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明細書 :光学変調素子用液晶材料

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3779937号 (P3779937)
公開番号 特開2003-327966 (P2003-327966A)
登録日 平成18年3月10日(2006.3.10)
発行日 平成18年5月31日(2006.5.31)
公開日 平成15年11月19日(2003.11.19)
発明の名称または考案の名称 光学変調素子用液晶材料
国際特許分類 C09K  19/54        (2006.01)
G02F   1/13        (2006.01)
G02F   1/1334      (2006.01)
FI C09K 19/54 Z
G02F 1/13 500
G02F 1/1334
請求項の数または発明の数 5
全頁数 9
出願番号 特願2002-132303 (P2002-132303)
出願日 平成14年5月8日(2002.5.8)
審査請求日 平成14年5月8日(2002.5.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】菊池 裕嗣
【氏名】梶山 千里
個別代理人の代理人 【識別番号】100087675、【弁理士】、【氏名又は名称】筒井 知
審査官 【審査官】渡辺 陽子
参考文献・文献 特開平08-054610(JP,A)
特表平02-503963(JP,A)
特開平03-243689(JP,A)
調査した分野 C09K 19
G02F 1
特許請求の範囲 【請求項1】
コレステリック相と等方相の間で青色相を発現し得る低分子液晶と、該低分子液晶中に形成された高分子ネットワークであって非液晶性のモノマーが架橋剤とともに重合することにより形成された高分子ネットワークとから成る(高分子ネットワーク/低分子液晶)複合系液晶組成物の青色相から構成されていることを特徴とする光学変調素子用液晶材料。
【請求項2】
非液晶性のモノマーが、側鎖としてアルキル基を有するアクリレート系モノマーであることを特徴とする請求項1に記載の光学変調素子用液晶材料。
【請求項3】
(高分子ネットワーク/低分子液晶)複合系液晶組成物の青色相の発現温度幅が、室温を挟む60℃以上にわたっていることを特徴とする請求項2に記載の光学変調素子用液晶材料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の光学変調素子用液晶材料を製造する方法であって、低分子液晶中にモノマーと架橋剤を分散させ、青色相が保持されている温度下に重合を行う工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
光重合によって重合を行うことを特徴とする請求項4に記載の光学変調素子用液晶材料の製造方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、液晶を利用する光変調の技術分野に属し、特に、光学変調素子として用いられるのに好適な新規な液晶材料とその作製法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光の強度や偏光状態を高速・高精度で制御する素子(光学変調素子)は、光情報処理技術において不可欠である。これまで、光学変調素子として電気光学効果を示す無機単結晶が主として使用されてきた。しかしながら、一般に無機単結晶は高価であり形状の自由度に乏しいため、近年液晶を用いた安価で小型の光学変調素子が注目されている。液晶は大きな複屈折と多彩な電気光学効果を示すが、応答速度が低いことと偏光板を必要とするため透過光の約半分をロスすることが問題となっている。
【0003】
青色相(Blue Phase:以下BPと略記することがある)は、コレステリック相と等方相の間の数℃(一般的には1~3℃)の温度範囲(温度幅)で出現することのある液晶相の一つで、数100nmオーダの格子定数の体心立方格子(BPI)や単純立方格子(BPII)構造のような三次元周期構造の形成に起因することが知られている。BPは可視光に対して、ブラッグ反射や旋光性を示し、電界や磁界などの外場により入射光の回折角や偏光状態をマイクロ秒オーダーの応答時間で変化させることのできる特異な電気光学特性を示す。そのため、BPを示す液晶は、従来の液晶変調素子を遥かに凌ぐ応答速度と多機能な光変調が可能である。