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明細書 :新規な化合物及び抗マラリア剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4289911号 (P4289911)
公開番号 特開2003-335774 (P2003-335774A)
登録日 平成21年4月10日(2009.4.10)
発行日 平成21年7月1日(2009.7.1)
公開日 平成15年11月28日(2003.11.28)
発明の名称または考案の名称 新規な化合物及び抗マラリア剤
国際特許分類 C07D 323/00        (2006.01)
A61K  31/357       (2006.01)
A61P  33/06        (2006.01)
FI C07D 323/00
A61K 31/357
A61P 33/06
請求項の数または発明の数 3
全頁数 21
出願番号 特願2003-065615 (P2003-065615)
出願日 平成15年3月11日(2003.3.11)
優先権出願番号 2002065870
優先日 平成14年3月11日(2002.3.11)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成16年4月30日(2004.4.30)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】綿矢 有佑
【氏名】金 惠淑
【氏名】野島 正朋
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
審査官 【審査官】渕野 留香
参考文献・文献 特開2000-229965(JP,A)
Tetrahedron Letters 41(2000)p4681-4684
新・薬剤学総論(改訂第3版)(1987)(株)南江堂 p273-280
調査した分野 C07D 323/00
A61K 31/357
A61P 33/06
CA(STN)
REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
一般式(I)
【化1】
JP0004289911B2_000014t.gif
[式中、Zは12員環の未置換脂環式炭化水素基を表し、R0、カルボキシ基、一般式(II)
【化2】
JP0004289911B2_000015t.gif
[式中、R1は未置換又はメチル基若しくはエチル基を置換基として有していてもよい炭素数1~3のアルキル基を表す。]で示されるアルコキシカルボニル基、一般式(III)
【化3】
JP0004289911B2_000016t.gif
[式中、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、未置換又は水酸基を置換基として有していてもよいメチル基若しくはエチル基を表す。]で示されるカルバモイル基、又は一般式(IV)
【化4】
JP0004289911B2_000017t.gif
{式中、Yは、エチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基のいずれかを表すアルキレン基、一般式(V)
【化5】
JP0004289911B2_000018t.gif
、又は、フェニレン基を表す}のいずれかである水溶性の官能基を表し、mは1を表し、nは5又は6を表す。]で示される化合物。
【請求項2】
一般式(I)中、R0がカルボキシ基又は一般式(IV)のいずれかである請求項1に記載される化合物の薬学的に許容し得る塩。
【請求項3】
一般式(I)
【化6】
JP0004289911B2_000019t.gif

(式中、Zは、12員環の未置換脂環式炭化水素基を表し、R0は、水酸基を表し、mは1を表し、nは6を表す)で示される化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗マラリア剤。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な化合物や、マラリア原虫類による感染症の予防及び治療に有用な抗マラリア剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
マラリアは、プラスモジウム(Plasmodium)属に属する原虫の感染によって起こる伝染性疾患で、ハマダラ蚊を媒介として感染し、間欠的な熱発作、貧血、脾腫等の症状を示す。マラリアは、近年、自然や環境の変化に伴い猛威を振るい始めており、その推定感染患者数は年間3億~5億人、年間死亡者数は、150~300万人という世界的にも重要な疾病である。ヒトに感染するマラリア原虫には、アフリカ、アジア、ラテンアメリカの熱帯地域全体に分布する熱帯熱マラリア原虫(P. falciparum)、世界各地の熱帯と温帯の一部に分布する三日熱マラリア原虫(P. vivax)、世界各地に分布する四日熱マラリア原虫(P. malariae)及び主として熱帯西アフリカに分布する卵形マラリア原虫(P. ovale)等の原虫が挙げられるが、その中でも熱帯熱マラリアがもっとも重篤な症状を示し、発症後1~2週間で脳症、腎症、溶血性貧血、肺水腫、心臓障害、重症腸炎などを伴って容易に重症マラリアに進展し、短期間内に多臓器不全を示し宿主を死に至らしめることが多い。
【0003】
近年、殺虫剤耐性の蚊や、マラリアの特効薬として多用されてきたクロロキン耐性のマラリア原虫が出現し、その対策が困難となっていることに加え、地球温暖化に伴うマラリア感染危険地域の拡大、即ち、一部温帯地域への蔓延が検出され、マラリア制圧は専門機関としてのWHOのみならず、グローバルな交流が日常化した今日では、全人類にとって益々重要な問題になりつつある。抗マラリア剤又は抗マラリア化合物としては、2個の複素環を含有するオルソ-縮合系の新規化合物(例えば、特許文献1参照。)や、ICAM-1発現抑制作用を有する化合物を有効成分として含有する抗マラリア剤(例えば、特許文献2参照。)や、5'-o-スルファモイル-2-クロロアデノシン等のヌクレオシド誘導体等を有効成分として含有する抗マラリア剤(例えば、特許文献3参照。)や、トリコテセン類等を有効成分として含有する抗マラリア剤(例えば、特許文献4参照。)や、シクロプロジギオシン等を有効成分とする抗マラリア剤(例えば、特許文献5参照。)や、リミノフェナジンを有効成分として含有するマラリア予防又は治療薬(例えば、特許文献6参照。)や、キノリン誘導体等を有効成分として含有する抗マラリア薬耐性克服剤(例えば、特許文献7参照。)や、5-フルオロオロチン酸及びスルファモノメトキシンを有効成分とする抗マラリア剤(例えば、特許文献8参照。)等が知られている。
【0004】
【特許文献1】
特開2000-7673号公報
【特許文献2】
特開平11-228446号公報
【特許文献3】
特開平11-228422号公報
【特許文献4】
特開平11-228408号公報
【特許文献5】
特開平10-265382号公報
【特許文献6】
特開平8-231401号公報
【特許文献7】
特開平8-73355号公報
【特許文献8】
特開平8-59471号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
一方、現在使用されている薬剤の代表的なクロロキンに耐性をもつマラリア原虫に対して、プリマキン、メフロキン等のクロロキン類似化合物や、アルテミシニン等のペルオキシ環状化合物等が有効であり、特に、キク科植物から単離されるトリオキサ構造を持つアルテミシニンが治療薬として使われていた。しかしながら、アルテミシニン等に対しても耐性を示すマラリア原虫がすでに現れており、新規なマラリア剤に対して次々に耐性を有するマラリア原虫が出現し、薬剤耐性マラリア原虫の拡散が化学療法の問題となっている。薬剤耐性マラリアに唯一有効な薬剤としてキニーネが存在するが、腎不全を引き起こす可能性が極めて高く、現在の医療水準から見てリスクの高い治療薬である。このような状況からも、抗マラリア活性が高くかつ安全性の高い新薬の開発が望まれている。本発明に類似の化合物としては、例えば特公昭59-46266号公報、特開平8-67704号公報等に記載の有機ペルオキシド化合物が公知であるが、これらはポリマー製造の際の開始剤として使用されているのみである。
【0006】
本発明の課題は、各種抗マラリア剤に耐性を有するマラリア原虫に対して有効であり、副作用が少なく、オリーブオイル等の有機溶媒に対する溶解度を向上させ、また、水に対する溶解度を向上させ、経口薬のみならず注射液にも適用することができる新規な化合物や、これらを有効成分として含有する抗マラリア剤を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、各種抗マラリア剤に耐性を有するマラリア原虫に対して有効であり、副作用が少ない抗マラリア剤として、ペルオキシド誘導体が有用であることを既に報告している(特開平12-229965号公報)。かかるペルオキシド誘導体は優れた抗マラリア活性を示すものの、難溶性であり、経口でしか投与できなかったが、本発明者らは、かかるペルオキシド誘導体に水溶性の官能基を導入し、難溶性の改善を図り、さらに、これらの誘導体をエステル化して得られるエステルが水溶性を有し、経口のみならず注射薬として使用することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、一般式(I)
