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明細書 :フォトリフラクティブ材料およびその製造方法、ならびに、それを用いたホログラム

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3973964号 (P3973964)
公開番号 特開2003-322886 (P2003-322886A)
登録日 平成19年6月22日(2007.6.22)
発行日 平成19年9月12日(2007.9.12)
公開日 平成15年11月14日(2003.11.14)
発明の名称または考案の名称 フォトリフラクティブ材料およびその製造方法、ならびに、それを用いたホログラム
国際特許分類 G02F   1/361       (2006.01)
G03H   1/02        (2006.01)
G03H   1/04        (2006.01)
G03H   1/22        (2006.01)
FI G02F 1/361
G03H 1/02
G03H 1/04
G03H 1/22
請求項の数または発明の数 5
全頁数 37
出願番号 特願2002-129159 (P2002-129159)
出願日 平成14年4月30日(2002.4.30)
審査請求日 平成16年4月23日(2004.4.23)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】堤 直人
【氏名】清水 裕介
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人原謙三国際特許事務所
【識別番号】100080034、【弁理士】、【氏名又は名称】原 謙三
【識別番号】100113701、【弁理士】、【氏名又は名称】木島 隆一
【識別番号】100116241、【弁理士】、【氏名又は名称】金子 一郎
審査官 【審査官】牧 隆志
参考文献・文献 特開2001-261680(JP,A)
特開平11-038457(JP,A)
特開平11-271822(JP,A)
神吉伸通他,アモルファス分子材料-トリ(N-ガルバゾリル)トリフェニルアミンを正孔輸送ホスト材料として用いるフォトリフラクティブ素子の開発,日本化学会第81春季年会講演予稿集1,2002年 3月26日,p.150,4C4-18
William E.Douglas et al.,Photorefractive properties of new polymer composites incorporating poly[ethynediyl-arylene-ethynediyl-silylene]s,Physical Chemistry Chemical Physics,2002年 1月 1日,Vol.4,No.1,p.109-114
調査した分野 G02B 5/18
G02F 1/35 - 1/39
G03H 1/00 - 1/34
JST7580(JDream2)
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤を含んでなり、無電界で動作するフォトリフラクティブ材料であって、
上記電荷発生剤および電荷輸送剤として、電荷発生剤と電荷輸送剤との両方を兼ねる光導電性ポリマーが用いられており、
上記光導電性ポリマーは、以下の化学式(1)で表される化合物、
【化1】
JP0003973964B2_000035t.gif
(ただし、Rは、R1、R2、R3のいずれかを表す)
【化2】
JP0003973964B2_000036t.gif
【化3】
JP0003973964B2_000037t.gif
【化4】
JP0003973964B2_000038t.gif
以下の化学式(2)で表される化合物、
【化5】
JP0003973964B2_000039t.gif
(ただし、Yは、上記R1を表す)
および、以下の化学式(3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、
【化6】
JP0003973964B2_000040t.gif
(ただし、Zは、R4、R5のいずれかを表す)
【化7】
JP0003973964B2_000041t.gif
【化8】
JP0003973964B2_000042t.gif
上記非線形光学色素は、2,5-ジメチル-4-(p-ニトロフェニルアゾ)アニソール、4-アミノ-4’-ニトロアゾベンゼン、s-(-)-1-(4-ニトロフェニル)-2-ピロリジン-メタノール、4-(ジエチルアミノ)-(E)-β-ニトロスチレン、(ジエチルアミノ)ベンツアルデヒドジフェニルヒドラゾン、以下の化学式(8)で表される化合物、
【化9】
JP0003973964B2_000043t.gif
以下の化学式(9)で表される化合物、
【化10】
JP0003973964B2_000044t.gif
以下の化学式(10)で表される化合物、
【化11】
JP0003973964B2_000045t.gif
以下の化学式(11)で表される化合物、
【化12】
JP0003973964B2_000046t.gif
および以下の化学式(12)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、
【化13】
JP0003973964B2_000047t.gif
上記増感剤は、(2,4,7-トリニトロ-9-フルレニィリデン)マロニトリル、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン、フラーレンC60、テトラシアノベンゼンおよびテトラシアノキノジノメタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、
上記フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、上記増感剤の含有量が3重量%を超えて30重量%以下の範囲内であり、かつ、上記非線形光学色素の含有量が20~50重量%の範囲内であることを特徴とするフォトリフラクティブ材料。
【請求項2】
上記電荷発生剤および電荷輸送剤の含有量は、有機フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、30~40重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載のフォトリフラクティブ材料。
【請求項3】
上記可塑剤がフタル酸ベンジルブチルであることを特徴とする請求項1または2記載のフォトリフラクティブ材料。
【請求項4】
電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤を溶媒に溶解させる溶解工程と、上記溶媒を除去する除去工程とを含み、無電界で動作するフォトリフラクティブ材料の製造方法であって、
上記電荷発生剤および電荷輸送剤として、電荷発生剤と電荷輸送剤との両方を兼ねる光導電性ポリマーが用いられており、
上記光導電性ポリマーは、以下の化学式(1)で表される化合物、
【化14】
JP0003973964B2_000048t.gif
(ただし、Rは、R1、R2、R3のいずれかを表す)
【化15】
JP0003973964B2_000049t.gif
【化16】
JP0003973964B2_000050t.gif
【化17】
JP0003973964B2_000051t.gif
以下の化学式(2)で表される化合物、
【化18】
JP0003973964B2_000052t.gif
(ただし、Yは、上記R1を表す)
