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明細書 :表面改質方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4370593号 (P4370593)
公開番号 特開2003-347241 (P2003-347241A)
登録日 平成21年9月11日(2009.9.11)
発行日 平成21年11月25日(2009.11.25)
公開日 平成15年12月5日(2003.12.5)
発明の名称または考案の名称 表面改質方法
国際特許分類 H01L  21/30        (2006.01)
FI H01L 21/30
請求項の数または発明の数 7
全頁数 13
出願番号 特願2002-158594 (P2002-158594)
出願日 平成14年5月31日(2002.5.31)
審判番号 不服 2007-016012(P2007-016012/J1)
審査請求日 平成16年5月14日(2004.5.14)
審判請求日 平成19年6月7日(2007.6.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】和泉 亮
【氏名】松村 英樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100082876、【弁理士】、【氏名又は名称】平山 一幸
参考文献・文献 特開2002-151693(JP,A)
和泉亮、松村英樹、加熱触媒により生成した原子状水素によるフォトレジスト除去、第48回応用物理学関係連合講演会講演予稿集、日本、応用物理学会、2001年 3月28日、NO.2、第833頁
三木翼,和泉亮、松村英樹,加熱触媒により生成した原子状水素によるフォトレジスト除去(2),第49回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,日本,応用物理学会,2002年 3月27日,No.2,第793頁
特許請求の範囲 【請求項1】
カーボン系薄膜に隣接した絶縁層の表面改質方法であって、
上記カーボン系薄膜が、レジストを含むカーボン系薄膜であり、イオン注入工程、ドライエッチング工程、熱処理工程の何れかの工程、または、その組合わせの工程により少なくとも表面に変質層を有しており、
少なくとも窒素原子を含んだガス分子と加熱された高融点材料との接触分解反応により窒素原子を含んだ活性窒素種及び水素ラジカルを生成し、
上記窒素原子を含んだ活性窒素種及び水素ラジカルにより、レジストを含むカーボン系薄膜を除去し、
次に、上記カーボン系薄膜に隣接した絶縁層の表面を窒化する工程からなり、
上記窒素原子を含んだガス分子が、アンモニア分子であるか、または、アンモニア分子と酸素分子または水分子とからなるガス分子であり、
上記高融点材料が、タングステン,タンタル,モリブデン,バナジウム,白金,トリウム,ジルコニウム,イットリウム,ハフニウム,パラジウム,シリコン,炭素の何れか1つを含むことを特徴とする、表面改質方法。
【請求項2】
前記絶縁層が、層間絶縁膜からなることを特徴とする、請求項に記載の表面改質方法。
【請求項3】
前記アンモニア分子の圧力が1Paから100Paの範囲にあることを特徴とする、請求項に記載の表面改質方法。
【請求項4】
前記表面窒化によりカーボン系薄膜を付着させた表面層が、不純物の浸透または突き抜けを阻止できることを特徴とする、請求項に記載の表面改質方法。
【請求項5】
前記高融点材料は、抵抗加熱により加熱されることを特徴とする、請求項に記載の表面改質方法。
【請求項6】
前記高融点材料が、該材料単体の酸化物または窒化物であるか、炭素以外の材料単体の炭化物であるか、前記材料から選択された2種類以上の混晶または化合物であるか、前記材料から選択された2種類以上からなる混晶または化合物の酸化物又は窒化物であるか、炭素以外の材料から選択された2種類以上からなる混晶または化合物の炭化物であることを特徴とする、請求項に記載の表面改質方法。
【請求項7】
前記高融点材料が、タングステンであり、その加熱温度がおおよそ1200℃から2200℃の範囲で加熱されることを特徴とする、請求項に記載の表面改質方法。
発明の詳細な説明
