TOP > 国内特許検索 > 酸化物基板上への集積回路装置の製造方法及び装置 > 明細書

明細書 :酸化物基板上への集積回路装置の製造方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3847682号 (P3847682)
公開番号 特開2004-087814 (P2004-087814A)
登録日 平成18年9月1日(2006.9.1)
発行日 平成18年11月22日(2006.11.22)
公開日 平成16年3月18日(2004.3.18)
発明の名称または考案の名称 酸化物基板上への集積回路装置の製造方法及び装置
国際特許分類 H01L  21/203       (2006.01)
C23C  14/28        (2006.01)
H01S   5/026       (2006.01)
H01S   5/323       (2006.01)
FI H01L 21/203 M
C23C 14/28
H01S 5/026
H01S 5/323 610
請求項の数または発明の数 23
全頁数 30
出願番号 特願2002-247083 (P2002-247083)
出願日 平成14年8月27日(2002.8.27)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2002(平成14年)春季第49回応用物理学関係連合講演会講演予稿集No.1(2002年3月27日)(社)応用物理学会発行第365頁に発表
審査請求日 平成16年5月26日(2004.5.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】藤岡 洋
【氏名】尾嶋 正治
個別代理人の代理人 【識別番号】100089635、【弁理士】、【氏名又は名称】清水 守
審査官 【審査官】田代 吉成
参考文献・文献 特開平11-162852(JP,A)
調査した分野 H01L 21/203
C23C 14/28
H01S 5/026
H01S 5/323
特許請求の範囲 【請求項1】
(a)LiNbO3 基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、該研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成し、
(b)レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させ、
(c)該AlN層上にGaN層を形成することを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項2】
請求項記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、PLD法により、液体Gaメタルターゲットを用い、前記LiNbO3 基板温度700℃、窒素分圧0.1~100mTorrにて前記GaN層の成長を行うことを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項3】
請求項記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、前記PLD法によるパルスレーザーは248nm、0.1~10J/cm2 ,2~15Hzであることを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、前記LiNbO3 基板上に半導体レーザーとしてのGaN素子と酸化物光制御素子と光検出器としてのInGaN素子を実装することを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項5】
(a)LiNbO3 基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、該研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成する手段と、
(b)レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させる手段と、
(c)該AlN層上にGaN層を形成する手段とを具備する酸化物基板上への集積回路装置の製造装置。
【請求項6】
請求項に記載される酸化物基板上への集積回路装置の製造装置によって製造されるLiNbO3 基板と、AlN層と、GaN層からなる酸化物基板上の集積回路装置。
【請求項7】
(a)NdGaO3 基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、該研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成し、
(b)レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させ、
(c)該AlN層上にGaN層を形成することを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項8】
請求項記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、エタノールとアセトンによる脱脂洗浄の後、前記NdGaO3 基板をPLDチャンバに導入し、該PLDチャンバのベースプレッシャーを1.0~2.0×10-9Torrとし、成長中は窒素ガスを導入し、窒素圧を1.0×10-2Torrに保ち、ターゲットにはGaNの焼結体を用いることを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項9】
請求項記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、前記ターゲットは基板より5cm下方に位置し、KrFエキシマレーザー(λ=248nm,τ=20ns)によってアブレートさせ、そのエネルギー密度は3.0J/cm2 、パルス周波数は10Hzに設定することを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項10】
請求項記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、成長レートを約10nm/hとし、前記基板の温度を750℃に設定することを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項11】
(a)NdGaO3 基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、該研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成する手段と、
(b)レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させる手段と、
(c)該AlN層上にGaN層を形成する手段とを具備する酸化物基板上への集積回路装置の製造装置。
【請求項12】
請求項11に記載される酸化物基板上への集積回路装置の製造装置によって製造されるNdGaO3 基板と、AlN層と、GaN層からなる酸化物基板上の集積回路装置。
【請求項13】
(a)(Mn,Zn)Fe2 4 基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、該研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成し、
(b)レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させ、
(c)該AlN層上にGaN層を形成することを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項14】
請求項13記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、前記AlN層を室温で成長させることを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項15】
請求項13記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、(Mn,Zn)Fe2 4 基板をPLDチャンバに導入し、該PLDチャンバのベースプレッシャーを約10-10 Torrとし、成長中は窒素ガスを導入し、窒素圧を1.0×10-2Torrに保ち、ターゲットにはAlNの焼結体を用いることを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項16】
請求項15記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、前記PLD法によるパルスレーザーは248nm、0.1~10J/cm2 ,2~15Hzのエキシマレーザーであることを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項17】
(a)(Mn,Zn)Fe2 4 基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、該研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成する手段と、
(b)レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させる手段と、
(c)該AlN層上にGaN層を形成する手段とを具備することを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造装置。
【請求項18】
請求項17に記載される酸化物基板上への集積回路装置の製造装置によって製造される(Mn,Zn)Fe2 4 基板と、AlN層と、GaN層からなる酸化物基板上の集積回路装置。
【請求項19】
(a)MnO基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、該研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成し、
(b)レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させ、
(c)該AlN層上にGaN層を形成することを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項20】
請求項19記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、MnO基板をPLDチャンバに導入し、成長中は窒素ガスを導入し、窒素圧を1.0-5から10-2Torrに保ち、基板温度を700~800℃とし、ターゲットには金属GaおよびAlNの焼結体を用いて前記AlN層およびGaN層を成長させることを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項21】
請求項20記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、前記PLD法によるパルスレーザーは248nm、0.1~10J/cm2 ,2~15Hzのエキシマレーザーであることを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造方法。
【請求項22】
(a)MnO基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、該研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成する手段と、
(b)レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させる手段と、
(c)該AlN層上にGaN層を形成する手段とを具備することを特徴とする酸化物基板上への集積回路装置の製造装置。
【請求項23】
請求項22に記載される酸化物基板上への集積回路装置の製造装置によって製造されるMnO基板と、AlN層と、GaN層からなる酸化物基板上の集積回路装置。
発明の詳細な説明
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸化物基板、特に光学結晶基板上または磁性酸化物基板上への集積回路装置の製造方法及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、このような技術分野の参考文献としては、以下に開示されるようなものがあった。
〔1〕J.Ohta,H.Fujioka,M.Sumiya,H.Koinuma,M.Oshima,J.Cryst.Growth,225(2001)73.
〔2〕J.Ohta,H.Fujioka,H.Takahashi,M.Oshima,Phys.Stat.Sol.(a),188(2001)497.
〔3〕J.Ohta,H.Fujioka,H.Takahashi,M.Sumiya and M.Oshima,J.Cryst.Growth 233(2001)779.
〔4〕T.Ishii et al.,J.Cryst.Growth,189/190(1998)208.
〔5〕C.J.Rawn et al.,J.Cryst.Growth,225(2001)214.
〔6〕D.Kapolnek et al.,Appl.Phys.Lett.,67(1995)1541.
〔7〕B.Heying et al.,Appl.Phys.Lett.,68(1996)643.
〔8〕W.Li et al.,Appl.Phys.Lett.,69(1996)3390.
