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明細書 :軟磁性薄膜及びその製造方法並びにその薄膜を用いた薄膜磁気ヘッド

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4041948号 (P4041948)
公開番号 特開2003-282320 (P2003-282320A)
登録日 平成19年11月22日(2007.11.22)
発行日 平成20年2月6日(2008.2.6)
公開日 平成15年10月3日(2003.10.3)
発明の名称または考案の名称 軟磁性薄膜及びその製造方法並びにその薄膜を用いた薄膜磁気ヘッド
国際特許分類 H01F  10/16        (2006.01)
G11B   5/31        (2006.01)
FI H01F 10/16
G11B 5/31 C
請求項の数または発明の数 9
全頁数 14
出願番号 特願2002-080093 (P2002-080093)
出願日 平成14年3月22日(2002.3.22)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2001年9月27日秋田大学において社団法人日本応用磁気学会が開催した第25回日本応用磁気学会で発表
審査請求日 平成16年10月26日(2004.10.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】899000068
【氏名又は名称】学校法人早稲田大学
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
発明者または考案者 【氏名】逢坂 哲彌
【氏名】横島 時彦
【氏名】田中 厚志
【氏名】金子 大樹
個別代理人の代理人 【識別番号】100079304、【弁理士】、【氏名又は名称】小島 隆司
【識別番号】100114513、【弁理士】、【氏名又は名称】重松 沙織
【識別番号】100120721、【弁理士】、【氏名又は名称】小林 克成
審査官 【審査官】田中 純一
参考文献・文献 特開昭64-008605(JP,A)
特開平10-188221(JP,A)
特開2001-101618(JP,A)
特開平07-220921(JP,A)
調査した分野 H01F 10/00 - 10/32
H01F 41/14 - 41/34
特許請求の範囲 【請求項1】
Co、Ni、Fe、B及びCを含有し、Co含有量が40~80at%、Fe含有量が15~40at%、Ni含有量が5~20at%、B含有量が0.5~5at%、C含有量が0.4~5at%であり、Coイオン、Feイオン、Niイオン、ホウ素系還元剤を含有し、錯化剤としてアミノ基を有する錯化剤を単独で若しくはアミノ基を含まない錯化剤と組み合わせて使用した無電解めっき浴を用いた無電解めっき法により作製され、飽和磁束密度(Bs)が1.6T以上、かつ比抵抗が40μΩcm以上であることを特徴とする軟磁性薄膜。
【請求項2】
保磁力が8Oe以下であることを特徴とする請求項1記載の軟磁性薄膜。
【請求項3】
アミノ基を有する錯化剤が、β-アラニン、ジエチレントリアミン、L-グルタミン酸塩及びグリシンから選ばれ、アミノ基を含まない錯化剤がクエン酸ナトリウム又は酒石酸ナトリウムである請求項1又は2記載の軟磁性薄膜。
【請求項4】
ホウ素系還元剤としてジメチルアミンボランを0.01~0.2モル/リットルで用いたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の軟磁性薄膜。
【請求項5】
Coイオン、Feイオン、Niイオン、ホウ素系還元剤を含有し、錯化剤としてアミノ基を有する錯化剤を単独で若しくはアミノ基を含まない錯化剤と組み合わせて使用した無電解めっき浴中に基板を浸漬させて無電解めっきを行い、上記基板上に請求項1又は2記載の軟磁性薄膜を形成することを特徴とする軟磁性薄膜の製造方法。
【請求項6】
