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明細書 :自律型超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3834789号 (P3834789)
公開番号 特開2003-337309 (P2003-337309A)
登録日 平成18年8月4日(2006.8.4)
発行日 平成18年10月18日(2006.10.18)
公開日 平成15年11月28日(2003.11.28)
発明の名称または考案の名称 自律型超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置
国際特許分類 G02F   1/01        (2006.01)
FI G02F 1/01 D
請求項の数または発明の数 2
全頁数 16
出願番号 特願2002-143884 (P2002-143884)
出願日 平成14年5月17日(2002.5.17)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2001年12月18日 科学技術振興事業団開催「第5回定例シンポジウム 量子効果等の物理現象」にて文書をもって発表 2002年3月27日-30日 社団法人応用物理学会開催「2002年春季第49回応用物理学関係連合講演会」にて文書をもって発表
審査請求日 平成14年5月17日(2002.5.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】山下 幹雄
【氏名】平澤 正勝
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
審査官 【審査官】佐藤 宙子
参考文献・文献 第62回応用物理学会学術講演会講演予稿集,2001年 9月,No.3,815,11p-P4-10
調査した分野 G02F 1/01
G02F 1/35
JSTPlus(JDream2)
特許請求の範囲 【請求項1】
パルス光源と、このパルス光源から出射する光パルスをスペクトル成分毎に空間分散するスペクトル空間分散装置と、この空間分散された光パルスのスペクトル成分毎に位相を付加する空間位相変調器と、この位相を付加された光パルスのスペクトル成分を合波する合波装置と、この合波された出力光パルスの一部からスペクトル干渉像を形成するとともに、上記合波された出力光パルス以外のパルス光源をチャープ光パルス用光源とする変形SPIDER装置と、このスペクトル干渉像からスペクトル位相を検出し、検出した位相と設定位相との差を上記空間位相変調器にフィードバックするフィードバック装置とから成ることを特徴とする、自律型超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置。
【請求項2】
前記変形SPIDER装置は、チャープ光パルス用光源と、このチャープ光パルス用光源から出射する光パルスの遅延時間を調節する遅延器と、この遅延時間を調節した光パルスからチャープ光パルスを形成する分散性媒質と、前記出力光パルスの一部から互いに遅延した2つのレプリカパルスを形成するレプリカパルス形成器と、上記チャープ光パルスと上記2つのレプリカパルスを周波数混合する非線形光学結晶と、この非線形光学結晶で周波数混合した2つのレプリカパルスの干渉像を形成させるスペクトロメータと、この2つのレプリカパルスの干渉像を読みとる画像読取り装置とからなることを特徴とする、請求項1に記載の自律型超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、超広帯域で超短光パルスを発生するために不可欠な位相補償機構に空間位相変調器を用い、発生した光パルスのスペクトル位相の決定にSPIDER法の改良である変形SPIDER法を用いる、自律型超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
超短光パルス圧縮技術は、人類の手にすることのできる最小の時間幅を実現でき、超短光パルスを用いることにより、従来未知であった科学技術領域に新たな発見、新たな技術の創出をもたらしつつある。また、超短光パルス位相補償技術は、時間的に変化する制御された位相補償量を光パルス列に与えることができ、各種変調分光法や光通信への応用が始まりつつある。また、超短光パルス波形整形技術は、光パルスの形状を任意に整形でき、化学反応素過程の解明や生体反応メカニズムの解明に無くてはならないものとなっている。
【0003】
