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明細書 :グリコシドアミノ酸誘導体から成るヒドロゲル化剤およびヒドロゲル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3693979号 (P3693979)
公開番号 特開2003-327949 (P2003-327949A)
登録日 平成17年7月1日(2005.7.1)
発行日 平成17年9月14日(2005.9.14)
公開日 平成15年11月19日(2003.11.19)
発明の名称または考案の名称 グリコシドアミノ酸誘導体から成るヒドロゲル化剤およびヒドロゲル
国際特許分類 C09K  3/00      
A61L 31/00      
FI C09K 3/00 103M
A61L 31/00 B
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2002-136434 (P2002-136434)
出願日 平成14年5月13日(2002.5.13)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 日本化学会第81春季年会2002年講演予稿集II(平成14年3月11日)社団法人日本化学会発行第950頁(1F6-37)に発表
特許法第30条第1項適用 平成14年3月26日早稲田大学・西早稲田キャンパスにおいて開催された社団法人日本化学会第81春季年会において発表
審査請求日 平成14年5月13日(2002.5.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】浜地 格
【氏名】新海 征治
【氏名】清中 茂樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
審査官 【審査官】中村 浩
参考文献・文献 特開2000-229992(JP,A)
特開2003-49154(JP,A)
特開2002-265428(JP,A)
特開平6-100581(JP,A)
特開2002-85957(JP,A)
調査した分野 C09K3/00
C07H1/00-23/00
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記の式(1)で表わされるグリコシドアミノ酸誘導体から成ること
を特徴とするヒドロゲル化剤。
【化1】
JP0003693979B2_000008t.gif
〔式(1)中、SGはN-アセチル化された単糖類または二糖類のグリコシド構造を有
する糖構造部位を表わし、AAは下記の式(2)で示されるアミノ酸構造部位を表わし、
Lは前記糖構造部位とアミノ酸構造部位とを連結し、水素結合性の官能基または原子団を
有するリンカー部位を表わす。〕
【化2】
JP0003693979B2_000009t.gif

【請求項2】
式(1)のSGが下記の式(7)~(9)のいずれかで示される糖構造部位を表わすことを特徴とする請求項1に記載のヒドロゲル化剤。
【化3】
JP0003693979B2_000010t.gif

【請求項3】
Lが下記の式(10)~(12)のいずれかで示されるリンカー部位を表わすことを特徴とする請求項1または2に記載のヒドロゲル化剤。
【化4】
JP0003693979B2_000011t.gif

【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のヒドロゲル化剤が水性液を含有して構成されることを特徴とするヒドロゲル。
【請求項5】
感温性を示すことを特徴とする請求項4に記載のヒドロゲル。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ゲル化現象を利用する技術分野に属し、特に、低分子の集合体から構成される新規なヒドロゲル(ハイドロゲル)に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、天然のゲルを模擬した合成ゲルの基礎研究および応用開発が盛んに進められている。このような合成ゲルは、外部刺激に応答し得る特性を付与することにより機能性物質として利用することを意図するものであるが、ゲル化剤として用いられている材料は未だ限定されている。
【0003】
