TOP > 国内特許検索 > アザアヌーレン誘導体からなるイオノフォア、感応膜、およびそれを用いたイオンセンサ > 明細書

明細書 :アザアヌーレン誘導体からなるイオノフォア、感応膜、およびそれを用いたイオンセンサ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4111742号 (P4111742)
公開番号 特開2003-327579 (P2003-327579A)
登録日 平成20年4月18日(2008.4.18)
発行日 平成20年7月2日(2008.7.2)
公開日 平成15年11月19日(2003.11.19)
発明の名称または考案の名称 アザアヌーレン誘導体からなるイオノフォア、感応膜、およびそれを用いたイオンセンサ
国際特許分類 C07D 257/10        (2006.01)
G01N  27/333       (2006.01)
G01N  27/414       (2006.01)
FI C07D 257/10
G01N 27/30 331C
G01N 27/30 301G
請求項の数または発明の数 8
全頁数 17
出願番号 特願2002-134654 (P2002-134654)
出願日 平成14年5月9日(2002.5.9)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 日本分析化学会第50年会において文書をもって発表
審査請求日 平成15年8月18日(2003.8.18)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】森内 隆代
【氏名】澁谷 康彦
【氏名】辻中 俊貴
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】大野 晃
参考文献・文献 Vinod K. Gupta et al.,Analytica Chimica Acta,2000年,Vol.420, No.1,p.19-27
Rolf Kruse et al.,Chemische Berichte,1981年,Vol.114, No.2,p.832-836
M. Ying et al.,Chemical Sensors, Technical Digest of the International Meeting, 7th, Beijing, China,1998年,p.503-505
調査した分野 C07D 257/10
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
次式(I)
【化1】
JP0004111742B2_000016t.gif
表される[14]アザアヌーレン誘導体から成ることを特徴とする銅イオンおよび銀イオン用イオノフォア。
【請求項2】
次式(II)
【化2】
JP0004111742B2_000017t.gif
(ただし、nX-(3-n)は、n個の3-n価のカウンターアニオンを示し、nは1または2である)で表される[14]アザアヌーレンカチオンから成ることを特徴とするハロゲンイオン用イオノフォア。
【請求項3】
求項1のイオノフォアを含有することを特徴とする銅イオンおよび銀イオン用感応膜。
【請求項4】
求項2のイオノフォアを含有することを特徴とするハロゲンイオン用感応膜。
【請求項5】
少なくとも請求項3または4のいずれかのイオン感応膜を有することを特徴とするイオンセンサ。
【請求項6】
少なくとも請求項3または4のいずれかのイオン感応膜を有することを特徴とするイオン選択性電極。
【請求項7】
少なくとも請求項3または4のいずれかのイオン感応膜を有することを特徴とするイオン選択性電界効果トランジスタ。
【請求項8】
少なくとも請求項1または2のいずれかのイオノフォアを含有することを特徴とするイオン交換膜。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、高い選択性で銅イオン等の遷移金属イオンやハロゲンイオン等のアニオンを認識できるイオノフォアとそれを用いたイオンセンサおよびイオン選択性電極に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、[14]アザアヌーレン誘導体またはそのカチオンからなるイオノフォアとそれを用いたイオンセンサおよびイオン選択性電極に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】
