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明細書 :シリコン基板上に結晶性の優れた窒化物半導体層を形成する方法および窒化物半導体発光素子

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4320396号 (P4320396)
公開番号 特開2004-063762 (P2004-063762A)
登録日 平成21年6月12日(2009.6.12)
発行日 平成21年8月26日(2009.8.26)
公開日 平成16年2月26日(2004.2.26)
発明の名称または考案の名称 シリコン基板上に結晶性の優れた窒化物半導体層を形成する方法および窒化物半導体発光素子
国際特許分類 H01L  33/00        (2006.01)
C23C  16/18        (2006.01)
C30B  29/38        (2006.01)
H01L  21/205       (2006.01)
H01S   5/323       (2006.01)
FI H01L 33/00 C
C23C 16/18
C30B 29/38 D
H01L 21/205
H01S 5/323 610
請求項の数または発明の数 2
全頁数 10
出願番号 特願2002-219871 (P2002-219871)
出願日 平成14年7月29日(2002.7.29)
審査請求日 平成17年7月28日(2005.7.28)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504237050
【氏名又は名称】独立行政法人国立高等専門学校機構
発明者または考案者 【氏名】伊藤 國雄
【氏名】中村 重之
個別代理人の代理人 【識別番号】100058479、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴江 武彦
【識別番号】100091351、【弁理士】、【氏名又は名称】河野 哲
【識別番号】100088683、【弁理士】、【氏名又は名称】中村 誠
【識別番号】100108855、【弁理士】、【氏名又は名称】蔵田 昌俊
【識別番号】100075672、【弁理士】、【氏名又は名称】峰 隆司
【識別番号】100109830、【弁理士】、【氏名又は名称】福原 淑弘
【識別番号】100084618、【弁理士】、【氏名又は名称】村松 貞男
【識別番号】100092196、【弁理士】、【氏名又は名称】橋本 良郎
審査官 【審査官】高椋 健司
参考文献・文献 特開平11-274648(JP,A)
特開2001-291896(JP,A)
特開平08-203932(JP,A)
調査した分野 H01L 33/00
H01S 5/00-5/50
特許請求の範囲 【請求項1】
それぞれシリコンとバッファ層上に形成しようとするIII族窒化物半導体との中間の格子定数を有するII-III-VI族化合物半導体、I-III-VI族化合物半導体およびII-IV-V族化合物半導体、並びに窒化ガリウム系窒化物半導体の4種の化合物半導体のうちの少なくとも2種の化合物半導体を超格子構造を構成するように積層してバッファ層を形成する工程であって、シリコン基板に最も近い化合物半導体層は、シリコンに最も近い格子定数を有する化合物半導体で形成し、バッファ層の内最上層の化合物半導体層は、前記III族窒化物半導体に最も近い格子定数を有する化合物半導体で形成するところの工程、および前記バッファ層上に前記III族窒化物半導体層を形成する工程を包含し、前記II-III-VI族化合物半導体は、ZnIn24、CdIn22Se2、ZnIn2Se4およびCdInGaS4からなる群の中から選ばれ、前記I-III-VI族化合物半導体は、CuGaS2、CuAlS2およびCuGaAlS2からなる群の中から選ばれ、前記II-IV-V族化合物半導体は、ZnSiP2およびZnGeP2からなる群の中から選ばれる、III族窒化物半導体の形成方法。
【請求項2】