しかしながら、BPはコレステリック相と等方相の間のわずか1~3℃の温度範囲でしか発現しないため、素子の精密な温度制御が必要となることが問題となり、BP液晶から成る光学変調素子は未だ実用化に到っていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、光学変調素子として実用に供し得るような充分に広い温度範囲にわたって青色相を発現することのできる新しい液晶材料を開発することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、検討を重ねた結果、青色相を示す低分子の液晶中に特定構造のモノマー由来の高分子のネットワークを形成させることにより青色相の発現温度範囲(温度幅)を大幅に拡大させることに成功し、本発明を導き出した
【0006】
かくして、本発明は、コレステリック相と等方相の間で青色相を発現し得る低分子液晶と、該低分子液晶中に形成された高分子ネットワークであって非液晶性のモノマーが架橋剤とともに重合することにより形成された高分子ネットワークとから成る(高分子ネットワーク/低分子液晶)複合系液晶組成物の青色相から構成されていることを特徴とする光学変調素子用液晶材料を提供するものである。
本発明に従えば、さらに、上記の光学変調素子用液晶を製造する方法であって、低分子液晶中にモノマーと架橋剤を分散させ、青色相が保持されている温度下に重合を行う工程を含むことを特徴とする方法が提供される。
【0007】
【発明の実施の形態】
光学変調素子として用いられるのに好適な本発明の液晶材料は、これまでに知られている(高分子ネットワーク/低分子液晶)複合系液晶組成物とは別異の技術思想に基づく新しいタイプの(高分子ネットワーク/低分子液晶)複合系液晶組成物によって発現されるBP(青色相)から構成されるものである。すなわち、表示素子(ディスプレイ)等として使用される液晶モードであるPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モードの1つとして、低分子液晶中に微量の高分子の網状構造が形成されている(高分子ネットワーク/低分子液晶)複合系液晶組成物がよく知られているが、本発明における(高分子ネットワーク/低分子液晶)構造は、このような従来のものとは異なる。従来から知られた(高分子ネットワーク/低分子液晶)複合系液晶組成物においては、ネットワークを形成するポリマーの原料となるモノマー分子として、それ自身、液晶性であり低分子液晶と相溶性のあるものを用いて高分子ネットワークを形成することにより液晶相の配列を安定させている。
【0008】
これに対して、本発明は、低分子液晶と相溶性の低いモノマー分子を重合させて高分子ネットワークを形成させると、BPが発現される温度範囲が拡大されるという事実に基づくものである。これは、以下のような理由によるものと解される:BPは分子配列の線欠陥と共存状態にあり、欠陥を生成するエネルギーが大きいために高エネルギー状態、すなわち、等方相直下のごくわずかな温度範囲でしかBPは発現しない。モノマーとして低分子液晶と相溶性が低いものを用いると、該低分子液晶のBPの線欠陥にモノマー分子が濃縮され重合によりBPの線欠陥の構造に対応した高分子ネットワークが形成され、これにより、BPの線欠陥を生成するエネルギーの量が低下し、より低温域においてもBPの線欠陥が生成され、BPの発現温度範囲が拡大するのであろう。
【0009】
かくして、本発明の光学変調素子用液晶材料において高分子ネットワークを形成するのに用いられるモノマーは、非液晶性のモノマーである。ここで、本発明において用いられる非液晶性のモノマーとは、光重合または熱重合によって重合することができるモノマーであって、よく知られた液晶を呈する棒状の分子構造(例えば、ビフェニル基またはビフェニル・シクロヘキシル基等の末端にアルキル基、シアノ基、フッ素などが付いたような分子構造)を有しないモノマーを指称し、例えば、分子構造中にアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、フマレート基、シンナモイル基等の重合性基を含むモノマーが挙げられるが、これらに限られるものではない。
【0010】