従来、超短光パルス圧縮、超短光パルス位相補償、超短光パルス波形整形は、光源の発生する光パルスのスペクトル成分毎に位相補償して合波することにより実現している。
位相補償には、プリズム対や回折格子対、誘電体多層膜鏡などの固定的な光学素子が用いる方法がある。しかしながら、これらの位相補償は固定的であり、動的でも自律的でもないため、光パルスのスペクトル成分毎の位相が前もってわかっており、かつ、光パルスのスペクトル成分毎の位相が時間的に不変である場合にしか有効ではない。
また、空間位相変調器(SLM:Space Light Modulater)を用いた4-fパルス整形器を用いた位相補償方法がある(例えば、本発明者らによる特願2000-329355参照)。この方法によれば、動的に位相変調量を変えられ、シミュレーテッドアニーリング法や遺伝的アルゴリズム法などを用いて、最適な位相補償量を試行錯誤的に決定できるが、決定までに極めて多くの光パルス列と時間を要するので、光パルスのスペクトル成分毎の位相が時間的に不変である場合にしか有効ではない。
【0004】
このように、従来の装置においては、使用する光源の発生する光パルスの位相情報を詳細に測定してから使用することが必要であり、また、光パルスのスペクトル成分毎の位相の時間的揺らぎを小さくするために、極めて高度な制御系を有する光源を必要とし、また、このような高度な制御系を有する光源を用いても、位相の時間的揺らぎのために、超短光パルス圧縮、位相補償、波形整形が連続的に行える時間が短いといった課題がある。
【0005】
近年、上記の課題を解決するために、出力光パルスの一部を取り出して位相を常時測定し、空間位相変調器にフィードバックし、光パルスに位相揺らぎが生じても自律的に超短光パルスの位相揺らぎを素早く補償する方法が試みられた(例えば、本発明者らによる、上記の特願2000-329355参照)。
この自律的補償方法においては、位相測定に、自己相関(Autocorrelaion)法、FROG(Freqency Resolved Optical Gating)法、または、SPIDER(Spectral Phase Interferometry for Direct ElectricーField Reconstruction)法が試みられた。
【0006】
しかしながら、自己相関法及びFROG法は、測定原理上、位相測定に時間がかかりすぎ、位相の時間的揺らぎの大きい一般のレーザー光源の場合には、測定中に位相が変動してしまうという課題がある。
また、SPIDER法は、出力光パルスのレプリカを生成し、二つのレプリカパルスを互いに遅延させ、互いに遅延した二つの光パルスと、出力光パルスの一部を分割して生成したチャープ光パルスを非線形光学結晶に入射することにより、二つのレプリカパルスをそれぞれを異なった周波数で周波数混合し、周波数混合された二つのレプリカ光パルスをスペクトロメータで干渉させ、干渉像の干渉縞間隔から出力光パルスの位相情報を抽出する(文献:IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS.VOL.35.NO.4.APRIL 1999 p501-509参照)ものであり、この方法によれば、単一の出力光パルスから一度に全ての位相情報を抽出することができるから、高速に位相補償できる。しかしながら、単一の出力光パルスを分割してチャープ光パルスを生成するため、レプリカパルスの強度が減少してしまい、位相情報の抽出感度が低下し、極めて強度の大きい光パルスの場合にしか従来のSPIDER法が有効ではないという課題がある。
【0007】
このように、従来の超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置は、光強度が小さい、または、位相の時間的揺らぎが大きい一般のレーザー光源を用いた場合には、自律的に超短光パルス圧縮、超短光パルス位相補償、及び、超短光パルス波形整形を行うことが不可能であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記課題に鑑み、本発明は、高速に高感度に位相揺らぎを補償できる自律型超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置を提供し、光強度が小さい、または、位相の時間的揺らぎが大きい一般のレーザー光源を用いた場合にも、自律的に超短光パルス圧縮、超短光パルス位相補償、及び、超短光パルス波形整形を行うことができる装置を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の自律型超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