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明細書 :柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ及びその使用方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3702342号 (P3702342)
公開番号 特開2004-042164 (P2004-042164A)
登録日 平成17年7月29日(2005.7.29)
発行日 平成17年10月5日(2005.10.5)
公開日 平成16年2月12日(2004.2.12)
発明の名称または考案の名称 柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ及びその使用方法
国際特許分類 B23D 79/06      
FI B23D 79/06
請求項の数または発明の数 12
全頁数 23
出願番号 特願2002-200870 (P2002-200870)
出願日 平成14年7月10日(2002.7.10)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 社団法人日本機械学会東海学生会主催第33回学生員卒業研究発表講演会講演前刷集(平成14年3月1日)日本機械学会東海学生会発行第245-246頁に発表
審査請求日 平成14年7月10日(2002.7.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】桑原 稔
【氏名】藤井 洋
【氏名】加藤 隆雄
【氏名】大村 崇
個別代理人の代理人 【識別番号】100068755、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 博宣
【識別番号】100105957、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 誠
審査官 【審査官】横溝 顕範
参考文献・文献 特開平06-063817(JP,A)
特開平06-114660(JP,A)
特開昭63-191512(JP,A)
特開平11-170113(JP,A)
調査した分野 B23D 79/02-10
B25J 17/02
特許請求の範囲 【請求項1】
切削工具押圧方向に弾性力を有する第1弾性部材と、前記切削工具押圧方向とは直交するキサゲ加工における切削方向に弾性力を有する第2弾性部材とを連結し、
前記第1弾性部材に対して駆動力を付与する外部装置に取着するための外部装置取付部を設け、前記第2弾性部材に対してキサゲ加工を行うための切削部材を取付けた切削部取付部を設け、
前記第1弾性部材及び第2弾性部材よりも高剛性を有する第1高剛性部材を第2弾性部材と並設し、かつ、前記第1高剛性部材の一端が切削部取付部に対して微小隙間をあけた状態で、第2弾性部材の切削方向における変形度が大きくなるにつれて第1弾性部材と切削部取付部とが前記第1高剛性部材を介して作動的に連結するように第1高剛性部材を配置し、
切削方向における第2弾性部材の変形度が小さい場合には、第2弾性部材の低剛性を発揮し、切削方向における第2弾性部材の変形度が大きい場合には、前記第1高剛性部材による高剛性を発揮する柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ。
【請求項2】
切削工具押圧方向に弾性力を有する第1弾性部材と、前記切削工具押圧方向とは直交するキサゲ加工における切削方向に弾性力を有する第2弾性部材とを第2連結金具を介して連結し、
前記第2弾性部材に対して駆動力を付与する外部装置に取着するための外部装置取付部を第1連結金具を介して設け、前記第1弾性部材に対してキサゲ加工を行うための切削部材を取付けた切削部取付部を設け、
前記第1弾性部材及び第2弾性部材よりも高剛性を有する第1高剛性部材を第2弾性部材と並設し、かつ、前記第1高剛性部材の一端が第1連結金具に固定されると共に第1高剛性部材の他端が第2連結金具に対して微小隙間をあけた状態で、第2弾性部材の切削方向における変形度が大きくなるにつれて第1連結金具と第2連結金具とが前記第1高剛性部材を介して作動的に連結するように第1高剛性部材を配置し、
切削方向における第2弾性部材の変形度が小さい場合には、第2弾性部材の低剛性を発揮し、切削方向における第2弾性部材の変形度が大きい場合には、前記第1高剛性部材による高剛性を発揮する柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ。
【請求項3】
第1弾性部材及び第2弾性部材よりも高剛性を有する第2高剛性部材を第1弾性部材と並設し、かつ、第1弾性部材の切削工具押圧方向における変形度が大きくなるにつれて外部装置取付部と、第2弾性部材又は第2弾性部材に連結された部材とが前記第2高剛性部材を介して作動的に連結するように第2高剛性部材を配置し、
切削工具押圧方向における第1弾性部材の変形度が小さい場合には、第1弾性部材の低剛性を発揮し、切削工具押圧方向における第1弾性部材の変形度が大きい場合には、前記第2高剛性部材による高剛性を発揮することを特徴とする請求項に記載の柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ。
【請求項4】
前記第1弾性部材はリング状に形成された部材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ。
【請求項5】
前記第2弾性部材はリング状に形成された部材であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項に記載の柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ。
【請求項6】
前記第1弾性部材と第2弾性部材とは、弾性連結具にて互いに連結されており、
同弾性連結具は、第1取付部及び第2取付部にて断面L字状に形成されており、
前記第1弾性部材と第2弾性部材とはそれぞれ第1取付部及び第2取付部に固着されていることを特徴とする請求項1、請求項3乃至請求項5のうちいずれか1項に記載の柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ。
【請求項7】
前記第1高剛性部材は、前記第1弾性部材、第2弾性部材の振動の周波数とは非共振の固有の周波数を備えたことを特徴とする請求項乃至第6項のうちいずれか1項に記載の柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ。
【請求項8】
外部装置へ取着する外部装置取付部と、
前記外部装置取付部に固定され、同外部装置取付部を通る切削工具押圧方向、並びに前記切削工具押圧方向とは直交するキサゲ加工における切削方向に少なくとも弾性力を有するように形成されたリング部を有するリング部材と、
前記リング部材において、前記外部装置取付部が設けられた側とは反対側に設けられ、切削方向へ延びるように、かつ、前記リング部材から刃先が離間するように斜状に延出するキサゲ加工を行うための切削部材と、
前記リング部材のリング部間に架設され、前記リング部よりも剛性が高い第3高剛性部材を備えた柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダであって、
前記第3高剛性部材は四角柱状に形成され、一端面側がリング部材のリング部に片持ち支持されると共に他端面側はリング部材のリング部に対して微小隙間をあけた状態でリング部間に架設され、
前記リング部材に対して、切削方向の力が印加された際の初期には、同リング部材が切削方向に弾性を有することにより、低剛性を示し、初期経過後は前記第3高剛性部材による高剛性を示すことを特徴とする柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ。
【請求項9】
前記リング部材は、楕円形状を有することを特徴とする請求項8に記載の柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ。
【請求項10】
前記第3高剛性部材は、前記リング部材の振動の周波数とは非共振の固有の周波数を備えたことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ。
【請求項11】
前記リング部材は、8角形状を有するリング部を備えたことを特徴とする請求項8に記載の柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のうちいずれか1項に記載の柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダの使用方法において、
