TOP > 国内特許検索 > LnCuO(S,Se,Te)単結晶薄膜の製造方法 > 明細書

明細書 :LnCuO(S,Se,Te)単結晶薄膜の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4083486号 (P4083486)
公開番号 特開2003-318201 (P2003-318201A)
登録日 平成20年2月22日(2008.2.22)
発行日 平成20年4月30日(2008.4.30)
公開日 平成15年11月7日(2003.11.7)
発明の名称または考案の名称 LnCuO(S,Se,Te)単結晶薄膜の製造方法
国際特許分類 H01L  21/363       (2006.01)
H01L  21/36        (2006.01)
C30B  29/22        (2006.01)
C30B  33/02        (2006.01)
H01L  33/00        (2006.01)
FI H01L 21/363
H01L 21/36
C30B 29/22 Z
C30B 33/02
H01L 33/00 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2002-197744 (P2002-197744)
出願日 平成14年7月5日(2002.7.5)
優先権出願番号 2002045417
優先日 平成14年2月21日(2002.2.21)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成16年11月2日(2004.11.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】500037942
【氏名又は名称】太田 裕道
【識別番号】500038215
【氏名又は名称】折田 政寛
発明者または考案者 【氏名】細野 秀雄
【氏名】平野 正浩
【氏名】折田 政寛
【氏名】太田 裕道
【氏名】平松 秀典
【氏名】植田 和茂
個別代理人の代理人 【識別番号】100108671、【弁理士】、【氏名又は名称】西 義之
審査官 【審査官】酒井 英夫
参考文献・文献 特開2002-080222(JP,A)
K.Ueda et al.,Applied Physics Letters,2000年10月23日,77[17],p.2701-2703
K.Ueda et al.,Applied Physics Letters,2001年 4月16日,78[16],p.2333-2335
調査した分野 H01L 21/36,21/363,33/00,
C30B 29/22,
C23C 14/00-14/58
特許請求の範囲 【請求項1】
単結晶基板上にCuCu2SCuSCu2OCuOCuClCuCl2CuIのいずれかからなる基材薄膜を成長させ、さらにその上に、アモルファス又は多結晶LnCuOX(ただし、Lnは、ランタノイド元素又はYのうち少なくとも1種類、また、Xは、S、Se、又はTeのうち少なくとも1種類を意味する。)薄膜を堆積させた後、真空封入下で500℃以上の高温でアニールすることを特徴とするLnCuOX単結晶薄膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の単結晶基板が、YSZ、Y2O3、STO、Al2O3、又はMgOであることを特徴とする請求項1記載の単結晶薄膜の製造方法。
【請求項3】
LnCuOX蒸気を含む雰囲気でアニールすることを特徴とする請求項1に記載の単結晶薄膜の製造方法。
【請求項4】
堆積したLnCuOX膜の表面をYSZ単結晶基板で覆ってから真空封入することを特徴とする請求項1に記載の単結晶薄膜の製造方法。
【請求項5】
2枚のLnCuOX/基材薄膜/単結晶基板の積層膜、又はLnCuOX/基材薄膜/単結晶基板とLnCuOX/単結晶基板の積層膜の表面同士を張り合わせて、真空封入することを特徴とする請求項1に記載の単結晶薄膜の製造方法。
【請求項6】
単結晶基板上にCuCu2SCuSCu2OCuOCuClCuCl2CuIのいずれかからなる基材薄膜を成長させ、さらにその上に、アモルファス又は多結晶Ln1-yMyCuOX(ただし、Lnは、ランタノイド元素又はYのうち少なくとも1種類、Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znのうち少なくとも1種類、また、Xは、S、Se、又はTeのうち少なくとも1種類を意味する。0<y<1)薄膜を堆積させた後、真空封入下で500℃以上の高温でアニールすることを特徴とするLnMyCuOX(ただし、0<y<1)単結晶薄膜の製造方法。請求項1記載の方法で製造したLnCuOX単結晶薄膜又は請求項6記載の方法で製造したLn1-yMyCuOX単結晶薄膜を基材とし、さらにその上にLnCuOX’又はLn1-yMyCuOX’(ただし、0<y<1で、Lnは、ランタノイド元素又はYのうち少なくとも1種類、Mは、Mg、Ca、Sr、Ba、Znのうち少なくとも1種類、また、XとX’は、S、Se、又はTeのうち少なくとも1種類を意味し、XとX’は異なる元素とする)薄膜を堆積させた後、真空封入下で500℃以上の高温でアニールすることを特徴とする単結晶LnCuOXX'x(ただし、0<x<1)又は単結晶LnMyCuOX1-xX'x’ (ただし、0<y<1、0単結晶基板上にCuCu2SCuSCu2OCuOCuClCuCl2CuIのいずれかからなる基材薄膜を成長させ、さらにその上に、アモルファス又は多結晶LnCuOX1-xX'x(ただし、Lnは、ランタノイド元素又はYのうち少なくとも1種類、また、XとX’は、S、Se、又はTeのうち少なくとも1種類を意味し、XとX’は異なる元素とする。0<x<1)固溶体薄膜を堆積させた後、真空封入下で500℃以上の高温でアニールすることを特徴とする単結晶LnCuOXX'x(ただし、0
