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明細書 :蛍光X線ホログラフィー装置、蛍光X線ホログラフィーおよび局所構造解析方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3699998号 (P3699998)
公開番号 特開2003-279506 (P2003-279506A)
登録日 平成17年7月22日(2005.7.22)
発行日 平成17年9月28日(2005.9.28)
公開日 平成15年10月2日(2003.10.2)
発明の名称または考案の名称 蛍光X線ホログラフィー装置、蛍光X線ホログラフィーおよび局所構造解析方法
国際特許分類 G01N 23/223     
G03H  5/00      
G21K  1/06      
FI G01N 23/223
G03H 5/00
G21K 1/06 M
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2002-079541 (P2002-079541)
出願日 平成14年3月20日(2002.3.20)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成13年9月22日発行の刊行物「日本金属学会講演概要」に発表
特許法第30条第1項適用 平成14年3月1日発行の刊行物「日本物理学会講演概要集」に発表
特許法第30条第1項適用 平成13年12月20日発行の刊行物「第六回 X線結像光学シンポジウム プログラム予稿集」に発表
審査請求日 平成14年3月20日(2002.3.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】松原 英一郎
【氏名】林 好一
【氏名】若生 公郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】▲高▼場 正光
参考文献・文献 特開平08-220027(JP,A)
M. Tegze 他4名,“Three Dimensional Imaging of Atoms with Isotropic 0.5 Å Resolution”,Phys. Rev. Lett.,1999年 6月14日,Vol.82, No.24,pp.4847-4850
Z. W. Chen and D. B. Wittry,“Microprobe x-ray fluorescence with the use of point-focusing diffractors”,Appl. Phys. Lett.,1997年 9月29日,Vol.71, No.13,pp.1884-1886
K.Hayashi 他5名,“Development of apparatus for multiple energy X-ray holography at SPring-8”,Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A,2001年 7月21日,Vol.467-468, Part 2,pp.1241-1244
K.Hayashi 他6名,“Data Processing for Obtaining Atomic Images from SrTiO3 X-Ray Fluorescence Hologram”,Japanese Journal of Applied Physics,2000年 3月,Vol.39, Part 1, No.3A,pp.1414-1417
調査した分野 G01N23/00-23/227
JICSTファイル(JOIS)
Web of Science
特許請求の範囲 【請求項1】
試料に照射すべき波長のX線を含むX線群を出射する管球形のX線発生装置であるX線源と、
試料が励起されることで試料から放射された蛍光を検知して対応する電気信号を出力するX線検出器と、
所定の厚さのグラファイトを円筒状またはトロイダル状に整形した中空体を、その中心軸を含む平面に並行に切断した少なくとも円弧状部を伴ったX線反射体であって、前記グラファイトの反射面の任意の一点とグラファイトによって特性X線が最も収束された点と前記グラファイトの他の反射面の任意の一点によって定義される角の最大値として定義される特性X線の発散角Δαが、3°以下に設定されて、前記X線源から試料に向かうX線群のうちの所定波長の特性X線を試料に集束させるX線集束素子と、
を有することを特徴とする蛍光X線ホログラフィー装置。
【請求項2】