外部装置に取付けした前記工具ホルダの切削部材を切削工具押圧方向に移動して被削材に当接し、同切削部材を被削材に食い込ませるようにして、切削方向とは逆方向に押し戻し、続いて、前記押し戻した長さよりも長くなるように切削方向に押して被削材に食い込ませることにより被削材を切削することを特徴とする柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダの使用方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業用ロボット等の装置に装着して、切削加工を行うことができる柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ及びその使用方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の工業・機械技術においては、人間の”手”、”うで”、”身体”などに備わっている”しなやかさ”を持たせた装置の製作は困難であるところから、別の角度で”しなやかさ”をかもし出すような装置を確保する技術が検討されてきた。それには装置やその付属部品などには高剛性を持たせた状態でも、”しなやかさ”に相当する技術を取得させることが装置の中に組み込まれたりしてきた。たとえば、スポンジのようなやわらかいものの製造、切断、運搬、豆腐の運搬、饅頭の製造装置などには高剛性を持つ装置で可能になっている。
【0003】
一方、”剛性”が強調された機械や装置は、各種工作機械、自動車、ロボットなど、多くのものがある。これまでの工業技術は、いかに高剛性で変形の少ない装置を作るにはどのようにすべきかが研究されてきた。
【0004】
工作機械の高剛性化については多くの研究が行われてきている。特に、切削工具保持工具には多大な研究が行われてきている。これらの切削工具保持研究では構造や材質の特徴を生かしたものが検討され、開発は成功してきたといえる。それにあわせるように切れ味のよい、耐摩耗性の刃物の開発もなされてきている。
【0005】
こうして得られた高剛性の刃物を利用して切削加工が行われるが、従来、機械が行う加工では刃物を回転させるか、工作物の回転によって行っている。この場合、工作物と刃物との間で適正な相対速度を確保することが必要になるが、加工能率の増加に結びつき文明の発達に寄与してきた。
【0006】
しかし、大工のノミ加工、工芸品製作時のノミ加工、機械工学のキサゲ加工という分野の刃物の運動は直線的であることが多い。ノミによる加工のように、刃物を直線的な運動させながら行う加工法は困難なことが多く、適正な機械システム及び工具ホルダというものの開発が遅れている。
【0007】
これまでも微小な距離の直線運動(直線的揺動運動)をさせている刃物をロボットなどに取付けて指定した位置の切削加工を行う装置の開発は見られている。しかし、刃物を直線的に大きく移動させながら切削加工を行う装置やシステムは存在していない。
【0008】
いつもそうであるが、装置やシステムの開発の常套手段として、熟練者の作業状態から得られるいろいろな情報に基づいて、それを再現する方法により、どのようなパラメータが主要な因子かを把握することが必要になる。これまでの多くの方法は熟練者が発揮する力と切削速度を主要因子と捕らえてきていた。この2つの因子から導かれる情報を高剛性の装置に装着した刃物に与えることによって切削加工を行っていた。
【0009】
しかし、この方法では、熟練者が行う加工結果と同じ加工状態を得ることが困難となっていた。
上記の2つの因子は主要であることは間違いないが、熟練者はノウハウ的な因子を重ねて持っていると予測できる。従来、ノウハウとして片づけられていた要素をいかに知識として得るようにするかかが、大きな問題点となっている。
【0010】
従来、切削用の刃物はこれまで開発されてきた高剛性を有する機械装置やシステムに装着されて加工を行う方法が採用されていた。この方法は微小量、微少量の切削、大量の切削などを行うことができたが、必要以上と思われるように高剛性化、多量の材料の使用などで行っていた。刃物を直線的に動作させるシステムにそのまま利用した場合は力の印加過程に不手際が生じ、刃物の欠損、破壊が頻繁に発生し経済的に大きな損失を与える等の問題がある。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来、高剛性の機械装置に切削工具を取り付けて加工作業を行うシステムがあるが、一般的に、これらの作業の形態は限定されたものになっている。限定した作業のいくつかを組み合わせた加工法がシステム化され、マシニングセンターと呼ばれるようなシステムが構成されている。一方、熟練者が行う切削加工作業は効率の問題があるにせよ、加工の結果には機械加工以上の形状精度及び平坦精度などに優れたものが生じる技術がある。特に、ノミ加工のような刃物が直線的に運動する加工法では熟練者の行う微妙な手加減や身体各部の協調動作によることが大きなウェイトになっている。この加工法は身体の持つ大きな特性である”剛性”と”柔軟性”を併せて持つような”しなやかさ”を強調したようなものであり、刃物が直線運動させるような切削加工には機械システムで行う加工は高剛性が強調されすぎ、切削力の配分などで向いていない問題を含んでいる。
【0012】
本発明の発明者たちは、特に、熟練者によるキサゲ作業を取り上げて、切削時に工具に働く切削力及び、その時の工具50の運動及び変位を解析した。その結果を図8に示す。なお、図8において、被削材52表面をX-Y平面とし、切削方向(X方向)に作用する切削力をFx、それに直角な方向に作用する切削力をFy、X-Y平面に直角な下向きに作用する切削力を-Fzとする。又、dx,dy,dzはそれぞれX,Y,Z方向の工具50の変位量を表す。なお、図8では、Fy,dyは図示されていない。
【0013】
熟練者はキサゲ作業を極めて短時間に行う。この短時間に熟練者が行う動作は、左手で工具50の先端側に設けたスクレーパ51に荷重をかけながら、右足に重心を移動させながら身体の重心高さを下げるように工具を引き戻しつつスクレーパ51を撓ませる。このとき工具先端部(刃先)は被削材52の表面から幾分食い込むようになる。工具50のスプリングバック効果を利用しながら、身体の重心は右足から左足にすばやく移動させながら工具全体は前方に押し出されるようにして切削加工が行われる。
【0014】
このようにキサゲ作業では、身体重心の3次元的移動や腕などの運動がスクレーパ51に力の伝達だけでなく、人間による”しなやかな”運動がスクレーパ51の適正な動きを与えるために必要であることがわかる。
【0015】
しかし、従来の産業用ロボットは高剛性であり、その工具ホルダにスクレーパ51等の切削部材を直接設置した場合、人間の”しなやかさ”を強調して加工する作業を再現することが容易でなかった。
【0016】
本発明の目的は、産業用ロボット等の装置に取着することができ、その工具ホルダに切削部材を直接設置した場合、人間の"しなやかさ"を強調してキサゲ加工する作業を再現することができる柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダ及びその使用方法を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、請求項1の発明は、切削工具押圧方向に弾性力を有する第1弾性部材と、前記切削工具押圧方向とは直交するキサゲ加工における切削方向に弾性力を有する第2弾性部材とを連結し、前記第1弾性部材に対して駆動力を付与する外部装置に取着するための外部装置取付部を設け、前記第2弾性部材に対してキサゲ加工を行うための切削部材を取付けた切削部取付部を設け、前記第1弾性部材及び第2弾性部材よりも高剛性を有する第1高剛性部材を第2弾性部材と並設し、かつ、前記第1高剛性部材の一端が切削部取付部に対して微小隙間をあけた状態で、第2弾性部材の切削方向における変形度が大きくなるにつれて第1弾性部材と切削部取付部とが前記第1高剛性部材を介して作動的に連結するように第1高剛性部材を配置し、切削方向における第2弾性部材の変形度が小さい場合には、第2弾性部材の低剛性を発揮し、切削方向における第2弾性部材の変形度が大きい場合には、前記第1高剛性部材による高剛性を発揮する柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダを要旨とするものである。
【0018】
