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明細書 :酸素透過構造体及びその作製方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3965623号 (P3965623)
公開番号 特開2003-320607 (P2003-320607A)
登録日 平成19年6月8日(2007.6.8)
発行日 平成19年8月29日(2007.8.29)
公開日 平成15年11月11日(2003.11.11)
発明の名称または考案の名称 酸素透過構造体及びその作製方法
国際特許分類 B32B   9/00        (2006.01)
C23C  14/28        (2006.01)
B01D  71/02        (2006.01)
FI B32B 9/00 A
C23C 14/28
B01D 71/02 500
請求項の数または発明の数 8
全頁数 11
出願番号 特願2002-127143 (P2002-127143)
出願日 平成14年4月26日(2002.4.26)
審査請求日 平成17年3月18日(2005.3.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】高村 仁
【氏名】岡田 益男
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】深草 祐一
参考文献・文献 特開平06-198149(JP,A)
特開平11-253769(JP,A)
特開2002-292234(JP,A)
特開2003-147514(JP,A)
調査した分野 B32B 1/00-43/00
C23C 14/00-14/58
H01M 8/00-8/24
B01D 53/22,61/00-71/82
C02F 1/44
特許請求の範囲 【請求項1】
酸素透過薄膜と多孔質基板とからなる酸素透過構造体において、上記酸素透過薄膜と多孔質基板との間にセリウム酸化物をバッファ層として挟むことを特徴とする、酸素透過構造体。
【請求項2】
前記酸素透過薄膜は、組成式Lax Sr1-x Gay Fe1-y O(ただし、0<x<1、0<y<1)で表される膜厚が5μm以下の酸素透過薄膜であり、前記多孔質基板は多孔質アルミナ基板であることを特徴とする、請求項1に記載の酸素透過構造体。
【請求項3】
前記酸素透過薄膜は、組成式Lax Sr1-x Coy Fe1-y O(ただし、0<x<1、0<y<1)で表される酸素透過薄膜であり、前記多孔質基板は多孔質アルミナ基板であることを特徴とする、請求項1に記載の酸素透過構造体。
【請求項4】
前記酸素透過薄膜は、非晶質、または、微細な結晶粒から成り、膜厚が5μm以下であることを特徴とする、請求項2または3に記載の酸素透過構造体。
【請求項5】
前記セリウム酸化物は、膜厚が5nm以上であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の酸素透過構造体。
【請求項6】
多孔質基板上にセリウム酸化物を堆積し、酸素透過薄膜の組成を有するターゲットを用いてパルスレーザ蒸着により酸素透過薄膜を堆積することを特徴とする、酸素透過構造体の作製方法。
【請求項7】
前記多孔質基板はアルミナ多孔質基板であり、前記酸素透過薄膜は組成式Lax Sr1-x Gay Fe1-y O(ただし、0<x<1、0<y<1)で表される酸素透過薄膜、または、組成式Lax Sr1-x Coy Fe1-y O(ただし、0<x<1、0<y<1)で表される酸素透過薄膜であることを特徴とする、請求項6に記載の酸素透過構造体の作製方法。
【請求項8】