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、レジストなどのカーボン系薄膜に隣接した層の表面改質方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年における半導体装置の高集積、高速度化の進展に伴い、微細なパターンを精密に転写するためのフォトリソグラフィーが益々重要になっている。
ドライエッチングやイオン注入工程を経たレジストは、通常、酸素プラズマによるドライアッシングと、例えば硫酸(硫酸濃度98重量%)と過酸化水素水(過酸化水素水濃度30重量%)を体積比4:1で混合した溶液を加熱して用いるウェットエッチングの組合わせにより除去される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような方法を用いると、酸素プラズマアッシング工程により集積回路の層間絶縁膜が、処理後に誘電率が上昇したり、また、集積回路の金属配線が酸素プラズマアッシング工程により酸化してしまう問題がある。
さらに、高濃度にイオン注入されたレジストは、上記のドライアッシングとウェットエッチングの組合わせでは、完全に除去できず残渣が残り、その結果、残渣中に含まれる金属イオンがデバイスの特性を劣化させ、また、酸素プラズマによるプラズマダメージもデバイスの特性に悪影響を与えるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑み、酸素プラズマアッシングによるドライアッシングとウェットエッチングの組合わせを使用することのない、新規なレジストなどのカーボン系薄膜を付着させた層の表面改質方法を提供することを目的とする。
【0008】
高融点材料は、抵抗加熱法で加熱されることが好ましい。この高融点材料が、材料単体の酸化物または窒化物であるか、炭素以外の材料単体の炭化物であるか、材料から選択された2種類以上の混晶または化合物であるか、材料から選択された2種類以上からなる混晶または化合物の酸化物又は窒化物であるか、炭素以外の材料から選択された2種類以上からなる混晶または化合物の炭化物であればよい。また、高融点材料がタングステンであり、その加熱温度はおおよそ1200℃から2200℃の範囲内にあることが好ましい。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の表面改質方法は、カーボン系薄膜に隣接した絶縁層の表面改質方法であって、カーボン系薄膜が、レジストを含むカーボン系薄膜であり、イオン注入工程、ドライエッチング工程、熱処理工程の何れかの工程、または、その組合わせの工程により少なくとも表面に変質層を有しており、少なくとも窒素原子を含んだガス分子と加熱された高融点材料との接触分解反応により窒素原子を含んだ活性窒素種及び水素ラジカルを生成し、窒素原子を含んだ活性窒素種及び水素ラジカルにより、レジストを含むカーボン系薄膜を除去し、次に、カーボン系薄膜に隣接した絶縁層の表面を窒化する工程からなり、窒素原子を含んだガス分子が、アンモニア分子であるか、または、アンモニア分子と酸素分子または水分子とからなるガス分子であり、高融点材料が、タングステン,タンタル,モリブデン,バナジウム,白金,トリウム,ジルコニウム,イットリウム,ハフニウム,パラジウム,シリコン,炭素の何れか1つを含むことを特徴とする。
この構成によれば、イオン注入工程、ドライエッチング工程、熱処理工程の何れかの工程、または、その組合わせの工程により少なくとも表面に変質層を有しているレジストなどのカーボン系薄膜を付着させた表面層を、窒素原子を含んだガス分子との接触分解反応で生成された活性窒素種及び水素ラジカルによりレジストを除去した後に表面窒化することができる。
【0011】
前記構成において、絶縁層は、好ましくは層間絶縁膜からなるこのアンモニア分子の圧力は、好ましくは、1Paから100Paの範囲である。
【0012】
た、表面窒化によりカーボン系薄膜を付着させた表面層が、不純物の浸透または突き抜けを阻止できることを特徴とする。
【0013】