イオン選択性電極は、特定のイオンに感応する膜を挟んで発生する膜電位を利用し、目的イオンを選択的に認識し、そのイオン濃度と活量を測定するイオンセンサーである。従来、ポリビニルクロライド(PVC)のような高分子膜にイオン輸送担体であるイオノフォア(Ionophore)が担持された膜型イオン選択性電極が知られており、カリウムイオン、ナトリウムイオン、アンモニウムイオン等に対する優れた感度や選択性、分析の迅速さや簡便性、あるいは自動連続分析への適用可能性などから、医療現場や環境測定において広く使用されている。
【0003】
しかし、イオノフォアとして有望な多くのクラウン、アザクラウン化合物は、配位原子の種類、空孔サイズ、脂溶性といった点を重視して分子設計されているため、これまでのところ配位性やイオンサイズが類似した遷移金属イオンについては、精度高く識別できるイオノフォアが知られていないのが実情である。
【0004】
一方、多くの遷移金属イオンは毒性を有するため、環境保全の観点から、その排出量が制限されている。したがって、メッキ工場等では、排水中の金属イオン濃度が排出基準値を上回らないことを常にモニターする必要がある。例えば銅含有量は3 mg/L以下、鉛および鉛化合物含有量は0.1 mg/L以下、亜鉛含有量は5 mg/L以下であることが環境庁により定められている(環境庁告示第64号)。しかし、現在のところ遷移金属イオンに対するイオノフォアの開発が遅れており、これらのイオンを簡便に測定できるイオンセンサはない。一部、銅イオン選択性電極が市販されているものの、高価(約13万円)な上、測定濃度範囲は6.4×10~6350(ppm)(株式会社相互理化学ガラス製作所「GENERAL CATALOGUE A-7000」p.554)と狭く、感度も低いため、排水基準値をモニターできるようなものではない。そのため、排水基準値は化学分析により実施されているのが実情である。
【0005】
したがって、この出願の発明は、以上のとおりの問題点を解決し、遷移金属イオンに対して高い感度を示すイオノフォアとそれを含有するイオンセンサやイオン交換膜を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、以上のとおりの課題を解決するものとして、まず、第1には、次式(I)
【0007】
【化3】
JP0004111742B2_000002t.gif【0008】
表される[14]アザアヌーレン誘導体から成ることを特徴とする銅イオンおよび銀イオン用イオノフォアを提供する。
【0009】
また、第2には、この出願の発明は、次式(II)
【0010】
【化4】
JP0004111742B2_000003t.gif【0011】
(ただし、nX-(3-n)は、n個の3-n価のカウンターアニオンを示し、nは1または2である)で表される[14]アザアヌーレンカチオンから成ることを特徴とするハロゲンイオン用イオノフォアを提供する。
【0012】
第3には、この出願の発明は、前記第1の発明のイオノフォアを含有することを特徴とする銅イオンおよび銀イオン用感応膜を提供する。
【0013】
この出願の発明は、また、第4には、前記第2の発明のイオノフォアを含有することを特徴とするハロゲンイオン用感応膜を提供する。
【0014】
さらに、この出願の発明は、第5には、少なくとも前記いずれかの感応膜を有することを特徴とするイオンセンサを、第6には、少なくとも前記いずれかの感応膜を有することを特徴とするイオン選択性電極を、また、第7には、少なくとも前記いずれかの感応膜を有することを特徴とするイオン選択性電界効果トランジスタを提供する。
【0015】
そして、この出願の発明は、第8には、前記いずれかのイオノフォアを含有することを特徴とするイオン交換膜をも提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
この出願の発明者らは、生体分子であるポルフィリンに類似した構造を有する[14]アザアヌーレン誘導体が金属錯体において堅平面を示す金属ポルフィリンとは異なり、サドル型を示すことに着目し、そのイオン選択性について鋭意研究を進め、本願発明に至ったものである。
【0017】
すなわち、この出願の発明のイオノフォアは、次式(I)
【0018】
【化5】
JP0004111742B2_000004t.gif【0019】
表される[14]アザアヌーレン誘導体から成る銅イオンおよび銀イオン用イオノフォアを提供するものである。
【0020】
イオノフォアとは、前記のとおり、イオン輸送担体を意味し、ある種のイオンと錯体を形成する分子を指す。このようなイオノフォアとしては各種のものが知られており、遊離イオン濃度を測定するためのイオンセンサ等において利用されている。しかし、前記のとおり、従来公知のイオノフォアでは遷移金属イオンのようにイオン半径や配位形態が類似したイオンを識別することが難しかったのが実情である。