【0009】
【化6】
JP0004289911B2_000002t.gif【0010】
[式中、Zは12員環の未置換脂環式炭化水素基を表し、R0、カルボキシ基、一般式(II)
【0011】
【化7】
JP0004289911B2_000003t.gif【0012】
{式中、R1は未置換又はメチル基若しくはエチル基を置換基として有していてもよい炭素数1~3のアルキル基を表す。}で示されるアルコキシカルボニル基、一般式(III)
【0013】
【化8】
JP0004289911B2_000004t.gif【0014】
{式中、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、未置換又は水酸基を置換基として有していてもよいメチル基若しくはエチル基を表す。}で示されるカルバモイル基、又は一般式(IV)
【0015】
【化9】
JP0004289911B2_000005t.gif【0016】
式中、Yは、エチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基のいずれかを表すアルキレン基、一般式(V)
【0017】
【化10】
JP0004289911B2_000006t.gif【0018】
、又は、フェニレン基を表す}のいずれかである水溶性の官能基を表し、mは1を表し、nは5又は6を表す。]で示される化合物(請求項1)に関する。
また、本発明は、一般式(I)中、R0がカルボキシ基又は一般式(IV)のいずれかである請求項1に記載される化合物の薬学的に許容し得る塩(請求項2)や、一般式(I)
【化14】
JP0004289911B2_000007t.gif
(式中、Zは、12員環の未置換脂環式炭化水素基を表し、R0は、水酸基を表し、mは1を表し、nは6を表す)で示される化合物を有効成分として含有することを特徴とする抗マラリア剤(請求項3)に関する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の新規な化合物は、一般式(I)で示される化合物であり、式中、Zは未置換若しくは置換基を有してもよい脂環式炭化水素基を表し、R0は水溶性の官能基を表し、mは~6のいずれかの整数を表し、nは0~10のいずれかの整数を表す化合物であれば、特に限定されるものではなく、好ましくは、一般式(I)中、Zが置換基として低級アルキル基を有していてもよい炭素数6~12の脂環式炭化水素基を表す化合物であり、更に好ましくは、Zが6員環、7員環、10員環又は12員環のいずれかを表す化合物である。また、一般式(I)中、R0が水酸基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又は未置換若しくは置換基を有してもよいカルバモイル基のいずれかを表し、nはR0が水酸基を表すとき1~10のいずれかの整数、R0がカルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又は未置換若しくは置換基を有してもよいカルバモイル基のいずれかを表すとき0~9のいずれかの整数を表す化合物であることが好ましく、更に好ましくは、一般式(I)中、R0が、一般式(II)で示されるアルコキシカルボニル基を表す化合物であって、式中、R1は未置換若しくは置換基を有していてもよい炭素数1~3のアルキル基を表す化合物であるか、あるいは、一般式(I)中、R0が、一般式(III)で示されるカルバモイル基を表す化合物であって、式中、R2及びR3はそれぞれ独立して、水素原子、未置換若しくは置換基を有していてもよいメチル基又はエチル基を表す化合物であるか、更に好ましくは、一般式(III)中、R2及びR3が、それぞれ独立して置換基として水酸基等を有していてもよいメチル基又はエチル基を表す化合物である。
【0020】
また、本発明の新規な化合物は、一般式(I)中、R0が、一般式(IV)を表す化合物であり、好ましくは、一般式(IV)中、Yが、エチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等のいずれかを示すアルキレン基で表される化合物であるか、あるいは、一般式(IV)中、Yが、一般式(V)を表す化合物であるか、あるいは、一般式(IV)中、Yが、フェニレン基を表す化合物であることが好ましい。
また、本発明の抗マラリア剤は、上記新規な化合物や、その薬学的に許容し得る塩を有効成分として含有するものである。
【0021】
本発明の一般式(I)において、Zは、未置換若しくは置換基を有していてもよい脂環式炭化水素基を表し、脂環式炭化水素基であれば特に限定されるものではないが、飽和脂環式炭化水素基が好ましく、脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピリデン基、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロへプチリデン基、シクロオクチリデン基、シクロノニリデン基、シクロデシリデン基、シクロウンデシリデン基、シクロドデシリデン基等の単環の脂環式炭化水素基や、ビシクロブチリデン基、ビシクロオクチリデン基、ビシクロノニリデン基、ノルボルニリデン基、アダマンチリデン基等の架橋環又は多環の脂環式炭化水素基等を挙げることができる。これらのうちで員環数が小さいものほど、一般式(I)で表される化合物の水溶性を向上させることができるが、脂環式炭化水素基として、好ましくは、炭素数6~12の単環の脂環式炭化水素基又はアダマンチリデン基が挙げられ、より好ましくは、炭素数が6、7、10又は12の脂環式炭化水素基であり、具体的には、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロデシリデン基、シクロドデシリデン基又はアダマンチリデン基等を挙げることができる。
【0022】
上記Zの脂環式炭化水素基が有してもよい置換基としては、特に制限されるものではなく、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、直鎖又は側鎖を有するペンチル基等の直鎖状又は分枝状のアルキル基や、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、直鎖又は側鎖を有するペンチルオキシ基等の炭素数1~6の直鎖状又は分枝状の低級アルコキシ基等を例示することができ、好ましくは炭素数1~6の低級アルキル基を挙げることができ、より好ましくはtert-ブチル基が挙げられる。
【0023】
本発明の一般式(I)において、オキソ環は、上記Zで表される脂環式炭化水素基とスピロ炭化水素を構成するものであり、スピロ原子に2つのペルオキシ基が結合した1,2,4,5-テトロキサン環を有する7~13員環の脂環式炭化水素であれば、特に限定されるものではない。
【0024】
上記一般式(I)におけるオキソ環に結合する置換基としては、R0で表される水溶性の官能基が直接又は炭素鎖を介してオキソ環に結合されるものであれば、特に限定されるものではないが、一般式(I)中、R0で表される水溶性の官能基として、水酸基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又は未置換若しくは置換基を有してもよいカルバモイル基等が好ましい。これらの官能基が、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又は未置換若しくは置換基を有してもよいカルバモイル基の場合は、オキソ環に直接、あるいは炭素鎖を介してその末端に結合されるものが好ましく、水酸基の場合は、炭素鎖の末端に結合されてオキソ環に結合されるものが好ましい。これらの水溶性の官能基R0が炭素鎖を介してオキソ環に結合される場合の炭素鎖としては、一般式(I)中、R0が水酸基を表すときnが1~10のいずれかの整数を表すことが好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デシレン基の炭素数1~10のアルキレン基が挙げられ、一般式(I)中、R0がカルボキシ基、アルコキシカルボニル基、又は未置換若しくは置換基を有していてもよいカルバモイル基のいずれかを表すときnは0~9のいずれかの整数を表すことが好ましく、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基の炭素数9以下のアルキレン基が挙げられ、このような置換基を有する一般式(I)で表される化合物は、オリーブオイル等の有機性液体に対する溶解度が向上される。かかる炭素鎖のうちでは、特に、炭素数の小さいものほど、一般式(I)で表される化合物の水溶性を向上することができるため、好ましい。