高融点材料の加熱方法は、抵抗加熱であることが好ましい。高融点材料が、材料単体の酸化物または窒化物であるか、炭素以外の材料単体の炭化物であるか、材料から選択された2種類以上の混晶または化合物であるか、材料から選択された2種類以上からなる混晶または化合物の酸化物又は窒化物であるか、炭素以外の材料から選択された2種類以上からなる混晶または化合物の炭化物であればよい。高融点材料は、タングステンであり、その加熱温度がおおよそ1200℃から2200℃の範囲にあることが好ましい。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明によるカーボン系薄膜の除去方法及び表面改質方法、並びにこれらの処理装置の実施の形態を図面により詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態であるカーボン系薄膜の除去及び表面改質に使用する処理装置、すなわち、カーボン系薄膜除去装置・表面改質装置の構成を示す図である。
本発明のカーボン系薄膜除去装置・表面改質装置は、窒素原子を含んだ活性窒素種により、レジストなどのカーボン系薄膜を除去するか、または、層間絶縁膜などの表面を窒化するものである。
図1において、カーボン系薄膜除去装置・表面改質装置1(以下、共通する構成を一括して説明するために、これらを処理装置1と称する)は、真空引き可能なチャンバ2と、チャンバ内にレジストが付着した基板8などの被加工層を有する基板を保持する手段9と、チャンバ2内に取り付けられた高融点材料3と、チャンバ2の外部から高融点材料3を抵抗加熱する抵抗加熱用電源4と、チャンバ2内に窒素原子を含んだガス分子5を導入するガス導入手段6と、から構成される。
【0019】
チャンバ2は、真空ポンプ7により真空引きされる。真空ポンプ7は、例えば、ターボ分子ポンプとロータリーポンプの組み合わせにより、一例として10-3Pa以下に真空引きする。
基板8としては、本処理装置をカーボン系薄膜の除去に用いる場合は、例えば表面を酸化したSi(シリコン)基板にレジストなどが付いたレジスト及びSiO2 基板(以下、レジスト付き基板と呼ぶ)が用いられ、このレジスト付き基板8が、チャンバ2内で、保持手段、本例ではサセプタ9に載置されている。このサセプタ9は、ヒーターまたは冷却手段10上に設置され所定の温度に設定される。
このヒーターまたは冷却手段10は、チャンバ2の外部に設置された基板用温調器11により温度調節され、サセプタ9上のレジスト付き基板8の温度を制御し得るようになっている。この際、レジスト付き基板8の温度は、熱電対(図示せず)などによって検出され、温度制御される。
ここで、サセプタ9の材質としては、ステンレス鋼(SUS)、絶縁物材料として、石英ガラス、アルミナ、BNなどのセラミックが使用できる。
レジスト除去速度を向上させるために、このレジスト付き基板8は100℃程度に加熱されることが好ましいが、このレジスト付き基板8の温度は、適宜選定すればよい。
【0020】
チャンバ2内には、高融点材料である、例えばタングステン3の細線が、周囲と絶縁されて保持されている。このタングステン3の細線は、抵抗加熱用外部電源4により抵抗加熱される。抵抗加熱用外部電源4は、直流または交流でよい。また、タングステン3の直径は、0.3mmから0.8mm程度でよい。
タングステン3の加熱温度は、チャンバ2の高融点材料が加熱されたことによる発熱した温度からの輻射温度の測定に好適な位置に配置されたビューポート13を介してチャンバ2の外部に設けられた放射温度計12を用いて測定できるようになっている。また、このビューポート13により、タングステン3の加熱状態と、レジスト付き基板8の目視が可能である。
【0021】
さらに、本処理装置1には、抵抗加熱用外部電源4からタングステン3に印加される電圧と電流を測定するための電圧計14と電流計15がチャンバ2の外部に設置されている。
なお、タングステン3の加熱温度は、上記の電圧と電流の測定値の積であるタングステン3に加えられる電力と、この電力により加熱される温度を測定することにより得られる校正データを基に求めることができる。さらに、タングステン3の直径と長さから、抵抗率を計算し、抵抗率と温度の関係を測定し、この校正データを基に求めることもできる。
【0022】
高融点材料3としてはは、上記したタングステンの他に、タンタル,モリブデン,バナジウム,白金,トリウム,ジルコニウム,イットリウム,ハフニウム,パラジウム,シリコン,炭素、の何れか1つの材料、これらの材料の単体の酸化物、これらの材料の単体の窒化物、これらの炭素以外の材料の単体の炭化物、これらの材料から選択された2種類以上の材料からなる混晶または化合物、これらの材料から選択された2種類以上からなる混晶または化合物の酸化物、これらの材料から選択された2種類以上からなる混晶または化合物の窒化物、または、これらの炭素以外の材料から選択された2種類以上からなる混晶または化合物の炭化物、の何れか1つでよい。
