ニトロベンジルオキシカルボニル)フェノキサジンの合成)
製造例1で得た3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-クロロホルミルフェノキサジン61.0mg、製造例2で得たナトリウムо-ニトロベンジルアルコラート83.7mg、無水テトラヒドロフラン15mlをアルゴンガス雰囲気下室温で4時間攪拌した。
次に、反応液をトルエンで抽出し、トルエン層を水洗、脱水した後、トルエンを留去した。
この残渣をクロロホルム-シリカゲルカラムを用いて分離し、メタノールで再結晶し、オレンジ色の針状結晶14.8mgを得た。
この針状結晶が、式(8)(化19)で示される3,7-ビス(ジエチルアミノ)-10-(о-ニトロベンジルオキシカルボニル)フェノキサジンであることを、NMRスペクトル図、マススペクトル図、赤外線吸収スペクトル図により確認した。これらのスペクトル図を図6、図7及び図8に示す。
【0043】
【化19】
JP0004029149B2_000020t.gif【0044】
同定結果を以下に示す。
(1)H NMR(CDCl3)(図6)
JP0004029149B2_000021t.gif(2)マススペクトル(図7)
2832Оとして504(M
(3)赤外線吸収スペクトル(図8)
2973cm-1 メチレンC-H伸縮
1704cm-1 C=О伸縮
1523cm-1 (N=О)逆対称伸縮
1506cm-1 C-H環伸縮
~1300cm-1 (N-О)対称伸縮
1215cm-1 酢酸エステルC(=О)-О伸縮
~1050cm-1 C-О伸縮
~700cm-1 芳香環C-H面外変角
【0045】
実施例2
実施例1で得た式(8)で示されるフェノキサジン化合物5×10-4M濃度のアセトニトリル溶液を20mlずつ試験管にとり、60Cоのγ線を照射して、溶液の発色の有無を吸光度変化により評価した。結果を図9に示した。
【0046】
図10は、γ線の照射による式(8)で示されるフェノキサジン化合物のアセトニトリル溶液中の発色変化を吸光度変化と照射線量との関係で示したものである。
線量の増加に伴い、化合物(8)の吸収に相当する643.5nmの吸光度が増加した。約40Gyの吸収線量で、目視により青色に発色することが確認された。
【0047】
【発明の効果】
本発明により、広い幅で放射線に感応して発色し、放射線照射を目視で確認することが可能なフェノキサジン系化合物、この化合物を含有するカラーフォーマー及び放射線検出ラベルを得ることができる。さらに本発明により、放射線により検知体の発色又は色の変化を目視で確認する放射線の検出方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ニトロベンジルエステルの光や電子線による開裂反応の径路図である。
【図2】本発明の式(8)の化合物の放射線化学反応による色素発生のメカニズムを示す径路図である。
【図3】本発明の式(8)の化合物の製造原料である式(17)の化合物の合成径路図である。
【図4】本発明の式(8)の化合物の製造原料である式(17)の化合物のNMRスペクトル図である。
【図5】本発明の式(8)の化合物の製造原料である式(17)の化合物のマススペクトル図である。
【図6】本発明の式(8)の化合物のNMRスペクトル図である。
【図7】本発明の式(8)の化合物のマススペクトル図である。
【図8】本発明の式(8)の化合物の赤外線吸収スペクトル図である。
【図9】本発明の式(8)の化合物のγ線の照射による発色変化図である。
【図10】γ線の照射による式(8)の化合物の発色変化を吸光度変化と照射線量との関係を示す線図である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9