アミノ基を有する錯化剤が、β-アラニン、ジエチレントリアミン、L-グルタミン酸塩及びグリシンから選ばれ、アミノ基を含まない錯化剤がクエン酸ナトリウム又は酒石酸ナトリウムである請求項記載の軟磁性薄膜の製造方法。
【請求項7】
ホウ素系還元剤としてジメチルアミンボランを0.01~0.2モル/リットルで用いたことを特徴とする請求項又は記載の軟磁性薄膜の製造方法。
【請求項8】
Coイオン濃度が0.02~0.2モル/リットル、Feイオン濃度が0.005~0.05モル/リットル、Niイオン濃度が0.001~0.01モル/リットルであることを特徴とする請求項5~7のいずれか1項記載の軟磁性薄膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1~のいずれか1項記載の軟磁性薄膜を薄膜磁気ヘッドの記録材料の一部若しくは全部に用いた薄膜磁気ヘッド。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記憶装置用薄膜磁気ヘッド、さらには薄膜インダクタや薄膜トランスなどの磁気デバイスの磁極材料として最適な軟磁性薄膜及びその製造方法、並びに磁気記憶装置用の薄膜磁気ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
軟磁性薄膜は薄膜磁気ヘッドや薄膜インダクタ、薄膜トランスなどの工業分野などで広く用いられている。薄膜磁気ヘッドにおいては、高密度磁気記録を行うために、ますます強くかつ高速に変化する書き込み磁界を発生させる必要がある。特に高記録密度を達成するためには、ヘッドにはヘッドそのものの微細化とヘッドコア先端の書き込み部の微細化が必要とされている。また、微細なヘッドでは、そのコア材料からの書き込み能力が減少するために、高い書き込み能力を得るためには高飽和磁束密度(Bs)が必要である。また、高速書き込みを行う際に渦電流の影響が大きくなりすぎて磁化変化が追随できず、書き込み能力が急速に低下する。渦電流を抑制するためには、磁性体の電気抵抗率を大きくする必要がある。
【0003】
無電解めっき法は、現行の電気めっき法に比べ、外部電源を用いずに成膜が可能という特徴から、微細で複雑なパターンにおいても均一な膜厚、均一な組成が得やすい成膜方法である。そのために、無電解めっき法による磁気ヘッドコアの作製が期待される。また、薄膜インダクタ、薄膜トランスなどにおいても、ヘッド同様に高飽和磁束密度を有する軟磁性薄膜が求められており、より微細なパターンが求められている。
【0004】
無電解めっき法によるヘッドコア作製の試みは、たとえば、Electrochemical Society Proceedings,“MAGNETIC MATERIALS, PROCESSES, AND DEVICES VI APPRICATIONS TO STRAGE AND MICROELECTROMECHANICAL SYSTEMS(MEMS)”PV2000-29巻、297~308ページに無電解CoFeBめっきを用いた検討が報告されている。
【0005】
無電解めっき法によるヘッドコア作製の試みは、たとえば、特開2001-101618号公報に、無電解めっき法により作製した軟磁性多層膜を用いた検討が報告されている。
【0006】
高Bsを有する軟磁性薄膜としては、たとえば、特許第2821456号公報に、電気めっき法によるBsが1.7~2.1Tを有するCoNiFe軟磁性薄膜の製造方法が示されている。
【0007】
高Bsかつ高比抵抗を有する軟磁性薄膜としては、たとえば、特許第3211815号公報に、電気めっき法によるBsが1.7~2.0T、比抵抗30~200μΩcmを有するCoNiFe軟磁性薄膜の製造方法が示されている。
【0008】
無電解めっき法による高Bsを有する軟磁性薄膜としては、たとえば、特開平7-220921号公報に、Bs=1.6~1.8Tを有するCoFeB軟磁性薄膜の作製方法が示されているが、比抵抗は20~30μΩcmと推測され、高い値を有していない。
【0009】