Si基板やGaAs基板は、デバイス融合の観点から非常に魅力的な基板材料であるものの、その熱的不安定性および化学的不安定性から、薄膜成長前に雰囲気ガスと反応して界面窒化層が生じ、従来のMOCVD法、MBE法では、良質なエピタキシャル成長が困難であった。
【0003】
また、LiGaO2 やMgAlO3 などの酸化物基板は、III 族窒化物と非常に格子マッチが良い(格子不整合は1%以下)ものの、水素による還元や、窒素源による窒化が問題となり、やはり成長前に基板材料そのものが分解してしまうなど、良質なIII 族窒化物の成長は困難を極め、現在のところ、その結晶品質においてサファイアを越える基板はないとされている。そのサファイア基板は、格子不整合は約16%と大きいが、熱的安定性・化学的安定性があり、現在では低温バッファ層の利用による結晶性向上など、成長技術がある程度確立された基板材料である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、サファイアには、(1)絶縁体でありデバイス製造工程が複雑になる、(2)非常に硬く加工が容易でない、(3)レーザー作製時に劈開面が利用できない、(4)大面積基板が得られないなど、デバイス作製やコスト面において不利な点を多数有している。従って、サファイアに代わる新しい基板の探索は、現在でも最も重要な課題の一つと考えられている。
【0005】
そこで、本願発明者らは、従来とはまったく様式を異にする、PLD(Pulsed Laser Deposition)という成長手法に着目した。レーザーMBE法は、窒素源として窒素ガスを用いるために、窒素雰囲気中での窒化物の成長が可能であり、従来技術で問題となっている成長前の基板表面の窒化反応が抑えられる。そのため、従来技術では用いることの出来なかった基板上へも、良質なIII 族窒化物薄膜が成長可能になるのではないかと考えた。
【0006】
既に、本願発明者らは、(La,Sr)(Al,Ta)O3 (LSAT)基板、Mn-Znフェライト基板、Si基板上へのIII 族窒化物の成長を試みている〔参考文献1-3〕。
【0007】
表1に各種基板およびAlN、GaNの格子定数、熱膨張係数を示す。
【0008】
【表1】
JP0003847682B2_000002t.gif この表1から分かるように、サファイア基板に比べ、LSATやフェライト基板とIII 族窒化物の格子ミスマッチは小さい。これらの基板上に、レーザーMBE法を用いてIII 族窒化物の成長を行ったところ、その界面には窒化層は存在せず、急峻な界面の作製が可能であることが分かった。
【0009】
このようにして、本願発明者らはレーザーMBE法を用いて種々の基板上へのIII 族窒化物の成長可能性を調べてきたが、本発明では、格子マッチング基板の一つとして、NGO(NdGaO3 )基板に着目した。NGO基板は、磁性体・強誘電体・超伝導体材料のヘテロエピタキシャル成長用基板として広く用いられており、これを基板として利用することは、格子マッチング基板であることの他にも、GaNのような光デバイスと酸化物エレクトロニクスを集積・融合するという意味でも利点がある。
【0010】
また、今回、この技術を用いれば、酸化物をベースとした光素子とIII 族窒化物発光素子を融合した新機能集積デバイスが実現できると考え、光学結晶基板としてのLiNbO3 基板上へのGaN成長の可能性を検討した。
【0011】
光学結晶とは、光との相互作用をもった機能性酸化物であり、具体的には光スイッチ材料、固体レーザー材料、光偏向材料、光-光制御材料などを指し、光通信や光情報処理分野での応用が期待されている。この光学結晶を用いての光集積回路が数多く提案されている。
【0012】
しかしなから、半導体レーザーや、半導体受発光素子を光集積回路基板に貼り付けるという従来の方法では、集積度が低く応用が非常に限られていた。
【0013】
本願発明者は、光学結晶上にGaNなどの直接遷移型半導体をヘテロエピタキシャル成長させる方法を鋭意研究した結果、レーザーMBE装置を用いることにより、光学結晶基板(LiNbO3 )上に良質なGaNを成長させることに成功した。
【0014】
また、MnOやLSAT、MnZnフェライト(Mn,Zn)Fe2 4 などの化学的に不安定な磁性酸化物基板上へもレーザーMBE装置を用いることにより、良質なGaNを成長させることに成功した。
【0015】
本発明は、上記状況に鑑みて、窒素雰囲気下でのエピタキシャル成長が可能となるパルスレーザーMBE(PLDMBE)装置を用い、LiNbO3 や(Mn,Zn)Fe2 4 などの表面の原子レベルでの平坦化と、バッファ層としてAIN層を形成することにより、従来ハイブリッドであった光集積回路や磁気的集積素子をモノリシック化し、現在の回路の主役である電子回路を凌駕するような集積化装置を構築し得る酸化物基板上への集積回路装置の製造方法及び装置を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、LiNbO3 基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、この研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成し、レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させ、このAlN層上にGaN層を形成することを特徴とする。
【0017】
〕上記〔〕記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、PLD法により、液体Gaメタルターゲットを用い、前記LiNbO3 基板温度700℃、窒素分圧0.1~100mTorrにて前記GaN層の成長を行うことを特徴とする。
【0018】
〕上記〔〕記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、前記PLD法によるパルスレーザーは248nm、0.1~10J/cm2 ,2~15Hzであることを特徴とする。
【0019】
〕上記〔1〕から〕の何れか1項に記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、前記LiNbO3 基板上に半導体レーザーとしてのGaN素子と酸化物光制御素子と光検出器としてのInGaN素子を実装することを特徴とする。
【0020】
〕酸化物基板上への集積回路装置の製造装置において、LiNbO3 基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、この研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成する手段と、レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させる手段と、このAlN層上にGaN層を形成する手段とを具備する。
【0021】
〕上記〔〕に記載される酸化物基板上への集積回路装置の製造装置によって製造されるLiNbO3 基板と、AlN層と、GaN層からなる。
【0022】
〕酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、NdGaO3 基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、この研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成し、レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させ、このAlN層上にGaN層を形成することを特徴とする。
【0023】
〕上記〔〕記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、エタノールとアセトンによる脱脂洗浄の後、前記NdGaO3 基板をPLDチャンバに導入し、このPLDチャンバのベースプレッシャーを1.0~2.0×10-9Torrとし、成長中は窒素ガスを導入し、窒素圧を1.0×10-2Torrに保ち、ターゲットにはGaNの焼結体を用いることを特徴とする。
【0024】
〕上記〔〕記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、前記ターゲットは基板より5cm下方に位置し、KrFエキシマレーザー(λ=248nm,τ=20ns)によってアブレートさせ、そのエネルギー密度は3.0J/cm2 、パルス周波数は10Hzに設定することを特徴とする。
【0025】
