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明細書 :AMP活性化プロテインキナーゼ活性化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4212304号 (P4212304)
公開番号 特開2004-016074 (P2004-016074A)
登録日 平成20年11月7日(2008.11.7)
発行日 平成21年1月21日(2009.1.21)
公開日 平成16年1月22日(2004.1.22)
発明の名称または考案の名称 AMP活性化プロテインキナーゼ活性化剤
国際特許分類 C12N   9/12        (2006.01)
A61K  38/22        (2006.01)
C07K  14/575       (2006.01)
FI C12N 9/12
A61K 37/24
C07K 14/575 ZNA
請求項の数または発明の数 1
全頁数 17
出願番号 特願2002-174403 (P2002-174403)
出願日 平成14年6月14日(2002.6.14)
審査請求日 平成17年3月17日(2005.3.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】門脇 孝
【氏名】山内 敏正
【氏名】加門 淳司
個別代理人の代理人 【識別番号】110000084、【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
審査官 【審査官】池上 文緒
参考文献・文献 Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (2001) vol.98, no.4, p.2005-2010
J. Clin. Invest. (2001) vol.2018, no.12, p.1875-1881
Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. (1999) vol.277, no.1, p.E1-E10
Nat. Med. (2001) vol.7, no.8, p.941-946
Nat. Med. (2001) vol.7, no.8, p.947-953
調査した分野 C12N 9/12
C07K 14/575
A61K 37/24
PubMed
BIOSIS/WPI(DIALOG)
JSTPlus(JDreamII)
JMEDPlus(JDreamII)
特許請求の範囲 【請求項1】
アディポネクチンのC末端側球状領域、アディポネクチン又はそれらの遺伝子を有効成分とするAMP活性化プロテインキナーゼ活性化剤。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、AMP活性化プロテインキナーゼ活性化剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
5'-AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)は、アセチルコエンザイムAカルボキシラーゼ(ACC)活性を阻害することにより、筋における脂肪酸酸化を強く刺激するとともに、グルコース取り込みおよび乳酸産生などを含むグルコース利用も促進する(Ann. Rev. Biochem. 67, 821-855(1998)、Am. J. Physiol. 277, E1-E10(1999))。すなわち、骨格筋の主要アイソフォームであるACC-βアイソフォーム(ACC-β)は、脂肪酸酸化に不可欠のレギュレーターである。筋収縮や低酸素状態で活性化されたAMPKはACC-βをリン酸化することが示されており、これによるACC活性阻害はマロニルCoA含量の低下を引き起こす。これは更に、カルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ1活性を低下させ、脂肪酸燃焼を増大させる。AMPKが活性化されると、AMPKの脂肪酸に対する作用とは独立に、グルコース取り込みが刺激される。
従って、AMPKの活性化は、脂肪酸燃焼等の運動と同様の効果を奏し、肥満症および2型糖尿病の治療薬として有用であり、AMPK活性化剤の開発が望まれている。