シリコン基板と、該シリコン基板上に設けられたバッファ層と、該バッファ層上に形成されたIII族窒化物半導体層と、該III族窒化物半導体層上に設けられた窒化物半導体発光構造を備え、該バッファ層は、それぞれシリコンと該III族窒化物半導体との中間の格子定数を有するII-III-VI族化合物半導体、I-III-VI族化合物半導体およびII-IV-V族化合物半導体、並びに窒化ガリウム系窒化物半導体の4種の化合物半導体のうちの少なくとも2種の化合物半導体が超格子構造を構成するように積層されてなり、該バッファ層のうち、該シリコン基板に最も近い化合物半導体層は、シリコンに最も近い格子定数を有する化合物半導体で形成され、該バッファ層の内最上層の化合物半導体層は、該III族窒化物半導体に最も近い格子定数を有する化合物半導体で形成され、前記II-III-VI族化合物半導体は、ZnIn24、CdIn22Se2、ZnIn2Se4およびCdInGaS4からなる群の中から選ばれ、前記I-III-VI族化合物半導体は、CuGaS2、CuAlS2およびCuGaAlS2からなる群の中から選ばれ、前記II-IV-V族化合物半導体は、ZnSiP2およびZnGeP2からなる群の中から選ばれることを特徴とする窒化物半導体発光素子。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン基板上に結晶性の優れた窒化物半導体層を形成する方法および窒化物半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
窒化物半導体は、特に青色発光素子(発光ダイオードやレーザダイオード)の材料として近時多くの注目を集めている。かかる窒化物半導体発光素子は、適当な基板上に窒化物半導体からなる発光素子構造を成長させて製造されている。
【0003】
窒化物半導体は、これと格子整合し、しかも結晶性に優れた窒化物半導体を成長させるための基板となる材料がほとんどなく、現状では、主にサファイアを基板として用い、その上に窒化物半導体素子構造を成長させている。
【0004】
しかしながら、サファイアは高価であり、シリコンのように安価な材料を基板として用いて結晶性の優れた半導体窒化物が得られれば、その上に、結晶欠陥の少ない窒化物半導体発光構造をさらに成長させることができるので、得られる窒化物半導体発光素子の性能が一層向上することが期待される。
【0005】
ところで、シリコンの格子定数は、5.43Åであり、窒化物半導体、例えばInGaNの格子定数は3.3Åであり、両者の格子定数は大きく異なるため、シリコン基板上に結晶性の優れた窒化物半導体を直接成長させることは困難である。
【0006】
そこで、従来、シリコン基板上にバッファ層を形成してから、その上に所望の窒化物半導体を成長させることが行われている。例えば、特開平9-134878号公報には、シリコン基板上に、まずGa薄膜を形成し、このGa薄膜上に直接または窒化層を介してGaN等の窒化ガリウム系化合物半導体を成長させる方法が開示されている。また、特開平11-145514号公報には、シリコン基板等の上にインジウムを含む窒化ガリウム系半導体からなるバッファ層を形成した後、窒化ガリウム系半導体層を成長させる方法が開示されている。さらに、特開2000-298169号公報には、シリコン基板上にAlGaNからなるバッファ層を形成した後、AlGaNとInGaNとの交互積層構造の多層膜反射層を設ける方法が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のバッファ層は、その上に結晶性の優れた窒化物半導体を形成するためにはなお満足できるものではなかった。
【0008】
従って、本発明の目的は、シリコン基板上に結晶性に優れた窒化物半導体を形成する新規な方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、そのように形成された窒化物半導体上に窒化物半導体発光構造を有する窒化物半導体発光素子を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく、シリコン基板上に形成するバッファ層について鋭意研究した。その結果、II-III-VI族化合物半導体、I-III-VI族化合物半導体およびII-IV-V族化合物半導体には、格子定数がシリコンとIII族窒化物半導体との中間の格子定数を有するものがあるが、かかる化合物半導体をシリコン基板上に直接十分な厚さで良好な結晶性をもって成長させることが極めて困難であることがわかった。本発明者らはかかる化合物半導体のバッファ層としての適用性についてさらに検討した結果、これらII-III-VI族化合物半導体、I-III-VI族化合物半導体およびII-IV-V族化合物半導体並びに窒化ガリウム系半導体の4種の化合物半導体のうちの少なくとも2種の化合物半導体を超格子構造として積層することにより上記困難性を解消し得ることを見いだした。本発明は、かかる知見に基づく。
【0010】