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、LnCuO(S,Se,Te)(ただし、Lnは、ランタノイド元素又はYのうち少なくとも1種類を意味する。)単結晶薄膜の製造方法、該製造方法で得られた単結晶薄膜、及び該単結晶薄膜を用いた光デバイス又は電子デバイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
(気相エピタキシャル膜の製造方法)
気相エピタキシャル成長とは、真空中で単結晶の基板上に蒸着膜を成長させ、基板結晶の規則的な原子配列の影響を反映して、基板結晶方位と蒸着膜の結晶方位が決まった関係で成長することを指す。エピタキシャル成長技術として代表的な薄膜成長技術は、スパッタリング法、化学気相蒸着(CVD)法、分子線エピタキシー(MBE)法、パルスレーザー蒸着(PLD)法などである。
【0003】
非熱平衡蒸発を用いるスパッタリング法は、現在最も広く普及し、工業的にも活用されている手法である。成膜法としてのスパッタリング法は1852年にW.Groveが発見したスパッタ現象を利用した方法である。スパッタ現象とは、ターゲット表面に入射する高運動エネルギー粒子(イオン又はターゲット表面近傍で電子により中性化された原子)が弾性衝突によりターゲット構成原子にその運動量を与え、反跳原子は近傍の原子と次々と衝突を繰り返し、結果として、ターゲット表面原子が放出されることを指す。スパッタリング法による製膜法は、放出されたターゲット構成原子を基板上に堆積させ薄膜化するものである。
【0004】
化学気相蒸着(CVD、Chemical Vapor Deposition)法は、塩化物あるいは有機金属化合物を原料にして、基板上で原料ガスを化学反応させ、所望の組成を有する薄膜を基板上に育成する方法であり、量産性に優れているため、半導体レーザーなどの実用材料に広く使われている。
【0005】
分子線エピタキシ-(MBE、Molecular Beam Epitaxy)法は、1968年当時に米国ベル研究所にいた、J.R.Arthurにより命名された技術であり、主に、GaAs等の化合物半導体を対象に開発された薄膜結晶成長法である。MBE法は、真空蒸着法の改良・発展形とみなすことが出来る。
【0006】
これは、超高真空中で、成長させようとする結晶の原材料の中性分子(又は原子)の流れ、すなわち分子線(原子線)の強度を精度よく制御し、これを精度よく加熱した基板上に入射させることによりエピタキシャル結晶成長を行わせる方法である。MBE法で取り扱うことのできる材料の種類は、化合物半導体、Siなどの元素半導体、さらには、各種の金属超伝導体、酸化物超伝導体と多岐に亘る。通常の真空蒸着法との違いは、成長室内の真空度が10-7~10-8Pa以下であり、結晶の表面が原子スケ-ルで常に清浄に保たれた状態で成長が行われ、分子線の強度が精度よく制御されていることである。
【0007】
パルスレーザー蒸着(PLD、Pulsed Lasered Deposition)法は、1960年のルビーレーザーの発振からまもなく研究開発され始めた手法で、実際は1980年代後半からエキシマレーザーを利用し、高温超伝導体、誘電体、有機高分子などの単結晶薄膜製造方法として応用されてきた。
【0008】
レーザーアブレーションとは、レーザー光を固体に照射した場合、レーザー光の照射強度があるしきい値以上になると、固体表面で、電子的、熱的、光化学的及び力学的エネルギーに変換され、その結果、様々な種類のフラグメント(中性原子、分子、正負イオン、ラジカル、クラスタなど)が爆発的に放出され、固体表面がエッチングされるプロセスのことをいう。
【0009】
PLD法とは、このレーザーアブレーションの原理を利用して、成長室内の真空度が10-7~10-8Pa以下の超高真空雰囲気下、又は反応性ガスをフローさせることにより充分制御された雰囲気下で、基板上に固体の単結晶薄膜を製造する方法である。PLD法の特徴は、同じ非熱平衡蒸着プロセスを用いるスパッタリング法と異なり、ターゲットの組成と得られる膜の組成ずれが少ないこと、ターゲット交換という非常に簡単な手法で様々な物質の単結晶薄膜の製造が可能であることなどが挙げられる。その特長を生かし、近年では、特に物質探索を行う研究分野で積極的に利用されている成膜方法である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、固相エピタキシャル法を用いてLnCuOX(ただし、Lnは、ランタノイド元素又はYのうち少なくとも1種類、また、Xは、S、Se、又はTeのうち少なくとも1種類を意味する。)エピタキシャル単結晶薄膜成長を実現する手法の開発を目的とする。LnCuOXはその多結晶膜においても励起子由来の発光が確認され、発光材料としては非常に有望であり、単結晶薄膜を得ることができれば次世代の紫外発光デバイス材料として利用することができる。しかしながら、LnCuOXは、その構成元素が蒸気圧の高いCu化合物及びX成分を含むものであり、真空雰囲気を利用した成膜方法を用いた場合、Cu及びX成分の組成ずれが大きく、単一相を得ることさえ困難である。