【0003】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、脂肪細胞から分泌されるホルモンの1つであり、エネルギーホメオスタシス及びグルコース・脂質代謝の調節に中心的役割を演じているアディポネクチンの薬理作用について研究してきたところ、AMPKのリン酸化と活性化がアディポネクチンにより刺激されることを見出し、本発明を完成した。
【0004】
すなわち、本発明はアディポネクチンのC末端側球状領域、アディポネクチン又はそれらの遺伝子を有効成分とするAMPK活性化剤を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるアディポネクチンは、既にクローニングされており[Maeda,K et al,Biochem.Biophys.Res.Commun.221,286-296(1996)、Nakano,Y.et al,J.Biochem.(Tokyo)120,802-812(1996)]、既知の手段により入手できる。配列番号1にヒトアディポネクチンのアミノ酸配列及び塩基配列を示す。アディポネクチンは、N末端側のコラーゲン様配列(cAd;45~109)とC末端側の球状領域(gAd;110~247)から構成されているが、C末端側の球状領域(gAd)は、骨格筋において、完全長アディポネクチンよりも強力なAMPK活性化作用を有する。また、本発明においては、配列番号1に示すアミノ酸配列及びgAd領域を示すアミノ酸配列を有する蛋白質だけでなく、これらのアミノ酸配列の一又は複数のアミノ酸が置換、欠失又は付加したアミノ酸配列を有する蛋白質であってもアディポネクチンとしての作用を有するものであれば用いることができる。
【0006】
本発明で用いられる遺伝子としては、配列番号1に示されるアディポネクチンをコードする遺伝子及びgAdをコードする遺伝子が挙げられる。また、これらの遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし得る塩基配列を有する遺伝子も用いることができる。
【0007】
アディポネクチン又はその一部のポリペプチド(gAdを含む)は、それが存在する細胞から分離することもできるが、アディポネクチンをコードする遺伝子がすでにクローニングされているので、DNA組み換え技術、すなわち、当該遺伝子を用いて調製した発現ベクターを利用し、形質転換した細胞を用いて調製してもよい。
【0008】
後記実施例に示すように、AMPKのリン酸化と活性化が、骨格筋では球状アディポネクチンにより、また肝では完全長アディポネクチンにより刺激される。また、アディポネクチンはAMPKの活性化と平行して、ACCのリン酸化、脂肪酸燃焼、筋細胞のグルコース取り込みと乳酸産生、肝におけるACCのリン酸化と糖新生関連分子の低下、およびin vivoのグルコースレベルの低下も刺激する。ドミナントネガティブ変異体でAMPKをブロックすると、これらの作用がいずれも阻害されることから、アディポネクチンによるグルコース利用と脂肪酸燃焼はAMPKの活性化を介して生じることが判明した。これらの結果、脂肪細胞由来のホルモンのひとつであるアディポネクチンが、AMPKを活性化することにより、in vitroとin vivoのグルコース代謝とインスリン感受性を直接調節するという新規のパラダイムを示すものである。
【0009】
本発明の医薬をヒトを含む哺乳類に投与するには、前記有効成分に薬学的に許容される担体を加えて、種々の投与形態の医薬組成物とすることができる。かかる投与形態としては経口投与剤、注射用剤が挙げられるが、注射用剤が好ましい。また薬学的に許容される担体としては、蒸留水、溶解補助剤、安定化剤、乳化剤、緩衝剤等が挙げられる。また、これら医薬の投与量は、疾患、性別、体重等により変化するが、アディポネクチン又はgAd量として0.1μg~100mg/日程度であろう。
【0010】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれに限定されるものではない。
【0011】
A.方法
(1)動物
オスC57BL6マウス(週齢8~10)はJapan CREAから購入した。in vivoのAMPK活性測定には、指定量の組換えネズミアディポネクチン、または1g/kg(体重)のAICARを下大静脈カテーテルからマウスに静注した。各タイムポイントで骨格筋と肝を速やかに切除し液体窒素中で凍結した。
【0012】
(2)組換えアディポネクチンの作成