【0021】
この出願の発明の[14]アザアヌーレン誘導体から成るイオノフォアは、後述の実施例にも示すとおり、銅イオンおよび銀イオンに対して高い選択性を示すものである。
【0022】
式(I)に示される[14]アザアヌーレン誘導体そのものは公知の化合物であるが、このような化合物が銅イオンおよび銀イオンに対して高い選択性を示し、銅イオンおよび銀イオン用イオノフォアとしての利用価値が高いことはこれまで報告されておらず、発明者らの鋭意研究により明らかになったものである。
【0023】
[14]アザアヌーレンとは、一般に、14員環のアヌレンの炭素原子の一部が窒素原子に置換された化合物をいう。ここでアヌレンとは、単環状の炭化水素で、形式的に一重結合と二重結合とが交互に並んだ構造の化合物、すなわち、単環状共役ポリエンの一般的名称である。そして、[14]アザアヌーレン誘導体とは、[14]アザアヌーレン上の水素原子部位に他原子や置換基を有するものである。
【0025】
この出願の発明では、また、以上のとおりの[14]アザアヌーレン誘導体のカチオン、すなわち次式(II)
【0026】
【化6】
JP0004111742B2_000005t.gif【0027】
(ただし、nX-(3-n)は、n個の3-n価のカウンターアニオンを示し、nは1または2である)で表される[14]アザアヌーレンカチオンから成ることを特徴とするハロゲンイオン用イオノフォアをも提供する。
【0028】
このようなイオノフォアは、カウンターアニオンとしてNiCl42-や[PF6-2などを有していればよい。発明者らの研究によれば、このような[14]アザアヌーレンカチオンから成るイオノフォアは、後述の実施例にも示されるとおり、ハロゲンイオン、とくにヨウ素イオンに対して高い選択性を示すものである。
【0029】
以上のとおりのこの出願の発明のイオノフォアは、従来公知のイオノフォアよりも格段に高いイオン選択性を示すことから、イオンセンサやイオン交換膜への適用が期待される。
【0030】
したがって、この出願の発明は、以上のとおりのイオノフォアを含有することを特徴とするイオン感応膜をも提供する。このようなイオン感応膜は、銅イオン、銀イオン、ヨウ素イオン臭素イオン、塩素イオンなどのイオンセンサ、中でも銅イオン、ヨウ素イオンのイオン濃度測定器用イオン選択性電極やイオン選択性電界効果トランジスタにおけるイオン選択性膜として、あるいは、Cl等のイオン交換膜などとして有用なものである。
【0031】
この出願の発明において、感応膜の形態は特に限定されない。使用される環境に応じて適宜選択すればよいが、具体的には、ポリ塩化ビニル、シリコンゴム、ポリ塩化ビニリデン、ポリウレタン、フォトレジスト、漆などの公知の高分子を膜材料として前記の[14]アザアヌーレン誘導体や[14]アザアヌーレンカチオンを担持すればよい。例えば、前記の[14]アザアヌーレン誘導体あるいは[14]アザアヌーレンカチオンを任意の組成で膜材料と混合し、溶媒に溶解してキャストしたり、前記の[14]アザアヌーレン誘導体や[14]アザアヌーレンカチオンと膜材料とともに、可塑剤を混合し、必要に応じて溶媒に溶解あるいは分散して成膜させたりすれば液体膜を得ることができる。また、溶媒キャスト法や焼成等の公知の方法により固体膜を得ることもできる。この出願の発明においては、イオンセンサやイオン交換膜等の用途において高いイオン選択性を実現できる液体膜が好ましい。
【0032】
液体膜を得る場合、イオノフォア/膜材料/可塑剤(あるいは硬化剤)の組成はとくに限定されない。好ましくは、全量に対してイオノフォアを0.2~20wt%、より好ましくは1~5wt%とし、膜材料を20~30wt%とし、可塑剤を50~80重量%、より好ましくは60~70重量%とする(ただし、合計量量は100wt%とする)。
【0033】
