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明細書 :人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4166905号 (P4166905)
公開番号 特開2000-342692 (P2000-342692A)
登録日 平成20年8月8日(2008.8.8)
発行日 平成20年10月15日(2008.10.15)
公開日 平成12年12月12日(2000.12.12)
発明の名称または考案の名称 人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータ
国際特許分類 A61F   2/82        (2006.01)
G09B   9/00        (2006.01)
FI A61M 29/00
G09B 9/00 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 10
出願番号 特願平11-158780 (P1999-158780)
出願日 平成11年6月4日(1999.6.4)
審査請求日 平成18年4月24日(2006.4.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
発明者または考案者 【氏名】梅津 光生
【氏名】堀切 芳一
【氏名】丹治 一幸
【氏名】曽我 新吾
個別代理人の代理人 【識別番号】100080089、【弁理士】、【氏名又は名称】牛木 護
【識別番号】100083024、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 昌久
審査官 【審査官】宮崎 敏長
参考文献・文献 特開平08-030185(JP,A)
特開平11-137694(JP,A)
特開平01-207035(JP,A)
特開平09-173443(JP,A)
調査した分野 A61F 2/82 - A61F 2/94
G09B 9/00
特許請求の範囲 【請求項1】
人工冠動脈及び冠動脈ステントの挙動を予測するための人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータであって、所定の間隔で拍動して液体を吐出するポンプ機構を備えた冠循環装置と、前記冠循環装置の液体流路に設けられた冠動脈ステントが挿入される可撓性チューブと、前記可撓性チューブに近在して設けられた液体流路の絞り機構とを有し、前記絞り機構が前記ポンプ機構と同期可能であることを特徴とする人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータ。
【請求項2】
前記ポンプ機構がエアポンプを有し、前記絞り機構が前記液体流路に設けられた弾性チューブと、この弾性チューブに近接した圧迫体とからなり、前記圧迫体が前記エアポンプに連動して設けられていることを特徴とする請求項1記載の人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータ。
【請求項3】
前記可撓性チューブがシリコンチューブであり、人の冠動脈に模して調整されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータ。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、冠動脈の狭窄および閉塞部をバルーンで拡張後、その部位の内腔を維持するために用いられる冠動脈ステントの動的状況下における性能評価シミュレータに関する。また、本発明は、人工冠動脈の動的状況下における性能評価シミュレータに関する。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
近年、狭心症や心筋梗塞症などの虚血性心疾患治療として様々な治療法が開発されている。虚血性心疾患とは、心臓に栄養を送る冠状動脈が動脈硬化によって狭窄し、心筋が血流不全に陥る状態であり、このような虚血性心疾患に対しては、従来のバイパス手術に変わって外科的治療を必要としない経皮的冠動脈形成術(PTCA)が行われている。
【0003】
このPCTAは、バルーンカテーテルを足の付け根の動脈などから差し込んで、心臓の大動脈における病変まで挿入し、狭窄している冠動脈の内腔でバルーンを膨らませることによって拡張させることにより行われる。しかしながら、このバルーンカテーテルによるPTCAでは血管内腔面積を増大させる治療法であるため、開大後の血管には程度の差はあれ、内膜の剥離や冠動脈解離が生じる。このような損傷を受けた血管には血栓などが発現しやすく、開大された病変が急速に再閉塞を起こす可能性があった。このため、従来は再度狭窄箇所にPTCAを繰り返すか、あるいは切開手術を行っていた。
【0004】