【0011】
また、LnCuOXはワイドギャップp型半導体である。一般的に、ZnO、SnO2など殆どのワイドギャップ物質はSiのようなバイポーラ物質ではなく、メインキャリアを電子とするn型半導体である。したがって、それらでFET(電界効果トランジスタ、Field Effect Transistor)構造を形成した場合のゲート電圧は正となる。しかしながら、ワイドギャップp型半導体であるLnCuOXによって同様のFET構造を構築すればそのゲート電圧は負で動作するため、前述のn型ワイドギャップ半導体FETと組み合わせることによってワイドギャップCMOS回路(Complimentary-MOS)、すなわち、高性能の透明電子回路の製造が可能となる。同様に、n型半導体と組み合わせることによってpn接合を用いたヘテロバイポーラトランジスタ又は発光ダイオードの製造も可能である。
【0012】
(LnCuOXに関して)
1981年、Palazziによって層状構造からなるオキシサルファイドLaCuOSの存在が初めて報告された(M.Palazzi,Acad.Sci.Paris C.R.292,789(1981))。LaCuOSの結晶系は正方晶系であり、空間群はNo.129、P4/nmmをとる。Z=2であり、格子定数はa=3.999Å、c=8.53Åである。(La2O2)2+相と(Cu2S2)2-相がそのc軸に沿って交互に積層した層状構造を有している。
【0013】
2000年、K.Uedaらによって、LaCuOSは、バンドギャップ約3.1eVの透明p型半導体であることが初めて報告され、次世代のワイドギャップp型半導体材料として有望であることが示唆された(K.Ueda,S.Inoue,S.Hirose,H.Kawazoe and H.Hosono,Appl.Phys.Lett.,77,2701(2000))。
【0014】
2001年、K.Uedaらによって、LaCuOSは、室温においても安定な励起子由来の吸収、及び発光特性を有しており、次世代の紫外発光素子材料として有望であることが報告された(K.Ueda,S.Inoue,H.Hosono,N.Sarukura and M.Hirano,Appl.Phys.Lett.,78,2333(2001))。
【0015】
このLaCuOSのLaサイトをその他のランタノイド元素と置換した場合、又はSサイトをSe、Teのカルコゲン元素と置換した場合でも同じ結晶構造を有することが知られており、同様の手法によって合成が可能であることが報告されている(D.O.Charkin,A.V.Akopyan and V.A.Dolgikh,Russian J.Inorg.Chem.,44,833(1999))。したがって、全てのLnCuOXに関して同じ手法で単結晶薄膜成長ができる。
【0016】
(LaサイトのM2+置換体)
LnサイトをSr及びCaの2価のアルカリ土類金属イオンで置換することによってLnCuOXの電気伝導度が約10S/cmまで増加することが知られている(K. Ishikawa,S.Kinoshita,Y.Suzuki,S.Matsuura,T.Takanishi,M.Aizawa, and Y. Suzuki,J.Electrochem.Soc.138,1166(1991)、及び Y. Takano,K.Yahagi,and K.Sekizawa,Physica A 206&207,764(1995))。また、多結晶薄膜においてもLaサイトをSrで置換することによって6.4×10-5S/cmから20S/cmまでその電気伝導度は増加し、最大ホール濃度は2.7×1020cm-3にまで達することが報告されている(参考文献:H.Hiramatsu,M.Orita,M.Hirano,K.Ueda,and H.Hosono,J.Appl.Phys.91,9177(2002))。
【0017】
(LaCuOSとLaCuOSe固溶体について)
LaCuOSとそのSサイトをSeで置換したLaCuOSeは互いに全率固溶の関係にあり、LaCuOS1-xSex(0<x<1)という固溶体が存在する(K.Ueda and H.Hosono,Thin Solid Films,411,115(2002))。置換量xの値を0から1へ変化させることによって、そのバンドギャップを3.1eVから2.8eVまで連続的にコントロールできることが知られている(K.Ueda,H.Hosono,J.Appl. Phys.91,4768(2002))。したがって、置換量xとその厚みを厳密に制御すれば発光波長を制御できるばかりか、量子井戸構造を構築することも可能となる。(従来のLnCuOX膜の製造方法及びその問題点)