10〕上記〔〕記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、成長レートを約10nm/hとし、前記基板の温度を750℃に設定することを特徴とする。
【0026】
11〕酸化物基板上への集積回路装置の製造装置において、NdGaO3 基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、この研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成する手段と、レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させる手段と、このAlN層上にGaN層を形成する手段とを具備する。
【0027】
12〕酸化物基板上の集積回路装置において、上記〔11〕に記載される酸化物基板上への集積回路装置の製造装置によって製造されるNdGaO3 基板と、AlN層と、GaN層からなる。
【0028】
13〕酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、(Mn,Zn)Fe2 4 基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、この研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成し、レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させ、このAlN層上にGaN層を形成することを特徴とする。
【0029】
14〕上記〔13〕記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、前記AlN層を室温で成長させることを特徴とする。
【0030】
15〕上記〔13〕記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、(Mn,Zn)Fe2 4 基板をPLDチャンバに導入し、このPLDチャンバのベースプレッシャーを約10-10 Torrとし、成長中は窒素ガスを導入し、窒素圧を1.0×10-2Torrに保ち、ターゲットにはAlNの焼結体を用いることを特徴とする。
【0031】
16〕上記〔15〕記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、前記PLD法によるパルスレーザーは248nm、0.1~10J/cm2 ,2~15Hzのエキシマレーザーであることを特徴とする。
【0032】
17〕酸化物基板上への集積回路装置の製造装置において、(Mn,Zn)Fe2 4 基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、この研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成する手段と、レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させる手段と、このAlN層上にGaN層を形成する手段とを具備することを特徴とする。
【0033】
18〕酸化物基板上の集積回路装置において、上記〔17〕に記載される酸化物基板上への集積回路装置の製造装置によって製造される(Mn,Zn)Fe2 4 基板と、AlN層と、GaN層からなる。
【0034】
19〕酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、MnO基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、この研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成し、レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させ、このAlN層上にGaN層を形成することを特徴とする。
【0035】
20〕上記〔19〕記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、MnO基板をPLDチャンバに導入し、成長中は窒素ガスを導入し、窒素圧を1.0-5から10-2Torrに保ち、基板温度を700~800℃とし、ターゲットには金属GaおよびAlNの焼結体を用いて前記AlN層およびGaN層を成長させることを特徴とする。
【0036】
21〕上記〔20〕記載の酸化物基板上への集積回路装置の製造方法において、前記PLD法によるパルスレーザーは248nm、0.1~10J/cm2 ,2~15Hzのエキシマレーザーであることを特徴とする。
【0037】
22〕酸化物基板上への集積回路装置の製造装置において、MnO基板の表面にコロイダルシリカによるCMP基板研磨を行った後、この研磨された基板に超高真空中でのアニールを施し、前記基板上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成する手段と、レーザーMBE法により、前記原子レベルで平坦化された基板上にターゲットを用いたAlN層を成長させる手段と、このAlN層上にGaN層を形成する手段とを具備することを特徴とする。
【0038】
23〕酸化物基板上の集積回路装置において、上記〔22〕に記載される酸化物基板上への集積回路装置の製造装置によって製造されるMnO基板と、AlN層と、GaN層からなる。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0040】
まず、本発明の各種の実施例に共通する技術について説明する。
【0041】
〔A〕基板の表面処理
図1は本発明の実施例を示す基板の研磨装置の模式図、図2はその基板の研磨のフローチャートである。
【0042】
この図において、1は光学結晶基板や磁性酸化物基板などの基板、2はその基板1の保持具、3は研磨板、4はコロイダルシリカ容器、5はコロイダルシリカ供給ノズル、6はコロイダルシリカである。
【0043】
この研磨装置によって、基板1の保持具2と研磨板3を回転させ、コロイダルシリカ6による基板1の化学機械的研磨を行った後に、超高真空中(10-9Torr)でのアニールを行い、基板1を原子レベルで平坦化する。
【0044】
以下、その基板の処理工程を図2を参照しながら説明する。
【0045】
(1)まず、粒径3.0μmのダイアモンドスラリーと溝付き銅板を用いた荒研磨を行う。この過程で基板の平面出しを行う。次に、超純水で軽く洗浄した後、アセトンで基板表面のワックスなどの汚れを拭き取る。さらに、20秒ほど超純水で超音波洗浄する(ステップS1)。
【0046】
(2)次いで、粒径0.5μmのダイアモンドスラリーと研磨布を用いてラッピングを行う。研磨後はステップS1と同様に、超純水で軽く洗浄した後、アセトンで基板表面を軽く拭き、20秒ほど超純水で超音波洗浄を行う(ステップS2)。
【0047】
(3)次に、コロイダルシリカ(pH9.8)を用いてCMP(化学機械的研磨)を行う。このCMPは、あまり長時間行うと基板表面がアルカリに侵されてダメージを受けるので、5分間程度が適切である。また、シリカ微粒子が凝集し易いので、研磨後は十分に純水でリンスする。研磨後に超音波洗浄を行うと、細かなピットが形成されるので、ここでは超音波洗浄は行わない(ステップS3)。
【0048】
(4)最後に、超高真空中(10-9Torr)でのアニールを行う(ステップS4)。
【0049】
この基板の表面処理で重要なことは、原子間力顕微鏡で平均粗さ10Å以下にすることが重要である。
【0050】
〔B〕レーザーMBE装置
図3は本発明にかかるレーザーMBE装置の模式図である。
【0051】
この図において、10はPLDチャンバ、11はターゲット(ここではAlN焼結体であるが、以降のプロセスではGaN焼結体や液体Gaメタル)、12は基板、13は加熱装置、14はKrFエキシマレーザー(248nm,3J/cm2 、2-15Hz)、15はスクリーン、16はRHEED装置、17,18はTMP(Turbo Molecular Pump)、19はN2 ガス源、20は電子ビームである。
【0052】
このPLDチャンバ10は、超高真空中で光電子分光(XPS)装置、III -V族化合物半導体作製用分子線エピタキシー(MBE)装置に連結されており、窒化物とGaAsなどの多層構造の作製、および、化学結合状態解析による、試料表面および界面状態の評価が可能である。レーザーMBE装置のベースプレッシャーは1.0~2.0×10-9Torr程度となっている。
【0053】