本発明の光学変調素子用液晶材料において高分子ネットワークを形成するのに用いられる非液晶性モノマーとして好ましい例は、分子構造中にアクリロイル基またはメタクリロイル基を含むアクリレート系モノマーであり、特に好ましいのは、側鎖としてアルキル基を有する枝分かれ構造のアクリレート系モノマーである。アルキル基は、一般に、炭素数1~4のアルキル基であり、このようなアルキル基から成る側鎖をモノマー単位当たり少なくとも1個有するモノマーを用いる。非液晶性の分子構造を有するモノマーであっても枝分かれしていないモノマーから高分子ネットワークが形成される場合には、BPを発現する温度幅の拡大効果が小さいことが見出されている。アクリレート系モノマーの好適な例としてはシクロヘキシルアクリレートなど、また、側鎖としてアルキル基を有するアクリレート系モノマーの好適な例としては、2-エチルヘキシルアクリレート、1,3,3-トリメチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0011】
如上のモノマーが、架橋剤とともに重合に供されることにより、高分子ネットワークが形成されることになる。この架橋剤は、液晶性または非液晶性の化合物のいずれでもよく、用いたモノマーに対応してそのモノマー分子間を結合して網状構造を形成し得るような反応性部位を有するものを使用すればよい。例えば、本発明の好ましい態様に従いモノマーとしてアクリレート系モノマーを用いる場合には、架橋剤として液晶性のジアクリレートモノマーを使用することもできる。但し、架橋剤を用いず、または架橋剤の濃度が低過ぎると、BP(青色相)が発現せず、または、その発現温度範囲(温度幅)が狭くなるので、充分量の架橋剤を用いることが必要である。また、高分子ネットワークの濃度も重要であり、BPの発現温度幅を広くするには充分量のモノマーと架橋剤を用いて連続性の高い高分子ネットワークが形成されるようにすることも必要である(後述の実施例参照)。
【0012】
光学変調素子として用いられるのに好適な本発明の液晶材料における(高分子ネットワーク/低分子液晶)複合系液晶組成物を構成する低分子液晶は、コレステリック相(カイラルネマチック相)と等方相の間で青色相を発現し得るものである。このような低分子液晶は、ビフェニル、ターフェニル、ビフェニル・シクロヘキシル等の分子構造を含み、不斉原子の存在によりそれ自身がカイラリティー(キラリティー)を有するか、または、カイラルな物質(カイラルドーパント)を添加されることにより、コレステリック相(カイラルネマチック相)を発現し得る物質であって、そのコレステリック相(カイラルネマチック相)におけるらせんのピッチ長が約500nm以下となるようなものから選ばれる。このような液晶は、低温でコレステリック相(カイラルネマチック相)を発現し、それより高温で等方相を発現するとともに、コレステリック相(カイラルネマチック相)と等方相の間のわずかな温度領域において青色相を発現することが知られている。これらの低分子液晶は、一般に、複数の種類を混合して使用することが好ましい。
【0013】
本発明の光学変調素子用液晶材料は、如上の低分子液晶と高分子ネットワークとから成る(高分子ネットワーク/低分子液晶)複合系液晶組成物の青色相から構成される。この(高分子ネットワーク/低分子液晶)複合系液晶組成物の青色相は、低分子液晶中にモノマーと架橋剤を分散させ、青色相が保持されている温度下に重合反応を行うことによって得られる。
【0014】
青色相が保持されていることは、偏光顕微鏡による観察および反射スペクトルの測定により確認することができる。すなわち、青色相が出現していると、青色相に特徴的な青色および黄緑色のplatelets(小板状組織)が偏光顕微鏡によって観察され、また、この黄緑色のplateletsに対応する約550nmの波長において反射スペクトルにピークが認められる。
【0015】
重合は、熱重合および光重合のいずれでも行うことができるが、熱重合の場合は、青色相が保持される温度と重合温度(加熱温度)とが重なる範囲に限界があり、また、高分子ネットワークの形態が加熱により変化する可能性もあるので、紫外光を用いる光重合によるのが好ましい。また、重合に際しては、重合速度を速めるために、低分子液晶中に、モノマーと架橋剤に加えて重合開始剤も分散させておくことが好ましい。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、ベンゾインエーテル系、チオキサントン系などの各種の開始剤が使用可能であり、具体的には、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンなどが例示できる。さらに、既述したように、低分子液晶にカイラルネマチック相を発現させるためのカイラルドーパントを添加することが必要となることもある。
【0016】