このような液体膜において、可塑剤は、一般に膜電極を作製する際に使用されるものであればよく、特に限定されない。具体的には、2-ニトロオクチルエーテル(NPOE)、4-ニトロフェニルフェニルエーテル(NPPE)、アジピン酸ビス(1-ブチルペンチル)(BBPA)、セバシン酸ジブチル(DBS)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、ジオクチルフェニルリン酸(DOPP)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、2-ニトロフェニルフェニルエーテル(NPPE)、ジベンジルエーテル(DBE)、デカノール、2-ニトロフェニルドデシルエーテル、2-フルオロー2’-ニトロジフェニルエーテルなどが例示される。中でも、可塑剤自体の電極応答が良好でイオノフォアとの相溶性が高いNPOEが好ましい。さらに、このような液体膜には、目的イオン以外のイオン(対イオン)の膜中への取り込みを防ぐために、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸カリウム(KTFPB)、テトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ホウ酸ナトリウム(NaTFPB)、テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸カリウム(KTpClPB)、テトラキス(4-クロロフェニル)ホウ酸ナトリウム(NaTpClPB)、テトラキスフェニルホウ酸カリウム(KTPB)、テトラキスフェニルホウ酸ナトリウム(NaTPB)、テトラフェニルホウ酸カリウム(KTPB)、テトラフェニルホウ酸ナトリウム(NaTPB)、テトラキス[3,5-ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシ-2-プロピル)フェニル]ホウ酸ナトリウム等の塩を添加してもよい。
【0034】
この出願の発明は、さらに、以上のとおりの感応膜を有することを特徴とするイオンセンサ(イオン選択性電極、イオン選択性電界効果トランジスタ等)およびイオン交換膜をも提供する。
【0035】
イオンセンサとは、溶液中の特定イオンの濃度を定量できるという特徴を有し、特定イオンの濃度モニターや水質分析など広い分野で使用されている。イオンセンサの好ましい例としては、イオン選択性電極が挙げられる。
【0036】
イオン選択性電極の構成はとくに限定されず、一般に公知(例えば、勝孝,化学センサ,Vol.17,No.1,12-21 (2001);石橋信彦,城昭典,ぶんせき,210-218 (1978);石橋信彦,ぶんせき,209-219 (1976)など)の各種のものが適用される。具体的には、〔比較電極〕/〔試料溶液〕/〔イオン選択性電極〕=〔Ag-AgCl/3.3 M KCl/0.1 M CH3COOLi〕/〔試料溶液〕/〔感応膜/内部溶液/Ag-AgCl〕の構成を有するものが例示される。このようなイオン選択性電極は、すなわち、公知のイオン選択性電極において、イオノフォアとして、前記のこの出願の発明のイオノフォアを含有するものである。従来使用されているイオン検知材料に代えて前記[14]アザアヌーレン誘導体または[14]アザアヌーレンカチオンを含有する感応膜を使用することにより、これまで実現されなかった高い銅イオンおよび銀イオン選択性やハロゲンイオン選択性が実現されるものである。このようなイオン選択性電極は、例えば市販のイオン電極キット(DKK社製など)を用いて容易に組み立てることができる。
【0037】
この出願の発明のイオン選択性電極の一例を図1に示す。例えばイオン選択性電極(1)が前記のとおりの構成を有する場合、感応膜(11)を内部溶液(12)に接触させる。内部溶液(12)は、特に限定されないが、例えば、塩化カリウム水溶液、塩化銅水溶液などの金属塩水溶液や塩化カリウム水溶液と他の金属塩水溶液との混合溶液などが挙げられる。比較電極は、水素電極、飽和カロメル電極、銀-塩化銀電極等の公知の電極から制限なく選択されるものであってよい。
【0038】
以上のとおりの感応膜を有するイオン選択性電極を、比較電極とともに従来公知の方法に従い試料溶液に浸漬することにより両電極間の電位差を測定すればよい。
【0039】
この出願の発明のイオノフォアを用いた感応膜を有するイオンセンサでは、複数のイオンが1溶液中に存在する場合でも、それらのイオン選択係数の差が大きい場合やイオンの大きさに差があるもの、さらには、[14]アザアヌーレン化合物との親和性に差があるものについては、同時にイオン濃度を測定することが可能である。
【0040】
以上のとおりのこの出願の発明のイオンセンサは、また、イオン選択性効果トランジスタであってもよい。このようなイオン選択性効果トランジスタは、携帯用pHメーター等として使用できるものであり、例えば市販のものの感応膜部分を本願発明の感応膜に置き換えたものとすることができる。また、この出願の発明のイオノフォアの中でも蛍光性を有するものを適用すれば、イオンの補足により消光、増感などのシグナルが発せられることから、この発明のイオンセンサは光センサであってもよい。
【0041】