〔C〕PLD(Pulsed Laser Deposition)MBE法 PLD法では、20~30nsのパルス幅を持ったレーザー光をレンズによって、0.1~10J/cm2 のエネルギー密度に集光し、入射窓を通して真空チャンバー内のターゲットにフォーカスし、ターゲット表面の約10nmを蒸発、アブレートする。放出される10~100eVのエネルギーを持った中性原子、分子、イオン等の粒子は、プルームと呼ばれる発光柱を形成し、対向する適度に過熱された基板上に凝縮し、薄膜を形成する。
【0054】
PLD法の利点としては、装置構成が簡単で、真空チャンバ内に加熱蒸発源や、プラズマ発生装置などを含まないのでクリーンな成膜雰囲気が得られる。
【0055】
また、ターゲットを交換するだけで、ヘテロ構造や超格子を容易に形成できる。
【0056】
さらに、酸化物のような高融点の材料でも全成分を一瞬でアブレートできるので、組成のズレの少ない膜を堆積できる。特に紫外光は、赤外光や可視光に比べ、ターゲット内への侵入深さが浅く、表面の微小領域で吸収されるので、1原子にまで分解した気化成分を生成する。
【0057】
PLD法は、上記の技術的な特徴だけでなく、酸化物薄膜の成長過程の制御にも重要なメリットを持っている。金属原料を分子線状態で基板表面に供給する前記MBE法では、酸化反応は表面、あるいは表面近傍のみで起こり、酸素の供給で律速される動力学支配の反応になりやすい。一方、酸化物をターゲットに用いるPLD法では、主に酸化された分子やイオンが高い運動エネルギーをもって基板表面に衝突するので、基板表面温度や雰囲気の制御によって、熱平衡に近い高結晶性の構造にも動力学支配の非平衡構造にも緩和させられる自由度が高い。
【0058】
表面過程の自由エネルギー変化で見ると、酸化状態で吸着した方が形成される酸化物とのエネルギー差が小さく、より平衡に近い結晶性のよい薄膜を形成するのに有利と考えられる。
【0059】
〔D〕評価手法と装置
〔光電子分光法(XPS)〕
XPSは代表的な表面分析装置の一つで、固体の表面から数nmの深さ領域に関する元素および化学結合状態の分析に用いる。また、Arイオンなどでエッチングを行いながら測定することにより、最表面の汚染物を除去した面や、サブミクロンオーダーまでの深さ方向分析が可能である。X線光電子分析とイオンスパッタリングを交互に繰り返し、スペクトルの変化を追跡することで、試料の深さ方向における組成変化の情報を得るのである。
【0060】
試料は真空中で安定なものであれば何でも分析できるが、ほとんどの場合は固体試料である。金属、半導体、セラミックス、高分子材料など幅広い対象に用いられているが、絶縁物の場合は測定中に試料が帯電するため、低速電子を照射するなどの工夫が必要である。
【0061】
また、高分子などはX線で損傷する場合が有り、分析には注意が必要となる。特にハロゲンや窒素などいわゆるヘテロ元素を含む試料では測定中にこれらの元素が脱離したり、化学状態が変化したりする場合が多々あるので十分注意が必要である。必要に応じ試料を冷却して測定する場合もある。
【0062】
半導体結晶のヘテロエピタキシャル成長における基板とエピタキシャル膜の界面の急峻性は、デバイスへの応用を考えた場合非常に重要になってくる。そこで、成長したサンプルについて界面の状態を調べていくとともに成長の初期過程について詳しく研究を進めるため、XPSを用いることができる。
【0063】
励起X線としてはAlやMgのKαなど比較的低いエネルギーのものが良く用いられ、エネルギーアナライザーは電場を用いて電子の運動エネルギーを測定する装置で、同心円筒形(CMA)、同心半球型(CHA)などがある。
【0064】
高真空中で固体試料表面に特定エネルギーの軟S線(Al Kα線またはMg Kα線)を照射すると、光電効果により試料から電子(光電子)が放出される。これをアナライザーに導き、電子の運動エネルギーで分けてスペクトルとして検出する。X線は試料表面から数μmまで侵入するため、光電子は深い領域からも放出されるが、試料表面に到達するまでに非弾性散乱により運動エネルギーを失うためにピークとしては検出されず、スペクトルのバックグラウンドとなる。
【0065】
非弾性散乱せずに、試料表面(運動エネルギーにより異なるが、概ね数nmから数十nm)から脱出した数nmの深さ領域の光電子のみがピークとして検出され、分析に用いられる。スペクトルの横軸は電子の結合エネルギーで表示される。結合エネルギー(Eb)は照射した軟X線のエネルギー(E0 )から光電子の運動エネルギー(Ek )を引いた差として求められる(厳密には表面の仕事関数分だけエネルギーの損失がある)。
【0066】
b =E0 -Ek
各種原子の内殻電子は固有の結合エネルギーを持っているため、検出された電子の結合エネルギーから元素の種類、シグナル強度から元素の比率を調べることができる。検出可能な元素はLiからUまでである。検出限界は元素によって異なるが、およそ0.1%程度である。
【0067】
さらに、各種元素の化学結合状態が異なると結合エネルギーが僅かに変化し、ピークが分離されて検出される。束縛エネルギーは、原則として原子の種類と電子の軌道により定まった値になるが、原子が化合物や結晶格子を形成している場合には、自由な状態と比較するとその値が僅かに変化する。これを「化学シフト」とよび、化学結合している相手を知る上で、重要な情報を与える。
【0068】
X線光電子分光法ではこの化学シフトを利用して元素の種類だけでなく、化学状態を知ることができる。つまり、これにより有機物の官能基分析(C-O、C=Oの定量など)や無機物の酸化状態の分析(メタルと酸化状態の定量)などが可能となる。Arイオンエッチングによる深さ方向分析は、イオン照射により状態変化が起こりにくい無機物に有効である。
【0069】
〔フォトルミネッセンス測定(PL)〕
フォトルミネッセンス(photoluminescence:PL)とは、光で励起された半導体中の電子がエネルギーを放ちながら元のエネルギー状態に戻るときに発する光である。身近な例として、テレビのブラウン管があげられる。ブラウン管は電子線で蛍光体がルミネッセンスを発することを利用したデバイスである。
【0070】
本発明の測定装置は、このルミネッセンスを、分光器により分光し、CCD受光素子によってスペクトルを測定するためのシステムである。PLスペクトルを調べることで半導体薄膜の光学的特性をはじめ、その結晶品質や含まれる不純物などを調べることが出来る。
【0071】
本発明では、PL法によりGaN薄膜の光学特性を評価した。
【0072】
以下、各種の実施例について順次説明する。
【0073】
まず、本発明の第1実施例について説明する。
【0074】
ここでは、レーザーMBE法を用いた光学結晶基板としてのLiNbO3 上へのIII 族窒化物薄膜としてのGaN薄膜の成長について説明する。
【0075】
GaNの成長は10-5~10-2Torrの窒素雰囲気下で700℃の基板温度で行った。また、界面バッファー層としてAlNを用いた。ターゲットには、金属Ga、およびAlN焼結体を用いた。励起源としてはKrFエキシマレーザー(248nm,20ns)を3J/cm2 、15Hzの条件で使用した。
【0076】
得られた薄膜の評価は、反射型高速電子回折法(RHEED)、斜入射X線反射率法(GIXR)、高分解能X線回折法(HRXRD)等を用いた。
【0077】
以下、光学結晶基板としてのLiNbO3 上へのIII 族窒化物薄膜の成長について詳細に説明する。
【0078】
まず、III 族窒化物薄膜について説明する。
【0079】
GaN系ワイドギャップIII 族窒化物半導体は、青色、緑色発光ダイオードとして実用化されるようになった。また、その高い絶縁破壊電界、電子の飽和ドリフト速度が大きいこと、ヘテロ接合による2次元キャリアガスが使用できることなどの優れた性質を有するので、短波長発光デバイスのみならず、次世代の超高周波・高出力トランジスタなどの材料としても有望視され、活発な研究が進められている。前記した表1にGaNとAlNの一般的な性質が示されている。
【0080】
半導体レーザーの短波長化は情報処理機器の高性能化を実現する鍵となる技術である。特に、光メモリ応用では、高密度化に対する光源波長の寄与は大きい。GaN系化合物半導体は青色~紫外領域でのレーザー発振が可能な材料であり、高密度光メモリなどへの応用を目指してデバイス開発が進められている。
【0081】
光学結晶とは、光と相互作用をもったアクティブな機能を示す酸化物単結晶をさす。現在の光エレクトロニクス分野における光学結晶材料の特色は、光学的性質と種々の外部要因との相互作用が大きい、いわゆる機能性を持っている。光エレクトロニクスの技術分野は、光通信、表示、記録、計測、光による光制御といった広範囲にわたる光応用であり、また新しい光学結晶が次々と育成されて、それに必要な結晶光学が深く係わっている。
