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明細書 :β-ヒドロキシケトンの合成方法及び触媒

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3837511号 (P3837511)
公開番号 特開2004-049937 (P2004-049937A)
登録日 平成18年8月11日(2006.8.11)
発行日 平成18年10月25日(2006.10.25)
公開日 平成16年2月19日(2004.2.19)
発明の名称または考案の名称 β-ヒドロキシケトンの合成方法及び触媒
国際特許分類 B01J  31/26        (2006.01)
C07C 201/12        (2006.01)
C07C 205/45        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI B01J 31/26 Z
C07C 201/12
C07C 205/45
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 5
全頁数 19
出願番号 特願2002-206839 (P2002-206839)
出願日 平成14年7月16日(2002.7.16)
審査請求日 平成14年7月16日(2002.7.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304019399
【氏名又は名称】国立大学法人岐阜大学
発明者または考案者 【氏名】杉 義弘
【氏名】窪田 好浩
【氏名】後藤 邦雄
個別代理人の代理人 【識別番号】100068755、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 博宣
【識別番号】100105957、【弁理士】、【氏名又は名称】恩田 誠
審査官 【審査官】増山 淳子
参考文献・文献 特開2002-028493(JP,A)
D.J. MACQUARRIE et al.,Aminopropylated MCMs as base catalysts: a comparison with aminopropylated silica,Chemical Communications,1997年,No. 18,pp. 1781-1782
Enrico ANGELETTI et al.,SILICA GEL FUNCTIONALIZED WITH AMINO GROUPS AS A NEW CATALYST FOR KNOEVENAGEL CONDENSATION UNDER,Tetrahedron Letters,1988年,Vol. 29, No. 18,pp. 2261-2264
調査した分野 B01J 21/00-38/74
WPI(DIALOG)
JSTPlus(JOIS)
特許請求の範囲 【請求項1】
アモルファスシリカ及びメソポーラスシリカから選ばれる少なくとも一種と有機アミンとから構成され、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応に用いられることを特徴とする触媒。
【請求項2】
ソポーラスシリカと有機アミンとから構成される請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
機アミンとしてアルコキシシラン基を有する第一級アミン又はアルコキシシラン基を有する第二級アミンと、表面にシラノール基が存在するアモルファスシリカ及びメソポーラスシリカから選ばれる少なくとも一種が、アルコキシシラン基とシラノール基との脱アルコール反応によって、有機アミンが前記シリカの表面に固定化される請求項1に記載の触媒。
【請求項4】
前記有機アミンは第二級アミンである請求項1又は請求項2に記載の触媒。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の触媒の存在下に、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を行いβ-ヒドロキシケトンを合成することを特徴とするβ-ヒドロキシケトンの合成方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応に用いられる触媒及びβ-ヒドロキシケトンの合成方法に関するものである。より詳しくは、β-ヒドロキシケトンの収率を向上させることができるβ-ヒドロキシケトンの合成方法及び触媒に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、各種化学製品の中間体等として使用されるβ-ヒドロキシケトンは、水酸化ナトリウム等の塩基性触媒の存在下に、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応(Claisen Schmidt reaction)を行うことによって合成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、この従来のβ-ヒドロキシケトンの合成方法においては、クライゼンシュミット反応の進行に伴って、その反応の触媒として用いられる塩基性触媒等によって、合成されたβ-ヒドロキシケトンの脱水反応が進行し、副生成物であるα,β-不飽和ケトンが合成される。このため、目的物であるβ-ヒドロキシケトンの収率が減少するという問題があった。
【0004】
本発明は、上記のような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、β-ヒドロキシケトンの収率を向上させることができるβ-ヒドロキシケトンの合成方法及び触媒を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明の触媒は、アモルファスシリカ及びメソポーラスシリカから選ばれる少なくとも一種と有機アミンとから構成され、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応に用いられるものである。
【0006】
請求項2に記載の発明の触媒は、請求項1に記載の発明において、ソポーラスシリカと有機アミンとから構成されるものである。
請求項3に記載の発明の触媒は、請求項1に記載の発明において、機アミンとしてアルコキシシラン基を有する第一級アミン又はアルコキシシラン基を有する第二級アミンと、表面にシラノール基が存在するアモルファスシリカ及びメソポーラスシリカから選ばれる少なくとも一種が、アルコキシシラン基とシラノール基との脱アルコール反応によって、有機アミンが前記シリカの表面に固定化されるものである。
【0007】
請求項4に記載の発明の触媒は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記有機アミンは第二級アミンである。