置は、パルス光源と、パルス光源から出射する光パルスをスペクトル成分毎に空間分散するスペクトル空間分散装置と、空間分散された光パルスのスペクトル成分毎に位相を付加する空間位相変調器と、位相を付加された光パルスのスペクトル成分を合波する合波装置と、合波された出力光パルスの一部からスペクトル干渉像を形成するとともに、合波された出力光パルス以外のパルス光源をチャープ光パルス用光源とする変形SPIDER装置と、スペクトル干渉像からスペクトル位相を検出し、検出した位相と設定位相との差を空間位相変調器にフィードバックするフィードバック装置とから成ることを特徴とする。
【0010】
また、変形SPIDER装置は、チャープ光パルス用光源と、チャープ光パルス用光源から出射する光パルスの遅延時間を調節する遅延器と、遅延時間を調節した光パルスから周波数チャープ光パルスを形成する分散性媒質と、出力光パルスの一部から互いに遅延した2つのレプリカパルスを形成するレプリカパルス形成器と、チャープ光パルスと2つのレプリカパルスを周波数混合する非線形光学結晶と、周波数混合した2つのレプリカパルスを干渉させるスペクトロメータと、2つのレプリカパルスの干渉像を読みとる画像読取り装置とからなることを特徴とする。
前記構成において、分散性媒質は群速度分散の大きいTF5 ガラスであれば好ましい。
また、非線形光学結晶は2次の非線形光学効果が大きいBBO結晶であれば好ましい。
また、画像読取り装置は、ICCD(Charge Coupled Device with Image-intensifier)であれば好ましい。
【0011】
この構成によれば、光パルス光源から出射した光パルスがスペクトル成分毎に空間分散されて空間位相変調器に入射し、空間位相変調器でスペクトル成分毎に付加位相を付加されて出射し、付加位相を付加されたスペクトル成分が合波されて出力光パルスが得られる。出力光パルスの一部を取り出し、変形SPIDER装置で出力光パルスのスペクトル干渉像を形成し、フィードバック装置が干渉像からスペクトル位相を検出し、検出した位相を設定位相と比較し、検出した位相と設定位相との差を付加位相として空間位相変調器にフィードバックする。
本発明の装置に使用する変形SPIDER装置は、チャープ光パルスを被測定光パルス以外の別の光源から生成する。別の光源で生成するから、二つのレプリカ光パルスの強度を弱めることが無く、また、チャープ光パルスの強度も大きくできるので、周波数混合された二つのレプリカ光パルスのスペクトロメータによる干渉像のコントラストを高めることができる。また、干渉像をICCDで読みとるから高速に高感度に全てのスペクトルの位相を検出することができる。
また、高速に高感度に全てのスペクトルの位相が検出できるから、フィードバック装置により、検出した位相と設定位相との差を付加位相として空間位相変調器に高速に高感度にフィードバックすることができる。
さらに、光パルス1つから全ての位相情報を抽出でき、極めて短時間に、最悪でも10秒以内に、所望の出力光パルスを構築できる付加位相を空間位相変調器に設定できるから、光パルスのスペクトル位相が揺らいでも所望の出力光パルスに自律的に修正し、所望の光パルスを出力し続けることができる。
【0012】
このように、本発明の装置によれば、高速に高感度に位相揺らぎを補償できるから、光強度が小さい、時間的に揺らぎがある、あるいは不安定性のある一般の光源に対しても、自律的に、超短光パルス圧縮、超短光パルス位相補償、及び、超短光パルス波形整形を行うことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2に基づいて、本発明の自律型超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置の構成及び作用を説明する。
図1は、本発明の自律型超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置の構成を示す図である。
本発明の自律型超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置1は、光パルス光源2と、光源2から出射する光パルス3をスペクトル成分毎に空間分散するスペクトル空間分散装置4と、空間分散された光パルス3のスペクトル成分毎に位相を付加する空間位相変調器5と、位相を付加された光パルス3のスペクトル成分を合波する合波装置6と、合波された出力光パルス7のスペクトル成分毎の位相を検出する変形SPIDER装置8と、検出した位相情報を空間位相変調器にフィードバックするフィードバック装置9とから成る。