【0082】
次に、LiNbO3 について説明する。
【0083】
これは、光学結晶でも最も汎用的であり、利用価値の高いLiNbO3 基板(諸性質を表2に示す)を用いた。面方位は(0001)面を用いたが、これは対称性を考慮したもので、(11-20)面、(10-10)面なども考えられるが、Li原子が正四面体構造の中心にないために、同じ面上でLi、Nb間の長さが異なるなど、非対称である。
【0084】
【表2】
JP0003847682B2_000003t.gif 次に、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法について説明する。
【0085】
図3に示すように、超高真空中に基板12を置き、これを数百度に加熱しておき、堆積させたい物質を別々のルツボ状の容器(セル)に入れて加熱する。または焼結したターゲット11にレーザー14を照射することによって、堆積させたい物質が蒸発昇華し気相として基板12の清浄表面に供給されることで結晶成長を行う方法である。この方法は、真空度が高いので、気相の分子の平均自由行程は1000km以上になり、ルツボ容器を飛び出した分子は互いに衝突することなく基板12に到着する。
【0086】
主な特色としては、
(1)通常の真空蒸着法と異なり、MBE法では超高真空を用いている。そのため、基板表面へのチャンバ内の残留不純物(炭素、酸素、水及びその化合物)の付着がなく、一度基板表面を清浄化すればきわめて長時間(104~105秒)清浄表面を維持できる。したがって、基板上にエピタキシャル単結晶を成長できるばかりでなく、成長速度を遅くしても不純物の取り込みが極めて少ないので、高純度の結晶が得られる。
【0087】
(2)成長速度を極めて遅くする(0.1~数μm/hr)ことができ、かつ多くの半導体材料の場合で成長モードが2次元的であるため、原子レベルで膜厚制御が可能である。またこのような成長モードが実現できる基板温度が他の成長法に比較して低温であるため、急激なヘテロ界面を実現することができる。
【0088】
(3)各蒸着源セルにあるメカニカルなシャッターや各セルの温度を制御することによって、成長方向の混晶の組成分布、不純物ドーピングの分布を任意に高精度で制御することができる。したがって、成長方向にほぼ任意のバンドプロファイルをもつ半導体ヘテロ構造の作製が可能である。
【0089】
(4)MBEでは基板上における原子の付着は熱力学的な平衡にはほとんど依存しないために、ある温度での蒸気圧や基板への付着確率が大幅に違う元素間の化合物を、熱力学的な平衡から大幅に外れた組成で成長させることができる。
【0090】
(5)結晶成長中に種々の分析手法を用いて成長表面をその場観察することにより、成長機構に関する様々な情報が得られ、成長の制御にフィードバックさせることができる。特に、反射高エネルギー電子線回折(RHEED)は、MBEが開発された初期の段階から現在に至るまで最も広く使われている極めて有用な成長中におけるその場観察の手段である。
【0091】
(6)MBE法はその原理の単純さ、得られる結晶の高品質性、原子レベルでの膜厚制御性、その場観察の能力など優れた特徴をもつことから、半導体材料ばかりでなく、金属、絶縁体、超伝導体、磁性体、あるいはそれらを組み合わせた人工格子や複合ヘテロ構造など、様々な人工材料の探索に利用できる。
【0092】
以下、LiNbO3 上へのIII 族窒化物の形成について説明する。
【0093】
酸化物基板上へテロエピタキシャル成長させる半導体材料には、結晶欠陥に強いGaNが、また酸化物光制御素子材料としては電気機械結合定数の高いLiNbO3 が適している。
【0094】
上述したように、LiNbO3 基板表面は窒化されやすいために、MOCVD法やMBE法では良質なGaNはできない。
【0095】
そこで、本発明では、窒素雰囲気中で反応が進行するPLD法を用いれば、化学的に不安定な酸化物基板にも良質なGaN薄膜を成長させることができると考えた。
【0096】
本発明では、かかるLiNbO3 上のGaN薄膜の欠陥準位を低減する目的で、AlNバッファー層を形成させるようにした。
【0097】
図4はそのLiNbO3 上へAlNバッファー層を有するGaN薄膜の模式図である。
【0098】
この図において、101はLiNbO3 基板(0001)、102はその上に形成されるAlNバッファー層、103はその上に形成されるGaN薄膜(0001)である。
【0099】
図5にそのLiNbO3 基板とGaN薄膜の配向関係とそのロッキング曲線を示している。ここでは横軸に角度2θ(度)、縦軸に強度(相対単位)を示している。この図において、aはAlNバッファー層がない場合(半値幅は1.5°)、bはAlNバッファー層がある場合(半値幅は0.72)である。
【0100】
この図から、AlNバッファー層102の挿入により大幅に結晶性が向上していることが分かる。
【0101】
次に、GaN薄膜表面を観察すると、図6のようである。図6(a)はAlNバッファー層なしの場合(RMSは17.9nm)であり、図6(b)はAlNバッファー層ありの場合(RMSは0.64nm)であり、これらの図から明らかなように、成長モードが3次元成長から2次元成長へ変化しており、AlNバッファー層の挿入により平坦性が向上していることが分かる。
【0102】
更に、レーザーMBE装置の窒素分圧を最適化するようにした。
【0103】
すなわち、図7はAlNバッファー層の生成時の窒素分圧特性を示す図であり、aは低圧AlNバッファー層(窒素分圧0.1mTorr)、bは高圧AlNバッファー層(窒素分圧10mTorr)の場合であり、高圧AlNバッファー層の方が強いバンド端発光が確認された。
【0104】
上記から明らかなように、PLD法によりLiNbO3 上へAlNバッファー層を有するGaN薄膜のエピタキシャル成長を行わせることができた。
【0105】
上記から以下の点が挙げられる。
【0106】
(1)GaNとLiNbO3 は、図8に示すように、30°回転した配向関係を持つ。このとき格子ミスマッチは7%と小さい。すなわち、以下に示す面内配向関係を有する。
【0107】
LiNbO3 (0001)//GaN(0001)
LiNbO3 (11-20)//GaN(10-10)
(2)AlNバッファー層の挿入で結晶性が大幅に向上した。
【0108】
(3)酸素分圧の最適化により、欠陥準位発光の殆ど無い良好な光学特性を示すGaN薄膜を得ることができた。
【0109】
なお、LiNbO3 と同様な性質を示す物質としてNbをTaで置き換えたLiTaO3 がある。すなわち、LiNbO3 の格子定数は、a=5.1482Å、c=13.857Åであるが、LiTaO3 の格子定数は、a=5.1509Å、c=13.773Åであり、格子定数がほぼ同じであり、このLiTaO3 を基板とした適用ができることは言うまでもない。
【0110】
次に、本発明の第2実施例について説明する。
【0111】
この実施例においては、レーザーMBE法を用いた酸化物基板としての(Mn,Zn)Fe2 4 上へのIII 族窒化物薄膜としてのAlN薄膜の室温エピタキシャル成長について説明する。
【0112】
AlN薄膜の成長は、背圧10-10 Torr台のPLD装置によって行った。ターゲットにはAlNの焼結体(純度99.9%)を用い、雰囲気ガスとして、N2 を10mTorr導入した。基板には(Mn,Zn)Fe2 4 (111)を用い、成長温度は室温~700℃とした。励起源としてはKrFエキシマレーザー(248nm,20ns)を3J/cm2 、10Hzの条件で使用した。得られた薄膜の評価は、反射型高速電子回折法(RHEED)、原子間力顕微鏡(AFM)、高分解能X線回折(HRXRD)、斜入射X線反射率法(GIXR)等を用いた。
【0113】
次に、LGO基板上のIII 族窒化物薄膜の成長について詳細に説明する。
【0114】
LiGaO2 (LGO)は図9に示すようなorthorhombicの結晶構造を持ち(参考文献〔4〕)、その(001)面は、GaNとの格子ミスマッチが1%以下と非常に良いことから、格子マッチング基板の一つに挙げられ、良質なGaN薄膜の成長が期待される(参考文献〔4〕,〔5〕)。
【0115】
しかしながら、従来のMOCVD法やMBE法などの成長手法では、やはり活性窒素源による基板窒化が問題となり、III 族窒化物の成長は難しかった。最近、本願発明者らは、PLD法を用いることによってLGO基板上へのGaN直接成長に成功した。ここでは、そのG-GIXD測定の結果について述べる。
【0116】