【0025】
上記一般式(I)におけるオキソ環に結合する置換基は、オキソ環中のペルオキシ基に対して、α位又はβ位、即ち、1,2,4,5-テトロキサン環の6位又は7位に結合するのが好ましく、この位置に置換基が結合された一般式(I)で表される化合物は、オキソ環の員環数が大きいものであっても溶媒に対する溶解性が向上される。
【0026】
また、上記一般式(I)におけるR0で表される官能基としては、水酸基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基等であることが好ましく、アルコキシカルボニル基としては、特に制限されるものではないが、一般式(II)中、R1が未置換若しくは置換基を有していてもよい炭素数1~3のアルキル基を有するアルコキシカルボニル基であることが好ましい。このようなアルコキシカルボニル基として、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、iso-プロピルオキシカルボニル基等を挙げることができ、また、置換基としてメチル基、エチル基等の低級アルキル基を挙げることができ、このような置換基を有するアルコキシカルボニル基として、具体的には、tert-ブトキシカルボニル基等を例示することができる。
【0027】
また、上記一般式(I)におけるR0で表される官能基として未置換若しくは置換基を有していてもよいカルバモイル基は、特に制限されるものではないが、一般式(III)中、R2及びR3がそれぞれ独立して、水素原子、未置換若しくは置換基を有していてもよいメチル基、エチル基を有するカルバモイル基であることが好ましい。このようなカルバモイル基として、具体的には、R2及びR3が共に水素原子である未置換のカルバモイル基、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、N,N-ジエチルカルバモイル基、N,N-メチルエチルカルバモイル基等を例示することができる。メチル基、エチル基の置換基としては水酸基等が挙げられ、置換基を有するカルバモイル基として、具体的には、N-ヒドロキシメチルカルバモイル基、N,N-ビス(ヒドロキシメチル)カルバモイル基、N-ヒドロキシエチルカルバモイル基、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)カルバモイル基、N,N-ヒドロキシメチルヒドロキシエチルカルバモイル基等を例示することができる。カルバモイル基を有する一般式(I)で表される化合物は、水酸基を有する一般式(I)で表される化合物と比較して一般に水溶性は低下するが、N,N-ビス(ヒドロキシエチル)カルバモイル基を有するものは水溶性が著しく改善され、酸性から中性水に対しても溶解性が向上されるため、好ましい。
【0028】
また、上記一般式(I)におけるR0で表される官能基としては、一般式(I)中、R0が水酸基を表す場合における一般式(I)で表されるアルコールがジカルボン酸によりエステル化された化合物におけるモノエステル基であって、一般式(IV)で表される官能基であることが好ましい。一般式(IV)中、Yはアルキル基であることが好ましく、かかる官能基は、一般式(I)中、R0が水酸基を表す場合における一般式(I)で表されるアルコールと脂肪族飽和ジカルボン酸とが結合して形成されるエステル基であり、かかるエステル基を形成する脂肪族飽和ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等を挙げることができるが、特に、一般式(IV)中、Yがエチレン基、テトラエチレン基、ヘキサメチレン基のいずれかで表される炭素数が2,4,6であるエステル基をそれぞれ形成するコハク酸、アジピン酸、スベリン酸等の偶数酸が好ましい。
【0029】
また、上記一般式(IV)で表される官能基として、Yが一般式(V)で示されるエステル基を表すことが好ましい。かかる官能基は、一般式(I)中、R0が水酸基を表す場合における一般式(I)で表されるアルコールと脂肪族不飽和ジカルボン酸とが結合して形成されるエステル基であり、かかるエステル基を形成する脂肪族不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができる。
【0030】
更に、上記一般式(IV)で表される官能基として、Yがフェニレン基を表すことが好ましい。かかる官能基は、一般式(I)中、R0が水酸基を表す場合における一般式(I)で表されるアルコールと芳香族ジカルボン酸とが結合して形成されるエステル基であり、かかるエステル基を形成する芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を挙げることができる。
【0031】
また、本発明の新規化合物の薬学的に許容し得る塩としては、上記の化合物と薬学的に許容し得る塩であれば、特に制限されるものではないが、上記一般式(I)で表される化合物が塩となることにより、これらの化合物の水溶性が向上されるものであればいずれのものであってもよく、上記一般式(I)中、R0がカルボキシ基、若しくはアルコキシカルボニル基、又は一般式(IV)で示されるエステル基を表すいずれかの化合物の薬学的に許容し得る塩が好ましく、かかる塩としては、上記一般式(I)中、R0がカルボキシ基、若しくはアルコキシカルボニル基、又は一般式(IV)で示されるエステル基を表すいずれかの化合物が、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン等の塩基とそれぞれ結合した、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等を挙げることができる。かかる塩は、化合物の水溶性を著しく向上させることができ、特に一般式(I)中、R0が一般式(IV)で示されるエステル基を表す化合物のナトリウム塩は水溶性の向上が顕著であり、好ましい。
【0032】
このような一般式(I)で表される化合物として、具体的には、10-ヒドロキシメチル-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10-カルボキシ-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10-メトキシカルボニル-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10-カルバモイル-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10-(N,N-ビスヒドロオキシエチル)カルバモイル-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、6-(7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデシ-10-イル)ヘキサン-1-オール、5-(7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデシ-10-イル)ペンタン-1-カルボン酸、5-(7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデシ-10-イル)ペンタン-1-カルボン酸メチル、5-(7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデシ-10-イル)ペンタン-1-カルボキサミド、5-(7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデシ-10-イル)ペンタン-1-(N,N-ビスヒドロオキシエチル)アミド等を例示することができる。
【0033】