請求項5に記載の発明のβ-ヒドロキシケトンの合成方法は、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の触媒の存在下に、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を行いβ-ヒドロキシケトンを合成するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本実施形態の触媒は、従来の水酸化ナトリウム等の塩基性触媒に比べてβ-ヒドロキシケトンの収率を向上させるために、シリカ類と有機アミンとから構成され、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応に用いられる。ここで、シリカ類及び有機アミンは単独では芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応に対する活性がそれぞれ低いために、触媒がシリカ類のみ又は有機アミンのみで構成されているときには、β-ヒドロキシケトンの収率をそれぞれ向上させることができない。
【0009】
まず、触媒を構成するシリカ類及び有機アミンについて説明する。
シリカ類の具体例としては、アモルファスシリカ(シリカゲル)やメソポーラスシリカ等が挙げられる。アモルファスシリカやメソポーラスシリカはシリカ多孔体であり、それらの表面にはシラノール基(Si-OH)の水酸基がそれぞれ存在している。この水酸基は、隣接する水酸基等と水素結合せずに単独で存在するものと、隣接する水酸基等と水素結合した状態で存在するものとがある。
【0010】
そして、シリカ類の細孔内には芳香族アルデヒド、ケトン及び有機アミンが濃縮された状態でそれぞれ存在し、互いに接近し合うことによってクライゼンシュミット反応が促進される。さらに、シリカ類の表面に存在する水酸基によって、有機アミンとケトンとの反応によって生成される反応中間体と芳香族アルデヒドとの反応が促進されることにより、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応がより促進されると推定される。
【0011】
シリカ類の表面に存在する水酸基の内、隣接する水酸基等と水素結合せずに単独で存在する水酸基は、隣接する水酸基等と水素結合した状態で存在する水酸基に比べて、反応中間体と芳香族アルデヒドとの反応を促進する効果が高いと推定される。
【0012】
ここで、メソポーラスシリカについて説明する。
メソポーラスシリカは、内径が2~50nmの細孔(メソ孔)を有するシリカ多孔体であり、その表面に存在する水酸基の内、隣接する水酸基等と水素結合せずに単独で存在する水酸基の割合はアモルファスシリカに比べて高い。このため、シリカ類の具体例の中でも、反応中間体と芳香族アルデヒドとの反応を促進する効果が高いことから、メソポーラスシリカが好ましい。
【0013】
メソポーラスシリカは、シリカやケイ酸ソーダ等がヘキサデシルトリメチルアンモニウムイオン(HDTMA+)等の界面活性剤の水溶液中で加熱された後、焼成されることにより界面活性剤が取除かれて合成される。このとき、水溶液中の界面活性剤の濃度が臨界ミセル濃度(cmc)より高濃度に達すると、界面活性剤はヘキサゴナル構造やキュービック構造等の液晶を形成する。そして、この液晶を鋳型としてメソポーラスシリカが合成されると推定される。
【0014】
メソポーラスシリカの具体例としては、FSM-16、MCM-41、MCM-48、SBA-1、SBA-3、SBA-15等が挙げられる。図1(a)及び(b)に示すように、FSM-16 11及びMCM-41 12は、細孔構造はヘキサゴナル構造であり、細孔の内径はそれぞれ2~10nmである。
【0015】
有機アミンは、ケトンと反応して反応中間体としてのイミンやエナミン等を生成し、この反応中間体が芳香族アルデヒドと反応することによってクライゼンシュミット反応が進行する。例えば、有機アミンとしてのエチルアミンと、ケトンとしてのアセトンとが反応したときには、イミンとしての下記式(1)に示す反応中間体が生成される。
【0016】
【化1】
JP0003837511B2_000002t.gif有機アミンとしてのジエチルアミンと、ケトンとしてのアセトンとが反応したときには、エナミンとしての下記式(2)に示す反応中間体が生成される。
【0017】
【化2】
JP0003837511B2_000003t.gif有機アミンの具体例としては、ケトンと反応してイミンを生成するプロピルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等の第一級アミンや、ケトンと反応してエナミンを生成するピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ピペラジン、2,6-ルチジン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ピロリジン等の第二級アミン等が挙げられる。
【0018】
ここで、反応中間体の中でも、エナミンはイミンに比べて芳香族アルデヒドとの反応性が高い。よって、有機アミンの具体例の中でも、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を促進する効果が高いことから、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、ピペラジン、2,6-ルチジン、ジイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ピロリジン等の第二級アミンが好ましい。
【0019】
さらに、第二級アミンの中でも、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を促進する効果がより高いことから、ピペリジンやピペラジン等の環状アミンが好ましい。ここで、トリエチルアミン等の第三級アミンは、ケトンと反応して反応中間体を生成しにくいために、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を促進させにくい。
【0020】
有機アミンは、シリカ類と混合されて、又はシリカ類の表面に固定化されて触媒を構成するが、反応中間体と芳香族アルデヒドとの反応を促進する効果が高いことから、シリカ類の表面に固定化されるのが好ましい。
【0021】
このとき、有機アミンは、シリカ類の表面に容易に固定化されるために、下記式(3)で示されるアルコキシシラン基を有する第一級アミン又はアルコキシシラン基を有する第二級アミンが好ましい。下記式(3)において、nは1~3であり、Xは水素等を示し、Rはメチル基(CH3)やエチル基(C25)等のアルキル基を示す。
【0022】
Si(X)3-n(OR)n …(3)