および、以下の化学式(3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、
【化19】
JP0003973964B2_000053t.gif
(ただし、Zは、R4、R5のいずれかを表す)
【化20】
JP0003973964B2_000054t.gif
【化21】
JP0003973964B2_000055t.gif
上記非線形光学色素は、2,5-ジメチル-4-(p-ニトロフェニルアゾ)アニソール、4-アミノ-4’-ニトロアゾベンゼン、s-(-)-1-(4-ニトロフェニル)-2-ピロリジン-メタノール、4-(ジエチルアミノ)-(E)-β-ニトロスチレン、(ジエチルアミノ)ベンツアルデヒドジフェニルヒドラゾン、以下の化学式(8)で表される化合物、
【化22】
JP0003973964B2_000056t.gif
以下の化学式(9)で表される化合物、
【化23】
JP0003973964B2_000057t.gif
以下の化学式(10)で表される化合物、
【化24】
JP0003973964B2_000058t.gif
以下の化学式(11)で表される化合物、
【化25】
JP0003973964B2_000059t.gif
および以下の化学式(12)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、
【化26】
JP0003973964B2_000060t.gif
上記増感剤は、(2,4,7-トリニトロ-9-フルレニィリデン)マロニトリル、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン、フラーレンC60、テトラシアノベンゼンおよびテトラシアノキノジノメタンからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物であり、
上記溶解工程では、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤の合計量に対して、増感剤を、3重量%を超えて30重量%以下の範囲内とし、かつ、上記非線形光学色素を20~50重量%の範囲内となるように添加することを特徴とするフォトリフラクティブ材料の製造方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載のフォトリフラクティブ材料を用いてなるホログラム。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無電界でフォトリフラクティブ効果を示すフォトリフラクティブ材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フォトリフラクティブ効果とは、可視光レーザを照射するとポッケルス効果によって、物質の屈折率が変化することである。具体的には、例えば、2本のコヒーレントなレーザ光をクロスさせて試料媒体に照射するとクロスしたビームは、互いに干渉して、試料媒体内に周期的な干渉縞を形成する。この干渉縞では、明・暗所が交互に交差しており、明所では、媒体が光励起されて電荷キャリアが生成する。この電荷キャリアのうち、再結合を逃れた電荷キャリアは、試料媒体に印加された外部電場によって明所からドリフト移動し、暗所でトラップされる。これにより、試料媒体中には、周期的な電荷密度の分布が生じる。そして、この周期的な電荷密度の分布は、ポッケルス効果を介して試料媒体中に屈折率の周期的な変化を誘起する。
【0003】
この、フォトリフラクティブ効果を用いることで、位相共役や、歪曲した媒体からのイメージング、実時間ホログラフィー、超多重ホログラム記録、光増幅、光ニューラルネットワークを含む非線形光情報処理、パターン認識、光リミッティング、高密度光データの記憶等への応用が期待されている。従って、上記フォトリフラクティブ効果を有するフォトリフラクティブ材料が求められている。
【0004】
従来は、フォトリフラクティブ材料として、チタン酸バリウム等の無機結晶材料が用いられていたが、結晶成長が困難であり、加工性に乏しいという問題点があった。
【0005】
そこで、近年、結晶材料の作製が容易なことや加工性に富んだフォトリフラクティブ材料として、有機ポリマー(有機高分子化合物)を用いたフォトリフラクティブ材料の開発が盛んになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、有機ポリマーをフォトリフラクティブ材料として用いるためには、ポリマーを配向制御する必要があり、このために、外部電場を印加する必要がある。この外部電場を印加するために必要な電圧は、約50~100V/μmであり、100μmの膜では数kVの高圧となるため、実用化が困難となっている。
【0007】
上記の問題点を解決する有機ポリマーを用いたフォトリフラクティブ材料としては、具体的には、例えば、特開平11-38457号公報に記載されている有機フォトリフラクティブ材料が挙げられる。
【0008】
上記公報に開示の有機フォトリフラクティブ材料は、有機フォトリフラクティブ材料中に液晶分子を分散させてなる構成であり、これにより、外部電圧を下げるようになっている。
【0009】
しかし、上記公報の構成でも、外部電圧をかける必要がある。
【0010】
また、外部電圧をかけなくてもよい、すなわち、外部電場を印加して分子を配向する必要がないフォトリフラクティブ材料としては、以下に示す公報が挙げられる。
【0011】
具体的には、例えば、特開平11-311815号公報に開示のフォトリフラクティブ材料は、有機ポリマーと無機ポリマーとからなるフォトリフラクティブ材料である構成である。
【0012】
しかしながら、上記公報の構成では、外部電圧を印加することなく、フォトリフラクティブ効果を発生させることが可能であるが、ポーリングによる電場を印加する必要があり、その際、高電圧を必要とするため、実用化が困難である。
【0013】
また、特開平10-213825号公報では、直径が0.5nm以上1000nm以下のクラスター状物質からなる非線形光学材料を含有する有機フォトリフラクティブ材料の構成が開示されている。
【0014】
しかしながら、上記公報の構成では、得られる有機フォトリフラクティブ材料の回折効率および利得係数は、非常に低いために、実用化が困難であるという問題点がある。
【0015】
本発明は、上記従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、無電界で、高い回折効率および高い利得係数を得ることができる(高い有機フォトリフラクティブ効果を示す)有機フォトリフラクティブ材料およびその製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のフォトリフラクティブ材料、上記の課題を解決するために、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤を含んでなるフォトリフラクティブ材料であって、上記フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、上記増感剤の含有量が3重量%を超えて30重量%以下の範囲内であり、かつ、上記非線形光学色素の含有量が20~50重量%の範囲内であることを特徴としている。
【0017】
上記の構成によれば、増感剤の含有量を、フォトリフラクティブ材料に対して、3重量%を超えて30重量%以下の範囲内とし、かつ、非線形光学色素の含有量を20~50重量%の範囲内としている。上記増感剤を添加することにより、この増感剤と電荷輸送剤と電荷発生剤とが電荷移動錯体を形成して、分子配向の制御なしでフォトリフラクティブ効果を引き起こすのに必要な空間電場を形成することができる。
