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明細書 :不揮発性固体磁気メモリの記録方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3932356号 (P3932356)
公開番号 特開2004-055867 (P2004-055867A)
登録日 平成19年3月30日(2007.3.30)
発行日 平成19年6月20日(2007.6.20)
公開日 平成16年2月19日(2004.2.19)
発明の名称または考案の名称 不揮発性固体磁気メモリの記録方法
国際特許分類 H01L  21/8246      (2006.01)
H01L  27/105       (2006.01)
H01L  29/82        (2006.01)
FI H01L 27/10 447
H01L 29/82 Z
請求項の数または発明の数 9
全頁数 7
出願番号 特願2002-212003 (P2002-212003)
出願日 平成14年7月22日(2002.7.22)
審査請求日 平成14年7月22日(2002.7.22)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
発明者または考案者 【氏名】大野 英男
【氏名】松倉 文▲礼▼
【氏名】千葉 大地
審査官 【審査官】河本 充雄
参考文献・文献 特開平11-345485(JP,A)
特開2003-174174(JP,A)
特開2004-039017(JP,A)
H.Ohno et. al.,Mganetotransport Properties of p-Type(in,Mn)As Diluted Magnetic III-V Semiconductors,PHYSICAL REVIEW LETTERS,米国,American Physical Society,1992年 4月27日,Volume68. Number17,P.2664-2667
調査した分野 H01L 27/105
H01L 29/82
H01L 43/08
特許請求の範囲 【請求項1】
キャリア誘起強磁性体を記録層として具える不揮発性固体磁気メモリの記録方法であって、前記記録層に対し、所定の外部磁場と第1の電界を印加した状態において、第1の電界を印加し次いで前記記録層中の正孔濃度が前記第1の電界印加時よりも減少するような第2の電界を印加し、前記記録層中の磁化を反転させて記録動作を実行するようにしたことを特徴とする、不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項2】
キャリア誘起強磁性体を記録層として具える不揮発性固体磁気メモリの記録方法であって、前記記録層に対し、所定の外部磁場を印加した状態において、第1の電界と、前記記録層中の正孔濃度が前記第1の電界印加時よりも減少するような第2の電界とを交互に印加し、前記記録層中の磁化を交互に増減させて連続的な記録動作を実行するようにしたことを特徴とする、不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項3】
前記外部磁場の大きさが、前記第1の電界を印加した際の前記記録層の保磁力と、前記第2の電界を印加した際の前記記録層の保磁力との間であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項4】
前記キャリア誘起強磁性体は、キャリア誘起強磁性半導体であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一に記載の不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項5】
前記キャリア誘起強磁性半導体は、(Ga,Mn)As及び(In,Mn)Asの少なくとも一つからなることを特徴とする、請求項4に記載の不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項6】
前記記録層の厚さが0.3nm~200nmであることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一に記載の不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項7】
前記第1の電界の絶対値は0MV/cm~10MV/cmであり、前記第2の電界は前記第1の電界よりも大きいことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一に記載の不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項8】
前記記録層を支持する所定の基板と前記記録層との間において、バッファ層を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一に記載の不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
【請求項9】
前記基板はGaAs基板であることを特徴とする、請求項5~8のいずれか一に記載の不揮発性固体磁気メモリの記録方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、不揮発性固体磁気メモリの記録方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
強磁性体を記録層として用いた不揮発性固体磁気メモリにおいては、前記記録層に記録を行なうに際しては所定の外部磁場を印加しなければならない。一方で、前記不揮発性固体磁気メモリの集積密度の向上が望まれており、この目的のため前記不揮発性固体磁気メモリの、前記記録層などの構成要素の微細化が不可欠となっている。
【0003】