アルコキシシラン基を有する第一級アミンの具体例としては、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。一方、アルコキシシラン基を有する第二級アミンの具体例としては、3-ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0023】
有機アミンがシリカ類の表面に固定化されるときには、トルエン等の溶媒にシリカ類と有機アミンとが加えられた後、溶液が還流されてアルコキシシラン基とシラノール基の水酸基との脱アルコール反応が行われる。このとき、シリカ類のシラノール基のケイ素原子と有機アミンのケイ素原子との間にはシロキサン基(Si-O-Si)が形成され、このシロキサン基によって、有機アミンはシリカ類の表面に固定化される。
【0024】
シリカ類の表面に固定化される有機アミンの量は、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を促進するために、シリカ類1gに対して好ましくは0.5~2.0mmol、さらに好ましくは0.75~1.65mmolである。0.5mmol未満では、有機アミンとケトンとの反応によって生成される反応中間体の量が少ないために、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を十分に促進することができない。一方、2.0mmolを超えても、シリカ類の表面に有機アミンをそれ以上固定化することができないために、有機アミンとケトンとの反応によって生成される反応中間体の量をそれ以上増加させにくい。
【0025】
次いで、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応について説明する。
芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応はアルドール反応の一種であり、固相の芳香族アルデヒドと液相のケトンとが反応する多相(不均一)反応、又は液相の芳香族アルデヒドと液相のケトンとが反応する液相反応である。この芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を行いβ-ヒドロキシケトンを合成するときには、下記反応式(4)に示すように、芳香族アルデヒドにケトンを反応させる。
【0026】
このとき、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を進行させるために、ケトンは芳香族アルデヒドに対して当量よりも過剰に加えられる。下記反応式(4)において、Arは芳香族基を示す。また、R1は水素やアルキル基等を示すとともにR2はアルキル基やフェニル基等を示し、nの値は0以上1以下である。
【0027】
【化3】
JP0003837511B2_000004t.gif芳香族アルデヒドの具体例としては、p-ニトロベンズアルデヒド、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド、4-シアノベンズアルデヒド、ベンズアルデヒド、4-ブロモベンズアルデヒド、4-クロロベンズアルデヒド、4-ヨードベンズアルデヒド、アニスアルデヒド(4-メトキシベンズアルデヒド)、トルアルデヒド(4-メチルベンズアルデヒド)等が挙げられる。
【0028】
ケトンの具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン(2-ブタノン)、2-ペンタノン、2-ヘキサノン等の脂肪族ケトン、アセトフェノン等の芳香族ケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等が挙げられる。
【0029】
芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応での反応温度は、β-ヒドロキシケトンの収率を向上させるために、好ましくは30~60℃である。30℃未満では、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応が進行しにくいために、β-ヒドロキシケトンの収率を向上させにくい。一方、60℃を超えると、合成されたβ-ヒドロキシケトンの脱水反応が進行しやすいために、β-ヒドロキシケトンの収率が低下しやすい。
【0030】
芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応での反応時間は、例えば反応温度が30℃のときには、芳香族アルデヒドとケトンとを十分に反応させるために、好ましくは1~6時間、さらに好ましくは3~6時間である。1時間未満では、芳香族アルデヒドとケトンとを十分に反応させることができない。一方、6時間を超えても、芳香族アルデヒドとケトンとをそれ以上反応させにくい。
【0031】
さて、β-ヒドロキシケトンを合成するときには、上記反応式(4)に示すように、シリカ類と有機アミンとから構成されている触媒の存在下に、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を行う。このとき、本実施形態の触媒は、従来の塩基性触媒に比べてβ-ヒドロキシケトンの脱水反応に対する活性が低いために、合成されたβ-ヒドロキシケトンの脱水反応によるα,β-不飽和ケトンの合成はほとんど進行しない。
【0032】
例えば、シリカ類としてのFSM-16と、有機アミンとしての第二級アミンとが混合されて構成されている触媒の存在下に、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を行うときには、まず第二級アミンとケトンとが反応し、エナミンと水とを生成する。次いで、生成されたエナミンが求核剤として芳香族アルデヒドと反応し、β-ヒドロキシケトンと第二級アミンとを合成する。
【0033】
シリカ類と有機アミンとが混合されて構成されている触媒を用いてβ-ヒドロキシケトンを合成するときには、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を促進するために、シリカ類の量は芳香族アルデヒド1mmolに対して好ましくは100~200mg、さらに好ましくは120~160mgである。一方、有機アミンの量は芳香族アルデヒド1mmolに対して好ましくは0.05~0.25mmol、さらに好ましくは0.1~0.2mmolである。
【0034】
シリカ類の量が100mg未満又は有機アミンの量が0.05mmol未満では、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を十分に促進することができない。一方、シリカ類の量が200mgを超えても又は有機アミンの量が0.25mmolを超えても、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応をそれ以上促進させにくい。