【0018】
上記増感剤の含有量が3重量%以下であると、回折効率が低く、利得係数もほとんど観測されないために、無電界で動作する有機フォトリフラクティブ材料として用いることができない。また、上記増感剤の含有量が30重量%よりも大きいと、光の吸収が大きいので、光の透過度が顕著に落ち込むため、現実的ではない。
【0019】
また、上記非線形光学色素の含有量が、20重量%よりも少ないと、フォトリフラクティブ効果に必要な回折効率や利得係数が得られないため好ましくない。一方、上記非線形光学色素の含有量が、50重量%よりも多いと、他の成分(電荷発生・電荷輸送剤、増感剤、および、可塑剤)との量比にアンバランスが生じて、システムの設計に悪影響を及ぼす場合がある。
【0020】
従って、フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、上記増感剤の含有量を3重量%を超えて30重量%以下の範囲内とし、かつ、非線形光学色素の含有量を20~50重量%の範囲内とすることにより、無電界で、従来と比べて非常に大きな、回折効率および/または利得係数を得ることができるフォトリフラクティブ材料を提供することができる。
【0021】
また、本発明にかかるフォトリフラクティブ材料は、さらに、上記電荷発生剤と電荷輸送剤とが光導電性ポリマーであることがより好ましい。
【0022】
本発明にかかるフォトリフラクティブ材料は、上記可塑剤がフタル酸ベンジルブチルであることがより好ましい。
【0023】
可塑剤として、フタル酸ベンジルブチルを用いることにより、分子分散性を向上させることができ、従来と比べて、高い回折効率および/または高い利得係数を得られるとともに、エネルギー移動速度および格子形成時間を短くすることができる。
【0024】
本発明にかかるフォトリフラクティブ材料の製造方法は、上記の課題を解決するために、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤を溶媒に溶解させる溶解工程と、上記溶媒を除去する除去工程とを含むフォトリフラクティブ材料の製造方法であって、上記溶解工程では、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤の合計量に対して、増感剤が3重量%を超えて30重量%以下の範囲内となり、かつ、上記非線形光学色素が20~50重量%の範囲内となるように添加することを特徴としている。
【0025】
上記の構成によれば、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤の合計量に対して、増感剤の添加量が3重量%を超えて30重量%以下の範囲内となり、上記非線形光学色素が20~50重量%の範囲内となるように添加することにより、従来と比べて、無電界でも、十分なフォトリフラクティブ効果が得られるフォトリフラクティブ材料を製造することができる。また、上記電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤を溶媒させた後、上記溶媒を除去することにより、フォトリフラクティブ材料を得ることができるので、簡単にフォトリフラクティブ材料を製造することができる。特に、外部電場およびポーリングによる電場を印加することなく、フォトリフラクティブ材料を製造することができるので、より一層簡単に製造することができる。また、外部電場を印加する必要がないのでフォトリフラクティブ材料の厚さを厚くすることが可能となる。さらに、無電界で作動できるので、この材料を光デバイスに組み込むときには好適となる。
【0026】
本発明にかかるホログラムは、上記フォトリフラクティブ材料を用いてなることを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、無電界で作動させることができるホログラムを提供することができる。
【0028】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の一形態について図1ないし図9に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0029】
本実施の形態にかかる有機フォトリフラクティブ材料は、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤を含んでなるフォトリフラクティブ材料であって、上記フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、上記増感剤の含有量が3重量%を超えて30重量%以下の範囲内であり、かつ、上記非線形光学色素の含有量が20~50重量%の範囲内である構成である。
【0030】
上記電荷発生剤は、光を照射することにより、正電荷を発生させることができるものであれば、特に限定されるものではない。上記電荷発生剤としては、具体的には、例えば、ポリビニルカルバゾール(PVK)、トリフェニルアミン類等が挙げられる。上記電荷発生剤は、単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0031】
上記電荷輸送剤とは、上記電荷発生剤によって、発生した電子を輸送することができるものであれば、特に限定されるものではない。上記電荷輸送剤としては、具体的には、例えば、ポリビニルカルバゾール(PVK)等が挙げられる。上記電荷輸送剤は、単独で用いてもよく、併用してもよい。
【0032】
本実施の形態では、これら上記電荷発生剤と電荷輸送剤との両方を兼ねる、電荷発生・電荷輸送剤を用いている。
【0033】
上記電荷発生・電荷輸送剤としては、具体的には、光導電性ポリマーである、ビニルポリマーおよび付加縮合ポリマー等が挙げられる。光導電性ポリマーであることにより、電荷を発生させやすく、かつ、電荷を輸送し易い。上記ビニルポリマーとしては、例えば、化学式(1)および化学式(2)に示す化合物等が挙げられる。また、上記付加縮合ポリマーとしては、例えば、化学式(3)に示す化合物等が挙げられる。上記例示の電荷発生・電荷輸送剤のうち、ガラス転移点が低い点で、上記化学式(1)のRがR1である、ポリ(2-(9-カルバゾイル)エチルメタクリレート)(PCZEMA)がより好ましい。また、上記電荷発生・電荷輸送剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。また、この電荷発生・電荷輸送剤と上記電荷発生剤および/または電荷輸送剤とを併用してもよい。
【0034】
【化1】
JP0003973964B2_000002t.gif【0035】
(ただし、Rは、R1、R2、R3のいずれかを表す)
【0036】
【化2】
JP0003973964B2_000003t.gif【0037】
【化3】
JP0003973964B2_000004t.gif【0038】
【化4】
JP0003973964B2_000005t.gif【0039】
【化5】
JP0003973964B2_000006t.gif【0040】
(ただし、Yは、上記R1を表す)
【0041】
【化6】
JP0003973964B2_000007t.gif【0042】
(ただし、Zは、R4、R5のいずれかを表す)
【0043】
【化7】
JP0003973964B2_000008t.gif【0044】
【化8】
JP0003973964B2_000009t.gif【0045】