LnCuOXはワイドギャップp型半導体であり、紫外発光素子の活性層として期待されている材料であるが、単結晶薄膜の製造は極めて困難であった。従来、LnCuOX薄膜は、スパッタリング法により、適切な条件でアモルファス膜を成長させ、その後高温でアニールすることによって製造されていた(K.Ueda,S.Inoue,S.Hirose,H.Kawazoe and H.Hosono,Appl.Phys.Lett.77,2701(2000))。
【0019】
しかしながら、このような方法で製造される膜はすべて多結晶であり、発光素子、電子素子材料として十分に高い発光効率、電子移動度を示していなかった。したがって、発光材料として、又はp型伝導性半導体として実用化するためには、結晶性の良い薄膜を成長させる有効な単結晶製造方法の開発が切望されていた。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明では、こうした問題を解決するために、まず、基材薄膜を単結晶基板上に成長させ、該基材薄膜上に、アモルファス、又は多結晶LnCuOX(ただし、Lnは、ランタノイド元素又はYのうち少なくとも1種類、また、Xは、S、Se、又はTeのうち少なくとも1種類を意味する)を堆積させ、それを真空封入下で500℃以上の高温でアニールすることによりLnCuOX単結晶薄膜を成長することを特徴とするLnCuOX単結晶薄膜の製造方法である。
【0021】
本発明のLnCuOX単結晶薄膜は、基材となる薄膜上に一旦形成されるが、基材薄膜として、Cu、Cu2S、CuS、Cu2O、CuO、CuCl、CuCl2、又はCuI膜を用いた場合、該基材成分のうちのCu,O,又はSはLnCuOX中に混入し、また、Cl、Iは蒸発するため消失し、基材薄膜を成長させたYSZ、Y2O3、STO、Al2O3、MgOいずれかの単結晶基板上に、直接LnCuOXがエピタキシャル成長した状態になる。
【0022】
基材薄膜として、Cu、Cu2S、CuS、Cu2O、CuO、CuCl、CuCl2、又はCuI膜以外のAg、Ag2S、Ag2O、AgO、AgCl、AgIなどのAg化合物、又はAuを用いた場合、これらの薄膜成分はLnCuOXと未反応のままYSZ、Y2O3、STO、Al2O3、MgOいずれかの単結晶基板上にそのまま残るか、一部LnCuOX内に拡散し不純物として残留する。
【0023】
本発明の方法においては、加熱処理中にCu及びX成分の蒸発を抑制するため、LnCuOX/基材薄膜/単結晶基板の積層膜を真空封入された状態でアニールする。
【0024】
こうして製造されたLnCuOX単結晶膜は、室温で励起子による発光効率が高いことを利用して紫外発光デバイス(ダイオード、レーザー)の活性層として用いることが可能である。こうして製造されたLnCuOX単結晶膜は、電界効果型トランジスタ素子(FET)構造を構築することにより、ゲート電圧が負で動作する透明FETの作製が可能であり、n型半導体と組み合わせることによってCMOS回路及びヘテロバイポーラ素子の製造が可能である。
【0025】
【発明の実施の形態】
本発明のLnCuOX単結晶薄膜の製造方法において、基材薄膜の成長には、スパッタリング法、CVD法、MBE法、PLD法などの成膜法を適宜使用できる。単結晶基板としては、YSZ、Y2O3、STO、Al2O3、又はMgOなどを使用できるが、特に、YSZ(100)、Y2O3(100)、又はMgO(100)単結晶は、1200℃以下の高温においてもLnCuOX化合物と化学反応することがなく、単結晶基板として好ましい。
【0026】
基板結晶面内の最近接アニオン間距離(A基板)が、LnCuOXのC面内の最近接アニオン間距離(A)に近い結晶基板、すなわち格子間距離不整合の少ない結晶基板が好ましい。例えば、LaCuOSでは、A=2.82、LaCuOSeでは、A=2.88であり、MgO(100)では、A基板=2.96、YSZ(100)では、A基板=2.58、Y2O3(100)では、A基板=2.92である。したがって、LaCuOS・Se単結晶薄膜成長に対しては、格子間距離整合の観点から、Y2O3、MgO、YSZの順で、結晶基板としてより好ましい。
【0027】
成膜工程としては、まず、YSZ、Y2O3、MgOなどの単結晶基板上に、Cu、Cu2S、CuS、Cu2O、CuO、CuCl、CuCl2、CuI、Ag、Ag2S、Ag2O、AgO、AgCl、AgI、Auのいずれかの基材薄膜を成長させる。基材薄膜としてCu又はCu系化合物を用いた場合は、Cu、O、S成分はその上に堆積されるLnCuOX薄膜中に混入する。しかし、Cu及びCu系化合物以外の場合、基材薄膜成分は、単結晶基板とLnCuOXとの界面に残留するだけでなく、一部はLnCuOX膜中に拡散する。
【0028】
該基材薄膜上に、LnCuOX焼結体をターゲットとして、LnCuOSの場合にはH2S雰囲気下で、LnCuOSe及びLnCuOTeの場合には、アルゴン又は、真空雰囲気下でLnCuOX薄膜を堆積させる。堆積方法は、スパッタリング法及びPLD法が簡便であり好ましいが、この手法に限られるものではない。基材上に堆積させるLnCuOX膜は、多結晶膜でもアモルファスでもよい。
【0029】