【0035】
一方、有機アミンがシリカ類の表面に固定化されて触媒が構成されているときには、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を促進するために、触媒の量は芳香族アルデヒド1mmolに対して好ましくは100~200mg、さらに好ましくは120~160mgである。触媒の量が100mg未満では、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を十分に促進することができない。一方、触媒の量が200mgを超えても、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応をそれ以上促進させにくい。
【0036】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
・ 本実施形態の触媒及びβ-ヒドロキシケトンの合成方法によれば、触媒はシリカ類と有機アミンとから構成され、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応に用いられる。この触媒は、従来の塩基性触媒に比べてβ-ヒドロキシケトンの脱水反応に対する活性が低い。よって、この触媒の存在下に芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を行いβ-ヒドロキシケトンを合成するときには、合成されたβ-ヒドロキシケトンの脱水反応はほとんど進行しないために、β-ヒドロキシケトンの収率を向上させることができる。
【0037】
・ 本実施形態の触媒によれば、シリカ類はメソポーラスシリカが好ましい。メソポーラスシリカは、その表面に存在する水酸基の内、隣接する水酸基等と水素結合せずに単独で存在する水酸基の割合はアモルファスシリカに比べて高い。そして、シリカ類の表面に存在する水酸基の内、隣接する水酸基等と水素結合せずに単独で存在する水酸基は、隣接する水酸基等と水素結合した状態で存在する水酸基に比べて反応中間体と芳香族アルデヒドとの反応を促進する効果が高いと推定される。よって、反応中間体と芳香族アルデヒドとの反応を促進することができる。
【0038】
・ 本実施形態の触媒によれば、有機アミンは、アルコキシシラン基を有する第一級アミン又はアルコキシシラン基を有する第二級アミンが好ましい。そして、アルコキシシラン基とシリカ類のシラノール基の水酸基との脱アルコール反応によって、有機アミンがシリカ類の表面に固定化されているのが好ましい。このとき、シリカ類の表面には、シロキサン基によって固定化されている有機アミンと、アルコキシシラン基との脱アルコール反応が行われなかったシラノール基の水酸基とが、シリカ類と有機アミンとが混合されて構成されている触媒に比べて接近した状態で存在している。
【0039】
よって、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応が進行するときには、シリカ類と有機アミンとが混合されて構成されている触媒に比べて反応中間体と水酸基とが接近するために、反応中間体と芳香族アルデヒドとの反応をより促進することができる。
【0040】
・ 本実施形態の触媒によれば、有機アミンは第二級アミンが好ましい。第二級アミンとケトンとの反応によって生成されるエナミンは、第一級アミンとケトンとの反応によって生成されるイミンに比べて芳香族アルデヒドとの反応性が高い。このため、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を促進することができる。
【0041】
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
・ 前記触媒を、シリカ類と有機アミンとが混合されたものと、有機アミンがシリカ類の表面に固定化されているものとを混合して構成してもよい。
【0042】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
まず、シリカ類としてのMSM-41及びFSM-16の合成方法について説明する。
【0043】
MCM-41を合成するときには、まず蒸留水150.7gを50℃に加熱した後、この蒸留水を撹拌しながら界面活性剤としてのn-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDTMA+Br)50.2g(0.14mmol)を少しずつ加えて溶液を調製した。ここで、この溶液を溶液Aとする。一方、蒸留水120gに濃硫酸3.6gを加えて希硫酸を調製し、56.2gの水ガラス3号を撹拌しつつ希硫酸を加えて溶液を調製した後、この溶液を5分間撹拌した。ここで、この溶液を溶液Bとする。
【0044】
次いで、溶液Bを撹拌しながら少しずつ溶液Aに加えて溶液を調製した後、この溶液を15分間撹拌した。続いて、溶液に蒸留水65gを徐々に加えた後、1mol/リットルの硫酸を用いて溶液のpHを9.64に調整した。そして、この溶液をポリメチルペンテン(PMP)製の容器に移した後に容器を100℃の恒温室内に入れ、20分後にエアー抜きを行った。
【0045】
続いて、恒温室に入れてから10日後に容器を恒温室から取出して室温にて放冷し、さらに吸引濾過して白色固体を得た。この白色固体を50℃の蒸留水300mlに懸濁させた後に吸引濾過し、この操作を9回繰返した後に白色固体を乾燥し、界面活性剤/シリカ複合体である(HDTMA+)-[Si]-MCM-41を合成した。
【0046】
そして、この複合体をアルミニウム製のシャーレに入れ、シャーレをマッフル炉内に配置した後、100ml/分の空気気流中で1℃/分の昇温速度で540℃にまで昇温し、さらに540℃で6時間焼成して界面活性剤を取除いてMCM-41を合成した。
【0047】
一方、FSM-16を合成するときには、まずδ-ジケイ酸ナトリウム10gをイオン交換水100mlに分散した後、0.2Mのn-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムイオン(HDTMA+)水溶液100mlと混合して溶液を調製した。次いで、この溶液を70℃で3時間加熱撹拌した後、2NのHClをゆっくり滴下して溶液のpHを8.5に調整し、さらに3時間加熱撹拌した。
【0048】
続いて、溶液を室温まで放冷した後、得られた懸濁液を濾過、洗浄及び乾燥して界面活性剤/シリカ複合体である(HDTMA+)-[Si]-FSM-16を合成した。そして、この複合体を空気中において550℃で6時間焼成して界面活性剤を取除き、FSM-16を合成した。
【0049】
次いで、芳香族アルデヒドとしてのp-ニトロベンズアルデヒドと、ケトンとしてのアセトンとのクライゼンシュミット反応を下記反応式(5)に示す。下記反応式(5)において、nの値は0以上1以下である。
【0050】
【化4】