【0014】
光パルス光源2は、光パルス光源から出射する光パルスを非線形伝搬媒質に通して広帯域化した光源であっても良い。
【0015】
スペクトル空間分散装置4は、凹面鏡4aと、ミラー4bと、グレーティング4cとより構成され、グレーティング4cはミラー4bを介した凹面鏡4aの焦点位置fに配置される。光パルス3は、グレーティング4cで波長分散され、すなわち、スペクトル成分毎に空間分散され、凹面鏡4aによって平行光にされ、空間位相変調器5に入射する。
【0016】
空間位相変調器5は、凹面鏡4aの焦点位置fに配置される。図示しないが、空間位相変調器5は、LC(Liquid Crystal)からなるピクセルが平面状に配列されており、光パルスがピクセルを通過する際の付加位相は、各々のピクセルに印加する電圧により、独立に設定できる。すなわち、光パルス3は空間位相変調器5によってスペクトル成分毎に所定の位相を付加できる。
【0017】
合波器6は、凹面鏡6aと、ミラー6bと、グレーティング6cとから構成され、グレーティング6cはミラー6bを介した凹面鏡6aの焦点位置fに配置される。凹面鏡6aは、空間位相変調器5から凹面鏡6aの焦点位置fに配置される。空間位相変調器5を通過した光パルス3の各々のスペクトル成分は、凹面鏡6aとグレーティング6cにより合波され、出力光パルス7となる。
スペクトル空間分散装置と空間位相変調器と合波器とから成る上記の構成を4f-パルスシェーパー(pulse shaper)と呼ぶ。
【0018】
変形SPIDER装置8は、チャープ光パルス用光源8aと、光源8aから出射する光パルス8bの遅延時間を調節する遅延器8cと、遅延時間を調節された光パルス8bと出力光パルス7の一部を分割した光パルス7aとを取り込み、互いに異なる周波数で周波数混合した光パルス7aの2つのレプリカ光パルスを形成する周波数変換部8dと、2つのレプリカ光パルスのスペクトル領域の干渉像を形成するスペクトロメータ8eと、干渉像を読み取るICCDアレイからなる撮像装置8fとから成る。なお、遅延器8cは、チャープ光パルスと2つのレプリカ光パルスの時間軸上での相対位置を調節するために用いる。
【0019】
図2は周波数変換部8dの詳細構成を示す図である。周波数変換部8dは、光パルス7aを入射する光入射端21と、光パルス8bを入射する光入射端22と、光パルス7aの2つのレプリカ光パルス24a,24bを形成するハーフミラー23と、2つのレプリカ光パルス24a,24bを合波するハーフミラー27と、2つのレプリカ光パルス24a,24b間の遅延時間を設定する遅延器25,26と、光パルス8bを周波数分散させてチャープ光パルス29を形成する分散性媒質28と、チャープ光パルス29とレプリカ光パルス24a,24bとを非線形光学結晶31に集光する放物面ミラー30とからなる。
光入射端21に入射された光パルス7aは、ハーフミラー23によって二つのレプリカパルス24a,24bに分割され、それぞれ別々の遅延器25,26を通って再び、ハーフミラー27で合波される。この際、遅延器25,26によって、レプリカパルス24a,24bの間に遅延時間τを形成する。
光入射端22に入射された光パルス8bは、分散性媒質28中を往復して周波数分散を受け、チャープ光パルス29になる。
【0020】
互いに遅延時間τを有するレプリカパルス24a,24bと、チャープ光パルス29は、放物面ミラー30によって非線形光学結晶31に集光される。この際、図1に示した遅延器8cにより、時間軸上でチャープ光パルス29の中心と、レプリカパルス24aと24b間の中心とが一致するようにを調節し、レプリカパルス24aと24bがそれぞれチャープ光パルス29の異なった位置と重なるようにし、レプリカパルス24aと24bがそれぞれチャープ光パルス29の異なった周波数で周波数混合されるように、すなわち、スペクトル・シアー(spectral shear)されるようにする。
非線形光学結晶31中で、異なった周波数で周波数混合され、スペクトル・シアーされたレプリカパルス24aと24bは、図1に示したスペクトロメータ8eに入射され、スペクトロメータ8eでスペクトル空間分散され、画像読取り装置8fに干渉像を形成する。
【0021】
画像読取り装置8fに形成された干渉像は画像読取り装置8fによって読み込まれ、画像情報としてフィードバック装置9のコンピュータ9aに送られる。
コンピュータ9aは、画像情報をフーリエ変換して、光パルス7aのスペクトル成分毎の位相を検出し、すなわち、スペクトル位相情報を抽出し、光パルス7aのスペクトル位相の再構築を行い、再構築スペクトル位相をコンピュータ9bに送る。