LnCuOX1-xX'x(XとX’は、S、Se、又はTeのうち少なくとも1種類を意味し、XとX’は異なる元素、0<x<1)固溶体焼結体をターゲットとして、固溶体膜を堆積させてもよい。この場合は、最終的に該固溶体組成の単結晶膜が得られる。異なるLn又はXを含むターゲットを用い、異なる組成を有する膜を多層に堆積してもよい。この場合にも、最終的には、すべての膜組成を膜厚で重み付けした平均化組成を有する固溶体単結晶膜が得られる。【0030】
得られたLnCuOX/基材薄膜/単結晶基板の積層膜を真空封入し、500℃以上、好ましくは1000℃以上の温度で加熱処理を行う。500℃未満では拡散が不十分なため均一な単結晶LnCuOX薄膜が得られない。また、加熱温度が1200℃程度以上になると単結晶基板とLnCuOX化合物が反応するため、また、石英ガラスが軟化して、封入管として使用できなくなるので好ましくない。
【0031】
Cu及びX成分は、その蒸気圧が高いため、真空下で高温でアニールすると、処理中に該LnCuOX薄膜から、Cu、X成分が蒸発し、加熱処理後に得られる薄膜組成が大幅に変化してしまい、良質なLnCuOX単結晶が得られないことがある。Cu、X成分の蒸発を抑制するためには、まず、加熱前に該積層膜を真空排気された石英管などの密閉容器中に封入してしまうとよい。
【0032】
さらに、ごく僅かなCu、X成分の蒸発を抑制するためには、真空封入された状態で、かつ加熱雰囲気下でCu、X成分の蒸気圧を補償するために、密閉容器中に該単結晶薄膜と同化学式のLnCuOX蒸気を発生させ、LnCuOX蒸気を含む雰囲気でアニールするとよい。たとえば、LnCuOX粉末を密閉容器中に同封することもその方法の1つである。
【0033】
ただし、そのLnCuOX粉末を用いる場合、加熱中に発生するLnCuOX蒸気が固化し、該単結晶薄膜表面に微粒子が析出して荒れることがある。それを防ぐには、YSZのようなLnCuOX膜と反応性のない基板でLnCuOX膜の表面を覆ってから真空封入するとよい。
【0034】
さらに、Cu、X成分の蒸発を抑制するためには、2枚のLnCuOX/基材薄膜/単結晶基板の積層膜の表面同士を張り合わせて、真空封入するとよい。2枚を張り合わせる場合、その一方は基材薄膜のないLnCuOX/単結晶基板の積層膜でもよい。この場合は、基材薄膜を堆積した方だけがLnCuOX単結晶薄膜となる。
【0035】
多結晶の場合と同様に、Lnサイトを2価の金属イオンM(Mは、Mg,Ca,Sr,Ba,Znのうちの少なくとも1種類)で置換することによって、効果的にホールキャリアーを生成することも可能となる。この場合、焼結体ターゲット中に2価の金属イオンを含有させることで膜中のLnサイトを 該金属イオンで置換することができる。その置換量をコントロールすることによってLn1-yMyCuOX(ただし、0<y<1)単結晶薄膜の電気伝導度を10S/cmから80S/cmまで連続的に制御することができる。
【0036】
格子間距離不整合が非常に大きな結晶基板とLnCuOX薄膜の組合せでは、単結晶膜を育成しにくいことがある。例えば、YSZ(100)基板上に、xが0.5以上のLaCuOS1-xSex膜を育成する場合、単結晶膜が得にくい。こうした場合でも、まず、上記手法で、格子間距離不整合の少ないLnCuOS薄膜単結晶をYSZ(100)基板上に育成し、さらにその上に、LnCuOSe薄膜を堆積させた後、真空封入下で、500℃以上の高温でアニールすることにより、単結晶LaCuOS1-xSex固溶体単結晶薄膜を得ることができる。すなわち、LnCuOX単結晶薄膜中に、アモルファス又は多結晶状態のLnCuOX'を固相拡散させることにより、結晶基板との格子不整合の大きなLnCuOX1-xX'x単結晶薄膜を育成することができる。この場合、Lnのサイトを2価の金属イオンMで置換してもよい。
固溶体は、x値を制御することにより、連続的に、発光波長を変化させることができるので、発光材料として利用するときに有用である。また、x値により、禁制帯エネルギー幅も連続的に変化するので、異なるx値の単結晶膜を交互に積層することにより、人工超格子構造を作製することができる。
【0037】
こうして得られたLnCuOX単結晶薄膜又はLn1-yMyCuOX単結晶薄膜は、ZnO、ZnS、In2O3、SnO2のいずれかのn型半導体と積層構造を形成することによって発光ダイオードの製造が可能である。
こうして得られたLnCuOX単結晶薄膜又はLn1-yMyCuOX単結晶薄膜は、ZnO、ZnO:Mgなどとダブルへテロ構造を構築することによって半導体レーザーの製造が可能である。
こうして得られたLnCuOX単結晶薄膜又はLn1-yMyCuOX単結晶薄膜は、YSZをゲート絶縁膜として堆積し、Pt-Pd又はITOをソース、ドレイン電極とすることによってFETの製造が可能である。
こうして得られたLnCuOX単結晶薄膜又はLn1-yMyCuOX単結晶薄膜は、ZnO、ZnS、In2O3、SnO2のいずれかのn型半導体とヘテロ構造を形成し、各表面にオーミック電極を形成することによってヘテロバイポーラトランジスタの製造が可能である。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
(実施例1)
1.Cu薄膜の成長
