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明細書 :採型用陰圧粒子バッグ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4092439号 (P4092439)
公開番号 特開2003-265507 (P2003-265507A)
登録日 平成20年3月14日(2008.3.14)
発行日 平成20年5月28日(2008.5.28)
公開日 平成15年9月24日(2003.9.24)
発明の名称または考案の名称 採型用陰圧粒子バッグ
国際特許分類 A61F   2/76        (2006.01)
FI A61F 2/76
請求項の数または発明の数 1
全頁数 6
出願番号 特願2002-071789 (P2002-071789)
出願日 平成14年3月15日(2002.3.15)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第17回日本義肢装具学会にて、II-2-9として、平成13年11月24日~25日に発表
審査請求日 平成16年1月13日(2004.1.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】391034994
【氏名又は名称】国立身体障害者リハビリテーションセンター総長
発明者または考案者 【氏名】佐々木 一彦
【氏名】藤田 欣也
個別代理人の代理人 【識別番号】100105050、【弁理士】、【氏名又は名称】鷲田 公一
審査官 【審査官】川端 修
参考文献・文献 特開平10-137217(JP,A)
特開昭57-070057(JP,A)
調査した分野 A61F 2/76
特許請求の範囲 【請求項1】
高伸縮性弾性材料で作られ、採型時に採型対象部位に被せられるバッグ内膜と、
低伸縮性弾性材料で作られ、前記バッグ内膜の外側を覆うように配置されたバッグ外膜と、
前記バッグ内膜と前記バッグ外膜との間に存在する内部空洞と、
前記内部空洞に充填された保形用粒子と、
前記バッグ外膜を貫通して外部に伸びたエア供給ノズルを備え、前記バッグ外膜の内壁面に円周方向に沿って環状に配置されたエアバッグとを有し、
前記内部空洞を真空吸引するとともに、前記エアバッグに圧縮空気を供給して、前記バッグ内膜を採型対象部位に適合する形状に保持することを特徴とする採型用陰圧粒子バッグ。
発明の詳細な説明 【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、採型後に即時試用可能なチェック用義肢装具を製作するための採型用陰圧粒子バッグ及び採型方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
義肢は、従来から次の手順で製作されている。
(1) 被施術者の肢断端を石膏付きギブス包帯で採型し、雌型を製作する。
(2) 雌型に石膏を充填し、石膏雄型を製作する。
(3) 石膏雄型を修正した後、石膏雄型からチェック用の樹脂製雌型を製作する。
(4) チェック用樹脂雌型を義肢用部品と連結し、チェック用義肢を製作する。
(5) 被施術者にチェック用義肢を装着させ、試用する。
(6)熱処理,パテ塗り,切削等でチェック用義肢を修正し、試用で判った欠陥を解消する。
(7) 試用で欠陥がなければ、チェック用義肢から雄型を再度製作し、本義肢を製作する。
【0003】
なかでも、採型からチェック用義肢の製作までに数多くの作業が必要なため、採型後に即時試用できず、適切な適合を得るまでに複数回の試用及び長期にわたる作製期間が必要になっている。装具に関しても、同様な採型作業が必要で、適切な適合性を得るまでに修正作業を強いられる。
計算機を併用した光学的又は機械的手段で肢断端の正確な形状を採型するCAD装置も一部で使用されているが、非荷重状態での採型であり、しかも即時試用できないため、実使用時に加わる荷重を考慮した適切な形状が得られない。(Bulletin of the Japanese Society of Prosthetics and Orthotics, 1999, Vol. 15 special issue, p.198-203)
【0004】
切断術直後の早期訓練を図るため、陰圧粒子バッグを用いた下腿義足も知られている。しかし、非伸縮性の膜素材を使用し、扁平形状の陰圧粒子バッグを脚周辺に巻き付けた後で義足を装着する構造であるため、身体形状との適合性が低く、日常的に使用する義足を製作するための採型用途に適さない。(The Journal of the international society for prosthetics and orthotics, 1983, Vol.7, No.2, p.91-95)