上記電荷発生剤および電荷輸送剤、または、電荷発生・電荷輸送剤の含有量(添加量)としては、有機フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、20~50重量%の範囲内がより好ましく、30~40重量%の範囲内がさらに好ましく、30~40重量%の範囲内が特に好ましい。上記含有量が、20重量%よりも少ないと、発生した電荷の移動が非常に遅くなる。一方、上記含有量が、50重量%よりも多いと、他の成分(非線形光学色素、増感剤、および、可塑剤)との量比にアンバランスが生じて、システムの設計に悪影響を及ぼす場合がある。なお、上記「システムの設計」とは、フォトリフラクティブ材料の設計を表す。
【0046】
また、上記電荷発生・輸送剤として、酸化電位の低い化合物、具体的には、例えば、トリフェニルアミン類等を用いることにより、応答速度を向上させることができる。
【0047】
上記非線形光学色素とは、2次の非線形光学特性を示すドナーアクセプター型分子、すなわち、電場によって屈折率が変化する材料(2次非線形光学材料)のことである。上記非線形光学色素としては、具体的には、例えば、化学式(4)に示す、2,5-ジメチル-4-(p-ニトロフェニルアゾ)アニソール(DMNPAA);4-アミノ-4´-ニトロアゾベンゼン(ANAB);化学式(5)に示す、s-(-)-1-(4-ニトロフェニル)-2-ピロリジン-メタノール(NPP);化学式(6)に示す、4-(ジエチルアミノ)-(E)-β-ニトロスチレン(DEANST);化学式(7)に示す、(ジエチルアミノ)ベンツアルデヒドジフェニルヒドラゾン(DEH);化学式(8)で示される化合物(PDCST)、化学式(9)で示される化合物(AODCST)、化学式(10)で示される化合物(7-DCST)、化学式(11)で示される化合物(TDDCST)、化学式(12)で示される化合物(DCDHF-6)等のアミノシアノスチレン類;等が挙げられる。上記例示のうち、632.8nmでの吸収の低さの点から、s-(-)-1-(4-ニトロフェニル)-2-ピロリジン-メタノール(以下、NPPと称する)がより好ましい。また、上記非線形光学色素は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても良い。
【0048】
【化9】
JP0003973964B2_000010t.gif【0049】
【化10】
JP0003973964B2_000011t.gif【0050】
【化11】
JP0003973964B2_000012t.gif【0051】
【化12】
JP0003973964B2_000013t.gif【0052】
【化13】
JP0003973964B2_000014t.gif【0053】
【化14】
JP0003973964B2_000015t.gif【0054】
【化15】
JP0003973964B2_000016t.gif【0055】
【化16】
JP0003973964B2_000017t.gif【0056】
【化17】
JP0003973964B2_000018t.gif【0057】
上記非線形光学色素の含有量(添加量)としては、有機フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、20~50重量%の範囲内がより好ましく、20~40重量%の範囲内がさらに好ましく、25~40重量%の範囲内が特に好ましく、25~30重量%の範囲内が最も好ましい。上記含有量が、20重量%よりも少ないと、フォトリフラクティブ効果に必要な回折効率や利得係数が得られない場合がある。一方、上記含有量が、50重量%よりも多いと、他の成分(電荷発生・電荷輸送剤、増感剤、および、可塑剤)との量比にアンバランスが生じて、システムの設計に悪影響を及ぼす場合がある。
【0058】
上記可塑剤は、得られるフォトリフラクティブ材料のガラス転移点を下げるため、および、フォトリフラクティブ性を向上させるために添加される。上記可塑剤としては、具体的には、例えば、化学式(13)に示す、リン酸トリクレシル(TCP)、フタル酸ベンジルブチル(BBP)等が挙げられる。上記例示の可塑剤のうち、ガラス転移点を効率的に下げることができる点で、リン酸トリクレシル(以下、TCPと称する)がより好ましい。また、回折応答速度や、エネルギー移動応答速度を向上するには、フタル酸ベンジルブチル(BBP)を用いることが好ましい。上記可塑剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
【化18】
JP0003973964B2_000019t.gif【0060】
上記可塑剤の含有量(添加量)としては、有機フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、10~50重量%の範囲内がより好ましく、20~40重量%の範囲内がさらに好ましく、30~40重量%の範囲内が特に好ましい。上記含有量が、10重量%よりも少ないと、十分なガラス転移点の低下が起こらない場合がある。一方、上記含有量が、50重量%よりも多いと、他の成分(非線形光学色素、増感剤、および、可塑剤)との量比にアンバランスが生じて、システムの設計に悪影響を及ぼす場合がある。
【0061】
上記増感剤は、電子受容体であり、無電界でのフォトリフラクティブ性を高めるために添加する。上記増感剤を添加することにより、この増感剤と電荷輸送剤と電荷発生剤とが電荷移動錯体を形成して、分子配向の制御なしでフォトリフラクティブ効果を引き起こすのに必要な空間電場を形成することができる。
【0062】
上記増感剤としては、具体的には、例えば、化学式(14)に示す、(2,4,7-トリニトロ-9-フルレニィリデン)マロニトリル(TNF-DM);化学式(15)に示す、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン(TNF);化学式(16)に示す、フラーレンC60;化学式(17)に示す、テトラシアノベンゼン(TCBN);化学式(18)に示す、テトラシアノキノジノメタン(TCNQ)等が挙げられる。上記例示の増感剤のうち、ホストマトリックスに対する溶解性の点で、2,4,7-トリニトロ-9-フルオレノン(以下、TNFと称する)がより好ましい。上記可塑剤は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
【化19】
JP0003973964B2_000020t.gif【0064】
【化20】
JP0003973964B2_000021t.gif【0065】
【化21】
JP0003973964B2_000022t.gif【0066】
【化22】
JP0003973964B2_000023t.gif【0067】
【化23】
JP0003973964B2_000024t.gif【0068】
上記増感剤の含有量としては、フォトリフラクティブ材料100重量部に対して、3重量%を超えて30重量%以下の範囲内がより好ましく、5~30重量%の範囲内がさらに好ましく、5~20重量%の範囲内が特に好ましく、5~10重量%の範囲内が最も好ましい。
【0069】
上記増感剤の含有量が、3重量%以下であると、無電界でのフォトリフラクティブ性が低いので好ましくない。一方、上記含有量が30重量%よりも多いと、電荷輸送剤、電荷発生剤および増感剤(または、電荷発生・電荷輸送剤および増感剤)からなる電荷移動錯体の濃度が高くなり光の吸収の増大を招来するため、システムの設計上好ましくない。また、上記増感剤の含有量が30重量%よりも大きいと、光の吸収が大きいので、光の透過度が顕著に落ち込むため、現実的ではない。
【0070】
