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明細書 :補聴システム及び補聴方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3548805号 (P3548805)
公開番号 特開2004-064141 (P2004-064141A)
登録日 平成16年4月30日(2004.4.30)
発行日 平成16年7月28日(2004.7.28)
公開日 平成16年2月26日(2004.2.26)
発明の名称または考案の名称 補聴システム及び補聴方法
国際特許分類 H04R 25/00      
A61F 11/00      
FI H04R 25/00 F
H04R 25/00 L
H04R 25/00 N
A61F 11/00 310
請求項の数または発明の数 5
全頁数 7
出願番号 特願2002-215762 (P2002-215762)
出願日 平成14年7月24日(2002.7.24)
審査請求日 平成14年7月24日(2002.7.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】391012394
【氏名又は名称】東北大学長
発明者または考案者 【氏名】和田 仁
【氏名】小池 卓二
【氏名】小林 俊光
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100068814、【弁理士】、【氏名又は名称】坪井 淳
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
審査官 【審査官】松澤 福三郎
参考文献・文献 特開平9-327098(JP,A)
特開平2-119400(JP,A)
特表平6-501599(JP,A)
調査した分野 H04R 25/00
A61F 11/00 310
特許請求の範囲 【請求項1】
外耳領域から鼓膜にかけて設けられる補聴システムであって、
入力した外部音声に基づいて電流を発生する電流発生手段と、
前記電流に基づいて、磁場の時間的変化を誘導する第1のコイルと、
前記磁場の時間的変化に基づいて、誘導起電力を発生する第2のコイルと、
前記鼓膜に対向して設けられる磁場発生手段と、
前記第2のコイルと電気的に接続され、かつ前記鼓膜に設けられるコイルであって、前記誘導起電力に基づいて極性が変化する磁場を発生し、当該極性が変化する磁場と前記磁場発生手段が発生する磁場との相互作用により自身が振動することで前記鼓膜を振動させる振動コイルと、
を具備することを特徴とする補聴システム。
【請求項2】
前記振動コイルは、前記鼓膜の外耳領域側の面に、オイル又はクリップを用いて接着されていることを特徴とする請求項1記載の補聴システム。
【請求項3】
人体との接触部分については、生体適合性のある絶縁素材にて被覆されていることを特徴とする請求項1記載の補聴システム。
【請求項4】
外耳領域に設けられた音声入力手段から入力した前記外部音声に基づいて交流電流を発生させ、
前記交流電流を第1のコイルに流すことによって、磁場の時間的変化を誘導し、
前記磁場の時間的変化に基づいて、第2のコイルに誘導起電力を発生させ、
前記誘導起電力に基づいて極性が変化する誘導磁場を、鼓膜に設けられた振動コイルに発生させ、
前記鼓膜に対向して設けられた磁石による静磁場と、前記振動コイルが発生する誘導磁場により、前記振動コイルを振動させることで前記鼓膜を振動させること、
を特徴とする補聴方法。
【請求項5】
前記振動コイルは、前記鼓膜の外耳領域側の面に、オイル又はクリップを用いて接着されていることを特徴とする請求項4記載の補聴方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁コイルを用いて、鼓膜面に留置された振動コイルを振動させる補聴システム及び補聴方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
補聴器とは、難聴の人のために、音を集めたり増幅したりして聞こえやすくするための装置である。現在使用されている補聴器は大きく二つのタイプに分けることができる。一つは、一般に普及しているイヤホンタイプの補聴器である。このタイプの補聴器は、外耳領域に配置され、外部音声を増幅して出力し、空気の振動により鼓膜を振動させるものである。その形態としては、例えば携帯型イヤホンラジオ型のもの,耳かけ型のもの,耳栓のように外耳道への挿入型のもの等がある。
【0003】
もう一つは、ピエゾ素子や永久磁石等の振動子を直接耳小骨に取り付けて駆動させる人工中耳タイプの補聴器である。このタイプの補聴器は、外耳道の音響特性の影響を受けないから、質の高い音を提供することができる。
【0004】
しかしながら、各タイプの補聴器には、それぞれ以下に述べる問題がある。
【0005】
イヤホンタイプの補聴器は、狭く複雑な形状の外耳道に配置されるため、高音域まで正確な音圧増幅特性を実現するのは困難である。すなわち、音が伝わる経路が、外耳道の如く管状で複雑な形状をしている場合、共振や干渉が生じる。従って、補聴器を通した聞こえ方は、自然音と違ってしまう。
【0006】