請求項2の発明は、切削工具押圧方向に弾性力を有する第1弾性部材と、前記切削工具押圧方向とは直交するキサゲ加工における切削方向に弾性力を有する第2弾性部材とを第2連結金具を介して連結し、前記第2弾性部材に対して駆動力を付与する外部装置に取着するための外部装置取付部を第1連結金具を介して設け、前記第1弾性部材に対してキサゲ加工を行うための切削部材を取付けた切削部取付部を設け、前記第1弾性部材及び第2弾性部材よりも高剛性を有する第1高剛性部材を第2弾性部材と並設し、かつ、前記第1高剛性部材の一端が第1連結金具に固定されると共に第1高剛性部材の他端が第2連結金具に対して微小隙間をあけた状態で、第2弾性部材の切削方向における変形度が大きくなるにつれて第1連結金具と第2連結金具とが前記第1高剛性部材を介して作動的に連結するように第1高剛性部材を配置し、切削方向における第2弾性部材の変形度が小さい場合には、第2弾性部材の低剛性を発揮し、切削方向における第2弾性部材の変形度が大きい場合には、前記第1高剛性部材による高剛性を発揮することを特徴とする。
【0019】
請求項3の発明は、請求項において、第1弾性部材及び第2弾性部材よりも高剛性を有する第2高剛性部材を第1弾性部材と並設し、かつ、第1弾性部材の切削工具押圧方向における変形度が大きくなるにつれて外部装置取付部と、第2弾性部材又は第2弾性部材に連結された部材とが前記第2高剛性部材を介して作動的に連結するように第2高剛性部材を配置し、切削工具押圧方向における第1弾性部材の変形度が小さい場合には、第1弾性部材の低剛性を発揮し、切削工具押圧方向における第1弾性部材の変形度が大きい場合には、前記第2高剛性部材による高剛性を発揮することを特徴とする。
【0020】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記第1弾性部材はリング状に形成された部材であることを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項3のうちいずれか1項において、前記第2弾性部材はリング状に形成された部材であることを特徴とする。
【0021】
請求項6の発明は、請求項1、請求項3乃至請求項5のうちいずれか1項において、前記第1弾性部材と第2弾性部材とは、弾性連結具にて互いに連結されており、同弾性連結具は、第1取付部及び第2取付部にて断面L字状に形成されており、前記第1弾性部材と第2弾性部材とはそれぞれ第1取付部及び第2取付部に固着されていることを特徴とする。
【0022】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のうちいずれか1項において、前記第1高剛性部材は、前記第1弾性部材、第2弾性部材の振動の周波数とは非共振の固有の周波数を備えたことを特徴とする。
【0023】
請求項8の発明は、外部装置へ取着する外部装置取付部と、前記外部装置取付部に固定され、同外部装置取付部を通る切削工具押圧方向、並びに前記切削工具押圧方向とは直交するキサゲ加工における切削方向に少なくとも弾性力を有するように形成されたリング部を有するリング部材と、前記リング部材において、前記外部装置取付部が設けられた側とは反対側に設けられ、切削方向へ延びるように、かつ、前記リング部材から刃先が離間するように斜状に延出するキサゲ加工を行うための切削部材と、前記リング部材のリング部間に架設され、前記リング部よりも剛性が高い第3高剛性部材を備えた柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダであって、前記第3高剛性部材は四角柱状に形成され、一端面側がリング部材のリング部に片持ち支持されると共に他端面側はリング部材のリング部に対して微小隙間をあけた状態でリング部間に架設され、前記リング部材に対して、切削方向の力が印加された際の初期には、同リング部材が切削方向に弾性を有することにより、低剛性を示し、初期経過後は前記第3高剛性部材による高剛性を示すことを特徴とする柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダを要旨とするものである。
【0024】
請求項9の発明は、請求項8において、前記リング部材は、楕円形状を有することを特徴とする。
請求項10の発明は、請求項8又は請求項9において、前記第3高剛性部材は、前記リング部材の振動の周波数とは非共振の固有の周波数を備えたことを特徴とする。
【0025】
請求項11の発明は、請求項8において、前記リング部材は、8角形状を有するリング部を備えたことを特徴とする。
請求項12の発明は、請求項1乃至請求項11のうちいずれか1項に記載の柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダの使用方法において、外部装置に取付けした前記工具ホルダの切削部材を切削工具押圧方向に移動して被削材に当接し、同切削部材を被削材に食い込ませるようにして、切削方向とは逆方向に押し戻し、続いて、前記押し戻した長さよりも長くなるように切削方向に押して被削材に食い込ませることにより被削材を切削することを特徴とする柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダの使用方法を要旨とするものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1乃至図5を参照しながら説明する。
【0027】
図1は切削工具ホルダ10の側面図、図2は、同じく斜視図、図3は切削工具ホルダ10を産業用ロボット(以下、ロボット30という)に取着した側面図である。
【0028】
図1及び図2に示すように切削工具ホルダ10は、リング状に形成された金属製の第1リング11,第2リング12、及び連結金具13を備えている。
第1リング11及び第2リング12は円形状に形成され、弾性を有している。両リングの厚さ、幅及び材質は、被削材の材質及び切削量(深さ、長さ、幅等による)によって決定されている。本実施形態では、両リングは、金属製からなる。第1リング11と第2リング12とは、連結金具13を介して互いに連結固定されている。連結金具13は、第1取付板14及び第2取付板15が互いに直交するように、かつ弾性を有するように断面L字状に連結形成されている。なお、第1取付板14の下面と第2取付板15の位置側面との間は、図1及び図2に示すようにアール(R)面を介して連結されている。
【0029】
第1リング11は第1弾性部材に相当し、第2リング12は第2弾性部材に相当する。又、連結金具13は、本発明の弾性連結具に相当する。又、第1取付板14は第1取付部に相当し、第2取付板15は第2取付部に相当する。
【0030】
第1取付板14には、第1リング11の下部がボルト16及びナット17により、締付け固定されている。なお、固定する方法はボルト、ナットから接着剤、溶接等に代えてもよい。又、第2取付板15には第2リング12の一端がボルト18及びナット19により、締付け固定されている。従って、第1リング11及び第2リング12は、第1取付板14と第2取付板15とに固定されることにより、互いに直交する方向において、弾性力を有するように配置される。
【0031】
すなわち、第1リング11はZ方向及び反Z方向に少なくとも弾性力を有する。又、第2リング12はX方向及び反X方向に少なくとも弾性力を有する。
第1リング11の上部には、取付板20がボルト21にて締付け固定されている。取付板20は四角板状に形成され、両端には、ボルト挿通孔22がそれぞれ形成されている。切削工具ホルダ10は、図3に示すようにロボット30が備えているロボットアーム32の最終出力軸35に対し、ボルト挿通孔22を介して図示しないボルトを着脱可能に螺着することにより、取付けされる。
【0032】
最終出力軸35は、外部装置に相当し、取付板20は外部装置取付部に相当する。
第2リング12の第2取付板15とは反対側の端部には、スクレーパ取付板23がボルト24及びナット25にて締付け固定されている。なお、固定する方法はボルト、ナットから接着剤、溶接等に代えてもよい。スクレーパ取付板23の下部には、切削部材としてスクレーパ26が取付固定されている。スクレーパ26のスクレーパ取付板23に対する取付は、溶接及び接着剤或いはボルト等の締付け固定によりなされている。前記スクレーパ26の先端の刃部(刃先)は、図1に示すようにスクレーパ取付板23から第2リング12から反対側であって、かつ斜め下方に延出されている。なお、スクレーパ26は、加工面を水平に配置した被削材Wに対して所定角度θを有するように配置されている。本実施形態では、水平に配置した加工面(表面)をX-Y平面とし、第1リング11を図1に示すようにX-Y平面に直交するZ方向に沿って配置したとき、スクレーパ26と加工面とのなす角度(所定角度θ)は18°±10°となるようにされている。
【0033】