成長はPLD法を用いて行った。ターゲットには液体Gaメタルターゲットを用い、成長温度700℃、N2 圧100mTorr、レーザーのパルス周波数は15Hzである。図10に、GaN成長後のRHEED像を示す。非常にシャープな回折像が得られており、良質なGaN薄膜がエピタキシャル成長したことが分かる。
【0117】
図11にGaN薄膜の面内・面外回折点におけるG-GIXD法による逆格子マッピング測定の結果を示す。
【0118】
この図より、非常に強度が強く、鋭いピークが観察された。これは、成長したGaN薄膜の結晶性が優れているためであると考えられる。
【0119】
表3に逆格子マッピングから求めたa軸、c軸方向の格子定数の値を示す。この結果より、LGO上に成長したGaN薄膜は、a軸、c軸方向ともに圧縮歪みを受けていることが分かる。
【0120】
【表3】
JP0003847682B2_000004t.gif また、LGOはその結晶構造から、結晶方位によって格子長が異なっており、GaN薄膜の歪み量と結晶方位に何らかの相関関係が見られる可能性がある。それを調べるために、X線の入射方位を60°および120°変化させて、同様に逆格子マッピングを取った結果も図11に合わせて示す。
【0121】
逆格子マッピングから得られた格子定数が、やはり上記した表3にまとめられている。この表3より、a軸方向における歪み量について、60°回転させた時に若干の変化が見られた。これは、LGO基板からGaN薄膜への応力が、結晶方位によって異なっているためと考えられる。
【0122】
また、X線の入射角を変えながら、面内方向における2THスキャンも行った。しかしながら、回折角にほとんど変化は見られず、歪み量の深さ依存は確認できなかった。この結果は、基板と薄膜の格子ミスマッチが非常に小さいことや、膜厚が非常に薄い成長初期過程であることにより、薄膜全体に転位がほぼ均一に入るなどして、歪み分布がないことを示していると考えられる。
【0123】
このように、G-GIXD法を用いることにより、各種基板上のIII 族窒化物薄膜について詳細な歪み解析が可能となることが分かった。特に、PLD法により成長したIII 族窒化物薄膜は、bulk結晶に適用される単純なHookeの法則が成立しないため、Poisson比を用いてa軸方向の格子定数からc軸方向の格子定数を決定することができない。従って、薄膜表面における面内・面外の歪み量を正確に決定するためには、G-GIXD法により面内・面外の回折を測定し、直接決定する以外にない。
【0124】
このように、G-GIXD法は、PLD法により成長したIII 族窒化物薄膜表面の構造解析において非常に強力な手法であることが証明された。
【0125】
なお、GaN結晶に関して、4軸回折計を用いた面内・面外逆格子マッピング測定による、結晶の格子定数、歪み解析については比較的多くの論文が見られる。面外回折については、(20-24)など高次の面を用いており、かつ入射角も大きいため、G-GIXD法の特長である薄膜表面における解析を行っているものではないが、特に逆格子マッピング測定と、その解析については非常に参考となる(参考文献〔6〕-〔8〕)。
【0126】
次に、NdGaO3 (NGO)基板上へのIII 族窒化物の成長について説明する。
【0127】
最近、OkazakiらはネオジガレートNdGaO3 (NGO)がGaN成長用の基板として適していることを示した。なぜならば、NGO(011)面は、格子長や対称性がヘキサゴナルGaN(0001)面と非常に近く、NGOを基板とすれば、良質なGaN薄膜の成長が期待できるからである。
【0128】
しかしながら、前述したように、MOCVD法やMBE法による成長では窒素源として反応性の高いアンモニアやN2 プラズマを用いているために、成長前にNGO基板が窒化してしまい、格子マッチングなどの利点を打ち消してしまうことが知られている。NGOを基板として利用することは、格子マッチング基板であることの他に、GaNのような光デバイスと酸化物エレクトロニクスを集積・融合するという意味でも利点がある。
【0129】
図12はNGOの結晶構造を示す図、図13はそのNGO基板上へのデバイスの融合・集積化の例を示す図である。
【0130】
NGO基板110は、III 族窒化物半導体装置111、超伝導素子112、磁性体装置113を実装することにより、磁性体・強誘電体・超伝導体材料のヘテロエピタキシャル成長用基板として広く用いられている。
【0131】
従って、GaNをNGO基板110上に成長することができれば、半導体・磁性体・強誘電体・超伝導体の全ての特性を1つのチップに集積したような新しいタイプのデバイスを開発することが期待される。
【0132】
しかしながら、これまでGaNをNGO(110)面上に成長したという報告はなされていない。そこで、本願発明者らは、他の基板と同様にレーザーMBE法を用いることで、NGOのような化学的、熱的に不安定な基板にも、良質なIII 族窒化物を成長させることが可能ではないかと考え、レーザーMBE法を用いてNGO基板上にGaNを成長させることを試みた。
【0133】
そして、NGO(110)基板上へのGaN成長、および成長後のGaN薄膜に対して、GIXD、GIXR、RHEED、AFM測定を行った。
【0134】
NGO結晶は図12に示すようなorthorhombicの結晶構造を持ち、(110)面の対称性は(011)と大きく異なっている。GaN薄膜は、PLD法によりNGO(110)に成長した。エタノールとアセトンによる脱脂洗浄の後、NGO基板をPLDチャンバに導入した。
【0135】
チャンバのベースプレッッシャーは1.0~2.0×10-9Torrであり、成長中はN2 ガス(99.9999% purity)を導入し、窒素圧を1.0×10-2Torrに保った。ターゲットにはGaN(99.99%)の焼結体を用いた。ターゲットは基板より5cm下方に位置し、KrFエキシマレーザー(λ=248nm、τ=20ns)によってアブレートされる。エネルギー密度は3.0J/cm2 であり、パルス周波数は10Hzに設定した。成長には、AINおよびGaNバッファ層などは用いず、NGO基板上に直接GaNの成長を行った。成長レートは約10nm/hとなっており、非常に低レートではあるが、これは成長の初期過程を調べるために、このような比較的ゆっくりした成長レートを選択した。基板温度は750℃に設定した。
【0136】
成長後はRHEED(25keV)による薄膜表面のin-situ観察を行った。チャンバから取り出した後、タッピングモードAFMによる表面モルフォロジーの観察を行った。
【0137】
GIXDおよびGIXR測定は、理学電気のadvanced thin film X-ray(ATX)systemを用いて行った。X線光源はCuKα1 (λ=1.5405Å)を用いた。入射角はGaNの全反射条件以下の0.25°を選択した。また、それらに加えて放射光施設BL-3Aにおいて、IP(イメージプレート)を用いたG-GIXD測定を行った。この測定ではキュービック層やダブルドメインなどの混在を確かめた。G-GIXD測定のセットアップについては、後述する。X線の波長は0.9Åとし、入射角は全反射条件以下の0.1~0.2に設定した。
【0138】
図14(a)および(b)に、GaN成長前と成長後のRHEED像を示す。
【0139】
成長前には、アニール処理によって表面の汚染層を除去し、図14(a)に見られるようなシャープなストリークパターンを示している。図14(b)はGaN成長後のRHEED像である。成長後の膜厚は約10nmで、電子線の入射方向はGaN〔0001〕である。
【0140】
明確なスポットパターンを示していることから、GaNはエピタキシャル成長しており、成長モードは3次元成長であることが分かる。電子線を様々な方向から入射し、パターンの変化を注意深く観察したところ、ヘキサゴナルGaNの(11-20)がNGO(110)面に成長していることが分かった。通常、GaNは(0001)面が配向し易いことが分かっている。像中には、それぞれのスポットが示す結晶面を示してある。
【0141】
ここで、IPを用いたG-GIXD測定について説明する。
【0142】
cubic-GaN層やダブルドメイン層の混在を調べるために、IPを用いたG-GIXD測定を行った。
【0143】
図15にIPを用いて得られた回折点を示す。
【0144】
2つの丸印で囲まれた回折点以外は、NGO基板からの回折である。丸印がついている2つの回折点はそれぞれ、hexagoanl-GaNの(10-10)面および(11-20)面からの回折であることが分かった。これらの回折点は、NGOとGaNの配向関係がRHEEDで予想された配向関係であると仮定した場合に期待されるものと一致している。従って、ヘキサゴナルGaN(11-20)面のみがNGO(110)基板に成長しており、cubic-GaN層やダブルドメイン層は存在していないことが分かる。