無電解めっき法による高Bsを有する軟磁性薄膜としては、たとえば、Meeting Abstracts of Joint International Meeting of the 200th Meeting of theElectrochemical Society and the 52ndMeeting of the International Society of Electrochemistry,No.664に、Bsが1.8~1.9Tを有するCoNiFeB軟磁性薄膜の作製方法が示されているが、比抵抗は20~30μΩcmと推測され、高い値を有していない。
【0010】
無電解めっき法による高比抵抗を有する軟磁性薄膜としては、たとえば、表面技術協会第101回講演大会講演要旨集258ページに記載されているが、比抵抗は最大130μΩcmを示しているものの、Bsは1.3T以下であり、高いBsと高い比抵抗を有する軟磁性薄膜は実現していない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情を鑑みてなされたもので、無電解めっき法により得られ、特にはBsが1.6T以上、比抵抗が40μΩcm以上の値を有する軟磁性薄膜、その製造方法、その軟磁性薄膜を用いた薄膜磁気ヘッドを提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者は、高速かつ高い書き込み能力を有する微細なヘッドを作るためには、無電解めっき法により高Bsかつ高比抵抗を有する軟磁性薄膜を作製する必要がある点に鑑み、鋭意検討をおこなった結果、Coイオン、Feイオン、Niイオン、ジメチルアミンボラン等のホウ素系還元剤、更に錯化剤としてβ-アラニン、ジエチレントリアミン、L-グルタミン酸塩、グリシン等のアミノ基を含む錯化剤を含有する無電解めっき浴を用いて、Co、Ni、Fe、B及びCを含有し、Co含有量が40~80at%、Fe含有量が15~40at%、Ni含有量が5~20at%、B含有量が0.5~5at%、C含有量が0.4~5at%である薄膜が、高い飽和磁束密度と優れた軟質磁気特性と高い比抵抗(特には比抵抗が40μΩcm以上)を兼ね備えた軟磁性薄膜の作製が可能であることを知見し、本発明をなすに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、
(1)Co、Ni、Fe、B及びCを含有し、Co含有量が40~80at%、Fe含有量が15~40at%、Ni含有量が5~20at%、B含有量が0.5~5at%、C含有量が0.4~5at%であり、Coイオン、Feイオン、Niイオン、ホウ素系還元剤を含有し、錯化剤としてアミノ基を有する錯化剤を単独で若しくはアミノ基を含まない錯化剤と組み合わせて使用した無電解めっき浴を用いた無電解めっき法により作製され、飽和磁束密度(Bs)が1.6T以上、かつ比抵抗が40μΩcm以上であることを特徴とする軟磁性薄膜、
(2)保磁力が8Oe以下であることを特徴とする(1)の軟磁性薄膜
(3)アミノ基を有する錯化剤が、β-アラニン、ジエチレントリアミン、L-グルタミン酸塩及びグリシンから選ばれ、アミノ基を含まない錯化剤がクエン酸ナトリウム又は酒石酸ナトリウムである(1)又は(2)記載の軟磁性薄膜、
(4)ホウ素系還元剤としてジメチルアミンボランを0.01~0.2モル/リットルで用いたことを特徴とする(1)~(3)のいずれか1項記載の軟磁性薄膜、
(5)Coイオン、Feイオン、Niイオン、ホウ素系還元剤を含有し、錯化剤としてアミノ基を有する錯化剤を単独で若しくはアミノ基を含まない錯化剤と組み合わせて使用した無電解めっき浴中に基板を浸漬させて無電解めっきを行い、上記基板上に(1)又は(2)記載の軟磁性薄膜を形成することを特徴とする軟磁性薄膜の製造方法、
(6)アミノ基を有する錯化剤が、β-アラニン、ジエチレントリアミン、L-グルタミン酸塩及びグリシンから選ばれ、アミノ基を含まない錯化剤がクエン酸ナトリウム又は酒石酸ナトリウムである(5)記載の軟磁性薄膜の製造方法、
(7)ホウ素系還元剤としてジメチルアミンボランを0.01~0.2モル/リットルで用いたことを特徴とする(5)又は(6)記載の軟磁性薄膜の製造方法、
(8)Coイオン濃度が0.02~0.2モル/リットル、Feイオン濃度が0.005~0.05モル/リットル、Niイオン濃度が0.001~0.01モル/リットルであることを特徴とする(5)~(7)のいずれか1項記載の軟磁性薄膜の製造方法、