【0023】
チャンバ2内には、窒素原子を含んだガス5がマス・フロー・コントローラ6などのガス流量制御手段を介して所定の流量に調整され、所定の圧力の窒素原子を含んだ導入ガス16としてチャンバ2内に導入される。
この際、チャンバ2内に導入される導入ガス16の圧力を所定の圧力に制御するために、排気口の実効面積を制御するためのコンダクタンス制御バルブ17がチャンバ2と真空ポンプ7の間に配設されるようになっている。
窒素原子を含んだガス分子5は、アンモニア分子でよい。また、窒素原子を含んだガス分子5は、アンモニア分子と、酸素分子または水分子を添加したガス分子であってもよい。
【0024】
本発明の処理装置はこのように構成されており、この処理装置をカーボン系薄膜の除去に用いる場合はつぎのように行う。
先ず、レジストなどのカーボン系薄膜を付けたレジスト付き基板8をチャンバ2内のサセプタ9上に配設し、チャンバ2を真空ポンプ7により所定の圧力まで真空引きを行う。
レジスト付き基板8はヒーターまたは冷却手段10により所定の温度に調整され、また、高融点材料3は、予め所定の温度になるように、抵抗加熱用外部電源4により抵抗加熱されて温度調節される。
【0025】
次に、窒素原子を含んだガス5をマス・フロー・コントローラ6などのガス流量制御手段を介してチャンバ2内へ窒素原子を含んだ導入ガス16として導入する。そして、加熱された高融点材料3の表面において窒素原子を含んだ導入ガス16は接触分解され、これにより活性窒素種18が発生し、これがレジスト付き基板8上のレジストなどのカーボン系薄膜と反応して揮発性のガスを発生させ、このガスが蒸発されて、ついには除去される。
その際、レジスト付き基板8の温度と、高融点材料3の材料の選定及びその加熱温度と、窒素原子を含んだ導入ガス16の圧力などのパラメータを制御することにより、レジストなどのカーボン系薄膜の除去速度を制御することができる。
【0026】
このように本発明のカーボン系薄膜の除去方法によれば、加熱された高融点材料3の表面において窒素原子を含んだ導入ガス16は、接触分解して活性窒素種18が発生し、この活性窒素種18をレジストと反応させてカーボン系薄膜を除去することができる。
これにより、酸素プラズマアッシングによるドライアッシングとウェットエッチングの組合わせを使用しないて、レジストなどのカーボン系薄膜を除去することができる。
【0027】
次に、上記処理装置を表面改質に適用する場合の実施の形態を示す。
本発明の表面改質方法は、窒素原子を含んだ活性窒素種18により層間絶縁膜付きSi基板8Aやレジストなどのカーボン系薄膜に隣接した層絶縁膜層などの表面層を窒化するものである。
本発明の表面改質方法によれば以下のように処理装置を動作する。
先ず、基板としては、層間絶縁膜を有する基板8A、または、レジストなどのカーボン系薄膜に隣接したSiO2 などの層間絶縁膜層を有する基板8であればよい点が、レジストなどのカーボン系薄膜除去方法と異なる。
層間絶縁膜を有する基板8Aをチャンバ2内のサセプタ9上に配設し、チャンバ2を所定の圧力まで真空引きを行う。層間絶縁膜を有する基板8Aと、高融点材料3は、予め所定の温度になるように設定される。
【0028】
次に、窒素原子を含んだガス5をマス・フロー・コントローラ6などのガス流量制御手段を介してチャンバ2内へ窒素原子を含んだ導入ガス16として導入する。そして、加熱された高融点材料3の表面において窒素原子を含んだ導入ガス16は接触分解され、活性窒素種18が発生する。そして、生成した活性窒素種18が、基板上の層間絶縁膜の表面を窒化し、これにより表面窒化層が得られ、表面改質を行うことができる。
【0029】
また、レジストを付着させた表面層、例えば、基板に隣接する層間絶縁層などの層を有するレジスト付き基板8の表面改質を行うときは、最初にレジストを除去し、連続して層間絶縁膜の表面を窒化して表面改質を行うことができる。
上記の表面改質を行う際、層間絶縁膜を有するカーボン系薄膜を有する基板(8,8A)の温度と、高融点材料3の材料及び温度と、窒素原子を含んだガス15の圧力などのパラメータを制御することにより、窒化速度を制御することができる。
以上のように、加熱された高融点材料3の表面において窒素原子を含んだ導入ガス16は、接触分解されて活性窒素種18が発生し、層間絶縁膜とその表面を窒化することができる。