さらに、この出願の発明は、前記のとおりのイオノフォアを含有するイオン交換膜をも提供する。このようなイオン交換膜は、どのような方法により得られるものであってもよいが、例えば、公知のイオン交換樹脂の末端に本願発明のイオノフォアを結合することにより容易に製造される。さらに、このようなイオン交換膜において、その膜材料や組成はとくに限定されない。このようなイオン交換膜を使用することにより、銅イオンおよび銀イオンやハロゲンイオンを含有する溶液系からこれらのイオンを除去することが可能となる。
【0042】
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細に説明する。もちろん、この出願の発明は、以下の実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0043】
【実施例】
<参考例1> 1,8-Dihydro-5,7,12,14-tetramethyldibenzo[b,i][1,4,8,11]tetraazacyclotetradeca-4,6,11,13-tetraene誘導体(A)の合成
[14]アザアヌーレン誘導体の合成は、複素環化合物の一般的合成法として知られる数々の合成反応から、ニッケルイオンを鋳型として用い、エナミンおよびイミン形成を反応形式とする環化縮合反応を利用して行った。
(1)5,7,12,14-tetramethyldibenzo[b,i][1,4,8,11]tetraazacyclotetradecahexaenato-nikel(II)の合成
まず、ニッケルによる鋳型効果を用いて化合物(A)を合成した。
【0044】
【化7】
JP0004111742B2_000006t.gif【0045】
100 mLのナス型フラスコに無水メタノール50 mL、Ni(OAc)4・4H2O 4.9 g(20 mmol)、アセチルアセトン4.0 g(40 mmol)およびo-フェニレンジアミン4.3 g(40 mmol)をいれ、N2雰囲気下で2時間還流攪拌した。反応後、氷浴で冷却し、吸引ろ過した。このとき、0℃のメタノールで2~3回洗浄し、減圧乾燥させた。TLCでo-フェニレンジアミンが残存していないことを確認し、残っている場合には、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによりジクロロメタンを溶媒として分離した。
【0046】
生成物(A)は、暗緑色粉末として1.5 g(収率19 %)得られた。融点は254-256℃であった。
【0047】
同定結果を表1に示した。
【0048】
【表1】
JP0004111742B2_000007t.gif【0049】
(2)1,8-Dihydro-4,11-diimonium-5,7,12,14-tetramethyldibenzo[b,i][1,4,8,11]tetraazacyclotetradeca-4,6,11,13-tetraene tetrachloronickelate(II)(B)の合成
次に塩化水素ガスにより化合物(A)のニッケル中心原子をテトラクロロニッケルアニオンへ変換し、誘導体(B)を得た。
【0050】
【化8】
JP0004111742B2_000008t.gif【0051】
[14]アザアヌーレン誘導体(A)1 g(2.5 mmol)の無水エタノール(50 ml)溶液に、攪拌下、ドラフト内において室温でconc.H2SO4とconc.HClから発生させたHClガスを導入した。沈殿物が析出し、暗緑色の反応混合物がまず白色となった。さらに、トルコ石色を呈するまでHClガスを導入し、氷浴で冷却して沈殿物を吸引ろ過した。その際、0℃のエタノールで2~3回洗浄した。生成物は、空気中の水分により白色に変化するため、すばやくデシケーターに入れ、減圧乾燥した。
【0052】
乾燥後、生成物(B)は、トルコ石色粉末として0.94 g(収率94 %)得られ、融点は236-239℃であった。また、保存は、減圧下デシケーター内で行った。
【0053】
同定結果を表2に示した。
【0054】
【表2】
JP0004111742B2_000009t.gif【0055】
(3)1,8-dihydro-4,11-diimonium-5,7,12,14-tetramethyldibenzo[b,i][1,4,8,11]tetraazacyclotetradeca-4,6,11,13-tetraene hexafluorophosphate(C)の合成
さらに、得られたテトラクロロニッケルアニオン(B)をPF6-アニオンに変換し、化合物(C)を得た。
【0056】
【化9】
JP0004111742B2_000010t.gif【0057】