このような問題を解決するためにPTCA後冠動脈内に内腔を維持するためのコイル状あるいは円筒メッシュ状の金属製支持物である冠動脈ステントを挿入し、冠動脈が再び狭くなろうとする傾向に抗して、脈管の開放性を維持することが行われている。このような冠動脈ステントは、上述したように血管の閉塞に伴う外圧に対する径方向の充分な支持力が必要とされる一方、冠状動脈は心筋に覆われているので心筋が収縮する際には冠動脈も収縮することになるが、この際冠動脈ステントの柔軟性が乏しいと内側から血管を傷つけたりするおそれがあることから、ある程度の可撓性、曲げ強度などを有する必要がある。しかしながら、これらの冠動脈ステントの物性について測定基準のようなものは存在せず、冠動脈ステントを供給する各企業がそれぞれ動物実験や臨床試験などを行った結果に基づき製造しているのが現状であった。
【0005】
このような冠動脈ステントの物性測定は、例えば、図11に示すように水Wを張った外圧槽31と空気のみの内圧槽32とに直径3mmφ程度の管路33を横設し、この管路33を外圧槽31内に延在させて、その一部を冠動脈に見立てたシリコンチューブ33Aにより構成し、このシリコンチューブ33A内に管路33に形成された挿入部33Bから冠動脈ステント34を挿入したものであり、外圧槽31内の水圧Pを冠動脈にかかる外圧に内圧槽32内の空気の圧力Qを冠動脈内圧に模擬させることにより、外圧及び内圧の変化に伴う冠動脈ステント34の物性を評価するものである。また、これとは別に冠動脈ステントを挿入したシリコンチューブに300mmHg程度の圧力をかけて、その加圧の前後にわたる形状変化を観察することなども行われている。
【0006】
しかしながら、これらの方法はいずれも冠動脈ステントに一定の圧力が加わった条件、すなわち静的特性しか評価できず、脈動する冠動脈における動的特性を評価できるものではなかった。
【0007】
特に冠動脈は心筋に覆われており、心筋の収縮に伴いそれ自身径方向に周期的に荷重が繰り返しかかるという特異な状況に置かれることになるが、かかる状況における冠動脈ステントの動特性を評価しうる装置は従来なかった。もし冠動脈の実際に置かれている状況に近い条件での冠動脈ステントの力学的特性をシミュレートして、その力学的特性を評価することができれば、冠動脈ステントの有効性、安全性の判断材料を客観的に提供することができ、冠動脈ステントに対する幅広いニーズに対応することができる。また、冠動脈の実際に置かれている状況に近い条件に人工冠動脈を置くことができれば、人工冠動脈の有効性、安全性の判断材料を客観的に提供することができる。
【0008】
本発明はこれらの課題に鑑みてなされたものであり、冠動脈ステントの動的状況下における性能評価シミュレータを提供することを目的とする。また、本発明は、人工冠動脈の動的状況下における性能評価シミュレータを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載の人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータは、人工冠動脈及び冠動脈ステントの挙動を予測するための人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータであって、所定の間隔で拍動して液体を吐出するポンプ機構を備えた冠循環装置と、前記冠循環装置の液体流路に設けられた冠動脈ステントが挿入される可撓性チューブと、前記可撓性チューブに近在して設けられた液体流路の絞り機構とを有し、前記絞り機構が前記ポンプ機構と同期可能であるものである。
【0010】
このため、冠循環装置の液体流路に生理食塩水などの水を充填しておき、所定の圧力及び所定の間隔で水が循環するようにポンプ機構を拍動させるとともに、このポンプ機構と液体流路の絞り機構とを同期させることにより、心筋の脈動に伴う血流に近似した状態を再現することができる。そして、このような冠循環装置に設けた可撓性チューブ内に冠動脈ステントを設置することにより、その動的状況下における力学的挙動を測定することができる。
【0011】
また、請求項2記載の人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータは、前記請求項1において、前記ポンプ機構がエアポンプを有し、前記絞り機構が前記液体流路に設けられた弾性チューブと、この弾性チューブに近接した圧迫体とからなり、前記圧迫体が前記エアポンプに連動して設けられているものである。このため、ポンプ機構と絞り機構とを容易に同期させることができるとともに、圧迫体に供給するエア量を調整することで弾性チューブを押圧する圧力を容易に調節することができ、各種条件に対応可能となっている。
【0012】
さらに、請求項3記載の人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータは、前記請求項1又は2において、前記可撓性チューブがシリコンチューブであり、人の冠動脈に模して調整されたものである。このため、人体の冠動脈に近い条件で人工冠動脈及び冠動脈ステントの挙動をシミュレートすることができる。