コンピュータ9bは、再構築スペクトル位相すなわち観測値と、入力したスペクトル位相すなわち設定値との差分を計算し、差分を空間位相変調器5の各々のピクセルにフィードバックして、出力光パルス7bを設定値に収束させる。
【0022】
フィードバック位相補償の具体的アルゴリズムを図3に示す。
図3は、フィードバック位相補償の具体的アルゴリズムを示すフローチャートである。
【0023】
次に、スペクトル位相再構築の原理を説明する(詳細は、文献:IEEE JOURNAL OF QUANTUM ELECTRONICS.VOL.35.NO.4.APRIL.1999.pp501-509参照)。
光パルスの電界E(t)は、E(ω)をE(t)のフーリエ変換として次式であらわされる。
【数1】
JP0003834789B2_000002t.gifまた、E(ω)は次式であらわされる。
【数2】
JP0003834789B2_000003t.gifまた、E(ω)は次式のように定義することができる。
【数3】
JP0003834789B2_000004t.gifここで、|E(ω)|はスペクトル強度であり、φ(ω)はスペクトル位相である。|E(ω)|とφ(ω)が定まれば、光パルスの形状が定まる。
【0024】
図4は2つのレプリカパルスをスペクトル・シアーする原理を示す図である。図4(a)はチャープ光パルスEC と2つのレプリカパルスE1 ,E2 との時間軸上の相対位置関係を示しており、チャープ光パルスEC のグラフにはチャープ光パルスEC の周波数分布も示している。同図(b)に示すように、相対遅延時間τを有するレプリカ光パルスE1 ,E2 とチャープ光パルスEC を時間軸上で図のように重ねて2次の非線形光学結晶NCに入射すると、2次の非線形感受率をχ(2) として、χ(2) 1 C 、及び、χ(2) 2 C の結合波が生じる。図4(a)に示したように、E1 と結合するEC の周波数と、E2 と結合するEC の周波数はΩの差があるから、E1 とE2 は周波数差Ωでスペクトル・シアーされ、スペクトル・シアーされた s1 s2 は、次式で表される。
【0025】
【数4】
JP0003834789B2_000005t.gif【数5】
JP0003834789B2_000006t.gifここで、 s2 の周波数をωとしている。 s1 s2 をスペクトロメータ等でスペクトル空間分散させて重ね合わせると、次式で表される干渉像D(ω)が得られる。
【数6】
JP0003834789B2_000007t.gif
【0026】
図5は、干渉像D(ω)の一例を示す図である。
干渉像D(ω)は、(6)式のcosineの位相項、Δ=φ(ω-Ω)-φ(ω)-τωが2πの整数倍になる毎に極大値を示すので干渉縞を形成し、干渉縞の間隔のω依存性がわかる。Ω、τが既知であるので、スペクトル位相φ(ω)の差分位相、Δφ=φ(ω-Ω)-φ(ω)のω依存性がわかり、従って、上記(3)式で定義したスペクトル位相φ(ω)を求めることができる。すなわち、スペクトル位相の再構築ができる。
干渉縞の間隔は、干渉像D(ω)をフーリエ変換して求めることができる(文献:J.Opt.Soc.Am./Vol.72,No.1/January 1982.pp156-160参照)。
【0027】
スペクトル位相の再構築の具体的手順を図6に示す。
図6は、スペクトル位相の再構築の手順を示すフローチャートである。
【0028】
次に、本発明の実施例を示す。
図7は、本実施例に用いた入力光パルスの特性及び生成方法を示す図である。
本実施例では、光パルス光源にTi:Sapphireレーザー光源を用い、Ti:Sapphireレーザー光源からの入力光パルスを再生増幅器(REGEN)を用いて高強度超短光パルスを生成した。高強度超短光パルスは、中心波長800nm、くり返し1kHz、帯域幅Δf=10THzである。
チャープ用光パルスは、上記の高強度超短光パルスを直接分割して使用し、最大1.2μJ/pulseである。
テスト光パルス1は、上記の高強度超短光パルスの分割光をNDフィルターで減光して形成し、最大500nJ/pulseである。
テスト光パルス2は、上記の高強度超短光パルスを光パラメトリック増幅器(OPA)に入射し、アイドラー光をNDフィルターで減光して形成し、中心波長1100nm、帯域幅Δf=10THz、最大400nJ/pulseである。
テスト光パルス3は、上記の高強度超短光パルスの分割光をシングルモード石英ファイバー(SOP;コア径2.7μm、長さ3mm)中を通過させ、自己位相変調効果によって広帯域化して形成し、中心波長800nm、帯域幅Δf=20THz、3.6nJ/pulseである。