前記パルスレーザ蒸着時の基板温度は750℃未満であることを特徴とする、請求項6に記載の酸素透過構造体の作製方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素透過構造体及びその作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、クリーンなエネルギーシステムとして燃料電池が注目を浴びている。燃料電池の種類には、実用化が進んでいるリン酸型の他に固体高分子型、溶融炭酸塩型、固体酸化物型などがあるが、この中でも特に固体高分子型燃料電池(PEFC)は約60~100℃の低温度領域で動作することから、電気自動車(EV)用の駆動電源や携帯機器用電源への応用が期待されている。PEFCでは、燃料には純水素、酸化剤に空気中の酸素を用いる。
【0003】
この場合、純水素を供給するか、または天然ガスなどを改質して燃料とするかの選択がある。安価な発電で水分解できる場合を除き、現状では天然ガス、メタノール、ガソリンなどの炭化水素系燃料を改質して、水素ガスを得ている。この中でも天然ガスは化石燃料の中で最も環境への負荷が少ないということで注目を浴びている。従って、水素の供給源として天然ガス改質が有望視されており、高性能な改質器の開発が要求されている。
現在、天然ガスからの水素製造においては、水蒸気改質法がもっとも広く利用されているが、近年、空気中の酸素を直接用いた部分酸化法により水素を製造するシステムが注目されている。その反応は次式で示される。
【0004】
【数1】
JP0003965623B2_000002t.gif図8は、上記(1)式を動作原理とした部分酸化法を説明する概念図である。空気中の酸素のみを透過する酸素透過性材料からできたパイプを高温に加熱し、パイプの一端から、例えばCH4 ガスを導入する。パイプの側壁を通して空気中の酸素のみがパイプ内に供給され、(1)式に基づいてCH4 ガスが酸素と反応し、H2 ガスとCOガスに分解されてパイプの他端から導出される。
この場合、水素濃度を高めるためには、パイプ中のCH4 ガスに酸素のみを供給する必要がある。すなわち、空気中のN2 ガスが存在すると得られる水素ガスの濃度が1/5に減少してしまう。このため、空気から酸素のみを取り出す酸素透過性材料が要求されるが、現在その材料として酸素イオン・電子混合導電体が注目されている。酸素は酸素イオン・電子混合導電体中をイオンとして透過するが、この混合導電体は酸素イオンと電子の双方の伝導性を有しているため、外部電圧をかけずに酸素分圧勾配を駆動力として酸素を透過させる能力がある。改質器の性能はいかに高い酸素流束密度を得られるかにかかっており、現在高性能の酸素イオン・電子混合導電体材料の開発研究が盛んに行われている。
酸素イオン・電子混合導電体の酸素透過流束密度は電子伝導度、イオン伝導度、温度及び酸素イオン・電子混合導電体の膜厚に依存し、理論的に次式で表される。
【0005】
【数2】
JP0003965623B2_000003t.gifただし、j(O2 )は酸素透過流束密度、Rは気体定数、Tは絶対温度、Fはファラデー定数、dは酸素イオン・電子混合導電体の膜厚、P(O2 1 は酸素供給側の酸素分圧、P(O2 2 は酸素透過側の酸素分圧、σe は電子伝導度、σi はイオン伝導度である。
【0006】
上記(2)式から明らかなように、酸素透過流束密度j(O2 )を大きくするには、電子伝導度σe 及びイオン伝導度σi を大きくすること、温度Tを大きくすること、及び、酸素分圧勾配を大きくすることもさることながら、酸素イオン・電子混合導電体の膜厚dを薄くすることが有効であることがわかる。
酸素イオン・電子混合導電体の薄膜化は酸素透過能向上のために非常に有効な手段であると考えられる。また、薄膜化することによって膜の非晶質化も可能と考えられ、バルクでは観察されない特性が発現することも期待される。
【0007】
ちなみに、電子伝導度σe 及びイオン伝導度σi は、 酸素分圧勾配の関数である。図9は、電子伝導度σe 及びイオン伝導度σi の酸素分圧勾配依存性を示す図である。図において、横軸は酸素透過側の酸素分圧を示し、左側の縦軸は伝導度を示し、右側の縦軸は酸素透過流束密度を表す。酸素供給側の酸素分圧は大気圧(0.21atm)一定である。図に示すように、電子伝導度σe は特定の酸素濃度勾配で極小値を示し、イオン伝導度σi は酸素透過側の酸素分圧P(O2 2 によらずに一定である。一般に、電子伝導度とイオン伝導度とは材料組成、結晶構造によって制限され、高い酸素透過流束密度が得られる材料は限られている。