前記スクレーパ取付板23は、切削部取付部に相当し、スクレーパ26は、切削部材に相当する。なお、本実施形態での被削材Wの材質は金属、例えば、鋼鉄、鋳鉄、真ちゅう製、或いは石膏製等である。
【0034】
切削安定具28はその一端が第2取付板15の上部に固定されて片持ち支持され、他端がスクレーパ取付板23の上部に対して離間して対向配置されている。なお、切削安定具28はその一端がスクレーパ取付板23の上部に固定されて片持ち支持され、他端が第2取付板15の上部に対して離間して対向配置させてもよい。
【0035】
すなわち、切削安定具28は連結金具13とスクレーパ取付板23との間に位置するように配置され、第2リング12と並設されている。切削安定具28とスクレーパ取付板23との離間距離Δは第2リング12が図1、図2に示すX方向において自身の弾性に抗してその両端が接近する方向に変形した際、当接可能な距離に設定されている。前記当接可能な距離(離間距離Δ)は、切削工具ホルダ10を取着するロボット30のロボットアーム32の最終出力軸35に大きな反作用力が印加された場合、起動トルクが十分に発生する時間が得られるように設定されている。すなわち、後述するスクレーパ26の移動軌跡のA→B→C→D(図4参照)のうち、B点にほぼ同じ位置か、極わずかだけX方向に進んだ際、第2リング12が変形して切削安定具28がスクレーパ取付板23に当接するように離間距離Δが設定されている。すなわち、第2リング12の変形度が大きくなると切削安定具28がスクレーパ取付板23に当接するようにされている。
【0036】
なお、切削安定具28の一端をスクレーパ取付板23の上部に固定して片持ち支持し、他端を第2取付板15の上部に対して離間して対向配置した場合には、第2リング12の変形時に切削安定具28が第2取付板15に当接するように離間距離Δを設定する。
【0037】
すなわち、切削安定具28は、第2リング12のX方向及び反X方向における変形度が大きくなるにつれて第1リング11とスクレーパ取付板23とが切削安定具28を介して作動的に連結する。
【0038】
切削安定具28は、第1高剛性部材に相当し、第1リング11及び第2リング12よりも高剛性とされている。
又、切削安定具28は、第1リング11及び第2リング12のそれぞれの振動の周波数とは非共振の固有の周波数を備えている。すなわち、切削安定具28の固有の周波数は、スクレーパ26がB→C→Dの移動軌跡に沿って切削加工中、第2リング12と連結金具13の剛性の不足によって生ずるびびり振動の周波数より低い周波数領域に設定されている。なお、びびり振動の周波数(びびり振動周波数)よりも、切削安定具28の固有の周波数を高い周波数領域に設定してもよい。
【0039】
次に、切削工具ホルダ10を取着するロボット30について説明する。
ロボット30は、ベース31、ロボットアーム32を備えている。ロボットアーム32は、第1アーム33及び第2アーム34から構成されている。第1アーム33は、その基端がベース31に対して図3に示すようにZ方向に平行な軸L1の周りで図示しないモータにて能動回転するように支持されている。第2アーム34は第1アーム33の先端において、図3に示すようにZ方向に平行な軸L2の周りで図示しないモータにて能動回転するように支持されている。第2アーム34の先端には、最終出力軸35がZ方向に平行な軸L3の周りで図示しないモータにて能動回転するように設けられている。又、最終出力軸35は、第2アーム34に対してZ方向(本実施形態では、上下方向)に沿って図示しないモータにて往復動可能にされている。最終出力軸35の下部には、取付板20に相対可能な支持板38が設けられている。支持板38には取付板20の各ボルト挿通孔22に挿通されたボルトを着脱可能に螺着するボルト孔(図示しない)が設けられている。
【0040】
前記図示しない各モータは、図示しない制御装置内の記憶装置に記憶された制御プログラムにより制御される。すなわち、前記制御プログラムにより、第1アーム33、第2アーム34及び最終出力軸35が作動され、支持板38に取着された切削工具ホルダ10をX方向、Y方向及びZ方向に沿って往復移動可能とされている。
【0041】
さて、上記のように構成された切削工具ホルダ10をロボット30に取着して、キサゲ加工を行う場合の作用について説明する。
まず、切削工具ホルダ10の取付板20をロボット30の支持板38に対してボルト挿通孔22に挿通した図示しないボルトにて締付け固定する。この状態では、第1リング11は、Z方向に沿って配置されるとともに、第2リング12はX方向に沿って配置される。又、スクレーパ26の刃先の下方には微少な隙間を介して被削材Wが載置される。なお、大まかな隙間の調整は被削材Wを載置している取付台40によって予め行う。そして、微少な隙間の調整は、図示しない制御装置の入力装置の入力操作に基づく制御信号によって、ロボット30の最終出力軸35の上下の調整によって行う。なお、微少な隙間をあける代わりに、スクレーパ26の刃先を被削材Wに接触させた状態にしてもよい。
【0042】
上記のようにスクレーパ26を被削材Wに対して微少な間隙をあけた状態(切削待機状態)、又は接触した状態(切削待機状態)で、キサゲ加工のための制御プログラムを実行する。
【0043】
このキサゲ加工のための制御プログラムは、図4に示すように、スクレーパ26をA→B→C→Dの順に移動するため、ロボットアーム32(第1アーム33及び第2アーム34)、及び最終出力軸35に関する図示しないモータを駆動するためのものである。
【0044】
なお、Aは被削材Wに対するスクレーパ26の初期接触点、Bは引き戻し点、Cは最下点、Dは被削材Wに対するスクレーパ26の最終接触点である。又、図4中、aは初期水平方向(X方向とは逆方向における)移動距離、bは初期垂直方向(Z方向とは逆方向における)移動距離、b+cは切込み設定値である。又、dは引き戻し点Bと最下点C間の水平距離、eは最下点Cと最終接触点D間の水平距離である。なお、0<a<d+eであり、初期水平方向距離aよりも、引き戻し点Bと最終接触点D間の水平距離を長く設定している。なお、a=0でもよい。
【0045】
この制御プログラムは、下記で説明する熟練者が行うキサゲ作業と類似する移動軌跡を得るためのものであ。すなわち、ロボット30の図示しない制御装置の記憶装置には、前記A→B→C→Dの移動軌跡を得るために、キサゲ加工を施したい位置(加工位置)や、移動量(加工量)などの各種データが前記制御プログラムとともに格納されている。なお、このスクレーパ26の移動軌跡は、熟練者が行うキサゲ作業を解析した結果得られたものである。
【0046】
熟練者の場合は、刃物を被削材WにA点に接触させてから、工具を食い込ませるようにしながら、B点に移動し、いわゆる押し戻し作業をしつつスクレーパ26を撓ませるようにする。このときの撓みによるスプリングバック効果を利用して、刃物を一気に前進させながら、さらに刃物を食い込ませるようにして切削加工(B,C,D点を通過させる。)作業を行う。C点を通過後は刃先が被削材表面に向かうように向きを変える。
【0047】
ここで、スプリングバック効果とは、板が(すなわち、本実施形態ではスクレーパ26の板の部分)曲げられて、負荷を除いたとき、 板が弾性力により曲げられる以前の状態にまで戻る効果をいう。本実施形態ではこの戻るときの速度が変形時に加えられた変形速度より、速くなる効果を期待して利用している。
【0048】
なお、図4中、αは、被削材Wの加工面の位置を示し、ハッチングはスクレーパ26の移動軌跡を明示するために、便宜的に付したものであって、被削材Wの加工断面を示すものではない。
【0049】
それに対して、本実施形態では、A→B→C→Dはロボットアーム32の最終出力軸35の軌道と同じである。
制御装置は制御プログラムに従って制御を実行すると、第2アーム34の最終出力軸35は、下方に移動し、この最終出力軸35の動きが、第1リング11に伝達されて、スクレーパ26が被削材WのA点に接触する。この接触により、第1リング11は自身の弾性に抗して変形する。この後、最終出力軸35は、被削材Wに幾分食い込ませながら、X方向(切削方向)とは逆方向に位置するB点へ移動する。このとき、スクレーパ26の刃先は被削材Wに食い込んでいるため、連結金具13が自身の弾性に抗して変形する。すなわち、連結金具13は蓄力変形し、バネ力が蓄えられる。なお、この蓄積されたバネ力は最終出力軸35がX方向へ進むときに解放され、Z方向への切削力に資することができる。
【0050】
続いて、最終出力軸35は、X方向へ進むが、X方向への移動初期には、第2リング12が自身の弾性に抗し及び連結金具13の第2取付板15が弾性に抗して、すなわち、弾性エネルギーを蓄力しながら両部位は変形する。
【0051】