本実施の形態にかかるフォトリフラクティブ材料では、有機フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、上記増感剤の含有量が3重量%を超えて30重量%以下の範囲内であり、かつ、上記非線形光学色素の含有量が20~50重量%の範囲内である。より好ましくは、有機フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、増感剤の含有量を5~20重量%の範囲内とし、かつ、非線形光学色素の含有量を20~50重量%の範囲内とすることである。さらに好ましくは、有機フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、増感剤の含有量を5~10重量%の範囲内とし、かつ、非線形光学色素の含有量を25~30重量%の範囲内とすることである。
【0071】
上記増感剤および非線形光学色素を上記範囲内の割合で含有させる(添加する)ことにより、従来と比べて、無電界でも、十分なフォトリフラクティブ性を得ることができる、すなわち、無電界でも、十分な、回折効率および利得係数を得ることができる。
【0072】
なお、フォトリフラクティブ材料が、上記電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤(または、電荷発生・電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤)で構成されている場合、上記各成分の合計量は、100重量%である。従って、上記合計量が100重量%となるように、各成分を配合すればよい。具体的には、フォトリフラクティブ材料が、電荷発生・電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤で構成されている場合、各成分の重量比は、電荷発生・電荷輸送剤:非線形光学色素:可塑剤:増感剤=20~50:20~50:10~50:3~30の範囲内、より好ましくは30~40:20~50:20~40:5~20の範囲内、最も好ましくは30~35:25~30:30~40:5~10の範囲内(ただし、増感剤は、全体(フォトリフラクティブ材料)の、3重量%を超えて30重量%以下の範囲内を占め、非線形光学色素は、全体の、20~50重量%の範囲内を占める)となるように各成分を配合することが好ましい。上記各成分を上記範囲内の重量比とすることにより、無電界でも、十分なフォトリフラクティブ性を得ることができる、すなわち、無電界でも十分な、回折効率および/または利得係数を得ることができる。
【0073】
また、本実施の形態にかかるフォトリフラクティブ材料は、上記成分の他に、フォトリフラクティブ性を損なわせない範囲内で他の成分を含有(添加)していてもよい。上記他の成分としては、具体的には、例えば、酸化防止剤や紫外線吸収剤等が挙げられる。上記他の成分を含有させる場合にも、有機フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、増感剤の含有量は3重量%を超えて30重量%以下の範囲内であり、非線形光学色素の含有量は20~50重量%の範囲内を占めるものとする。
【0074】
本実施の形態にかかるフォトリフラクティブ材料の製造方法は、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤を溶媒に溶解させる溶解工程と、上記溶媒を除去する除去工程とを含むフォトリフラクティブ材料の製造方法であって、上記溶解工程では、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤の合計量に対して、増感剤が3重量%を超えて30重量%以下の範囲内となり、かつ、上記非線形光学色素が20~50重量%の範囲内となるように添加する方法である。
【0075】
上記溶解工程では、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤を所定の割合にて溶媒に溶解する。この溶媒としては、非プロトン性極性溶媒であればよく、特に限定されるものではないが、化学式(19)に示す、N-メチルピロリドン(NMP)やジメチルホルムアミド等が好適に使用される。また、溶解温度としては、室温程度であればよい。また、必要に応じて、溶液を攪拌してもよい。この溶液を攪拌する場合には、スタラーチップ攪拌で、0.5~2回転/秒程度で攪拌すればよい。
【0076】
【化24】
JP0003973964B2_000025t.gif【0077】
上記除去工程では、溶媒を除去する。溶媒を除去する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、金属等の基盤上に溶液を滴下させ、この金属に熱をかける(加熱する)ことにより溶媒を除去すればよい。この加熱温度としては、用いる溶媒の種類や、フォトリフラクティブ材料を構成する各成分にもよるが、溶媒を除去することができる温度であればよい。
【0078】
上記製造方法によって、得られたフォトリフラクティブ材料は、例えば、ビデオ画像のような動画の記録・再生、実時間ホログラム、光の波面や位相のマニュピレーション、パターン認識、光増幅、非線形光情報処理、超多重ホログラム記録、高密度光データ記録、光相関システム、光コンピュータ等への利用が可能である。
【0079】
以上のように、本実施の形態にかかるフォトリフラクティブ材料は、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤を含んでなる有機フォトリフラクティブ材料であって、上記フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、上記増感剤の含有量が3重量%を超えて30重量%以下の範囲内であり、かつ、上記非線形光学色素の含有量が20~50重量%の範囲内である。
【0080】
上記増感剤の含有量が3重量%以下であると、回折効率が低く、利得係数もほとんど観測されないために、有機フォトリフラクティブ材料として用いることができない。また、上記増感剤の含有量が30重量%よりも大きいと、光の吸収が大きいので、光の透過度が顕著に落ち込むため、現実的ではない。また、上記非線形光学色素の含有量が、20重量%よりも少ないと、フォトリフラクティブ効果に必要な回折効率や利得係数が得られないため好ましくない。一方、上記非線形光学色素の含有量が、50重量%よりも多いと、他の成分(電荷発生・電荷輸送剤、増感剤、および、可塑剤)との量比にアンバランスが生じて、システムの設計に悪影響を及ぼす場合がある。
【0081】
従って、上記増感剤の含有量を3重量%を超えて30重量%以下の範囲内とし、上記非線形光学色素の含有量を20~50重量%の範囲内とすることにより、無電界で、従来と比べて非常に大きな、回折効率および/または利得係数を得ることができるフォトリフラクティブ材料を提供することができる。
【0082】
また、本実施の形態にかかるフォトリフラクティブ材料の製造方法は、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤を溶媒に溶解させる溶解工程と、上記溶媒を除去する除去工程とを含むフォトリフラクティブ材料の製造方法であって、上記溶解工程では、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤の合計量に対して、増感剤が3重量%を超えて30重量%以下の範囲内となり、かつ、上記非線形光学色素が20~50重量%の範囲内となるように添加する方法である。
【0083】