【0013】
【発明の実施形態】
以下、本発明の人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータについて詳細に説明する。図1は、本発明の一実施例による人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータを示しており、同図において、1は心臓の左心室にみたてたポンプであり、このポンプ1には、所定の周期で断続的にエアを吐出・吸入する機能を有する駆動装置2が接続されていて、生理食塩水Wを拍出するようになっている。このポンプ1には、それぞれ吐出弁3A及び流入弁4Aを有する吐出口3及び吸入口4が形成されていて、これら吐出口3及び吸入口4に液体流路5の起端及び終端がそれぞれ接続されている。この液体流路5には、生理食塩水Wの圧力調整用のコンプライアンスタンク6とオーバーフロータンク7とが設けられていて、これら両タンク間の液体流路5Aにはピンチコックなどによる流量調節機構8が設けられている。また、この液体流路5には冠動脈に相当する分岐管路9が形成されていて、この分岐管路9にはステントの挿入部材10と可撓性チューブたるシリコンチューブ11と、絞り機構12とが取り付けられている。この絞り機構12は、弾性チューブであるゴムチューブ13と、このゴムチューブ13に近接して設けられた圧迫体たるカフ14と、カフ14を位置決めする支持部材15とを有し、このカフ14は前述した駆動装置2に連通している。そして、これらポンプ1と液体流路5と分岐管路9とにより冠循環装置が構成されている。このような装置においてシリコンチューブ11は冠動脈に相当し、該シリコンチューブ11内には冠動脈ステント17が挿入されている。上述したようなシミュレータにおいて、シリコンチューブ11は、生体の冠動脈を模擬して調整されたものである。
【0014】
前記構成につきその作用について説明する。まず、冠循環装置16を冠動脈循環の模擬回路とするためにポンプ1の内圧と(左心室圧(LVP)に相当)と冠循環装置16を流れる生理食塩水Wの圧力(大動脈圧(AoP)に相当)を調整する。これらの圧力には、それぞれオーバーフロータンク7の水頭差とコンプライアンスタンク6内の空気圧とがそれぞれ該当する。したがって、オーバーフロータンク7の液面高さと、コンプライアンスタンク6の空気量と、流量調節機構8の絞り量とにより調節することができる。
【0015】
そして、ポンプ1を起動させて生理食塩水Wを吐出口3から図示黒塗の矢印の方向に吐出させながら、駆動装置2から周期的に空気圧(図示白塗りの矢印)をかけて生理食塩水Wを拍動させると、駆動装置2はカフ14にも連通しているのでポンプ1の拍動に同期してカフ14が膨張・収縮を繰り返し、その膨張時にゴムチューブ13を圧迫することになる。これにより、分岐管路9を流通する生理食塩水Wの圧力を心臓の拍動に伴う冠動脈の収縮に対応して変化させることにより、冠動脈圧(CAP)を擬似的に再現することができる。
【0016】
このような冠動脈の模擬回路において冠動脈ステント17を評価する場合には、例えば、デジタルマイクロスコープカメラなどにより冠動脈ステント17とシリコンチューブ11との接触部分における冠動脈ステント17の径及びシリコンチューブ11の径を断続的に測定して冠動脈ステント17の弾性変形の度合いを判断することができる。また、シリコンチューブ11の径の変化から人工冠動脈としての性能を評価することもできる。
【0017】
以上本発明について前記実施形態に基き説明してきたが、本発明は前記実施形態に限られるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば、冠動脈ステント性能評価シミュレータの液体流路5の長さは、使用するシミュレータの大きさや各種構成要素の配置に応じて、吐出弁3A及び流入弁4Aの水撃や乱流などによる圧波全体の乱れがなるべく少なくなるように適宜設定すればよい。
【0018】
【実施例】
以下の具体的実施例に基き本発明をさらに詳細に説明する。
牛の冠動脈による試験
シリコンチューブを生体冠動脈に近いものとするために、牛の心臓から注意深く冠動脈を摘出し、この冠動脈の細かな分岐を糸で結んで穴を塞いだ。次に図2に示すように冠動脈21の両端に三方活栓22、22Aを取り付け、その上から糸25で縛り固定した。そして、冠動脈21の長手方向の変形を防ぐために、三方活栓22、22Aを固定し、一方の三方活栓22に圧力トランスデゥーサー23を他方の三方活栓22Aにはシリンジ24を取り付けた。
【0019】
そして、この冠動脈21にシリンジ24で少量づつ水を注入し、その時の圧力を3回測定した。結果を図3に示す。
冠動脈模擬シリコンチューブの作製