ところで、ロボット30の最終出力軸35がX方向への移動初期において直線運動をするためには、ロボットの全部の動力が一斉に起動する必要がある。一般的に、モータの起動トルクの立ち上がりは通常無視されるほど小さな時間で立ち上がるようになっている。しかし、スクレーパ26の刃先が被削材Wに食い込んでおり、各モータの初期駆動トルクは小さいため、そのままでは、起動することができない。
【0052】
しかし、本実施形態では、前記第2リング12の変形及び連結金具13の変形は、弾性エネルギーの蓄積と、モータの起動トルクが立ち上がるまでの時間稼ぎを行うことになる。
【0053】
この結果、この時間稼ぎの間、駆動トルクが大きくなって、ロボット30がもつ小さな起動トルクでも切削することが可能となる。
なお、切削安定具28がない場合、スクレーパ26がB→C→Dの移動軌跡に沿って切削加工中、第2リング12と連結金具13の剛性の不足によって、びびり振動が発生した場合、被削材Wの加工面にもその振動が転写されるようになる。転写が行われた場合には、切削された被削材Wは、商品価値が減少することになる。
【0054】
しかし、本実施形態では、切削安定具28がB点の少し先の位置から、作動する。すなわち、C点の少し手前の位置に達した際、第2リング12が変形して切削安定具28がスクレーパ取付板23に当接する。この結果、切削工具ホルダ10は非線形効果を発揮し、びびり振動を抑制する。
【0055】
又、切削安定具28の固有の周波数は、第1リング11及び第2リング12のそれぞれの振動の周波数とは非共振となるように設定されている。
この結果、被削材Wの加工面は、びびり振動による悪影響がなくなり、良好な加工面を得ることができる。
【0056】
図5は、切削工具ホルダ10の非線形効果を示す特性図である。縦軸は反Z方向に働く力Fv、X方向に働く力Fhを示し、横軸はスクレーパ26の反Z方向における移動量、及びX方向における移動量を示している。同図に示すように、移動量が小さい間は、切削工具ホルダ10は低剛性を示し、所定の移動量に達した後は、高剛性を示すものとなっている。
【0057】
このようにして、スクレーパ26はD点から被削材Wの外部へと移動し、一連の加工作業が終了する。
この後、制御装置は制御プログラムに従って別のキサゲ加工を施したい位置(加工位置)に移動させるべく、最終出力軸35を移動させ、同様の加工作業を連続して行わせる。
【0058】
なお、本実施形態では、Z方向は、第1方向に相当し、X方向は第2方向及び切削方向に相当する。
本実施形態によると、次のような作用効果を奏する。
【0059】
(1) 本実施形態の切削工具ホルダ10は、Z方向及び反Z方向(第1方向及び反第1方向)に弾性力を有する第1リング11(第1弾性部材)と、Z方向とは直交するX方向及び反X方向(第2方向及び反2方向)に弾性力を有する第2リング12(第2弾性部材)とを連結した。又、本実施形態では、連結金具13を介して連結した。
【0060】
又、第1リング11には、駆動力を付与する最終出力軸35(外部装置)に取着するための取付板20(外部装置取付部)を備え、第2リング12には、X方向へ延出するスクレーパ26(切削部材)を取付けたスクレーパ取付板23(切削部取付部)を備えた。
【0061】
この結果、本実施形態での切削工具ホルダ10はロボット30に取着することができ、熟練者のキサゲ作業時の動作に類似させるようにして、キサゲ加工を行うことができる効果を奏する。
【0062】
(2) 本実施形態の切削工具ホルダ10では、第1リング11(第1弾性部材)に対して取付板20(外部装置取付部)を設け、第2リング12(第2弾性部材)に対してスクレーパ取付板23(切削部取付部)を設けた。
【0063】
又、第1リング11及び第2リング12よりも高剛性を有する切削安定具28(第1高剛性部材)を第2リング12と並設した。さらに、切削安定具28を、第2リング12の第2方向及び反第2方向における変形度が大きくなるにつれて第1リング11とスクレーパ取付板23とが切削安定具28を介して作動的に連結するように配置した。
【0064】
このように構成することにより、切削工具ホルダ10は、X方向及び反X方向(第2方向及び反X方向)における第2リング12の変形度が小さい場合には、第2リング12の低剛性を発揮する。又、X方向及び反X方向における第2リング12の変形度が大きい場合には、切削安定具28による高剛性を発揮する。
【0065】
このため、スクレーパ26の刃先が被削材Wに食い込んでおり、各モータの初期駆動トルクは小さくてそのままでは、起動することができない場合、第2リング12の変形度が小さい間は、弾性エネルギーの蓄積と、モータの起動トルクが立ち上がるまでの時間稼ぎを行うことができる。
【0066】
この結果、ロボット30がもつ小さな起動トルクでも切削することができる。
又、本実施形態では、切削安定具28がB点の少し先の位置に達した際、第2リング12の変形度が大きくなると、切削安定具28がスクレーパ取付板23に当接する(作動的に連結する)。この結果、切削工具ホルダ10は非線形効果を発揮し、びびり振動を抑制することができる。
【0067】
(3) 本実施形態の切削工具ホルダ10では、第1弾性部材としてリング状に形成された第1リング11にて形成した。
この結果、第1弾性部材をコイルスプリング等にて構成する場合に比して、取付板20や、連結金具13への取付けをボルト16,21、ナット17により簡単に取着することができ、又、切削工具ホルダ10の構成を簡単にすることができる。
【0068】
なお、被削材及び切削量が限定されるような場合、取付板20や、連結金具13への第1リング11の取付けを接着剤や溶接等で固定してもよい。
(4) 本実施形態の切削工具ホルダ10では、第2弾性部材としてリング状に形成された第2リング12にて形成した。
【0069】
この結果、第2弾性部材をコイルスプリング等にて構成する場合に比して、スクレーパ取付板23や、連結金具13への取付けをボルト18,24、ナット25により簡単に取着することができ、又、切削工具ホルダ10の構成を簡単にすることができる。
【0070】
(5) 本実施形態の切削工具ホルダ10では、第1リング11と第2リング12とは、連結金具13(弾性連結具)にて互いに連結した。すなわち、連結金具13は、第1取付板14(第1取付部)及び第2取付板15(第2取付部)にて断面L字状に形成し、第1リング11と第2リング12とはそれぞれ第1取付板14及び第2取付板15に固着した。
【0071】
このため、最終出力軸35が、被削材Wに幾分食い込ませながら、B点へ移動したとき、スクレーパ26の刃先は被削材Wに食い込んでいるため、連結金具13が自身の弾性に抗して変形し、連結金具13は蓄力変形し、バネ力が蓄えられる。この結果、その後、X方向へスクレーパ26が移動した際、この蓄力した弾性エネルギーのバネ効果を利用して、X方向への切削力に資することができる。
【0072】
(6) 本実施形態の切削工具ホルダ10では、切削安定具28(第1高剛性部材)は、第1リング11(第1弾性部材)、第2リング12(第2弾性部材)の振動の周波数とは非共振の固有の周波数を備えている。
【0073】
この結果、被削材Wの加工面は、びびり振動による悪影響がなくなり、良好な加工面を得ることができる。
(7) 本実施形態での切削工具ホルダ10の使用方法では、ロボット30の最終出力軸35(外部装置)により、切削工具ホルダ10に取着したスクレーパ26(切削部材)を反第1方向である反Z方向に移動して被削材Wに当接する。そして、スクレーパ26を被削材Wに食い込ませるようにして、切削方向(X方向)とは逆方向(反第2方向)に押し戻す。続いて、前記押し戻した長さ(初期水平方向移動距離a)よりも長い値(d+e)に従って切削方向(X方向)に押して被削材Wに食い込ませることにより被削材Wを切削するようにした。
【0074】
この結果、切削工具ホルダ10を装着したロボット30を使用して、熟練者と同様にキサゲ加工を行うことができる。
(8) 又、ロボット30に切削工具ホルダ10を装着し、X,Y,Zの任意の位置に移動させることができるため、自動キサゲ加工が可能となり、従来、熟練者が行っていたときよりもキサゲ加工の高効率化を図ることができる。
【0075】
(9) このことにより、熟練者に頼ることなく、キサゲ加工ができ、誰でも容易にロボット30を使用することにより、キサゲ加工ができる。
(10) 又、本実施形態では、ロボット30は多軸型ロボットであるため、被削材Wを移動させることなく、被削材Wの向きを変えることなく、キサゲ加工を行うことができる。
【0076】
(11) 又、ロボット30を使用することにより、熟練者でも困難であった切削量の制御や加工面の状態の制御を容易に行うことができる。
(12) さらに、本実施形態では、第1リング11や第2リング12、並びに切削安定具28の大きさ、厚みを変更することにより、熟練者と同じ加工状態や、反対にロボット30を使用した機械特有の加工状態にすることも可能である。