細菌で発現されたネズミ完全長アディポネクチン(Ad)および球状アディポネクチン(gAd)はすでに報告された方法(Nat. Med. 7, 941-946(2001))で精製した。哺乳類発現システムで産生されたAdとgAdは、AdとgAdを安定して発現しているNIH-3T3細胞から、すでに述べた方法(Nat. Med. 7, 947-953(2001))で単離・精製した。混入の可能性のあるエンドトキシンを除去するためにAntiClean Etoxアフィニティカラム(Sterogene Bioseparations)を使用した。C2C12筋細胞と単離肝細胞のAMPKおよびACCリン酸化、およびC2C12筋細胞の脂肪酸酸化、グルコース取り込み、ないし乳酸産生に対する刺激作用については、細菌発現gAd・Adと哺乳類発現システムで産生されたgAd・Adの間には、有意の差は見られなかった。
【0013】
(3)AMPK活性測定
骨格筋ないし肝のアイソフォーム特異的AMPK活性を測定するために、プロテインG/セファロースビーズに結合したα1またはα2触媒サブユニットに対する特異抗体(FEBS Lett. 397, 347-351(1996))を使用して、筋または肝細胞溶解液(タンパク量100μg)からAMPKを免疫沈降させた。キナーゼ活性は、合成「SAMS」ペプチドと[γ-32P]ATPを用いて測定した(Diabetes. 49, 527-531(2000))。
【0014】
(4)ウエスタンブロット解析
ヒラメ筋、肝または細胞溶解液(タンパク量40μg)中のAMPKα1およびα2サブユニットとACCのリン酸化は、濃度勾配4~15%のSDSアクリルアミドゲルと、ヒトAMPKαサブユニットのThr172周辺(Cell Signaling)およびラットACCのSer79周辺(Upstate Biotech)のアミノ酸配列に基づくリン酸化ペプチドに対する抗体を用いて測定した。DN-AMPKの発現レベルは、抗myc抗体(9E10;「ペンシルバニア大学医学部細胞センター」)を用いて測定した。
【0015】
(5)RNA調製とノーザンブロット解析
全RNAはTRIzol(GIBCO-BRL)を用いて、製造者の指示に従って組織から調製した。各グループ5~10匹のマウスからの全RNAをプールし、一部をマウスPEPCKおよびG6Paseプローブを使用するノーザンブロット解析(Nat. Med. 7, 941-946(2001))に用いた。各バンドの放射活性を定量し、28S rRNA量測定によりロード量の違いを補正したのち、各mRNAの変化倍数を計算した。3回の独立した実験のうち1つのデータを代表として示す。
【0016】
(6)脂質およびグルコース代謝
[1-14C]パルミチン酸からの[14C]CO2産生量の測定は、細胞溶解液を用いて、すでに述べた方法(Nat. Med. 7, 941-946(2001))で行った。乳酸濃度は比色法(Lactate C; 和光純薬)で測定した。グルコース取り込みはすでに述べた方法(Mol. Cell. Biol. 16, 3074-3084(1996))で測定した。
【0017】
(7)C2C12筋細胞と単離肝細胞を用いる検討
残基157のアスパラギン酸からアラニンへの変異を含むα1AMPKをコードするcDNAをDN-α1AMPK(Mol. Cell. Biol. 20, 6704-6711(2000))として使用した。この変異はキナーゼ活性を不活化するものの、複合体内部でのβおよびγサブユニットとの結合能には影響を与えないからである。残基45のリジンからアルギニンへの変化を含むα2AMPKをコードするcDNAをDN-α2AMPK(Mol. Cell. 7, 1085-1094(2000))として使用した。この変異もキナーゼ活性を不活化する。
【0018】
レトロウイルスを介する遺伝子導入のためのDN-α2AMPK(Mol. Cell. 7, 1085-1094(2000))発現ベクターは、pMX-puroのECoRI/NotI部位にライゲーションして構築した(Mol. Cell. Biol. 18, 3871-3879(1996))。すでに述べた方法(Cell. 79, 1147-1156(1994))に若干の変更を加えて、対照を挿入したレトロウイルス(Mockベクター)もしくはDN-α2AMPK(Mol. Cell. 7, 1085-1094(2000))挿入レトロウイルスを、同一力価でC2C12細胞に感染させた。分化誘導はすでに述べた方法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 98, 2005-2010(2001))に従って実施した。5日後に、細胞を指定濃度のアディポネクチンで処理し、AMPKとACCのリン酸化、脂肪酸燃焼、グルコース取り込み、および乳酸産生について検討した。単離肝細胞(Mol. Cell. Biol. 20, 6704-6711(2000))にはLacZまたはDN-α1AMPK(Mol. Cell. Biol. 20, 6704-6711(2000))を挿入したアデノウイルスをトランスフェクションした。細胞を指定濃度のアディポネクチンで処理し、AMPKとACCのリン酸化について検討した。