(9)(1)~(4)のいずれか1項記載の軟磁性薄膜を薄膜磁気ヘッドの記録材料の一部若しくは全部に用いた薄膜磁気ヘッド
を提供する。
【0014】
本発明によれば、より微細で高速で高い書き込み能力を付与することが可能であり、高密度、高速記録が可能となる。
【0015】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0016】
本発明の軟磁性薄膜は、無電解めっき法により作製されたもので、Co、Ni、Fe、B及びCを含有し、Co含有量が40~80at%、Fe含有量が15~40at%、Ni含有量が5~20at%、B含有量が0.5~5at%、C含有量が0.4~5at%である。この場合、Bの含有量は好ましくは0.5~2at%、Cの含有量は好ましくは0.4~2at%、より好ましくは0.4~1.0at%である。
【0017】
また、本発明の軟磁性薄膜の比抵抗は、40μΩcm以上が好ましく、より好ましくは60μΩcm以上、更に好ましくは80μΩcm以上である。比抵抗の上限としては、限定されるものではないが、通常300μΩcm以下、特に200μΩcm以下である。
【0018】
更に、本発明の軟磁性薄膜は、通常、Bsが1.6T以上、特には1.7~2.1Tを示す。
【0019】
保磁力は通常8Oe以下、好ましくは5Oe以下、特に好ましい条件(撹拌条件下)では3Oe以下になる。
【0020】
なお、異方性磁界を25~30Oeと高く付与することが可能である。軟磁性薄膜に適度の磁気異方性を付与したい場合には、めっき中に直交磁場をかけることが好ましい。また、成膜後に磁場中で熱処理を行うことでも異方性を付与することが可能である。
【0021】
本発明の軟磁性薄膜は、Coイオン、Feイオン、Niイオン及びホウ素系還元剤を含有し、更にアミノ基を有する錯化剤を含むめっき浴を用いる無電解めっき法により、容易に形成可能である。
【0022】
めっき浴中におけるCoイオン濃度、Feイオン濃度及びNiイオン濃度は、目的とする膜組成や要求される膜形成速度などに応じて適宜決定するが、通常、Coイオン濃度を0.02~0.2モル/リットル、Feイオン濃度を0.005~0.05モル/リットル、Niイオン濃度を0.001~0.01モル/リットルとする。より好ましくはCoイオン濃度を0.04~0.1モル/リットル、Feイオン濃度を0.02~0.06モル/リットル、Niイオン濃度を0.02~0.06モル/リットルとする。なお、Coイオン、Feイオン、Niイオン濃度の合計は0.3モル/リットル以下、好ましくは0.2モル/リットル以下であることがよい。
【0023】
これらの金属イオンの供給源は、硫酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、硝酸塩等の水溶性の塩から選択することが好ましく、特に硫酸塩を用いることが好ましい。
【0024】
還元剤としてはホウ素系還元剤を用いる必要がある。ホウ素系還元剤としては、ジメチルアミンボラン、トリメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム等が好ましく、特にジメチルアミンボランが好ましい。ホウ素系還元剤の濃度は、0.01~0.50モル/リットルであることが好ましい。特にジメチルアミンボランの場合は、0.01~0.03モル/リットルが好ましく、0.02~0.025モル/リットルが特に好ましい。
【0025】
めっき浴中には、錯化剤イオンが必要である。錯化剤としては、アミノ基を分子内に有する水溶性有機化合物を用いる。この有機化合物としては、ジエチレントリアミン、α-アラニン、β-アラニン、グルタミン酸又はそのナトリウム塩等の水溶性塩、グリシンなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0026】
上記分子内にアミノ基を有する有機化合物は、本発明の磁性薄膜を製造する際に、炭素供給源となるものであり、その添加量は、上記磁性薄膜中の炭素含有量を与える有効量であるが、好ましくは2.0モル/リットル以下、より好ましくは0.1~0.8モル/リットルである。