YSZ(100)単結晶基板(10mm平方×0.5mm厚)上に、基板温度200℃でPLD法によりCu薄膜を成長させた。X線反射率及び蛍光X線測定から求めたCu薄膜の厚みは5nmであった。成長したCu薄膜の結晶性をHRXRDにより評価したところ、YSZ(100)基板上にCuは(111)配向しており、そのチルト角は0.01度であった。
【0039】
2. LaCuOS/Cu積層薄膜の作製
YSZ(100)基板上に成長したCu薄膜を基材として、基板温度を室温として、パルスレーザー蒸着法(PLD法)により、LaCuOS焼結体をターゲットとしてH2S雰囲気下でLaCuOSを堆積させた。X線反射率測定からLaCuOS薄膜の膜厚は200nmであることが分かった。堆積したLaCuOS薄膜はアモルファスであった。
【0040】
3. LaCuOS単結晶薄膜の作製
作製したLaCuOS/Cu/YSZ積層膜2枚の表面同士を張り合わせて、蒸気圧の高いCu、S成分の蒸発を抑制するため、LaCuOS粉末(平均粒径約0.1mm, 約0.1g)と一緒に石英ガラス管に真空封入して、該石英ガラス管を大気中、1000℃で30分間加熱してアニール処理を施した。加熱処理終了後は室温まで炉内で冷却した。
【0041】
4. LaCuOS単結晶薄膜の結晶性
作製したLaCuOS単結晶薄膜の結晶性は高分解能X線回折(HRXRD,Rigaku製ATX-G,CuKα1)を用いて調べた。図1に、Out-of-plane XRDパターンを示す。LaCuOSの(001)面の強い回折ピークがYSZ(100)ピークとともに観測された。LaCuOS(001)が YSZ(100)上に強く配向していることを示し、ロッキングカーブ測定からLaCuOS(001)面のチルト角は0.1度であった。また、基材薄膜として成長させたCu薄膜の回折は消滅した。作製したLaCuOS薄膜はIn-plane測定からエピタキシャル成長していることが明らかになった。エピタキシャル関係は次の通りである。
LaCuOS(001)//YSZ(100)
LaCuOS(110)//YSZ(010)
【0042】
5. LaCuOS単結晶薄膜の光吸収特性及び発光特性
作製したLaCuOS単結晶薄膜をクライオスタット(ダイキン製,4.2K)に取り付けて、系内を真空排気した後、温度を10Kまで冷却した。図2に、10K~300Kまでの光吸収スペクトルの温度依存性を示す。励起子由来のシャープな吸収が得られた。図2中に、比較例として、LaCuOS多結晶の6Kにおける吸収スペクトルを示した。
【0043】
発光スペクトルはレンズで集光してバンドルファイバーに導き、分光して電荷結合デバイス(CCD)を用いて検出した。Nd:YAGの4倍波(波長266nm)を薄膜に照射することで励起を行った。図3に、10K~300Kまでの発光スペクトルの温度依存性を示す。中心波長390nmのシャープな紫外発光が得られた。
【0044】
(実施例2)
1.Y2O3単結晶基板の作製
YSZ(100)結晶基板(10mm平方×0.5mm厚)上に、基板温度900℃でPLD法によりY2O3単結晶薄膜を成長させた。X線反射率から求めたY2O3薄膜の厚みは35nmであった。作製したY2O3単結晶薄膜の結晶性をHRXRDにより評価したところ、YSZ(100)基板上にY2O3は(100)配向しており、そのチルト角は0.5度であった。In-plane測定から作製したY2O3薄膜はエピタキシャル成長していることが明らかになった。エピタキシャル関係は次の通りである。
Y2O3(100)//YSZ(100)
Y2O3(010)//YSZ(010)
【0045】
2. Cu/Y2O3/YSZ積層薄膜の作製
実施例1-1と同様の作製法により、Y2O3/YSZ単結晶基板上にCu薄膜を成長させた。成長したCu薄膜の結晶性をHRXRDにより評価したところ、Y2O3(100)/YSZ(100)基板上にCuは(111)配向しており、そのチルト角は0.01度であった。
【0046】
3. LaCuOS/Cu/Y2O3積層薄膜の作製
Y2O3/YSZ(100)単結晶基板上に成長したCu薄膜を基材として、基板温度を室温として、パルスレーザー蒸着法(PLD法)により実施例1-2と同じ条件でLaCuOSを堆積させた。X線反射率測定からLaCuOS薄膜の膜厚は200nmであることが分かった。作製したLaCuOS薄膜はアモルファスであった。
【0047】
4. LaCuOS単結晶薄膜の作製
実施例1-3と同様に単結晶LaCuOS薄膜を作製した。
【0048】
5. LaCuOS単結晶薄膜の結晶性
作製した単結晶薄膜の結晶性は高分解能X線回折(HRXRD,Rigaku製ATX-G,CuKα1)を用いて調べた。図4に、Out-of-plane XRDパターンを示す。Y2O3とCu又はLaCuOSは未反応であった。また、基材として成長させたCu薄膜の回折は消滅した。LaCuOSの(001)面の強い回折ピークがY2O3(100)及びYSZ(100)ピークとともに観測された。LaCuOS(001)がY2O3(100)上に強く配向していることを示し、ロッキングカーブ測定からLaCuOS(001)面のチルト角は0.1度であった。
【0049】
(実施例3)