すなわち、本発明によれば、それぞれシリコンとバッファ層上に形成しようとするIII族窒化物半導体との中間の格子定数を有するII-III-VI族化合物半導体、I-III-VI族化合物半導体およびII-IV-V族化合物半導体、並びに窒化ガリウム系窒化物半導体の4種の化合物半導体のうちの少なくとも2種の化合物半導体を超格子構造を構成するように積層してバッファ層を形成する工程であって、シリコン基板に最も近い化合物半導体層は、シリコンに最も近い格子定数を有する化合物半導体で形成し、バッファ層の内最上層の化合物半導体層は、前記III族窒化物半導体に最も近い格子定数を有する化合物半導体で形成するところの工程、および前記バッファ層上に前記III族窒化物半導体層を形成する工程を包含し、前記II-III-VI族化合物半導体は、ZnIn24、CdIn22Se2、ZnIn2Se4およびCdInGaS4からなる群の中から選ばれ、前記I-III-VI族化合物半導体は、CuGaS2、CuAlS2およびCuGaAlS2からなる群の中から選ばれ、前記II-IV-V族化合物半導体は、ZnSiP2およびZnGeP2からなる群の中から選ばれる、III族窒化物半導体の形成方法を提供する。
【0011】
本発明において、バッファ層がGaN系窒化物半導体の層を含まない場合には、異なる格子定数を有する少なくとも2種の化合物半導体を交互に積層することによりバッファ層を形成することができる。また、バッファ層がGaN系窒化物半導体の層とそれ以外の化合物半導体層をそれぞれ複数層含む場合には、シリコン基板に最も近い層を構成する化合物半導体からなる層の厚さを最上部に向って減少させ、GaN系窒化物半導体からなる層の厚さをバッファ層の最上部に向って増加させることによってバッファ層を形成することが好ましい。
【0012】
また、本発明によれば、このように形成されたIII族窒化物半導体層上に窒化物半導体発光構造を有する窒化物半導体発光素子が提供される。すなわち、本発明によれば、シリコン基板と、該シリコン基板上に設けられたバッファ層と、該バッファ層上に形成されたIII族窒化物半導体層と、該III族窒化物半導体層上に設けられた窒化物半導体発光構造を備え、該バッファ層は、それぞれシリコンと該III族窒化物半導体との中間の格子定数を有するII-III-VI族化合物半導体、I-III-VI族化合物半導体およびII-IV-V族化合物半導体、並びに窒化ガリウム系窒化物半導体の4種の化合物半導体のうちの少なくとも2種の化合物半導体が超格子構造を構成するように積層されてなり、該バッファ層のうち、該シリコン基板に最も近い化合物半導体層は、シリコンに最も近い格子定数を有する化合物半導体で形成され、該バッファ層の内最上層の化合物半導体層は、該III族窒化物半導体に最も近い格子定数を有する化合物半導体で形成され、前記II-III-VI族化合物半導体は、ZnIn24、CdIn22Se2、ZnIn2Se4およびCdInGaS4からなる群の中から選ばれ、前記I-III-VI族化合物半導体は、CuGaS2、CuAlS2およびCuGaAlS2からなる群の中から選ばれ、前記II-IV-V族化合物半導体は、ZnSiP2およびZnGeP2からなる群の中から選ばれることを特徴とする窒化物半導体発光素子が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0014】
本発明において、シリコン基板上にIII族窒化物半導体を形成するに当り、まず、II-III-VI族化合物半導体、I-III-VI族化合物半導体、II-IV-V族化合物半導体、および窒化ガリウム(GaN)系窒化物半導体から選ばれる少なくとも2種の化合物半導体を超格子構造を提供するように積層してバッファ層を形成する。
【0015】
本発明で使用するII-III-VI族化合物半導体、I-III-VI族化合物半導体、II-IV-V族化合物半導体は、シリコンとバッファ層上に形成しようとするIII族窒化物半導体との中間の格子定数を有するものであり、通常、窒素を含有しないものである。そのような化合物半導体には、II-III-VI族化合物半導体として、ZnIn24、CdIn22Se2、ZnIn2Se4、CdInGaS4含まれ、I-III-VI族化合物半導体として、CuGaS2、CuAlS2、CuGaAlS2含まれ、II-IV-V族化合物半導体として、ZnSiP2、ZnGeP2含まれる。以下、これらを総称して、非窒化物化合物半導体ということがある。
【0016】
また、本発明において、GaN系窒化物半導体とは、ガリウムと窒素を含有する窒化物半導体を意味し、GaN、InGaAlN、InGaNが含まれる。
【0017】
これら化合物半導体の薄層は、各化合物半導体を構成する元素を用いた分子線エピタキシャル(MBE)成長法、または各化合物半導体を構成する元素の有機金属化合物を材料として用いる有機金属気相成長(MOCVD)法により形成することができる。これらの成長方法は、それ自体周知の方法であり、MBE法による場合には、約500℃の成長温度で、MOCVD法による場合には、約750℃の成長温度で、各化合物半導体層を形成することが好ましい。各化合物半導体層は、超格子構造を構成するために、それぞれ、20nm以下の厚さに形成することが好ましい。