【0019】
(8)アデノウイルスを介するin vivoの遺伝子導入とアディポネクチン耐性試験
すでに述べたように(J. Clin. Invest. 105, 1437-1445(2000))、LacZまたはDN-α1AMPK(Mol. Cell. Biol. 20, 6704-6711(2000))を挿入したアデノウイルスを、グラム体重あたり3×108プラーク形成単位(pfu)の濃度でマウスに注入した。PBS200μLにウイルスを懸濁した溶液を腹腔内注入した。注入から3~5日後、試験前3時間マウスを絶食とした。アディポネクチン(84μg/g体重)を腹腔内投与して0、4、8および12時間後、もしくは4時間後にグルコースを測定し、マウス組織を採取してノーザンブロット解析に使用した。アデノウイルスを注入したマウスの肝には、形態を含め有意の変化は見られなかった。
【0020】
(9)アディポネクチンとC2C12筋細胞ないし単離肝細胞の結合
組換え球状(gAd)または完全長(Ad)アディポネクチンをNHS-LC-Biotin(Pierce)にてビオチン化した。C2C12筋細胞ないし単離肝細胞(96穴プレート中で、5×104細胞/ウエル)は、指定濃度のビオチン化gAdまたはAdとともに、37℃で1時間インキュベートした。ストレプトアビジン結合セイヨウワサビ・ペルオキシダーゼ(HRP)およびo-フェニレンジアミン・2塩酸塩を用いるELISAで、ビオチン化gAdまたはAdの細胞表面結合量を定量した。吸光度は492nmで測定した。データは、非標識gAdまたはAdの100倍過剰存在下での結合量濃度を全結合量から差し引いて示した。
【0021】
(10)AMP、ADPおよびATP含量の測定
アディポネクチンを投与したヒラメ筋またはC2C12筋細胞を、氷冷したHClO4を含むKRB緩衝液中でホモジナイズしたのち、NaOHを加えて細胞溶解液を中和した。上清中のAMP、ADPおよびATP含量は、すでに述べたように(J. Biol. Chem. 276, 2979-2985(2001))生物発光アッセイキットを用いて測定した。
【0022】
B,結果
(1)in vitroにおけるアディポネクチンの作用
C2C12筋細胞をin vitroでアディポネクチンとともにインキュベートした。C2C12筋細胞をアディポネクチンで60分間処理すると、in vitroの脂肪酸酸化が刺激された(図1)。アクチノマイシンD(5μg/ml)は、PPARαアゴニストであるWy-14,643(10-5M)刺激による脂肪酸酸化を抑制したが、アディポネクチン処理細胞に見られる脂肪酸酸化上昇には影響を与えず(図1)、アディポネクチンのこれらの作用は転写調節とは無関係である可能性が示唆された。C2C12筋細胞をアディポネクチンで処理すると、in vitroのグルコース取り込みも上昇した(図2)。更に、インスリン刺激によるグルコース取り込みは麦芽マンニン(100mM)で阻害されたが、アディポネクチンによるグルコース取り込み上昇はほとんど影響されなかった(図2)。これらの結果は、アディポネクチンのこれらの作用が、ホスファチジルイノシトール3(PI3)キナーゼとは独立の経路を介して発現することを示す。
【0023】
AMP類似物ZMPに変換される細胞透過性AMPK活性化剤AICAR(5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミド 1-D-リボフラノシド)でC2C12筋細胞を処理すると、AMPKのαサブユニット内のThr172の持続的なリン酸化が生じた。これに対して、球状アディポネクチンないし完全長アディポネクチン処理では、急速に強力で一時的なAMPKリン酸化上昇が生じた(図3a)。生理的濃度範囲に近い0.1および0.5μg/mlの球状アディポネクチンおよび10および25μg/mlの完全長アディポネクチンは、連続的(図3b)かつ用量依存的(図3c)にAMPKリン酸化を増強した。次に、アディポネクチンがAMPKリン酸化に続いてACCリン酸化も刺激するか否かについて検討した。C2C12筋細胞を球状アディポネクチンまたは完全長アディポネクチンで処理すると、ACCのリン酸化は連続的(図3d)かつ用量依存的(図3e)に上昇した。25μg/ml濃度の完全長アディポネクチンでは、作用は15分後に2.2倍と最大値に達し、これはAICARによる上昇と同程度であり(図3e)、60分までにベースライン値に復帰した(図3d)。