更に、一般式(I)で表される化合物として、具体的には、11-ヒドロキシメチル-8,9,13,14-テトラオキサスピロ[6.7]テトラデカン、11-カルボキシ-8,9,13,14-テトラオキサスピロ[6.7]テトラデカン、11-メトキシカルボニル-8,9,13,14-テトラオキサスピロ[6.7]テトラデカン、11-カルバモイル-8,9,13,14-テトラオキサスピロ[6.7]テトラデカン、11-(N,N-ビスヒドロオキシエチル)カルバモイル-8,9,13,14-テトラオキサスピロ[6.7]テトラデカン、6-(8,9,13,14-テトラオキサスピロ[6.7]テトラデシ-11-イル)ヘキサン-1-オール、5-(8,9,13,14-テトラオキサスピロ[6.7]テトラデシ-11-イル)ペンタン-1-カルボン酸、5-(8,9,13,14-テトラオキサスピロ[6.7]テトラデシ-11-イル)ペンタン-1-カルボン酸メチル、5-(8,9,13,14-テトラオキサスピロ[6.7]テトラデシ-11-イル)ペンタン-1-カルボキサミド、5-(8,9,13,14-テトラオキサスピロ[6.7]テトラデシ-11-イル)ペンタン-1-(N,N-ビスヒドロオキシエチル)アミド、4-ヒドロキシメチル-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.9]ヘプタデカン、4-カルボキシ-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.9]ヘプタデカン、4-メトキシカルボニル-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.9]ヘプタデカン、4-カルバモイル-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.9]ヘプタデカン、4-(N,N-ビスヒドロオキシエチル)カルバモイル-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.9]ヘプタデカン、6-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.9]ヘプタデシ-4-イル)ヘキサン-1-オール、5-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.9]ヘプタデシ-4-イル)ペンタン-1-カルボン酸、5-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.9]ヘプタデシ-4-イル)ペンタン-1-カルボン酸メチル、5-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.9]ヘプタデシ-4-イル)ペンタン-1-カルボキサミド、5-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.9]ヘプタデシ-4-イル)ペンタン-1-(N,N-ビスヒドロオキシエチル)アミド等を例示することができる。
【0034】
更に、一般式(I)で表される化合物として、具体的には、4-ヒドロキシメチル-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4-カルボキシ-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4-メトキシカルボニル-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4-カルバモイル-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4-(N,N-ビスヒドロオキシエチル)カルバモイル-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、6-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ-4-イル)ヘキサン-1-オール、5-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ-4-イル)ペンタン-1-カルボン酸、5-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ-4-イル)ペンタン-1-カルボン酸メチル、5-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ-4-イル)ペンタン-1-カルボキサミド、5-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ-4-イル)ペンタン-1-(N,N-ビスヒドロオキシエチル)アミド、3-ヒドロキシメチル-1,2,7,8-テトラオキサスピロ[8.11]イコサン、3-カルボキシ-1,2,7,8-テトラオキサスピロ[8.11]イコサン、3-メトキシカルボニル-1,2,7,8-テトラオキサスピロ[8.11]イコサン、3-カルバモイル-1,2,7,8-テトラオキサスピロ[8.11]イコサン、3-(N,N-ビスヒドロオキシエチル)カルバモイル-1,2,7,8-テトラオキサスピロ[8.11]イコサン、6-(1,2,7,8-テトラオキサスピロ[8.11]イコシ-3-イル)ヘキサン-1-オール、5-(1,2,7,8-テトラオキサスピロ[8.11]イコシ-3-イル)ペンタン-1-カルボン酸、5-(1,2,7,8-テトラオキサスピロ[8.11]イコシ-3-イル)ペンタン-1-カルボン酸メチル、5-(1,2,7,8-テトラオキサスピロ[8.11]イコシ-3-イル)ペンタン-1-カルボキサミド、5-(1,2,7,8-テトラオキサスピロ[8.11]イコシ-3-イル)ペンタン-1-(N,N-ビスヒドロオキシエチル)アミド等や、これらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等を例示することができる。
【0035】
また、一般式(I)におけるR0が水酸基を表す化合物のエステルとして、具体的には、10-(5'-カルボキシ-3'-オキソ-2'-オキシペンチル)-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10-(10'-カルボキシ-8'-オキソ-7'-オキシデシル)-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10-(7'-カルボキシ-3'-オキソ-2'-オキシヘプチル)-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10-(12'-カルボキシ-8'-オキソ-7'-オキシドデシル)-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10-(9'-カルボキシ-3'-オキソ-2'-オキシノチル)-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10-(14'-カルボキシ-8'-オキソ-7'-オキシテトラデシル)-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10-(5'-カルボキシ-5'-エン-3'-オキソ-2'-オキシペンチル)-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10-(10'-カルボキシ-10'-エン-8'-オキソ-7'-オキシデシル)-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、10-(p-ベンゾイルカルボニル)-7,8,12,13-テトラオキサスピロ[5.7]トリデカン、4-(5'-カルボキシ-3'-オキソ-2'-オキシペンチル)-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4-(10'-カルボキシ-8'-オキソ-7'-オキシデシル)-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4-(7'-カルボキシ-3'-オキソ-2'-オキシヘプチル)-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4-(12'-カルボキシ-8'-オキソ-7'-オキシドデシル)-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4-(9'-カルボキシ-3'-オキソ-2'-オキシヘプチル)-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4-(14'-カルボキシ-8'-オキソ-7'-オキシテトラデシル)-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4-(5'-カルボキシ-5'-エン-3'-オキソ-4'-オキシペンチル)-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4-(10'-カルボキシ-10'-エン-8'-オキソ-7'-オキシデシル)-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン、4-(p-ベンゾイルカルボニル)-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカンや、これらのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩等を例示することができる。
【0036】
このような一般式(I)で表される化合物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、式(VI)に示すジカルボン酸のジエステル等を出発物質(i)として、以下の工程により生成されるジハロゲン化合物(viii)と、式(VII)に示す脂環式炭化水素(ix)を出発物質として生成されるビスヒドロキシペルオキシド化合物(x)とを結合してオキシ環を生成する製造方法によることができる。
【0037】
【化11】
JP0004289911B2_000008t.gif【0038】
【化12】