20 mL受器を用いて脱イオン水9 mLに[14]アザアヌーレン誘導体(B)を溶かし、NH4PF6 0.8 gのH2O(2.0 mL)溶液を攪拌下ゆっくりと滴下した。沈殿物が形成した後、さらに15分間攪拌した。その後、吸引ろ過し、減圧乾燥した。
【0058】
生成物は、淡黄色粉末状晶として0.5 g(収率71 %)得られ、融点は199-200℃であった。
【0059】
同定結果を表3に示した。
【0060】
【表3】
JP0004111742B2_000011t.gif【0061】
(4)1,8-dihydro-5,7,12,14-tetramethyldibenzo[b,i][1,4,8,11]tetraazacyclotetradeca-4,6,11,13-tetraeneの合成
そして、塩基によりPF6-アニオン(C)を環状ポリアミン(D)へと導いた。
【0062】
【化10】
JP0004111742B2_000012t.gif【0063】
20 mL三角フラスコにメタノール14 mLを入れ、[14]アザアヌーレン誘導体(C)を懸濁し、室温で攪拌下Et3Nをゆっくり滴下した。懸濁液は深緑色を経て黄橙色となった。さらに30分間攪拌した後、吸引ろ過し、減圧乾燥した。
【0064】
生成物は、黄褐色プリズム晶として0.7 g(収率72%)得られ、融点は226-229℃であった。
【0065】
同定結果を表4に示した。
【0066】
【表4】
JP0004111742B2_000013t.gif【0067】
<実施例1>
〔準備〕
(1)標準溶液の調製
公知の手法に従い、次の22種類の10-1M標準溶液を調製した。
カチオン標準液:塩酸、硝酸銀、塩化銅(II)、硝酸鉛、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、塩化コバルト(II)、塩化ナトリウム、硝酸カドミニウム、塩化マンガン(II)、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化ニッケル(II)、塩化カルシウム
アニオン標準液:ヨウ化カリウム、チオシアン酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム
(2)イオン感応膜を有する電極チップの作製
ポリ塩化ビニル(PVC、分子量約1,100、和光純薬製223-00255)29.5wt%を膜材料として、膜電極可塑剤の2-ニトロフェニルオクチルエーテル(o-NPOE、同仁化学研究所製No15、CAS NO [37682-29-4])68.5wt%、次式
【0068】
【化11】
JP0004111742B2_000014t.gif【0069】
で表される化合物(D)2.0wt%を任意量のテトラヒドロフラン(THF)に混合溶解させ、任意時間攪拌した。得られた溶液をイオン電解キット(DKK社製)付属のテフロン(登録商標)紙に含ませ、イオン電極キットの先端チップの溝に張りつけた。
【0070】
キャスティング法により任意回数THF溶液の塗り付けと乾燥を繰り返し、溝がなくなったところでPVC感応膜の作製を終了した。
〔実験〕
図1に使用した測定装置の概略模式図を示した。PVC膜(11)が完全に乾燥した後に、10-2M程度の塩化カリウム水溶液に電極を一昼夜浸し、コンディショニングを行った。次に同じコンディショニング溶液を内部溶液(12)とし、選択チップの中に十分に満たした。内部溶液(12)で完全に満たされた状態で、電極チップ(13)をイオン電極キット(1)に装着した。比較電極(2)にはダブルジャンクション型の銀-塩化銀電極(21)を用い、その内部溶液(22)として3.3M飽和塩化カリウム溶液を、外部溶液(23)として10-1M酢酸リチウム溶液を用いた。
【0071】
硝酸銀標準液(3)を恒温槽(4)で25℃一定に保ちながら、低濃度溶液から順番に10-6~10-1Mの濃度範囲で電位を測定した。溶液の濃度は、低濃度溶液に高濃度溶液を添加していくインジェクト法により行った。
【0072】
得られた電位を銅イオンの25℃での電位とした。得られた結果より、銅イオンセンサ応答結果が10-6.3M~10-3.5Mの広い範囲において直線応答であることが確認された。したがって、この電極は、銅イオンのイオン選択性電極として優れていることが示された。
【0073】
上記の10-1Mカチオン標準液15種類について、同様の方法により25℃でのセンサ応答を測定した。また、同様に、恒温槽で25℃一定に保ちながらイオン選択係数測定も行った。
【0074】
結果を図2に示した。
【0075】
イオン選択係数は、単独溶液法により算出した。イオン活量aと濃度Cとの間には、次のような関係がある。