【0030】
次に、カーボン系薄膜の除去方法並びに表面改質方法の実施例を示す。
(実施例1)
シリコン(Si)の(100)基板上にSiO2 膜を形成した後で、さらにポジ型レジストを、周知のスピンコーターにより塗布してプリベーキングを行い、紫外線のh線により60秒の露光を行なった。次に120℃で90秒のポストベーキングを行なった。レジストの厚さは、約1μmである。
このポジ型レジストを付着させたレジスト付き基板8を、カーボン系薄膜除去装置1により処理を行った。レジスト付き基板8をチャンバ2内のサセプタ9上に配設し、基板温度を80℃に保持した。窒素原子を含んだガス5としては、アンモニアガスを使用し、チャンバ2内の窒素原子を含んだ導入ガス16としてのアンモニアガス圧16は、20Paとした。
【0031】
高融点材料3は、直径が0.5mmのタングステン細線を使用し、タングステン3の温度約1700℃の条件でレジストの除去を行った。タングステン3の加熱温度は、アンモニアガス圧16とも関係するが、おおよそ1200℃から2200℃がよい。
このレジスト付き基板8のレジストの除去処理後の基板表面の光学顕微鏡による観察と、X線光電子分光測定装置による分析の結果から、ポジ型レジストの除去を確認した。
また、ビューポート13を用いてレジスト付き基板8を目視することにより、レジストの除去が完了したことを確認することができ、レジスト除去の終点モニタが可能になる。
レジストの除去処理後の基板の表面を、全反射蛍光X線分析装置により分析したところ、残渣は、1cm2 当り2×1010個以下であり、通常のSiLSIの工程に適用できる表面清浄度であることが確認された。
【0032】
本実施例では、高融点材料として、融点が最も高く蒸気圧の低いタングステン3を使用し、その温度を約1700℃に加熱して使用することで、例えば活性窒素種18を発生させることのできるプラズマ法と比較して、格段に多量の活性窒素種18を生成できることを確認した。
これは、加熱されたタングステン3の表面において、チャンバ2に導入されたアンモニアガス16が接触分解し、活性窒素種18及び原子状水素が発生する。この時、タングステン3には変化が生じないので、アンモニアガス5の接触分解において、加熱されたタングステン3は触媒的に作用すると考えられる。
このように、アンモニアガス5を使用し、加熱されたタングステン3との接触分解により、効率よく活性窒素種18として、NH2 、NH、Hなどの活性ラジカルが生成し、これがレジスト膜と反応して揮発性のガスとなり、レジスト膜を除去することができることは、本発明者らが初めて見出したものである。
【0033】
アンモニアガス16の圧力は、レジストの除去速度を実用的な範囲とするために、1Pa~100Paが好ましい。
アンモニアが、900℃位から、分解が開始することを四重極質量分析装置により確認を行っている。従って、タングステン3の加熱温度は、レジストの除去速度が実用的な範囲で、またレジストが存在しない露出部分への影響を考慮して決定すればよく、レジストの実用的な除去速度を得るには、おおよそ1200℃以上が好ましい。さらに、2200℃以上では、タングステン3の蒸発が顕著になりレジストのない露出部分に堆積したりして後の工程に与える影響が無視できなくなるため、上限は2200℃程度の温度が好ましい。
【0034】
ここで、レジストの除去速度は、活性窒素種18の生成量に関係するが、高融点材料3の温度や、窒素原子を含んだガス分子5のチャンバ内での導入ガス16の圧力の選定などにより制御することが可能となる。
このように、本発明のカーボン系薄膜の除去方法によれば、アンモニアガス5を使用し、加熱されたタングステン3との接触分解により、効率よく活性窒素種18を生成し、レジスト膜を除去することができる。また、酸素を使用しないので、レジスト近傍の銅配線やアルミニウム配線などの金属配線を酸化することがない。
【0035】
(実施例2)
さらに、窒素原子を含んだガス5としてアンモニアに0.1%の水蒸気を添加したガスによるレジスト膜の除去を行った。このときの導入ガス16のガス圧は10Paで、その流量が100sccmである他は実施例1と同じ条件である。ここで、sccm(standard cubic cm per minute)は、cm3 /分で、0℃において、1013hPaに換算した場合の流量を表す単位である。