例えば、熱応答性(感温性)物質としては、ポリイソプロピルアクリルアミドのような極めて限られた高分子しか知られていない。そして、このような高分子(ポリマー)から成るゲル化剤は、一般に、共有結合を介して形成された強固な三次元網目構造中に溶媒が溶けてゲルが構成されるものであり、生分解性に乏しく、生体内での機能性材料として使用するには不適当なものが多く、生体外の機能性材料として用いる場合も容易に分解せず、環境に与える負荷が大きく、また、生体適合性を呈するものも少ない。
最近、比較的低分子(小分子)の有機化合物をゲル化剤原料とする有機ゲルも幾つか提案されているが、機能性ゲル、例えば、熱応答性(感温性)ゲルとして実現されているものは殆ど見当らない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、従来からよく知られているポリマー由来のゲルとは異なり低分子(小分子)から構成され生分解性や生体適合性を有する機能性ゲルを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、検討を重ねた結果、生体適合性を有する分子構造ユニットを組合せた低分子から成る新しいタイプのゲル化性物質を見出し、本発明を導き出した。
かくして、本発明は、下記の式(1)で表わされるグリコシドアミノ酸誘導体から成ることを特徴とするヒドロゲル化剤を提供するものである。
【0006】
【化5】
JP0003693979B2_000002t.gif
【0007】
式(1)中、SGはN-アセチル化された単糖類または二糖類のグリコシド構造を有する糖構造部位を表わし、AAは下記の式(2)で示されるアミノ酸構造部位を表わし、Lは前記糖構造部位とアミノ酸構造部位とを連結し、水素結合性の官能基または原子団を有するリンカー部位を表わす。
【0008】
JP0003693979B2_000003t.gif
【0009】
さらに、本発明に従えば、上記のごときヒドロゲル化剤が水性液を含有して構成されることを特徴とするヒドロゲル、特に、感温性を示すことを特徴とするヒドロゲルが提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
上記の式(1)で表わされる本発明のゲル化剤は、それぞれの構成ユニットが協奏的に作用し、全体として安定なヒドロゲルを形成するよう分子設計されたものである。
先ず、式(1)のSGは、N-アセチル化された単糖類または二糖類のグリコシド構造を有する糖構造部位を表わし、この部位は高度に水和される親水部として作用する。N-アセチル化された糖類が多数の水分子によって水和されることは知られているが、本発明においては、単糖類または二糖類のグリコシド構造を有するものを用いる。式(1)のSGとして多糖類由来のものを用いると、単に水に溶けるだけでゲルを形成しない。
【0011】
N-アセチル化された糖類としては、N-アセチルガラクトサミンおよびN-アセチルグルコサミンがよく知られており、本発明の式(1)のSGとしては、これらのN-アセチル化糖から誘導された単糖類または二糖類のグリコシド構造を有するものを用いるのが好ましい。また、これらのグリコシド構造においては、後述のリンカー部位との結合が容易になるように1位のグリコシド基にアルキル基が連結されていることが好ましい。かくして、式(1)のSGの特に好ましい例として、下記の式(7)~(9)のいずれかで示される糖構造部位が挙げられる。
【0012】
【化7】
JP0003693979B2_000004t.gif
【0013】
次に、式(1)においてAAは、既述の式(2)で示されるアミノ酸構造部位を表わし、この部位は、疎水的相互作用によりゲルファイバーの安定化に貢献する。但し、疎水的すぎると水と混じらないためにヒドロゲルと成らず、一方、疎水性が不充分であると水に溶けてしまう。これらの点から、アミノ酸残基に結合しているRとして既述の式(3)~(6)で示されるものを用いるのが好ましい。特に好ましいのは式(3)で示されるRであり、したがって、AAとして特に好ましい例としては、式(3)のRがグルタミン酸残基(式(2)においてn=1に相当)に結合したグルタミン酸シクロヘキシルメチルエステル基を挙げることができる。
【0014】