【0018】
バッファ層を形成する際に、シリコン基板に最も近い化合物半導体層は、シリコンに最も近い格子定数を有する化合物半導体で形成し、バッファ層のうち最上層の化合物半導体層は、バッファ層上に形成しようとするIII族窒化物半導体に最も近い格子定数を有する化合物半導体で形成する。
【0019】
本発明において、バッファ層は、異なる格子定数を有する少なくとも2種の非窒化物化合物半導体を交互に積層することにより形成することができる。その場合、各非窒化物化合物半導体層の厚さは、実質的に等しいものとすることができる。
【0020】
また、本発明において、バッファ層がGaN系窒化物半導体の層とそれ以外の化合物半導体層をそれぞれ複数層含む場合には、シリコン基板に最も近い層を構成する化合物半導体からなる層の厚さを最上部に向って漸減させ、GaN系窒化物半導体からなる層の厚さをバッファ層の最上部に向って漸増させることによってバッファ層を形成することが好ましい。例えば、バッファ層を非窒化物化合物半導体とGaN系窒化物半導体の2種類で形成する場合、両半導体を交互に積層し、その際シリコン基板に最も近い層を非窒化物化合物半導体で形成し、バッファ層の最上層をGaN系窒化物半導体で形成するのであるが、非窒化物半導体で構成される半導体層をシリコン基板から最上層に向って厚さを漸減させ、反対に、GaN系窒化物半導体で形成される半導体層をシリコン基板から最上層に向って厚さを漸増させるように形成することが好ましい。
【0021】
また、バッファ層をそれぞれ格子定数の異なる第1~第3の非窒化物化合物半導体とGaN系窒化物半導体の4種類で形成する場合、格子定数の大きさをSi>第1の非窒化物化合物半導体(Aとする)>第2の非窒化物化合物半導体(Bとする)>第3の非窒化物化合物半導体(Cとする)>III族窒化物半導体(D)とすると、例えば、シリコン基板の上にABCDの順に積層し、その積層構造を順次ABCD、ABCD…ABCDのように形成するのであるが、Aで構成される半導体層をシリコン基板から最上層に向って厚さを漸減させ、反対に、Dで構成される半導体層をシリコン基板から最上層に向って厚さを漸増させるように形成することが好ましい。その場合、Bで構成される半導体層はシリコン基板から最上層に向って厚さを漸減させるように形成することができ、Cで構成される半導体層はシリコン基板から最上層に向って厚さを漸増させるように形成することができる。
【0022】
本発明により形成されるバッファ層は、1~3μmの厚さを有することができる。
【0023】
このようにして、超格子構造のバッファ層を形成した後、InGaNやInGaAlNのようなIII族窒化物半導体層を形成する。III族窒化物半導体は、それ自体周知のMOCVD法により、例えば50~100μmの厚さに成長させることができる。本発明によりシリコン基板上に形成されたバッファ層上には、結晶性の優れたIII族窒化物半導体、より具体的には転位密度が105/cm2以下であるという結晶性の優れたIII族窒化物半導体を成長させることができる。
【0024】
このように本発明により形成されたIII族窒化物半導体層は、結晶性に優れているので、その上に結晶欠陥の少ない窒化物半導体発光構造を形成させることができる。すなわち、このIII族窒化物半導体層は、窒化物半導体発光構造を成長させるためのいわば基板として作用し得る。このIII族窒化物半導体はn型とすることが好ましい。このIII族窒化物半導体層上に形成する窒化物半導体発光素子構造は、それ自体周知のInGaNを発光層(活性層)とするダブルヘテロ構造の発光素子(発光ダイオード、レーザダイオード)構造を含む。
【0025】
次に、図面を参照して本発明をさらに説明する。全図にわたり、同様の要素には同様の符号が付されている。
【0026】
図1は、本発明の一態様に従ってシリコン基板上に形成されたバッファ層とIII族窒化物半導体層を示す概略断面図である。
【0027】
図1に示すように、シリコン基板11上に本発明によるバッファ層12が形成され、バッファ層12上にIII族窒化物半導体層13が形成される。バッファ層12は、I-III-VI族非窒化物化合物半導体例えばCuGaS2とGaN系窒化物半導体例えばInGaAlNとの2種の化合物半導体の交互積層構造を含む。図1において、CuGaS2からなる半導体層を12An(nは、シリコン基板11に近いものから数えてn番目の層を示す)で表し、InGaAlNからなる半導体層を12Bn(nは、シリコン基板11に近いものから数えてn番目の層を示す)で表すと、シリコン基板11上に直接形成される半導体層は、層12A1により構成され、バッファ層12の最上層を構成する半導体層は、層12Bnにより構成される。そして、層12A1~12Anは、シリコン基板11に最も近い層12A1から最上層に向って厚さが単純に減少している。すなわち、層12A1が最も厚く、層12Anが最も薄く形成されている。これとは逆に、層12B1~12Bnは、シリコン基板11に最も近い層12B1から最上層に向って厚さが単純に増加している。すなわち、層12B1が最も薄く、層12Bnが最も厚く形成されている。このバッファ層12は、約1μmの厚さを有し得る。