前記記録層を微細化すると、前記記録層を構成する強磁性体の反磁場が大きくなるため、前記不揮発性固体磁気メモリへの記録を行なうに際しては、前記反磁場に抗して前記記録層の磁化を反転しうる大きな外部磁場を印加しなければならない。このため、前記不揮発性固体磁気メモリに対する消費電力が増大してしまい、省電力で実用に供することのできる不揮発性固体磁気メモリを提供することができないという問題があった。
【0004】
本発明は、省電力で実用に供することのできる新規な不揮発性固体磁気メモリを提供すべく、前記新規な不揮発性固体磁気メモリに対する記録方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、本発明は、キャリア誘起強磁性体を記録層として具える不揮発性固体磁気メモリの記録方法であって、前記記録層に対し、所定の外部磁場を印加した状態において、第1の電界と、前記記録層中の正孔濃度が前記第1の電界印加時よりも減少するような第2の電界とを印加し、前記記録層中の磁化を反転させて記録動作を実行するようにしたことを特徴とする、不揮発性固体磁気メモリの記録方法に関する。
【0006】
キャリア誘起強磁性体は、光や電界によるキャリア数及びキャリアスピン偏極度の制御により磁性を制御できるという新たな機能を有する強磁性半導体である。そこで、本発明者らは、このようなキャリア誘起強磁性体を不揮発性固体磁性メモリの記録層として用いることを想到した。そして、前記記録層に対し、所定の磁場を印加した状態において、上記要件を満足するような第1の電界及び第2の電界を印加することにより、電界のスイッチングで前記記録層中の磁化を反転することができ、これによって記録を実行できることを見出したものである。
【0007】
したがって、本発明によれば、キャリア誘起強磁性体を記録層として用いた新規な不揮発性固体磁気メモリに対して実際に記録を行なうことができ、実用的な省電力の新規な不揮発性固体磁気メモリの提供が可能となる。
【0008】
なお、不揮発性固体磁気メモリの記録層に対し、前記第1の電界と前記第2の電界とを交互に印加することにより、前記記録層中の磁化を連続的に増減することができる。したがって、前記磁化の大きさ応じて所定の情報を記憶させるようにすれば、連続的な記録動作を実行することができる。
【0009】
また、本発明の好ましい態様においては、前記記録層は所定の基板の上方に形成されるとともに、前記記録層の上方には絶縁層を介して金属電極層が形成される
【0010】
本発明のその他の特徴及び詳細については、以下の発明の実施の形態において詳述する。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の記録方法に用いる不揮発性固体磁気メモリの一例を示す構成図である。図1に示す不揮発性固体磁気メモリ10は、所定の基板1上において、バッファ層2と、キャリア誘起強磁性体からなる記録層3と、絶縁層4を介して金属電極層5とを具え、いわゆる電界効果型トランジスタ構造を呈している。
【0012】
記録層3を構成する前記キャリア誘起強磁性体としては、キャリア誘起強磁性半導体を用いることが好ましい。前記キャリア誘起強磁性半導体としては(Ga,Mn)As及び(In,Mn)Asの少なくとも一つを用いることができる。これらの材料は優れた強磁性半導体であって、以下に示すような本発明の記録方法を用いて記録動作を良好に行なうことができるとともに、記録した情報を安定的に長期に亘って保持することができる。
【0013】
また、記録層3の厚さは0.3nm~200nmであることが好ましく、さらには3nm~10nmであることが好ましい。これによって、不揮発性固体磁気メモリの微細化の要請を満足するとともに、上述した記録した情報の安定的な長期保持、並びに記録動作を良好な状態の下に行なうことができる。
【0014】
なお、記録層3を上述したキャリア誘起強磁性体から構成した場合、基板1はGaAs単結晶から構成することが好ましい。これによって、記録層3を基板1上に良好な結晶性の下にエピタキシャル成長させることができ、優れた特性の不揮発性固体磁気メモリ10を簡易に得ることができる。
【0015】
図1においては、バッファ層2は3つの半導体層2A~2Cが積層されてなる多層膜構造として構成されている。この場合、基板1と記録層3との格子定数差をより効果的に補完することができ、記録層3のエピタキシャル成長をより促進することができる。したがって、不揮発性固体磁気メモリ10の特性をより向上させることができるようになる。
【0016】
このようなバッファ層の多層膜化は、例えば記録層3を(In,Mn)Asから構成し、基板1を(001)GaAs単結晶などから構成した場合に、より効果を発揮する。すなわち、(In,Mn)Asと(001)GaAs単結晶との格子定数差は約7%にも達するため、バッファ層2を上述した多層膜構造とすることにより、前記格子定数差を補完して記録層3のエピタキシャル成長を良好な状態の下に行なうことができる。この場合、半導体層2AはAlSb層から構成し、半導体層2BはAlGaSb層から構成し、半導体層2CはInAsから構成する。
【0017】
なお、絶縁層4はSiO、SiN、及びAlなどの無機材料やポリイミドなどの高分子材料から構成することができる。また、金属電極層5はAl及びAuなどの導電性金属材料から構成することができる。
【0018】
次に、図1に示す不揮発性固体磁気メモリ10に対する本発明の記録方法について説明する。図1に示す不揮発性固体磁気メモリ10は、電界効果型トランジスタ構造を呈するので、金属電極層5はゲート電極として機能し、記録層3はチャネル層としても機能する。
【0019】
図2は、本発明の記録方法の原理を説明するための図である。図中、矢印は記録層3中の磁化の向きを表す。最初に、図2(a)に示すように、不揮発性固体磁気メモリ10の記録層3に対して所定の外部磁場Bを印加し、記録層3の磁化を例えば上向き一方向に揃えて初期化する。この際、記録層3中の正孔濃度が減少するような電界を印加することにより、記録層3の保磁力が低減されるので、比較的小さな外部磁場Bで記録層3の初期化を行なうことができる。