かくして、本発明に従い、(高分子ネットワーク/低分子液晶)複合系液晶組成物の青色相から成る液晶材料を作製するには、如上のように、低分子液晶中にモノマーと架橋剤、さらには、必要に応じて重合開始剤やカイラルドーパントを分散させた混合溶液を適当なセルに注入して以下のように重合反応に供する:先ず、重合前の試料(混合溶液)を降温または昇温させてBP(青色相)が発現していることを、既述のように偏光顕微鏡観察および/または反射スペクトル測定により確認する。次に、BP発現が確認された温度から試料を昇温または降温しplateletsの黄緑色の輝度が弱くなったことが(偏光顕微鏡観察および/または反射スペクトル測定により)認められた時点で紫外光を照射し、黄緑色の輝度が強くなったら紫外光照射を一旦停止する。その後、試料をさらに降温または昇温し、再びplateletsの黄緑色の輝度が弱くなった温度において紫外光を照射し、plateletsの黄緑色の輝度が強くなると紫外光照射を一旦停止する。この操作を繰り返し、BPを発現する温度(plateletsの黄緑色の輝度が強くなる温度)が低分子液晶単独の系のBP発現温度とほぼ一致した後、さらに、一定時間(例えば、1時間)紫外光を照射することにより重合を完了させる。以上の操作は光重合によるものであるが、熱重合による場合は、同様に偏光顕微鏡観察および/または反射スペクトル測定によりBP発現が確認され且つ重合反応が進行する温度下に系を維持することにより重合を行うことができる。
【0017】
以上のような重合反応により得られる(高分子ネットワーク/低分子液晶)複合系液晶組成物の青色相(BP)から構成される本発明の液晶材料は、きわめて広い温度範囲(温度幅)にわたり安定な青色相を呈する。例えば、本発明の好ましい例であるアルキル基側鎖を有するアクリレート系モノマーから形成された高分子ネットワークを含む液晶材料には室温(15~25℃)を挟んで60℃以上の温度幅にわたりBPを発現することができるものもある。得られた液晶材料のBP発現も既述したような偏光顕微鏡観察と反射スペクトル測定により確認することができる。
【0018】
【実施例】
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に明らかにするため実施例を示すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
実施例1:液晶材料の作製
光重合性モノマーとして、非液晶性の2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)(Aldrich社製)、ヘキシルアクリレート(HA)(Aldrich社製)、および1,3,3-トリメチルヘキシルアクリレート(TMHA)(Aldrich社製)、ならびに液晶性の6-(4’-シアノビフェニル-4-イルオキシ)ヘキシルアクリレート(6CBA)を用いた。架橋剤として液晶性ジアクリレートモノマー(RM257)(Merck社製)、光重合開始剤として2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(Aldrich社製)を用いた。低分子液晶として、フッ素系ネマチック混合液晶JC-1041XX(7)(チッソ社製)およびシアノビフェニル系ネマチック液晶4-シアノ-4’-ペンチルビフェニル(5CB)(Aldrich社製)を等モルで混合したものを用い、カイラルドーパントとしてZLI-4572(9)(Merck社製)を用いた。用いた光重合性モノマー、架橋剤および光重合開始剤の化学構造式を図1に、また、用いた低分子液晶およびカイラルドーパントの化学構造式を図2に、それぞれ示している。なお、図1および図2に示す化学構造式においては、慣用的な表現法に従い炭素原子および水素原子を省略している。
【0019】
上記の構成成分を所定の組成で調製した混合溶液を等方相状態で無配向、セル厚14μmのサンドイッチ型セルに注入した。各サンプルが注入されたセルをクロスニコル下の偏光顕微鏡で観察し、既述した方法に従いBPが保持された状態であることを確認しながらメタルハライドランプから得られる照射強度1.5mW・cm-2の紫外光を1時間以上照射することにより光重合を行った。
【0020】
さらに、高感度マルチチャンネル光検出器(C4564-010G、浜松ホトニクス(株))を用いて、重合前後における各サンプルの反射スペクトル測定を等方相とカイラルネマチック液晶相との間の温度領域において行った。光源としてキセノンランプを用いた。
表1は、2EHAを用いた場合の各サンプルの組成を示し、また、表2は、偏光顕微鏡観察によって得られた表1に示すサンプルの光重合後の相転移温度およびBPの発現温度範囲を示すものである。
【0021】
【表1】
JP0003779937B2_000002t.gif
【0022】
【表2】
JP0003779937B2_000003t.gif