【0008】
一般に、酸素イオン・電子混合導電体における酸素輸送は2つの過程に律速される。一つは、気相中の酸素分子が酸素イオンとなって導電体内部に入り込む過程であり、これは表面交換律速過程と呼ばれている。もう一つは、導電体内部に入った酸素イオンが拡散する過程であり、これはバルク拡散律速過程と呼ばれている。酸化物や温度、膜厚、酸素分圧により支配的な律速過程は異なるが、薄膜化は上述のバルク拡散律速の場合、酸素透過能を向上させるのに有効である。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の酸素透過薄膜を使用した酸素透過構造体は、酸素透過薄膜の膜厚を薄くするとクラックが発生し易くなり、ガスリークや機械的強度の問題から薄くすることができなかった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑み、高い酸素透過特性と強度を兼ね備えた酸素透過構造体及びその作製方法を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明は、酸素透過薄膜と多孔質基板とからなる酸素透過構造体において、酸素透過薄膜と多孔質基板との間にセリウム酸化物をバッファ層として挟むことを特徴とする。
この構成によれば、多孔質基板と酸素透過薄膜との間でおこる、不可避的な化学反応を、セリウム酸化物をバッファ層として挟むことにより抑制することができる。その結果、熱衝撃を加えても酸素透過薄膜にクラックが発生しにくくなり、従って、高い酸素透過特性と強度を兼ね備えた酸素透過構造体が実現できる。酸素透過薄膜は、組成式Lax Sr1-x Gay Fe1-y O(ただし、0<x<1、0<y<1)で表される酸素透過薄膜(この物質自体は既に公開されている。特開2001-93325参照)であり、多孔質基板は多孔質アルミナ基板であれば好適である。
また、酸素透過薄膜は、組成式Lax Sr1-x Coy Fe1-y O(ただし、0<x<1、0<y<1)で表される酸素透過薄膜(この物質自体は既に公開されている。Chem.Lett.,(1985)1743-1746参照)であり、多孔質基板は多孔質アルミナ基板であれば好適である。
また、セリウム酸化物は、膜厚が5nm以上であれば上記の不可避的な化学反応を抑止できる。
また、酸素透過薄膜は、非晶質、または微細な微結晶粒子から成るので、従来より高温で使用してもクラックが発生せず、高い酸素透過特性と強度を兼ね備えることができる。
【0012】
また、本発明の酸素透過構造体の作製方法は、多孔質基板上にセリウム酸化物を堆積し、セリウム酸化物上に酸素透過薄膜の組成を有するターゲットを用いてパルスレーザ蒸着により酸素透過薄膜を堆積することを特徴とする。
また、多孔質基板はアルミナ多孔質基板であり、酸素透過薄膜は組成式Lax Sr1-x Gay Fe1-y O(ただし、0<x<1、0<y<1)で表される酸素透過薄膜、または、組成式Lax Sr1-x Coy Fe1-y O(ただし、0<x<1、0<y<1)で表される酸素透過薄膜であることを特徴とする。
パルスレーザ蒸着時の基板温度は750℃未満であることを特徴とする。
この方法によれば、セリウム酸化物上に、非晶質、または微細な結晶粒から成る緻密な酸素透過薄膜が形成される。非晶質、または微細な結晶粒であるため、熱衝撃を印加してもクラックが生じない。
【0013】