試料に照射すべき波長のX線を含むX線群を出射する管球形のX線発生装置であるX線源と、試料が励起されることで試料から放射された蛍光を検知して対応する電気信号を出力するX線検出器と、を有する蛍光X線ホログラフィー装置において、
所定の厚さのグラファイトを円筒状またはトロイダル状に整形した中空体を、その中心軸を含む平面に並行に切断した少なくとも円弧状部を伴ったX線反射体であって、前記グラファイトの反射面の任意の一点とグラファイトによって特性X線が最も収束された点と前記グラファイトの他の反射面の任意の一点によって定義される角の最大値として定義される特性X線の発散角Δαが、3°以下に設定されているX線集束素子を用いて、前記X線源から試料に向かうX線群のうちの所定波長の特性X線を試料に集束させることを特徴とする蛍光X線ホログラフィー。
【請求項3】
試料に照射すべき波長のX線を含むX線群を出射する管球形のX線発生装置であるX線源と、試料が励起されることで試料から放射された蛍光を検知して対応する電気信号を出力するX線検出器と、X線検出器から出力された電気信号を画像処理して3次元画像を得る局所構造解析方法において、
所定の厚さのグラファイトを円筒状またはトロイダル状に整形した中空体を、その中心軸を含む平面に並行に切断した少なくとも円弧状部を伴ったX線反射体であって、前記グラファイトの反射面の任意の一点とグラファイトによって特性X線が最も収束された点と前記グラファイトの他の反射面の任意の一点によって定義される角の最大値として定義される特性X線の発散角Δαが、3°以下に設定されているX線集束素子を用いて、前記X線源から試料に向かうX線群のうちの所定波長の特性X線を試料に集束させることを特徴とする局所構造解析方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、蛍光X線ホログラフィー装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線による評価技術は、例えばX線の透過能を利用して人体や構造物等の物質内部の構造を非破壊で調べるレントゲン写真(ラジオグラフ)、回折現象を利用して原子構造を調べるX線回折、元素固有の蛍光X線を計測して化学組成を分析する蛍光X線化学(分光)分析等が広く知られている。
【0003】
なかでも、試料に高強度のX線を照射して励起させ、試料から放出される蛍光X線を検出して、物質の局所構造を解析する蛍光X線ホログラフィーが注目を浴びている。
【0004】
蛍光X線ホログラフィーでは、近年の測定技術の向上により、他の構造解析技術を用いても評価が困難な半導体中の微量ドーパントの置換サイトの決定や、準結晶の構造解析への適用が進んでいる。
【0005】
将来的には、磁性薄膜の短範囲構造や超伝導体の局所歪み等に代表される機能性材料の局所構造解析にも応用が期待されている。
【0006】
なお、今日でも、強度の高いX線を用い、長時間に亘って蛍光X線ホログラムを計測可能な条件下では、計測されたホログラムパターンを3次元フーリエ変換して得られる干渉パターンから、原子像を3次元で観測することが可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、蛍光X線ホログラフィーは、非常に微弱なホログラムの信号を測定することから、これまでは、高輝度の入射X線を利用可能な大規模な放射光施設以外での測定は、困難である。
【0008】
また、大規模な放射光施設を利用することは、その利用時間および利用コストから制限を受けるため、基礎研究レベルで、手軽に多くの材料の構造解析が可能な実験設備の開発が切望されている。
【0009】
なお、通常、試料から放射される蛍光X線のホログラムパターンの強度は、そのバックグランドとなる蛍光X線の強度の1/1000程度であり、ホログラムパターンを得ることが可能であっても、研究室レベルでは数週間ないし2ヶ月程度の時間が要求される場合が一般的である。
【0010】
このことから、発明者を含む研究グループでは、文献「まてりあ,第38巻第1号(1999)」に示したような特定形状のX線集光素子を用いて試料に照射されるX線の強度を高め、周知の管球形のX線発生装置から出射されるX線強度に比較して、200倍程度のX線強度を得ている。
【0011】
しかしながら、X線集光素子を用いたとしても、所定カウント数の蛍光X線を得るためには、研究室レベルでは、依然として数週間程度の日数が必要である。
【0012】
この発明の目的は、短時間で所定カウント数の蛍光X線を取得してホログラム(X線干渉)パターンを得ることのできる蛍光X線ホログラフィー装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