【0027】
また、錯化剤イオンとして、アミノ基を分子内に有する水溶性有機化合物と、アミノ基を分子内に有さない水溶性有機化合物とを組み合わせて、錯化剤として用いることが望ましい。アミノ基を分子内に有さない錯化剤イオンとしては有機酸イオンが好ましく、具体的には、酒石酸、クエン酸、コハク酸、マロン酸、リンゴ酸、グルコン酸や、これらの塩を錯化剤としてめっき浴に添加することが好ましく、特に酒石酸若しくはその塩及びクエン酸若しくはその塩、特に酒石酸ナトリウム及びクエン酸ナトリウムを用いることが好ましい。錯化剤イオンの組み合わせ及び濃度は、用いる錯化剤の組み合わせに応じて適宜決定するが、錯化剤イオンの総濃度は、好ましくは2.0モル/リットル以下、より好ましくは0.1~0.8モル/リットルである。
【0028】
めっき浴中には、アンモニア源が含まれることが好ましい。アンモニア源としては硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムなどのアンモニウム塩が好ましい。アンモニアを添加することで析出速度が増加し、軟磁気特性が向上するが、添加量が多いと逆に析出速度が減少するために、適量添加することが必要である。添加濃度は組み合わされる錯化剤と析出速度により適宜決定するが、0.05モル/リットル以上が好ましく、より好ましくは0.1~0.5モル/リットルである。
【0029】
めっき浴には亜リン酸イオン等の結晶調整剤を用いてもよく、このときの濃度は0.01モル/リットル以上が好ましい。
【0030】
めっき浴には、必要に応じ、ホウ酸等の緩衝剤、ドデシル硫酸ナトリウム等の界面活性剤を添加してもよい。
【0031】
めっき反応を促進させ、析出速度を増加させることにより軟磁気特性が得られ易いために、めっき液の撹拌を行うことが好ましい。このときの撹拌方法は、基板の揺動や、回転ディスク電極撹拌めっき装置、めっき浴循環濾過装置によるめっき液の撹拌、パドルめっき装置による撹拌など、定量的な撹拌が好ましい。このときの撹拌速度は、撹拌手法により異なるが、撹拌を行わないときに比べ析出速度を増加させる撹拌速度で行うことが好ましく、特に析出速度が10%以上増加する範囲で行うことが好ましい。
【0032】
浴pHは2~10、特に7~10とすることが好ましい。
【0033】
浴温は、40~95℃が好ましく、60~80℃がより好ましい。
【0034】
本発明において、軟磁性薄膜を析出させる基板は用途に応じて適宜選択すればよく、導電層の有無を問わない。この場合、基板の種類に応じ、軟磁性薄膜形成前に、無電解めっき等による公知の各種活性化処理を施してもよい。
【0035】
なお、めっき膜(軟磁性薄膜)の厚さは適宜選定されるが、通常0.3~5μm、特に0.5~3μmの範囲である。
【0036】
以下、本軟磁性薄膜(めっき膜)のヘッドへの応用方法について図面を参照して説明する。
【0037】
図1は、本発明の磁気ヘッドの一実施形態であり、図1(a)は、磁気ヘッドのエアベアリングサーフェース(ABS)と垂直な断面図及び図1(b)は、ABSから見た断面図である。
【0038】
ここで、1は基板、2は被覆層、3は下シールド層、4はギャップ層、5は磁気抵抗効果素子、6は下部磁性層、6’は上シールド層、7は下部磁極端、8はギャップ層、9は上部磁極端、10は書き込みコイル、11は絶縁層、12は上部磁性層、13は被覆層を示す。
【0039】
図1に示す薄膜磁気ヘッドは、下部磁性層6とギャップ層8が積層され、その上にパターニングされた上部磁極端9を配置し、パターニングした絶縁層11と導体層からなる書き込みコイル10を配置し、それらの上に上部磁性層12が積層されてなる記録用ヘッドと、下シールド層3の上に2つのギャップ層4に挟まれた磁気抵抗効果素子5を配置し、それらの上に上シールド層6’が積層されてなる再生用ヘッドとからなる。本第1の実施の形態では、下部磁性層6と上シールド層6’は同一のものである。ここで、下シールド層3は基板1上にスパッタ等により形成されたアルミナからなる被覆層2上に形成されている。さらに、上部磁性層12上は、スパッタ等によって形成されたアルミナからなる被覆層13によって覆われている。