従って、増感剤の添加量を3重量%を超えて30重量%以下の範囲内とし、かつ、上記非線形光学色素の添加量を20~50重量%の範囲内とすることにより、従来と比べて、無電界でも、十分なフォトリフラクティブ効果を得ることができる。また、上記電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤を溶媒させた後、上記溶媒を除去することにより、フォトリフラクティブ材料を得ることができるので、従来と比べて、簡単にフォトリフラクティブ材料を製造することができる。特に、外部電場およびポーリングによる電場を印加することなく、フォトリフラクティブ材料を製造することができるので、より一層簡単に製造することができる。また、有機材料のみから構成されているので、材料設計の自由度が高く、この材料を光デバイスの中に組み込むときには好適である。
【0084】
なお、本実施の形態にかかるフォトリフラクティブ材料は、有機ポリマーからなる非線形光学色素を含んでなるフォトリフラクティブ材料であって、増感剤を含むとともに、上記フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、上記増感剤の含有量が3重量%を超えて30重量%以下の範囲内であり、かつ、上記非線形光学材料の含有量が20~50重量%の範囲内であることがより好ましい。
【0085】
また、本実施の形態にかかるフォトリフラクティブ材料は、上記可塑剤がフタル酸ベンジルブチル(BBP)である構成がより好ましい。
【0086】
また、本実施の形態にかかるフォトリフラクティブ材料は、無電界で動作させることが可能である。しかし、電場を印加して動作させることも可能である。この場合には、フォトリフラクティブ材料に電極を取り付ければよい。以下に、具体的な、製造方法について説明する。
【0087】
上記製造方法において、除去工程の際に、透明導電酸化膜であるITO(インジウム-錫酸化膜)電極の上に、上記溶液を滴下させることにより、フォトリフラクティブ材料を積層する。そして、十分な量のフォトリフラクティブ材料が積層したら、片側にフッ素樹脂テープによるスペーサを貼り付けたITO電極を、フォトリフラクティブ材料を挟むようにして、先のITO電極の対向する位置に貼り付ける。これにより、電界を印加することができるフォトリフラクティブ材料を製造することができる。
【0088】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。なお、本実施例のフォトリフラクティブ材料は、外部電場を印加することができるように、フォトリフラクティブ材料の両側に透明電極を取り付けている構成について説明する。しかしながら、本発明のフォトリフラクティブ材料は、無電界でも動作可能であるため、電極を取り付けなくても良い。
【0089】
ここで、回折効率(%)および利得係数(cm-1)の測定方法について説明する。
【0090】
回折効率(%)の測定は、図1に示すように、4光波混合測定装置を用いて測定した。測定には、632.8nmのHe-Neレーザを用いた。
【0091】
フォトリフラクティブ効果によって生じる回折効率(%)、すなわち、屈折率変化の大きさΔnは、ブラッグ回折の強度測定(回折効率測定)から評価することができる。これは、書き込み光により屈折率格子を生じたフォトリフラクティブ材料にブラッグ条件で低出力のプローブ光を入射させて、屈折率格子により回折する光の強度を測定することによって、その回折効率を測定することができる。ここでは、規格化回折効率(Normalized diffraction efficiency)ηnormについて示し、次式(1)により評価する。
【0092】
【数1】
JP0003973964B2_000026t.gif【0093】
ここで、Idiffracted,:屈折率格子による回折光の強度Itransmitted,:透過光強度を示す。ηnormは、厚い媒体中でのクーゲルニックの結合波理論(Kogelnik's coupled wave理論)によって屈折率変化の大きさΔnと関連づけることができる。そして、ηnormと屈折率変化の大きさΔnを近似的に1つの式で表すことができ、ηnormからΔnを評価することができる。なお、上記回折光の強度は、ベンチメーター(アジレント社製;34401型デジタルマルチメーター)を用い、上記透過光強度は、ベンチメーター(アジレント社製;34401型デジタルマルチメーター)を用いた。
【0094】
利得係数(cm-1)の測定は、図2に示すように、2光波混合法を用いて測定した。
【0095】
フォトリフラクティブ効果によって生じた屈折率格子は2本の可干渉性光による干渉縞とΨ(0<Ψ≦π/2)だけの位相シフト(理想的にはΨ=π/2)を生じる。このことは、フォトリフラクティブ効果と他の屈折率変調現象を区別する重要な因子であり、位相シフトした屈折率格子の形成によって、一方の光からもう一方の光へエネルギー移動が起こり、媒体の後方において2本の光が等しい強度だけ非対称的な変化を起こす。このエネルギー移動に対する物理量を表す利得係数Γは以下に示す式(2)または式(3)により評価される。【数2】
JP0003973964B2_000027t.gif【0097】
【数3】
JP0003973964B2_000028t.gif【0098】
ここで、d:サンプル厚、γ0=IAt (IB≠0)/IAt(IB=0)、β=IB/IA、ItA,ItB :書き込み光の透過強度を示す。
【0099】
なお、2本の書き込み光は、図3に示すように、2本の書き込み光の角度が18.9°となるように、試料に照射する。また、2本の書き込み光は、試料面に垂直な線を中心として、この中心線から等しい角度で照射される。なお、従来の書き込み光と試料との相対的な配置は、図4に示すように、試料面に垂直な線に対して垂直にはなっていない。
【0100】
〔実施例1〕
(電荷発生・電荷輸送剤の合成)
ホストポリマー(電荷発生・電荷輸送剤)となるポリ(2-(9-カルバゾイル)エチルメタクリレート)(以下、PCZEMAと称する)を次の手順で合成した。
【0101】
まず、9H-カルバゾール-9-エタノール(9H-carbazole-9-ethanol)25g(0.12mol)、塩化水素の捕捉剤であるトリエチルアミン16.8ml(0.12mol)及び重合禁止剤としてヒドロキノン(120mg)を溶解させたジクロロメタンの混合溶液(200ml)を氷水で冷却(0℃)し、撹拌しながらメタクリル酸クロリド12.1ml(0.12mol)を加えたジクロロメタン溶液(40ml)を滴下した。その溶液を0℃で2時間、その後、常温(25℃)で4.5時間反応させた。
【0102】
この溶液を飽和炭酸ナトリウム水溶液(1回)及び食塩水(3回)で分液漏斗を用いて洗浄した後、塩化カルシウム10g(脱水剤)を入れ、15時間、冷蔵保存した。
【0103】
その溶液をろ過して塩化カルシウムを除去した後、エバポレーターを用いてジクロロメタンを除去すると、やや褐色の固体が残った。それをヘキサン:アセトン=5:1の混合溶液に溶解させ、さらに不純物を取り除いた後、冷却することによって再結晶を行った。その結果、白色結晶のN-(2-ヒドロキシエチル)-カルバゾール(N-(2-hydroxyethyl)-carbazole;以下、ETCZMAと称する)を得た。上記ETCZMAの収率は12%であり、ETCZMAの融点は83.7℃であった。
【0104】
さらに、上記ETCZMA2.92g(0.01mol)をアゾビスブチロニトリル(AIBN)2.46g(モノマーに対して0.15mol%)を開始剤、1-メチル-2-ピロリドン(1-methyl-2-pyroridone;NMP)5mlを重合溶媒として、55℃で14時間、窒素雰囲気下で重合を行うことにより、PCZEMAを得た。得られたPCZEMAの収率は、76%であり、ガラス転移点は125.2℃であった。反応経路を図5に示す。なお、ガラス転移点は、MDSC(TA Instruments社製;2920型DSC)を用いて測定した。