JP0004289911B2_000009t.gif【0039】
ジエステル(i)と、末端にテトラヒドロピラン-2-イルオキシ基(THPO)等のピランの誘導体等の置換基を有するアルキル基R(THPO(CH26)のハロゲン化物(ii)とを、ナトリウムをエタノールに添加して得たナトリウムエトキシドのエタノール溶液等の存在下で反応させ、ジカルボン酸のジエステルに置換基Rを導入する(iii)(工程▲1▼)。工程▲1▼で用いられるハロゲン化物(ii)は、文献記載の方法 [G. Berube, P. Wheeler, C. H. J. Ford, M. Gallant, and Z. Tsaltas, Can. J. Chem., 71, 1327 (1993)] により合成することができ、ハロゲン化物としては、フッ素化物、塩素化物、臭素化物、ヨウ素化物等であってもよいが、臭素化物が好ましい。工程▲1▼の反応は20~80℃の温度範囲、好ましくは、50℃前後で行なうことができ、化合物(i)に対してハロゲン化物(ii)を1~5モル当量、好ましくは1~2モル当量使用し、反応時間は2~5時間が好ましい。得られた化合物(iii)は、通常の分離手段、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製することができる。
【0040】
置換基Rが導入されたジカルボン酸のジエステルを水素化リチウムアルミニウム(LAH)(iv)の存在下、ジオール(v)とする(工程▲2▼)。工程▲2▼は、エーテル等の溶媒の存在下で行なわれるのが好ましく、反応温度は0~50℃の範囲、好ましくは0℃前後で行なうことができる。反応後、反応副生成物のアルミニウム塩はセライトを用いた吸引濾過等で除去することができる。反応に際しては、置換基Rが導入された化合物(iii)に対して水素化リチウムアルミニウム(iv)を1~5モル当量、好ましくは2モル当量使用し、反応時間は1~5時間が好ましい。得られたジオール(v)は、通常の方法、例えば、無水硫酸マグネシウム等で乾燥し、溶媒を減圧留去し、例えばカラムクロマトグラフィー等により反応混合物から容易に単離精製することができる。
【0041】
得られたジオールにピリジン存在下、メタンスルホニルクロリド(vi)を反応させ、ジメシラートとする(vii)(工程▲3▼)。反応温度は0~40℃の範囲、好ましくは0℃前後で行うことができる。反応に際しては、ジオール(v)に対してメタンスルホニルクロリド(vi)を2~10モル当量、好ましくは2~8モル当量使用し、反応時間は1~4時間が好ましい。得られたジメシラート(vii)は、通常の方法、例えば、無水硫酸マグネシウム等で乾燥し、カラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製することができる。
【0042】
更に、工程▲3▼で得られたジメシラートをアルカリ金属ハロゲン化物と反応させジハロゲン化物とする(viii)(工程▲4▼)。工程▲4▼の反応は、アルカリ金属のハロゲン化物としてはヨウ化ナトリウムを用い、ジメチルホルムアミド等の溶媒の存在下で行なわれるのが好ましく、アルカリ金属ハロゲン化物をジメチルホルムアミド等の溶媒に溶解させるために、50~100℃の温度範囲、好ましくは70℃前後に加温した後、30~60℃の温度範囲、好ましくは50℃前後に降下させた後、工程▲3▼において得られたジメシラートを添加して、反応させることができる。反応に際しては、ジメシラート(vii)に対してアルカリ金属ハロゲン化物を2~10モル当量、好ましくは2~4モル当量使用し、反応時間は2~10時間が好ましい。得られたジハロゲン化合物(viii)は、通常の方法、例えば、無水硫酸マグネシウム等で乾燥し、カラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製することができる。
【0043】
一方、式(VII)で表されるビスヒドロペルオキシド化合物(x)の合成は、J.Org. Chem., 62, 4949 (1997) 記載に準じた方法によることができる。すなわち、メトキシメチレン基を有する脂環式炭化水素を出発物質(ix)とし、化合物(ix)を過酸化水素存在下、適当な溶媒中でオゾンと反応させることによりビスヒドロペルオキシド化合物(x)を得ることができる。溶媒としては反応に関与しないものであれば特に制限はなく、エーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等を例示でき、好ましくはエーテルである。反応に際しては、30~100重量%の過酸化水素を使用することができ、化合物(ix)に対して、過酸化水素を1~10モル当量、好ましくは1~3モル当量使用し、オゾンを0.5~5モル当量、好ましくは1~2モル当量使用することができる。反応温度は-70~20℃であることが好ましく、反応時間は5~30分とすることができる。得られたビスヒドロペルオキシド化合物(x)は、通常の分離手段、例えばカラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製することができるが、単離又は単離することなく上記方法により得られるジメシラートとの反応に使用することができる。
【0044】
上記方法によって得られたビスヒドロペルオキシド化合物(x)とジハロゲン化物(viii)との反応は、既報告の方法 [K. J. McCullough, Y. Nonami, A. Masuyama, M. Nojima, H.-S. im, and Y. Wataya, Tetrahedron Lett., 40, 9151-9155 (1999)] に準じて行なうことができる。即ち、式(VIII)で表される酸化銀を含有する溶媒に、ビスヒドロペルオキシド化合物(x)を含有する溶媒を添加して、0~40℃の温度範囲、好ましくは室温で反応させることができる。反応に際しては、溶媒として、酢酸エチル等を使用することができ、ビスヒドロペルオキシド化合物(x)に対してジハロゲン化物を1~2モル当量、好ましくは1.5モル当量使用し、反応時間は2~15時間とすることができる。反応副生成物のハロゲン化銀はセライトを用いた吸引濾過により除去し、溶媒は減圧留去し、置換基Rを有するテトラキソ環化合物(xi)は、通常の方法、例えば、カラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製することができる。
【0045】
【化13】
JP0004289911B2_000010t.gif【0046】
上記方法により得られるテトラキソ環化合物(xi)の置換基Rに水酸基を導入するには、置換基Rが末端にテトラヒドロピラン-2-イルオキシル基等のピランの誘導体等を有するアルキル基である場合、酢酸水溶液等の存在下、室温で末端基を水酸基に置換することができる。反応に際しては、テトラキソ環化合物(xi)に対して酢酸を50~500モル当量使用し、反応時間は10~30時間とすることができる。反応終了後、反応副生成物のハロゲン化銀をセライトを用いた吸引濾過により除去し、溶媒を減圧留去し、置換基Rの末端に水酸基が導入されたヒドロキシアルキルテトラキソ環化合物(xii)を得ることができる。ヒドロキシアルキルテトラキソ環化合物(xii)は、通常の方法、例えば、無水硫酸マグネシウム等で乾燥し、カラムクロマトグラフィー、再結晶等により反応混合物から容易に単離精製することができる。
【0047】
更に、上記方法により得られたヒドロキシアルキルテトラキソ環化合物(xii)をコハク酸等のジカルボン酸によりエステル化して、一般式(IV)で表されるエステルを製造することができる。ヒドロキシアルキルテトラキソ環化合物(xii)と、ジカルボン酸の反応は、硫酸、塩化水素等の酸触媒、あるいはピリジン等塩基触媒の存在下等公知の方法に準じて行なうことができる。反応は室温で行なうことができ、ヒドロキシアルキルテトラキソ環化合物(xii)に対してジカルボン酸を1~2モル当量、好ましくは1.5モル当量使用し、反応時間は10~15時間とすることができる。
【0048】
更に、一般式(I)で表される化合物の薬学的に許容し得る塩の製造方法としては、上記方法により得られたヒドロキシアルキルテトラキソ環化合物(xii)等を炭酸水素ナトリウム水溶液等一般式(I)で表される化合物と塩を構成する金属イオン等を含有する水溶液に添加、攪拌等の製造方法を挙げることができ、室温であるいは、必要に応じて適宜加熱することもできる。
【0049】
上記一般式(I)で表される化合物や、その塩を、マラリア原虫類による感染症の予防、抑制及び治療に使用する場合、上記の化合物やその塩の1種又は2種以上を混合して適宜使用することができ、投与経路としては、経口に限らず、水溶性が向上されるため、皮下注射、静脈注射、局所投与等のいずれも選択することができる。また、製剤としては、通常、製薬的に許容される担体、賦形剤、その他添加剤を用いて製造した散剤、錠剤、細粒剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤等の経口剤、点眼剤、注射剤、坐剤等の非経口剤を挙げることができる。製薬的に許容される担体や賦形剤、その他添加剤としては、グルコース、ラクトース、ゼラチン、マンニトール、でんぷんペースト、トリケイ酸マグネシウム、コーンスターチ、ケラチン、コロイド状シリカ等があり、さらには、安定剤、増量剤、着色剤及び芳香剤の様な補助剤を含有してもよい。これらの製剤は、各々当業者に公知慣用の製造方法により製造できる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