【0040】
薄膜磁気ヘッドは、インダクティブヘッド素子を形成する上部磁性層12、上部磁極端9及び下部磁性層6のうち全部若しくは一部に本発明の軟磁性薄膜(CoNiFeBCめっき膜)を配置可能である。この場合、無電解めっき法で作製するために、絶縁層4、11若しくはギャップ層8上に電気めっきに必要な導通層を用いる必要性が無く、非常に薄い金属層若しくはPd活性化などを用いればよい。その上に無電解めっき法により本発明の薄膜を形成することができ、無電解めっき法であるために非常に微細な部分においても、均一に再現性よく成膜が可能である。
【0041】
なお、どの部分にCoNiFeBC薄膜を用いるかは、組み合わせる軟磁性薄膜のBs、比抵抗、及び膜厚により異なる。
【0042】
本発明のBs及び比抵抗が高く、軟磁性薄膜の微細パターンの作製が容易であるという点を活かすのならば、上部磁極端9のみに用いればよい。他の下部磁性層6及び上部磁性層12には、電気めっき及び無電解めっきによるパーマロイ薄膜などを用いることができる。
【0043】
さらに、本発明のBs及び比抵抗が高く、軟磁性薄膜の微細パターンの作製が容易であるという点を活かし、上部磁極端9、下部磁性層6及び上部磁性層12のすべてのインダクティブヘッド用磁極材料に用いてもよい。
【0044】
本発明の特に比抵抗が高く、軟磁性薄膜の微細パターンの作製が容易であるという点を活かし、下部磁性層6及び上部磁性層12の片方若しくは両方に、本発明のCoNiFeBC膜を用いてもよい。
【0045】
本発明よりBsが高い軟磁性薄膜と組み合わされる場合、上部磁極端9に本発明より高いBsを有する軟磁性薄膜を用い、下部磁性層6及び上部磁性層12の片方若しくは両方に、本発明のCoNiFeBC膜を用いてもよい。
【0046】
上部磁性層12及び下部磁性層6の膜厚は、渦電流による高周波での透磁率低下を避けるため5μm以下、特に3μm以下が好ましい。
【0047】
図2は、本発明の磁気ヘッドの他の実施形態であり、図2(a)は、磁気ヘッドのエアベアリングサーフェース(ABS)と垂直な断面図及び図2(b)は、ABSから見た断面図である。
【0048】
図2に示す薄膜磁気ヘッドは、下部磁性層6、パターニングされた下部磁極端7とギャップ層8が積層され、その上にパターニングされた上部磁極端9を配置し、パターニングした絶縁層11と導体層からなる書き込みコイル10を配置し、それらの上に上部磁性層12が積層されてなる記録用ヘッドと、下シールド層3の上に2つのギャップ層4に挟まれた磁気抵抗効果素子5を配置し、それらの上に上シールド層6’が積層されてなる再生用ヘッドとからなる。本第2の実施の形態では、下部磁性層6と上シールド層6’は同一のものである。ここで、下シールド層3は基板1上にスパッタ等により形成されたアルミナからなる被覆層2上に形成されている。さらに、上部磁性層12上は、スパッタ等によって形成されたアルミナからなる被覆層13によって覆われている。
【0049】
薄膜磁気ヘッドは、インダクティブヘッド素子を形成する上部磁性層12、上部磁極端9、下部磁性層6及び下部磁極端7のうち全部若しくは一部に本発明のCoNiFeBCめっき膜を配置可能である。この場合も、無電解めっき法で作製するために、絶縁層4、11若しくはギャップ層8上に電気めっきに必要な導通層を用いる必要性が無く、非常に薄い金属層若しくはPd活性化などを用いればよい。その上に無電解めっき法により本発明の薄膜を形成することができ、無電解めっき法であるために非常に微細な部分においても、均一に再現性よく成膜が可能である。
【0050】