(フォトリフラクティブ材料の製造)
電荷発生剤として上記PCZEMA、非線形光学色素として上記NPP(アルドリッチ社製)、可塑剤として上記TCP(東京化成工業社製)、増感剤として上記TNF(東京化成工業社製)を、重量比が35:30:30:5の割合で混合させ、それに、N-メチルピロリドン(NMP)を上記混合物0.3gに対して3mlの割合で加えた。そして、常温でスタラーチップを用いて、0.5~2回転/秒の割合で攪拌することにより、上記混合物を溶解した。
【0105】
次に、電極部を菱形に加工した、厚さが0.7~1.1μm、大きさが30×30mmの上記ITO盤を2枚作製して、一方のITO盤には、フッ素樹脂テープである厚さが80μmのスペーサを貼り付けた。
【0106】
そして、スペーサを取り付けていない上記ITO盤に溶液を滴下し、上記溶液に、ホットプレートにより200℃の熱をかけることにより、溶媒を除去した。この溶液を滴下して、溶媒を除去する操作を数回繰り返すことにより、厚さ100μm前後のフォトリフラクティブ材料層を形成した。そして、2枚のITO盤でこのフォトリフラクティブ材料を挟むように、もう一方のITO盤をフォトリフラクティブに取り付けた。このとき、フッ素樹脂テープがフォトリフラクティブ材料に接するようにITO盤を取り付けた。以上のようにして、本実施例にかかるフォトリフラクティブ材料を製造した。
【0107】
そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)および利得係数(cm-1)を測定した。結果を表1に示す。
【0108】
〔実施例2〕
上記PCZEMA、NPP、TCP、TNFの重量比を35:20:40:5の割合とした以外は、実施例1と同様にして、フォトリフラクティブ材料を製造した。そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)および利得係数(cm-1)を測定した。結果を表1に示す。
【0109】
〔実施例3〕
上記PCZEMA、NPP、TCP、TNFの重量比を33:20:40:7の割合とした以外は、実施例1と同様にして、フォトリフラクティブ材料を製造した。そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)および利得係数(cm-1)を測定した。結果を表1に示す。
【0110】
〔比較例1〕
上記PCZEMA、NPP、TCP、TNFの重量比を38:30:30:2の割合とした以外は、実施例1と同様にして、フォトリフラクティブ材料を製造した。そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)および利得係数(cm-1)を測定した。結果を表1に示す。
【0111】
〔比較例2〕
上記PCZEMA、NPP、TCP、TNFの重量比を37:20:40:3の割合とした以外は、実施例1と同様にして、フォトリフラクティブ材料を製造した。そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)および利得係数(cm-1)を測定した。結果を表1に示す。
【0112】
〔比較例3〕
上記PCZEMA、NPP、TCP、TNFの重量比を35:10:50:5の割合とした以外は、実施例1と同様にして、フォトリフラクティブ材料を製造した。そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)および利得係数(cm-1)を測定した。結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
JP0003973964B2_000029t.gif【0114】
そして、上記実施例1~3および比較例1~3で、得られた回折効率(%)および利得係数(cm-1)をグラフ化すると、図6および図7になった。
【0115】
また、上記PCZEMAの重量比が5重量部%である、実施例1,2および比較例3の回折効率(%)および利得係数(cm-1)をグラフ化すると、図8および図9になった。
【0116】
〔実施例4〕
上記PCZEMAの代わりに、ポリビニルカルバゾール(PVK)(アルドリッチ社製)を用いて、上記PVK、NPP、TCP、TNFの重量比を35:30:30:5の割合とした以外は、実施例1と同様にして、フォトリフラクティブ材料を製造した。そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)および利得係数(cm-1)を測定した。結果を表2に示す。
【0117】
〔実施例5〕
上記PCZEMAの代わりに、ポリビニルカルバゾール(PVK)(アルドリッチ社製)を用いて、上記PVK、NPP、TCP、TNFの重量比を35:20:40:5の割合とした以外は、実施例1と同様にして、フォトリフラクティブ材料を製造した。そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)および利得係数(cm-1)を測定した。結果を表2に示す。
【0118】
〔実施例6〕
上記PCZEMAの代わりに、ポリビニルカルバゾール(PVK)(アルドリッチ社製)を用いて、上記PVK、NPP、TCP、TNFの重量比を20:40:35:5の割合とした以外は、実施例1と同様にして、フォトリフラクティブ材料を製造した。そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)および利得係数(cm-1)を測定した。結果を表2に示す。
【0119】
〔実施例7〕
上記PCZEMAの代わりに、ポリビニルカルバゾール(PVK)(アルドリッチ社製)を用いて、上記PVK、NPP、TCP、TNFの重量比を40:25:30:5の割合とした以外は、実施例1と同様にして、フォトリフラクティブ材料を製造した。そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)および利得係数(cm-1)を測定した。結果を表2に示す。
【0120】
〔実施例8〕
上記PCZEMAの代わりに、ポリビニルカルバゾール(PVK)(アルドリッチ社製)を用いて、上記PVK、NPP、TCP、TNFの重量比を25:25:45:5の割合とした以外は、実施例1と同様にして、フォトリフラクティブ材料を製造した。そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)および利得係数(cm-1)を測定した。結果を表2に示す。
【0121】
〔比較例4〕
上記PCZEMAの代わりに、ポリビニルカルバゾール(PVK)(アルドリッチ社製)を用いて、上記PVK、NPP、TCP、TNFの重量比を20:40:37:3の割合とした以外は、実施例1と同様にして、フォトリフラクティブ材料を製造した。そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)および利得係数(cm-1)を測定した。結果を表2に示す。
【0122】
【表2】
JP0003973964B2_000030t.gif【0123】
〔実施例9〕
上記リン酸トリクレジル(TCP)の代わりにフタル酸ベンジルブチル(BBP)を用いて、上記PVK、NPP、BBP、TNFの重量比を35:20:40:5の割合とした以外は、実施例1と同様にして、フォトリフラクティブ材料を製造した。そして、このフォトリフラクティブ材料の回折効率(%)、利得係数(cm-1)、格子形成時間およびエネルギー移動時間を測定した。結果を表3に示す。なお、実施例5(PVK、NPP、TCP、TNFの重量比が35:20:40:5)のフォトリフラクティブ材料についても、上記格子形成時間およびエネルギー移動時間を測定し、その結果を表3に示す。