【0145】
次に、GIXD測定について説明する。
【0146】
図16に、NGO(110)上に成長したGaN薄膜に対する、典型的な面内回折のスペクトルを示す。32.78°および68.74°に見える2つの強いピークはNGO(2-22)および(4-44)面からの回折である。また34.54°に見えるピークがGaN(0002)面からの回折ピークである。
【0147】
この結果から、面内におけるエピタキシャル関係は〔0001〕GaN //〔1-11〕NGO であることが分かる。また回折角よりBraggの式を用いてGaN薄膜の〔0001〕方向における格子定数を計算したところ、その値は5.19Åであることが分かった。
【0148】
この値はバルクのGaN結晶の格子定数(5.185Å)に非常に近く、歪み量は0.1%以下である。同様の実験をGaN(1-101)面についても行っており、こちらの格子定数もバルクの値に非常に近いことが分かった。
【0149】
これらの結果より、NGO(110)面に成長したGaN薄膜はstoichiometricであり、面内における歪みはほぼ緩和されていると考えられる。
【0150】
図17は、GaNとNGO(110)面の配向関係を示す模式図である。
【0151】
NGO〔-111〕および〔1-11〕方向における格子ミスマッチは、それぞれ0.97%および-4.86%と計算される。これらのミスマッチ量は、典型的なGaN成長用基板であるサファイアとの格子ミスマッチ量(約16%)と比べて非常に小さい。このミスマッチが小さいという事実が、このような配向関係でGaNが成長したことおよび歪み量が小さいことをよく説明している。
【0152】
次に、AFMによる表面観察について説明する。
【0153】
図18は20nm成長させたGaN薄膜のAFMによる表面観察の結果を示す図である。
【0154】
GaN表面は島状の構造を有しており、その平均サイズは40nmである。表面粗さのRMS値は2.63nmであった。この結果から、薄膜は3次元成長していると考えられ、これはRHEED観察の結果と一致している。また、膜厚が増加するに従い、グレインサイズが増加する傾向にあることが分かった。
【0155】
次に、GIXRによる、基板と薄膜の界面評価について説明する。
【0156】
図19はNGO基板上に成長したGaN薄膜のGIXRカーブを示す図である。
【0157】
この図から分かるように、GaN層とNGO基板界面における、X線の明瞭な干渉縞が確認された。実験により得られたカーブに対し、GaN/NGOの2層モデルを用いた理論的なフィッティングを行ったところ、図中の実線に示すような良好なフィッティング結果が得られた。
【0158】
また、フィッティングパラメータより、GaN/NGO界面の粗さは0.5nm、表面粗さは1.2nmであることが分かった。表面粗さについては、AFM観察による結果(1.7nm)とほぼ一致する。また界面については窒化層などが存在せず、非常に急峻であることが分かった。
【0159】
上記を考慮して、本発明は、NGO基板上にIII 族窒化物を以下のように成長させるようにした。
【0160】
NdGaO3 基板表面に図1及び図3に示すように、コロイダルシリカ6によるCMP基板研磨と、該研磨された基板12の超高真空中でのアニールを施し、その基板12上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成し、この基板12の表面にレーザーMBE法によりAlN層を成長させ、このAlN層上にGaN層を形成する。
【0161】
その成長に当たっては、エタノールとアセトンによる脱脂洗浄の後、NdGaO3 基板をPLDチャンバ10に導入し、該PLDチャンバ10のベースプレッシャーは1.0~2.0×10-9Torrであり、成長中はN2 ガスを導入し、窒素圧を1.0×10-2Torrに保ち、ターゲット11にはGaNの焼結体を用いる。
【0162】
また、前記ターゲット11は基板12より5cm下方に位置し、KrFエキシマレーザー14(λ=248nm,τ=20ns)によってアブレートさせ、更に、エネルギー密度は3.0J/cm2 であり、パルス周波数は10Hzに設定するようにした。
【0163】
さらに、その成長レートを約10nm/hとし、前記基板の温度を750℃に設定するようにした。
【0164】
次に、MnO基板上へのIII 族窒化物の成長について説明する。
【0165】
MnOは、III 族窒化物薄膜と格子定数が非常に近く、この基板上にIII 族窒化物を成長することができれば、非常に良質なIII 族窒化物薄膜が得られるのではないかという観点から、研究が進められている新規基板である。
【0166】
MnOはNaCl型の結晶構造を持ち、その格子定数は4.4448Åとなっている。従って、MnOの111面は6回の対称性を持ち、なおかつIII 族窒化物との格子ミスマッチが非常に小さい。
【0167】
図20にMnOとGaNの格子アラインメントを示す。
【0168】
この図からも分かるように、格子ミスマッチは非常に小さく、約1.6%となっている。しかしながら、MnOは熱的・化学的に不安定であり、従来の成長手法では成長前の基板窒化やdecompositionなどが問題となり、III 族窒化物の成長は困難であった。
【0169】
そこで、本願発明者らは、PLD法を用いることによりこれらの問題を克服し、初めてMnO上にIII 族窒化物を成長させることに成功した。
【0170】
図21にMnO上に直接成長したGaNのRHEED像を示す。
【0171】
この図から分かるとおり、シャープなストリーク状の回折像が見られ、また3×3の表面再構成が起こっていることを示す3倍周期の回折像も見られる。
【0172】
従って、非常に良質なGaN薄膜が得られたことが分かる。
【0173】
次に、MnO上に直接成長したGaN薄膜について、G-GIXDによる構造解析を行ったので、その結果について述べる。
【0174】
図22にGaN薄膜の面内・面外回折点における逆格子マッピング測定の結果を示す。
【0175】
非常に強度が強く、鋭いピークが観察された。これは、成長したGaN薄膜の結晶性は優れているためであると考えられる。
【0176】
表4にこれらの逆格子マッピングから得られたa軸およびc軸方向の格子定数の値を示す。
【0177】
この表からも分かるとおり、MnO上に直接成長したGaN薄膜はa軸、c軸方向ともに圧縮歪みを受けていることが分かる。
【0178】
【表4】
JP0003847682B2_000005t.gif 次に、基板の熱膨張係数を考慮して、a軸方向の歪みについて説明する。
【0179】
今仮に成長温度でGaN薄膜の歪みが完全に緩和し、冷却過程において転位の運動がまったく起こらないと仮定すると、室温におけるMnO上GaNのa軸方向の格子定数は3.125Åと計算される。MnO基板の熱膨張係数には、3.45×10-5-1を用いた。この計算値は、G-GIXDにより得られた格子定数と大きく異なっている。この原因として、基板と薄膜の大きな熱膨張係数差によって、冷却過程においても薄膜中に新たなミスフィット転位の導入が起こり、それによって歪みが緩和されていることが予想される。
【0180】
また、c軸方向における圧縮歪みについては、やはりbulkのHookeの法則からは説明できず、薄膜中における格子欠陥や転位の存在、stoichiometryおよび、GaN薄膜の表面における解析であること、などが原因であると考えられる。
【0181】
上記を考慮して、本発明は、MnO基板上にIII 族窒化物を以下のように成長させるようにした。
【0182】
MnO基板表面に、図1及び図3に示すように、コロイダルシリカ6によるCMP基板研磨と、この研磨された基板12の超高真空中でのアニールを施し、この基板12上に原子レベルで平坦な結晶表面を形成し、その基板12の表面にレーザーMBE法によりAlN層を成長させ、このAlN層上にGaN層を形成する。
【0183】
次に、MnO基板をPLDチャンバ10に導入し、成長中はN2 ガスを導入し、窒素圧を1.0-5から10-2Torrに保ち、基板温度を700~800℃とし、ターゲット11には金属GaおよびAlNの焼結体を用いて前記AlN層およびGaN層を成長させる。
【0184】
前記パルスレーザーは248nm、0.1~10J/cm2 ,2~15Hzのエキシマレーザーを用いる。
【0185】