したがって、本発明によれば、高い酸素透過特性と高い耐熱衝撃強度を兼ね備えた酸素透過構造体及びその作製方法を提供することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の酸素透過構造体の構成を示す模式断面図である。図において、酸素透過構造体1は、多孔質基板2と、多孔質基板2上に積層したセリウム酸化物3と、セリウム酸化物3上に積層した酸素透過薄膜4とより成る。多孔質基板2は、例えば、Al板を陽極化成した多孔質アルミナ基板である。セリウム酸化物3は、例えば組成式CeO2 で表されるセリウム酸化物であり、膜厚は5nm以上であればよい。酸素透過薄膜4は、例えば、膜厚が5μm以下のLSGF系酸素透過薄膜、すなわち、組成式Lax Sr1-x Gay Fe1-y O(ただし、0<x<1、0<y<1)で表される酸素透過薄膜であり、また例えば、膜厚が5μm以下のLSCF系酸素透過薄膜、すなわち、組成式Lax Sr1-x Coy Fe1-y O(ただし、0<x<1、0<y<1)で表される酸素透過薄膜である。これらの酸素透過薄膜4は、非晶質、あるいは、極めて微細な微結晶粒子から構成されている。
【0015】
この酸素透過構造体1を使用するには、酸素透過構造体1を700℃程度に加熱し、多孔質基板2側に1atmの空気を供給し、酸素透過薄膜4側の酸素分圧を低くして使用する。空気中の酸素のみが酸素透過構造体1を通過する。
【0016】
本発明の酸素透過構造体1は、セリウム酸化物3によって多孔質基板2と酸素透過薄膜4との間でおこる不可避的な化学反応を抑止できるので、また、酸素透過薄膜4が非晶質、あるいは、極めて微細な微結晶粒子から構成されるので、クラック等が発生せず、高酸素透過能、高温使用、かつ長寿命が可能になる。
【0017】
次に、実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明する。
初めに、LSGF系酸素透過薄膜を用いた酸素透過構造体及びその作製方法を説明する。
バルク体において高い酸素透過特性が報告されている、
組成式 La0.7 Sr0.3 Ga0.6 Fe0.4 3-z (ただし、0≦z<3)で表されるLSGF系酸素透過薄膜を作製した。薄膜作製に先立ち、ターゲットは固相反応法により作製した。原料粉末にはLa2 3 (純度99.99%)、SrCO3 (純度99.9%)、Ga2 3 (純度99.9%)、Fe2 3 (純度99.99%)を用いた。これらの原料を前述の各組成比になるように秤量した後、ボールミリングにより混合した。ボールミリングにはステンレス製のポットおよびボールを用い、エチルアルコール中にて1時間混合した。混合粉末はエチルアルコールを十分に乾燥させた後、ハンドプレスにより62MPaの加圧を行い20mmφのペレットに圧粉成形した。ペレットは300℃/hの昇温速度で1000℃まで加熱し、2時間保持して仮焼を行った。この仮焼粉をアルミナ乳鉢で粗粉砕、30分手混合した後、焼結助剤として5mass% PVA(ポリビニールアルコール)水溶液を粉末重量の5mass%添加し、さらに30分手混合した。それぞれの仮焼粉を成形圧3tonで20mmφのペレットに圧粉成形した後、300MPaで冷間静水圧プレスを行い、1500℃、4時間で本焼成してターゲットとした。この結果得られたターゲットの密度は5.6g/cm3 であった。
【0018】
薄膜の作製にはパルスレーザー蒸着装置を用いた。装置は成膜室とレーザー発生装置から構成される。成膜室には真空ポンプ(ロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ)、雰囲気ガス導入部、また、成膜室内には基板加熱用ランプヒーター、真空系(ピラニ真空計、キャパシタンスマノメータ)、酸素流量コントローラー、ターゲットおよび基板の自転が可能なホルダー等が装備されている。また、成膜室外壁にはレーザー導入用の窓や内部観察用の窓が設けられている。レーザー発生装置のレーザー光源には波長248nmのKrFエキシマレーザーを用い、いくつかの反射ミラーを用いて成膜室内のターゲットに照射する。
【0019】
成膜に際しては、成膜室の真空度が5×10-5Paに到達後、薄膜作製を開始した。基板には陽極酸化法により作製された市販の直径13mmの多孔質Al2 3 (孔サイズ20nm)基板を用いた。ターゲットと基板との間の距離は30~35mmとし、成膜時の基板温度はランプヒーターにより室温~700℃とした。酸素雰囲気ガス圧は0~20Paとした。まず、バッファ層としてCeO2 を3分間蒸着後、LSGF薄膜を成膜した。このとき成膜時間を変化させることでLSGF酸素透過薄膜の膜厚を変化させた。