実施例1;2-[6-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)ヘキシル]マレイン酸ジエチルエステル(iii)の合成
還流冷却管、滴下ロートを装備した300ml四つ口ナスフラスコにエタノール 75mlを入れ、次いで薄く切ったナトリウム805mg(35.00mmol)を徐々に加えた。このナトリウムエトキシドのエタノール溶液を約50℃に保ち、マロン酸ジエチル5600mg(35.00mmol)を滴下ロートを用いて約1時間かけて滴下し、ついで文献記載の方法 [G. Berube, P. Wheeler, C. H. J. Ford, M. Gallant, and Z. Tsaltas, Can. J. Chem., 71, 1327 (1993)] により別途合成した2-(6-ブロモヘキシルオキシ)テトラヒドロピラン927mg(35.00mmol)を同様に約1時間かけて滴下し、2時間還流撹拌した。反応終了後40℃以下で溶媒を減圧留去し、残渣を水にあけ、エーテルで二回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、40℃ 以下で溶媒を減圧留去した。残渣のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン-エーテル、85:15によって展開される留分として、ジエステル(iii)9006mg(収率75%)を得た。
An oil; 1H NMR δ 1.27 (t, J = 7.3 Hz, 6 H), 1.3-2.0 (m, 16 H), 3.31 (t, J = 6.6 Hz, 1 H), 3.38 (m, 1 H), 3.50 (m, 1 H), 3.74 (m, 1 H), 3.87 (m, 1 H), 4.19 (q, J = 7.3 Hz, 4 H), 4.58 (t, J = 3.5 Hz, 1 H), 13C NMR δ 14.02, 19.63, 25.41, 25.90, 27.21, 28.61, 29.00, 29.54, 30.69, 51.95, 61.19, 62.28, 67.44, 98.78, 169.51.
【0051】
実施例2;2-[6-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)ヘキシル]プロパン-1,3-ジオール(v)の合成
還流冷却管、滴下ロートを装備した300ml四つ口ナスフラスコに水素化リチウムアルミニウム (以下、LAHと称する。)2280mg(60.00mmol)とエーテル100mlの懸濁溶液を調製し、実施例1で得られたジエステル(iii)10.32g(30mmol)を0℃でゆっくり滴下した後、1時間室温で撹拌した。反応終了後水酸化ナトリウム水溶液を加え、生じたアルミニウム塩をセライトを用いた吸引濾過で除去し、濾液をエーテルで二回抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、40℃以下で溶媒を減圧留去した。残渣のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン-エーテル、0:100によって展開される留分として、ジオール(v)5123mg(収率66%)を得た。
An oil; 1H NMR δ 1.2-1.9 (m, 17 H), 2.44 (br s, 2 H), 3.35 (d, J = 6.6 Hz, 2 H), 3.38 (m, 1 H), 3.41 (d, J = 6.6 Hz, 2 H), 3.50 (m, 1 H), 3.74 (m, 1 H), 3.87 (m, 1H), 4.57 (t, J = 3.5 Hz, 1 H), 13C NMR δ 19.54, 25.29, 25.93, 26.96, 27.53, 29.47, 29.53, 30.59, 41.76, 62.32, 65.70, 67.53, 98.80.
【0052】
実施例3;2-メタンスルホニルオキシメチル-8-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)オクチルエステル(vii)の合成
100mlナスフラスコに実施例2で得られたジオール(v)3640mg(14.00mmol)、メタンスルホニルクロリド3220mg(28.00mmol)を加え、0℃ でピリジン4424mg(56.00mmol)をゆっくり滴下し、1時間室温で撹拌した。反応終了後10%塩酸にあけ、エーテルで二回抽出し、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、40℃以下で溶媒を減圧留去した。残渣のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン-酢酸エチル、65:35によって展開される留分として、ジメシラート(vii)4333mg(収率74%)を得た。
An oil; 1H NMR δ 1.2-1.9 (m, 17 H), 3.05 (s, 6 H), 3.38 (m, 1 H), 3.50 (m, 1 H), 3.74 (m, 1 H), 3.87 (m, 1 H), 4.21 (d, J = 6.6 Hz, 2 H), 4.27 (d, J = 6.6 Hz, 2 H), 4.57 (t, J = 3.5 Hz, 1 H), 13C NMR δ 19.70, 25.41, 25.99, 26.47, 26.88, 29.29, 29.56, 30.73, 37.25, 38.12, 62.41, 67.44, 68.16, 98.89.
【0053】
実施例4;2-(8-イオド-7-イオドメチルオクチルオキシ)テトラヒドロピラン(viii)の合成
100mlナスフラスコにジメチルホルムアミド(DMF)100mlとヨウ化ナトリウム4500mg(30.00mmol)を加え、70℃に加温し、ヨウ化ナトリウムを完全に溶かした後、50℃ まで冷却し、実施例3で得られたジメシラート(vii)4160mg(10.00mmol) を加え、2時間室温で撹拌した。反応終了後、水を加え5分撹拌した後、エーテルで三回抽出し、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、40℃ 以下で溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン-エーテル、95:5によって展開される留分として、ジヨージド(viii)2810mg(収率59%)を得た。
An oil; 1H NMR δ 1.2-1.9 (m, 17 H), 3.19 (d, J = 6.0 Hz, 2 H), 3.23 (d, J = 6.0 Hz, 2 H),3.38 (m, 1 H), 3.50 (m, 1 H), 3.74 (m, 1 H), 3.87 (m, 1 H), 4.57 (t, J = 3.5 Hz, 1 H), 13C NMR δ 14.25, 19.59, 25.38, 25.95, 26.70, 29.15, 29.51, 30.64, 34.13, 40.34, 63.25, 67.37, 98.71.
【0054】
実施例5;(シクロドデシリデン)ビスヒドロペルオキシド(x)の合成
斉藤等の方法(Saito,I.;Nagata,R.;Yuba,K.;Matuura,T.Tetrahedron Lett.1983,24,1737)で調整した過酸化水素2.5molのエーテル溶液25mlに公知化合物であるメトキシメチレンシクロドデカン630mg(3.00mmol)を溶かし、-70℃でオゾン化を行った。オゾン化は通常のオゾン化装置(Nippon Ozone Model ON-1-2(日本オゾン株式会社製)を使い、15分間50l/hrの流速で酸素を吹き込むことにより、使用したメトキシメチレンシクロドデカンと等量のオゾンを発生させて行なった。反応終了後、70mlのエーテルを加え、有機層を重曹水、次いで飽和食塩水で洗った後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、エーテル-ヘキサン、2:8によって展開される留分として、ビスヒドロペルオキシド(x)232mg(収率33%)得た。
mp. 140-141℃, 1H NMR (CDC13) δ 1.2-1.8 (m, 22H), 8.13 (brs, 2H), 13C NMR (CDC13) δ 19.28,21.86,22.15,6.02,26.19,26.29,112.64.