【0124】
【表3】
JP0003973964B2_000031t.gif【0125】
上記実施例9より、可塑剤をTCPからBBPに代えることにより、分子分散性が向上して、ガラス転移点が低下したため、格子形成時間およびエネルギー移動時間が速くなったと考えられる。
【0126】
以上の結果より、増感剤を、フォトリフラクティブ材料に対して、3重量%を超えて、より好ましくは5重量%以上含有させ、かつ、非線形光学色素を20重量%以上、さらに好ましくは25重量%以上含有させることにより、高い回折効率および/または高い利得係数が得られることがわかる。
(書き込み光の角度に対する格子間隔およびエネルギー移動応答速度の変化)
〔実施例10〕
実施例5(PVK、NPP、TCP、TNFの重量比が35:20:40:5)のフォトリフラクティブ材料を用いて、書き込み光の角度を変化させたときの、格子間隔およびエネルギー移動時間の変化を調べた。その結果を表4に示す。
【0127】
【表4】
JP0003973964B2_000032t.gif【0128】
実施例10の結果より、書き込み光の角度が大きくなると、周期的な干渉縞の間隔(格子間隔)が狭くなり、電荷キャリアの移動距離が短くなり、エネルギー移動に要する時間を短くすることができる。すなわち、応答時間を速くすることができる。
(書き込み光強度を変化させたときのエネルギー移動応答速度の変化)
〔実施例11〕
実施例5(PVK、NPP、TCP、TNFの重量比が35:20:40:5)のフォトリフラクティブ材料を用いて、書き込み光強度を変化させたときの、利得係数およびエネルギー移動時間の変化を調べた。その結果を表5に示す。
【0129】
【表5】
JP0003973964B2_000033t.gif【0130】
〔実施例12〕
実施例2(PCZEMA、NPP、TCP、TNFの重量比が35:20:40:5)のフォトリフラクティブ材料を用いて、書き込み光強度を変化させたときの、利得係数およびエネルギー移動時間の変化を調べた。その結果を表6に示す。
【0131】
【表6】
JP0003973964B2_000034t.gif【0132】
実施例11および実施例12の結果より、書き込み光強度が減少することにより、電荷キャリア生成効率が低下して、電荷密度の低下が起こり、利得係数の低下およびエネルギー移動時間の増大をもたらす。
(ホログラム画像記録)
〔実施例13〕
実施例9(PVK、NPP、BBP、TNFの重量比が35:20:40:5)のフォトリフラクティブ材料を用いて、ホログラムを作製した。
【0133】
ホログラム画像の書き込み工程としては、具体的には、先ず、上記図1に示すような、回折効率測定用の4光波混合法の装置を用いて、書き込み光の1つを、ビームエクスパンダーで拡げて、書き込みたい透過型画像に照射する。そして、透過してきた光を再びレンズを用いて焦点を絞り、フォトリフラクティブ材料上で、もう一方の書き込み光とクロスさせて干渉縞を作製することにより、ホログラム画像の書き込みを行う。以上のようにして、ホログラムを作製した。
【0134】
ホログラム画像の読み出し工程としては、具体的には、2本の書き込み光をシャッターで遮断して、上記ホログラム画像書き込み工程で書き込んだポイント(干渉縞の書き込まれた場所)に、読み出し用のプローブ光を入射させ、出てきた回折光をスクリーン(図1に示す、50%ビームスプリッターの一方)に投影して、上記書き込んだホログラム画像を読み出した。その結果、良好な画像が読み出された。
【0135】
〔実施例14〕
実施例13でホログラム画像の書き込みを行った後、フォトリフラクティブ材料を回転させて、上記フォトリフラクティブ材料の別の場所に別のホログラム画像の書き込みを行った。以上のようにして、ホログラムを作製した。なお、上記フォトリフラクティブ材料は、レーザ光に対して垂直な方向、具体的には、図1に示す回折効率測定用の4光波混合法の装置の、各部材の設置平面に対して垂直となる方向を回転軸として、回転させた。
【0136】
そして、上記フォトリフラクティブ材料を、それぞれの画像を書き込んだ回転角度に戻した後に、上記書き込んだそれぞれのホログラム画像を上記実施例13と同様にして読み出した。その結果、それぞれの角度で良好な画像が読み出された。
【0137】
【発明の効果】
本発明のフォトリフラクティブ材料は、以上のように、増感剤の含有量が、上記フォトリフラクティブ材料100重量%に対して、3重量%を超えて30重量%以下の範囲内であり、かつ、上記非線形光学色素の含有量を20~50重量%の範囲内である構成である。
【0138】
それゆえ、上記増感剤の含有量を3重量%を超えて30重量%以下の範囲内とし、かつ、上記非線形光学色素の含有量を20~50重量%の範囲内とすることにより、無電界で、従来と比べて非常に大きな回折効率および/または利得係数を得ることができるフォトリフラクティブ材料を提供することができるという効果を奏する。
【0139】
また、本発明にかかるフォトリフラクティブ材料は、さらに、上記電荷発生剤と電荷輸送剤とが光導電性ポリマーであることがより好ましい。
【0140】
本発明にかかるフォトリフラクティブ材料は、上記可塑剤がフタル酸ベンジルブチルであることがより好ましい。
【0141】
それゆえ、可塑剤として、フタル酸ベンジルブチルを用いることにより、分子分散性を向上させることができ、従来と比べて、高い回折効率および/または高い利得係数を得られるとともに、エネルギー移動速度および格子形成時間を短くすることができるという効果を奏する。
【0142】
本発明にかかるフォトリフラクティブ材料の製造方法は、以上のように、溶解工程では、増感剤を、電荷発生剤、電荷輸送剤、非線形光学色素、可塑剤および増感剤の合計量に対して、3重量%を超えて30重量%以下の範囲内となるように添加する構成である。
【0143】
それゆえ、増感剤の添加量を3重量%を超えて30重量%以下の範囲内とすることにより、従来と比べて、無電界でも、十分なフォトリフラクティブ効果が得られるフォトリフラクティブ材料を製造することができるという効果を奏する。
【0144】
本発明にかかるホログラムは、上記フォトリフラクティブ材料を用いてなる構成である。
【0145】
それゆえ、無電界で作動させることができるホログラムを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の回折効率を測定するための4光波混合法を説明する正面図である。
【図2】本発明の利得係数を測定するための2光波混合法を説明する正面図である。
【図3】本発明にかかる2光波混合法の書き込み光と試料との相対的な配置を表す正面図である。
【図4】従来の2光波混合法の書き込み光と試料との相対的な配置を表す正面図である。
【図5】実施例1におけるPCZEMAの反応経路を示す図面である。
【図6】上記実施例1~3および比較例1~3の回折効率を表したグラフである。
【図7】上記実施例1~3および比較例1~3の利得係数を表したグラフである。
【図8】実施例1,2および比較例3の回折効率を表したグラフである。
【図9】実施例1,2および比較例3の利得係数を表したグラフである。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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