【0076】
a=f・C
(ただし、fは活量係数である)
このとき、活量係数fは、デバイ-ヒュッケルの式
Logf=-0.511Z2√μ/(1+√μ)
(ただし、μはイオン強度である)により求めた。
また、イオン強度μは、次式
μ=1/2√Cii2
(ただし、Ciは溶液中の各イオンの濃度、Ziは溶液中の各イオンの電荷である)により求められる。
【0077】
電位差EN、EMをそれぞれ測定することによってMイオンに対するNイオンの選択係数が求められる。したがって、各イオンの10-1M標準液における電位差を求め、次式
logkPotN,M=ZF(EM-EN)/2.303RT-logCN(ZN-Zm)/ZMを用いることにより、各イオンに対する選択係数が算出される。
【0078】
以上より、化合物(A)をイオノフォアとして用いたイオン選択電極は、銅イオンに対して最も高い選択性を有し、遷移金属イオンセンシング能を有するイオンセンサとして使用できることが確認された。
【0079】
<実施例2>
化合物(D)の代わりに次式
【0080】
【化12】
JP0004111742B2_000015t.gif【0081】
で表されるアニオン(B)を用いて、実施例1と同様の方法で電極チップを作成した。
【0082】
カチオン標準液の代わりに上記7種類のアニオン標準溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして、アニオン標準溶液7種類それぞれのイオン溶液における25℃でのセンサ応答を測定した。
【0083】
結果を図3に示した。
【0084】
図3より、該電極は、ヨウ素イオンに対して高いイオン選択性を有するイオン選択性電極として作用することが確認された。
【0085】
以上より、化合物(A)をイオノフォアとして用いたイオン選択性電極は、ヨウ素イオンに対して最も高い選択性を有することが示された。
【0086】
一般にイオン選択性電極のアニオンセンシング能は、ホフマイスターのアニオン離液順列に従うといわれていることから、この順列から離れるセンシング能を有するイオノフォアの開発は困難であると考えられている。しかし、図3より、従来型とは異なるアニオンセンシング機能を有するイオンセンサとして用いられることが明らかになった。
<比較例1>
市販の硫化銅-硫化銀固体膜型銅イオン選択性電極(堀場製作所社製8006-10C, Lot 001003)を用いて実施例1と同様の方法で25℃での応答電位、応答速度、および電位安定性を測定し、応答電位測定の結果を図4に示した。
【0087】
比較例1と実施例1の結果の比較から、実施例1のイオン選択性電極がネルンスト応答を示し、理想状態に近いことが確認された。とくに、イオンセンシングの場合に問題となる多金属イオンに対する妨害効果が実施例1のイオン選択性電極を用いることにより画期的に改善されることが示された。
【0088】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明により、精度高く銅イオンおよび銀イオンを認識できるイオノフォアとヨウ素イオンに対して優れたセンシングを示すイオノフォアが提供された。これらのイオノフォアは、合成が容易であり、PVC、膜溶媒、添加剤等と混合するだけで高いセンシング能を有するイオン選択性電極が得られる
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の実施例において使用した電位測定装置を示した概略模式図である。
【図2】この出願の発明の実施例において、[14]アザアヌーレン誘導体をイオノフォアとするイオン選択性電極を用いて得られる10-1Mカチオン標準液15種類のイオン選択係数を示した図である。
【図3】この出願の発明の実施例において、[14]アザアヌーレン誘導体をイオノフォアとするイオン選択性電極を用いて得られる10-1Mアニオン標準液7種類のイオン選択係数を示した図である。
【図4】この出願の発明の比較例として、市販の硫化銅-硫化銀固体膜型銅イオン選択性電極を用いて得られる各種のカチオンのイオン選択係数を示した図である。
【符号の説明】
1 イオン選択性電極、イオン電極キット
11 感応膜、PVC膜
12 内部溶液
13 電極チップ
14 銀-塩化銀電極
2 比較電極
21 ダブルジャンクション型銀-塩化銀電極
22 内部溶液(3.3M KCl)
23 外部溶液(0.1M CH3COOLi)
24 銀-塩化銀電極
3 硝酸銀標準液
4 恒温槽
5 攪拌子
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3