テスト光パルス4は、光パラメトリック増幅器(OPA)からのアイドラー光をシングルモード石英ファイバー(コア径2.7μm、長さ3mm)中を通過させ、自己位相変調効果によって広帯域化して形成し、中心波長1100nm、帯域幅Δf=50THz、14nJ/pulseである。
【0029】
図8は、2つのレプリカパルスのスペクトル・シアー、及び干渉像の実測値をを示す図であり、図8(a)はテスト光パルス1の結果を示し、図8(b)はテスト光パルス2の結果を示す。
図8(a)において、2つのレプリカパルスE1 ,E2 の相対遅延時間τは、τ=746fsであり、スペクトル・シアー周波数は、Ω/2π=3.85THzである。
荒い点線はレプリカパルスE1 とチャープ光パルスEc との結合波のスペクトル分布を示し、細かい点線はレプリカパルスE2 とチャープ光パルスEc との結合波のスペクトル分布を示しており、2つのレプリカパルスE1 ,E2 はスペクトル・シアーされていることがわかる。実線はスペクトル・シアーされたレプリカパルスE1 ,E2 の干渉像D(ω)であり、周波数軸上にテスト光パルス1のスペクトル位相を反映した明瞭な干渉縞が生じることがわかる。
【0030】
図8(b)において、2つのレプリカパルスE1 ,E2 の相対遅延時間τは、τ=746fsであり、スペクトル・シアー周波数は、Ω/2π=3.37THzである。
荒い点線はレプリカパルスE1 とチャープ光パルスEc との結合波のスペクトル分布を示し、細かい点線はレプリカパルスE2 とチャープ光パルスEc との結合波のスペクトル分布を示しており、2つのレプリカパルスE1 ,E2 はスペクトル・シアーされていることがわかる。実線はスペクトル・シアーされたレプリカパルスE1 ,E2 の干渉像D(ω)であり、周波数軸上にテスト光パルス2のスペクトル位相を反映した明瞭な干渉縞が生じることがわかる。
テスト光パルス1及びテスト光パルス2は、それぞれ、中心波長800nm、1100nmであり、500nJ程度の低エネルギー光パルスであるが、図8より、本発明の装置は、低エネルギー光パルスであっても、広帯域にわたって明瞭な干渉像D(ω)を形成できることがわかる。
【0031】
図9は図8の干渉像から再構築したスペクトル位相φ(ν)を示す図であり、図9(a)はテスト光パルス1の再構築スペクトル位相であり、図9(b)はテスト光パルス2の再構築位相である。なお、図中、入力光パルスをフーリエ変換して求めたスペクトル強度|E(ν)|も示している。
図において、スペクトル位相φ(ν)、(ただし、ν=ω/2π)は、図8の干渉像D(ω)をフーリエ変換して求めた。
【0032】
図10は、変形SPIDER法と従来のSPIDER法のSPIDER信号強度(D(ω))の比較を示す図であり、図10(a)の横軸は入力光パルスのエネルギーを示し、縦軸はSPIDER信号強度(D(ω))を示している。また、複数の光パルスの干渉像を積算すれば、ノイズのランダム成分が打ち消されてノイズレベルが下がるので、1パルスのみの場合、5,000パルスを積算した場合、及び、100,000パルスを積算した場合のノイズレベルを各々示している。ノイズレベルの信号強度が検出限界となる。
【0033】
図10(b)は変形SPIDER法における、入力光パルスの積算数毎の検出限界と、従来のSPIDER法と比較した感度改善率を示している。
変形SPIDER法のチャープ用光パルスには、入力光パルスのエネルギーによらず、800nm、1.2μJの光パルスを用いた。従来のSPIDER法のチャープ用光パルスは、入力光パルスを一定比率で分割した光パルスを用いる。入力光パルスには、NDフィルターの減衰率を変化させたテスト光パルス1を用いた。
【0034】
図10(a)から明らかなように、変形SPIDER法の信号強度は入力光パルスのエネルギーの1乗に比例し、従来のSPIDER法の信号強度は入力光パルスのエネルギーの2乗に比例することがわかる。また、同一の入力光パルスのエネルギーに対して、変形SPIDER法の信号強度は従来のSPIDER法の信号強度よりも大きく、図10(b)に示すように、感度改善率は、1パルス検出の場合には10倍、5,000パルス積算の場合には80倍、100,000パルス積算の場合には100倍に達することがわかる。
図10から、変形SPIDER法によれば、従来のSPIDER法では不可能であった低エネルギー領域の光パルスのスペクトル位相の検出が可能であることがわかる。
【0035】
図11は、変形SPIDER法における信号強度のチャープ光パルスのエネルギー依存性を示す図である。