【0024】
(2)in vivoにおけるアディポネクチンの作用
骨格筋のAMPKリン酸化をアディポネクチンがin vivoで刺激しうるか否かを検討するために、マウスにアディポネクチンを投与した。球状アディポネクチンないし完全長アディポネクチンをマウスに投与したところ、ヒラメ筋におけるAMPKリン酸化は用量依存的に上昇した(図4a,b)。作用は5分後に2倍と最大値に達し、60分までにベースライン値に復帰した(図4b)。AMPKリン酸化に対するアディポネクチンの作用は、白筋(即筋、解糖による)よりも、脂肪酸酸化速度の大きい赤筋(遅筋、酸化的リン酸化による)で顕著だったが、白色腓腹筋におけるAMPKリン酸化は、アディポネクチン投与5分後には上昇する傾向が見られた。
【0025】
AMPKαサブユニット内のThr172のリン酸化は、α1およびα2両者のAMPK活性化を伴う。マウスへの球状アディポネクチン投与は、α1およびα2AMPK活性を有意に上昇させ、完全長アディポネクチンもヒラメ筋のα2AMPK活性を有意に上昇させた(図5a,b)。筋細胞表面への結合親和性がより高い球状アディポネクチン(図14参照)の方が、完全長アディポネクチンよりも、骨格筋のAMPK活性化に対する作用は顕著だった(図5a,b)。次に、アディポネクチンがin vivoで骨格筋AMPKリン酸化に続いてACCリン酸化も刺激するか否かについて検討した。球状ないし完全長のアディポネクチンを投与すると、ヒラメ筋のACCリン酸化は15分で上昇した(図6a,b)。濃度約50μg/mlの球状アディポネクチンでは、15分で2.2倍と最大値に達し、これはAICARによる上昇よりも大きく(図6b)、60分までにベースライン値に復帰した(図6b)。
【0026】
アディポネクチンがAMPKを活性化するメカニズムを解明するために、AMPKの活性化剤として知られているAMPの細胞内濃度を測定した。C2C12筋細胞(図7)とヒラメ筋(図8)のAMP含量は、アディポネクチン投与から5分後に約2倍に増加した。ATPないしADPの濃度は、アディポネクチンを投与しても変化しなかった。従って、アディポネクチン投与5分後に生じたAMPKの活性化は、細胞内AMP濃度の上昇によるものと考えられる。
【0027】
α2AMPKは骨格筋における主要アイソフォームである。筋細胞のACCリン酸化、脂肪酸代謝、およびグルコース代謝に対するアディポネクチンの作用に、AMPK経路が必要かどうかを検討するために、骨格筋のα1およびα2AMPK活性に対してドミナントネガティブ作用をもつ(Mol. Cell. 7, 1085-1094(2000))、触媒作用の欠失したAMPKα2サブユニットでAMPK活性化をブロックした。球状および完全長のアディポネクチンは、いずれも対照のC2C12筋細胞には1.8倍のAMPKリン酸化上昇をもたらした(図9、中段)。これらの作用は、ドミナントネガティブ(DN)-α2AMPKにより明らかにブロックされた(図9、中段)。球状および完全長のアディポネクチンは、いずれもC2C12筋細胞のACCリン酸化を2.3倍(図9、下段)、脂肪酸燃焼を1.8倍(図10)、グルコース取り込みを2倍(図11)、更に乳酸産生を1.3倍(図12)上昇させた。これらの作用はDN-α2AMPKでブロックされた。従って、アディポネクチンによる、筋細胞のACCリン酸化、脂肪酸燃焼、グルコース取り込みおよび乳酸産生刺激には、AMPKの活性化が必要である。
【0028】
次にアディポネクチンが肝細胞のAMPKも活性化するか否かを検討するために、単離した肝細胞のAMPKとACCのリン酸化についても検索を行った。単離肝細胞のAMPK(図13、中段)とACC(図13、下段)リン酸化刺激作用をもつのは完全長アディポネクチンのみで、球状アディポネクチンにはこの作用はなかった。
【0029】
α1AMPKは肝における主要なアイソフォームである。単離肝細胞のACCリン酸化に対するアディポネクチンの作用には、AMPK経路が必要かどうかを検討するために、肝細胞のα1およびα2両者のAMPK活性に対してドミナントネガティブ作用をもつ、触媒作用の欠失したAMPKα1サブユニットでAMPK活性化をブロックした。完全長アディポネクチンは、対照の単離肝細胞には2.3倍のAMPKリン酸化上昇をもたらした(図13、中段)。これらの作用は、アデノウイルスを介する遺伝子導入によりDN-α1AMPKを発現させると明らかにブロックされた(図13、上段および中段)。完全長アディポネクチンは、対照の単離肝細胞に1.7倍のACCリン酸化上昇をもたらした(図13、下段)。これらの作用はDN-α1AMPKでは著明に低下した(図13、下段)。従って、アディポネクチンによる単離肝細胞のACCリン酸化刺激には、AMPKの活性化が必要である。