さらに、式(1)においてLは、糖構造部位とアミノ酸構造部位とを連結し、水素結合性の官能基または原子団を有するリンカー部位を表わす。すなわち、Lは、親水部(SG)と疎水部(AA)を連結するとともに、式(1)で表わされる分子の相互間を水素結合を介して結合することにより網目構造(水素結合ネットワーク)を形成するためのものである。水素結合性の官能基または原子団は特に限定されるものではなく、よく知られているようにX-H・・・Yで表わされる水素結合(Xは、酸素原子または窒素原子を表わし、Yは酸素原子、窒素原子またはハロゲン原子を表わす)を形成し得るような官能基または原子団を有するものをLとして用いればよい。但し、このリンカー部位が長すぎると、水素結合によりゲル化性よりも結晶性が強くなるので、Lとしては、長さ方向に5~10個程度の原子が存在する全体としてほぼ直線状の分子構造を呈するものが好ましい。かくして、式(1)のLの好ましい例として、下記の式(10)~(12)のいずれかで示されるリンカー部位が挙げられる。
【0015】
【化8】
JP0003693979B2_000005t.gif
【0016】
式(1)で表わされるグリコシドアミノ酸誘導体から成る本発明のゲル化剤は、ポリスチレン樹脂等を用いて、逐次、如上の糖構造部位、リンカー部位およびアミノ酸構造部位を結合させた後、樹脂を除去する固相合成法により合成することができる。図1には、本発明のゲル化剤を構成する式(1)のグリコシドアミノ酸誘導体を合成するための代表的な反応スキームを示している。
【0017】
式(1)で表わされるグリコシドアミノ酸誘導体から成るゲル化剤は、水性液、すなわち、水または水溶液(一般に水分含量が50%以上)を含有してヒドロゲルを形成する。そして、このヒドロゲルは、外部環境の温度変化に応答して膨潤・収縮を可逆的に繰り返すことのできる感温性(熱応答性)を示すことが見出されている。式(1)のグリコシドアミノ酸誘導体が、このような感温性のヒドロゲルを形成する詳細なメカニズムは未だ完全には解明されていないが、式(1)のリンカー部位(L)に因る強固な水素結合とアミノ酸構造部位(AA)に因る疎水的なパッキングにより式(1)で表わされる低分子から成る繊維状自己集合体が形成され、それが温度の変化に応じて糖構造部位(SG)の水和・脱水和に因り膨潤・収縮するためと考えられる。そして、式(1)で表わされるグリコシドアミノ酸誘導体から成る本発明のヒドロゲルは、式(1)の構成ユニットを変えることにより熱応答特性、すなわち、膨潤・収縮を起こす体積相転移温度を自在に変えることができる(後述の実施例参照)。
【0018】
【実施例】
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に明らかにするため実施例を示すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。なお、本明細書および図面に示す化学構造式においては、慣用的な表現法に従い、炭素原子および水素原子を省略していることもある。
【0019】
実施例1:グリコシドアミノ酸誘導体の合成
図1に示す合成スキームに沿って、本発明に従うグリコシドアミノ酸誘導体および比較のためのグリコシドアミノ酸誘導体を以下のように合成した。
化合物1の合成
トリチルクロロポスチレンレジン4.77g(5.01mmol)、アジトエチル N アセチルガラクトサミン1.60g(5.51mmol)を乾燥ピリジンに懸濁させた。窒素雰囲気下、65℃で24時間攪拌した。DMF、ジクロロメタンで樹脂を洗浄し、減圧乾燥させて化合物1を得た。
【0020】
化合物2の合成
化合物1 5.68g(4.71mmol)、トリフェニルホスフィン(PPh)3.93g(15.0mmol)を乾燥ジクロロメタンに懸濁させた。窒素雰囲気下で8時間還流した。ジクロロメタンで樹脂を十分に洗浄した。
得られた樹脂をTHF90mlと蒸留水10mlに懸濁させた。窒素雰囲気下で12時間還流した。THF、ジクロロメタンで樹脂を洗浄し、減圧乾燥させて化合物2を得た。
【0021】
化合物3の合成
化合物2 5.70g(5.01mmol)をDMFに懸濁させた。ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)1.31ml(7.52mmol)を加えた。無水コハク酸を滴下した結果、0.31g(3.09mmol)を加えた時点で反応終了を確認できたのでDMF、ジクロロメタンで樹脂を洗浄し、減圧乾燥させて化合物3を得た。
【0022】
化合物4kの合成