図から明らかなように、信号強度はチャープ光パルスのエネルギーの1乗に比例して増加する。従って、変形SPIDER法によれば、チャープ光パルスのエネルギーを大きくすることによって、極めて微小エネルギーの光パルスのスペクトル位相を求めることができることがわかる。
しかしながら、チャープ光パルスのエネルギーを大きくし過ぎると、非線形光学結晶の自己位相変調効果が大きくなり、ノイズレベルが増大する現象が発生する。
【0036】
図12は変形SPIDER法による広帯域光パルスの再構築を示す図であり、図12(a)はレプリカパルス1,2のフーリエスペクトルと変形SPIDER信号を示しており、図12(b)は変形SPIDER信号を用いて再構築したスペクトル位相φ(ν)と、入力光パルスのスペクトル強度|E(ν)|を示しており、図12(c)はスペクトル位相φ(ν)とスペクトル強度|E(ν)|から再構築した時間軸領域の入力光パルスの強度|E(t)|、及び位相φ(t)を示す。
入力光パルスには、中心波長800nm、帯域幅Δf=20THz、3.6nJの微小エネルギーのテスト光パルス3を使用した。
図12(c)に示した時間波形及び時間位相は、他の測定方法で測定した結果と極めて良く一致した。
図12から明らかなように、変形SPIDER法によれば、広帯域、かつ、微小エネルギーの光パルスでも再構築できることがわかる。
【0037】
図13は変形SPIDER法による超広帯域光パルスの再構築を示す図であり図13(a)はレプリカパルス1,2のフーリエスペクトルと変形SPIDER信号を示しており、図13(b)は変形SPIDER信号を用いて再構築したスペクトル位相φ(ν)と、入力光パルスのスペクトル強度|E(ν)|を示しており、図13(c)はスペクトル位相φ(ν)とスペクトル強度|E(ν)|から再構築した、時間軸領域の入力光パルスの強度|E(t)|、及び、位相φ(t)を示す。
入力光パルスには、中心波長1100nm、帯域幅Δf=50THz、14nJの微小エネルギーのテスト光パルス4を使用した。
図13(c)に示した時間波形及び時間位相は、他の測定方法で測定した結果と極めて良く一致した。
図13から明らかなように、変形SPIDER法によれば、超広帯域、かつ、微小エネルギーの光パルスでも再構築できることがわかる。
【0038】
次に、本発明の装置を用いて超短光パルスを波形整形した例を示す。
図14は、超短光パルスの波形整形の例を示す図である。図14(a)において、上段のグラフは入力光パルスの測定したスペクトル強度|E(λ)|を示す図であり、下段のグラフは変形SPIDER法によって測定したスペクトル位相φ(λ)を示し、図14(b)は出力光光パルスの波形整形前と後の時間領域波形を示している。
入力光パルスには、テスト光パルス1(中心波長800nm、くり返し1kHz、帯域幅Δf=10THz、200nJ/pulse)を用いた。また、チャープ光パルスは4.2μJ/pulseである。
図14(b)に示すように、この入力光パルスは時間軸上で主ピークの他に主ピークの裾部分にしだいに減衰する複数の副次ピークを有している。超短光パルスの用途によってはこのような副次ピークが有害である場合がある。本実施例は本装置により位相補償し、この副次ピークを無くすことを試みた。
図14(a)下段のグラフにおいて、入力光パルスのスペクトル位相、すなわち、位相補償無しの出力光パルスのスペクトル位相を実線で示している。このスペクトル位相と、目標とする副次ピークが無い場合のスペクトル位相、すなわち、設定スペクトル位相との差分を位相補償する第1回の位相補償ループ後の出力光スペクトル位相を荒い点線で示している。さらに、第1回の位相補償ループ後の出力光スペクトル位相と設定スペクトル位相との差分を位相補償した第2回の位相補償ループ後の出力光スペクトル位相を細かい点線で示している。さらに、第2回の位相補償ループ後の出力光スペクトル位相と設定スペクトル位相との差分を位相補償した第3回の位相補償ループ後の出力光スペクトル位相を太い実線で示している。
【0039】
図14(b)に示したように、第3回の位相補償ループ後には、時間領域で副次ピークの無い超短光パルスが得られれた。
本実施例における1回の位相補償ループに要する時間は、スペクトロメータによる干渉像イメージをCCDを用いてデジタルデーターに変換する時間が0.1~10秒程度であり、このデジタルデーターからスペクトル位相を再構築し、設定スペクトル位相との差分を導出するコンピューター時間が0.3秒、この差分位相を基に空間位相変調器を制御する時間が0.8秒であった。
図14から、本発明の装置によれば、極めて短い時間内に目標とする波形整形ができることがわかる。