実験の結果、アンモニアガス5に水を付加することで、レジストの除去に要する処理時間が30%短縮できることを確認し、レジストの除去速度を向上させることができた。この際、アンモニアガス16のガス圧はレジストの除去速度と露出部分への影響を考慮して決定すればよく、常圧以下で幅広く選択でき、1Pa~100Paが好ましい。
このように、本発明のカーボン系薄膜の除去方法によれば、アンモニアガス5に加えて、水蒸気または酸素を導入することで、活性窒素種18に加えて原子状酸素などの活性酸素が発生でき、よりレジスト除去の特性としてその除去速度を速くすることができる。
【0036】
(実施例3)
つぎに、熱処理工程を経過したレジスト膜の除去について調べた。実施例1と同様にレジスト付き基板を作製し、ポストベーキングの後に、更に300℃で60分の熱処理を行った。レジスト付き基板の温度を80℃に保持し、チャンバ内のアンモニアガス16は圧力を20Paとした。タングステン線の加熱条件は、実施例1と同じ条件で行なった。
【0037】
このときの、レジストの除去速度は、実施例1の場合の75%となり、低減した。このレジスト付き基板8のレジストの除去処理後の基板の表面を光学顕微鏡による観察と、X線光電子分光測定装置で分析した結果により、ポジ型レジストの除去を確認した。
また、ドライエッチング工程を経過したレジスト付き基板8のレジストも除去することができた。
このように、本発明のカーボン系薄膜の除去方法によれば、従来のドライアッシングだけでは効率よくレジストを除去できない熱処理や、ドライエッチング工程を経過したレジスト付き基板のレジストを、活性窒素種18を生成することが可能となり、レジスト膜を完全に除去することができる。
【0038】
(実施例4)
さらに、イオン注入工程を経過したレジスト膜の除去について調べた。Siの(100)基板上にSiO2 膜を形成し、さらに厚さ約1μmのポジ型レジストを付着させたレジスト付き基板8を、パターンニングし、ボロンを加速電圧50kVで、ドーズ量として1015cm-2を注入し、レジストの表面層を変質させたり硬化させた。次にレジスト付き基板8の温度を85℃とし、実施例1と同一の条件でレジスト除去を行った。
【0039】
図2は、イオン注入工程を経過したレジスト付き基板8とイオン注入工程を行わないレジスト付き基板8のレジストの除去速度とアンモニア流量の関係を示す図である。図2において、縦軸はレジストの除去速度(nm/分)であり、横軸はアンモニア流量で単位はsccmである。
図において、○(白丸)はイオン注入工程なしの場合のレジストの除去速度を示し、●(黒丸)はイオン注入工程ありの場合のレジストの除去速度である。
どちらの場合もレジストの除去速度は、アンモニアの流量にほぼ比例して増加していることが分かる。アンモニア流量が100sccmのときのレジストの除去速度は、イオン注入工程を経た試料が150nm/分であり、イオン注入工程を行わない試料は195nm/分であった。
イオン注入工程を経たレジスト付き基板8の除去速度は、イオン注入工程を行わないレジスト付き基板8の除去速度よりも約23%位低下するものの、レジストを除去することができた。
【0040】
イオン注入のドーズ量が少なく比較的変質の少ないレジスト付き基板8や、レジストを基板に付けた状態で行うドライエッチング工程や熱処理工程、あるいはこれらの工程で変質層が形成されたレジストも除去し、除去することができた。
【0041】
このように、本発明のカーボン系薄膜除去方法によれば、従来のドライアッシングとウェットエッチングの組合わせでは、高濃度にイオン注入されたレジストを除去できなかったのに対して、効率よく活性窒素種18を生成することが可能となり、イオン注入工程を経過したレジスト膜を完全に除去することができる。
また、本発明によれば、単一の工程でレジストを完全に除去することができ、従来の工程の簡略化ができる。従って、ウェットエッチングに使用していた硫酸や過酸化水素水などの薬品と、その後に行うウェットエッチング液を洗浄除去する工程で使用する純水も不要となるので、半導体製造工程における時間の短縮とコストの削減ができる。
【0042】
(実施例5)
表面改質方法により、SiO2 の表面を窒化により改質した。
アンモニアガス5を使用し、実施例1と同じ条件で処理を行った。
図3は、本発明の表面改質方法における表面窒化時間と窒化層厚の関係を示す図である。図3において、横軸は窒化時間(分)で、縦軸が窒化層厚(nm)を示す。ここで、窒化層の厚さは、X線光電子分光測定装置により測定した。