【0020】
上記の固相焼結法で作製したLSGFターゲットとそのターゲットを用いて室温にてレーザーパワー500mJ、酸素圧10PaにてLSGF酸素透過薄膜を作製した。
図2は、ターゲット及びパルスレーザー蒸着法により成膜したLSGF酸素透過薄膜の粉末X線回折像を示す図である。図より、ターゲットには主相であるLSGFペロブスカイト型相に加えて、第二相としてSrLaGa3 7 が存在することが分かった。しかし、LSGF酸素透過薄膜においては回折ピークは観察されず、膜厚が5~200nmの範囲において非晶質状態であることが確認された。成膜時の基板温度を700℃としてもこの非晶質状態は維持されていた。
【0021】
図3は、多孔質基板上に積層したセリウム酸化物上に、室温で2時間成膜した非晶質状態のLSGF酸素透過薄膜の断面SEM像を示す図である。この図より、多孔質基板上に厚さ4μmの緻密な酸素透過薄膜が堆積していることが確認される。膜には結晶粒や凹凸が観察されないことからも、上述のX線回折により示された非晶質状態となっていることが示唆される。
【0022】
図4は上記のLSGF酸素透過薄膜を800℃で熱処理した後の断面SEM像を示す図である。
図からわかるように、結晶粒が確認され、この温度においては結晶化が進行している様子が伺える。熱処理温度を変化させ、結晶化開始温度を調査したところ、結晶化開始温度は750℃近傍であることが確認された。
また、この熱処理は、700~800℃/minという極めて高い昇温速度で行ったが、本発明のLSGF酸素透過薄膜は破壊されることが無く、高い耐熱衝撃性を有していることが明らかとなった。このことは、高速起動性が要求される移動体用燃料電池の改質器として適している。
【0023】
図5は、酸素透過特性の測定に用いた測定系の構成を示す図である。
透明石英管6の底部にホウ珪酸ガラスリング7を介して穴を有するセラミクス板8を密封して固定した透過酸素測定部9と、透明石英管6の底部に穴を有するセラミクス板8を固定した大気圧印加部10とを用意し、この両方のセラミクス板8の間に金リング11を介して試料1を固定する。酸素透過薄膜面は透過酸素測定部9側に向けて固定した。大気圧印加部10側から、アルミナ管12を介して高温の空気を送り込む。アルミナ管12の出口の温度を熱電対13で測定して試料温度とした。Heガスをアルミナ管14を介して導入し、透過酸素測定部9の酸素分圧が一定圧になるように流量を制御する。導入したHeガス流量と同じ流量のHeガスをガスクロマト装置、及び4重極型ガス質量分析装置に導入し、単位時間当たりの透過酸素分子数を測定し、酸素透過流速密度j(O2 )を求める。各々の酸素分圧における酸素透過流速密度j(O2 )を求め、酸素透過流速密度の酸素分圧勾配依存性を測定する。
【0024】
図6は、LSGF酸素透過薄膜を用いた本発明の酸素透過構造体の酸素透過流速密度の酸素分圧勾配依存性を示す図である。図において、▲(黒三角)、■(黒四角)、●(黒丸)及び×はそれぞれ、測定時の酸素透過構造体の温度、750℃、800℃、850℃、900℃を示す。
図7から明らかなように、本発明のLSGF酸素透過構造体は、750℃以上の高温において、ほぼ酸素分圧勾配によらずに、高い酸素透過流束密度を有することがわかる。
750℃の測定後において、本発明のLSGF酸素透過薄膜は、上述したように、非晶質状態もしくは微細結晶状態が保持された。800℃以上の測定後においては、結晶化が生じていた。酸素透過流束密度は、750℃において、3.6×10-7mol・cm-2-1と高い値を示し、薄膜の欠陥(ピンホールやクラック)に起因する空気の洩れによる酸素透過率は、Heガス流量に対して0.23%程度であった。測定温度を800℃以上とすることによりさらに高い酸素透過流束密度が得られているものの、結晶化に際して薄膜に多量のクラックが導入されたため、洩れに起因する酸素透過は0.31%まで増加した。このことから、薄膜が非晶質状態もしくは微細結晶状態のとき、比較的高い耐リーク性能と酸素透過流束密度が両立されることがわかる。