前記「牛の冠動脈による試験」とヒトのデータ(圧力ひずみ弾性係数の値)の結果に基づき、ヒトの冠動脈を模擬できるシリコンチューブを作製した。図4はこのシリコンチューブの下記「模擬シリコンチューブの評価試験」に記載の方法で測定した内圧の増加に伴う体積増加率の関係が人間の冠動脈における圧力ひずみ弾性係数に従うことを示している。
模擬シリコンチューブの評価試験
図5に示すように作製した模擬シリコンチューブ41をコネクタ41Aにより水タンク42,43に掛け渡すように取付け、試験回路を構成した。そして、水タンク42には、三方活栓46を介してシリンジ44と圧力トランスデゥーサー45とを設けた。なお、46Aは水タンク41に設けられた三方活栓46Aである。このような装置において水タンク42,43に水を満たし、シリコンチューブ41の内外圧差を0mmHgに調整した後、シリンジ44から試験回路内に水0.1mlずつ注入し、そのときの内圧を圧力トランスデゥーサー45により測定し、またシリコンチューブ41の内外圧力差とチューブの体積増加率を求めて最も人体の値に近いものをシミュレータに取り付けた。
冠動脈ステント性能評価シミュレータへの適用試験
図1に示す本実施例の冠動脈ステント性能評価シミュレータにおいて、シリコンチューブ11として前述した模擬シリコンチューブを用いて、エアポンプ駆動圧力190mmHg、減圧条件-30mmHg、ポンプレート70bpm、心収縮フラクション35%、大動脈圧(コンプライアンスタンク6内の空気圧)80~120mmHgの条件にて作用流体として生理食塩水を循環させ、コンプライアンスタンク6内の空気圧及び分岐管路9内の圧力をそれぞれ測定した。これらの圧力は、それぞれ生体における大動脈圧(AoP)及び冠動脈圧(CAP)に該当する値である(以下、単に大動脈圧(AoP)及び冠動脈圧(CAP)とする場合あり)。結果を図6にグラフとして示す。また、比較のために生体における大動脈圧と冠動脈圧との関係を図7に示す。
【0020】
図7から生体において大動脈と冠動脈の波形はおよそ同波形を描いていることが分かる。そして、この図7と図6とを対比すると、本発明のシミュレータは生体のデータを十分に模擬していることがわかる。
【0021】
このシミュレータで得た心拍出量と冠動脈流量は、3.7リットル/minのとき0.1リットル/minであった。生体のデータによれば、正常成人の心臓の冠動脈流量は心拍出量の4~5%に相当するが、本実施例では冠動脈流量は心拍出量の約2.5%となっている。これは、本実施例のシミュレータでは、冠循環を一つの分岐で模擬しているためであり、このことからもシミュレータが心拍出量と冠動脈の関係について生体のデータを十分に模擬しているということができる。
【0022】
次に本実施例のシミュレータにおける大動脈圧(AoP)と冠動脈流量(CAF)との関係を図8に、生体における大動脈圧と冠動脈流量との関係を図9に示す。図9から生体では冠動脈における流量は収縮期に減少し、拡張期にその分増加して流れることがわかる。収縮期に冠動脈流量が減少するのは、冠動脈が心筋により外から圧迫されるためである。この図9と図8とを対比すれば、本実施例のシミュレータにより得られた大動脈圧と冠動脈流量の関係は、生体のデータによるそれと近似する傾向を示すものであり、生体の冠動脈流を十分に模擬しているということができる。
【0023】
これらの計測データにより本実施例によるシミュレータにより生体の冠動脈特性に近い圧流量波形が得られることが確認できた。したがって、このシミュレータを用いれば生体外で冠動脈ステントの物性を評価することが可能である。
冠動脈ステントの拍動下での挙動
前述した冠動脈ステント性能評価シミュレータのシリコンチューブ11(模擬シリコンチューブ)の内側に冠動脈ステント17を挿入し、生理食塩水Wを拍動させたときの冠動脈ステント17の径の変化率をデジタルマイクロスコープカメラにより1秒あたり30コマ分ずつ冠動脈ステント17とシリコンチューブ11との接触部分における冠動脈ステント径及びシリコンチューブ11の径を測定することにより算出した。この際、シミュレータの拍動を停止して同様に測定した冠動脈ステント17の径及びシリコンチューブ11の径を基準値とした。結果を図10に示す。また、冠動脈ステントの径、シリコンチューブの径の変化率の最大値、最小値をそれぞれ7回計測し、これに基づき平均値を算出した結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
JP0004166905B2_000002t.gif図10及び表1から冠動脈ステントの径も拍動の影響により変化していることがわかる。図10とシミュレータの拍動周期とを比較検討したところ、この冠動脈ステント径及びシリコンチューブ径の変化の周期は、シミュレータの拍動周期と一致するものであった。また、冠動脈ステント径及びシリコンチューブ径は、冠動脈圧及び冠動脈流量の増減とほぼ等しく変化していることがわかった。
【0025】