化合物3 0.25g(0.17mmol)をDMF3.5mlに懸濁させた。ジシクロヘキシルメチルグルタメート0.23g(0.68mmol)、DIEA0.15ml(0.85mmol)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)0.11ml(0.51mmol)を加えて終夜攪拌した。DMF、ジクロロメタンで樹脂を洗浄し、減圧乾燥させて化合物4kを得た。
【0023】
化合物5kの合成
化合物4k 0.26g(0.16mmol)をジクロロメタン3.5mlに懸濁させた。TFA0.8mlを加えた後に室温で1時間攪拌した。吸引濾過により樹脂を除きその濾液にAmberlite IRA96SB(三級アミンが修飾してある樹脂)1.00gを加えてTFAを中和した。吸引濾過で樹脂を除いた後に溶媒を減圧留去した。精製はシリカ濾過(展開溶媒:クロロホルム:メタノール=4:1)で行った。収量:60mg、トータル収率(5ステップ):54%。H-NMR(600MHz、CDCl:CDOD=5:1)δ7.80(d, 1H, J=7.8, NH)、δ7.60(t, 1H, J=5.9, NH)、δ4.50(m, 1H, COCH(NH)CH2CH2CO)、δ4.38(d, 1H, J=8.4, H-1)、δ3.97-3.51(m, 10H, H-2, H-3, H-4, H-5, H-6, COOCH2C6H11)、δ2.55-2.41(m, 6H, COCH2CH2CO , COCH(NH)CH2CH2CO)、δ2.15-1.90(m, 2H, COCH(NH)CH2CH2CO)、δ2.03(s, 3H, CH3CONH)、δ1.74-0.96(m, 22H, COOCH2C6H11)。MALDI-TOF-Mass for C33H55N3O12 (MW=685.80) : m/z=708.45 [M+Na]+、724.34 [M+K]+
【0024】
他のグリコシドアミノ酸誘導体も同様のスキームで合成した。各々のグリコシドアミノ酸誘導体に関し、5ステップのトータル収率を表1に示す。
【0025】
【表1】
JP0003693979B2_000006t.gif
【0026】
実施例2:ヒドロゲル化能の評価試験
実施例1で得られたグリコシドアミノ酸誘導体のヒドロゲル化能を以下のように評価した:グリコシドアミノ酸誘導体の濃度を4.0mMとし、ミクロチューブに蒸留水0.4mlを加え、それぞれのグリコシドアミノ酸誘導体を適量加えた。3分間ドライヤーで加熱して25℃で終夜静置した。得られたサンプルを倒立させ落ちてこなかったものをヒドロゲルとした。
【0027】
ヒドロゲル化能評価試験の結果を表2に示す。式(1)に属するもの(5d、5e、5j、5k、5l)はヒドロゲル化能を示したが、他のものはヒドロゲルを形成しなかった。ヒドロゲル化能は式(2)のRに相当する部分の構造に大きく依存し、例えば、アルキル鎖長が短いもの(5a、5b)はゲル化せずに蒸留水に溶解し、他方、アルキル鎖長の長いもの(5f、5g、5h)は蒸留水に分散しないかあるいは分散した後に沈殿した。またアミノ酸骨格にもゲル化能は大きく依存し、グルタミン酸型5dとアジピン酸型5eはゲル化するが、アスパラギン酸型5cは分散さえしなかった。
【0028】
【表2】
JP0003693979B2_000007t.gif
【0029】
実施例3:ヒドロゲルの感温性評価試験
グリコシドアミノ酸誘導体5kが形成するゲルは室温では安定であるが温度を72℃に上昇させるとゲルの体積が大幅に減少した。しかもその変化は可逆であり、温度を下げると再び安定な透明ゲルへと戻った。
この現象を定量的に評価するためゲル化剤5kが保持できる水の体積(ゲル化できる水の体積)比をそれぞれの温度に対してプロットした。その結果、図2に示されるように69℃に相転移温度が認められ狭い温度領域において体積の不連続な変化が観測できた。この実験から5kが形成するヒドロゲルは温度に依存した体積相転移を起こすことが明らかである。
【0030】
5kの形成するヒドロゲルが体積相転移を起こすことが判明したので他のヒドロゲルについても体積相転移挙動を評価した。相転移挙動が起こる際にはそれと同時に水溶液を白濁させるような凝集体が生成する。そこで、各温度における紫外-可視光の透過率から体積相転移を評価した。その結果を図3に示す。このように、5kに関し、透過率から求められた相転移結果(図3)と膨潤度から求められた結果(図2)は一致している。したがって、透過率からも相転移を知ることができる。また、図4の結果から、体積相転移が可逆変化であることも確認できた。