JP0003837511B2_000005t.gifこのとき、上記反応式(5)に示すように、目的物であるβ-ヒドロキシケトンとしての4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンが合成される。さらに、E体とZ体とがモル比でE体:Z体=10:1程度で混合している4-(4-ニトロフェニル)-3-ブテン-2-オン又は下記式(6)に示す2,6-ジ(4-ニトロフェニル)テトラヒドロピラン-4-オンが副生成物として生成される。
【0051】
【化5】
JP0003837511B2_000006t.gifまた、芳香族アルデヒドとしての3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドと、ケトンとしてのアセトンとのクライゼンシュミット反応を下記反応式(7)に示す。下記反応式(7)において、nの値は0以上1以下である。
【0052】
【化6】
JP0003837511B2_000007t.gifこのとき、上記反応式(7)に示すように、目的物であるβ-ヒドロキシケトンとしての4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンが合成される。さらに、E体とZ体とがモル比でE体:Z体=10:1程度で混合している4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オン又は下記式(8)に示す2,6-ジ(3,4,5-トリメトキシフェニル)テトラヒドロピラン-4-オンが副生成物として生成される。
【0053】
【化7】
JP0003837511B2_000008t.gif(実施例1~13及び比較例1~16)
実施例1においては、FSM-16と第一級アミンとしてのプロピルアミンとが混合されて構成されている触媒の存在下に、p-ニトロベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行い4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを合成した。
【0054】
具体的には、まずナスフラスコにp-ニトロベンズアルデヒド151.3mg(1.00mmol)と120mgのFSM-16とを入れた後、アセトン5mlとプロピルアミン11.5mg(0.19mmol)とを加えて反応液を調製した。
【0055】
次いで、この反応液を、反応温度を30℃とするとともに反応時間を6時間として撹拌した後に吸引濾過し、残渣を100mlのベンゼンで洗浄した。続いて、濾液と洗液とを合わせた溶液をベンゼンを用いて分液ロートに移し、この溶液を10%クエン酸水溶液で2回(1回目は60ml、2回目は40ml)洗浄し、さらに60mlのsat.NaHCO3で洗浄した後、飽和食塩水で2回(1回目は80ml、2回目は60ml)で洗浄した。そして、溶液を硫酸ナトリウムを用いて乾燥した後に濾過し、濾液を減圧濃縮して4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色結晶を得た。
【0056】
実施例2~10においては、p-ニトロベンズアルデヒドの量、有機アミンとシリカ類との種類及び量を表1に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色油状物質を得た。
【0057】
実施例11においては、FSM-16と第二級アミンとしてのピペリジンとが混合されて構成されている触媒の存在下に、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行い4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを合成した。
【0058】
具体的には、p-ニトロベンズアルデヒドを3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド197.7mg(1.01mmol)に変更するとともに、反応温度を60℃に変更した。さらに、有機アミンの種類及び量とFSM-16の量とを表2に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色油状物質を得た。
【0059】
実施例12及び実施例13においては、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドの量、有機アミンとシリカ類との種類及び量を表2に示すようにそれぞれ変更した以外は、実施例11と同様にして4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色油状物質を得た。
【0060】
ここで、実施例2~実施例13においては、有機アミンは第二級アミンである。さらに、実施例2、実施例5、実施例6及び実施例9~13においては、第二級アミンは環状アミンである。また、実施例10及び実施例13においては、シリカ類として、アモルファスシリカであるDavison#57(富士シリシア化学株式会社製の商品名)を使用した。
【0061】
一方、比較例1においては、第一級アミンのプロピルアミンのみから構成されている触媒の存在下に、p-ニトロベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行い4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを合成した。
【0062】
具体的には、まずナスフラスコにp-ニトロベンズアルデヒド151.9mg(1.01mmol)を入れた後、アセトン5mlとプロピルアミン12.0mg(0.20mmol)とを加えて反応液を調製した。そして、実施例1と同様にして4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色結晶を得た。
【0063】
比較例2~8においては、p-ニトロベンズアルデヒドの量、有機アミンの種類及び量を表3に示すようにそれぞれ変更した以外は、比較例1と同様にして4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色結晶を得た。
【0064】
比較例9~14においては、p-ニトロベンズアルデヒドの量、触媒の種類及び量を表3に示すように変更した以外は、比較例1と同様にしてp-ニトロベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行った。
【0065】