【0023】
表2に示されるように、高分子ネットワークが存在しない状態(サンプル1)では、BPの発現温度範囲(温度幅)は1.1K(1.1℃)であったが、高分子ネットワークの濃度が4mol%の複合系(サンプル2)においては、BPの発現温度範囲は6.8K(6.8℃)と拡大された。さらに、高分子ネットワークの濃度が7mol%以上の複合系(サンプル3~5)においてはBPの発現温度範囲は60K(60℃)以上と大きく拡大された。これは、非液晶性でアルキル基側鎖を有するモノマーである2EHAを用いて、BPの線欠陥に対応した高分子ネットワークが形成されたことにより、BPの分子配列構造と共存関係にある線欠陥が安定化された結果、BPも安定化されたことに因ると考えられる。
【0024】
2EHAと同様に非液晶性でアルキル基側鎖を有するTMHAを用いた場合も顕著なBP発現温度範囲拡大効果が認められ、サンプル3とほぼ同じ組成でBPの発現温度範囲は60℃以上と大きく拡大された。しかし、非液晶性であるがアルキル基側鎖を有しないHAを用いた場合は、サンプル3とほぼ同じ組成においてもBPの発現温度範囲は8.2℃であり、2EHAを用いた場合に比較して小さいものとなった。一方、液晶性の6CBAを用いた場合のBPの発現温度範囲は組成に依存せず2℃程度とほぼ一定であり、BP発現温度範囲の拡大は実質的に認められなかった。
【0025】
図3は、偏光顕微鏡観察の1例として、上記のサンプル3の偏光顕微鏡観察像を示すものである。等方相(図3の(A))から降温させていくと、BPの発現に伴なう青色と黄緑色のplateletsが観察された(図3のB)。他のサンプルについても幅広い温度範囲で同様の像が観察された。
【0026】
図4は、1例としてサンプル3の反射スペクトルの温度依存性を示すものである。低分子液晶単独系と異なり、BPの発現に起因するピークが幅広い温度範囲で観察された(図4の(A)および(B))。また、カイラルネマチック液晶相のピッチ長に対応するピークの発現が観測されなかった(図4の(C))。したがって、幅広い温度でBPの分子配列構造が安定化されたことが明らかとなった。
【0027】
実施例2:液晶材料の電気光学特性の評価
本発明に従う液晶材料の光学変調素子としての適用性を評価するため、電気光学特性評価装置を用いて、室温(20℃)下に、正弦波、1kHzの交流電界を印加し、その電気光学応答速度および透過光強度の印加電圧依存性を測定した。用いた入射光はHe-Neレーザー光(λ=632.8nm)であり、透過光の検出は、検格子を偏光子に対して45度回転させた状態で行った。
【0028】
図5は、測定結果の1例として、実施例1のサンプル3から作製された液晶材料に上記の交流電界(80V)を印加したときの透過光強度の時間依存性を示すものである。電界印加に対して透過光強度が増加し旋光性が低下しており、液晶材料により入射光の偏光状態が変化することが理解される。これは低分子液晶分子が電界印加方向に沿って配列しようとすることでBPの螺旋構造が崩れることに起因すると考えられる。また、立ち上がりおよび下がりともに1~2ms程度とネマチック液晶と比較して高速の電気光学応答を示した。
図6は、透過光強度の印加電圧の2乗に対する依存性を示すものである。透過光強度と印加電圧の2乗が比例関係にあることから、誘電率異方性に伴う電気光学応答挙動であるといえる。
【0029】
【発明の効果】
本発明に従えば、青色相(BP)の特異な電気光学特性を維持したまま、その発現温度範囲を大幅に拡大することができ、BPを光学変調素子として実用化するための障害であった発現温度の狭さの問題が克服される。本発明の液晶材料は、BPの回折・旋光特性を活用した新規な光学変調素子として幅広い温度範囲で利用可能であり、マイクロオプトエレクトロニクス分野における新たな発展に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例において用いられた光重合性モノマー、架橋剤および光重合開始剤の化学構造式を示す。
【図2】本発明の実施例において用いられた低分子液晶およびカイラルドーパントの化学構造式を示す。
【図3】本発明に従う液晶材料サンプルの偏光顕微鏡写真の1例を示す。
【図4】本発明に従う液晶材料サンプルの反射スペクトルの温度依存性の1例を示す。
【図5】本発明に従う液晶材料の電気光学特性として交流電界が印加されたときの透過光強度の時間依存性の1例を示す。
【図6】本発明に従う液晶材料の電気光学特性として透過光強度と印加電圧との関係の1例を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5