どの部分にCoNiFeBC薄膜を用いるかは、組み合わせる軟磁性薄膜のBs、比抵抗及び膜厚により異なる。本発明のBs及び比抵抗が高く、軟磁性薄膜の微細パターンの作製が容易であるという点を活かすのならば上部磁極端9及び下部磁極端7の両方若しくは片方のみに用いればよい。上部磁性層12、上部磁極端9、下部磁性層6及び下部磁極端7のうち本発明のCoNiFeBC薄膜を用いなかった部分には、電気めっき及び無電解めっきによるパーマロイ薄膜などを用いることができる。本発明のBs及び比抵抗が高く、軟磁性薄膜の微細パターンの作製が容易であるという点を活かし、上部磁性層12、上部磁極端9、下部磁性層6及び下部磁極端7のすべてのインダクティブヘッド用磁極材料に用いてもよい。本発明の特に比抵抗が高く、軟磁性薄膜の微細パターンの作製が容易であるという点を活かし、下部磁性層6及び上部磁性層12の片方若しくは両方に本発明のCoNiFeBC薄膜を用いてもよい。本発明よりBsが高い軟磁性薄膜と組み合わされる場合、上部磁極端9及び下部磁極端7の両方若しくは片方のみに本発明より高いBsを有する軟磁性薄膜を用い、上部磁性層12、上部磁極端9、下部磁性層6及び下部磁極端7のうち本発明より高いBsを有する膜を用いなかった部分に、本発明のCoNiFeBC薄膜を用いることができる。
【0051】
なお、上部磁性層12及び下部磁性層6の膜厚は、渦電流による高周波での透磁率低下を避けるため5μm以下、特に3μm以下が好ましい。
【0052】
以上のように構成された薄膜磁気ヘッドは、本発明のBs及び比抵抗が高いCoNiFeBC薄膜を有する効果で、従来のヘッドに比べて高い書き込み能力を持つ。また、上部磁極端9や下部磁極端7を無電解めっき法で作製すれば、磁極端幅を容易に微細化可能である。その結果、保磁力の大きな磁気ディスク媒体に低ノイズで分解能の高い磁気記録パターンを書き込むことができる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例で、めっき薄膜は、NiFe/チタンをガラス板上に形成した基板を10%硫酸に1分間浸漬し、さらに10ppm塩化パラジウム溶液に5秒間浸漬して活性化処理を行ったものに形成した。このときのめっき薄膜は1μmとした。めっき中には直交磁場を印可した。すなわち、永久磁石を2つ対にして向かい合わせることで直流磁場を起こしている。
【0054】
また、磁気特性は振動試料型磁力計(VSM)、1ターンコイル法、膜組成は蛍光X線(XRF)及び誘導結合プラズマ発光分析(ICP)、炭素(C)の組成は燃焼法、比抵抗は四端子法を用いてそれぞれ測定を行った。
【0055】
[実施例1,比較例]
β-アラニンを錯化剤の一部として用いた、CoNiFeBC薄膜の製造について具体的に説明する。本発明のめっき浴の組成及びめっき条件の一例を表1に示す。
【0056】
【表1】
JP0004041948B2_000002t.gif【0057】
図3は、表1の条件で作製した本発明のCoNiFeBC薄膜における、めっき液へのβ-アラニン添加量と、めっき膜中のCo、Fe及びNiの含有量の関係を示す。β-アラニンの添加量により多少の変化が認められるが、Fe含有量は20~22at%と大きな変化が無く、高い値を維持している。このときのB含有量はβ-アラニンの添加量にかかわらず、ほぼ1at%であった。
【0058】
図4は、表1の条件で作製した本発明のCoNiFeBC薄膜における、めっき液へのβ-アラニン添加量と、めっき膜中のC含有量の関係を示す。β-アラニンの添加量を0.025mol/L以上にするとC含有量が0.04at%以上になる。
【0059】
図5は、表1の条件で作製した本発明のCoNiFeBC薄膜における、β-アラニン添加量と膜の飽和磁束密度(Bs)の関係を示す。β-アラニン添加量と飽和磁束密度との間には明確な関係は見られず、どのめっき膜も1.6T以上の高い飽和磁束密度を示す。
【0060】
図6は、表1の条件で作製した本発明のCoNiFeBC薄膜における、β-アラニン添加量と膜の保磁力との関係を示す。β-アラニン添加量0.1mol/Lまでは、添加量と保磁力との間には明確な関係は見られず、どのめっき膜も3Oe以下の小さい保磁力を示す。更に添加量0.15mol/Lまでは8Oe以下の保磁力を示す。
【0061】
図7は、表1の条件で作製した本発明のCoNiFeBC薄膜における、β-アラニン添加量と膜の比抵抗の関係を示す。β-アラニン添加量0.1mol/L添加で、70~80μΩcmとなり、0.15mol/L添加で、140~160μΩcmとなる。