格子間距離不整合の小さな基板上への単結晶LaCuOS1-xSex(0<x<1)固溶体薄膜の製造例実施例1-1と同様の作製法により、MgO(100)単結晶基板上にCu薄膜を成長させた。成長したCu薄膜の結晶性をHRXRDにより評価したところ、MgO(100)基板上にCuは(001)配向しており、そのチルト角は0.01度であった。
【0050】
2. LaCuOS/Cu/MgO積層薄膜の作製
MgO(100)単結晶基板上に成長したCu薄膜を基材として、基板温度を室温として、パルスレーザー蒸着法(PLD法)により実施例1-2と同じ条件でLaCuOSを堆積させた。堆積したLaCuOS薄膜はアモルファスであった。
【0051】
3. LaCuOSe/LaCuOS/Cu/MgO積層薄膜の作製
LaCuOS/Cu/MgO積層膜を基材として、基板温度を室温として、LaCuOSeをパルスレーザー蒸着法(PLD法)により、LaCuOSe焼結体をターゲットとして高真空下(~10-5Pa)で堆積した。LaCuOS上に堆積したLaCuOSe薄膜はアモルファスであった。上記の1.から3.を繰り返し、LaCuOSe/LaCuOS/Cu/MgO積層膜のLaCuOSe膜厚とLaCuOS膜厚の組み合わせが異なる3種類の薄膜を作製した。また、実施例1と同様の方法でLaCuOSeのみ、LaCuOSのみの薄膜を作製した。それぞれの膜厚は下記のとおりである。
(アモルファスLaCuOS膜厚):(アモルファスLaCuOSe膜厚)
=(200:0)、(150:50)、(120:80)、(60:140)、(0:200)
【0052】
4.LaCuOS1-xSex(x=0,0.25,0.4,0.7,1.0)単結晶薄膜の作製
作製した3種類のLaCuOSe/LaCuOS/Cu/MgO積層膜、LaCuOS/Cu/MgO膜、及びLaCuOSe/Cu/MgO膜とYSZ(100)基板を張り合わせて、蒸気圧の高いCu、S、Se成分の蒸発を抑制するため、LaCuOSおよびLaCuOSe粉末(ともに平均粒径0.1mm,約1gずつ)と一緒に石英ガラス管に真空封入して、該石英ガラス管を大気中、1000℃で6時間加熱してアニール処理した。加熱処理後は室温まで炉内で冷却した。
【0053】
5.LaCuOS1-xSex (x=0,0.25,0.4,0.7,1.0)単結晶薄膜の結晶性
作製した単結晶薄膜の結晶性は高分解能X線回折(HRXRD,Rigaku製ATX-G,CuK SUB>1)を用いて調べた。図5に、Out-of-plane XRDパターンを示す。LaCuOS1-xSex(x=0,0.25,0.4,0.7,1.0)の(003)面および(004)面の強い回折ピークがMgO(200)ピークとともに観測された。すべてのLaCuOS1-xSex(x=0,0.25,0.4,0.7,1.0)がYSZ(100)上に強く配向していることを示している。またSサイトにSeが固溶するに従って、結晶のc軸長が伸びたこと(回折位置が低角へシフトしていることと対応する)が分かる。作製したLaCuOS1-xSex (x=0,0.25,0.4,0.7,1.0)薄膜はIn-plane測定からすべてエピタキシャル成長していることが明らかになった。エピタキシャル関係は次の通りである。
LaCuOS1-xSex(x=0,0.25,0.4,0.7,1.0)(001)//MgO (100)
LaCuOS1-xSex(x=0,0.25,0.4,0.7,1.0)(110)//MgO (110)
【0054】
6.LaCuOS1-xSex (x=0,0.25,0.4,1.0)単結晶薄膜の発光特性
発光特性を実施例1-5と同じ手法で評価した。図6に室温の発光スペクトルを示す。励起子由来のシャープな発光が認められた。Se濃度の増加に伴いその発光波長は長波長側へシフトした。Se置換濃度を厳密に制御することによって、発光波長は室温において390nm(x=0)から430nm(x=1)まで連続的に変化させることが可能である。
すなわち、格子間距離不整合の小さなMgO(100)基板を用いたときは、本実施例に示した方法により、該基板上へ単結晶LaCuOS1-xSex(0<x<1)固溶体薄膜をエピタキシャル成長させることができた。(実施例4) 格子間距離不整合の大きな基板上への単結晶LnCuOX1-xX'x(X=S,X'=Se)固溶体の製造例
1.LaCuOS単結晶薄膜の作製
実施例1-1から1-4と同様に単結晶LaCuOS薄膜をYSZ(100)上に成長させた。X線反射率測定からそのLaCuOS薄膜の膜厚は140nmであった。
【0056】
2.LaCuOSe/LaCuOS積層薄膜の作製
単結晶LaCuOSを基材として、基板温度を室温として、PLD法により、LaCuOSe焼結体をターゲットとして高真空下(~10-5Pa)でLaCuOSeを堆積させた。X線反射率測定からLaCuOSe薄膜の膜厚は60nmであった。堆積したLaCuOSe薄膜はアモルファスであった。
【0057】
3.LaCuOS1-xSex (x=0.7)単結晶薄膜の作製
作製したLaCuOSe/LaCuOS/YSZ積層膜2枚の表面同士を張り合わせて、蒸気圧の高いCu、S、Se成分の蒸発を抑制するため、LaCuOS及びLaCuOSe粉末(ともに平均粒径0.1mm, 約1gずつ)と一緒に石英ガラス管に真空封入して、該石英ガラス管を大気中、1000℃で6時間加熱してアニール処理した。加熱処理後は室温まで炉内で冷却した。