【0020】
次いで、図2(b)に示すように、記録層3に対して所定の外部磁場Bを印加し、第1の電界E1を所定時間印加する。次いで、記録層3の正孔濃度が前記第1の電界E1印加時よりも減少するような第2の電界E2を所定時間印加する。すると、図2(c)に示すように、記録層3の磁化は、第1の電界E1の印加時と第2の電界E2の印加時とで反転するため、結果として記録層3に対して記録動作が実行されるものである。
【0021】
なお、前記第1の電界E1の印加時間及び前記第2の電界E2の印加時間は、不揮発性固体磁気メモリの構成などに応じて適宜選択する。通常は、数ns~数μsである。
【0022】
また、図2(b)及び図2(c)に示す操作を連続して行なうことにより、記録層3中の磁化を連続的に増減させることができ、磁化の向きに応じて所定の情報を記録しておけば、連続した記録動作を可能とすることができる。
【0023】
なお、前記第1の電界E1印加時の記録層3の保磁力をH1、前記第2の電界E2印加時の記録層3の保磁力をH2とした場合、前記第2の電界E2印加により記録層3中の正孔濃度が減少しているので、H1>H2なる関係が成立する。したがって、外部磁場Bの大きさをH1>B>H2なる関係を満足するように印加することにより、記録層3への記録動作を良好な状態の下に行なうことができる。但し、外部磁場Bは必ずしも上記関係式を満足することは要求されない。
【0024】
前記第1の電界E1及び前記第2の電界E2の大きさは、図2に示すような原理に基いて記録動作が実行されるものであれば特には限定されない。しかしながら、前記第1の電解E1の絶対値は0MV/cm~10MV/cmであることが好ましく、さらには0MV/cm~0.01MV/cmであることが好ましい。また、前記第2の電解E2は、電界の±符号を含めて前記第1の電界E1よりも大きいことが好ましい。これによって、記録層3の厚さなどの諸特性に依存することなく、上述した記録動作を良好に行なう事ができる。
【0025】
【実施例】
本実施例では図1に示すような不揮発性固体磁気メモリを作製した。基板は(001)GaAs単結晶から構成し、前記基板を550℃に加熱することにより、AlSb層及びAl0.82Ga0.18Sb層をMBE法により、それぞれ厚さ50nm及び300nmに形成した。次いで、前記基板の加熱温度を450℃に変更して、InAs層を同じくMBE法により厚さ5nmに形成して、バッファ層を形成した。
【0026】
次いで、前記基板の加熱温度を250℃に変更して記録層としての(In0.967Mn0.033)As層を同じくMBE法により厚さ4nmに形成した。次いで、SiO絶縁層を厚さ0.9μmに蒸着法によって形成するとともに、Cr(5nm)/Au(95nm)金属電極層を同じく蒸着法によって形成することにより、目的とする不揮発性固体磁気メモリを得た。
【0027】
次いで、上記のようにして得た不揮発性固体磁気メモリの前記記録層に対し、図2に示す原理に基づいて記録動作を実行した。図3は、前記記録動作中における、前記記録層の、32Kの温度におけるホール抵抗RHall変化を示すグラフである。最初に、前記記録層に対して前記金属電極層から-1.5MV/cmの電界を印加しするとともに、5mTの磁場を印加することにより前記記録層を初期化した。
【0028】
次いで、-0.2mTの外部磁場を印加して、-1.5MV/cmの電界を最初の0秒から25秒の間印加した。次いで、前記外部磁場を印加した状態で0MV/cmの電界、すなわち電界をオフした状態を25秒から47秒の間保持した。このとき、前記記録層のホール抵抗値は約53Ωから-50Ωに変化した。すなわち、上述したように電界をスイッチングすることによって、磁化が反転していることが判明した。したがって、この磁化の向きに対応させて所定の情報を記憶させることにより、上述した電界スイッチングで前記記録層に対して記録動作を実行できることが分かる。
【0029】
次いで、47秒から60秒の間、再度-1.5MV/cmの電界を印加したところ、ホール抵抗値が変化して磁化の増加が発生していることが確認された。さらに、60秒から80秒の間、再度電界をオフしたところ、ホール抵抗値が変化して磁化の減少が発生していることが確認された。したがって、これらの磁化の大きさに対応させて所定の情報を記憶させておくことにより、連続的な記録動作を実行できることが分かる。
【0030】
以上、具体例を挙げながら発明の実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明してきたが、本発明は上記内容に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいてあらゆる変形や変更が可能である。
【0031】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、省電力で実用に供することのできる新規な不揮発性固体磁気メモリを提供すべく、前記新規な不揮発性固体磁気メモリに対する記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の不揮発性固体磁気メモリの一例を示す構成図である。
【図2】 本発明の記録方法の原理を説明するための図である。
【図3】 本発明の記録方法を用いた場合における、不揮発性固体磁気メモリの記録層のホール抵抗値変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板
2 バッファ層
2A~2C 半導体層
3 記録層
4 絶縁層
5 金属電極層
10 不揮発性固体磁気メモリ
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2