この条件においては、約0.025nm/分の窒化速度が得られた。また、処理後の基板の表面をX線光電子分光測定装置により分析したところ、SiO2 の表面が窒化していることが確認された。
【0043】
(実施例6)
レジストなどのカーボン系薄膜を除去した後に表面改質方法により、レジストの下部のSiO2 の表面を窒化により改質した。
アンモニアガス5を使用し、実施例1と同じ条件で、20分の処理を行った。処理後の基板の表面を光学顕微鏡で観察し、ポジ型レジストの除去を確認した。また、処理後の基板の表面をX線光電子分光測定装置により分析したところ、同様に完全にレジストが除去されていることが確認された。さらにSiO2 の表面が窒化していることが確認された。
【0044】
図4は、レジストなどのカーボン系薄膜を除去した後に表面改質方法により処理した基板の表面をX線光電子分光装置により測定した結果を示す。図4において、横軸は結合エネルギー(eV)で、縦軸は光電子強度を任意単位で表している。処理前の基板においては、C1s軌道と、O1s軌道の信号が観察され、それぞれレジストと、SiO2 が基板上にあることを示している。
【0045】
レジストなどのカーボン系薄膜を除去した後に表面改質を行った処理後の基板の信号においては、レジストに起因するC1s軌道のピークが著しく減少し、大気汚染によると思われるピークしか観測されていないことから、レジストが除去されたことが分かる。一方、SiO2 の酸素の信号O1s軌道が著しく増大し、基板のSi2s軌道とSi2p軌道の信号も明瞭となり、このことからもレジストの除去が確認された。
さらに、窒素によるN1s軌道の信号が出現していることから、上記の処理によりレジスト下地材料であるSiO2 膜の表面窒化が確認された。
また、表面改質の処理時間を長くすると窒素によるN1s軌道のピーク強度が比例して大きくなることも確認され、SiO2 の窒化が進むことが分かった。
このように、本発明のカーボン系薄膜の除去方法を行い、同じチャンバ2の中で引き続き、本発明の表面改質を行えば、レジスト除去と窒化による表面改質を連続して行うことができ、工程処理時間を削減することができる。
【0046】
(実施例7)
イオン注入工程を経過して変質させたレジストなどのカーボン系薄膜を除去した後に、引き続いて表面改質方法により、レジストの下部のSiO2 の表面を窒化により改質した。
ここで、イオン注入した試料のレジスト膜の厚みと、イオン注入の工程条件などは、実施例3と同じである。このレジスト除去と表面改質を行った試料の表面をX線光電子分光装置により測定し、SiO2 膜の表面の窒化を確認した。
次の工程に進む前に、通常のレジスト除去においては、例えば、イオン注入工程後のレジスト除去の後にウェットエッチング等の工程を必要とするが、本発明の方法によれば、カーボン系薄膜の除去を行い、引き続き表面改質を行うことができ、レジスト除去と窒化による表面改質を連続して行うことができ、工程処理時間を削減することができる。
【0047】
(実施例8)
次に、レジスト除去と連続して表面改質を行ったSiO2 膜の不純物拡散に対するバリア特性を調べた。表面窒化したn型Si(100)基板上のSiO2 上にボロンの拡散源であるポリボロンフィルム(多結晶硼素膜)を置き、900℃の窒素雰囲気中で20分間熱処理を施し、ボロンの拡散処理を行った。
SiO2 膜上及びSi基板の裏面に電極となるアルミニウムを蒸着し、MOS(金属-酸化膜-半導体)ダイオードを作製し、CV(容量-電圧)測定を行った。
【0048】
図5は、ボロン拡散前後の、MOSダイオードのCV特性を示す図である。図の横軸は電圧(V)で、縦軸は最大容量で規格化した容量である。図において、表面改質を行わないMOSダイオードは、ボロン拡散を行わないMOSダイオードに対して、CV特性において約0.3eVの閾電圧の変化が観測され、また反転領域側の規格化容量が増加し、いずれの場合も基板表面の不純物密度が変化していることを示している。
ここで、表面改質を行わないMOSダイオードと、表面改質を行ったMOSダイオードとの工程は、表面改質工程以外は同一工程で行っている。従って、表面改質を行わないMOSダイオードは、ボロンがSiO2 膜を通過して、基板表面に到達して拡散され、そして基板の表面近傍の不純物密度を変化させたことを示している。一方、表面改質を行ったMOSダイオードは、ボロンの拡散処理を行わないMOSダイオードと同様のCV特性であり、CV特性の閾電圧の変化が全く観測されないことと、反転領域側の規格化容量もほぼ同じであるので、基板の不純物密度が変化していないことを示すものである。