この発明は、試料に照射すべき波長のX線を含むX線群を出射する管球形のX線発生装置であるX線源と、試料が励起されることで試料から放射された蛍光を検知して対応する電気信号を出力するX線検出器と、所定の厚さのグラファイトを円筒状またはトロイダル状に整形した中空体を、その中心軸を含む平面に並行に切断した少なくとも円弧状部を伴ったX線反射体であって、前記グラファイトの反射面の任意の一点とグラファイトによって特性X線が最も収束された点と前記グラファイトの他の反射面の任意の一点によって定義される角の最大値として定義される特性X線の発散角Δαが、3°以下に設定されて、前記X線源から試料に向かうX線群のうちの所定波長の特性X線を試料に集束させるX線集束素子と、を有することを特徴とする蛍光X線ホログラフィー装置を提供するものである。
【0014】
またこの発明は、試料に照射すべき波長のX線を含むX線群を出射する管球形のX線発生装置であるX線源と、試料が励起されることで試料から放射された蛍光を検知して対応する電気信号を出力するX線検出器と、を有する蛍光X線ホログラフィー装置において、
所定の厚さのグラファイトを円筒状またはトロイダル状に整形した中空体を、その中心軸を含む平面に並行に切断した少なくとも円弧状部を伴ったX線反射体であって、前記グラファイトの反射面の任意の一点とグラファイトによって特性X線が最も収束された点と前記グラファイトの他の反射面の任意の一点によって定義される角の最大値として定義される特性X線の発散角Δαが、3°以下に設定されているX線集束素子を用いて、前記X線源から試料に向かうX線群のうちの所定波長の特性X線を試料に集束させることを特徴とする蛍光X線ホログラフィを提供するものである。
【0015】
さらにこの発明は、試料に照射すべき波長のX線を含むX線群を出射する管球形のX線発生装置であるX線源と、試料が励起されることで試料から放射された蛍光を検知して対応する電気信号を出力するX線検出器と、X線検出器から出力された電気信号を画像処理して3次元画像を得る局所構造解析方法において、所定の厚さのグラファイトを円筒状またはトロイダル状に整形した中空体を、その中心軸を含む平面に並行に切断した少なくとも円弧状部を伴ったX線反射体であって、前記グラファイトの反射面の任意の一点とグラファイトによって特性X線が最も収束された点と前記グラファイトの他の反射面の任意の一点によって定義される角の最大値として定義される特性X線の発散角Δαが、3°以下に設定されているX線集束素子を用いて、前記X線源から試料に向かうX線群のうちの所定波長の特性X線を試料に集束させることを特徴とする局所構造解析方法を提供するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0017】
図1は、この発明の実施の形態が適用可能なX線ホログラフィー装置の一例を示す概略図である。
【0018】
X線ホログラフィー装置1は、連続した波長のX線および所定波長の特性X線を放射するX線源すなわちX線発生装置3、測定対象である試料Oを保持し、所定の回転数で回転させる回転ステージ5および試料Oから出射されるX線(蛍光X線)の干渉(ホログラム)パターンを検出するX線検出器7を有している。X線検出器7の出力は、画像処理装置、例えばパーソナルコンピュータPCに図示しないインタフェースを介して記憶される。
【0019】
回転ステージ5とX線発生装置3との間の所定位置には、X線発生装置3から試料Oに向けられる連続した波長のX線のうちの所定の波長のX線すなわち特性X線を、試料Oの所定の領域(任意の一点)に集束させるX線集束素子9が設けられている。なお、X線集束素子9と試料O(回転ステージ5)との間に、試料(測定対象)Oに照射されるX線の強度をモニタするモニタ装置(Iモニタ)が設けられてもよい。また、回転テーブル5とX線検出器7を、詳述しないが2軸ステージまたはターンテーブル上に配置することで、以下に説明する入射X線と試料Oとのなす角、すなわち試料Oに照射されるX線の角度(励起X線の照射角)を所定の範囲内で任意に設定可能である。
【0020】
X線発生装置3は、例えば回転対陰極型のX線管である。図1に示した蛍光X線ホログラフィー装置では、マックサイエンス社製で、陽極ターゲットにMoを用いた定格出力が21kWのX線発生装置を利用している。もちろん、所定強度以上のX線を発生可能であれば、特に回転対陰極型のX線管に限定されないことはいうまでもない。また、X線発生装置3とX線集束素子9との間には、図示しないが、X線集束素子9に入射するX線束の断面形状を所定の形状に設定可能なストッパが設けられている。
【0021】