緊急搬送や救急固定用に陰圧粒子バッグの副子もあるが、同様に非伸縮性の膜素材を使用し扁平形状の陰圧粒子バッグを対象部位に巻き付けてベルトで固定するため、身体形状を適切に採型できず、表面形状適合性の点で義肢装具製作用採型用途には不適である。(http://public.sakura-rubber.co.jp/fire/chapter06/6-03-01.htm)
【0005】
座位保持装置を製作するための採型装置に使用されている陰圧粒子バッグは、膜素材が高伸縮性のゴムであるため身体形状に適合した採型が可能である。しかし、高伸縮性の膜素材でできているため、陰圧印加時にバッグの剛性が低い。そのため、義肢装具用の採型用途に使用した場合、即時試用によって動的荷重付加時の適合性を確認できず、動的荷重付加時の適合性が保証されない(The journal of the Japanese Academy of Prosthetists and Orthotists, June 2001, Vol.9, No.1, p.37-50)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
義肢装具製作に必要な採型では、採型対象部位に対して適切な適合性を得るため、身体との接触部形状が微調整される。この点、従来の採型手段では、接触部形状の微調整に多大な作業,時間を要する。接触部形状を容易に微調整でき、適切な適合性が得られると、即時試用に可能なチェック用義肢装具が短時間で作製され、被施術者の負担が軽減される。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような要求に応えるべく案出されたものであり、粒子を充填したバッグを真空吸引すると所定の形状が保持されることを利用し、即時試用可能なチェック用義肢装具を得ることを目的とする。
【0008】
本発明の採型用陰圧粒子バッグは、その目的を達成するため、低伸縮性弾性材料で作られたバッグ外膜と、高伸縮性弾性材料で作られ、上縁部が折り返されてバッグ外膜の上縁部に密着されるバッグ内膜と、バッグ外膜の内側に配置されたエアバッグと、バッグ外膜及びバッグ内膜で形成される内部空洞に充填される保形用粒子とを備え、保形用粒子が充填された内部空洞を真空吸引することにより採型対象部位に適合する形状が保持されることを特徴とする。
【0009】
バッグ内膜を装着した採型対象部位をバッグ外膜に挿入し、バッグ外膜とバッグ内膜との間に保形用粒子を充填し、バッグ内膜の上縁部を折り返してバッグ外膜の上縁部に密着させ、エアバッグを膨張させて陰圧粒子バッグを採型対象部位に押し付けた後、バッグ外膜とバッグ内膜との間を真空吸引することにより、採型対象部位に適合した形状に陰圧粒子バッグが成形される。
【0010】
【実施の形態】
本発明に従った陰圧粒子バッグ10は、弾性の異なる異種材料でできたバッグ外膜11,バッグ内膜12の上縁部を分離可能に密着させている(図1)。バッグ外膜11は、義肢としての即時試用の要求を満足させるため採型装置使用時の荷重に耐え得るエチレン-酢酸共重合体等の低伸縮性弾性材料で作られており、生ゴム製のエアバッグ13が内側に配置されている。バッグ内膜12は、採型対象となる身体部位の形状に適合させるため、サーモプラスチックエラストマ等の高伸縮性弾性材料でできている。
【0011】
バッグ内膜12の端縁を折り返してバッグ外膜11の端縁に密着させることにより、保形用粒子14が充填される空洞が陰圧粒子バッグ10の内部に設けられる。保形用粒子14としては、材質,粒径に特段の制約が加わるものではないが、陰圧粒子バッグ10に必要強度をもたせ所定形状に確保する上で粒径0.6~1.2mmのセラミック粒子が好ましい。
【0012】
陰圧粒子バッグ10の内部空洞に臨む吸引ノズル20がバッグ外膜11に装着される。吸引ノズル20は、逆流防止弁21を備え、吸引ポンプ22に接続されている。吸引ノズル20は、バッグ外膜11を貫通して陰圧粒子バッグ10の内部空洞に開口している。吸引ノズル20の開口部近傍には、吸引時にバッグ内膜12が吸引ノズル20に引き込まれないようにフェルト15が配置されている。エアノズル30は、バッグ外膜11を貫通してエアバッグ13内に開口している。エアノズル30にも逆流防止弁31が設けられ、エアコンプレッサ32にエアノズル30が接続されている。
吸引ノズル20,エアノズル30の取付位置は図1に限ることなく任意の位置に設定でき、複数のノズル20,30をバッグ外膜11,エアバッグ13に取り付けても良い。
【0013】