上記したように、本発明によれば、レーザーMBE法という新しい成長手法をIII 族窒化物結晶成長に適用することにより、従来の成長手法であるMOCVD法やMBE法では成長が困難であった、NGO、フェライトMnO、LGO等の新規基板上に、良質なIII 族窒化物薄膜をエピタキシャル成長させることに成功した。
【0186】
これらの成果によって、サファイア基板を用いている際に問題とされてきた、III 族窒化物との格子ミスマッチが大きく、良質な薄膜が得られない、絶縁体でありデバイス作製工程が複雑になる、非常に硬く加工が容易でない、レーザー作製の際に劈開が出来ない、大面積を有する基板が得られない、といった数々の点の解決が期待される。それに伴い、デバイス作製時およびコスト面における大きな改善が見られ、III 族窒化物系のデバイスは、現在に比べて、より一層の発展を遂げるであろう。
【0187】
基板と薄膜の格子ミスマッチが、サファイアに比べて格段に小さい格子マッチング基板については、薄膜中の格子欠陥やミスフィット転位が激減し、それによってIII 族窒化物薄膜の結晶品質における格段の向上が見込まれ、GaN系デバイスにおける更なる長寿命化、高効率化が期待される。また、薄膜がbulk結晶に近づくことで、従来は見られなかった新たな物性が発見される可能性もある。
【0188】
SiやNGOなどの新機能デバイスを狙った基板材料については、AlNを高誘電性の極薄絶縁膜としたデバイスの高集積化や、3次元電子デバイスの作製、GaN系光デバイスとSi系電子デバイスの融合、および磁性体・強誘電体・超伝導体などの酸化物エレクトロニクスとの集積・融合など、数多くの新機能デバイスが生み出される可能性が期待される。
【0189】
これらGaN系デバイスの特性向上のためには、薄膜表面デバイス領域の構造解析が必須であるが、G-GIXD法を用いることによって、格子定数や歪み量の詳細な解析が実現された。薄膜のデバイス領域における歪み量と、光学・電気特性の相関関係が解明されれば、GaN系デバイスにおいて結晶中の格子欠陥や転位が107 ~109 cm-2と他の半導体材料に比べてはるかに多いにも関わらず、なぜ非常に良質な発光特性や、1000時間以上もの長寿命を持つのか、といったGaN系デバイスの特異的な物性の解明について大きなブレイクスルーとなり得る。
【0190】
特に、PLD法により成長したIII 族窒化物薄膜の表面は、格子欠陥やミスフィット転位、stoichiometryの問題などによるものなのか、bulkの単純なHookeの法則が成り立っていないことが本発明によって明らかになっており、従来の手法では面内・面外の格子歪みを正確に知ることはできなかった。一方、本発明で用いたG-GIXD法は唯一、面内・面外における歪み解析を詳細に行うことが可能な手法として、デバイス領域の構造解析に非常に強力なツールとなろう。
【0191】
図23は光学結晶LiNbO3 上へのGaNを成長させることから発展した高集積光演算素子の模式図、図24はその構造を示す模式図、図25はそこに実装される半導体レーザーのRHEED像・PLスペクトルを示す図、図26はその半導体レーザーの波長に対するスペクトル強度特性図である。
【0192】
これらの図において、201は光学結晶LiNbO3 基板、202はその光学結晶LiNbO3 基板201に実装される半導体レーザー(GaN/AlN/LiNbO3 構造)、203は酸化物光制御素子、204は光半導体検出器(InGaN)を示している。
【0193】
このように、半導体レーザー202、光半導体検出器204と光学結晶光制御素子203を高密度に集積化した光通信制御素子を構築することができる。
【0194】
また、これにより、高性能光制御素子や光コンピュータ、磁気ホール素子などが実現する道が開けた。
【0195】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能でありこれらを本発明の範囲から排除するものではない。
【0196】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0197】
(A)光学結晶上にGaNなどの直接遷移型半導体をヘテロエピタキシャル成長させる方法を鋭意研究した結果、レーザーMBE装置を用いることにより光学結晶基板(LiNbO3 )上に良質なGaNを成長させることができた。
【0198】
本発明の特徴は、特に窒素雰囲気下でのエピタキシャル成長が可能となるレーザーMBE装置を用いることにあるが、LiNbO3 表面の平坦化とバッファ層として、AIN層を設けることにより、従来ハイブリッドであった光集積回路を、モノリシック化することで、現在回路の主役である電子回路を凌駕するような集積化光素子を目指すことができ、高性能光制御素子や光コンピュータが実現することができる。
【0199】
(B)また、NdGaO3 基板、(Mn,Zn)Fe2 4 基板、MnO基板にも同様にAIN層を介したGaN薄膜を形成することができ、従来ハイブリッドであった光集積回路や磁気的集積素子を、モノリシック化することで、現在回路の主役である電子回路を凌駕するような集積化装置を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す基板の研磨装置の模式図である。
【図2】 本発明の実施例を示す基板の研磨のフローチャートである。
【図3】 本発明にかかるレーザーMBE装置の模式図である。
【図4】 本発明の実施例を示すLiNbO3 上へAlNバッファー層を有するGaN薄膜の模式図である。
【図5】 LiNbO3 基板とGaN薄膜の配向関係とそのロッキング曲線を示す図である。
【図6】 GaN薄膜表面を観察した図である。
【図7】 本発明のLiNbO3 基板上にAlNバッファー層の生成時の窒素分圧特性を示す図である。
【図8】 GaNとLiNbO3 が30°回転した配向関係を示す模式図である。
【図9】 LiGaO2 (LGO)がorthorhombicの結晶構造を示す図である。
【図10】 LiGaO2 (LGO)基板へのGaN成長後のRHEED像を示す図である。
【図11】 GaN薄膜の面内・面外回折点におけるG-GIXD法による逆格子マッピング測定の結果を示す図である。
【図12】 NGOの結晶構造を示す図である。
【図13】 NGO基板上へのデバイスの融合・集積化の例を示す図である。
【図14】 NGO基板上へのGaN成長前と成長後のRHEED像を示す図である。
【図15】 IPを用いたG-GIXD測定の結果のIPを用いて得られた回折点を示す 図である。
【図16】 NGO(110)上に成長したGaN薄膜に対する、典型的な面内回折のスペクトルを示す図である。
【図17】 GaNとNGO(110)面の配向関係を示す模式図である。
【図18】 NGO基板上へ20nm成長させたGaN薄膜のAFMによる表面観察の結果を示す図である。
【図19】 NGO基板上に成長したGaN薄膜のGIXRカーブを示す図である。
【図20】 MnOとGaNの格子アラインメントを示す図である。
【図21】 MnO上に直接成長したGaNのRHEED像を示す図である。
【図22】 GaN薄膜の面内・面外回折点における逆格子マッピング測定の結果を示す図である。
【図23】 光学結晶LiNbO3 上へのGaNを成長させることから発展した高集積光演算素子の模式図である。
【図24】 高集積光演算素子の構造を示す模式図である。
【図25】 実装される半導体レーザーのRHEED像・PLスペクトルを示す図である。
【図26】 半導体レーザーの波長に対するスペクトル強度特性図である。
【符号の説明】
1 光学結晶基板や磁性酸化物基板などの基板
2 基板の保持具
3 研磨板
4 コロイダルシリカ容器
5 コロイダルシリカ供給ノズル
6 コロイダルシリカ
10 PLDチャンバ
11 ターゲット
12 基板
13 加熱装置
14 KrFエキシマレーザー
15 スクリーン
16 RHEED装置
17,18 TMP(Turbo Molecular Pump)
19 N2 ガス源
20 電子ビーム
101 LiNbO3 基板(0001)
102 AlNバッファー層
103 GaN薄膜(0001)
110 NGO(110)基板
111 III 族窒化物半導体装置
112 超伝導素子
113 磁性体装置
201 光学結晶LiNbO3 基板
202 半導体レーザー(GaN/AlN/LiNbO3 構造)
203 酸化物光制御素子
204 光半導体検出器(InGaN)
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14
【図16】
15
【図17】
16
【図18】
17
【図19】
18
【図20】
19
【図21】
20
【図22】
21
【図23】
22
【図24】
23
【図25】
24
【図26】
25