【0049】
実施例8では、不純物のうち、Siに対して原子半径の小さいボロンの場合を示しているが、原子半径の大きい銅や鉄の場合には、さらに効果が大きい。本発明の方法により、層間絶縁膜の表面を窒化すれば銅や鉄などの重金属や水などによる層間絶縁膜への浸透または突き抜けを阻止することができる。
また、層間絶縁膜が低誘電率膜である場合にもSiO2 膜と同様に表面窒化が行え、その表面改質により層間絶縁膜を保護し、誘電率が高くなることを防止できた。
このように、本発明の表面改質法により表面窒化されたSiO2 などの層間絶縁膜は、不純物の浸透または突き抜けを阻止でき、また、層間絶縁膜を保護し、その誘電率が高くなることを防止できる。
【0050】
本発明は上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれる。例えば、上記実施の形態では、Siを基板に使用した例を説明した。しかしながら、酸と過酸化水素水によるウェットエッチングで基板が除去されやすいIII-V族化合物半導体の製造工程においては、Siの製造工程のように酸素プラズマアッシングと併用される酸によるウェットエッチングを行うことが困難である。従って本発明に用いる基板は、Siに限らず、各種化合物半導体などに適用し得ることは勿論である。
【0051】
【発明の効果】
上記説明から理解されるように、本発明の処理装置によれば、活性窒素種を比較的容易に多量に発生させることができる。したがって、レジストなどのカーボン系薄膜の除去や層間絶縁層の表面を窒化により改質する表面改質に適用することにより、従来法では困難とされていたイオン注入工程、ドライエッチング工程、熱処理工程などにより変質したレジストを除去し、清浄な表面とすることができる。
【0052】
また、本発明によれば、製造工程で変質したレジストを、従来の酸素プラズマによるドライアッシングとウェットエッチングによる方法の代りに、単一工程でレジストを完全に除去することができるので、工程の簡略化ができると共に、ウェットエッチングに使用していた薬品や、その後の洗浄に使用する純水の削減により、製造工程コストを削減することができる。また、効率よく活性窒素種を生成し、酸素を使用しないので、レジスト近傍の銅配線やアルミニウム配線などの金属配線を酸化することがない。
【0053】
さらに、本発明によれば、層間絶縁膜の表面改質を行うことができ、この表面改質により銅やボロンなどの不純物のバリアとなり、また、層間絶縁膜の誘電率が上昇しない。また、本発明によれば、レジスト除去後に、引き続いて、層間絶縁膜などの表面改質を行うことができるので、工程処理時間を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカーボン系薄膜の除去方法及び表面改質方法に用いる処理装置の構成を示す図である。
【図2】カーボン系薄膜除去方法において、イオン注入工程を経過した試料とイオン注入工程を行わない試料のレジストの除去速度とアンモニア流量の関係を示す図である。
【図3】表面改質方法において、表面窒化時間と窒化層厚の関係を示す図である。
【図4】レジストなどのカーボン系薄膜を除去した後に、表面改質方法により処理した基板の表面をX線光電子分光装置により測定した結果を示す図である。
【図5】ボロン拡散前後の、MOSダイオードのCV特性を示す図である。
【符号の説明】
1 カーボン系薄膜の除去・表面改質に適用する処理装置
2 チャンバ
3 高融点材料
4 抵抗加熱用外部電源
5 窒素原子を含んだガス
6 マス・フロー・コントローラ
7 真空ポンプ
8 レジスト付きSi基板
9 サセプタ
10 ヒーターまたは冷却機構
11 基板用温調器
12 放射温度計
13 ビュー・ポート
14 電圧計
15 電流計
16 窒素原子を含んだガス
17 コンダクタンス制御バルブ
18 活性窒素種
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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