比較例15においては、第二級アミンのピペリジンのみから構成されている触媒の存在下に、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行った。具体的には、p-ニトロベンズアルデヒドを3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒド196.7mg(1.00mmol)に変更するとともに、反応温度を60℃に変更した。さらに、触媒の種類及び量を表4に示すようにそれぞれ変更した以外は、比較例1と同様にして3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行った。
【0066】
比較例16においては、3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドの量、触媒の種類及び量を表4に示すようにそれぞれ変更した以外は、比較例15と同様にして3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行った。
【0067】
実施例1~13及び比較例1~4及び比較例6~8においては、黄色結晶又は黄色油状物質に、ヘキサンと酢酸エチルとが体積比でヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液を用いたカラムクロマトグラフィ-(SiO2:70g)を行って各成分を分離し、各成分の収率を計算した。また、原料としてのp-ニトロベンズアルデヒド又は3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドを回収し、p-ニトロベンズアルデヒド又は3,4,5-トリメトキシベンズアルデヒドの転化率を計算した。
【0068】
比較例5においては、核磁気共鳴スペクトル法(NMR法)により、各成分の収率及びp-ニトロベンズアルデヒドの転化率を計算した。また、比較例9~17においては、撹拌後の反応液に、ヘキサンと酢酸エチルとが体積比でヘキサン:酢酸エチル=1:1の展開溶媒を用いた薄層クロマトグラフィー(TLC)を行って反応の確認を行った。これらの結果を表1~表4に示す。
【0069】
尚、表1~表4において、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンをAで示し、E体とZ体とがモル比でE体:Z体=10:1程度で混合している4-(4-ニトロフェニル)-3-ブテン-2-オンをBで示す。2,6-ジ(4-ニトロフェニル)テトラヒドロピラン-4-オンをCで示し、4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンをDで示す。
【0070】
さらに、E体とZ体とがモル比でE体:Z体=10:1程度で混合している4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-3-ブテン-2-オンをEで示し、2,6-ジ(3,4,5-トリメトキシフェニル)テトラヒドロピラン-4-オンをFで示す。プロピルアミンをPrNH2で示すとともに、ジプロピルアミンをPr2NHで示し、アモルファスシリカをSiO2で示す。
【0071】
【表1】
JP0003837511B2_000009t.gif【0072】
【表2】
JP0003837511B2_000010t.gif【0073】
【表3】
JP0003837511B2_000011t.gif【0074】
【表4】
JP0003837511B2_000012t.gif表1に示すように、有機アミンが第一級アミンである実施例1は、目的物である4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率を表3に示す比較例1~14に比べて向上させることができた。有機アミンが第二級アミンである実施例2~10は、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率をそれぞれ大きく向上させることができた。特に、有機アミンが環状アミンとしてのピペラジンである実施例5では、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率を91%という高い値にまで向上させることができた。
【0075】
有機アミンが同じピペリジンである実施例2、実施例6及び実施例10においては、シリカ類がメソポーラスシリカである実施例2及び実施例6は、シリカ類がアモルファスシリカである実施例10に比べて4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率をそれぞれ向上させることができた。
【0076】
表2に示すように、有機アミンが第二級アミンである実施例11~13は、目的物である4-(3,4,5-トリメトキシフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率を、表4に示す比較例15及び比較例16に比べて大きく向上させることができた。
【0077】
実施例2において、反応時間を30分としたときには、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率は14%となり、反応時間を1時間としたときには、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率は24%となった。また、反応時間を3時間としたときには、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率は61%となった。
【0078】
一方、表3に示すように、比較例1~8においては、触媒が有機アミンのみで構成されているために、目的物である4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率がそれぞれ低い値となった。表3及び表4に示すように、比較例9~16においては、触媒が有機アミンのみ又はシリカ類のみで構成されているために、クライゼンシュミット反応をそれぞれ進行させることができなかった。さらに、触媒をトリエチルアミン等の第三級アミンや1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エンのみで構成しても、クライゼンシュミット反応をほとんど進行させることができなかった。
(実施例14~19)
実施例14においては、3-アミノプロピルトリメトキシシランがFSM-16の表面に固定化されて構成されている触媒の存在下に、p-ニトロベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行い4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを合成した。ここで、3-アミノプロピルトリメトキシシランはアルコキシシラン基を有する第一級アミンである。
【0079】
具体的には、まずFSM-16を250℃で1時間乾燥した後、ナスフラスコに1.08gの乾燥されたFSM-16と無水トルエン15mlとを加えた。次いで、3-アミノプロピルトリメトキシシラン246mg(1.37mmol)を加えて溶液を調製した後、溶液を、水酸化カリウム管を用いた乾燥雰囲気下で2時間還流した。続いて、溶液中に生じたメタノールを取除くために、約5mlの無水トルエンを加えた後に溶媒を約5ml蒸発させた。