また、人工中耳タイプの補聴器は、振動子を取り付ける際に頭蓋骨の一部を削り取る,中耳の耳小骨を取り除く等、人体への“侵襲”を必要とする。従って、使用者への精神的、肉体的な負担は大きい。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたもので、高音域であっても正確な音圧増幅特性を実現でき、人体への侵襲を必要としない補聴システム及び補聴方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、次のような手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の視点は、外耳領域から鼓膜にかけて設けられる補聴システムであって、入力した外部音声に基づいて電流を発生する電流発生手段と、前記電流に基づいて、磁場の時間的変化を誘導する第1のコイルと、前記磁場の時間的変化に基づいて、誘導起電力を発生する第2のコイルと、前記鼓膜に対向して設けられる磁場発生手段と、前記第2のコイルと電気的に接続され、かつ前記鼓膜に設けられるコイルであって、前記誘導起電力に基づいて極性が変化する磁場を発生し、当該極性が変化する磁場と前記磁場発生手段が発生する磁場との相互作用により自身が振動することで前記鼓膜を振動させる振動コイルとを具備することを特徴とする補聴システムである。
【0010】
本発明の第2の視点は、外耳領域に設けられた音声入力手段から入力した前記外部音声に基づいて交流電流を発生させ、前記交流電流を第1のコイルに流すことによって、磁場の時間的変化を誘導し、前記磁場の時間的変化に基づいて、第2のコイルに誘導起電力を発生させ、前記誘導起電力に基づいて極性が変化する誘導磁場を、鼓膜に設けられた振動コイルに発生させ、前記鼓膜に対向して設けられた磁石による静磁場と、前記振動コイルが発生する誘導磁場により、前記振動コイルを振動させることで前記鼓膜を振動させることを特徴とする補聴方法である。
【0011】
このような構成によれば、高音域であっても正確な音圧増幅特性を実現でき、人体への侵襲を必要としない補聴システム及び補聴方法を実現することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に従って説明する。なお、以下の説明において、略同一の機能及び構成を有する構成要素については、同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
【0013】
図1及び図2は、本実施形態に係る補聴システムの概略構成を説明するための図である。図1及び図2に示す様に、本補聴システムは、マイク11、アンプ13、一次コイル15、二次コイル17、永久磁石19、振動コイル21を有している。
【0014】
マイク11は、会話音等の外界の音声を受信し、電気信号に変換する。
【0015】
アンプ13は、マイク11によって変換された電気信号を所定の強度レベルに増幅する。なお、この増幅強度は、任意のレベルに制御可能である。
【0016】
一次コイル15には、アンプ13によって増幅された電気信号が流れる。従って、当該一次コイル15は、音声に基づく電気信号の変化に応じて誘導磁場を発生する。
【0017】
二次コイル17は、一次コイル15が引き起こす磁場の変化に基づいて、誘導起電力を発生する。この二次コイル17の形状は外耳道壁に沿うようにし、本実施形態では、二次コイル17を貫く磁束の数を多くし効率的に誘導起電力を発生させるため、一次コイル15を包囲する形状となっている。
【0018】
永久磁石19は、所定のフレームによって支持され、外耳道に固定される。後述する様に、本永久磁石19が発生する静磁場は、振動コイル21を振動させる駆動源となる。この振動を効率的にするため、及び人の指等との接触による位置ずれを防止するために、当該永久磁石19は、振動コイル21に直面し、できる限り鼓膜寄り(すなわち、できる限り中耳寄りの外耳道)に設けられることが好ましい。
【0019】
振動コイル21は、外耳道側の鼓膜面に、オイルを用いて接着される軽量なコイルである。発明者らの実験によれば、その重さは例えば20mg以下であれば慣性の影響は無視でき,十分な出力を得ることが出来る(図3参照)。また、振動コイル21は、形状記憶合金で作ったクリップを取り付けて,外耳道側の鼓膜面から耳小骨の一部をクリップで挟み込むことでもよい。
【0020】
この振動コイル21の形状については特に限定はない。しかしながら、当該振動コイル21内部の磁界を強くしてより大きな加振力を生み出すため、高速に微少振動させるため、動力学的に安定にするために、円盤形であることが好ましい。
【0021】
なお、以上述べた各構成要素において、皮膚に接触する可能性のある部分については、炎症を防止するため、生体適合性材料によって被覆されていることが好ましい。また、電流が流れる部分については、生体組織への電流漏れを防止するため、電流漏洩防止材によって被覆することが好ましい。この二つの条件を満足する材料としては、例えばシリコンがある。
【0022】
次に、本補聴システムの動作原理について説明する。
【0023】
図2において、マイク11が外界の音声を受信すると、当該音声は電気信号に変換され、アンプ13により所定の強度レベルまで増幅される。
【0024】