【0025】
次に、本発明の他の実施の形態であるLSCF系酸素透過薄膜を用いた酸素透過構造体及びその作製方法を説明する。
作製方法及び測定方法は、上記LSGF系酸素透過薄膜を用いた酸素透過構造体の場合と同等である。
図7は、La0.6 Sr0.4 Co1-x Fex 3-z 薄膜を用いた本発明の酸素透過構造体の酸素透過流束密度の経時変化を示す図である。図において、●はセリウム酸化物バッファ層を用いたの酸素透過構造体、□はセリウム酸化物バッファ層を用いない従来の酸素透過構造体の結果を示す。
図から明らかなように、セリウム酸化物バッファ層を用いない場合、酸素透過流束密度は時間とともに単調に減少しているが、セリウム酸化物バッファ層を用いた場合は、その減少の程度は極めて緩やかであることがわかる。
【0026】
上記の経時変化測定後の試料をX線回折測定したところ、セリウム酸化物バッファ層を用いていない場合、LSCF薄膜中のCoと基板のAl2 3 が化学反応を起こし、酸素透過を阻害するCoAl2 4 相を形成していることが確認された。しかし、セリウム酸化物をバッファ層として用いた場合にはそのような相の形成は確認されず、セリウム酸化物バッファ層がLSCF薄膜とAl2 3 基板との間の化学反応を抑制していることがわかる。
【0027】
さらに、図示しないが、図に示した試料よりもCoの組成比が大きく、よりCoAl2 4 相を形成しやすい試料においても、また、より高温の条件においても、セリウム酸化物バッファ層を用いた場合には高い酸素透過能を維持することを確認した。
また、セリウム酸化物バッファ層を用いない場合、CoAl2 4 相の形成とともに基板が劣化し900℃以上で割れる傾向を示したが、セリウム酸化物バッファ層の適用により、900~1000℃の高温においても基板が十分な機械的強度を有し、割れないことを確認した。
【0028】
【発明の効果】
上記説明から理解されるように、本発明によれば、セリウム酸化物バッファ層が基板と酸素透過薄膜との間の不可避的反応を抑止するから、また、セリウム酸化物バッファ層上の酸素透過膜が非晶質、または微細な結晶粒からなるから、クラック等が発生しにくく、従って、酸素透過膜を薄くすることができ、その結果、高い酸素透過特性と強度を兼ね備えた酸素透過構造体を提供することができることになる。従って、本発明を燃料電池を使用した移動体等に用いれば、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の酸素透過構造体の構成を示す模式断面図である。
【図2】ターゲット及びパルスレーザー蒸着法により成膜したLSGF酸素透過薄膜の粉末X線回折像を示す図である。
【図3】多孔質基板上に積層したセリウム酸化物上に、室温で2時間成膜した非晶質状態のLSGF酸素透過薄膜の断面SEM像を示す図である。
【図4】LSGF酸素透過薄膜を800℃で熱処理した後の断面SEM像を示す図である。
【図5】酸素透過特性の測定に用いた測定系の構成を示す図である。
【図6】LSGF酸素透過薄膜を用いた本発明の酸素透過構造体の酸素透過流速密度の酸素分圧勾配依存性を示す図である。
【図7】La0.6 Sr0.4 Co1-x Fex 3-z 薄膜を用いた本発明の酸素透過構造体の酸素透過流束密度の経時変化を示す図である。
【図8】部分酸化法を説明する概念図である。
【図9】酸素イオン・電子混合導電体の電子伝導度及びイオン伝導度の酸素分圧勾配依存性を示す図である。
【符号の説明】
1 酸素透過構造体
2 多孔質基板
3 酸化セリウム
4 酸素透過薄膜
6 透明石英管
7 ホウ珪酸ガラスリング
8 セラミックス板
9 透過酸素測定部
10 大気圧印加部
11 金リング
12 アルミナ管
13 熱電対
14 アルミナ管
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8