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明細書 :Al置換ヘマタイトの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3728505号 (P3728505)
公開番号 特開2004-043208 (P2004-043208A)
登録日 平成17年10月14日(2005.10.14)
発行日 平成17年12月21日(2005.12.21)
公開日 平成16年2月12日(2004.2.12)
発明の名称または考案の名称 Al置換ヘマタイトの製造方法
国際特許分類 C01G 49/06      
C01G 49/00      
FI C01G 49/06 A
C01G 49/00 A
請求項の数または発明の数 2
全頁数 7
出願番号 特願2002-199947 (P2002-199947)
出願日 平成14年7月9日(2002.7.9)
審査請求日 平成14年7月9日(2002.7.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
発明者または考案者 【氏名】高田 潤
【氏名】藤井 達生
【氏名】中西 真
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】大工原 大二
参考文献・文献 特開平08-290917(JP,A)
特開2000-233932(JP,A)
特開平01-304160(JP,A)
調査した分野 C01G 49/06
C01G 49/00
特許請求の範囲 【請求項1】
鉄化合物およびアルミニウム化合物をFeとAlとの原子比が99:1~85:15となるように混合し、
前記鉄化合物およびアルミニウム化合物の混合物にクエン酸およびエチレングリコールを添加してゲルを生成させ、
前記ゲルを熱分解し得られた熱分解生成物を焼成する
ことを特徴とするAl置換ヘマタイトの製造方法。
【請求項2】
700~1100℃で焼成することを特徴とする請求項1記載のAl置換ヘマタイトの製造方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、陶磁器、漆器、タイル、煉瓦、カワラ、各種塗料、絵具などの赤色顔料として用いられるAl置換ヘマタイトの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
過去において、陶磁器の高級赤色顔料として酸化鉄を主成分とする「吹屋ベンガラ」が用いられていた。「吹屋ベンガラ」は1960年代半ばまで製造されていたが、現在は製造中止になっている。しかし、「吹屋ベンガラ」のように鮮やかな赤色顔料は今なお望まれている。
【0003】
従来の人工ベンガラは、高純度ヘマタイト(α-Fe23)を指向しており、固相反応により合成されている。しかし、固相反応によって合成された高純度ヘマタイトは、650℃以下の温度では安定であるが、700℃以上の高温では色が濁るという問題があった。これはヘマタイト粒子の成長によるものであることがわかっている。このため、高純度ヘマタイトは、高温加熱が行われる条件では顔料として使用できないという問題があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、高温加熱しても安定して鮮明な色を示すAl置換ヘマタイトの製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るAl置換ヘマタイトの製造方法は、鉄化合物およびアルミニウム化合物をFeとAlとの原子比が99:1~85:15となるように混合し、前記鉄化合物およびアルミニウム化合物の混合物にクエン酸およびエチレングリコールを添加して錯体重合法によりゲルを生成させ、前記ゲルを熱分解し得られた熱分解生成物を焼成することを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1に本発明に係る錯体重合法によるAl置換ヘマタイトの製造プロセスをフローチャートで示す。図1に示すように、原料として用いられる鉄化合物およびアルミニウム化合物を秤量し、クエン酸およびエチレングリコールを添加して錯体化、ゲル化および重合させ、生成したゲルを熱分解し得られた熱分解生成物を焼成してAl置換ヘマタイトを得る。そして、得られたAl置換ヘマタイトを粉砕して顔料として使用する。
【0007】
本発明において用いられる鉄化合物としては、(a)酢酸鉄(II)、臭化鉄(II)およびその水和物、臭化鉄(III)、塩化鉄(II)およびその水和物、塩化鉄(III)およびその水和物、クエン酸鉄(III)およびその水和物、乳酸鉄(II)およびその水和物、硝酸鉄(III)およびその水和物、過塩素酸鉄(II)およびその水和物、硫酸鉄(II)およびその水和物、硫酸鉄(III)およびその水和物、クエン酸アンモニウム鉄(III)、硫酸アンモニウム鉄(II)およびその水和物、硫酸アンモニウム鉄(III)およびその水和物、ならびに(a’)シュウ酸鉄(II)二水和物、リン酸鉄(II)およびその水和物、リン酸鉄(III)およびその水和物、酸化鉄、フッ化鉄(II)およびその水和物、シュウ酸鉄(III)アンモニウムおよびその水和物が挙げられる。
【0008】
本発明において用いられるアルミニウム化合物としては、(b)酢酸アルミニウムおよびその水和物、硫酸アンモニウムアルミニウムおよびその水和物、臭化アルミニウム、乳酸アルミニウム、硝酸アルミニウムおよびその水和物、過塩素酸アルミニウムおよびその水和物、硫酸アルミニウムおよびその水和物、シュウ酸アルミニウムおよびその水和物、リン酸二水素アルミニウムが挙げられる。
【0009】
(a)の鉄化合物と(b)のアルミニウム化合物とを用いる場合には、クエン酸、エチレングリコールおよび水を加えて錯体重合法を行う。(a’)の鉄化合物と(b)のアルミニウム化合物とを用いる場合には、硝酸、塩酸、酢酸などの酸に溶解し、クエン酸およびエチレングリコールを加えて錯体重合法を行う。
【0010】
クエン酸の添加量は原料(鉄化合物とアルミニウム化合物の合計)に対してモル比で1~10倍、エチレングリコールの添加量は原料に対してモル比で5~30倍とすることが好ましい。水を用いる場合、水の添加量は原料に対して5~70倍とすることが好ましい。