【0080】
そして、溶液をさらに30分間還流した後、放冷及び濾過した。続いて、残渣をトルエンで洗浄した後に40℃で12時間乾燥し、表面に3-アミノプロピルトリメトキシシランが固定化されたFSM-16(以下、AP-FSM-16ともいう)を合成した。
【0081】
次いで、ナスフラスコにp-ニトロベンズアルデヒド152.5mg(1.01mmol)と120mgのAP-FSM-16とを入れた後、アセトン5mlを加えて反応液を調製した。続いて、この反応液を、反応温度を30℃とするとともに反応時間を1時間として撹拌した後に吸引濾過し、残渣を100mlのベンゼンで洗浄した。
【0082】
そして、濾液と洗液とを合わせた溶液を減圧濃縮し、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色結晶を得た。さらに、反応時間を3時間又は6時間に変更した以外は、上述と同様にして4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色油状物質をそれぞれ得た。
【0083】
実施例15においては、3-ピペラジノプロピルトリメトキシシランがFSM-16の表面に固定化されて構成されている触媒の存在下に、p-ニトロベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行い4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを合成した。3-ピペラジノプロピルトリメトキシシランはアルコキシシラン基を有する第二級アミンである。
【0084】
具体的には、乾燥されたFSM-16の量を1.11gに変更した。さらに、3-アミノプロピルトリメトキシシランを3-ピペラジノプロピルトリメトキシシラン350mg(1.41mmol)に変更した以外は、実施例14と同様にして表面に3-ピペラジノプロピルトリメトキシシランが固定化されたFSM-16(以下、PzP-FSM-16ともいう)を合成した。
【0085】
次いで、AP-FSM-16をPzP-FSM-16に変更した以外は、実施例14と同様にして4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色油状物質を得た。
【0086】
実施例16においては、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシランがFSM-16の表面に固定化されて構成されている触媒の存在下に、p-ニトロベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行い4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを合成した。ここで、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシランはアルコキシシラン基を有する第二級アミンである。
【0087】
具体的には、まずナスフラスコに0.952gのFSM-16と無水トルエン10mlとを加えた。次いで、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン281mg(1.36mmol)と無水トルエン5mlとを加えて溶液を調製した後、溶液を、水酸化カリウム管を用いた乾燥雰囲気下で2時間還流した。続いて、溶液中に生じたメタノールを取除くために、約8mlの無水トルエンを加えた後に溶媒を約8ml蒸発させた。
【0088】
そして、実施例14と同様にして、表面にN-メチルアミノプロピルトリメトキシシランが固定化されたFSM-16(以下、MAP-FSM-16ともいう)を合成した。次いで、AP-FSM-16をMAP-FSM-16に変更した以外は、実施例14と同様にして4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色油状物質を得た。ここで、反応時間は、1時間又は6時間とした。
【0089】
実施例17においては、3-アミノプロピルトリメトキシシランがMCM-41の表面に固定化されて構成されている触媒の存在下に、p-ニトロベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行い4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを合成した。
【0090】
具体的には、乾燥されたFSM-16を1.00gのMCM-41に変更した。さらに、3-アミノプロピルトリメトキシシランの量を245mg(1.36mmol)に変更した以外は、実施例14と同様にして表面に3-アミノプロピルトリメトキシシランが固定化されたMCM-41(以下、AP-MCM-41ともいう)を合成した。
【0091】
次いで、AP-FSM-16をAP-MCM-41に変更した以外は、実施例14と同様にして4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色油状物質を得た。ここで、反応時間は、30分、1時間、3時間、又は6時間とした。
【0092】
実施例18においては、3-ピペラジノプロピルトリメトキシシランがMCM-41の表面に固定化されて構成されている触媒の存在下に、p-ニトロベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行い4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを合成した。
【0093】
具体的には、MCM-41の量を1.07gに変更した。さらに、3-アミノプロピルトリメトキシシランを3-ピペラジノプロピルトリメトキシシラン391mg(1.57mmol)に変更した以外は、実施例17と同様にして表面に3-ピペラジノプロピルトリメトキシシランが固定化されたMCM-41(以下、PzP-MCM-41ともいう)を合成した。
【0094】
次いで、AP-MCM-41をPzP-MCM-41に変更した以外は、実施例17と同様にして4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色油状物質を得た。ここで、反応時間は、1時間、3時間、又は6時間とした。
【0095】