【0062】
このように、表1の条件においてβ-アラニンを添加することで、飽和磁束密度が高くかつ優れた軟磁気特性を保ちながら、電気抵抗率を高めることが可能になる。
【0063】
[実施例2]
様々なアミノ基を有する有機化合物を錯化剤の一部に用いたCoNiFeBC薄膜の製造について具体的に説明する。本発明のめっき浴の組成及びめっき条件の一例を表2に示す。アミノ基を有する錯化剤としてはグルタミン酸ナトリウム、グリシン、アルギニン、ヒスチジンを用いた。得られたCoNiFeBC薄膜の結果を表3に示す。
【0064】
【表2】
JP0004041948B2_000003t.gif【0065】
【表3】
JP0004041948B2_000004t.gif【0066】
表2及び表3に示される結果から、本発明の効果が明らかである。
【0067】
本発明にかかわる実施例2は、様々なアミノ基を有する有機化合物を錯化剤の一部に用いたCoNiFeBC薄膜の製造であるが、グルタミン酸ナトリウムは濃度の増加とともに膜中のCの共析量が増加し、高添加量にて高い比抵抗が得られており、全ての例において保磁力8Oe以下の良好な軟磁気特性を示す。このほかのアミノ基を有する有機化合物を錯化剤の一部に用いた例に関しても、膜中のC含有量が増加し、比抵抗が増加している。
【0068】
このように、表2の条件においてアミノ基を有する有機化合物を添加することで、飽和磁束密度が高くかつ優れた軟磁気特性を保ちながら、電気抵抗率を高めることが可能になる。
【0069】
なお、図1、2の薄膜磁気ヘッドに示すようにヘッドコアの作製を試みたところ、高い飽和磁束密度と高い比抵抗を併せ持つ微細なヘッドの作製が出来た。
【0070】
【発明の効果】
本発明の軟磁性薄膜は、良好な低保磁力、高いBs、高い比抵抗を併せ持ち、この軟磁性薄膜を用いた薄膜磁気ヘッドは高い書き込み能力を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】上部コアの一部に本発明である高飽和磁束密度を有するCoNiFeBC軟磁性薄膜を無電解めっき法により作製した薄膜磁気ヘッドを示し、(a)は磁気ヘッドのエアベアリングサーフェースと垂直な断面図、(b)は(a)のI-I線に沿った断面図である。
【図2】上部コア及び下部コアの一部に本発明である高飽和磁束密度を有するCoNiFeBC軟磁性薄膜を無電解めっき法により作製した薄膜磁気ヘッドを示し、(a)は磁気ヘッドのエアベアリングサーフェースと垂直な断面図、(b)は(a)のI-I線に沿った断面図である。
【図3】本発明のCoNiFeBC薄膜における、めっき液へのβ-アラニン添加量と、めっき膜中のCo、Ni及びFeの含有量の関係を示すグラフである。
【図4】本発明のCoNiFeBC薄膜における、めっき液へのβ-アラニン添加量と、めっき膜中のC含有量の関係を示すグラフである。
【図5】本発明のCoNiFeBC薄膜における、めっき液へのβ-アラニン添加量と、膜の飽和磁束密度の関係を示すグラフである。
【図6】本発明のCoNiFeBC薄膜における、めっき液へのβ-アラニン添加量と、膜の保磁力の関係を示すグラフである。
【図7】本発明のCoNiFeBC薄膜における、めっき液へのβ-アラニン添加量と、膜の比抵抗の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板
2 被覆層
3 下シールド層
4 ギャップ層
5 磁気抵抗効果素子
6 下部磁性層
6’ 上シールド層
7 下部磁極端
8 ギャップ層
9 上部磁極端
10 書き込みコイル
11 絶縁層
12 上部磁性層
13 被覆層
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
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【図6】
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【図7】
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