【0028】
バッファ層12の上に、所望のIII族窒化物半導体例えばInGaAlN層13が形成される。
【0029】
図1の構造において、I-III-VI族非窒化物化合物半導体の代わりに、II-III-VI族非窒化物化合物半導体またはII-IV-V族非窒化物化合物半導体を用いることができる。
【0030】
図2は、本発明の他の態様に従ってシリコン基板上に形成されたバッファ層とIII族窒化物半導体層を示す概略断面図である。
【0031】
図2に示すように、シリコン基板11上に本発明によるバッファ層22が形成され、バッファ層22上にIII族窒化物半導体層13が形成される。バッファ層22は、I-III-VI族非窒化物化合物半導体例えばCuGaS2(格子定数:5.4Å)とII-III-VI族非窒化物化合物半導体例えばZnIn24(格子定数:3.85Å)との2種の化合物半導体の交互積層構造を含む。図2において、CuGaS2からなる半導体層を22An(nは、シリコン基板11に近いものから数えてn番目の層を示す)で表し、ZnIn24半導体層を22Bn(nは、シリコン基板11に近いものから数えてn番目の層を示す)で表すと、シリコン基板21上に直接形成される半導体層は、層22A1により構成され、バッファ層22の最上層を構成する半導体層は、層22Bnにより構成される。この場合、バッファ層22を構成するすべての半導体層は、実質的に同じ厚さを有し得る。また、バッファ層22は、約1μmの厚さを有し得る。
【0032】
バッファ層22の上に、図1に関して説明したような所望のIII族窒化物半導体例えばInGaAlN層13が形成される。
【0033】
図2の構造において、I-III-VI族非窒化物化合物半導体の代わりに、II-IV-V族非窒化物化合物半導体を用いることができる。
【0034】
図3は、本発明のさらに他の態様に従ってシリコン基板上に形成されたバッファ層とIII族窒化物半導体層を示す概略断面図である。
【0035】
図3に示すように、シリコン基板11上に本発明によるバッファ層32が形成され、バッファ層32上にIII族窒化物半導体層13が形成される。バッファ層32は、I-III-VI族非窒化物化合物半導体例えばCuGaS2(格子定数:5.4Å)とII-III-VI族非窒化物化合物半導体例えばCdIn22Se2(格子定数:4.03Å)およびZnIn24(格子定数:3.85)とGaN系窒化物半導体例えばInGaNとの4種の化合物半導体の積層構造を含む。図3において、CuGaS2からなる半導体層を32An(nは、シリコン基板11に近いものから数えてn番目の層を示す)で表し、CdIn22Se2からなる半導体層を32Bn(nは、シリコン基板11に近いものから数えてn番目の層を示す)で表し、ZnIn24からなる半導体層を32Cn(nは、シリコン基板31に近いものから数えてn番目の層を示す)で表し、InGaNからなる半導体層を32Dn(nは、シリコン基板11に近いものから数えてn番目の層を示す)で表すと、バッファ層32は、シリコン基板11上に直接形成された層32A1、その上に形成された層32B1、その上に形成された層32C1およびその上に形成された層32D1からなる第1の積層構造およびこの第1の積層構造の上に順次形成された同様の積層構造を含み、最終的に層32An、その上に形成された層32Bn、その上に形成された層32Cnおよびその上に形成された層32Dnからなる積層構造を含む。シリコン基板11上に直接形成される半導体層は、層32A1により構成され、バッファ層32の最上層を構成する半導体層は、層32Dnにより構成される。そして、層32A1~32Anは、シリコン基板11に最も近い層32A1から最上層に向って厚さが単純に減少している。すなわち、層32A1が最も厚く、層32Anが最も薄く形成されている。これとは逆に、層32D1~32Dnは、シリコン基板11に最も近い層32D1から最上層に向って厚さが単純に増加している。すなわち、層32D1が最も薄く、層32Dnが最も厚く形成されている。また、層32B1~32Bnは、シリコン基板11に最も近い層32A1から最上層に向って厚さを単純に減少させることができる。さらに、層32C1~32Cnは、シリコン基板31に最も近い層32C1から最上層に向って厚さを単純に増加させることができる。このバッファ層32は、約3μmの厚さを有し得る。