実施例19においては、第一級アミンとしてのプロピルアミンがアモルファスシリカの表面に固定化されて構成されている触媒の存在下に、p-ニトロベンズアルデヒドとアセトンとのクライゼンシュミット反応を行い4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを合成した。具体的には、AP-FSM-16をaminopropyl-functionalized silica gel(アルドリッチ社製の製品名)に変更した以外は、実施例14と同様にして4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンを含有する黄色油状物質を得た。ここで、反応時間は、1時間、3時間、又は6時間とした。
【0096】
実施例14~19において、黄色結晶又は黄色油状物質に、ヘキサンと酢酸エチルとが体積比でヘキサン:酢酸エチル=1:1の溶離液を用いたカラムクロマトグラフィ-(SiO2:70g)を行って各成分を分離し、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率を計算した。その結果を図2に示す。
【0097】
図2において、実施例14では、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率は、反応時間が1時間のときには18%となり、反応時間が3時間のときには26%となった。さらに、反応時間が6時間のときには46%となった。実施例15では、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率は、反応時間が1時間のときには29%となり、反応時間が3時間のときには65%となった。さらに、反応時間が6時間のときには89%となった。実施例16では、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率は、反応時間が1時間のときには86%となり、反応時間が6時間のときには83%となった。
【0098】
一方、実施例17では、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率は、反応時間が30分のときには16%となり、反応時間が1時間のときには26%となった。さらに、反応時間が3時間のときには51%となり、反応時間が6時間のときには78%となった。実施例18では、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率は、反応時間が1時間のときには33%となり、反応時間が3時間のときには69%となった。さらに、反応時間が6時間のときには91%となった。実施例19では、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率は、反応時間が1時間のときには15%となり、反応時間が3時間のときには24%となった。さらに、反応時間が6時間のときには35%となった。
【0099】
図2に示すように、実施例14は、反応時間が長くなるに伴って4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率を46%にまで向上させることができた。さらに、FSM-16と第一級アミンとしてのプロピルアミンとが混合されている実施例1に比べて、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率を向上させることができた。
【0100】
実施例15は、反応時間が長くなるに伴って4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率を89%という高い値にまで向上させることができた。また、FSM-16の表面に固定化されている有機アミンがアルコキシシラン基を有する第一級アミンの実施例14に比べて、4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率を向上させることができた。
【0101】
実施例16は、反応時間が1時間のときに4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率を86%まで向上させることができた後、収率を80%台という高い値で安定させることができた。また、実施例17は、反応時間が長くなるに伴って4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率を78%にまで向上させることができた。
【0102】
実施例18は、反応時間が長くなるに伴って4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率を91%という高い値にまで向上させることができた。また、実施例19は、反応時間が長くなるに伴って4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率を35%にまで向上させることができた。
【0103】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
(1)前記有機アミンはアルコキシシラン基を有する第二級アミンである請求項3に記載の触媒。この構成によれば、β-ヒドロキシケトンの収率をより向上させることができる。
【0104】
(2)前記第二級アミンは環状アミンである請求項4に記載の触媒。この構成によれば、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応をより促進することができる。
【0105】
【発明の効果】
本発明は、以上のように構成されているため、次のような効果を奏する。
請求項1に記載の発明の触媒によれば、β-ヒドロキシケトンの収率を向上させることができる。
【0106】
請求項2に記載の発明の触媒によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、反応中間体と芳香族アルデヒドとの反応を促進することができる。
請求項3に記載の発明の触媒によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、反応中間体と芳香族アルデヒドとの反応をより促進することができる。
【0107】
請求項4に記載の発明の触媒によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の効果に加え、芳香族アルデヒドとケトンとのクライゼンシュミット反応を促進することができる。
【0108】
請求項5に記載のβ-ヒドロキシケトンの合成方法によれば、β-ヒドロキシケトンの収率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)はFSM-16を示す模式図、(b)はMCM-41を示す模式図。
【図2】 反応時間と4-(4-ニトロフェニル)-4-ヒドロキシ-2-ブタノンの収率との関係を示すグラフ。
図面
【図1】
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【図2】
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