【0030】
異なるフォームのアディポネクチンが肝と筋で有効に作用するメカニズムを明らかにするために、われわれは、C2C12筋細胞ないし肝細胞表面に対する球状および完全長アディポネクチンの結合親和性を測定した。C2C12筋細胞表面に対する結合親和性は、完全長アディポネクチンよりも球状アディポネクチンの方が高く(図14)、肝細胞表面に対しては、球状アディポネクチンよりも完全長アディポネクチンの方が結合親和性が高かった(図15)。これらは、肝および筋細胞におけるAMPKのリン酸化および活性に関するデータと矛盾しない。
【0031】
次に、肝のAMPKリン酸化と活性化をアディポネクチンがin vivoで刺激しうるか否かを検討するために、マウスにアディポネクチンを投与した。球状アディポネクチンではなく、肝細胞表面に対する結合親和性がより高い完全長アディポネクチン(図15)のみが、肝のα1(図17)およびα2AMPK(図18)の活性化とリン酸化(図16a,b)刺激作用を有していた。作用は5分後に2.5倍と最大値に達し、60分までにベースライン値に復帰した(図16b)。次いでアディポネクチンが、肝におけるAMPK活性化に続くACCリン酸化をin vivoで刺激するかどうかを検討した。球状アディポネクチンではなく、完全長アディポネクチンのみが、肝のACCリン酸化を上昇させる機能を有していた(図19a,b)。作用は15分後に2.2倍と最大値に達し、60分までにベースライン値に復帰した(図19b)。
【0032】
グルコース代謝に対するin vivoのアディポネクチン作用に、AMPK経路が必要か否かを調べるために、われわれはLacZもしくはDN-α1AMPKを挿入したアデノウイルスをマウス腹腔内に注入し、アディポネクチンのグルコース低下作用を両者で比較した。完全長アディポネクチンの投与は、LacZ挿入アデノウイルス注入マウスのグルコースレベルを、in vivoでリン酸緩衝食塩液(PBS)を投与した場合に比べて30%低下させた(図20)。DN-α1AMPK挿入アデノウイルスの注入は、アディポネクチンのグルコース低下作用を部分的ではあるが有意に減弱させ、アディポネクチンのグルコース低下作用の少なくとも一部はAMPK依存性であることが示唆された。マウスへの、DN-α1AMPK挿入アデノウイルスの注入がアディポネクチンのグルコース低下作用を減弱させるメカニズムを明らかにするために、まずDN-α1AMPKの発現部位を検索した。肝ではDN-α1AMPKの発現が検出されたが(図21、上段)、骨格筋など検討した他の組織では発現は検出されなかった(図21、下段)。
【0033】
次に、肝におけるDN-α1AMPK発現が、アディポネクチンのグルコース低下作用を減弱させるメカニズムについて検討した。完全長のアディポネクチンは、すでに報告されているように、PEPCK(ホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ)やG6Pase(グルコース-6-ホスファターゼ)など、肝の糖新生関連分子の発現レベルを低下させた(図22)。肝でのDN-α1AMPK発現は、アディポネクチンのこれらの作用をブロックしたが(図22)、これは、AMPKの活性化によりPEPCKとG6Paseの発現レベルが低下するとした以前の報告(Nature 404, 632-634(2000))とも一致する。従って、アディポネクチンが、肝の糖新生関連分子の発現レベルを低下させ、in vivoのグルコースレベルの低下を引き起こすためには、肝におけるAMPKの活性化が必要である。
【0034】
以上の結果は、アディポネクチンが、C2C12筋細胞とin vivoの骨格筋におけるグルコース取り込みと乳酸産生を増加させ、肝における糖新生関連分子の発現を低下させ、in vivoのグルコースレベルを低下させつつ、AMPKのリン酸化および活性を上昇させることを明確に示している。更に、アディポネクチンは、C2C12筋細胞と単離肝細胞におけるACCのリン酸化と脂肪酸燃焼も増強する。ドミナントネガティブAMPKが、筋細胞のアディポネクチン刺激グルコース取り込み、乳酸産生、ACCリン酸化および脂肪酸燃焼をブロックするとともに、肝細胞のACCリン酸化、肝の糖新生関連分子の抑制、およびin vivoのグルコースレベルの低下もブロックすることから、これらの作用はAMPKを介するものと考えられる。すなわち、以上の結果は、脂肪細胞由来ホルモンであるアディポネクチンは、AMPKを活性化し、それによりグルコース代謝とインスリン感受性を直接的に調節することを初めて示したものである。レプチンもAMPKを活性化しうるが、グルコース代謝へのAMPKの関与はレプチンでは示されていない。