【0055】
実施例6;(4-tert-ブチルシクロヘキシリデン)ビスヒドロペルオキシド(x)の合成
実施例5と同様に調整した過酸化水素を含むエーテル溶液25mlに4-tert-ブチル-2-メトキシメチレンシクロヘキサン546mg(3.00mmol)を溶かし、-70℃でオゾン化を行った。反応終了後、上記実施例5と同様の方法で処理した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、エーテル-ヘキサン、2:8によって展開される留分として、ビスヒドロペルオキシド(x)285mg(収率47%)を得た。
mp. 83-84℃ (ether-hexane), 1H NMR (CDC13) δ 0.87 (s, 9H), 1.1-1.8 (m, 9H), 9.27 (s, 2H), 13C NMR (CDC13) δ 23.32, 27.58, 29.70, 32.31, 47.39, 110.00. Anal.Clacd. for C10H20O4: C, 58.80, H, 9.87. Found: C, 58.87, H, 9.80.
【0056】
実施例7;(2-アダマンチリデン)ビスヒドロペルオキシド(x)の合成
実施例5と同様に調整した過酸化水素を含むエーテル溶液25mlに2-メトキシメチレンアダマンタン712mg(4.00mmol)を溶かし、-70℃でオゾン化を行った。反応終了後、実施例5と同様の方法で処理した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、エーテル-ヘキサン、2:8によって展開される留分として、ビスヒドロペルオキシド(x)335mg(収率42%)を得た。
mp. 144-145℃ (ether-hexane), 1H NMR (CDC13) δ 1.7-2.1 (m, 14H), 8.82 (s, 22H), 13C NMR (CDC13) δ 26.94, 31.14, 33.68, 33.98, 112.88, 33.98, 37.25, 73.94, 109.95.
【0057】
実施例8;4-[6-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシ)]-1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン(xi)の合成
既報告の方法 [K. J. McCullough, Y. Nonami, A. Masuyama, M. Nojima, H.-S.Kim, and Y. Wataya, Tetrahedron Lett., 40, 9151-9155 (1999)] を参照して合成した。すなわち、窒素雰囲気下、50mlナスフラスコ内で酸化銀8464mg(2.00mmol)の5ml酢酸エチル懸濁溶液に、室温で撹拌しながら、文献記載の方法 [T. Ledaal and T. Solbjoer, Acta Chem. Scand., 21, 1658 (1967)] により別途合成したシクロドデシリデンビスヒドロペルオキシド232mg(1.00mmol)の酢酸エチル溶液5mlを滴下し、次いで、実施例4で得られたジヨージド(viii)720mg(1.50mmol)の酢酸エチル溶液5mlを滴下し、室温で15時間撹拌した。反応終了後、セライトを用いた吸引濾過で副生するヨウ化銀を除去し、40℃以下で溶媒を減圧留去した。残渣のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン-エーテル、95:5によって展開される留分として、分解生成物のシクロドデカノン70mg(収率38%)が得られ、次いで、ヘキサン-エーテル、92:8によって展開される留分として、テトロキソカン(xi)181mg(収率40%)を得た。
mp. 42-44℃(hexane), 1H NMR δ 1.2-1.8 (m, 38H), 2.4-2.5 (m, 1H), 3.38 (m, 1H), 3.50 (m, 1H), 3.6-3.7 (m, 2H), 3.83 (m, 1H), 4.0-4.2 (m, 2H), 4.35 (m, 1H), 4.57 (t, J = 3.5 Hz, 1H), 13C NMRδ 19.12, 19.39, 19.68, 21.85, 22.14, 25.45, 25.86, 26.00, 26.06, 26.18, 26.40, 27.05, 29.62, 30.73, 40.00, 62.37, 67.51, 79.17, 98.85, 112.09. Anal. Calcd. for C26H48O6: C, 68.38, H, 10.60. Found: C, 68.10, H, 10.47.
【0058】
実施例9;6-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ-4-イル)ヘキサン-1-オール(xii)の合成
50mlナスフラスコに実施例8で得られたテトロキソカン(xi)228mg(0.50mmol)と酢酸4ml、THF2ml、水1mlを加え、室温で15時間撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム水溶液にあけ、エーテルで二回抽出し、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、40℃以下で溶媒を減圧留去した。残渣のシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、ヘキサン-エーテル、90:10によって展開される留分として、未反応原料であるテトロキソカン40mg(添加量の20%)が得られ、次いでヘキサン-エーテル、68:32によって展開される留分として、アルコール(xii)140mg(収率75%)を得た。
mp.52-54℃ (hexane-ether), 1H NMR δ 1.2-1.8 (m, 32H), 2.16 (m, 1H), 2.45 (br s, 1H), 3.64 (t, J = 6.6Hz, 2H), 3.70 (m, 2H), 4.0-4.2 (m, 1H), 4.3-4.4 (m, 1H), 13C NMR δ 19.23, 19.98, 21.73, 22.01, 25.45, 25.72, 25.86, 26.04, 26.96, 28.90, 32.40, 39.86, 62.46, 78.98, 111.95. Anal. Calcd. for C21H40O5: C, 67.70, H, 10.82. Found: C, 67.44, H, 10.59.