【0058】
4.LaCuOS1-xSex (x=0.7)単結晶薄膜の結晶性
作製した単結晶薄膜の結晶性は高分解能X線回折(HRXRD,Rigaku製ATX-G,CuKα1)を用いて調べた。図7に、Out-of-plane XRDパターンを示す。なお、比較のためLaCuOS単結晶のパターンも掲載した。LaCuOS1-xSex(x=0.7)の(003)面の強い回折ピークがYSZ(200)ピークとともに観測された。LaCuOS1-xSex(x=0.7)がYSZ(100)上に強く配向していることを示している。
【0059】
また、単結晶LaCuOSのパターンとの比較から、サイトにSeが70%固溶したことによって、結晶のc軸長が伸びたこと(回折位置が低角へシフトしていることと対応する)が分かる。ロッキングカーブ測定から、LaCuOS1-xSex(x=0.7)の(003)面のチルト角は0.2度であった。作製したLaCuOS1-xSex (x=0.7)薄膜はIn-plane測定からエピタキシャル成長していることが明らかになった。エピタキシャル関係は次の通りである。
LaCuOS1-xSex(x=0.7) (001)//YSZ(100)
LaCuOS1-xSex(x=0.7) (110)//YSZ(010)
なお、実施例4-1及び4-2において、それぞれの膜厚を変化させることによって、最終的に得られる置換固溶体の置換量xを0から1.0まで連続的にコントロールすることが可能である。
すなわち、格子間距離不整合の大きなYSZ(100)基板を用いたときは、本実施例に示した方法により、該基板上に、単結晶LaCuOS1-xSex (0<x<1)固溶体薄膜をエピタキシャル成長させることができた。(比較例1)
(通常のPLDを実施した例)
LaCuOS焼結体をターゲットとして用い、H2S雰囲気下、基板温度500~900℃で、PLD法によりYSZ(100)単結晶基板上に薄膜を堆積させた。蛍光X線分析による組成分析を行ったところ、La/Cu原子比は基板温度の上昇に伴い増加する傾向を示した。また、膜中のS濃度は基板温度の上昇に伴い減少する傾向を示した。これらのデータから、基板温度の上昇に伴い、蒸気圧の高いCu、S成分の昇華が起こったと結論できる。作製した薄膜のXRD測定を行ったところ、LaCuOSの単一相のパターンは一切認められなかった。
【0061】
図8に、例として基板温度500℃、H2S雰囲気下でPLD法により堆積した膜のXRDパターンを示す。LaCuOSのピークのほかにLa2O3及びLa2O2Sのピークが観測されている。この結果は、膜中のLa濃度がCuと比較して高いという組成分析の結果とも一致する。本比較例から、PLDなどの気相法では、直接的にLnCuOX薄膜を作製することが困難であることが分かる。
【0062】
(比較例2)
(基材薄膜なしで同様の加熱処理を実施した例)
LaCuOS焼結体をターゲットとして用い、基板温度は室温で、PLD法によりYSZ(100)単結晶基板上に薄膜を堆積させた。得られた薄膜を、実施例1-3と同様の手法で真空封入後、1000℃で30分間加熱処理を施した。加熱処理終了後は室温まで炉内で冷却した。作製した膜のHRXRD測定から、作製した薄膜は多結晶単一相のLaCuOSであることが確認できた。この結果から単一相LaCuOS膜は得られるが、単結晶LaCuOSではなく、基材とするCu膜がなければ単結晶LaCuOS膜は得られないことを示している。図9に、基材薄膜としてCu薄膜を用いた場合と、用いなかった場合のXRDパターンを示す。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例1で製造したLnCuOX単結晶薄膜の結晶性をOut-of-plane XRDパターンで示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1で製造したLnCuOX単結晶薄膜の10Kから300Kにおける光吸収スペクトルを示すグラフである。
【図3】 図3は、実施例1で製造したLnCuOX単結晶薄膜の10Kから300Kにおける発光スペクトルを示すグラフである。
【図4】図4は、実施例2で製造したLnCuOX単結晶薄膜の結晶性をOut-of-plane XRDパターンで示すグラフである。
【図5】図5は、実施例3で製造したLaCuOS1-xSex(x=0,0.25,0.4,0.7,1.0)のOut-of-plane XRDパターンである。
【図6】図6は、実施例3で製造したLaCuOS1-xSex(x=0,0.25,0.4,1.0)の10Kでの発光スペクトルである。
【図7】図7は、実施例4で製造した製造した単結晶LnCuOXX’固溶体薄膜の結晶性をOut-of-plane XRDパターンで示すグラフである。
【図8】図8は、比較例1で製造したLnCuOX膜の結晶相をOut-of-plane XRDパターンで示すグラフである。
【図9】図9は、比較例2で製造したLnCuOX膜とCu基材薄膜を用いた場合のLnCuOX薄膜の結晶性をOut-of-plane XRDパターンで比較した結果を示すグラフである。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8