【0035】
更に以上の結果は、骨格筋では、完全長アディポネクチンよりも球状アディポネクチンの方がAMPKをより活性化し、グルコース取り込みと脂肪酸酸化をより強力に刺激するのに対し、肝ではAMPKを活性化するのはもっぱら完全長アディポネクチンのみであることも示している。これらの結果は、球状アディポネクチンは完全長アディポネクチンよりも筋細胞表面に対する結合親和性が高いのに対し(図14)、肝細胞表面に対する結合親和性は、球状アディポネクチンよりも完全長アディポネクチンの方が高い(図15)というデータから明らかである。
【0036】
【発明の効果】
本発明によれば、アディポネクチンの投与により、in vitro及びin vivoでAMPKのリン酸化および活性が上昇することが明らかとなった。
【0037】
【配列表】
JP0004212304B2_000002t.gifJP0004212304B2_000003t.gifJP0004212304B2_000004t.gifJP0004212304B2_000005t.gifJP0004212304B2_000006t.gifJP0004212304B2_000007t.gif
【図面の簡単な説明】
【図1】 C2C12筋細胞におけるアディポネクチンによる脂肪燃焼作用を示す図である。各バーは平均±s.e.(n=5~10)を示す。(*P<0.05;P<0.01;媒体との比較、または示された2群間での比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体との比較、または示された2群間での比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体との比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体との比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体との比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体との比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体との比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体との比較)。*P<0.05;P<0.01;示された2群間での比較、もしくはgAdとAdの比較)。*P<0.05;P<0.01;示された2群間での比較、もしくはgAdとAdの比較)。*P<0.05;P<0.01;示された2群間での比較、もしくはgAdとAdの比較)。*P<0.05;P<0.01;示された2群間での比較、もしくはgAdとAdの比較)。*P<0.05;P<0.01;示された2群間での比較、もしくはgAdとAdの比較)。*P<0.05;P<0.01;示された2群間での比較、もしくはgAdとAdの比較)。*P<0.05;P<0.01;示された2群間での比較、もしくはgAdとAdの比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体のみとの比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体のみとの比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体のみとの比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体のみとの比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体のみとの比較)。*P<0.05;P<0.01;媒体のみとの比較)。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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