【0077】
(第2実施形態)
次に第2実施形態の切削工具ホルダ100を図7を参照して説明する。なお、図7においては、図面の左方を左、右方(X方向)を右として説明する。
【0078】
切削工具ホルダ100は、リング101、第3高剛性部材としての切削安定具102を備えている。リング101はX方向が長くなるように金属板から楕円形状に形成されたリング部101aを備えるとともに弾性を備えている。すなわち、リング部101aは、Z方向及び反Z方向、並びにZ方向とは直交するX方向及び反X方向に少なくとも弾性力を有する。リング101の互いに反対側に位置する部位内部間には、切削安定具102が配置されている。本実施形態では、切削安定具102は四角柱状に形成され、右端面または左端面の上下両辺がリング101のリング部101aに対して接着剤にて接着固定され、片持ち支持されている。なお、切削安定具102をリング101に対してボルト着等にて固定してもよい。
【0079】
本実施形態では、切削安定具102の一方の端面は、すなわち、片持ち支持されていない側の端面はリング部101aに対して、嵌め合い誤差程度の離間距離Δを有している。なお、嵌め合い誤差は、例えば数μm程度であるため、図面上では離間距離Δを図示していない。なお、離間距離Δは、第1実施形態と同様に、切削工具ホルダ100を取着するロボット30のロボットアーム32の最終出力軸35に大きな反作用力が印加された場合、起動トルクが十分に発生する時間が得られるように設定されている。
【0080】
前記切削安定具102は、リング部101aよりも剛性を高くされている。
リング101は切削安定具102の上方に位置する部分を上部弾性部103とされ、切削安定具102の下方に位置する部分を下部弾性部104とされている。切削工具ホルダ100は、上部弾性部103及び下部弾性部104により、Z方向及びX方向において弾性力を備えることになる、又、切削安定具102を備えることにより、切削安定具102と下部弾性部104を備えた切削工具ホルダ100は、非線形バネ定数を持つことになる。
【0081】
なお、前記非線形バネ定数の設定は、リング101の厚さ、幅及び材質、及び被削材の材質及び切削量によって決定する。
切削安定具102の固有の周波数は、下部弾性部104の振動の周波数とは非共振となるように設定されている。
【0082】
上部弾性部103の上面には、取付板105が接着剤にて接着固定されている。なお、取付板105の上部弾性部103に対する固定はボルト着にて固定してもよい。取付板105のY方向及び反Y方向側の両端には、第1実施形態の取付板20のボルト挿通孔22と同様にボルト挿通孔106が設けられている。同ボルト挿通孔106にボルトを挿通し、ロボット30の最終出力軸35の支持板38に対して切削工具ホルダ100を着脱可能に取着することが第1実施形態と同様に可能である。取付板105は外部装置取付部に相当する。
【0083】
下部弾性部104の下部外周面において、長手方向(本実施形態では、左右方向)の中央部よりも若干反X方向寄りの部位Q1には、切削部材としてスクレーパ107が取付け固定されている。スクレーパ107の下部弾性部104に対する取付け固定は、接着剤による接着固定、ボルト等の締付け固定、或いは溶接等によりなされている。前記部位Q1は、リング101が上下方向において圧縮変形する際、図7で矢印Pで示すように反X方向に若干移動する部位である。
【0084】
前記スクレーパ107の先端の刃先は、図7に示すようにX方向に延びるように、かつ、リング101から離間するように斜状に延出されている。
スクレーパ107は、被削材Wの加工面を水平に配置した被削材Wに対して所定角度θを有するように配置されている。第2実施形態でにおいては、水平に配置した加工面(表面)をX-Y平面とし、リング101を図7に示すように配置したとき、スクレーパ107と加工面とのなす角度(所定角度θ)は18°±10°となるようにされている。
【0085】
なお、本実施形態での被削材Wの材質は金属、例えば、鋼鉄、鋳鉄、真ちゅう製、或いは石膏製等である。
さて、上記のように構成された切削工具ホルダ100の作用について説明する。
【0086】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、切削工具ホルダ100の取付板105をロボット30の支持板38に対してボルト挿通孔106に挿通した図示しないボルトにて締付け固定する。
【0087】
なお、ロボット30(すなわち、最終出力軸35)の動きは、第1実施形態と同じであるため、説明を省略し、切削工具ホルダ100の動作について説明する。
【0088】
第2実施形態では、最初にロボット30から垂直成分の力が加えられると、リング101は、上下方向に圧縮が生ずる。この結果、スクレーパ107の刃先は押し戻しと被削材Wに食い込み現象が生ずる(移動軌跡のA参照)。
【0089】
次に、切削のために水平方向(反X方向)にスクレーパ107を動かす(図4の移動軌跡のB→C→D参照)と、リング101は、ロボット30に取付けた取付板105が節となって、傾斜方向Rに変形が生ずる(図7参照)。図7において、Oは傾斜していない場合のリング101の長軸を通過する線を示している。なお、楕円形状をなしたリングでは、このような変形が生ずることは公知である。
【0090】
この変形により、さらに、スクレーパ107は被削材Wに対して食い込みが生ずる。
このとき、スクレーパ107を取付けた部位Q1では、リング101の反X方向への引っ張り現象が生ずる。従って、図4の移動軌跡のA,B間で示す戻し量(引き戻し点Bと最下点C間の水平距離d)の一部を補う。なお、この戻し量は少し(数μm以上あればよい)だけでも充分である。
【0091】
この後、切削のために水平方向(X方向)及び反Z方向(図4の移動軌跡B→C参照)、及び水平方向(X方向)及びZ方向にスクレーパ107を動かす(図4の移動軌跡C→D参照)。
【0092】
このとき、スクレーパ107はX方向へ進むが、X方向への移動初期には、リング101が自身の弾性に抗して、すなわち、弾性エネルギーを蓄力しながら変形する。なお、リング101に関与した部分ではバネ定数が小さいために、弱い弾性力により、ロボット30の初期の起動トルクが上昇するので、その後の十分な切削力に必要なトルクが得られるようになる。
【0093】
第2実施形態においても、ロボット30の最終出力軸35がX方向への移動初期において直線運動をするためには、ロボットの全部の動力が一斉に起動する必要がある。しかし、第2実施形態においても、リング101の弾性変形は、弾性エネルギーの蓄積と、モータの起動トルクが立ち上がるまでの時間稼ぎを行うことになる。
【0094】
この結果、この時間稼ぎの間、駆動トルクが大きくなって、ロボット30がもつ小さな起動トルクでも切削することが可能となる。
この後、この水平方向(X方向)に移動するとき、切削安定具102が機能し、十分な剛性(高剛性)が得られるため、被削材Wを切削する。
【0095】
又、切削安定具102がないと、スクレーパ107がB→C→Dの移動軌跡に沿って切削加工中、リング101の剛性の不足によって、びびり振動が発生した場合、被削材Wの加工面にもその振動が転写されるようになる。転写が行われた場合には、切削された被削材Wは、商品価値が減少する。
【0096】
しかし、第2実施形態においては、切削安定具102がB点のほんの少し先の位置から、作動するように非線形バネ定数の設定を、リング101の厚さ、幅及び材質、及び被削材Wの材質及び切削量によって決定している。すなわち、C点の少し手前の位置に達した際、切削安定具102が機能するように設定している。
【0097】
この結果、切削工具ホルダ100は非線形効果を発揮し、びびり振動を抑制する。
又、切削安定具102の固有の周波数は、第1リング11及び第2リング12のそれぞれの振動の周波数とは非共振となるように設定されている。
【0098】
この結果、被削材Wの加工面は、びびり振動による悪影響がなくなり、良好な加工面を得ることができる。
このようにして、スクレーパ107はD点から被削材Wの外部へと移動し、一連の加工作業が終了する。
【0099】
この後、制御装置は制御プログラムに従って別のキサゲ加工を施したい位置(加工位置)に移動させるべく、最終出力軸35を移動させ、同様の加工作業を連続して行わせる。
【0100】
このようにして、切削工具ホルダ100では安定したキサゲ加工ができる。
第2実施形態によると、第1実施形態の(8)~(12)の作用効果と同様の効果を奏する以外に次のような作用効果を奏する。
【0101】