陰圧粒子バッグ10は、陰圧印加前に比較して陰圧印加後に体積が若干減少し、義肢装具製作対象部位との間に僅かな隙間が生じることがある。そのため、保形用粒子14が不十分に充填されていると適合性が低下する。適合性の低下は、バッグ外膜11の内壁に設けたエアバッグ13に圧縮空気を送り込んで、陰圧粒子バッグ10の内部空洞における保形用粒子14の充填率を高めることにより解消される。また、陰圧粒子バッグ10に印加した陰圧を調整することにより、被施術者好みの適合性に体型形状圧を調節できる。
【0014】
採型及び試用に際しては、採型対象部位(図3)にバッグ内膜12(図2a)を装着した後、バッグ内膜12を装着した採型対象部位をバッグ外膜11(図2b)に挿入し、バッグ外膜11とバッグ内膜12との間に保形用粒子14を充填する。次いで、バッグ内膜12の上縁部をバッグ外膜11の上縁部に密着するように折り返し、陰圧粒子バッグ10を形成する。
採型対象部位の表面にバッグ内膜12が適度な圧縮力で接触するように、エアノズル30からエアバッグ13に圧縮空気を送り込み、エアバッグ13を膨張させる。圧縮空気量を調整することにより、陰圧粒子バッグ10の内部空洞に占める保形用粒子14の充填率を高める。
採型対象部位に適度の圧縮力をもって陰圧粒子バッグ10内に保形用粒子14が充填された時点で吸引ポンプ22を駆動し、陰圧粒子バッグ10を真空吸引することにより、チェック用義肢装具としての試用に必要な剛性を陰圧粒子バッグ10に付与する。
【0015】
剛性が高められた陰圧粒子バッグ10に義肢装具用部品A,Bを接続し、チェック用義肢又はチェック用装具を構成する。作製されたチェック用義肢又はチェック用装具を荷重条件下で試用し、チェック用義肢又はチェック用装具の適合性を試験する。適切な適合性が得られず試用時に被施術者が違和感を覚えた場合、逆流防止弁21を開放して陰圧粒子バッグ10の内圧を若干上げ、手作業で陰圧粒子バッグ10の形状を微調整する。そして、陰圧粒子バッグ10に陰圧を再度加え、再試用する。
適切な適合性が得られた段階で、陰圧粒子バッグ10から採型対象部位を抜去し、石膏等の印象材料を用いて雄型を成形する。成形された雄型から常法に従って本義肢装具を製作する。
【0016】
【実施例】
エチレン-酢酸共重合体(低伸縮性弾性材料)で膜厚2mmのバッグ外膜11を作り、サーモプラスチックエラストマ(高伸縮性弾性材料)で膜厚1mmのバッグ内膜12を作った。バッグ外膜11とバッグ内膜12との間の内部空洞に粒径0.6~1.2mmの保形用粒子14を充填し、バッグ内膜12の上縁部を折り返してバッグ外膜11の上縁部に密着させた。保形用粒子14には、抗火石96.8質量%,ベントナイト3質量%,炭化ケイ素0.2質量%のセラミック粒子を使用した。
【0017】
陰圧粒子バッグ10を板状に成形し、印加陰圧を変化させながら三点曲げ試験で陰圧粒子バッグ10の強度を測定した。図4の測定結果にみられるように印加陰圧が高くなるほど、陰圧粒子バッグ10の強度が上昇し、チェック用義肢装具としての即時試用に十分耐え得る強度(具体的には、比較的剛性の高いポリプロピレン製義肢装具用部品と同レベル)になった。また、陰圧粒子バッグ10の強度は、陰圧を調整することにより、手作業で陰圧粒子バッグ10の形状を微調整できるまで若干低下した。その結果、採型対象部位に対する適合性が高い接触部形状をもつチェック用義肢装具の製作に要する作業,時間が大幅に軽減された。
【0018】
【発明の効果】
以上に説明したように、バッグ内膜をバッグ外膜に分離可能に密着させた陰圧粒子バッグに無機質粒子を充填し、陰圧を印加することによりチェック用義肢装具に必要な強度が得られる。バッグ内膜が高伸縮性弾性材料製であるため被施術者の肢断端に対する適合性がよく、バッグ外膜で保形性が確保される。また、陰圧粒子バッグに加える陰圧を調整することにより、手作業で陰圧粒子バッグの形状を微調整でき、採型対象部位に対応した形状修正が容易になる。このようにして得られたチェック用義肢装具は十分な強度をもち採型対象部位に対する適合性も良好なことから即時試用され、本義肢製作までの時間,工程が簡略化され、被施術者にかかる負担も軽減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に従った陰圧粒子バッグの内部構造を示す図
【図2】 陰圧粒子バッグのバッグ内膜(a)及びバッグ外膜(b)
【図3】 採型方法の説明図
【図4】 陰圧粒子バッグの強度と印加陰圧との関係を示すグラフ
【符号の説明】
10:陰圧粒子バッグ 11:バッグ外膜 12:バッグ内膜 13:エアバッグ 14:保形用粒子 15:フェルト
20:吸引ノズル 21:逆流防止弁 22:吸引ポンプ
30:エアノズル 31:逆流防止弁 32:エアコンプレッサ
A,B:義肢装具用部品
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3