次に、表1から拍動下における冠動脈ステント径は、基準値(拍動停止時における冠動脈ステント径)より約0.4~1%程度拡張しているのがわかる。これは、拍動時にはシリコンチューブ内はシミュレータの大動脈圧(80~120mmHg)により加圧されており、その分だけチューブ内径が広がるため、冠動脈ステントがこれに追従して拡大するためであると考えられる。また、冠動脈ステント径の周期的な変形は、シリコンチューブ内圧が80~120mmHgへと最大で約40mmHg変位しているので、冠動脈ステントも一拍中に最大で約40mmHg分の圧低下に伴うチューブによる圧縮を受けることになる。これにより冠動脈ステント径は一拍ごとに周期的変形を繰り返すものと考えられる。
【0026】
このように本実施例のシミュレータを用いることにより、冠動脈ステントのシリコンチューブに対する追従性やシリコンチューブの径のを保持性、さらには長期間の拍動に伴うこれらの特性の変化などを測定することにより冠動脈ステントの動的環境下におかる力学的物性を評価することができる。また、シリコンチューブを人工冠動脈とすれば、人工冠動脈の動的環境下におかる力学的物性を評価することもできる。
【0027】
以上、冠動脈ステントの力学的挙動の測定方法の一例を示したが、本実施例のシミュレータでは、所望とする物性に応じた測定方法を選択することにより、種々の冠動脈ステント及び人工冠動脈の物性を評価することができる。
【0028】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータは、人工冠動脈及び冠動脈ステントの挙動を予測するための人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータであって、所定の間隔で拍動して液体を吐出するポンプ機構を備えた冠循環装置と、前記冠循環装置の液体流路に設けられた冠動脈ステントが挿入される可撓性チューブと、前記可撓性チューブに近在して設けられた液体流路の絞り機構とを有し、前記絞り機構が前記ポンプ機構と同期可能であるものであるので、人体の冠動脈に近い動的環境下における人工冠動脈及び冠動脈ステントの力学的挙動を測定することができる。
【0029】
また、人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータは、前記請求項1において、前記ポンプ機構がエアポンプを有し、前記絞り機構が前記液体流路に設けられた弾性チューブと、この弾性チューブに近接した圧迫体とからなり、前記圧迫体が前記エアポンプに連動して設けられているものであるので、ポンプ機構と絞り機構とを容易に同期させることができるとともに、圧迫体に供給するエア量を調整することで弾性チューブを押圧する圧力を容易に調節することができ、各種条件に対応可能となっている。
【0030】
さらに、請求項3記載の人工冠動脈及び冠動脈ステント性能評価シミュレータは、前記請求項1又は2において、前記可撓性チューブがシリコンチューブであり、人の冠動脈に模して調整されたものであるので、人体の冠動脈に近い条件で人工冠動脈及び冠動脈ステントの挙動をシミュレートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例による冠動脈ステント性能評価シミュレータを示す概略図である。
【図2】牛の冠動脈特性の試験装置を示す平面図である。
【図3】牛の冠動脈における体積と圧力との関係を示すグラフである。
【図4】模擬シリコンチューブの体積の増加に伴う内圧の増加率の測定結果を示すグラフである。
【図5】模擬シリコンチューブの体積の増加に伴う内圧の増加率の測定装置を示す概略図である。
【図6】本発明の一実施例による冠動脈ステント性能評価シミュレータにおける大動脈圧(AoP)及び冠動脈圧(CAP)に相当する数値の測定結果を示すグラフである。
【図7】人体における大動脈圧及び冠動脈圧の値を示すグラフである。
【図8】前記冠動脈ステント性能評価シミュレータにおける大動脈圧と冠動脈流量との関係を示すグラフである。
【図9】生体における大動脈圧と冠動脈流量との関係を示すグラフである。
【図10】前記冠動脈ステント性能評価シミュレータにおける冠動脈ステントの径及びシリコンチューブの径の変化率を示すグラフである。
【図11】従来の静的環境下における冠動脈ステント性能評価シミュレータを示す概略図である。
【符号の説明】
1 ポンプ(ポンプ機構)
2 駆動装置(ポンプ機構、エアポンプ)
5 液体流路(冠循環装置)
5A 液体流路(冠循環装置)
9 分岐管路(冠循環装置)
11 シリコンチューブ(可撓性チューブ、人工冠動脈)
12 絞り機構
13 ゴムチューブ(弾性チューブ、絞り機構)
14 カフ(圧迫体、絞り機構)
15 支持部材(絞り機構)
16 冠循環装置
17 冠動脈ステント
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10