(1) 第2実施形態の切削工具ホルダ100では、最終出力軸35(外部装置)へ取着する取付板105(外部装置取付部)を備えた。そして、切削工具ホルダ100は、取付板105に固定され、取付板105を通るZ方向及び反Z方向(第1方向及び反第1方向)及びZ方向とは直交するX方向及び反X方向(第2方向及び反第2方向)に少なくとも弾性力を有するように形成されたリング部101aを有するリング101(リング部材)を備えた。
【0102】
又、リング101において、取付板105が設けられた側とは反対側には、X方向(第2方向)へ延びるように、かつ、リング101から刃先が離間するように斜状に延出するスクレーパ107(切削部材)を備えた。
【0103】
そして、リング101のリング部101a間には、リング部101aよりも剛性が高い切削安定具102(第3高剛性部材)を備えるようにした。
そして、リング101に対して、X方向(第2方向)の力が印加された際の初期には、リング101がX方向及び反X方向に弾性を有することにより、低剛性を示し、初期経過後は切削安定具102(第3高剛性部材)による高剛性を示すようにした。
【0104】
このため、スクレーパ107の刃先が被削材Wに食い込んでおり、各モータの初期駆動トルクは小さくてそのままでは、起動することができない場合、リング101のX方向における変形は、弾性エネルギーの蓄積と、モータの起動トルクが立ち上がるまでの時間稼ぎを行うことができる。
【0105】
この結果、ロボット30がもつ小さな起動トルクでも切削することができる。
この結果、切削工具ホルダ100は、びびり振動を抑制することができる。
(2) 第2実施形態では、リング101を楕円形状にした。
【0106】
この結果、簡単な形状で、上記(1)の作用効果を実現することができるリング101を備えた切削工具ホルダ100とすることができる。
(3) 第2実施形態の切削工具ホルダ100では、切削安定具102(第3高剛性部材)は、リング101の振動の周波数とは非共振の固有の周波数を備えている。
【0107】
この結果、被削材Wの加工面は、びびり振動による悪影響がなくなり、良好な加工面を得ることができる。
(第3実施形態)
次に第3実施形態を図9を参照して説明する。
【0108】
第3実施形態は、第1実施形態の構成にさらに、切削安定具70を追加したものである。
すなわち、取付板20の下面には、切削安定具70の上端が固定されている。切削安定具70の取付板20に対する固定方法は、接着、溶接、ボルト等により行われている。切削安定具70の下端は連結金具13の第1取付板14に対して離間して対向配置されている。
【0109】
なお、切削安定具70の下端を第1取付板14に固定して支持し、上端を取付板20の下面に対して離間して対向配置させてもよい。
すなわち、切削安定具70は取付板20と第1取付板14との間に位置するように配置され、第1リング11と並設されている。
【0110】
切削安定具70と第1取付板14との離間距離Δ1は第1リング11が図9に示すZ方向において自身の弾性に抗してその両端が接近する方向に変形した際、当接可能な距離に設定されている。前記当接可能な距離(離間距離Δ1)は、切削工具ホルダ10を取着するロボット30のロボットアーム32の最終出力軸35に大きな反作用力が印加された場合、起動トルクが十分に発生する時間が得られるように設定されている。
【0111】
すなわち、スクレーパ26の移動軌跡のA→B→C→D(図4参照)のうち、B点にほぼ同じ位置か、極わずかだけA点から反Z方向に進んだ際、第1リング11が変形して切削安定具70が第1取付板14に当接するように離間距離Δ1が設定されている。
【0112】
すなわち、第1リング11の変形度が大きくなると切削安定具70が第1取付板14に当接するようにされている。
なお、切削安定具70の下端を第1取付板14に固定して支持し、上端を取付板20の下面に対して離間して対向配置させた場合、第1リング11の変形時に切削安定具70が取付板20に当接するように離間距離Δ1を設定する。
【0113】
すなわち、この場合には、切削安定具70は、第1リング11のZ方向及び反Z方向における変形度が大きくなるにつれて取付板20と連結金具13とが切削安定具70を介して作動的に連結する。
【0114】
切削安定具70は第2高剛性部材に相当し、第1リング11及び第2リング12よりも高剛性とされている。
又、切削安定具70は、第1リング11、第2リング12の振動の周波数とは非共振の固有の周波数を備えている。
【0115】
なお、他の構成は、第1実施形態と同一であるため、同一符号を付す。
さて、第1実施形態の構成においては、種々の切削条件(例えば、第1リング11及び第2リング12の厚さ、幅及び材質や、或いは被削材の材質及び切削量(深さ、長さ、幅等による)、さらには、切削速度等の条件)の組合せが好適な場合には、被削材Wの加工面にはきれいな切削面が得られる。これらは実験によって確認されている。
【0116】
しかし、前記の切削条件の組合せが好適でない場合には、図10(b)に示すような状態もあったことが確認された。図10(a),図10(b)は切削痕跡の模式図を示し、縦軸は、加工面における切削痕深さ(単位:μm)、横軸は切削痕長さ(X方向に切削した際の長さ、単位:mm)である。なお、縦軸は、実際の物よりも拡大して図示している。図10(b)では、凹凸が連続した部分が生じた切削痕跡となっている。
【0117】
これは、切削条件が好適でない場合には、次のようなことが生じていると推測できる。
この切削痕において、凹凸の連続痕跡が出現の状態は、図4に示すC点を通過し又はC点であることが確認された。このような痕跡が生ずると商品価値が下がる。このC点を通過してからは、ロボット30の最終出力軸35が垂直(Z方向)に上昇する作業であり、同時に、第1リング11が圧縮状態から解放され、伸びきった状態になる。そのため、第1リング11は拘束状態からの解放に伴い、このとき第1リング11のバネ定数に依存した振動を生じると推測される。
【0118】
本実施形態は、上記の第1実施形態において、切削条件が好適ではない場合に対しても対応できる構成である。
本実施形態では、このC点を通過してからは、ロボット30の最終出力軸35が垂直(Z方向)に上昇すると同時に、第1リング11が圧縮状態から解放されるとき、第1リング11への外力が減少する。このとき、前記第1実施形態では、バネ定数に依存した振動が生ずるが、本実施形態では、第1リング11に対する外力を最終出力軸35から切削安定具70に受け渡しを行い、振動の振幅を抑制する。このため、振動の抑制により、図10(a)に示すように、被削材Wの加工面は、図10(b)の切削痕跡とは異なり、凹凸の連続痕跡がない良好なものとなる。
【0119】
従って、第3実施形態では、下記の効果がある。
(1) 第3実施形態では、第1リング11(第1弾性部材)及び第2リング12(第2弾性部材)よりも高剛性を有する切削安定具70(第2高剛性部材)を第1リング11と並設した。又、第1リング11のZ方向(第1方向)及び反Z方向(反第1方向)における変形度が大きくなるにつれて取付板20(外部装置取付部)と、第2リング12に連結された連結金具13(部材)と第1リング11とが切削安定具70を介して作動的に連結するようにした。
【0120】
そして、Z方向及び反Z方向における第1リング11の変形度が小さい場合には、第1リング11の低剛性を発揮し、Z方向及び反Z方向における第1リング11の変形度が大きい場合には、切削安定具70による高剛性を発揮するようにした。
【0121】
この結果、切削条件が第1実施形態よりも好適でない場合でも被削材Wの切削痕跡を、良好なものにすることができる。
前記各実施形態の構成を、下記のように変更してもよい。
【0122】
(1) 第1実施形態の切削工具ホルダ10では、第1リング11(第1弾性部材)と、第2リング12(第2弾性部材)とを連結金具13(他の部材)を介して間接的に連結した。この間接的に連結する代わりに、第1リング11の下部を、第1実施形態よりも厚みを増加して、その部分に第2リング12を直接連結する構成にしてもよい。
【0123】
(2) 第1実施形態の切削工具ホルダ10では、連結金具13(他の部材)とスクレーパ取付板23(切削部取付部)との間において、第1リング11及び第2リング12よりも高剛性を有する切削安定具28(第1高剛性部材)を設けた。この構成に代えて、第1リング11(第1弾性部材)とスクレーパ取付板23(切削部取付部)との間に位置するように、切削安定具28を配置してもよい。
【0124】
(3) 第1実施形態では、第1弾性部材、第2弾性部材として第1リング11、第2リング12としたが、これらに代えてコイルスプリング等の他のスプリングに代えてもよい。
【0125】
(4) 第1実施形態の変形例として、図6に示すように切削工具ホルダ10を構成してもよい。