【0040】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明によれば、光強度が小さい、または位相の時間的揺らぎが大きい一般のレーザー光源を用いた場合にも、自律的に超短光パルス圧縮、超短光パルス位相補償、及び超短光パルス波形整形を行うことができる。
したがって、本発明を、超短光パルスを用いた自然法則の解明や新たな技術の創出、超短光パルス位相補償技術を用いた各種変調分光法や光通信、また、超短光パルス波形整形技術を用いた化学反応素過程の解明や生体反応メカニズムの解明に用いれば極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自律型超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置の構成を示す図である。
【図2】周波数変換部8dの詳細構成を示す図である。
【図3】フィードバック位相補償の具体的アルゴリズムを示すフローチャートである。
【図4】2つのレプリカパルスをスペクトル・シアーする原理を示す図である。
【図5】干渉像D(ω)の一例を示す図である。
【図6】スペクトル位相の再構築の手順を示すフローチャートである。
【図7】本実施例に用いた入力光パルスの特性及び生成方法を示す図である。
【図8】2つのレプリカパルスのスペクトル・シアー、及び干渉像の実測値を示すもので、(a)はテスト光パルス1の結果を、(b)はテスト光パルス2の結果を示すグラフである。
【図9】図8の干渉像から再構築したスペクトル位相φ(ν)を示す図であり、(a)はテスト光パルス1の再構築スペクトル位相の、(b)はテスト光パルス2の再構築位相のグラフである。なお、図中、入力光パルスをフーリエ変換して求めたスペクトル強度|E(ν)|も示している。
【図10】変形SPIDER法と従来のSPIDER法のSPIDER信号強度(D(ω))の比較を示す図であり、(a)の横軸は入力光パルスのエネルギーを、縦軸はSPIDER信号強度(D(ω))を示している。
【図11】変形SPIDER法における信号強度のチャープ光パルスのエネルギー依存性を示す図である。
【図12】変形SPIDER法による広帯域光パルスの再構築を示す図であり、(a)はレプリカパルス1,2のフーリエスペクトルと変形SPIDER信号を示し、(b)は変形SPIDER信号を用いて再構築したスペクトル位相φ(ν)と、入力光パルスのスペクトル強度|E(ν)|を示し、(c)はスペクトル位相φ(ν)とスペクトル強度|E(ν)|から再構築した時間軸領域の入力光パルスの強度|E(t)|、及び位相φ(t)を示す。
【図13】変形SPIDER法による超広帯域光パルスの再構築を示す図であり、(a)はレプリカパルス1,2のフーリエスペクトルと変形SPIDER信号を示し、(b)は変形SPIDER信号を用いて再構築したスペクトル位相φ(ν)と、入力光パルスのスペクトル強度|E(ν)|を示し、また、(c)はスペクトル位相φ(ν)とスペクトル強度|E(ν)|から再構築した、時間軸領域の入力光パルスの強度|E(t)|、及び位相φ(t)を示す。
【図14】超短光パルスの波形整形の例を示す図である。
【符号の説明】
1 自律型超短光パルス圧縮・位相補償・波形整形装置
2 光パルス光源
3 光パルス
4 スペクトル空間分散装置
4a 凹面鏡
4b ミラー
4c グレーティング
5 空間位相変調器
6 合波装置
6a 凹面鏡
6b ミラー
6c グレーティング
7 出力光パルス
7a 分割出力光パルス
8 変形SPIDER装置
8a チャープ用光パルス光源
8b チャープ用光パルス
8c 遅延器
8d 周波数変換部
8e スペクトロメータ
8f ICCD
9 フィードバック装置
9a 再構築用コンピュータ
9b 空間位相変調器制御用コンピュータ
21 光入射端
22 光入射端
23 ハーフミラー
24a レプリカ光パルス
24b レプリカ光パルス
25,26 遅延器
27 ハーフミラー
28 分散媒質
29 チャープ光パルス
30 放物線ミラー
31 非線形光学結晶
32 スペクトル・シアーされたレプリカ光パルス
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
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【図12】
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【図13】
12
【図14】
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