なお、X線発生装置3から放射される特性X線の波長は、ターゲットにMoを用いることで得られるMoKα線の波長は、0.071nmである。また、ターゲットがMoである場合は、MoKβ線も利用可能である。MoKβ線の波長は、0.063nmである。なお、Kα線およびKβ線の双方を用いることで、試料Oに照射される2波長のX線でホログラムを記録することができ、より高精度に原子像を再生させることが可能となる。
【0022】
また、X線発生装置3から放射される特性X線の波長は、ターゲットにWを用いることで得られるWLα線の波長は、0.147nmである。また、ターゲットがWである場合は、WLβ線およびWLγ線も利用可能である。WLβ線およびWLγ線の波長は、それぞれ、0.128nm,0.110nmである。すなわち、ターゲットにWを用いる場合には、試料Oから蛍光を放射させるために利用可能な特性X線が3波長であるから、2波長のものよりさらに精度よい原子像イメージングが可能となる。
【0023】
回転ステージ5は、周知のモータの回転軸に、測定対象Oすなわち試料が固定可能なマウントテーブル5Aが一体的に設けられたもので、モータ自体は、入手可能な汎用モータである。なお、モータ5Bの回転数は、試料Oの組成比、形状(重量や厚さ)およびX線検出器7のカウントレートリミットに支配されるが、0.1°/秒程度が利用可能である。
【0024】
X線検出器7は、例えばSSD(半導体検出器)である。なお、今日カウントレートが、例えば10cps(カウント/秒)程度の検出器が容易に入手できる。また、X線検出器7に要求されるエネルギー分解能ΔEは、図1に示したX線ホログラフィー装置1では、Kα線とKβ線を区分して検出する必要がないので、1000eV程度(ΔE<1000eV)でよい。なお、X線検出器7に、上記のSSDよりもさらに高速のエネルギー分散型X線検出器を用いてもよい。
【0025】
X線集束素子9は、所定の厚さのグラファイトを円筒状またはトロイダル状に整形した中空体を、その中心軸を含む平面に並行に切断した少なくとも円弧状部を伴ったX線反射体である。なお、今回は、曲率半径が21mmで長さが40mmの円筒状のグラファイト(松下電器産業製、湾曲グラファイトモノクロメータ)を用い、Kα線のみを、資料〇に照射(収束)させている。
【0026】
次に、図2を用いて、図1に示したX線ホログラフィー装置1の各要素の配置について詳細に説明する。
【0027】
図2は、X線ホログラフィー装置1を、試料Oに向けられるX線束と試料Oが励起されることで試料Oから放射される蛍光(X線)とにより定義される平面に垂直な方向から見た概略図である。
【0028】
図2に示される通り、X線発生装置3と回転テーブル5のマウントテーブル5Aの回転中心との間の距離は、X線集束素子9の集束力の影響を受けるが、この例では、概ね400mmである。
【0029】
図2において、X線発生装置3から試料Oに照射される特性X線とモータ5Bの回転軸を延長した軸線とのなす角すなわち入射角θは、例えば70°ないし90°の範囲から、試料Oの形状等の条件に基づいて選択される。なお、入射角θの最小値は、通常0°である。
【0030】
モータ5Bの回転軸を延長した軸線とX線検出器7の図示しないX線入力面の中心軸とのなす角すなわち試料Oから放射された蛍光X線を検出する際の検出角θは、例えば30°ないし80°である。なお、検出角θは、個々のθに関して、固定される。すなわち、ある入射角θで試料Oに特性X線が照射されている間は、試料に対するX線検出器7の相対X線検出器7の位置が変化されることはない。
【0031】
X線集束素子9は、図1および図2に示した蛍光X線ホログラフィー装置1においては、曲率半径が21mmで長さが40mmに成形された湾曲グラファイトである。しかしながら、曲率半径および長さは、試料の種類やX線の波長およびX線発生装置の出力等に応じて最適化される。また、X線集束素子9に入射されるX線束の断面形状は、上述した通り、図示しないストッパにより予め大まかに定義される。なお、X線集束素子(グラファイト)9の反射面(内面)の任意の一点とグラファイト9によって特性X線が最も収束された点(回転ステージ5のテーブル5Aの中心)ともうひとつのグラファイトの反射面の任意の一点によって定義される角の最大値として定義される特性X線の発散角Δαは、例えば3°以下に設定される。
【0032】
次に、図1および図2に示したX線ホログラフィー装置1を用いて、銅の局所構造を解析する手順およびその結果得られるホログラムパターンと3次元原子像(3次元原子配列)の一例を説明する。
【0033】