なお、第1実施形態と同一又は相当する構成については、同一符号を付し、その説明を省略し、異なるところを中心に説明する。
【0126】
切削工具ホルダ10は、第1リング11,第2リング12、及び一対の連結金具を備えている。一対の連結金具を以下、第1連結金具13A、第2連結金具13Bという。第1連結金具13A、第2連結金具13Bは第1取付板14A,14B及び第2取付板15A,15Bからなり、両取付板は弾性を有するように断面L字状に連結形成されている。第1取付板14Aと第2取付板15Aの連結部位にはアール(R)面が図に示すように形成されている。又、第1取付板14Bと第2取付板15Bの連結部位には図に示すようにアール(R)面が形成されている。
【0127】
第1リング11と第2リング12とは、第2連結金具13Bを介して互いに連結固定されている。すなわち、第2リング12は第2連結金具13Bの第2取付板15Bに対してボルト60、ナット61にて締付けされている。第1リング11は第2連結金具13Bの第1取付板14Bにボルト62、ナット63にて締付けされている。
【0128】
又、第1連結金具13Aの第1取付板14Aに取付板20がボルト21にて締付け固定されている。第1連結金具13Aの第2取付板15Aに対して第2リング12がボルト18,ナット19にて締付け固定されている。
【0129】
そして、切削安定具28の一端は第2取付板15Aに固定され、他端は第2連結金具13Bの第2取付板15Bに対して、離間距離Δを有するように対向配置されている。
【0130】
第1リング11の下部にはスクレーパ取付板23がボルト24及びナット25にて締付け固定されている。スクレーパ取付板23には、スクレーパ26が取付固定されている。
【0131】
第1リング11は第1弾性部材に相当し、第2リング12は第2弾性部材に相当する。
又、第2連結金具13Bは、本発明の弾性連結具に相当する。又、第1取付板14Bは第1取付部に相当し、第2取付板15Bは第2取付部に相当する。
【0132】
上記のように構成しても、第1実施形態の切削工具ホルダ10と同様の作用効果を奏する。
(5) 第2実施形態ではリング101を楕円形状に形成したが、円形状であってもよい。
【0133】
(6) 第2実施形態では、スクレーパ107を、下部弾性部104の下部外周面において、長手方向(本実施形態では、左右方向)の中央部よりも若干反X方向寄りの部位Q1に取付け固定した。これに代えて、部位Q1よりもさらに、反X方向側に位置する部位Q2にスクレーパ107を取付け固定してもよい。
【0134】
同部位Q2は、リング101が上下方向において圧縮変形する際、図7で矢印Pで示すように反X方向に若干移動する部位である。
従って、リング101が上下方向において圧縮変形する際、図7で矢印Pで示すように反X方向に若干移動し、引っ張り現象にて、図4の移動軌跡のA,B間で示す戻し量(引き戻し点Bと最下点C間の水平距離d)の一部を補うことができる。
【0135】
なお、第2実施形態の部位Q1では、着力点(スクレーパ107の刃先が当たる被削材Wの部位)までの距離が長く、モーメントアームが大きくなって、ロボット30の負担が大きくなる。これに対して、部位Q2にてスクレーパ107を取付けた場合、モーメントアームが小さくなり、ロボット30への負担が小さくなり、作業性が向上する。この結果、ロボット30のトルクの大きさに対応したスクレーパ107の取付け位置を選択できる利点がある。
【0136】
このため、スクレーパ107の運動方向と向き、及びロボット30の性能に応じてスクレーパ107の取付け位置は変化させてよい。
(7) 第2実施形態の楕円形状のリング101の代わりに図11に示すように8角形状を要するリング部201aを備えたリング201としてもよい。なお、第2実施形態又は前記変形例と同一構成又は、相当する構成については、同一符号を付す。
【0137】
切削工具ホルダ200のリング部201aは、図11に示すように隣接する他の辺とは所定角度をなす辺211~218を備えている。リング部201aには、辺212と辺216間を架橋するように所定の幅を備えた切削安定部220が一体に設けられている。切削安定部220により、X方向に並ぶ一対の孔221,222が形成されている。
【0138】
この変形例では、切削工具ホルダ200に対して反Z方向の力が印加された際の弾性変形は、主に辺211,213,215,217で受け持つ。従って、この切削工具ホルダ200を製造する場合、反Z方向の力の大きさが予め定めておき、その大きさに合わせた厚み、長さ、材質等の設定がされている。
【0139】
又、切削工具ホルダ200をX方向に移動させて、被削材Wに対する必要な切削力を得る場合、辺212,214,216,218の剛性に応じて変化する。このため、必要な切削力を得るためには、辺212,214,216,218の厚み、長さ、材質等が予め設定されている。
【0140】
孔221,222の大きさによっても、強度の変化を持たせることができるため、切削安定部220の太さ(幅及び厚み)により、第2実施形態の切削安定具102と同じ作用をさせることができる。すなわち、切削安定部220は第3高剛性部材に相当する。
【0141】
なお、スクレーパ107の取付けする部位は、図11では、辺216のQ2としているが、辺215,216,217のいずれでもよい。この取付け位置の選択によって、スクレーパ107のモーメントアームを色々の大きさに指定することが可能である。
【0142】
(8) 第1実施形態の構成中、切削安定具28を省略するか剛性の小さいものに代えてもよい。この場合、切削安定具28によって、びびり振動が発生しない切削条件の場合、例えば、被削材Wの材質が非金属である、木材、プラスチックのような塑性材質の場合にも充分適用可能である。
【0143】
(9) 第3実施形態の切削工具ホルダ10では、第1リング11(第1弾性部材)と、第2リング12(第2弾性部材)とを連結金具13(他の部材)を介して間接的に連結した。この間接的に連結する代わりに、第2リング12の一端を、第3実施形態よりも厚みを増加して、その部分に第1リング11を直接連結する構成にしてもよい。そして、この第2リング12の厚みを増加した部分に対して、取付板20に一端を固定した切削安定具70を離間距離Δ1を設けて作動的に連結する構成としてもよい。
【0144】
(10) 前記各実施形態では、第1取付板14と第2取付板15(第1取付板14Aと第2取付板15A、第1取付板14Bと第2取付板15B)の連結部位にはアール(R)面を設けたが、アール(R)面を省略した状態で、互いに直交させてもよい。
【0149】
【発明の効果】
以上詳述したように、請求項1乃至請求項11の発明によれば、産業用ロボット等の装置に取着することができ、その工具ホルダに切削部材を設置した場合、人間の"しなやかさ"を強調してキサゲ加工する作業を再現することができる効果を奏する。
【0150】
又、請求項12の発明によれば、柔軟な構造を特徴とする切削工具ホルダを産業用ロボットに取着して、その工具ホルダに切削部材を直接設置した場合、人間の"しなやかさ"を強調してキサゲ加工する作業を再現することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施形態の切削工具ホルダ10の側面図。
【図2】 第1実施形態の切削工具ホルダ10の斜視図。
【図3】 切削工具ホルダ10をロボット30に取着した側面図。
【図4】 スクレーパ26の移動軌跡の説明図。
【図5】 切削工具ホルダ10の非線形効果を示す特性図。
【図6】 他の例の切削工具ホルダ10の側面図。
【図7】 他の実施形態の切削工具ホルダ100の側面図。
【図8】 熟練者によるキサゲ作業における切削時に工具に働く切削力及び、その時の工具50の変位の解析した説明図。
【図9】 第3実施形態の切削工具ホルダ10の側面図。
【図10】(a),(b)は切削痕跡の模式図
【図11】 他の例の切削工具ホルダ200の側面図。
【符号の説明】
10…切削工具ホルダ
11…第1リング(第1弾性部材)
12…第2リング(第2弾性部材)
13…連結金具(弾性連結具)
14…第1取付板(第1取付部)
15…第2取付板(第2取付部)
20…取付板(外部装置取付部)
23…スクレーパ取付板(切削部取付部)
26…スクレーパ(切削部材)
28…切削安定具(第1高剛性部材)
100…切削工具ホルダ
101…リング(リング部材)
101a…リング部
102…切削安定具(第3高剛性部材)
105…取付板(外部装置取付部)
107…スクレーパ(切削部材)
200…切削工具ホルダ
201…リング
201a…リング部
220…切削安定部(第3高剛性部材)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10