【0036】
バッファ層32の上に、図1に関して説明したような所望のIII族窒化物半導体例えばInGaAlN層13が形成される。
【0037】
図4は、本発明により形成されたIII族窒化物半導体層上に設けられた窒化物半導体発光構造を備える窒化物半導体レーザダイオード(LD)の基本構造を示す概略断面図である。
【0038】
図4に示すLD素子は、シリコン基板11上に本発明により形成されたバッファ層42を介して形成されたn型III族窒化物半導体層13を備える。バッファ層は、上記バッファ層12、22または32であり得る。
【0039】
III族窒化物半導体層13上には、窒化物半導体レーザダイオード構造が設けられている。窒化物半導体レーザダイオード構造は、基本的に、III族窒化物半導体層13上に形成されたn型窒化物半導体からなるn型クラッド層44、InGaNを含む活性層45、およびp型窒化物半導体からなるp型クラッド層46を含む。
【0040】
【実施例】
以下本発明を実施例により説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0041】
実施例1
CuGaS2とInGaAlNとの2種の化合物半導体を通常のMOCVD法により交互に積層して図1に示す構造のバッファ層12を形成した。そのとき、CuGaS2層の厚さは、シリコン基板に最も近いもので12nm、最も上のもので、1nmとなるように、シリコン基板から離れるにつれ漸減させた。他方、InGaAlN層の厚さは、シリコン基板に最も近いもので1nm、最上層で12nmとなるようにシリコン基板から離れるにつれ漸増させた。得られたバッファ層の厚さは、約1μmであった。このバッファ層の上に通常のMOCVD法によりInGaAlN層を50μmの厚さに成長させた。得られたInGaAlN層の転位密度をTEM観察により測定したところ、105/cm2以下であることが確認された。
【0042】
実施例2
CuGaS2とZnIn24との2種の化合物半導体を通常のMOCVDにより、それぞれ厚さを5nmとして交互に積層して図2に示す構造のバッファ層22を形成した。得られたバッファ層の厚さは1μmであった。このバッファ層の上に通常のMOCVD法によりInGaAlN層を50μmの厚さに成長させた。得られたInGaAlN層の転位密度をTEM観察により測定したところ、105/cm2以下であることが確認された。
【0043】
実施例3
CuGaS2とCdIn22Se2とZnIn24とInGaNとの4種の化合物半導体を通常のMOCVDにより積層させて図3に示す構造のバッファ層32を形成した。それぞれ第1層目のCuGaS2層、CdIn22Se2層、ZnIn24層およびInGaN層の厚さをそれぞれ20nm、10nm、5nmおよび2nmとし、最終層のCuGaS2層、CdIn22Se2層、ZnIn24層およびInGaN層の厚さをそれぞれ2nm、5nm、10nmおよび20nmとなるように、それぞれの厚さを漸減、漸増させた。得られたバッファ層の厚さは3μmであった。このバッファ層の上に通常のMOCVD法によりInGaAlN層を50μmの厚さに成長させた。得られたInGaAlN層の転位密度をTEM観察により測定したところ、105/cm2以下であることが確認された。
【0044】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、シリコン基板上に結晶性の優れたIII族窒化物半導体を形成することができ、その上に良好な品質の窒化物半導体発光構造を設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一態様に従ってシリコン基板上に形成されたバッファ層とIII族窒化物半導体層を示す概略断面図。
【図2】本発明の他の態様に従ってシリコン基板上に形成されたバッファ層とIII族窒化物半導体層を示す概略断面図。
【図3】本発明のさらに他の態様に従ってシリコン基板上に形成されたバッファ層とIII族窒化物半導体層を示す概略断面図。
【図4】本発明に係る窒化物半導体発光素子の基本構造の一例を示す概略断面図。
【符号の説明】
11…シリコン基板
12,22,32,42…バッファ層
13…III族窒化物半導体層
44…n型クラッド層
45…活性層
46…p型クラッド層
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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