回転テーブル5のマウントテーブル5Aに、例えば板状のCu(銅)単結晶を固定し、X線集束素子9で単色化した所定波長のX線を、試料すなわち銅に照射する。このとき、回転テーブル5は、図示しないモータドライバから供給される所定の電圧あるいは駆動パルスにより定義される所定の回転量φ、例えばφ=0.1°/秒の速度で連続して回転される。また、一点(試料の任意の位置)当たりでカウントされるフォトンの数が所定数に達するまでの所定時間の間、試料Oに向けて特性X線が照射される。
【0034】
試料(銅)Oからは、所定の確率で蛍光(X線)が放射される。試料から発生した蛍光は、X線検出器7の図示しないX線入力面に、所定の確率で到達する。なお、一般に、X線検出器7に入射される試料からの蛍光の量は、例えば全放射量の10%前後である。なお、希に、入射角θで試料Oに照射された特性X線が、試料Oから放射される蛍光と同じ軌跡を通って、X線検出器7に入射される場合がある。しかしながら、反射X線が生じる条件(ブラッグ条件)は、かなり厳密であり、反射X線は、スポット的(散発的)にしか生じ得ない。なお、検出角θを最適化することで、反射X線がX線検出器7へ入射されることが実質的に抑止できる。
【0035】
試料に照射される単色X線の強度は、例えばフォトン数で、10フォトン/sec程度である。これに対し、試料Oが励起されて蛍光が放射される程度は、照射された特性X線強度に比較して概ね1/1000程度である。なお、X線検出器7の入力面に入力されるX線の数(効率)は、前に説明した入射角θおよび検出角θならびに試料Oに照射される特性X線の強度及び試料の状態(大きさや組成)から、概ね推定できる。
【0036】
X線検出器7に到達した蛍光X線すなわち干渉(ホログラム)パターンは、X線検出器7に内蔵されたあるいは別体の図示しないA/Dコンバータにより電圧変換され、図示しないインタフェースを経由してパーソナルコンピュータPCに入力される。通常は、ステップ角φの範囲を0°ないし360°として0.5°ステップ、入射角θ1の範囲を70°ないし90°として1°ステップで、試料Oから放射される蛍光X線(フォトン)を2次元的にため込こんだ結果が、パーソナルコンピュータPCで画像処理される。なお、画像処理には、モータの回転数φ及び入射角θの角度走査における任意の一点当たり10カウント程度が必要である。
【0037】
X線検出器7の図示しないX線入力面に入射されたX線(回折)パターンすなわちホログラムパターンは、試料Oの回転量(テーブル5Aの回転角)φと特性X線の入射角θ1のそれぞれ、または少なくとも一方が変化された際に試料から放射される蛍光のX線強度の変化またはその関数である。試料Oに照射されるX線のX線強度を高めるとともにカウントレートの高い(高速の)X線検出器が利用可能であれば、高速度で原子像および3次元原子像を得ることができることはいうまでもない。
【0038】
パーソナルコンピュータPCに取り込まれた試料Oからの蛍光X線(干渉パターン)は、パーソナルコンピュータPCにより、例えば図3に示すような原子像として可視化される。また、容易に入手できる蛍光X線ホログラフィー向けのアルゴリズム(3次元フーリエ変換)により、図4に示すような3次元原子像が得られる(図4は、特許出願のために白黒を反転して表示した模式図である)。
【0039】
なお、上述した蛍光X線ホログラフィー装置を用いることで、従来2ヶ月程度必要だった蛍光X線ホログラムの測定が、1日程度で可能となる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の実施の形態を蛍光X線ホログラフィー装置に適用することで、大規模な放射光施設を利用することなく、研究室レベルでも、容易に、局所解析原子像を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態が適用可能な蛍光X線ホログラフィー装置の一例を説明する概略図。
【図2】図1に示した蛍光X線ホログラフィー装置の各要素の配置の一例を説明する概略図。
【図3】図1および図2を用いて説明した蛍光X線ホログラフィー装置により得られたホログラムパターンを可視化した銅の原子像を示す写真。
【図4】図1および図2を用いて説明した蛍光X線ホログラフィー装置により得られたホログラムパターンを3次元フーリエ変換して得られる銅の原子像の局所解析像の一例を示す模式図。
【符号の説明】
1・・・X線ホログラフィー装置、
3・・・X線発生装置、
5・・・回転ステージ、
7・・・X線検出器、
9・・・X線集束素子、
PC・・・画像処理装置。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3