【0059】
実施例10;環状ペルオキシド化合物及び誘導体の溶解度
実施例9で得られた6-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ-4-イル)ヘキサン-1-オール(N251)、5-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ-4-イル)ペンタン-1-カルボン酸(N251-1)、コハク酸モノ-[6-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ-4-イル)ヘキシル]エステル(N251-2)、比較例として、1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン(N89)、アルテミシニン(Artemisinin)、アルテスネ-ト(Artesunate、商品名:Guilin No.2 Pharmaceutical Factory,Guangxi, China)について、5%重曹水、ジメチルスルホキシド(DMSO)に対する溶解度を測定した。結果を表1に示す。
【0060】
【表1】
JP0004289911B2_000011t.gif【0061】
実施例11;熱帯熱マラリア原虫の培養検定試験
熱帯熱マラリア原虫としてP. falciparum FCR-3株(ATCC30932)及び抗マラリア剤として市販されているクロロキンの耐性株に対する本発明化合物の効果を検証するためにP. falciparum K-1株のクロロキン耐性マラリア原虫を用いた。実験に用いた培地は、濾過滅菌したRPMI 1640培地(pH7.4)で、ヒト血清を10%となるように添加した。マラリア原虫の培養はO2濃度5%、CO2濃度5%、N2濃度90%、温度は36.5℃で行った。ヘマトクリット値(赤血球浮遊液中に占める赤血球の体積の割合)は5%とし、培養開始時の熱帯熱マラリア原虫の初期感染率は0.1%とした。24ウエル培養プレートを用いて培養し、培地は毎日交換し、感染率4%で植え継ぎを行った。感染率は薄層塗沫標本を作成し、ギムザ染色あるいはDiff-Qick染色を行った後、顕微鏡(油浸、1000×)下で計測し、マラリア原虫感染率を下記式より算出した。
マラリア原虫感染率(%)={(感染赤血球数)/(総赤血球数)}×100
【0062】
実施例12;マラリア原虫増殖阻害スクリーニング試験
培養したマラリア原虫感染赤血球を遠心で集め、血清を含む培地で洗浄を行った後、非感染赤血球を加え、初期感染率を0.3%とした。この時のヘマトクリット値は3%である。実施例9で得られた6-(1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデシ-4-イル)ヘキサン-1-オール(N251)、比較例として、1,2,6,7-テトラオキサスピロ[7.11]ノナデカン(N89)、クロロキン、アルテミシニン(artemisinin)を供試サンプルとし、これらの供試サンプルを滅菌水、ジメチルホルムアミド(DMF)あるいはジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、所定濃度のサンプル液とした。かかるサンプル液を24ウエル培養プレートに試験液を5~10μlずつ加えた。各供試サンプルについて、2~3回の試験を行なった。また、コントロールとして、滅菌水、DMF及びDMSOを10μl/ウエル加えた。次に、あらかじめ所定濃度に調製した熱帯熱マラリア原虫培養液又はクロロキン耐性マラリア原虫をそれぞれ990~995μlずつ加え、静かにピペッティングを行い培地に一様に懸濁させた。培養プレートはCO2-O2-N2(5%、5%、90%)インキュベーター中で72時間培養した後、それぞれのウエルについて薄層塗沫標本を作成し、ギムザ染色あるいはDiff-Qick染色を行なった後、顕微鏡(油浸、1,000×)下で計測し、試薬を加えたものの感染率及びコントロールの感染率を算出した。上記で求めたマラリア原虫感染率から次式より増殖率を算出した。
増殖率(%)={([b]-[a])/([c]-[a])}×100
a:初期感染率
b:試験液添加時の感染率
c:コントロールの感染率
算出した増殖率から、マラリア原虫に対する50%増殖阻害濃度EC50値を求めた。尚、EC50値はマラリア原虫の培地にサンプル液を添加していないコントロールの増殖率を100%とし、サンプル液の添加によってコントロールのマラリア原虫感染率を50%阻害するサンプルの濃度をモル濃度で表示した値である。結果を表2に示す。
【0063】
実施例13;マウスFM3A細胞増殖阻害試験
マウス乳がん由来FM3A細胞の野生株であるF28-7株を用いた。培地はES培地に非動化した胎児牛血清を2%となるように添加し、CO2濃度5%、37℃で培養した。この条件下でのFM3A細胞の倍加時間は約12時間であった。前培養を行い、対数増殖期に入った細胞を5×104cells/mlになるように培地で希釈した。サンプルはマラリア原虫の抗マラリア活性測定時に調製したものを用いた。24ウエル培養プレートに実施例11で調製したサンプル液を5~10μlずつ加えた。各供試サンプルについて2~3回の試験を行なった。また、コントロールとして滅菌水、DMF及びDMSOを各10μl加えたウエルも同時に試験した。次に、用意しておいた培養細胞浮遊液を990~995μlずつ加え、培地等を加えると供試サンプルの最終濃度は1×10-4~1×10-6Mとなった。静かにピペッティングを行い培地に一様に懸濁させた。48時間培養した後、それぞれのウエルについて細胞数をセルコントローラー(CC-108、Toa Medical Electrics社製)で計数した。
計測した細胞数から、次式より増殖率を算出した。
増殖率(%)={([C]-[A])/([B]-[A])}×100
A:初期細胞数
B:48時間後のコントロールの細胞数
C:サンプル添加した48時間後の細胞数
算出した増殖率から、細胞増殖阻害濃度IC50値を求め、細胞増殖阻害活性としてサンプルの細胞毒性を評価した。細胞増殖阻害濃度IC50値は、FM3A細胞の培地にサンプル液を添加していないコントロールを添加したときの増殖率を100%とし、サンプル液の添加によってコントロールの増殖率を50%阻害するサンプルの濃度をモル濃度で表示した値である。結果を表2に示す。
【0064】
実施例14;薬効判定
サンプルの抗マラリア作用の評価は、マラリア原虫に対する選択毒性の指標として用いられる化学療法係数に基づいて行った。化学療法係数は、マウスFM3A細胞に対する各供試サンプルのIC50値に対するマラリア原虫に対する各供試サンプルのEC50値の比として次式によって算出し、求めた値から薬効判定を行った。結果を表2に示す。
化学療法係数=(マウスFM3A細胞に対するサンプルのIC50値)÷(マラリア原虫に対するサンプルのEC50値)
【0065】
【表2】
JP0004289911B2_000012t.gif【0066】
以上の結果より、本発明化合物は、選択毒性が従来のものと比べ良好であり、マラリア原虫増殖阻害活性を有し、優れた薬効を有することが判明した。しかも、クロロキン耐性熱帯熱マラリア原虫に対しても優れた抗マラリア活性を有することが判明した。
【0067】
実施例15;ネズミマラリア原虫感染マウスを用いた原虫抑制試験
本実験はPeters,W.and Richrds,W.H.G.Antimalarial drugs I,in:W.Peters,W.H.G.Richards(Eds.),Springer-Verlag,Berlin,1984,pp.229-230に記載の4-day suppressive testに準じて行った。用いたネズミマラリア原虫(P. berghei NK65株)は強毒原虫株で、このネズミマラリア原虫を感染させるとマウスは感染してから10日以内に全部死亡する。継代しているネズミマラリア原虫感染マウスの血中感染率が10%となった時点で実験を開始した。エーテル麻酔を行ったマウスの心臓採血を行い、リン酸緩衝生理食塩水1mlあたり5×106原虫/mlとなるように調製した原虫浮遊液を、感染していないマウスに200μl腹腔内感染(i.p.)した。原虫感染2時間後、オリーブ油に懸濁した化合物を経口投与又は腹腔内投与した。投与期間は、1日1回を連続4日間行い、実験開始4日目にマウスの尾より採血する。採血した血液で薄層塗抹標本を作製し、実施例11と同様の方法によりギムザ染色により顕微鏡下で赤血球感染率を求めた。溶媒のみを投与したコントロール群に対する薬剤投与群の感染率の割合を調べることで50%原虫抑制濃度ED50値と90%原虫抑制濃度ED90値を求めた。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
JP0004289911B2_000013t.gif【0069】
本発明の化合物は、原虫抑制濃度について、mg/kg及びモル濃度表示でも化合物N89より優れており、in vivoにおいても優れたマラリア原虫増殖抑制活性を有することが判明した。
【0070】
【発明の効果】
本発明の新規化合物は、抗マラリア剤として適用することができ、本発明の抗マラリア剤は、優れた抗マラリア活性を備え副作用も少なく、特に、薬剤耐性マラリア原虫に対して顕著な抗マラリア活性を有すると共に、オリーブオイル等の有機溶媒のみならず、水に対する溶性を向上することができ、経口薬のみでなく、注射液としても使用することができ、適用範囲を著しく拡張することができる。