増幅された電気信号は、交流電流として一次コイル15に供給される。一次コイル15に交流電流が流れると、当該一次コイル15の周りの磁場が時間的に変化し、二次コイル17を貫く磁束を変化させる。その結果、二次コイル17には、当該磁場の時間的変化に比例する誘導起電力が発生する。
【0025】
二次コイル17と電気的に接続されている振動コイル21には、二次コイル17に発生した誘導起電力による電流が供給される。振動コイル21に誘導起電力による電流が流れると、当該振動コイル21の周りには、この誘導起電力に起因する誘導磁場が発生する。この誘導磁場と永久磁石19とが形成する静磁場との相互作用により、振動コイル21には、鼓膜を加振する駆動力が発生する。
【0026】
すなわち、マイク11に入力される音声は、一次コイル15に供給される交流電流、二次コイル17に発生する誘導起電力、当該誘導起電力による誘導磁場と永久磁石19の静磁場との相互作用を介して、加振力として鼓膜面に設けられた振動コイル21に伝えられる。これにより、外部音声を振動として鼓膜に伝えることができ、補聴器として機能する。
【0027】
このような構成によれば、以下の効果を得ることが出来る。
【0028】
本補聴システム10は、軽量な振動コイル21を使用している。従って、振動コイル21の慣性が小さいため、高周波数帯の外部音声を入力した場合であっても、振動を効率よく鼓膜面に伝えることができる。
【0029】
図3は、鼓膜面に音圧80 dB SPLを加えた場合(図中「Sound」)、および異なる質量の各振動コイル21(20mg、40mg、100mg)を鼓膜面に留置して音圧80dBSPL相当の加振力を加えた場合における、周波数と蝸牛内音圧との関係を示したグラフである。同図に示すように、振動コイル21を軽量化することで、振動コイル21を留置していない通常時(図中「Sound」)に近い音圧を得ることができる。
【0030】
本補聴システム10は、軽量な振動コイル21をオイル等で接着し、また、外耳領域から鼓膜にかけてマイク11や永久磁石19等を設置する構成となっている。従って、人体への侵襲手術を全く必要とせず、容易に装着することができる。その結果、成長段階にある幼児から老人まで、気軽に利用することができる。
【0031】
従来のイヤホン型の補聴器は、マイクに入力された音を増幅し、その増幅された音を直接鼓膜に伝えるものである。このように音波により直接鼓膜を振動させる構成では、狭く複雑な形状をした外耳道において、音波の共振や干渉が発生することがある。その結果、補聴器を介した音声が、自然音声を忠実に再現しない場合がある。また、従来のイヤホン型の補聴器は、イヤホンとマイクの距離が近いため、イヤホンから出力された音を再びマイクが入力してしまい、ハウリングを発生することがある。
【0032】
これに対し、本補聴システム10は、電磁誘導を利用した磁気相互作用により、鼓膜面に設けた振動コイル21を加振させることで鼓膜を振動させる。従って、従来のように音波の共振及び干渉、ハウリング等の現象そのものが発生せず、音響学的制約を受けない。その結果、自然音声を高い音質にて忠実に再現することができる。
【0033】
また、本補聴システム10は、入力した音声から変換された電気信号を増幅し、当該増幅された電気信号に基づいて、電磁誘導を利用した磁気相互作用を発生させ、鼓膜面に設けた振動コイル21を加振させる。従って、電気信号の増幅度や、振動コイル21と永久磁石19との距離等を制御することで、より大きな磁気相互作用を発生させ、振動コイル21を振動させる駆動力を得ることができる。この様な特性や、上記音響学的制約を受けないことから、高度混合性難聴者に対しても、明瞭な補聴を提供することができる。
【0034】
さらに、本補聴システム10は、簡易且つ低コストな装置であるから、今後予想される高齢化社会において、多くの人々に良好なコミュニケーションを提供することができる。
【0035】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変形例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解され、その要旨を変更しない範囲で種々変形可能である。
【0036】
また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0037】
【発明の効果】
以上本発明によれば、高音域であっても正確な音圧増幅特性を実現でき、人体への侵襲を必要としない補聴システム及び補聴方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本実施形態に係る補聴システムの概略構成を説明するための図である。
【図2】図2は、本実施形態に係る補聴システムの概略構成を説明するための図である。
【図3】図3は、異なる質量の各振動コイル21を鼓膜面に留置して音圧80dBSPL相当の加振力を加えた場合における、周波数と蝸牛内音圧との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
10…補聴システム
11…マイク
13…アンプ
15…一次コイル
17…二次コイル
19…永久磁石
19…永久磁石
21…振動コイル
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2