【0011】
錯体重合法では、クエン酸と金属塩とがキレート錯体を形成し、キレート錯体とエチレングリコールとが脱水縮合(エステル化)を起こして錯体重合体(ゲル)を生成する。この錯体重合反応の条件は100~190℃で0.5~24時間に設定される。この方法を用いることにより、金属イオン(FeイオンおよびAlイオン)が均一に分散した3次元ネットワークを形成することができる。
【0012】
ゲルの熱分解の条件は200~500℃で0.5~12時間に設定される。熱分解生成物の焼成条件は350~1100℃、より好ましくは700~1100℃で0.5~12時間に設定される。
【0013】
上記のように錯体重合法を用いることによって、ヘマタイト(α-Fe23)中のFeを1~15at%という高濃度のAlで置換した、α-(Fe1-xAlx23(x=0.01~0.15)で表されるAl置換ヘマタイトを合成することができる。ヘマタイト(α-Fe23)中のFeに対するAlの置換量は2~15at%がより好ましく、5~15at%がさらに好ましい。
【0014】
本発明の方法により製造されるAl置換ヘマタイトは、高温加熱しても粒子成長が起こりにくく、安定して鮮明な色を示す。一方、従来の固相反応により合成された高純度ヘマタイトは、Feに対するAlの置換量が約1at%以下であり、上述したように700℃以上の高温で色が濁るという問題がある。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明する。
原料としてFe(NO33・9H2O(分子量404.0)およびAl(NO33・6H2O(分子量375.134)を秤量した。このとき、FeとAlとの原子比が100:0~70:30の範囲となるように調整した。原料1モルに対して、クエン酸(分子量192.12)5倍モル量、エチレングリコール(分子量62.07)15倍モル量および水(分子量18.00)50倍モル量を添加した。
【0016】
例えば、出発原料10gを用いて、5at%Al置換のα-(Fe0.95Al0.0523を調製する場合、以下のような配合割合とする。
【0017】
JP0003728505B2_000002t.gif【0018】
また、出発原料10gを用いて、10at%Al置換のα-(Fe0.9Al0.123を調製する場合、以下のような配合割合とする。
【0019】
JP0003728505B2_000003t.gif【0020】
錯体化、ゲル化、重合を行い、ゲルを生成させた。重合条件は、大気中、180℃で6時間とした。得られたゲルを、大気中、300℃で12時間加熱して熱分解し、熱分解生成物を大気中、350~1100℃の種々の温度で2時間焼成してヘマタイトを得た。得られたヘマタイトを粉砕した。
【0021】
このようにして得られた、α-(Fe1-xAlx23[置換量x=0~0.15]で表される組成を有するAl置換ヘマタイトについて、以下のような測定を行った。
【0022】
図2(A)~(C)に、種々のAl置換量を有し、種々の温度で焼成された試料の粉末X線回折を調べた結果を示す。(A)はAl無置換(Fe:Al=100:0)の試料、(B)は5at%Al置換(Fe:Al=95:5)の試料、(C)は15at%Al置換(Fe:Al=85:15)の試料である。生成相の同定により、FeもしくはFeとAlのスピネル相またはヘマタイト(α-Fe23)相のいずれかに帰属する回折ピークが確認された。
【0023】
図2(A)~(C)から以下のことがわかる。低温(400℃)で焼成された試料では、スピネル相およびヘマタイト(α-Fe23)相の二相が共存している。一方、600℃以上の高温で焼成された試料では、ヘマタイト(α-Fe23)相のみが単相で存在している。Al置換量が15at%までの試料はヘマタイトが単相で存在し得ることがわかった。また、Al置換量の増加に伴い、ヘマタイトが単相で得られる焼成温度が上昇している。
【0024】
図3(A)および(B)に、Al置換量x(at%)と、a軸またはc軸の格子定数との関係を示す。950℃または1100℃で加熱した試料について測定を行っている。
【0025】
図3(A)および(B)から、a軸およびc軸の格子定数はAl置換量xとともに減少していることがわかる。これは、Alがα-Fe23に固溶したためであると考えられる。
【0026】
種々のAl置換量を有する試料を種々の温度で加熱して、その色を調べた結果を示す。図4(A)~(C)は、L***表示系での各試料の色度(色相および彩度)をa**座標で示している。+a*は赤方向、-a*は緑方向、+b*は黄方向、-b*は青方向を示す。参考のために、現存していたベンガラ(弁柄Aと表示)の色度を各図に示している。(A)はAl無置換(Fe:Al=100:0)の試料、(B)は5at%Al置換(Fe:Al=95:5)の試料、(C)は15at%Al置換(Fe:Al=85:15)の試料である。
【0027】
図4(A)~(C)から、Al置換量5at%、焼成温度900℃の試料およびAl置換量15at%、焼成温度1050℃の試料は、現存ベンガラとほぼ同じ色度を示している。このことから、Al置換量の多いAl置換ヘマタイトは、700~1100℃程度の高温加熱でもヘマタイト粒子の成長が抑制され、安定して鮮明な色度を示すことがわかる。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、高温加熱しても安定して鮮明な色を示すAl置換ヘマタイトを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例で採用した錯体重合法によるAl置換ヘマタイトの製造プロセスを示すフローチャート。
【図2】本発明の実施例において、種々のAl置換量を有するAl置換ヘマタイト試料を種々の温度で加熱したときの粉末X線回折を示す図。
【図3】本発明の実施例におけるAl置換ヘマタイト試料について、Al置換量x(at%)とa軸またはc軸の格子定数との関係を示す図。
【図4】本発明の実施例において、種々のAl置換量を有するAl置換ヘマタイト試料を種々の温度で加熱したときの色度を示す図。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3