図3に示されるように、5d、5eも体積相転移を起こした。すなわち、5dは相転移温度を41℃に有し、5eは相転移温度を約30℃に有していた。一方、5jはこのような体積相転移を起こさずに、単にゲルが溶解するゲル-ゾル転移を49℃で起こした。
以上の結果から明らかなように、本発明のヒドロゲルの相転移温度はグリコシドアミノ酸誘導体の微細構造に大きく依存し、本実施例に示すグリコシドアミノ酸誘導体だけでも、その相転移温度を30℃から70℃と広い範囲において変化させることができる。
【0031】
実施例4:ヒドロゲルの構造観察および構造解析
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、グリコシドアミノ酸誘導体5kが形成するヒドロゲルの構造観察を行った。その結果を図5に示す。5kは水溶液中において繊維状の自己集合体を形成し、各分子間の物理的な架橋により三次元的に発達した組織体を形成していることが示された。
また、疎水環境においてのみ強い蛍光を発する環境応答性蛍光色素であるNANBD(N-(((2-ヒドロキシアセトキシ)エチル)-N-メチル)アミノ-7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)を含む水溶液のヒドロゲル5kの共焦点レーザー顕微鏡観察を行ったところ、TEM観察の結果と同様に三次元に発達した緑色の蛍光が観察された。すなわち、ヒドロゲルを形成する繊維構造中には疎水的なドメインが存在することが示された。
【0032】
さらに、分子レベルでの構造を明らかにするため、ヒドロゲルを凍結乾燥して得られるキセロゲルの粉末X線回折による構造解析を行った。その結果、3.8nmと0.4nmに対応するピークが観察された。3.8nmは5kが傾いた状態で二分子層を形成している場合の両端間の距離に対応する。また0.4nmはシクロヘキシル基の厚さに相当する。これらの結果は、5kから規則正しく分子が配向した集合体が形成されたことを示唆している。
【0033】
続いて得られたヒドロゲルのFT-IR観察を行った。その結果、5kから得られるヒドロゲルはアミド結合のカルボニル伸縮が1615cm-1とかなり低波数側に現れ、発達した水素結合を形成していることが示唆された。この実験結果からも5kから成るヒドロゲルが規則的な分子配向を形成していることが示唆される。また高温において収縮した状態のヒドロゲルも同様に1613cm-1と低波数のカルボニル伸縮を有することから、巨視的には体積変化を起こしているものの5kが形成する自己集合体の構造は変化していないと考えられる。
【0034】
以上の結果から、本発明のヒドロゲルにおいては、強固な水素結合ネットワークとシクロヘキシル基による疎水的なパッキングにより図6に示すような繊維状自己集合体が形成され、それが温度上昇とともに親水性糖部の脱水和によるゲルファイバーの収縮により熱収縮するものと考えられる。このように特定構造のグリコシドアミノ酸誘導体から成る本発明のヒドロゲルは、低分子(小分子)から構成されていながら、あたかも、高分子であるポリイソプロピルアクリルアミドのように挙動する特異なヒドロゲルである。
【0035】
【発明の効果】
本発明によって得られるヒドロゲルは、生分解性を有し生体適合性の高い低分子から構成された新しいタイプの感温性ゲルであり、バイオマテリアル素材として細胞再生マトリックス用の代替コラーゲン、刺激応答性薬物徐放キャリアや熱応答性のバルブなど幅広い応用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゲル化剤を構成するグリコシドアミノ酸誘導体を合成する反応スキームを例示するものである。
【図2】本発明のヒドロゲルにおける膨潤度と温度の関係を示す1例である。
【図3】本発明におけるヒドロゲルの透光率による体積変化と温度の関係を示す1例である。
【図4】昇温-降温を繰り返した場合の本発明のヒドロゲルにおける透光率による体積変化を示す1例である。
【図5】本発明のヒドロゲルを構造観察した透過型電子顕微鏡写真の1例である。
【図6】本発明のヒドロゲルにより形成されると推測される自己集合体の構造を模式的に示す1例である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5